説明

パウダースラッシュ成形装置のシール材取付部構造およびシール材構造

【課題】主に、シール材の交換作業の容易化を図り得るようにする。
【解決手段】取付プレート33の先端部分の装着部36が、シール材28の基部を係止可能な係止部37と、シール材28に作用されるシール荷重を受ける荷重受部38とを、別個に備え、係止部37が、各取付プレート33の先端部分の内面に形成された奥拡がりの傾斜面39であり、荷重受部38が、各取付プレート33の先端部分の先端面に形成された、外拡がりの傾斜面40であるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パウダースラッシュ成形装置のシール材取付部構造およびシール材構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルなどの内装パネルが設けられている。このような内装パネルには、パウダースラッシュ成形装置で成形された表皮材などを有するものが存在する。
【0003】
パウダースラッシュ成形装置は、粉体材料を収容可能なリザーバ容器の開口縁部に、加熱した金型をシール状態で被着し、リザーバ容器と金型とを回転させることにより、金型に粉体材料を溶融付着させて成形を行うようにしたものである。
【0004】
リザーバ容器の開口縁部には、金型に対してシール可能なシール材が、シール材取付具を介して取付けられる。
【0005】
シール材は、その先端側に、金型に対するシールが可能なシール本体部を有すると共に、その基部に、シール材取付具およびリザーバ容器の開口縁部に対する装着部を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記文献に記載されたシール材1は、図3に示すように、シリコン系の無垢材からなるゴム系材料で構成されており、中空管状のシール本体部2と、ほぼ十文字形状をした装着部3とを有している。
【0007】
図4に示すように、中空管状のシール本体部2は、比較的厚肉とされ、金型と接する上半部がほぼ半円筒形状部4とされ、装着部3側の下半部がほぼ半角筒形状部5とされている。中空管状のシール本体部2の内部空間6は、空洞とされるか、或いは、内材を挿入されるようになっている。
【0008】
ほぼ十文字形状の装着部3は、頚部7と両腕部8と脚部9とを有している。脚部9は先細形状とされている。
【0009】
また、図3に示すように、リザーバ容器の開口縁部11は、その端面(図中、上端面)に装着部3の両腕部8を直接当接支持可能なほぼ平坦部12を有している。この平坦部12の幅方向の中央部には、装着部3の脚部9を収容保持可能な凹溝部13が形成されている。この凹溝部13は、装着部3の脚部9と対応するほぼV溝形状を呈している。
【0010】
そして、シール材取付具14は、リザーバ容器の開口縁部11の内外両側面に当接配置可能な一対のL型金具15とされている(片側のみ図示している)。L型金具15は、先端に鈎状に曲った係止部分16を有している。また、L型金具15は、リザーバ容器の開口縁部11の側面に沿う本体部分17に、図中、上下方向へ延びる位置調整用の長孔18を有している。そして、この長孔18を通してリザーバ容器の開口縁部11の側面にボルト19を用いて締結し得るようにしている。
【0011】
このような構成によれば、リザーバ容器の開口縁部11における上端面の平坦部12に、シール材1の装着部3の両腕部8を当接させ、且つ、凹溝部13に脚部9を嵌合させた状態で、リザーバ容器の開口縁部11の内外両側面にシール材取付具14であるL型金具15を当接配置し、この時、L型金具15の先端の鈎状に曲った係止部分16を、シール材1の頚部7へ係止させ、最後に、長孔18に外方からボルト19を通してリザーバ容器の開口縁部11の側面に螺着することによって、シール材1が取付けられる。この時、L型金具15の上下位置は、長孔18で調整する。
【0012】
そして、リザーバ容器の開口縁部11に、加熱した金型を被着した際には、中空管状のシール本体部2がほぼ扁平に潰されることによって金型に対するシールが行われる。この時のシール荷重は、ほぼ十文字形状の装着部3の全体を通して、リザーバ容器の開口縁部11の上端面へと伝えられ、上端面がこれを受ける。
【特許文献1】特開平11−8267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に記載された構成では、シール材1におけるシール本体部2の金型と接する上半部を半円筒形状部4としていたので、シール本体部2を扁平に潰そうとしても金型との間に微小な隙間が生じるのを避けることができず、この隙間に残った粉体材料が、金型を開いた時に糸を引くため、いわゆる糸引き現象を生じ易く、不具合品発生の原因になるという問題があった。
【0014】
また、シール本体部2が中空管状であるため、細かい凹凸形状に沿わせるのが困難であり、リザーバ容器の開口縁部11に細かい凹凸形状があるような場合には、うまく適応させることができないという問題があった。
【0015】
更に、ゴム系材料で構成されたシール材1は、劣化が早く、交換頻度が高いという問題があった。
【0016】
そして、シール荷重を、リザーバ容器の開口縁部11の上端面で受けるようにしていたため、開口縁部11の上端面に対し、シール材1を浮かせて配置することができず、よって、構造的にシール材1の高さ調整(シール本体部2の金型に対するシール代の調整)ができないという問題があった。
【0017】
しかも、シール材取付具14が単なるL型金具15であったため、先端の鈎状に曲った係止部分16をシール材1の頚部7に係止させるのに手間がかかると共に、シール本体部2の金型に対するシール代を調整するのに相当の手間がかかるので、シール材1の交換が熟練を要する作業となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、パウダースラッシュ成形装置を構成するリザーバ容器の開口縁部に、金型に対してシール可能なシール材が、シール材取付具を介して取付けられ、シール材取付具が、リザーバ容器の開口縁部の内外両側面に当接配置可能な一対の取付プレートであり、一対の取付プレートの基部に、リザーバ容器の開口縁部に対してボルト締結可能なボルト締結部を有し、一対の取付プレートの先端部分に、シール材の基部を装着可能な装着部を有するパウダースラッシュ成形装置のシール材取付部構造であって、取付プレートの先端部分の装着部が、シール材の基部を係止可能な係止部と、シール材に作用されるシール荷重を受ける荷重受部とを、別個に備え、係止部が、各取付プレートの先端部分の内面に形成された奥拡がりの傾斜面であり、荷重受部が、各取付プレートの先端部分の先端面に形成された、外拡がりの傾斜面であるパウダースラッシュ成形装置のシール材取付部構造を特徴としている。
【0019】
請求項2に記載された発明では、シール材が、高さ調整機構を介して、リザーバ容器の開口縁部に、シール材取付具ごと高さ調整可能に取付けられた請求項1記載のパウダースラッシュ成形装置のシール材取付部構造を特徴としている。
【0020】
請求項3に記載された発明では、パウダースラッシュ成形装置を構成するリザーバ容器の開口縁部に、シール材取付具を介して、シール材が着脱可能に取付けられ、シール材が、その先端側に、金型に対するシールが可能なシール本体部を有すると共に、その基部に、シール材取付具に対して装着可能な装着部を有するパウダースラッシュ成形装置のシール材構造であって、シール材が、中実のスポンジ状ソフト弾性体で構成され、シール本体部が、金型と面接触可能なフラット面部と、フラット面部から基部へ向けてほぼ等幅に延びる平行部と、平行部から基部へ向けて幅が拡がる漸拡形状部とを有し、シール材の基部に設けられた装着部が、シール材取付具に係止可能な装着用係止部と、シール荷重が伝えられる荷重面とを、別個に備え、装着用係止部が、漸拡部の幅中央位置に設けられて、両側に基拡がりの係止面を有する係止用突出部であり、荷重面が、漸拡部の両幅端位置に設けられた先拡がりの傾斜面であるパウダースラッシュ成形装置のシール材構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、パウダースラッシュ成形装置を構成するリザーバ容器の開口縁部に、金型に対してシール可能なシール材が、シール材取付具を介して取付けられ、シール材取付具が、リザーバ容器の開口縁部の内外両側面に当接配置可能な一対の取付プレートであり、一対の取付プレートの基部に、リザーバ容器の開口縁部に対してボルト締結可能なボルト締結部を有し、一対の取付プレートの先端部分に、シール材の基部を装着可能な装着部を有するパウダースラッシュ成形装置のシール材取付部構造であって、取付プレートの先端部分の装着部が、シール材の基部を係止可能な係止部と、シール材に作用されるシール荷重を受ける荷重受部とを、別個に備え、係止部が、各取付プレートの先端部分の内面に形成された奥拡がりの傾斜面であり、荷重受部が、各取付プレートの先端部分の先端面に形成された、外拡がりの傾斜面であることにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0022】
即ち、取付プレートの先端部分の装着部が、シール材の基部を係止可能な係止部と、シール材に作用されるシール荷重を受ける荷重受部とを、別個に備えたことにより、係止と荷重支持とを別個に行わせるようにすることができるので、シール材の交換作業の容易化を図ることが可能となる。また、係止部と荷重受部とを取付プレートの先端部分に備えたことにより、シール材をリザーバ容器の開口縁部から離して(浮かせて)装着することが可能となる。以て、シール材を高さ調整可能に装着することが構造的に可能となる。そして、係止部が、各取付プレートの先端部分の内面に形成された奥拡がりの傾斜面であり、荷重受部が、各取付プレートの先端部分の先端面に形成された、外拡がりの傾斜面であることにより、シール材の位置ズレを防止して、安定してシール材を装着保持することが可能となる。
【0023】
請求項2の発明によれば、シール材が、高さ調整機構を介して、リザーバ容器の開口縁部に、シール材取付具ごと高さ調整可能に取付けられたことにより、高さ調整機構を用いて、シール代が一定となるように、リザーバ容器の開口縁部に対するシール材の取付け高さを、シール材取付具ごと容易に調整することができるので、シール材の交換作業に対する熟練を不要にすることや、シール材の寿命延長を図ることが可能となる。
【0024】
請求項3の発明によれば、パウダースラッシュ成形装置を構成するリザーバ容器の開口縁部に、シール材取付具を介して、シール材が着脱可能に取付けられ、シール材が、その先端側に、金型に対するシールが可能なシール本体部を有すると共に、その基部に、シール材取付具に対して装着可能な装着部を有するパウダースラッシュ成形装置のシール材構造であって、シール材が、中実のスポンジ状ソフト弾性体で構成され、シール本体部が、金型と面接触可能なフラット面部と、フラット面部から基部へ向けてほぼ等幅に延びる平行部と、平行部から基部へ向けて幅が拡がる漸拡形状部とを有し、シール材の基部に設けられた装着部が、シール材取付具に係止可能な装着用係止部と、シール荷重が伝えられる荷重面とを、別個に備え、装着用係止部が、漸拡部の幅中央位置に設けられて、両側に基拡がりの係止面を有する係止用突出部であり、荷重面が、漸拡部の両幅端位置に設けられた先拡がりの傾斜面であることにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0025】
即ち、シール材が、中実のスポンジ状ソフト弾性体で構成されることにより、ゴム系材料とした場合と比べて長寿命化を得ることができ、シール材の交換頻度を少なくすることが可能となる。また、シール材が、中実のスポンジ状ソフト弾性体で構成されることにより、細かい凹凸形状を作ることが容易となり、リザーバ容器の開口縁部に細かい凹凸形状があっても、容易に対応することができるようになる。シール本体部が金型と面接触可能なフラット面部を有することにより、金型との間に微小な隙間が生じなくなるため、いわゆる糸引きをなくし、不具合品の発生を防止・低減することができる。フラット面部から基部へ向けてほぼ等幅に延びる平行部をシール代として使用できるので、平行部の長さに応じた長寿命化を得ることができる。平行部から基部へ向けて幅が拡がる漸拡形状部を介して、漸拡形状部の両幅端位置に設けられた荷重面へと荷重を伝えることができる。また、シール材の基部に設けられた装着部が、シール材取付具に係止可能な装着用係止部と、シール荷重が伝えられる荷重面とを、別個に備えたことにより、係止と荷重支持とを別個に行わせるようにすることができるので、シール材の交換作業の容易化を図ることが可能となる。そして、装着用係止部が、漸拡部の幅中央位置に設けられて、両側に基拡がりの係止面を有する係止用突出部であり、荷重面が、漸拡部の両幅端位置に設けられた先拡がりの傾斜面であることにより、漸拡部の幅中央位置の係止用突出部に影響を与えずに、漸拡部の両幅端位置へ荷重を伝えるようにすることができる。以て、高さ調整が可能な構造を有するシール材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0027】
図1、図2は、この発明の実施例を示すものである。
【0028】
まず、構成について説明する。
【0029】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルなどの内装パネルが設けられている。このような内装パネルには、パウダースラッシュ成形装置で成形された表皮材(いわゆるパウダースラッシュ表皮)などを有するものが存在する。
【0030】
ここで、パウダースラッシュ成形装置は、特に図示しないが、粉体材料を収容可能なリザーバ容器の開口縁部に、加熱した金型をシール状態で被着し、リザーバ容器と金型とを回転させることにより、金型に粉体材料を溶融付着させて成形を行うようにしたものである。
【0031】
そして、図1に示すように、パウダースラッシュ成形装置25を構成するリザーバ容器26の開口縁部27には、金型に対してシール可能なシール材28が、シール材取付具29を介して着脱可能に取付けられる。リザーバ容器26の開口縁部27は、上端面がフラットなものとする。なお、パウダースラッシュ成形装置25及びリザーバ容器26については、上記したように全体を図示していないので(必要な場合には、上記特許文献1参照)、その部分である開口縁部27に符号を付すことによって示している。
【0032】
シール材28は、その先端側に、金型に対するシールが可能なシール本体部31を有している。また、シール材28は、その基部に、シール材取付具29に対して装着可能な装着部32を有している。
【0033】
シール材取付具29は、リザーバ容器26の開口縁部27の内外両側面に当接配置可能な一対の取付プレート33を有している。この取付プレート33は、所要の強度を確保するため、リザーバ容器26の開口縁部27とほぼ同じ肉厚のものとされる。この取付プレート33は、開口縁部27の長手方向に対しては、適宜の大きさに分割される。
【0034】
この一対の取付プレート33は、その基部に、リザーバ容器26の開口縁部27に対してボルト締結可能なボルト締結部34を有している。このボルト締結部34は、ボルト挿通孔35(丸孔)とされている。
【0035】
また、一対の取付プレート33は、その先端部分に、シール材28の基部を装着可能な装着部36を有している。
【0036】
そして、この実施例のものでは、取付プレート33の先端部分の装着部36が、シール材28の基部を係止可能な係止部37と、シール材28に作用されるシール荷重を受ける荷重受部38とを、別個に備えている。
【0037】
係止部37は、各取付プレート33の先端部分の内面に形成された奥拡がりの(図1中下方へ進むに従い外側へ拡がる)傾斜面39とされる。この傾斜面39は、シール材28の基部を挟着保持可能なものとする。
【0038】
また、荷重受部38は、各取付プレート33の先端部分の先端面に形成された、外拡がりの(図1中上方へ進むに従い外側へ拡がる)傾斜面40とされる。
【0039】
そして、シール材28が、高さ調整機構43を介して、リザーバ容器26の開口縁部27に、シール材取付具29ごと高さ調整可能に取付けられるようにする。
【0040】
高さ調整機構43として、図2に示すように、リザーバ容器26の開口縁部27に、高さ方向へ延びる長孔44を形成する。この長孔44は、各取付プレート33のボルト挿通孔35と対応して、ボルト締結部45を構成するものである。ここで、長孔44の長さが高さ調整範囲となる。なお、図2では、リザーバ容器26の開口縁部27と、その奥側に有る取付プレート33とのみを、部分的に示すようにしている(手前側の取付プレート33を外した状態)。
【0041】
一方、シール材28は、例えばシリコン系材料で独立発泡の中実のスポンジ状ソフト弾性体48で構成されるようにする。
【0042】
シール本体部31は、金型と面接触可能なフラット面部51と、フラット面部51から基部へ向けてほぼ等幅に延びる平行部52と、平行部52から基部へ向けて幅が拡がる漸拡形状部53とを有するものとする。
【0043】
また、シール材28の基部に設けられた装着部32は、シール材取付具29に係止可能な装着用係止部54と、シール荷重が伝えられる荷重面55とを、別個に備えるようにする。
【0044】
装着用係止部54は、漸拡形状部53端部の幅中央位置に設けられて、両側に基拡がりの(図1中下方へ進むに従い外側へ拡がる)係止面56を有する係止用突出部57とされる。装着用係止部54の係止面56は、取付プレート33の先端部分の内面に形成された傾斜面39に挟着状態で係止される。
【0045】
また、荷重面55は、漸拡形状部53端部の幅両端位置に設けられた先拡がりの(図1中上方へ進むに従い外側へ拡がる)傾斜面58とされる。荷重面55である傾斜面58は、取付プレート33の先端部分の先端面に形成された傾斜面40に当接支持される。
【0046】
なお、シール材28は、全体として左右対称形状とされている。
【0047】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0048】
パウダースラッシュ成形装置25を構成するリザーバ容器26の開口縁部27に、金型に対してシール可能なシール材28を、シール材取付具29を介して取付ける。
【0049】
この際、リザーバ容器26の開口縁部27の内外両側面に、一対の取付プレート33を当接配置し、リザーバ容器26の開口縁部27に形成した長孔44と、一対の取付プレート33に形成したボルト挿通孔35との間をボルト締結することにより、リザーバ容器26の開口縁部27にシール材取付具29を取付ける。
【0050】
また、一対の取付プレート33の先端部分に設けられた装着部36に、シール材28の基部を装着する。
【0051】
この際、シール材28の基部における装着用係止部54(係止用突出部57)の係止面56を、取付プレート33の先端部分の内面に形成された係止部37(傾斜面39)に、挟着状態で係止させるようにする。また、シール材28の基部における荷重面55(傾斜面58)を、取付プレート33の先端部分の先端面に形成された荷重受部38(傾斜面40)に当接支持させるようにする。
【0052】
更に、高さ調整機構43を用いて、シール材28の高さ調整を行うことにより、シール代を所定の値に設定する。この高さ調整は、長孔44に沿って、シール材28とシール材取付具29とを上下させることにより行われる。
【0053】
そして、成形時に、リザーバ容器26の開口縁部27に金型を被着すると、間に介在されたシール材28によってシールが行われる。
【0054】
この際、シール本体部31(先端)のフラット面部51が、隙間を作ることなく金型と面接触される。また、主にシール本体部31の平行部52がシール代の分だけ潰されることとなる。更に、漸拡形状部53を介して傾斜面58から取付プレート33の先端部分の先端面に形成された荷重受部38(傾斜面40)へとシール荷重が伝えられることとなる。
【0055】
こうして粉体材料を収容したリザーバ容器の開口縁部27に、加熱した金型がシール状態で被着されたら、リザーバ容器と金型とを回転させて、金型に粉体材料を溶融付着させることにより、製品(例えば、内装パネルの表皮材など)を成形する。
【0056】
この実施例によれば、取付プレート33の先端部分の装着部36が、シール材28の基部を係止可能な係止部37と、シール材28に作用されるシール荷重を受ける荷重受部38とを、別個に備え、係止部37が、各取付プレート33の先端部分の内面に形成された奥拡がりの傾斜面39であり、荷重受部38が、各取付プレート33の先端部分の先端面に形成された、外拡がりの傾斜面40であることにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0057】
即ち、取付プレート33の先端部分の装着部36が、シール材28の基部を係止可能な係止部37と、シール材28に作用されるシール荷重を受ける荷重受部38とを、別個に備えたことにより、係止と荷重支持とを別個に行わせるようにすることができるので、シール材28の交換作業の容易化を図ることが可能となる。
【0058】
また、係止部37と荷重受部38とを取付プレート33の先端部分に備えたことにより、シール材28をリザーバ容器26の開口縁部27から離して(浮かせて)装着することが可能となる。以て、シール材28を高さ調整可能に装着することが構造的に可能となる。
【0059】
そして、係止部37が、各取付プレート33の先端部分の内面に形成された奥拡がりの傾斜面39であり、荷重受部38が、各取付プレート33の先端部分の先端面に形成された、外拡がりの傾斜面40であることにより、シール材28の位置ズレを防止して、安定してシール材28を装着保持することが可能となる。
【0060】
また、シール材28が、高さ調整機構43を介して、リザーバ容器26の開口縁部27に、シール材取付具29ごと高さ調整可能に取付けられたことにより、高さ調整機構43を用いて、シール代が一定となるように、リザーバ容器26の開口縁部27に対するシール材28の取付け高さを、シール材取付具29ごと容易に調整することができるので、シール材28の交換作業に対する熟練を不要にすることや、シール材28の寿命延長を図ることが可能となる。
【0061】
そして、パウダースラッシュ成形装置25を構成するリザーバ容器26の開口縁部27に、シール材取付具29を介して、シール材28が着脱可能に取付けられ、シール材28が、その先端側に、金型に対するシールが可能なシール本体部31を有すると共に、その基部に、シール材取付具29に対して装着可能な装着部32を有するシール材28の構造であって、シール材28が、中実のスポンジ状ソフト弾性体48で構成され、シール本体部31が、金型と面接触可能なフラット面部51と、フラット面部51から基部へ向けてほぼ等幅に延びる平行部52と、平行部52から基部へ向けて幅が拡がる漸拡形状部53とを有し、シール材28の基部に設けられた装着部32が、シール材取付具29に係止可能な装着用係止部54と、シール荷重が伝えられる荷重面55とを、別個に備え、装着用係止部54が、漸拡形状部53の幅中央位置に設けられて、両側に基拡がりの係止面56を有する係止用突出部57であり、荷重面55が、漸拡形状部53の両幅端位置に設けられた先拡がりの傾斜面58であることにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0062】
即ち、シール材28が、シリコン系材料で独立発泡の中実のスポンジ状ソフト弾性体48で構成されることにより、シリコン系の無垢材からなるゴム系材料とした場合と比べて長寿命化を得ることができ、シール材28の交換頻度を少なくすることが可能となる。尚、従来のシリコン系の無垢材からなるゴム系材料は、弾性変形しにくく、また、金型との接触部は熱がこもりやすく(熱伝達性が低い)劣化しやすい。
【0063】
また、シール材28が、中実のスポンジ状ソフト弾性体48で構成されることにより、細かい凹凸形状を作ることが容易となり、リザーバ容器26の開口縁部27に細かい凹凸形状があっても、容易に対応することができるようになる。
【0064】
シール本体部31が金型と面接触可能なフラット面部51を有することにより、金型との間に微小な隙間が生じなくなるため、いわゆる糸引きをなくし、不具合品の発生を防止・低減することができる。
【0065】
フラット面部51から基部へ向けてほぼ等幅に延びる平行部52をシール代として使用できるので、平行部52の長さに応じた長寿命化を得ることができる。
【0066】
平行部52から基部へ向けて幅が拡がる漸拡形状部53を介して、漸拡形状部53端部の両幅端位置に設けられた荷重面55へと荷重を伝えることができる。
【0067】
また、シール材28の基部に設けられた装着部32が、シール材取付具29に係止可能な装着用係止部54と、シール荷重が伝えられる荷重面55とを、別個に備えたことにより、係止と荷重支持とを別個に行わせるようにすることができるので、シール材28の交換作業の容易化を図ることが可能となる。
【0068】
そして、装着用係止部54が、漸拡形状部53端部の幅中央位置に設けられて、両側に基拡がりの係止面56を有する係止用突出部57であり、荷重面55が、漸拡形状部53端部の両幅端位置に設けられた先拡がりの傾斜面58であることにより、漸拡形状部53端部の幅中央位置の係止用突出部57に影響を与えずに、漸拡形状部53端部の両幅端位置の荷重面55へ荷重を伝えるようにすることができる。以て、高さ調整が可能な構造を有するシール材28を提供することが可能となる。
【0069】
更に、上記した各構成により、リザーバ容器26の開口縁部27のフラット上端面に対して、シール材28を取付けるための溝加工などを無くすことができる。
【0070】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例にかかるシール材取付部構造を示す断面図である。
【図2】図1の高さ調整機構の部分的な側面図である。
【図3】従来例にかかるシール材取付部構造を示す斜視図である。
【図4】図3のシール材の端面図である。
【符号の説明】
【0072】
25 パウダースラッシュ成形装置
26 リザーバ容器
27 開口縁部
28 シール材
29 シール材取付具
31 シール本体部
32 装着部
33 取付プレート
34 ボルト締結部
36 装着部
37 係止部
38 荷重受部
39 傾斜面
40 傾斜面
43 高さ調整機構
48 スポンジ状ソフト弾性体
51 フラット面部
52 平行部
53 漸拡形状部
54 装着用係止部
55 荷重面
56 係止面
57 係止用突出部
58 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウダースラッシュ成形装置を構成するリザーバ容器の開口縁部に、金型に対してシール可能なシール材が、シール材取付具を介して取付けられ、
シール材取付具が、リザーバ容器の開口縁部の内外両側面に当接配置可能な一対の取付プレートであり、
一対の取付プレートの基部に、リザーバ容器の開口縁部に対してボルト締結可能なボルト締結部を有し、
一対の取付プレートの先端部分に、シール材の基部を装着可能な装着部を有するパウダースラッシュ成形装置のシール材取付部構造であって、
取付プレートの先端部分の装着部が、シール材の基部を係止可能な係止部と、シール材に作用されるシール荷重を受ける荷重受部とを、別個に備え、
係止部が、各取付プレートの先端部分の内面に形成された奥拡がりの傾斜面であり、
荷重受部が、各取付プレートの先端部分の先端面に形成された、外拡がりの傾斜面であることを特徴とするパウダースラッシュ成形装置のシール材取付部構造。
【請求項2】
シール材が、高さ調整機構を介して、リザーバ容器の開口縁部に、シール材取付具ごと高さ調整可能に取付けられたことを特徴とする請求項1記載のパウダースラッシュ成形装置のシール材取付部構造。
【請求項3】
パウダースラッシュ成形装置を構成するリザーバ容器の開口縁部に、シール材取付具を介して、シール材が着脱可能に取付けられ、
シール材が、その先端側に、金型に対するシールが可能なシール本体部を有すると共に、その基部に、シール材取付具に対して装着可能な装着部を有するパウダースラッシュ成形装置のシール材構造であって、
シール材が、中実のスポンジ状ソフト弾性体で構成され、
シール本体部が、金型と面接触可能なフラット面部と、フラット面部から基部へ向けてほぼ等幅に延びる平行部と、平行部から基部へ向けて幅が拡がる漸拡形状部とを有し、
シール材の基部に設けられた装着部が、シール材取付具に係止可能な装着用係止部と、シール荷重が伝えられる荷重面とを、別個に備え、
装着用係止部が、漸拡部の幅中央位置に設けられて、両側に基拡がりの係止面を有する係止用突出部であり、
荷重面が、漸拡部の両幅端位置に設けられた先拡がりの傾斜面であることを特徴とするパウダースラッシュ成形装置のシール材構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−168450(P2008−168450A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1318(P2007−1318)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】