説明

パターン形成方法

【課題】 カラーフィルタ等、電子機器の構成要素における微細パターンを効率よく製造する製造方法を提供する。
【解決手段】 撥インキ機能を有する画線部と、インキ受容機能を有する非画線部とを有する基版上全面にインキ層を形成する工程、撥インキ機能を有するブランケットを押圧し、該基版上の撥インキ機能を有する画線部上のインキをブランケット上に転写する工程、ブランケット上のインキを被転写基材上に転写する工程を有するパターン形成方法であって、前記したインキが、顔料、樹脂、表面エネルギー調整剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤を含有するインキであることを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水無しオフセット印刷法による、電子機器向け微細パターンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のカラーフィルタや、導電性パターン、タッチパネル用レジスト膜等、各種電子機器の主要な構成要素の微細パターン製造方法として、既に凸版反転印刷法と称する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。凸版反転印刷法は、図1(a)のようにまず塗工装置1によりブランケット2上に均一な厚みのインキ塗膜3を形成する。次いで、図1(b)のように均一なインキ塗膜3が形成されたブランケット2を凸版4に押圧することにより非画線部を除去しブランケット2上に画線部を形成する。次いで、図1(c)のようにこの状態のブランケット2を基板ガラス、プラスチックシートなどから成る被印刷基材5に押圧して、ブランケット2上のインキ塗膜3を転写することにより所定のパターンを形成する。
【0003】
しかしながら、凸版反転印刷法は、ブランケットへ直接インキをベタ塗りし画線形成が可能な粘度領域までブランケット上でインキを乾燥させる必要があるため、溶剤によりブランケットのモノマー成分の溶出などのダメージを受けやすく、又、量産を見越した連続印刷適性に向いていない。更に、凸版反転印刷法では、インキ塗膜が形成されたブランケットを、凸版に押圧する過程において、凸版によりブランケットに物理的なダメージがあり、ブランケットの耐刷性が著しく低下する傾向がある。
【0004】
一方、微細パターンの製造方法として、水無しオフセット印刷法でカラーフィルタを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。水無しオフセット印刷法では、インキ塗膜を版からブランケットへ転写する際、版上でインキを予備乾燥させる為、前記したような、溶剤の揮発過程に起こる問題点を回避することができる。更に、凸版反転法に用いる凸版と比較して、水無しオフセット印刷法に用いる平版は、物理的な凹凸が極めて少ないため、版との押圧によるブランケットの物理的なダメージを回避することが出来る。
【0005】
しかしながら、通常の水無しオフセット印刷用の版を用いても、従来から知られている、水無しオフセット印刷用のインキを用いた場合、顔料が十分に微細化されていないため、カラーフィルタに求められる輝度やコントラストを達成することは出来ない。前述の先行文献にも、微細パターンを形成するために相応しく用いられる具体的なインキについての記載は無い。
【0006】
【特許文献1】特開平11−058921号公報
【特許文献2】特開平6−023948号公報
【特許文献3】特開2004−249696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、カラーフィルタ等、電子機器の構成要素における微細パターンを効率よく製造する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、撥インキ機能を有する画線部と、インキ受容機能を有する非画線部とを有する基版上全面にインキ層を形成する工程、撥インキ機能を有するブランケットを押圧し、該基版上の撥インキ機能を有する画線部上のインキをブランケット上に転写する工程、ブランケット上のインキを被転写基材上に転写する工程を有するパターン形成方法であって、前記したインキが、顔料、樹脂、表面エネルギー調整剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤を含有するインキであるパターン形成方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパターン形成方法により、インキ塗膜を基版からブランケットへ転写する際、版上でインキを乾燥させることにより、溶剤浸透によるブランケットへの化学的ダメージを防止し、且つ、平版を用いることにより、基版との押圧によるブランケットへの物理的ダメージを軽減することが可能となり、耐刷性(連続印刷適性)の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、パターン形成方法であって、
(1)撥インキ機能を有する画線部と、インキ受容機能を有する非画線部とを有する基版上全面にインキ層を形成する工程(第一工程)、
(2)撥インキ機能を有するブランケットを押圧し、該基版上の撥インキ機能を有する画線部上のインキをブランケット上に転写する工程(第二工程)、
(3)ブランケット上のインキを被転写基材上に転写する工程(第三工程)を有し、
特に、前記したインキが、顔料、樹脂、表面エネルギー調整剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤を含有するインキであることを特徴とするパターン形成方法である。
【0011】
撥インキ機能を有する画線部と、インキ受容機能を有する非画線部とを有する基版とは、インキを全面に塗布することが可能でありながら、インキ層との密着性が相対的に弱い部分(撥インキ機能を有する画線部)と、相対的に強い部分(インキ受容機能を有する非画線部)を有する基版である。
【0012】
このような基版としては、例えば、従来から知られている、所謂、水無し平版を用いることが出来る。水無し平版は、アルミニウム基板上に感光層、シリコーンゴム層を有する構造を有している。
【0013】
通常の製版工程では、画線に相当する部分のシリコーンゴム層を除去することで、パターン化されて露出した感光層がインキ受容機能を有する画線部に相当し、パターン化されて残存するシリコーンゴム層が撥インキ機能を有する非画線部に相当する。したがって、通常の水無し平版での印刷の場合、シリコーンゴム層である非画線部にはインキは付着せず、画線部のみにインキ層を有する。
【0014】
しかしながら、本発明に於いては、従来から知られている水無し平版を用いるが、画線部と、非画線部は、通常の水無し平版とは逆の構成になる。製版の段階において、画線部となるべき部分にはシリコーンゴム層を残存させ、非画線部となるべき部分について、シリコーンゴム層を除去して、感光層を露出させた基版を形成する。インキとしては、通常の水無し平版向けのインキではなく、シリコーンゴム層にも塗布することが可能なインキを用いて、基版全面にインキを塗布する(第一工程)。基版全面にインキ層を形成するものの、シリコーンゴム層、感光層と、インキ層との相対的な密着性の相違により、シリコーンゴム層上のインキ層のみ、ブランケットに転写される(第二工程)。
【0015】
すなわち、シリコーンゴム層が相対的に強い撥インキ機能を有する画線部を形成し、感光層が相対的に強いインキ受容機能を有する非画線部を形成する基版となる。
【0016】
撥インキ機能を有するブランケットとは、前記第二工程において、撥インキ機能がシリコーンゴム層よりも弱く、且つ、インキ受容機能が感光層よりも弱い、相対的に撥インキ機能を有する表面を持つブランケットである。
【0017】
このようなブランケットとしては、シリコーンゴム製のブランケットが用いられる。具体的には、株式会社金陽社製T60−A/Aブランケットや、SAM−A−C/Cブランケットが挙げられる。
【0018】
ブランケット上のインキ層が転写される被転写基材とは、例えば、カラーフィルタの透明基材、タッチパネルの透明基材等の、電子機器の各要素を構成する基材であり、具体的にはガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)やポリエステル等のフィルム挙げられる。
【0019】
本発明は、(1)撥インキ機能を有する画線部と、インキ受容機能を有する非画線部とを有する基版上全面にインキ層を形成する工程(第一工程)、(2)撥インキ機能を有するブランケットを押圧し、該基版上の撥インキ機能を有する画線部上のインキをブランケット上に転写する工程(第二工程)、(3)ブランケット上のインキ層を被転写基材上に転写する工程(第三工程)を有する。
【0020】
このような工程で、インキ層が凝集破壊を起こさずに、順次転移するためには、基版からブランケットに転移する時点に、「シリコーン層の撥インキ機能>ブランケットの撥インキ機能>感光層の撥インキ機能」であることが必要である。更に、ブランケットから被転写基材に転写する時点で、「ブランケットの撥インキ機能>基材の撥インキ機能」であることが必要である。
【0021】
本発明では、シリコーンゴム層と感光層を有する通常の水無し平版に対して、上記の性質を示すインキとして、顔料、樹脂とともに、表面エネルギー調整剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤を含有するインキを用いることを特徴としている。
【0022】
本発明のパターン形成方法に用いる、顔料、樹脂とともに、表面エネルギー調整剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤を含有するインキの特徴の一つである表面エネルギー調整剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0023】
フッ素系界面活性剤としては、メガファックF-443、F-444、F-445、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-489、F-172D、F-178K(以上、商品名 DIC(株)製)等の1種以上が用いられる。
【0024】
シリコーン系界面活性剤としては、ビックケミージャパン株式会社製のBYK-375、信越化学工業株式会社製のKF54、KF56、KF105、KF351、KF618、KF640、KF642、KF643、X40-2670、X41-1056、東レ・ダウコーニング株式会社製の67AD、SZ6030、SZ6075、SZ6083、SH28PA、DC57、DC67、DCQ2-5212、DKQ-8598、共栄社化学株式会社製のポリフロー54、ポリフロー75、ポリフロー77、ポリフローKL500、ポリフローKL505、ポリフローKL510、ポリフローKL245、グラノール450、グラノールB1484等の1種以上が用いられる。
【0025】
本発明のパターン形成方法に用いるインキの特徴の一つである速乾性有機溶剤とは、20℃における蒸気圧が1.3kPa以上の溶剤であり、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系、炭化水素系、及びカーボネート系溶剤から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0026】
具体的には、エステル系溶剤として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、アルコール系溶剤として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ケトン系溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、エーテル系溶剤として、ジエチルエーテル、1,3ジオキソラン、炭化水素系溶剤として、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、カーボネート系溶剤として、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。またこれらは、それぞれの系内及び複数の系の混合物でもよい。中でも、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、エタノール及び2―プロパノールがその蒸発速度や表面張力から見て好ましい。
【0027】
本発明のパターン形成方法に用いるインキ中に占める有機溶剤全体の割合は、5〜90質量%、好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは20〜40質量%とされ、5質量%未満では基版上でのインキ塗膜の乾燥が不十分で凸版にて画像化されなくなり、90質量%を超えると基版上でインキ塗膜が乾燥しすぎてブランケットに転写しない
【0028】
更に、本発明のパターン形成方法に用いるインキの特徴の一つである遅乾性有機溶剤とは、20℃における蒸気圧が1.3kPa未満の溶剤であり、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系、炭化水素系、及びカーボネート系から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0029】
この遅乾性有機溶剤は、凸版によりブランケットに形成され画像化されたインキ塗膜が、被印刷基材上に転写されるまで、ブランケット上に残留することで、インキの粘度が一定以上に上昇することを防ぎ、被印刷基材上に良好な画像を得ることができるようにするために用いられる。
【0030】
これら遅乾性有機溶剤は、ビヒクルの溶解性、顔料分散系への親和性を考慮し、それぞれに応じた溶剤が選択されるが、例えば次に挙げられるものが用いられる。
【0031】
エステル系溶剤として、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート等が挙げられる。
【0032】
ケトン系溶剤として、メチルイソブチルケトンが挙げられる。アルコール系溶剤として、1−ブタノール、ダイヤドール135(商品名(株)三菱レーヨン製)、3メトキシ−3メチル−1ブタノール、1−ヘキサノール、1,3ブタンジオール、1−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール等が挙げられる。
【0033】
エーテル系溶剤として、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールnプロピルエーテル、ジプロピレングリコールnプロピルエーテル、プロピレングリコールnブチルエーテル、ジピレングリコールnブチルエーテル、トリプロピレングリコールnブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。
【0034】
炭化水素系溶剤として、ソルベッソ100、ソルベッソ150(商品名 エクソン化学(株)製)が挙げられる。カーボネート系溶剤として、プロピレンカーボネートが挙げられ、その他にもN−メチルピロリドンが挙げられる。
【0035】
またこれらは、それぞれの系内及び複数の系の混合物でもよい。中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールnプロピルエーテル、ジプロピレングリコールnプロピルエーテル、プロピレングリコールnブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルが、その蒸発速度や表面張力から見て好ましい。
【0036】
また、その配合量は、全有機溶剤中の30質量%未満とされる。この配合量が30質量%を越えると、基版上からの有機溶剤の揮発が遅くなり、印刷タクトが遅くなってしまう。
【0037】
本発明のパターン形成方法に用いるインキに含有する顔料としては、例えば、本発明の主たる用途であるカラーフィルタ製造に用いる公知のカラーフィルタ用顔料が挙げられる。そのなかでも、色純度と色濃度が高く、透明性の高いものが好まれている。すなわち、顔料の分散性が高いほどこれらの特性が発揮されやすいため、必要に応じて顔料への表面処理や、分散時に顔料分散剤や界面活性剤等の助剤を加えることができる。これらの顔料には、例えば、赤、緑及び青の各色で使用できる顔料として次のものが挙げられる。顔料の種類は、カラーインデックス(C.I.)No.で示す。
【0038】
赤色顔料として、97、122、123、149、168、177、180、192、208、209、215、254等、緑色顔料として、7、36、58等、青色顔料として、15、15:1、15:3、15:6、22、60、64等が挙げられる。黒顔料として、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。また、これら赤、緑及び青顔料の色調整及びインキの流動性を改善するために、次に挙げる顔料を必要量添加することができる。例えば、黄顔料として、17、83、109、110、128、150等、紫顔料として、19、23、122等、白顔料として、18、21、27、28等、橙顔料として、38、43等が挙げられる。
【0039】
また、ブラックマトリックスを形成するためのインキに用いられる顔料には、チタンブラックが用いられる。通常、フォトレジスト法では、ブラックマトリックスに必要とされる光遮蔽度(墨の光学濃度で代用:以下OD値と言う)をより高いレベルで達成しようとすると、露光工程で充分に光が浸透せず、露光不足、現像不良を発生しやすい。ところが、この水無しオフセット印刷法では露光工程等を経ないため、フォトレジスト法のような前述の問題も発生しない。よって、高いOD値のブラックマトリックスが得られる。
【0040】
また、カラーフィルタに一般的に用いられているカーボンブラックも使用できるが、チタンブラックあるいはチタンブラックとカーボンブラックを併用した方が、チタンブラックの顔料特性から良好な顔料分散が得られ、かつ低粘度であるため、インキ中の含有量を高くできることから、TFT型液晶表示装置用カラーフィルタに要求されるOD値を薄膜で実現できるため好ましい。
【0041】
これらの顔料は、単体以外に、顔料を予め分散剤、有機溶剤に分散させた顔料分散体であっても良い。例えば、青色顔料15:6の場合には、EXCEDIC BLUE 0565(商品名、DIC社製)が使用できる。これ以外に、EXCEDIC RED 0759、EXCEDIC YELLOW 0599、EXCEDIC GREEN 0358、EXCEDIC GREEN 1160、EXCEDIC YELLOW 0648(以上いずれも商品名、DIC社製)、チタンブラック分散液BT−1CA、BT−1CB、BT−1DA、BT−1DB、BT−1DC,BT−1DD(三菱マテリアル(株)製)等を適用することができる。
【0042】
顔料のインキ中の含有量は、10〜75質量%、好ましくは15〜50質量%とされ、10質量%未満では着色度(光学濃度)が不足し、75質量%を越えると得られるインキ膜が脆くなる。
【0043】
顔料の結着剤として機能する樹脂としては、例えば、カラーフィルタに要求される耐熱性、耐熱水性、耐アルカリ性、耐酸性などの物性を満足させるため、熱黄変性の少ない熱硬化性樹脂であって、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、カルド系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上のものが使用される。
【0044】
本発明のパターン形成方法に用いるインキに含有する樹脂としては、熱硬化システムを利用する場合、カラーフィルタの製造に用いられる一般的な熱硬化性樹脂が使用できるが、他の硬化システムを利用する場合は、それぞれに最適な樹脂を選択できる。例えば、ラジカル型紫外線硬化型樹脂やカチオン型紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂なども使用できる。
【0045】
これらの樹脂の代表的なものを以下に例示する。ポリエステル系樹脂としては、「25X1892」(DIC(株)製)等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、「アクリディックA−345」(DIC(株)製)等が挙げられる。エポキシ系樹脂としては、「エピクロンP−415」、「エピクロン830」、「エピクロン840」、「エピクロン860」、「エピクロン1050」、「エピクロン3050」、「エピクロン4050」、「エピクロンHP7200L」、「エピクロンHP7200」、「エピクロンN740」、「エピクロン604」、「エピコート834ニス(固形分:80質量%)」(DIC(株)製)、「エピコート828」、「エピコート834」、「エピコート1001」「エピコート1004」(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。カルド系樹脂としては、大阪ガスケミカル株式会社製オグゾールPG、オグゾールPG-100、オグソールEG、OKP4 OKP4HTオグソールEA-0200、オグソールEA-0500、オグソールEA-1000、オグソールEA-F5003、オグソールEA-F5503等が挙げられる。メラミン系樹脂としては、「メランX81」(日立化成工業(株)製)、「サイメル202」「サイメル254」「サイメル370」「サイメル327」「サイメル325」(三井サイテック(株)製)、「スーパーベッカミンL−105−60」、「スーパーベッカミンJ−820−60」(DIC(株)製)、「ユーバン20SB」「ユーバン20SE」「ユーバン21R」「ユーバン122」「ユーバン225」(三井化学(株)製)等が挙げられる。ベンゾグアナミン系樹脂としては、「スーパーベッカミンTD−126」、「スーパーベッカミン13−535」(DIC(株)製)、「マイコート105」「マイコート106」「マイコート1128」(三井サイテック(株)製)等が挙げられる。エポキシメラミン系樹脂としては、「TCM−01メジューム」(DIC(株)製)等が挙げられる。ポリエステルメラミン系樹脂としては、「99X0207」(DIC(株)製)等が挙げられる。また、顔料を予め分散剤、有機溶剤などに分散させた顔料分散体に含まれる分散剤も樹脂として機能する場合がある。顔料分散剤としては、「アジスパーPB−711」「アジスパーPB−821」(味の素ファインテクノ(株)製)、「BYK−2000」「BYK−2001」(ビックケミージャパン(株)製)等が挙げられる。
【0046】
また、樹脂の熱黄変性は、ガラス板上に厚さ3−4μmの樹脂膜を塗工により形成し、これを250℃で30分焼成後の樹脂膜の黄変度合を明度と色度で評価し、Lおよび*bが1以下のものを熱黄変性が少ないものとし、これを満足する樹脂が好適に使用できる。
【0047】
これらの樹脂のインキ中の含有量は、10〜60質量%、好ましくは15〜50質量%とされ、10質量%未満ではカラー膜あるいはブラックマトリクス膜が脆くなり、60質量%を越えると着色度(光学濃度)が不足する。
【0048】
さらに、インキ中の顔料と樹脂との配合質量比は、固形分比率で、顔料:樹脂の体積%比で、9:1〜1:9が好ましい。ここで体積%比とは、顔料・樹脂など配合因子の比重値と配合重量比から換算したものである。配合する樹脂によっても異なるが、顔料に対して必要以上の樹脂が存在すると、その樹脂のタック性やインキ塗膜の粘弾性が大きいことにより、画像形成時に画線がビリついたりするなどシャープな画像が得られず好ましくない。一方、顔料に対しての樹脂が不足すると、被印刷基材への転写時にブランケット表面からインキ塗膜が完全に転写しないなどの不具合が生じて好ましくない。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に示す。
【0050】
(インキの調製)
GREEN0358分散液(LC−TK−0358)50.0部、「25X1892(DIC社製:ポリエステル樹脂)」4.5部、メラミンCM303(日本サイテック社製:メラミン樹脂)2.5部、メガファックTF−1159(DIC社製:フッ素系界面活性剤)0.5部、SH28PA(東レ・ダウコーニング株式会社製:シリコーン系界面活性剤)0.3部、PGMAc(プロピレングリコールモノメチルアセテート)10.0部、IPAc(イソプロピルアセテート)32.2部を混合攪拌して、実施例1インキ(カラーフィルタ向けグリーンインキ)を調製した。
【0051】
(実施例:水無しオフセット印刷)
線幅20μmのマトリックス構造のパターンで製版された水無し平版の全面にインキをダイコータで膜厚3.0μmとなるように塗工し、シリコーンブランケットを押し当て画線部をシリコーンブランケットへ100%転写させ、シリコーンブランケット上に形成されたパターンをガラスへ転写させ印刷物を得た。この印刷を300回繰り返した。
【0052】
(比較例:凸版反転印刷)
シリコーンブランケットにインキをダイコータで膜厚3.0μmとなるように塗工し、シリコーンブランケットにガラス凸版を押し当て画線部をシリコーンブランケット上に形成させ、形成されたパターンをガラスへ転写させ印刷物を得た。この印刷を300回繰り返した。
【0053】
(評価方法)
上記の、各印刷方法において、印刷50回毎に、シリコーンブランケットの剥離値を測定した。剥離値は、ブランケットにセロハン粘着テープを貼り付けプッシュプルゲージ(品番 M2D−4932A−50NA)を用いてブランケットに対して垂直の角度で引っ張ったときの値である。数値が大きいことは、ブランケットからインキの剥離が悪くなることを意味する。単位は、Nである。評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の、水無しオフセット印刷を適用したパターン形成方法によれば、従来からの凸版反転印刷法で得られていたと同程度の微細パターンを更に効率よく形成することが可能となる。カラーフィルタ、導電性パターン、タッチパネル用レジスト膜他、微細パターンを必要とする各種電子機器の構成要素の製造に広く展開できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明における従来技術としての凸版反転印刷法の一例を模式的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1 インキ塗布装置
2 ブランケット
3 インキ塗膜
4 凸版
5 被印刷基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥インキ機能を有する画線部と、インキ受容機能を有する非画線部とを有する基版上全面にインキ層を形成する工程、撥インキ機能を有するブランケットを押圧し、該基版上の撥インキ機能を有する画線部上のインキをブランケット上に転写する工程、ブランケット上のインキを被転写基材上に転写する工程を有するパターン形成方法であって、前記したインキが、顔料、樹脂、表面エネルギー調整剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤を含有するインキであることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
撥インキ機能を有する画線部と、インキ受容機能を有する非画線部とを有する基版上全面にインキ層を形成する工程と、撥インキ機能を有するブランケット押圧し、該基版上の撥インキ機能を有する画線部上のインキをブランケット上に転写する工程の間に、該インキを予備乾燥する工程を有する請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記したインキの表面エネルギー調整剤が、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤から選ばれる1種以上を含有するインキである請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記したインキの速乾性有機溶剤が、20℃における蒸気圧が1.3kPa以上であるエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系、炭化水素系、及びカーボネート系から選ばれる1種以上を含有するインキである請求項1〜3の何れかに記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記したインキの遅乾性有機溶剤が20℃における蒸気圧が1.3kPa未満であるエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系、炭化水素系、及びカーボネート系から選ばれる1種以上を含有するインキである請求項1〜4の何れかに記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記したインキ中の、速乾性有機溶剤の含有量が5〜90質量%であり、遅乾性有機溶剤の含有量が1〜30質量%であり、表面エネルギー調整剤の含有量が0.05〜5.0質量%である請求項1〜5の何れかに記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記したインキ中の、顔料と樹脂の体積%比が、9:1〜1:9である請求項1〜6の何れかに記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記したインキ中の顔料が、チタンブラック又はカーボンである請求項1〜7の何れかに記載のパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−264599(P2010−264599A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115463(P2009−115463)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】