説明

パウチ詰め固液混合食品の殺菌方法

【課題】殺菌時間を短縮できるとともに、褐変を防止でき、具材(固形部)が大きい場合でも適用可能であり、固形部と液部が相互になじんで良好な風味が得られる可撓性大型パウチ詰め固液混合食品の殺菌方法を提供する。
【解決手段】可撓性大型パウチに固液混合食品を秤量充填して密封し、摺動殺菌する殺菌方法であって、固液混合食品中の固形部の比率を内容総量の30〜50重量%とし、かつ固液混合食品をパウチに充填密封したときのパウチの厚みが40mmを上回り45mm以下の場合は固形部を構成する個々の具材の厚みを10mm以下とし、パウチの厚みが30mm以上40mm以下の場合は具材の厚みを15mm以下とする殺菌方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性大型パウチ詰め固液混合食品の殺菌方法に関し、特に大型パウチ詰めホワイトシチュー等の大型パウチ詰めカレーまたはシチューの殺菌に好適な殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来パウチ詰ホワイトシチューについては、個食用のものは製品厚みが薄く殺菌時間が短く済むことから、ホワイトシチューをパウチに充填密封後に静置式方法によりレトルト殺菌することが容易であり、すでに市場に製品が出回っている。しかし、内容量1〜10kg、特に1〜5kgの可撓性大型パウチ詰ホワイトシチュー等の大型パウチ詰めカレーまたはシチューについては、製品の厚みが30mm以上であって個食用パウチに比べて大幅に厚いために従来の静置殺菌法ではパウチ中心までの熱伝達に時間を要し、長い殺菌時間を必要とすることから、生産効率が悪いだけでなく、長時間殺菌によるルウ(液部)の褐変がおきて商品価値を損ねるという問題があり、いまだ商品化されていないのが現状である。
【0003】
従来、業務用大型パウチ詰め固液混合食品の殺菌方法としては、内容物への熱伝達を良くするために包材の縦横寸法を大きくして厚みを抑える方法があるが、包材コストが掛かり経済的ではない。
【0004】
また、殺菌時間を短縮するための技術として回転殺菌法がある。しかし、これを適用するためには、ヘッドスペース量の管理が必要であるが、パウチに対しヘッドスペース量を定量的に付与できる充填技術は十分には確立されていない。
【0005】
特許文献1に示されている揺動殺菌法は、殺菌時間を短縮するための技術として開示されている。また、これに関し非特許文献1では、内容物液部の粘度、充填率を適正範囲とすることで、ヘッドスペース量に無関係に殺菌時間が短縮できることが報告されている。しかし、内容物がシチューのように液部と固形部の混合体である場合については、非特許文献1では言及されておらず、特許文献1でも実施例が一つ記載されてはいるものの固形部はフレーク(具材のサイズが極めて小さい)であり、固形部の比率や具材の厚みについての適正範囲があることについては何ら記述がない。
【0006】
また特許文献2および特許文献3には、ルウ(液部)と具材(固形部)に対し別々に殺菌を施し、無菌的に両者を容器に充填する技術も検討されているが、具材がルウで煮込まれていないことから、両者の味が相互になじまず、具材を煮込んだものと比べて風味が充分でないという問題が生じる。
【0007】
さらに、固形部と液部を混合した混合物を熱交換機に通して殺菌し、無菌的に充填する方法も考案されているが、具材(固形部)が大きいものには適用できない問題がある。
【特許文献1】特開昭57−5638号公報
【特許文献2】特開平8−70832号公報
【特許文献3】特開平8−70833号公報
【非特許文献1】:荒木宗司,他:「静置式レトルトの課題と摺動式による解決」,(社)缶詰協会第56回技術大会発表
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであって、殺菌時間を短縮できるとともに、褐変を防止でき、具材(固形部)が大きい場合でも適用可能であり、固形部と液部が相互になじんで良好な風味が得られる大型パウチ詰め固液混合食品の殺菌方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記本発明の課題を解決するため、研究と実験を重ねた結果、静置殺菌法に替えて摺動殺菌法を採用し、その際固液混合食品中の固形部の内容総量に対する比率を一定範囲内に限定し、パウチの厚みに対する具材の厚みを一定の範囲内に限定して摺動殺菌を行うと、殺菌時間を大幅に短縮でき、褐変を防止できるとともに具材(固形部)が大きい場合でも適用可能であり、固形部と液部が相互になじみが良く風味が良い大型パウチ詰め固液混合食品の殺菌方法が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
上記本発明の課題を解決する第1の構成は、可撓性大型パウチに固液混合食品を秤量充填して密封し、摺動殺菌する殺菌方法であって、該固液混合食品中の固形部の比率を内容総量の30〜50重量%として摺動殺菌を行うことを特徴とするパウチ詰め固液混合食品の殺菌方法である。
【0011】
本発明の第2の構成は、第1の構成に加え、該固液混合食品を該パウチに充填密封したときの該パウチの厚みが40mmを上回り45mm以下の場合は該固形部を構成する個々の具材の厚みを10mm以下とし、該パウチの厚みが30mm以上40mm以下の場合は具材の厚みを15mm以下とすることを特徴とする殺菌方法である。
【0012】
本発明の第3の構成は、第1または第2の構成に加え、該固液混合食品はカレーまたはシチューであることを特徴とする殺菌方法である。
【0013】
本発明の第4の構成は、第3の構成に加えて、該固液混合食品はホワイトシチューであることを特徴とする殺菌方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記第1の構成によれば、可撓性大型パウチ詰め固液混合食品中の固形部の比率を、固形部・液部を合わせた内容総量を100重量%とした時の30〜50重量%として摺動殺菌を行うことにより、固形部(具材)が液部中で充分に動くことができてパウチが波打ち、熱伝達が促進されることによって殺菌時間が短縮されるとともに、完成した製品の見栄えが良く、また固形部が液部によって煮込まれることによって風味が良く、パウチ詰め固液混合食品として充分な商品価値を備えることができる。
【0015】
本発明の上記第2の構成によれば、固液混合食品を該パウチに充填密封したときの該パウチの厚みが40mmを上回り45mm以下の場合は該固形部を構成する個々の具材の厚みを10mm以下とし、パウチの厚みが30mm以上40mm以下の場合は具材の厚みを15mm以下とすることにより、固形部および液部の全体に充分な殺菌を達成するとともに固形部中心が所定殺菌値を得るまでに液部が過剰殺菌となることが防止することができ、液部の褐変を防止することができる。また、固形部の大きさは一次元の寸法(厚み)だけを上記範囲内に制限すればよく、他の2次元の寸法(縦、横)を制限する必要がないので、固形部の縦横を望みどおりの大きさにすることが可能であり、パウチにかなり大きな具材を収容することができ、殺菌方法を広い範囲の固液混合食品に適用することができる。
【0016】
本発明は広い範囲の固液混合食品に適用することができるが、特にシチュー、カレーに好適に適用することができる。特にホワイトシチューの場合は褐変が目立ち易く、商品価値を喪失し易いが、本発明の殺菌方法によれば褐変を完全に防止することができるので、極めて好ましい適用対象物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本発明の殺菌方法は、可撓性大型パウチに固液混合食品を秤量充填して密封し、摺動殺菌するものである。
【0018】
本発明は、内容量1〜10kg、特に1〜5kgの可撓性大型パウチに適用される。可撓性大型パウチであれば平パウチ、スタンディングパウチ、異形パウチなどのいずれでもよい。パウチの材料としては、可撓性の材料であれば特に限定はないが、通常大型パウチとして使用される外面側からPET(ポリエチレンテレフタレート)層、ナイロン層、アルミ箔層、ポリプロピレン層からなる4層構造のパウチ等が適用される。
【0019】
固液混合食品としては、シチューおよびカレーが例として挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明は、フレーク状・粒状より大きく、上記[0015]に記載した大きさ以内の固形物を含む固液混合食品ならばどのような食品にも適用することができる。特に固形物の大きさが上記大きさの上限に近いほど、効果を発揮し易いものである。
【0020】
パウチに内容物を充填密封した際に形成されるヘッドスペースは大気であってもよく、内容物の酸化劣化を防止する場合には、例えば、窒素ガスの他、炭酸ガスやアルゴンガスまたはこれらの混合ガスを用いて適宜ガス置換充填することができる。
【0021】
摺動殺菌法を行う装置としては、従来から使用されているクランク式または偏心カム式の摺動レトルト装置を使用することができる。
【0022】
図1は本発明の方法を実施するための装置の一例を示す断面図であり、クランク方式による殺菌棚摺動機構を示す。A1はレトルト本体、A2はレール等の支持台である。この支持台A2の上には車輪A3を介して可動台A4が装架され、この可動台A4上に固液混合食品詰め可撓性大型パウチを多数並べて収容した殺菌棚(トレー)A5が多段に積載されている。A6は覗き窓であり、レトルト本体A1に装備されている。A10はモーター、A11はモーターA10で駆動されるクランク機構であり、クランク機構A11の他端はレトルト本体A1のシール機構A9を介して可動台A4から突出させた駆動軸A8に連結されている。
【0023】
駆動時にモーターA10を駆動すればクランク機構A11によって可動台A4に収容された殺菌棚とともに水平方向にパウチが移動往復して、パウチ内の固液混合食品が流動してパウチ上面が波打ち、攪拌が行われる。このパウチの波打ち現象は、覗き窓A6から目視で確認することが出来る。
【0024】
殺菌温度については、以下の理由により高温条件が好ましい。レトルト殺菌では通常120〜121℃が採用される場合が多いが、その理由は、これより高温に設定しても製品中心部の温度上昇速度が特別大きくならず、特に表面部が長時間高温に曝されることとなるため、局部的な褐変等の品質劣化が発生するなど製品品質が大きく低下するためである。しかし、摺動殺菌法においては、内容物が攪拌されるために上記のような局部的な品質劣化が起こることがなく、高温殺菌の適用が可能である。また、一般的には、製品品質は殺菌時に受ける熱履歴が小さい方が良好である。そのため、摺動殺菌法においても、高温かつ短時間殺菌とすることが、良好な製品品質を得るうえで好ましい。この場合でいう高温というのは、例えば125℃以上のことを指すが、この温度に限定されるものではない。
【0025】
本発明においては、固液混合食品中の固形部の比率を、固形部・液部を合わせた内容総量を100重量%とした時の30〜50重量%として摺動殺菌を行うことが必要である。固液混合食品に摺動レトルト殺菌を適用した場合、液部と固形部では熱伝達の形態が異なるが、実験の結果、固形部の中心温度の上昇は、周囲の液部の温度上昇に遅れるが、静置殺菌を適用した場合における液部の中心温度の上昇よりも早く、固形入りでも摺動殺菌法による殺菌時間短縮効果を得られることが確認された。なお、固形部の重量は、固液混合になっている場合は内容物全体の重量を測った後内容物をざる等に入れて液部を洗い流して残った固形物の重量、または固液混合前の場合は固形部の重量である。
【0026】
固形部の比率を、固形部・液部を合わせた内容総量を100重量%とした時の30〜50重量%の範囲内として摺動殺菌を行うことにより、固形部(具材)が液部中で充分に動くことができ、熱伝達が促進されることによって殺菌時間が短縮されるとともに、完成した製品の見栄えが良くパウチ詰め固液混合食品として充分な商品価値を備えることができる。固形部が30%未満では、殺菌時間は短縮されるが、固形部である具材の見栄えが貧相で商品価値が低下する。また固形部が50%を超えると、摺動殺菌を行っても固形部を構成する具材の動きが悪く、熱伝達が促進されない。
【0027】
本発明においては、固液混合食品をパウチに充填密封したときのパウチの厚み(製品厚み)が40mmを上回り45mm以下の場合は該固形部を構成する個々の具材の厚みを10mm以下とし、パウチの厚みが30mm以上40mm以下の場合は具材の厚みを15mm以下とすることが必要である。これにより、固形部および液部の全体に充分な殺菌を達成するとともに固形部中心が所定殺菌値を得るまでに液部が過剰殺菌となることが防止することができ、液部の褐変を防止することができる。具材の厚みが上記の数値を超えると、必要な殺菌値を得るために殺菌時間が長くなり、このため液部が過剰殺菌となって品質の低下を生じる。例えばホワイトシチューの場合適正な殺菌時間は20分程度であるが、固形部の厚みが上記数値を超えると固形部の殺菌のために20分を超える時間が必要となり、このような長い時間をかけて殺菌を行うと液部に褐変が生じてしまう。なお、パウチの厚み40mmを上回り45mm以下の場合の方がパウチの厚み30mm以上40mm以下の場合よりも具材の厚みの上限を小さくするのは、大きなパウチの方が固液混合食品の殺菌により長い時間を必要とするので、その分だけ具材の厚みを小さくしないと褐変等の品質低下を生じるからである。なお、ここでいう固液混合食品をパウチに充填密封したときのパウチの厚み(製品の厚み)とは、パウチを平らな台の上に静置し、パウチサイズより大きいサイズ(表面積)であり、パウチに接する側の表面が平らな荷重をパウチ(製品)全体に覆うように乗せ、パウチ全体が均一に平らになった時の上記台から荷重までの間の長さを指す。本発明の実施例・比較例では5kgの荷重をかけたが、上記のような構成を満たしたものであれば、重量は適宜選ぶことが出来る。
具材の縦、横の寸法については、特に制限はなく、所望の寸法に設定することができる。またパウチの中では、具材はどのような方向を向いてもよい。
【0028】
以下本発明の実施例および比較例について説明する。なお、以下の説明における充填率とは、パウチに水を満注状態にした場合の重量に対する重量比である。満注重量については、パウチ容器に内容物の充填を行うとき、容器をインパルスシーラーなどによって密封(シール)が可能である水の最大内容重量を満注重量とした。
【実施例1】
【0029】
容器として、240×350×65mm(口外寸×縦外寸×底フィルム折込幅)のスタンディングパウチ(満注重量4.5kgに2kg詰:充填率約44%、製品厚み40mm)を使用した。
【0030】
液部は市販シチューのルウ(粘度700mPa・s:80℃)を1100g充填した。
【0031】
具材(固形部)は、厚み15mmにカットし、下ゆでしたニンジン、タマネギ、ジャガイモそれぞれ200g、トリ肉(ササミ)300gを充填した(固形部比率45%)。
尚、具材の厚み以外の大きさは不定形ではあるが、具材の元々の大きさに応じて輪切りや櫛形切りなどのカットを行った後、一辺が20mm〜40mm程度を目安とした見栄えのするサイズにカットして成形した。(以下の実施例、比較例も同様)
【0032】
密封時、ヘッドスペースは設けなかった(以下の実施例、比較例も同様)。
【0033】
温度測定は、パウチ中心に固定したニンジンの中心と、任意の位置のルウを、センサーを用いて温度を測定した(以下の実施例、比較例も同様)。
【0034】
殺菌は、摺動装置を取り付けたレトルト釜を使用し、シャワー式にて126℃−14.5分、振幅75mm−60往復/分とした。
また、後述するF値とは、品温の測定から求められる同業者周知の方法を用いて求めたものである。
【0035】
その結果、固形部F=11.8分、液部F=21.8分、液部色調は、L=71.2、a=−1.5、b=19.3となり、十分な殺菌効果を得つつ、5名の官能試験パネラー全員がルウに白さが残り品質良好と評価したホワイトシチューが製造できた。
尚、色調測定は、日本電色興業工業(株)製Σ90を用い、反射用セルにルウを入れて測定した。また、官能試験は、ルウ温度55〜60℃のものを5名のパネラーに供し、視覚・味・香りについてのコメントを取った。
値は、食品衛生法においてF=3.1分以上と定められているが、内容物のpHや流通条件などによって適正範囲が大きく変わる。本発明のホワイトシチューにおいては、F=10分以上を目標値とした。(以下の実施例、比較例も同様)
【実施例2】
【0036】
容器として、220×320×60mm(口外寸×縦外寸×底フィルム折込幅)のスタンディングパウチ(満注重量3.3kgに1.6kg詰:充填率約48%、製品厚み35mm)を使用した。
【0037】
液部は市販シチューのルウ(粘度1,200mPa・s:80℃)を960g充填した。
【0038】
具材(固形部)は、厚み15mmにカットし、下ゆでしたニンジン、タマネギ、ジャガイモ、トリ肉(ササミ)それぞれ160gずつ充填した(固形部比率40%)。
【0039】
殺菌は、摺動装置を取り付けたレトルト釜を使用し、シャワー式にて126℃−20.5分、振幅75mm−60往復/分とした。
【0040】
その結果、固形部F=15分、液部F=20分、液部色調L=68.7、a=−1.2、b=16.9となり、十分な殺菌効果を得つつ、5名の官能試験パネラー全員がルウに白さが残り品質良好と評価したホワイトシチューが製造できた。
【比較例1】
【0041】
容器として、220×320×60mm(口外寸×縦外寸×底フィルム折込幅)のスタンディングパウチ(満注重量3.3kgに1.6kg詰:充填率約48%、製品厚み35mm)を使用した。
【0042】
液部は市販シチューのルウ(粘度1,200mPa・s:80℃)を1280g充填した。
【0043】
具材(固形部)は、厚み15mmにカットし、下ゆでしたニンジン、タマネギ、ジャガイモ、トリ肉(ササミ)それぞれ80gずつ充填した(固形部比率20%)。
【0044】
殺菌は、摺動装置を取り付けたレトルト釜を使用し、シャワー式にて126℃−20.5分、振幅75mm−60往復/分とした。
【0045】
その結果、固形部F=21分、液部F=31分、液部色調L=66.6、a=0.9、b=20.1となり、十分な殺菌効果は得られたが、5名の官能試験パネラー全員、具材が少なく貧相で不良と評価した。
【比較例2】
【0046】
容器として、220×320×60mm(口外寸×縦外寸×底フィルム折込幅)のスタンディングパウチ(満注重量3.3kgに1.6kg詰:充填率約48%、製品厚み35mm)を使用した。
【0047】
液部は市販シチューのルウ(粘度1,200mPa・s:80℃)を640g充填した。
【0048】
具材(固形部)は、厚み15mmにカットし、下ゆでしたニンジン、タマネギ、ジャガイモ、トリ肉(ササミ)それぞれ240gずつ充填した(固形部比率60%)。
【0049】
殺菌は、摺動装置を取り付けたレトルト釜を使用し、シャワー式にて126℃−20.5分、振幅75mm−60往復/分とした。
【0050】
その結果、振盪による撹拌効果が得られず、固形部F=1.6分、液部F=2.9分となり、十分に殺菌できず、5名の官能試験パネラー全員、具材が多すぎ「あんかけ」の様でホワイトシチューとしては不自然と評価した。
【0051】
上記実施例および比較例中実施例2、比較例1、比較例2についての摺動殺菌による殺菌時間短縮効果を示すグラフを図2として示す。図2において、曲線Aは実施例2において使用したパウチに同実施例において使用したルウを1600g(ルウ100%)充填して摺動殺菌を行った例を示し、曲線Bは実施例2、曲線Cは比較例1、曲線Dは比較例2をそれぞれ示す。静置殺菌は実施例2において使用したパウチに同実施例において使用したルウ1600g(ルウ100%)充填して静置殺菌を行った場合を示す。
【0052】
図2から、実施例2は温度の上昇が静置殺菌よりも早く、摺動殺菌による殺菌時間短縮効果が得られることが判る。また、固形部の比率が60%である比較例2の場合は、温度の上昇が静置殺菌と大差がなく、摺動殺菌による殺菌時間短縮効果が得られていないことが判る。また固形部の比率が20%である比較例1の場合は、温度の上昇は静置殺菌よりも早く、摺動殺菌による殺菌時間短縮効果は得られているが、上記のとおり、官能試験で具材が少なく貧相で不良と評価されている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の方法を実施するための装置の1例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例および比較例の摺動殺菌効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性大型パウチに固液混合食品を秤量充填して密封し、摺動殺菌する殺菌方法であって、該固液混合食品中の固形部の比率を内容総量の30〜50重量%として摺動殺菌を行うことを特徴とするパウチ詰め固液混合食品の殺菌方法。
【請求項2】
該固液混合食品を該パウチに充填密封したときの該パウチの厚みが40mmを上回り45mm以下の場合は該固形部を構成する個々の具材の厚みを10mm以下とし、該パウチの厚みが30mm以上40mm以下の場合は具材の厚みを15mm以下とすることを特徴とする請求項1記載の殺菌方法。
【請求項3】
該固液混合食品はカレーまたはシチューであることを特徴とする請求項1または2記載の殺菌方法。
【請求項4】
該固液混合食品はホワイトシチューであることを特徴とする請求項3記載の殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−110227(P2010−110227A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283077(P2008−283077)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】