説明

パイロット式電磁弁

【課題】ダイアフラム弁体とレバー部材を分離し、応力集中が生じないダイアフラム弁体を提供する。
【解決手段】固定鉄心23及び可動鉄心24を有するパイロット弁部2と、パイロット弁部2により駆動される本体弁部8とを備えるパイロット式電磁弁1において、パイロット弁部2は、3方弁であること、外周部が弁本体に狭持されたシート状のシート弁体30を有すること、揺動軸35を中心に軸支され揺動するシーソー式レバー部材40を有すること、シート弁体30は、シーソー式レバー部材40により、第1連通路弁座54又は第2連通路弁座55に当接又は離間する。シート弁体30とシーソー式レバー部材40が分離しているため、シート弁体30がシーソー式レバー部材40から受ける応力集中が生じなくなるため耐久性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定鉄心及び可動鉄心を有するパイロット弁部と、該パイロット弁部により駆動される本体弁部とを備えるパイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より流体の流れ方向を制御することが可能な小型電磁弁に、図9に示す特許文献1の小型電磁弁100がある。
【0003】
小型電磁弁100は、第1ばね部材126により付勢される第1押圧部材121を有するアクチュエータ部120と、第2ばね部材125により付勢される第2押圧部材124を備えるパイロット弁部130を有する。
パイロット弁部130は、レバー式ダイアフラム弁体101を有する。レバー式ダイアフラム弁体101は、ダイアフラム部102とレバー部103が一体成型されている。レバー式ダイアフラム弁体101は、端部133が弁部108の下面と弁体固定部105の上面とに狭持されることにより、固定されている。レバー式ダイアフラム弁体101の中心には、揺動軸135が挿入され、揺動軸135の端部は、図示しない壁面に回転可能に保持されている。レバー式ダイアフラム弁体101は、弁部108と弁体固定部105に狭持され、その中心は揺動軸135により固定されているため、揺動運動をする。レバー式ダイアフラム弁体101は、第1連通路弁座154の軸線上にある第1押圧面106を備える。また、第2連通路弁座155の軸線上にある第2押圧面107を備える。
【0004】
アクチュエータ部120が非通電状態であるとき、第1ばね部材126のバネ力により付勢され第1押圧部材121が、第1押圧面106を押圧した状態にある。レバー式ダイアフラム弁体101は、第1連通路弁座154に当接した状態にある。
【0005】
アクチュエータ部120が通電状態にあるとき、可動鉄心109が固定鉄心104に吸引され第1押圧部材121は、上方に移動し第1押圧面106を押圧しない状態となる。反対に、第2押圧部材124は、第2ばね部材125のバネ力により付勢され第2押圧面107を押圧した状態となる。レバー式ダイアフラム弁体101は、第2連通路弁座155に当接した状態となる。
以上のように、レバー式ダイアフラム弁体101は、揺動運動により第1連通路弁座154又は第2連通路弁座155に当接又は離間する。第1連通路弁座154又は第2連通路弁座155に当接又は離間することにより、第3連通路156に流れる流体を制御する。
【0006】
一方、レバーとダイアフラム弁体が分離されたダイアフラム弁体に特許文献2に記載するバルブ200がある。図10にバルブ200の概念図を示す。バルブ200は、液体マイクロバルブに用いるものであるため、パイロット電磁弁とは技術分野及び課題が異なる。特許文献2のバルブ200は、シート状の弁体201が形成され、弁体201は、縁部206で固定され、中心部は軸部205と当接している。弁体201は、2つのアクチュエータ202うち一方を通電状態、他方を非通電状態とすることで、2つの弁座208と弁座209に当接又は離間させるものである。弁体201は、弁座方向に形成された軸部205と縁部206によりテンションが張られていることにより上下動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−57644号公報
【特許文献2】特許第2912372号
【特許文献3】実開2002−358127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の特許文献1の小型電磁弁100及び特許文献2のバルブ200には、以下の問題があった。
【0009】
すなわち、特許文献1のレバー式ダイアフラム弁体101は、レバー部103とダイアフラム部102が一体に成形されている。そのため、レバー式ダイアフラム弁体101を動作させた時に一体成型されたレバー部103とダイアフラム部102との接触部分に応力集中が発生する。応力集中が発生するとレバー式ダイアフラム弁体101が破損するケースがある。そのため、レバー式ダイアフラム弁体101に応力集中が生じないようにするために、使用圧力が0.2MPaと低いところで使用される装置に限定して、レバー式ダイアフラム弁体101を使用しなければならない。
また、特許文献2の弁体201は、縁部206と軸部205の距離が近いため弁座208又は弁座209に当接又は離間するために、弁体201の移動距離を大きくしなければならなかった。弁体201の移動距離が大きいと縁部206周辺と軸部205の周辺に応力がかかる問題がある。弁体201に応力がかかるため劣化しやすく耐久性に問題がある。
また、弁体201の移動距離が大きいことにより、アクチュエータ202の移動距離も大きくなり、消費エネルギーも大きくなるため問題となる。
【0010】
また、バルブ200は、2つのアクチュエータを用いるため大型化する問題がある。
【0011】
また、バルブ200は、液体マイクロバルブに関するものであり、パイロット式電磁弁にそのまま利用することは困難である。パイロット式電磁弁は3方弁であるのに対して、バルブ200は、2方弁であるため、そのまま利用することができない。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ダイアフラム弁体とレバー部材を分離し、応力集中が生じないダイアフラム弁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係るパイロット式電磁弁は、以下の構成を有する。
(1)固定鉄心及び可動鉄心を有するパイロット弁部と、該パイロット弁部により駆動される本体弁部とを備えるパイロット式電磁弁において、前記パイロット弁部は、3方弁であること、外周部が弁本体に狭持されたシート状のシート弁体を有すること、揺動軸を中心に軸支され揺動するシーソー式レバー部材を有すること、前記シート弁体は、前記シーソー式レバー部材により、第1連通路弁座又は第2連通路弁座に当接又は離間すること、を特徴とするものである。
(2)(1)に記載するパイロット式電磁弁において、前記シート弁体と前記シーソー式レバー部材が分離しており、別材質であること、を特徴とするものである。
(3)(1)又は(2)に記載するパイロット式電磁弁において、前記シート弁体の厚みが一様であって、0.3mm〜1.0mmであること、を特徴とするものである。
(4)(1)乃至(3)のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、前記シーソー式レバー部材のうち前記揺動軸から離れた端部を押圧すること、を特徴とするものである。
(5)(1)乃至(4)のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、前記シート弁体の材質は、繊維入りのニトリルゴム、又は、繊維入りのフッ素ゴム、であること、を特徴とするものである。
(6)(1)乃至(5)のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、前記シート弁体の繊維が、トリコット織り状であること、を特徴とするものである。
(7)(1)乃至(6)のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、前記シーソー式レバー部材と前記シート弁体は、係合していること、を特徴とするものである。
(8)(1)乃至(7)のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、本体弁部に取り付けられ、パイロット弁部を固定するパイロット流路部を有すること、パイロット弁部がパイロット流路部に固定された状態で180度向きを変えることにより、前記パイロット式電磁弁がノーマルクローズ状態となること、ノーマルオープン状態となること、の切り替えが可能なこと、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
上記パイロット式電磁弁の作用及び効果について説明する。
(1)固定鉄心及び可動鉄心を有するパイロット弁部と、パイロット弁部により駆動される本体弁部とを備えるパイロット式電磁弁において、パイロット弁部は、3方弁であること、外周部が弁本体に狭持されたシート状のシート弁体を有すること、揺動軸を中心に軸支され揺動するシーソー式レバー部材を有すること、シート弁体は、シーソー式レバー部材により、第1連通路弁座又は第2連通路弁座に当接又は離間することにより、シート弁体とレバー部材が分離する。そのため、特許文献1と比較してシート弁体がシーソー式レバー部材から受ける応力集中が生じなくなるため耐久性を向上させることができる。
【0015】
また、分離したことにより、シート弁体がシーソー式レバー部材から受ける応力集中が生じなくなるため、耐圧性を向上させることができる。
(2)シート弁体とシーソー式レバー部材が分離しており、別材質であることにより、流体と非接触のシーソー式レバー部材については、材質を選ばず適用することができるため、応力集中に強い材質を適用できる。
(3)シート弁体の厚みが一様であって、0.3mm〜1.0mmであることにより、小さな力でシート弁体を動作させることができるため、省電力でシート弁体を動作させることができる。
(4)シーソー式レバー部材のうち揺動軸から離れた端部を押圧することにより、小さな力でシーソー式レバー部材を動作させることができるため、小さな磁力で動作可能であるので、省電力化、及び、小型化をすることができる。
(5)シート弁体の材質は、繊維入りのニトリルゴム、又は、繊維入りのフッ素ゴム、であることにより、シート弁体が0.3mm〜1.0mmであっても、繊維が素材そのものの強度を上げることができる。そのため、シート弁体の耐久性及び耐圧性を向上させることができる。
(6)シート弁体の繊維が、トリコット織り状であることにより、シート弁体が0.3mm〜1.0mmであっても、シート弁体の強度を上げることができる。そのため、シート弁体の耐久性及び耐圧性を向上させることができる。
(7)シーソー式レバー部材とシート弁体は、係合していることにより、シート弁体はレバー部材の上方向の動きと同調するため、シート弁体が弁座に固着した場合でも、シート弁体を固着した弁座から引離すことができる。
(8)本体弁部に取り付けられ、パイロット弁部を固定するパイロット流路部を有すること、パイロット弁部がパイロット流路部に固定された状態で180度向きを変えることにより、パイロット式電磁弁がノーマルクローズ状態となること、ノーマルオープン状態となること、の切り替えが可能なことにより、ノーマルオープン又はノーマルクローズの状態にできる。それにより、ノーマルオープンのダイアフラム弁及びノーマルクローズのダイアフラム弁の両方を予備として持つ必要がなくなり、部品コストを削減することができる。また、使用者が自由にノーマルオープン又はノーマルクローズとすることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係るパイロット式電磁弁1(ノーマルクローズ)のうちシート弁体30が第2連通路弁座55に当接し、ダイアフラム主弁体9が閉弁時の断面図である。
【図2】第1実施形態に係る図1のパイロット式電磁弁1のうちM部の拡大図である。
【図3】第1実施形態に係るパイロット式電磁弁1(ノーマルクローズ)のうちシート弁体30が第1連通路弁座54に当接し、ダイアフラム主弁体9が閉弁時の断面図である。
【図4】第1実施形態に係る図3のパイロット式電磁弁1のうちN部の拡大図である。
【図5】第1実施形態に係るパイロット式電磁弁1(ノーマルクローズ)のうちシート弁体30が第1連通路弁座54に当接し、ダイアフラム主弁体9が開弁時の断面図である。
【図6】第2実施形態に係るパイロット式電磁弁1B(ノーマルオープン)の開弁時の断面図である。
【図7】第1実施形態に係る図1のパイロット式電磁弁1のうちM部の拡大図であり、レバー式ダイアフラム弁及びシーソー弁体の変形例1である。
【図8】第1実施形態に係る図1のパイロット式電磁弁1のうちM部の拡大図であり、レバー式ダイアフラム弁及びシーソー弁体の変形例2である。
【図9】従来技術に係る電磁弁100の断面図である。
【図10】従来技術に係るバルブ200の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係るパイロット式電磁弁の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1実施形態)
<パイロット式電磁弁の全体構成>
図1には、本発明に係るパイロット式電磁弁1(ノーマルクローズ)のうちシート弁体30が第2連通路弁座55に当接し、ダイアフラム主弁体9が閉弁時の断面図を示す。図2には、本発明に係る図1のパイロット式電磁弁1のうちM部の拡大図を示す。図3には、本発明に係るパイロット式電磁弁1(ノーマルクローズ)のうちシート弁体30が第1連通路弁座54に当接し、ダイアフラム主弁体9が閉弁時の断面図を示す。図4には、本発明に係る図3のパイロット式電磁弁1のうちN部の拡大図を示す。図5には、本発明に係るパイロット式電磁弁1(ノーマルクローズ)のうちシート弁体30が第1連通路弁座54に当接し、ダイアフラム主弁体9が開弁時の断面図を示す。
【0019】
図1に示すように、パイロット式電磁弁1は、パイロット弁部2、本体部8(パイロット流路部5、本体上部6、本体下部7)、ダイアフラム主弁体9により構成されている。
【0020】
図1に示すように、図中最下部に本体下部7があり、その上に、本体上部6、パイロット流路部5、パイロット弁部2が係合されている。
[パイロット弁部の構成]
図1に示すように、パイロット弁部2は、カバー21に覆われている。カバー21の側面には、配線28が接続されている。パイロット弁部2は、中空円筒状コイルボビン26に導線が巻かれたコイル22が形成され、コイルボビン26の中空部の一端には、固定鉄心23が固設され、他端には可動鉄心24が非磁性体であるカラー25により摺動可能に保持されている。可動鉄心24の先端には、第1押圧部材29を備える。第1押圧部材29には、復帰ばね27の一端が係合されており、復帰ばね27の他端はカラー25に係合されている。可動鉄心24は、コイル22に対して非通電時には、復帰ばね27の付勢力により、固定鉄心23とは反対側へ付勢される。可動鉄心24の先端の第1押圧部材29は、シーソー式レバー部材40を押圧する。
【0021】
揺動軸35を中心として、第1押圧部材29が押圧するシーソー式レバー部材40の反対側には、シーソー式レバー部材40を押圧する第2押圧部材36がある。第2押圧部材36には、ばね37の一端が係合されており、ばね37の他端はカラー25を含むカバー21の端面に係合されている。
図2に示すように、ばね37のばねの付勢力は、復帰ばね27の付勢力よりも小さいため、コイル22に非通電時においては、シーソー式レバー部材40は、第1押圧部材29側に傾いた状態となり、シート弁体30を第2連通路弁座55に対して当接させている。そのため、第1連通路51からの流体は、第2連通路52へは流れず、主弁室上部58へ流入する。
【0022】
[シート弁体の構成]
図2に示すように、シート弁体30は、0.3mm〜1.0mmの薄板形状をしている。シート弁体30が、0.3mm〜1.0mmの厚みが一様である薄板状であるため、小さい力でシート弁体30を動作させることができるため、省電力でシート弁体30を動作させることができる。1.0mm以上であると、厚みが増すことになり弁開又は弁閉動作が悪くなる。一方、0.3mm未満であると、極薄板形状となり、強度が落ちるため、耐久性及び耐圧性が悪くなる。
シート弁体30は、繊維入りのニトリルゴム、又は、繊維入りのフッ素ゴムからなる。シート弁体30は、繊維入りの素材を使用することにより、繊維が素材そのものの強度を上げるため、耐久性及び耐圧性を上げることができる。シート弁体30は、トリコット織り又は平織等の織り目により構成される。トリコット織り又は平織等の折り目を有し、強度が増す。そのため、応力集中が生じてもシート弁体30は、劣化しにくい。したがって、シート弁体30を高寿命化することができる。さらに、応力集中を低減することができるため高耐圧性を実現できる。
【0023】
シート弁体30は、製造が容易であるため安価に製造することができる。なぜならば、素材は、1枚のニトリルゴムのシート、又は、1枚のフッ素ゴムのシートを材料とするものであり、かつ厚みが一様である薄板状であるため、素材をそのまま切断加工だけで製造することができるからである。
【0024】
シート弁体30は、パイロット弁部2とパイロット流路部5により固定されている。さらに、パイロット流路部5の固定凸部50が形成される。シート弁体30は、変形可能なニトリルゴム、又は、フッ素ゴムにからなる。そのため、固定凸部50が形成されることにより、パイロット弁部2とパイロット流路部5が接続すると、シート弁体30の端部33は変形し固定凸部50が食い込み固定される。
【0025】
[レバー部材の構成]
図2に示す、シーソー式レバー部材40は、弾性部材及び非弾性体からなる。シーソー式レバー部材40は横長の略直方体形状をしている。シーソー式レバー部材40のうち、第1連通路弁座54とシート弁体30を挟んで当接する部分には、第1押圧部41が形成されている。シーソー式レバー部材40のうち、第2連通路弁座55とレバー式ダイアフラム弁体30を挟んで当接する部分には、第2押圧部42が形成されている。第1押圧部41及び第2押圧部42は、略直方体形状から突出した凸形状である。シーソー式レバー部材40の、端部を端部43とする。
シーソー式レバー部材40の中心には、揺動軸35が挿入され、揺動軸35の端部は、図示しない壁面に回転可能に保持されている。レバー部40の中心は揺動軸35により固定され、シーソー式レバー部材40の端部43は、第1押圧部材29及び第2押圧部材36により押圧されることにより、シーソーのように揺動運動をする。シーソー式レバー部材40は、揺動運動によりシート弁体30を押圧し、シート弁体30を第1連通路弁座54又は第2連通路弁座55に当接又は離間させる。それにより、主弁室上部58に流れる流体を制御し、主弁室57内の圧力を変化させ、ダイアフラム主弁体9を開閉させる。
【0026】
図2に示すように、シート弁体30は、動作幅の小さい揺動運動により第1連通路弁座54又は第2連通路弁座55に当接又は離間するため、離間する幅は小さい。また、シート弁体30は、横幅が広いため、第1連通路51及び第2連通路52を密閉することができる。
シート弁体30は、シーソー式レバー部材40、固定鉄心23、及び、可動鉄心24の外周部34と、パイロット弁部2の中に含まれるものに流体が流入するのを防止することができる。なぜならば、図1に示すように、シート弁体30は、パイロット弁部2とパイロット流路部5との間に形成されているため、パイロット流路部5の第1連通路51及び第2連通路52から流体が流れてきても、パイロット弁部2側の外周部34には、流体は流入しないからである。
よって、シーソー式レバー部材40、固定鉄心23、及び、可動鉄心24に流体が接することがない。そのため、シーソー式レバー部材40、固定鉄心23、及び、可動鉄心24の耐食性を考慮する必要がない。したがって、シーソー式レバー部材40、固定鉄心23、及び、可動鉄心24について、磁性材の材料を問わずに材料を選ぶことができるため、小型化可能な磁性材を用いることができる。それにより、シーソー式レバー部材40、固定鉄心23、及び、可動鉄心24を小型化し、さらに、パイロット式電磁弁1を小型化することができる。さらに、安価な材料を用いることで、コストを低減することができる。
シート弁体30及びシーソー式レバー部材40は、復帰ばね27とばね37のバランスにより、動作幅の小さい揺動運動をすることができる。小さい揺動運動により第1連通路弁座54又は第2連通路弁座55に、シート弁体30が当接又は離間させる構造を採ることで、ダイアフラム主弁体9を開閉することができる。そのため、コイル22の電磁力が低くてもダイアフラム主弁体9の開閉を行うことができる。具体的には、本発明のシート弁体30及びシーソー式レバー部材40を使用するところに、従来のパイロット弁を用いた場合には、ダイアフラム弁体を開閉するのに11Wの電力が必要である。それに対して、本発明のシート弁体30及びシーソー式レバー部材40を用いることで2Wの電力でダイアフラム弁を開閉することができる。
[パイロット流路部の構成]
図1に示すように、パイロット流路部5の上面5Aから下面5Bにかけて、第1連通路51、第2連通路52が連通している。パイロット流路部5の中心部には、主弁室57の一部である主弁室上部58が形成されている。主弁室上部58は、第1連通路51、及び、第2連通路52とパイロット流路部5の上部で連通している。
【0027】
第1連通路51は、上面5Aから内部を通り、下面5Bへ連通している。第2連通路52は、上面5Aから内部を通り、下面5Bへ連通している。
【0028】
図2に示すように、パイロット流路部5の上面5Aには、固定凸部50が形成されている。固定凸部50は、シート弁体30を変形させ食い込むことにより固定させることができる。
[本体上部の構成]
図1に示すように、上面6Aには、主弁室57の一部である主弁室下部59が形成されている。主弁室下部59の中心には、弁孔64が形成されている。
主弁室57は、パイロット流路部5と本体上部6が係合してできる主弁室上部58と主弁室下部59により構成されている。
【0029】
ダイアフラム主弁体9の取手部91と嵌合し取手流路92と連通する部分には、第1流路連通路61の一端が連通している。
取手部93と嵌合し取手流路94と連通する部分には、第2流路連通路62の一端が連通している。第2流路連通路62の他端は、第2流路72に連通している。
[ダイアフラム弁の構成]
図1に示すように、取手部91に形成された取手流路92は、第1連通路51及び第1流路連通路61と連通する。取手部93に形成された取手流路94は、第2連通路52及び第2流路連通路62と連通する。ダイアフラム主弁体9には、ばね95の一端と係合する。ばね95の他端は、主弁室上部58の上面58aに係合している。
なお、取手部91と取手部93は、ダイアフラム主弁体9と別部品として構成することもできる。
<パイロット式電磁弁の作用・効果>
はじめに、図1を用いて、ノーマルクローズ状態のパイロット式電磁弁1について説明をする。
【0030】
図1に示すように、パイロット弁部2へ非通電状態であるため、可動鉄心24は、復帰ばね27の付勢力により第2連通路弁座55側へ付勢されている。そのため、可動鉄心24の第1押圧部材29がシーソー式レバー部材40の端部43を押圧する。第2押圧部材36もシーソー式レバー部材40の他端の端部43を押圧する。第1押圧部材29を付勢する復帰ばね27のほうが、第2押圧部材36を付勢するばね37の付勢力よりも大きいため、シーソー式レバー部材40は、第1押圧部材29の方へ揺動され、シート弁体30を第2連通路弁座55に当接させ、第2連通路52を塞ぐ。一方、第1連通路弁座54はシート弁体30が離間した状態にある。
図示しない供給源から第1流路71へ流体が流入する。流体は、第1流路連通路61、第1連通路51を通り、図2に示すように、主弁室上部58へ流入する。
【0031】
主弁室上部58へ流体が流入すると、主弁室上部58と主弁室下部59との間の圧力の差がなくなり、主弁室上部58の方が主弁室下部59より受圧面積が大きいため、ダイアフラム弁体9を閉止する力が発生する。同時に、ダイアフラム弁体9は、ばね95の付勢力により弁座63へ押圧される。
【0032】
したがって、ダイアフラム弁体9により弁孔64は塞がれているため、第1流路71から第2流路72へ流体を流入させない。
【0033】
図1に示す状態で、パイロット弁部2を通電状態とすると、図3に示すように、固定鉄心23に磁界が発生し可動鉄心24を吸引する。可動鉄心24を吸引する力は、復帰ばね27が可動鉄心24を第2連通路弁座55側へ付勢する力よりも大きいため、可動鉄心24は、固定鉄心23に吸引される。それにより、第1押圧部材29を押圧する復帰ばね27の付勢力は作用しなくなる。そのため、ばね37により、シーソー式レバー部材40は、第2押圧部材36の方へ揺動され、シート弁体30を第1連通路弁座54に当接させ、第1連通路51を塞ぐ。一方、第2連通路弁座55はシート弁体30が離間した状態にある。
図示しない供給源から第1流路71へ流体が流入する。図3に示すように、流体は、第1流路連通路61、第1連通路51へ流入する。しかし、第1連通路51は、シート弁体30が当接しており、第1連通路51から、主弁室上部58へ流体が流入することがない。一方、図4に示すように主弁室上部58の流体Xは、第2連通路52へと流れ、図3に示す、第2流路連通路62、第2流路72へ流れる。主弁室上部58の流体が流れることにより、主弁室上部58内の圧力が主弁室下部59の圧力よりも低くなる。
図5に示すように、主弁室上部58と主弁室下部59の間に圧力差が生じることでダイアフラム弁体9が、圧力が高い主弁室下部59から押し上げられる。その際の押し上げ力は、ばね95の付勢力よりも大きいため、ダイアフラム弁体9は弁座63から離間した状態となる。
したがって、ダイアフラム弁体9により弁孔64は塞がれないため、第1流路71から第2流路72へ流体を流入させることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係るパイロット式電磁弁1B(ノーマルオープン)の開弁時の断面図を示す。第1実施形態のパイロット式電磁弁1と比較して、パイロット弁部2とパイロット流路部5の向きが、ダイアフラム弁体9の中心を軸に180度反対となることにより、ノーマルオープンの状態となる構成以外異なるところはない。
図6に示すように、第1に、パイロット流路部5とパイロット弁部2を本体部8から取り外すこと、第2に、パイロット流路部5とパイロット弁部2を横に180度向きを変えること、第3にパイロット流路部5とパイロット弁部2を本体部8に取り付けること、の3段階の手順により、ノーマルオープンの状態又はノーマルクローズの状態とすることができるため、動作方式の変更が容易である。
また、パイロット弁部2とパイロット流路部5を横に180度向きを変えた場合、パイロット弁部2の配線28の向きも180度変わるため、配線の位置によりノーマルオープン又はノーマルクローズか一見して確認することができる。
また、図示しないが、復帰ばね27により押圧される第1押圧部材29とばね37により押圧される第2押圧部材36の位置を、揺動軸35を中心に反対の位置とすることにより、図1に示す、ノーマルクローズの状態のパイロット式電磁弁1をノーマルクローズの状態のパイロット式電磁弁とすることができる。
【0035】
以上、詳細に説明したように、本実施例によれば、以下の作用効果を生じさせる。
固定鉄心23及び可動鉄心24を有するパイロット弁部2と、本体弁部とを備えるパイロット式電磁弁1において、パイロット弁部2は、3方弁であること、薄板状のシート弁体30を有すること、揺動軸35を中心に軸支され揺動するシーソー式レバー部材40を有すること、シート弁体30は、シーソー式レバー部材40により、第1連通路弁座54又は第2連通路弁座55に当接又は離間することにより、シート弁体30とシーソー式レバー部材40が分離するため、シート弁体30に応力集中が生じなくなり耐久性を向上させることができる。
【0036】
また、分離したことにより応力集中が生じなくなるため、耐圧性を向上させることができる。
シート弁体30とシーソー式レバー部材40が分離していることにより、応力集中がなくなり耐久性を向上させることができる。
また、シート弁体30は、シーソー式レバー部材40、固定鉄心23、及び、可動鉄心24とパイロット弁部2の内部に部材に流体が流入し流体が接触するのを防止することができる。なぜならば、シート弁体30は、パイロット弁部2とパイロット流路部5との間に形成されており、パイロット流路部5の第1連通路51及び第2連通路52から流体が流れてきても、パイロット弁部2側の外周部34には、流体は流入しないからである。
また、シート弁体30とシーソー式レバー部材40を分離していることにより、シーソー式レバー部材40、固定鉄心23、及び、可動鉄心24の耐食性を考慮することはない。したがって、磁性材の材料を問わずに材料を選ぶことができるため、小型化可能な磁性材を用いることにより、シーソー式レバー部材40、固定鉄心23、及び、可動鉄心24を小型化し、さらに、パイロット式電磁弁1を小型化することができる。または、安価な材料を用いることで、コストを低減することができる。
シート弁体は、フラットであることにより、材料を選ばず適用することができるため、応力集中に強い強度を有するものを適用できる。
【0037】
また、フラットであることにより、製造が容易であるため安価に製造することができる。なぜならば、フラットな形状であるため、材料をそのまま切断加工するだけで製造することができるからである。
揺動軸35から離れたシーソー式レバー部材40の端部43を押圧することにより、小さな磁力でのシーソー式レバー部材40を動作させることが可能となり、低消費電力化、及び、小型化をすることができる。
シート弁体30及びシーソー式レバー部材40は、復帰ばね27とばね37のバランスで、動作幅の小さい揺動運動を行うことができる。それにより、第1連通路弁座54又は第2連通路弁座55に、当接又は離間させる構造を採ることができ、ダイアフラム主弁体9を開閉する。動作幅の小さい揺動運動によるため、コイル22の電磁力が低くてもダイアフラム主弁体9の開閉を行うことができる。具体的には、本発明のシート弁体30及びシーソー式レバー部材40を使用するところに、従来のパイロット弁を用いた場合には、ダイアフラム弁体を開閉するのに11Wの電力が必要である。それに対して、本発明のシート弁体30及びシーソー式レバー部材40を用いることで2Wの電力でダイアフラム弁を開閉することができる。
シート弁体30は、繊維入りのニトリルゴム、又は、繊維入りのフッ素ゴム、であることにより、強度が増すため、応力集中が生じてもシート弁体30は、劣化しにくい。したがって、シート弁体30を高寿命化することができる。さらに、応力が低減するため高耐圧性を実現できる。
シート弁体30は、トリコット織り又は平織りであることにより、シート弁体30の強度が増すため、応力集中が生じてもシート弁体30は、劣化しにくい。したがって、シート弁体30を高寿命化することができる。さらに、応力が低減するため高耐圧性を実現できる。応力集中が生じても劣化しにくい。
シート弁体30は、0.3mm〜1.0mmであることにより、少ない力でシート弁体30を動作させることができるため、省電力化することができる。
シーソー式レバー部材40とシート弁体30は、お正月休みなどで、長期休みの場合には、シート弁体30が、弁座54又は弁座55に固着する場合も考えられる。
しかし、シーソー式レバー部材40とシート弁体30とがお互い当接する部分で係合又は接着されていることにより、シーソー式レバー部材40とシート弁体30は同一の上方向の運動をする。シート弁体30がシーソー式レバー部材40と同じ上方向の動きをすれば、シート弁体30が弁座54又は弁座55に固着した場合でも、シーソー式レバー部材40の上方向の動運動をすることによりシート弁体30を弁座54又は弁座55から引離し固着状態を解消すことができる。
例えば、図7に示すように、シート弁体300に引掛り部を有する引掛り凸部301が形成される。また、シーソー式レバー部材302の第1押圧部304及び第2押圧部305に凹部である把持凹部303を形成する。把持凹部303には、凹部が形成されているため、引掛り凸部301の引掛り部が引掛り嵌合することができる。図7では嵌合するものを示したが、係合関係であっても同様の効果を生じる。引掛り凸部301と把持凹部303が嵌合するため、弁座54及び弁座55上のシート弁体300はシーソー式レバー部材と同一の上方向の運動をする。シート弁体300がシーソー式レバー部材302と同じ上方向の動きをすることにより、シート弁体300が弁座54又は弁座55に固着した場合でも、シート弁体300を弁座54又は弁座55から引離し固着状態を解消すことができる。
引掛り凸部301及び把持部303の嵌合する部分を弁座54及び弁座55の軸心上とする。弁座54及び弁座55の軸心上は、シーソー式レバー部材302の力を最も伝えることができる部分であるため効果的である。
また、図8に示すように、シート弁体400に凹部が形成された把持凹部401を形成し、シーソー式レバー部材402の第1押圧部404及び第2押圧部405に引っかかり部を有する引掛り凸部403を形成することができる。図8に示す場合であっても、図7に示す場合と同様の作用効果を得ることができる。
また、シート弁体とシーソー式ダイアフラム弁体を接着剤等により接着することもできる。
【0038】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で色々な応用が可能である。
【0039】
例えば、パイロット弁部2とパイロット流路部5に印をつけ、ノーマルクローズ又はノーマルオープン状態であるか一見して判断可能になる。
【0040】
例えば、主弁であるダイアフラム弁体9は、ダイアフラムに限らず、ピストン弁体でも同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 パイロット式電磁弁
2 パイロット弁部
5 パイロット流路部
6 ダイアフラム弁体固定部
8 本体弁部
9 ダイアフラム弁体
23 固定鉄心
24 可動鉄心
30 シート弁体
35 揺動軸
40 シーソー式レバー部材
54 第1連通路弁座
55 第2連通路弁座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定鉄心及び可動鉄心を有するパイロット弁部と、該パイロット弁部により駆動される本体弁部とを備えるパイロット式電磁弁において、
前記パイロット弁部は、3方弁であること、
外周部が弁本体に狭持されたシート状のシート弁体を有すること、
揺動軸を中心に軸支され揺動するシーソー式レバー部材を有すること、
前記シート弁体は、前記シーソー式レバー部材により、第1連通路弁座又は第2連通路弁座に当接又は離間すること、
を特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載するパイロット式電磁弁において、
前記シート弁体と前記シーソー式レバー部材が分離しており、別材質であること、
を特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するパイロット式電磁弁において、
前記シート弁体の厚みが一様であって、0.3mm〜1.0mmであること、
を特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、
前記シーソー式レバー部材のうち前記揺動軸から離れた端部を押圧すること、
を特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、
前記シート弁体の材質は、繊維入りのニトリルゴム、又は、繊維入りのフッ素ゴム、であること、
を特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、
前記シート弁体の繊維が、トリコット織り状であること、
を特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、
前記シーソー式レバー部材と前記シート弁体は、係合していること、
を特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうちいずれか1つのパイロット式電磁弁において、
前記本体弁部に取り付けられ、前記パイロット弁部を固定するパイロット流路部を有すること、
前記パイロット弁部が前記パイロット流路部に固定された状態で180度向きを変えることにより、前記パイロット式電磁弁が(1)ノーマルクローズ状態となること、(2)ノーマルオープン状態となること、の切り替えが可能なこと、
を特徴とするパイロット式電磁弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−31905(P2012−31905A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170639(P2010−170639)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】