説明

パイロット切換機構付き流量制御弁

【課題】 流量制御弁に入力されるパイロット圧を切換指令信号に応じて切換え、かつ切換えた後も、操作手段の操作量に応じて前記パイロット圧が変わるパイロット切換機構を提供する。
【解決手段】 パイロット切換機構30は、バケット用制御弁18に設けられ、主通路42と副通路45と第2のパイロット通路47とを有する。主通路42は、操作レバー31の操作量に応じた流量の圧油が流れる。副通路45には、入力される切換指令信号に応じて副通路45に流れる圧油を止める電磁弁33が接続され、主通路42の油圧に応じて副通路45の油圧を減圧する減圧弁34が介在している。主通路42と副通路45と第2のパイロット通路47とが接続されているパイロット用方向切換弁35は、副通路45に流れる圧油の有無により、第2のパイロット通路47に接続される通路を副通路45又は主通路42に切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータを駆動するための第1の操作手段の操作量に応じて操作弁から出力される油圧をパイロットポートに入力し、前記パイロットポートのパイロット圧に応じて前記油圧アクチュエータに流れる圧油の流量を変えるパイロット切換機構付き流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、公知のショベル10を示す右側面図である。建設機械であるショベル10は、ブーム13、アーム14及びバケット11を備える。ブーム13、アーム14及びバケット11の各々には、油圧シリンダ20,21,22が設けられている。各油圧シリンダ20,21,22には、操作レバー31,46の操作に応じて、油圧ポンプから油圧シリンダ20,21,22に流れる圧油の方向及び流量を切換える方向流量制御弁が設けられている。運転者は、操作レバー31,46を操作することで油圧シリンダに流れる圧油の方向を切換えて油圧シリンダ20,21,22を伸縮させて、ブーム13、アーム14及びバケット11の各々を動かす。
【0003】
油圧シリンダ20,21,22には、1つの油圧ポンプから吐出され圧油を分流させて供給されている。ブーム13とバケット11とを同時に動かす際、ブーム13を優先的に可動させる必要がある。そのため、バケット11及びブーム13の動かす油圧回路は、ブーム13及びバケット11を同時に動かす際、ブーム11が優先的に動くように構成されている。
【0004】
図5(a)は、第1の従来技術の油圧回路1Aの一部を示す回路図である。油圧回路1A及び後述する油圧回路1Bは、バケット用油圧シリンダ21に関するものである。油圧回路1Aは、バケット用油圧シリンダ21と、流量方向制御弁3Aと、流量調整弁4とを備える。流量調整弁4は、図示しない油圧ポンプと流量方向制御弁3Aとを繋ぐポンプ通路5に介在している。流量調整弁4には、ブーム用油圧シリンダ20が駆動すると出力される油圧式の切換指令信号が入力される。流量調整弁4は、切換指令信号が入力されると、前記ポンプ通路5を流れる圧油の流量を制限する。制限された分の流量の圧油がブーム用油圧シリンダにまわされる。これにより、ブーム用油圧シリンダ20に流れる圧油の流量がバケット用油圧シリンダ21より多くなり、ブーム用油圧シリンダ20が優先的に駆動される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図5(b)は、第2の従来技術の油圧回路1Bの一部を示す回路図である。油圧回路1Bは、バケット用油圧シリンダ21と、流量方向制御弁3Bとを備える。流量方向制御弁3Bは、運転者が操作する操作レバーに応じてスプール3aが移動し、スプール3aの位置に応じてバケット用油圧シリンダ21に流れる圧油の方向及び流量が変わるように構成されている。流量方向制御弁3Bには、スプール3aのストロークを規制するための規制部材6が設けられている。規制部材6は、ブーム用油圧シリンダ20が駆動すると出力される油圧式の切換指令信号が入力されることで、スプール3aのストロークを規制する。これにより、バケット用油圧シリンダ21に流れる圧油の流量が制限され、油圧回路1Aと同様に、ブーム用油圧シリンダ20に流れる圧油の流量がバケット用油圧シリンダ21より多くなる。従って、ブーム用油圧シリンダ20が優先的に駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2987279号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ショベル10では、操作レバーの操作量に応じてバケット用油圧シリンダ21に流れる圧油の流量が変化し、前記流量の変化によりバケット11の可動速度が変化する。油圧回路1A,1Bでは、共に、切換指令信号が流量調整弁4及び規制部材6に夫々入力されたときにバケット用油圧シリンダ21に流れる圧油の流量の上限量を制限するような構成となっている。そのため、切換指令信号が入力された後、操作レバーの操作量が一定量を越えると、操作量が増加してもバケットの可動速度が変化せず、操作レバー31の操作量に応じた応答性を得ることができなくなる。
【0008】
また、油圧回路1Aは、ポンプ通路5に流量調整弁4を介在させる必要があり、油圧回路1Bは、スプール3aのストロークが規制されるように規制部材6を設ける必要がある。そのため流量方向切換弁3A,3Bを構成するバルブブロックに設けられる部品の点数が増加し、前記バルブブロックの構造が複雑化する。また複数の油圧シリンダが設けられる場合、優先的に駆動させない全ての油圧シリンダ20,21,22に関して、流量調整弁4又は規制部材6に設ける必要があり、これによりバルブブロックの構造がますます複雑化する。
【0009】
本発明の目的は、油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する流量制御弁に入力されるパイロット圧を切換指令信号に応じて切換え、かつ切換えた後も操作手段の操作量に応じて操作手段の操作量に応じて油圧アクチュエータの駆動速度を変化させることができるパイロット切換機構付き流量制御弁を提供することである。
【0010】
また本発明の別の目的は、第3の油通路を流量制御弁のパイロット通路に接続することで、指令信号に応じてパイロット圧を切換えることができるパイロット切換機構付き流量制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のパイロット切換機構付き流量制御弁は、油圧アクチュエータを操作するための第1の操作手段の操作量に応じて操作弁から出力される油圧をパイロットポートに入力し、前記パイロットポートのパイロット圧に応じて前記油圧アクチュエータに流れる圧油の流量を変えるパイロット切換機構付き流量制御弁であって、パイロット用油圧ポンプからの油圧を、前記操作弁からの油圧に応じた圧力に減圧して出力する減圧弁と、切換指令部から前記切換指令信号が出力されると、前記パイロットポートに入力される油圧を前記減圧弁から出力される油圧に切換えるパイロット圧切換弁とを備えるものである。
【0012】
本発明に従えば、切換指令部からの切換指令信号の出力に応じて、パイロットポートに入力される油圧を、操作弁から流れる油圧から減圧弁から流れる油圧に切換える。これにより、切換指令信号が出力されると、減圧弁により減圧された圧油がパイロットポートに入力されるので、切換指令信号の有無に応じてパイロット圧が切換わる。
【0013】
また本発明では、減圧弁から出力される油圧が操作弁からの油圧に応じた圧力に減圧されている。そのため、切換指令信号の有無により、操作手段の操作量とパイロット圧との関係が2段階に切換可能であって、切換指令信号が出力された後も、パイロット圧が第1の操作手段の操作量に応じて変わるように構成される。従って、切換指令信号が出力された後も、第1の操作手段の操作量に応じた流量の圧油が油圧アクチュエータに流され、第1の操作手段の操作量に応じた駆動速度で油圧アクチュエータを駆動させることができる。
【0014】
本発明において、前記パイロット用油圧ポンプに接続される第1の油通路と、前記操作弁に接続される第2の油通路と、前記パイロットポートに接続される第3の油通路と、前記切換指令部から出力される前記切換指令信号に応じて、パイロット用油圧ポンプからの圧油を前記第1の油通路に流す方向切換弁とを有し、前記減圧弁は、前記第1の油通路に介在し、前記第2の油通路の油圧に応じて前記第1の油通路の油圧を減圧し、前記パイロット切換弁は、前記第1の油通路に圧油が流れると、前記第1の油通路と前記第3の油通路とを接続し、前記第1の油通路に流れる圧油が止められると、前記第2の油通路と前記第3の油通路とを接続するように構成されていることが好ましい。
【0015】
本発明に従えば、切換指令信号が出力されていない状態では、パイロット用油圧ポンプから第1の油通路への圧油の流れが止められる。そのため、パイロット切換弁は、第2の油通路と第3の油通路とを接続する。これにより第2の油通路の油圧がパイロット圧としてパイロットポートに入力される。切換指令信号が出力されると、パイロット用油圧ポンプからの圧油が第1の油通路に流される。第1の油通路に油圧が流れることにより、パイロット切換弁は、第1の油通路と第3の油通路とを接続する。第1の油通路の油圧が減圧弁により減圧され、この減圧された油圧がパイロット圧としてパイロットポートに入力される。減圧された油圧がパイロットポートに入力されることにより、パイロット圧に応じて油圧アクチュエータに供給される圧油の流量が変わる。このように、切換指令信号に応じて、パイロット圧が切換えられる。
【0016】
また本発明では、第2の油通路の油圧が操作弁に接続されているため、第2の油通路の圧油が第1の操作手段の操作量に応じて変わる。そのため、減圧弁により第2の油通路の油圧に応じて減圧される第1の油通路の油圧もまた、第1の操作手段の操作量に応じた圧力に減圧される。これにより、切換指令信号の有無により、第1の操作手段の操作量とパイロット圧との関係が2段階に切換可能であって、かつ切換指令信号が出力された後も、パイロット圧が第1の操作手段の操作量に応じて変えることができるように構成されることとなる。従って、切換指令信号が出力された後も、第1の操作手段の操作量に応じた流量の圧油が油圧アクチュエータに流され、第1の操作手段の操作量に応じた駆動速度で油圧アクチュエータが駆動する。
【0017】
さらに本発明に従えば、パイロット切換機構の第3の油通路を流量制御弁のパイロットポートに接続することで、第1の操作手段の操作量とパイロット圧との関係を切換可能なものにすることができる。そのため、流量制御弁の構成を複雑化させることがなく、流量制御弁が設けられるバルブブロックの構成が複雑化しない。
【0018】
本発明の建設機械は、請求項1又は2に記載のパイロット切換機構付き流量制御弁と、少なくとも2つ前記油圧アクチュエータと、前記少なくとも2つの油圧アクチュエータのうち優先的に駆動すべき油圧アクチュエータを操作するための第2の操作手段と、前記切換指令信号を出力する切換指令部とを備え、前記パイロット切換機構付き流量制御弁は、前記複数の油圧アクチュエータのうち優先的に駆動すべき油圧アクチュエータ以外の油圧アクチュエータに夫々設けられ、前記切換指令部は、前記第2の操作手段が操作されると、切換指令信号を出力するように構成されるものである。
【0019】
本発明に従えば、第2の操作手段が操作されると、切換指令部が切換指令信号を出力する。このときに第1の操作手段が操作されると、優先的に駆動すべき油圧アクチュエータ以外の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量がパイロット切換機構付き流量制御弁により制限される。そのため、前記優先的に駆動すべき油圧アクチュエータに供給される圧油の流量が、それ以外の油圧アクチュエータよりも多くなる。これにより、複数の油圧アクチュエータを同時に駆動させる時であっても、前記優先的に駆動すべき油圧アクチュエータが優先的に駆動される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する流量制御弁に入力されるパイロット圧を切換指令信号に応じて切換え、かつ切換えた後も第1の操作手段の操作量に応じて油圧アクチュエータの駆動速度を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態のショベルを示す右側面図である。
【図2】油圧装置の油圧回路の一部を示す油圧回路図である。
【図3】パイロット切換機構の油圧回路を示す回路図である。
【図4】操作レバーの操作量に対する第2のパイロットポートに入力されるパイロット圧の変化を示すグラフである。
【図5】(a)は、第1の従来技術の油圧回路の一部を示す回路図であり、(b)は、第2の従来技術の油圧回路の一部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態のショベル10を示す右側面図である。ショベル10は、バケット11で土砂等を掬い上げる建設機械である。ショベル10は、走行可能な車両本体12に上下方向に揺動可能なブーム13が設けられている。ブーム13の先端部には、アーム14の基端部が揺動可能に取付けられている。アーム14の先端部には、バケット11が揺動可能に取付けられている。さらにショベル10には、油圧装置15が設けられている。油圧装置15は、ブーム用シリンダ20、バケット用シリンダ21及びアーム用シリンダ22を夫々駆動させて、ブーム13、アーム14及びバケット11を夫々動かすように構成されている。ブーム用油圧シリンダ20は、車両本体12とブーム13とに渡されて設けられている。バケット用油圧シリンダ21は、アーム14とバケット11とに渡されて設けられている。アーム用油圧シリンダ22は、アーム14とバケット11とに渡されて設けられている。以下では、油圧装置15の構成を更に詳しく説明する。
【0023】
図2は、油圧装置15の油圧回路の一部を示す油圧回路図である。以下では、図1も参照しつつ説明する。油圧装置15は、油圧ポンプ16、ブーム用方向流量制御弁(以下、単に「ブーム用制御弁」ともいう)17、バケット用方向流量制御弁(以下、単に「バケット用制御弁」ともいう)18、アーム用方向流量制御弁(以下、単に「アーム用制御弁」ともいう)19、ブーム用油圧シリンダ20、バケット用油圧シリンダ21及びアーム用油圧シリンダ22を備える。油圧ポンプ16は、例えばアキシャルポンプであり、吐出ポート16aからポンプ通路23に圧油を吐出可能に構成されている。ポンプ通路23は、その下流側が4つの通路23a,23b,23c,23dに分かれており、第1の通路23aに逆止弁24が介在している。この逆止弁24は、その上流側から下流側への圧油の流れを許容し、その反対方向の流れを阻止する。第1及び第2の通路23a,23bは、共にブーム用制御弁17に接続されている。第3の通路23cは、バケット用制御弁18に接続され、第4の通路23dは、アーム用制御弁19に接続されている。
【0024】
ブーム用制御弁17は、センターオープン型の5ポート切換弁である。5つのポートは、第1及び第2の通路23a,23b以外に、ブーム用油圧シリンダ20に形成される2つのシリンダ室20a、20b及びバケット用連通路25に接続されている。ブーム用制御弁17は、後述するブーム用操作レバー46の操作量に応じて与えられるブーム用パイロット圧に応じてストロークが変わるスプール17aを備える。
【0025】
ブーム用制御弁17は、スプール17aが中立位置にあるとき、第2の通路23bとバケット用連通路25と接続するように構成されている。このとき、第1の通路23a及び2つのシリンダ室20a、20bは、遮断されている。ブーム用制御弁17は、スプール17aが移動すると、スプール17aの位置に応じて第1の通路23aの接続先を2つのシリンダ室20a,20bのうちのいずれか一方に切換えるように構成されている。そしてブーム用制御弁17は、スプール17aのストロークに応じた流量の圧油をシリンダ室20a,20bに供給するように構成されている。このとき、2つのシリンダ室20a,20bのうちの他方は、バケット用連通路25に接続され、第2の通路23bは遮断されている。
【0026】
ブーム用油圧シリンダ20は、ブーム用制御弁17からの圧油の方向に応じて、つまり2つのシリンダ室20a,20bの何れに圧油が供給されるかに応じて伸縮するように構成されている。このとき、ブーム用油圧シリンダ20は、供給される流量に応じた駆動速度で伸縮するように構成されている。従って、ブーム用油圧シリンダ20は、ブーム用操作レバー46(図1参照)の操作量に応じた駆動速度で伸縮し、前記駆動速度に応じた揺動速度でブーム13を上下方向に揺動させる。
【0027】
第3の通路23cには、逆止弁26が介在している。この逆止弁26は、その上流側から下流側への圧油の流れを許容し、その反対方向の流れを阻止する。第3の通路23c及びバケット用連通路25は、共にバケット用制御弁18に接続されている。
【0028】
バケット用制御弁18は、センターオープン型の5ポート切換弁である。5つのポートは、第3の通路23c及びバケット用連通路25以外に、バケット用油圧シリンダ21に形成される2つのシリンダ室21a、21b及びアーム用連通路27に接続されている。バケット用制御弁18は、第1及び第2のパイロットポート18b,18cを有する。バケット用制御弁18は、第1及び第2のパイロットポート18b,18cのパイロット圧に応じてストロークが変わるスプール18aを備える。
【0029】
バケット用制御弁18は、スプール18aが中立位置にあるとき、バケット用連通路25とアーム用連通路27と接続するように構成されている。このとき、第3の通路23c及び2つのシリンダ室21a、21bは、遮断されている。またバケット用制御弁18は、第1のパイロットポート18bにパイロット圧が入力されてスプール18aが移動すると、第3の通路23cの接続先を第1のシリンダ室21aに切換え、第2のパイロットポート18cにパイロット圧が入力されてスプール18aが移動すると、第3の通路23cの接続先を第2のシリンダ室21bに切換えるように構成されている。なお、2つのシリンダ室21a,21bのうち接続されていない方は、アーム用連通路27に接続され、バケット用連通路25は遮断されている。またバケット用制御弁18は、スプール18aの位置に応じた流量の圧油をシリンダ室21a,21bに供給するように構成されている。
【0030】
バケット用油圧シリンダ21は、バケット用制御弁18からの圧油の方向に応じて伸縮するように構成されている。具体的には、第1のシリンダ室21aに圧油が供給されると収縮し,第2のシリンダ室21bに圧油が供給されると伸張するように構成されている。またバケット用油圧シリンダ21は、各シリンダ室21a,21bに供給される圧油の流量に応じた駆動速度で伸縮するように構成されている。換言すると、バケット用油圧シリンダ21は、入力されたパイロット圧に応じた駆動速度で伸張し、前記駆動速度に応じた揺動速度でバケット11を揺動させる。なお、本実施形態では、バケット用油圧シリンダ21は、第2のシリンダ室21bに圧油が供給されると、バケット11を巻き込み方向に揺動させるように構成されている。
【0031】
第4の通路23dには、逆止弁28が介在している。この逆止弁28は、その上流側から下流側への圧油の流れを許容し、その反対方向の流れを阻止する。第4の通路23d及びアーム用連通路27は、共にアーム用制御弁19に接続されている。
【0032】
アーム用制御弁19は、バケット用制御弁18と接続されている通路が異なるだけで、それらの構成は略同一である。またアーム用油圧シリンダ22もまた、バケット用油圧シリンダと配置が異なるだけで、それらの構成は略同一である。以下では、異なる点についてだけ説明する。
【0033】
アーム用制御弁19の5つのポートは、第4の通路23d及びアーム用連通路27以外に、アーム用油圧シリンダ22に形成される2つのシリンダ室22a、22b及びタンク29に接続されている。また、アーム用制御弁19のスプール19aは、第1のパイロットポート19b及び第2のパイロットポート19cのパイロット圧に応じて移動するように構成されている。アーム用油圧シリンダ22は、第1のシリンダ室22aに圧油が供給されると、収縮してアーム14を上方に揺動させ,第2のシリンダ室22bに圧油が供給されると、伸張してアーム14を下方に揺動させるように構成されている。
【0034】
またポンプ通路23の分岐点より上流側には、リリーフ弁50が設けられている。リリーフ弁50は、タンク29に接続されており、ポンプ通路23が所定圧を越えると、ポンプ通路23を流れる圧油をタンク29へと排出するように構成されている。
【0035】
図3は、パイロット切換機構30の油圧回路を示す回路図である。パイロット切換機構30は、バケット用制御弁18及びアーム用制御弁19に夫々設けられている。各パイロット切換機構30は、略同一の構成であり、入力するパイロットポートがバケット用制御弁18の第1及び第2のパイロットポート18b、18cか、アーム用制御弁19の第1及び第2のパイロットポート19b、19cかの違いである。以下では、バケット用制御弁18に設けられるパイロット切換機構30について説明し、アーム用制御弁19に設けられるパイロット切換機構30について説明を省略する。
【0036】
パイロット切換機構30は、操作レバー31の傾倒操作の操作量に応じたパイロット圧をバケット用制御弁18の第1又は第2のパイロットポート18b,18cに入力するものである。またパイロット切換機構30は、ブーム用操作レバー46の操作に応じて出力される切換指令信号に応じて、第2のパイロットポート18cのパイロット圧と操作レバー31の操作量との対応関係を切換え、かつ切換えた後も前記操作量に応じたパイロット圧を第2のパイロットポート18cに入力するように構成されたものである。
【0037】
パイロット切換機構30は、パイロット用ポンプ通路41と、操作レバー31と、操作弁32、電磁弁33と、減圧弁34と、パイロット用方向切換弁35とを備えている。パイロット用ポンプ通路41には、例えばギアポンプであるパイロット用油圧ポンプ40の吐出ポート40aが接続されている。パイロット用ポンプ通路41は、下流側で2つに分かれており、一方が操作弁32に接続され、他方が電磁弁33に接続されている。
【0038】
操作弁32には、バケット11を動かすための操作レバー31が設けられている。操作レバー31は、操作弁32に前後方向に傾倒可能に車両本体12の運転席に設けられている。また、操作弁32は、第1のパイロットポート18bに接続される第1のパイロット通路43と、主通路42とに接続されている。操作弁32は、操作レバー31の傾倒操作に応じて、パイロット用ポンプ通路41の接続先を主通路42及び第1のパイロット通路43のうちの何れか一方に切換えるように構成されている。例えば、後方に傾倒させると、前記接続先が第1のパイロット通路43に切換わり、前方に傾倒させると、前記接続先が主通路42に切換わるように構成されている。また操作弁32は、操作レバー31の傾倒角θに応じた圧力の圧油を接続先の通路に出力するように構成されている。
【0039】
電磁弁33は、パイロット用ポンプ通路41と共に副通路45に接続されている。方向切換弁である電磁弁33は、ソレノイド33aを有する所謂ソレノイド弁である。ソレノイド33aには、ブーム用操作レバー46の傾倒操作を検出する検出手段46aが電気的に接続されている。切換指令部である検出手段46aは、ブーム用操作レバー46の傾倒操作を検出すると、電流である切換指令信号を出力するように構成されている。検出手段46aは、例えばリミットスイッチである。電磁弁33は、ソレノイド33aに入力される切換指令信号に応じてパイロット用ポンプ通路41と副通路45との接続状態を切換えるように構成されている。つまり、電磁弁33は、ブーム用操作レバー46が操作されると、パイロット用ポンプ通路41から副通路45に圧油を流し、ブーム用操作レバー46の操作が止められてブーム操作レバー46が中立位置に戻されると、パイロット用ポンプ通路41から副通路45への圧油の流れを止めるように構成される。
【0040】
また副通路45には、その途中に減圧弁34が介在している。この減圧弁34は、減圧弁34の二次側の油圧と主通路42の油圧との差圧に応じた圧力に副通路45の油圧を減圧するように構成されている。本実施形態では、減圧弁34は、副通路45の油圧が主通路42より低い圧力まで減圧される。
【0041】
主通路42及び副通路45は、それらの下流側がパイロット用方向切換弁35に接続されている。更にパイロット用方向切換弁35は、第2のパイロット通路47を介して、バケット用制御弁18の第2のパイロットポート18cに接続されている。パイロット切換弁であるパイロット用方向切換弁35は、副通路45の減圧弁34より上流側の油圧に応じて、第2のパイロット通路47の接続先を、主通路42及び副通路45のうち何れか一方に切換えるように構成されている。
【0042】
このように構成されたパイロット切換機構30において、ブーム用操作レバー46が操作される前では、切換指令信号が電磁弁33に出力されず、電磁弁33によりパイロット用ポンプ通路41から副通路45への圧油の流れが止められている。そのため、副通路45の油圧が低く、パイロット用方向切換弁35により主通路42と第2のパイロット通路47とが接続される。この状態で、操作レバー31が前方に操作されると、操作弁32から主通路42に供給される圧油が、パイロット用方向切換弁35及び第2のパイロット通路47を通過して、第2のパイロットポート18cに供給される。即ち、第2のパイロットポート18cにパイロット圧が入力される。これにより、第3の通路23cが第2のシリンダ室21bに接続され、バケット11が巻き込み方向に揺動する。なお、操作レバー31の操作量に応じて主通路42に供給される流量が変化するため、第2のパイロットポート18cのパイロット圧は、操作レバー31の操作量に応じて変わる。
【0043】
次に、ブーム用操作レバー46が操作されると、切換指令信号が検出手段46aから出力されて、電磁弁33によりパイロット用ポンプ通路41と副通路45とが接続される。これにより、パイロット用ポンプ通路41から副通路45に圧油が流れて、副通路45の油圧が上昇する。副通路45の油圧が上昇することで、パイロット用方向切換弁35が第2のパイロット通路47の接続先を副通路45に切換える。この状態で、操作レバー31を前方に操作すると、操作弁32から主通路42に圧油が供給され、減圧弁34の一次側と二次側とが接続される。これにより、減圧弁34で減圧された圧油が二次側からパイロット用方向切換弁35に供給される。この減圧された圧油は、第2のパイロット通路47を通過して、第2のパイロットポート18cに入力される。これにより、第2のパイロットポート18cのパイロット圧が、ブーム用操作レバー46が操作される前より小さくなる。即ち、切換指令信号の有無により、第2のパイロットポート18cのパイロット圧が大小2通りの圧力に切換る。
【0044】
また、減圧弁34は、減圧弁34の二次側に流す圧油を主通路42の油圧と減圧弁34の二次側の油圧との差圧に応じた油圧に減圧する。そのため、減圧弁34の二次側の油圧は、主通路42の油圧に応じた圧力となる。従って、第2のパイロットポート18cのパイロット圧は、操作レバー31の操作量に応じて変わる。
【0045】
図4は、操作レバー31の操作量に対する第2のパイロットポート18cのパイロット圧の変化を示すグラフである。ブーム用操作レバー46が操作される前のパイロット圧の変化が実線で示され、ブーム用操作レバー46が操作された後の変化が一点鎖線で示されている。なお、二点鎖線は、ブーム用操作レバー46と操作レバー31とを同時に操作したときに、ブーム用制御弁17に入力されるパイロット圧である。
【0046】
図4に示されているように、切換指令信号の有無に関係なく、第2のパイロットポート18cのパイロット圧が操作レバー31の操作量に応じて変化する。そして、切換指令信号の有無により、操作レバー31の操作量と第2のパイロットポート18cのパイロット圧との対応関係が切換わる。具体的には、操作レバー31の操作量に対するパイロット圧の増加量が変わる。このように、パイロット切換機構30は、操作レバー31の操作量と第2のパイロットポート18cのパイロット圧との対応関係を、切換指令信号の有無により2段階に切換可能であって、かつ操作レバー31の操作量に応じて第2のパイロットポート18cのパイロット圧が変わるように構成されている。
【0047】
従って、切換指令信号が出力されると、操作レバー31の操作量が、切換指令信号が入力されない場合と同じ量であっても、第2のパイロットポート18cのパイロット圧が小さくなり、スプール18aのストロークが短くなる。これにより、第3の通路23cから第2のシリンダ室21bに流れる圧油の流量が制限される。これに対して、ブーム用制御弁17のスプール17aに与えられるパイロット圧は、切換指令信号が出力された後も略変わりない。そのため、前記パイロット圧は、ブーム用操作レバー46の操作量に応じて変化し(図4の2点鎖線参照)、スプール17aのストロークの変化も略変わらない。従って、各油圧シリンダ20,21に分流される圧油のうち、バケット用方向流量制御弁で制限された分の流量の圧油がブーム用油圧シリンダ20に流れる。そのため、ブーム用油圧シリンダ20の方がバケット用油圧シリンダ21よりも多く流れ、ブーム13がバケット11よりも優先的に駆動される。
【0048】
パイロット切換機構30は、ブーム用油圧シリンダ20、バケット用油圧シリンダ21及びアーム用油圧シリンダ22の3つを同時に駆動させた時も、ブーム用油圧シリンダ20及びバケット用油圧シリンダ21を同時に駆動させた時と同様に作動する。つまり、パイロット切換機構30は、切換指令信号に基づいて第2のパイロットポート18c,19cのパイロット圧を切換えてブーム用油圧シリンダ20に多くの圧油を流させて、ブーム用油圧シリンダ20を優先的に駆動させる。
【0049】
このように構成されるパイロット切換機構30は、第1及び第2のパイロットル通路43,47をバケット用方向流量制御弁18の第1及び第2のパイロットポート18b、18cに接続することで、操作レバー31の操作量とパイロット圧との関係を切換可能なバケット用方向流量制御弁18にすることができる。そのため、バケット用方向流量制御弁18の構成を複雑化させることがなく、バケット用方向流量制御弁18が設けられる図示しないバルブブロックの構成が複雑化しない。
【0050】
本実施の形態によれば、ブーム用操作レバー46の操作に応じて切換指令信号を出力するように構成されているけれども、異なる操作手段、例えばスイッチを操作することにより出力するように構成してもよい。具体的には、スイッチにより急操作モードと微調整モードとを切換え可能に構成する。スイッチが操作されて微調整モードから急操作モードに切換えられると、切換指令信号が電磁弁33に入力されるように構成する。減圧弁34は、その二次側の油圧が主通路42の油圧より高くなるように構成されている。
【0051】
このように構成されることで、切換指令信号が電磁弁33に入力されて急操作モードに切換わると、スプール19aのストロークが大きくなる。そのため、急操作モードに切換ると、微調整モードより操作レバー31の操作量に対するパイロット圧の増加量が大きくなる。これにより、アーム14を下方に素早く揺動させてバケット11により地面を叩きつけるドハ打ちが可能となる。また微調整モードに戻すと、アーム14をゆっくりと揺動させてバケット11を地面に擦りつけながら水平に動かす水平引きが可能となる。
【0052】
本実施の形態において、電磁弁33は、電磁方向切換弁により構成されているけれども、方向切換弁の一種である電磁開閉弁であってもよい。また電磁弁33に代えてパイロット式の方向切換弁を採用してもよい。この場合、ブーム用制御弁17からブーム用油圧シリンダ20に導かれる圧油を、切換指令信号であるパイロット油として前記パイロット式の方向切換弁に入力することにより、実現することができる。
【0053】
また本実施の形態では、駆動用の油圧ポンプ16とパイロット用油圧ポンプ40とを備えているけれども、駆動用の油圧ポンプ16により、パイロット用油圧ポンプ40との機能も果たすように構成しても良い。これにより、パイロット用油圧ポンプ40が省かれ、ショベルの部品点数が削減される。従って、ショベルの構成が簡単になる。
【0054】
また、本実施の形態では、油圧アクチュエータとして油圧シリンダを用いているが、油圧モータであってもよい。
【0055】
また本実施の形態では、ショベルについて説明しているけれども、ブルドーザ及びホイルローダ等の建設機械に適用しても、同様の効果を得ることができる。
【0056】
なお、本発明は、実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 ショベル
16 油圧ポンプ
17 ブーム用方向流量制御弁
18 バケット用方向流量制御弁
18b 第1のパイロットポート
18c 第2のパイロットポート
19 アーム用方向流量制御弁
19b 第1のパイロットポート
19c 第2のパイロットポート
20 ブーム用油圧シリンダ
21 バケット用油圧シリンダ
22 アーム用油圧シリンダ
30 パイロット切換機構
31 操作レバー
33 電磁弁
34 減圧弁
35 パイロット用方向切換弁
42 主通路
45 副通路
46a 検出手段
47 第2のパイロット通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータを駆動するための第1の操作手段の操作量に応じて操作弁から出力される油圧をパイロットポートに入力し、前記パイロットポートのパイロット圧に応じて前記油圧アクチュエータに流れる圧油の流量を変えるパイロット切換機構付き流量制御弁であって、
パイロット用油圧ポンプからの油圧を、前記操作弁からの油圧に応じた圧力に減圧して出力する減圧弁と、
切換指令部から切換指令信号が出力されると、前記パイロットポートに入力される油圧を前記減圧弁から出力される油圧に切換えるパイロット圧切換弁とを備えることを特徴とするパイロット切換機構付き流量制御弁。
【請求項2】
前記パイロット用油圧ポンプに接続される第1の油通路と、
前記操作弁に接続される第2の油通路と、
前記パイロットポートに接続される第3の油通路と、
前記切換指令部から出力される前記切換指令信号に応じて、パイロット用油圧ポンプからの圧油を前記第1の油通路に流す方向切換弁とを有し、
前記減圧弁は、前記第1の油通路に介在し、前記第2の油通路の油圧に応じて前記第1の油通路の油圧を減圧し、
前記パイロット切換弁は、前記第1の油通路に圧油が流れると、前記第1の油通路と前記第3の油通路とを接続し、前記第1の油通路に流れる圧油が止められると、前記第2の油通路と前記第3の油通路とを接続するように構成されていることを特徴とするパイロット切換機構付き流量制御弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパイロット切換機構付き流量制御弁と、
少なくとも2つの前記油圧アクチュエータと、
前記少なくとも2つの油圧アクチュエータのうち優先的に駆動すべき油圧アクチュエータを駆動するための第2の操作手段と、
前記切換指令信号を出力する切換指令部とを備え、
前記パイロット切換機構付き流量制御弁は、前記複数の油圧アクチュエータのうち優先的に駆動すべき油圧アクチュエータ以外の油圧アクチュエータに夫々設けられ、
前記切換指令部は、前記第2の操作手段が操作されると、切換指令信号を出力するように構成されることを特徴とするショベル等の建設機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−185472(P2010−185472A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28184(P2009−28184)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(592216188)株式会社カワサキプレシジョンマシナリ (67)
【Fターム(参考)】