説明

パターン形状評価方法、評価装置、及び半導体装置の製造方法

【課題】微細ラインパターン上のエッジラフネスのうち、デバイスの作成上あるいは材料やプロセスの解析上特に評価が必要となる空間周波数の成分を抽出し、指標で表す。
【解決手段】エッジラフネスのデータは十分長い領域に渡って取得し、パワースペクトル上で操作者が設定した空間周波数領域に対応する成分を積算し、測長SEM上で表示する。または、十分長い領域のエッジラフネスデータを分割し、統計処理と理論計算によるフィッティングを行って、任意の検査領域に対応する長周期ラフネスと短周期ラフネスを算出し測長SEM上で表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走査型顕微鏡を用いた非破壊観測及び画像処理による詳細な形状計測あるいは寸法計測による微細パターンの検査方法、検査装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体その他の産業における微細加工技術の向上に伴い、パターンの設計値からのわずかなずれが問題になってきた。特に、上面観察でも見てとれるような二次元的な形状の劣化や寸法変動は、デバイスの性能に大きな影響を与える。そこで、エッジラフネスやCD変動量(ウエハ面内のCD均一性やウエハ間のCDばらつきなど)をより正確に計測・評価する必要が生じた。例えば、トランジスタのゲートに発生するエッジラフネスは、第一に、局所的な短チャネル効果を生じる。そのためトランジスタ内の平均ゲート長が設計値通りであっても、トランジスタ性能は設計値よりも悪くなる。第二に、トランジスタ内の平均ゲート長自体が、設計値からずれてしまう。
【0003】
上に述べたエッジラフネス、特にラインパターン上のエッジラフネス(ラインエッジラフネス)のトランジスタ性能への影響は、例えば非特許文献1から7に記すように、近年活発に議論されるようになった。その結果、計測装置においても、従来の寸法計測に加えてラインエッジラフネスの計測という課題が生じた。一般には、ラインエッジ位置あるいはライン幅を一定間隔で計測した系列データを統計処理して得られる、最大値と最小値の差や分布の標準偏差の3倍などが、ラインエッジラフネスの指標とされている。しかしこれらの指標一種類による判断には、二つ問題がある。第一には、サンプリング条件が異なるデータを比較することができない。非特許文献7に述べられているように、指標の値はデータのサンプリング条件(ラフネスの程度を算出するための計測領域のサイズやエッジ点を抽出するサンプリング間隔)に大きく依存するからである。例えばA,B二種類のパターンを異なる観察倍率で計測した場合1ピクセルあたりの長さや分解能が異なるため、ラインエッジラフネスを求めるためのエッジ点の検出間隔や計測領域を二種類の画像に対して等しくなるように設定するのは非常に困難である。
【0004】
このためラフネスの大小については議論をあきらめて再度計測しなおすことが多かった。このような問題は研究開発段階において生じやすい。第二に、1種類の指標ではラフネスの周期は表現できない。例えば初めに述べたゲート上のラインエッジラフネスの場合、第一の例として述べた局所的な短チャネル効果を生むラフネスは、比較的周期の短いものである。一方第二の例で述べた、平均ゲート長のずれを生むラフネスは、周期が長い。ゲート幅が短いトランジスタを作る工程では、相対的に周期の長いラフネスが大きくなる。そのため、一個一個のトランジスタの性能は劣化しないものの、全体として性能ばらつきが大きくなる。一方、ゲート幅が長いトランジスタの作成工程では、性能ばらつきは少ないものの、いずれのトランジスタにおいても短チャネル効果が生じやすくなる。
【0005】
半導体量産システムにおいて高い生産性を実現するためには、製品の性質やトランジスタ構造に合った評価を行う必要がある。そのためには、いつも一定計測条件の下でラインエッジラフネスの程度のみを計測するのではなく、空間周期の特徴を含んだ指標が必要になる。
ラインエッジラフネスの空間周期の特徴を表すには、ラインエッジ位置あるいはライン幅を一定間隔で計測した系列データをフーリエ変換し、フーリエスペクトル(振幅スペクトルないしはパワースペクトル)を表示すればよい。これは前述の第二の課題を解決するものであるが、同時に第一の課題も解決できる。系列データの計測条件によらず、フーリエスペクトルの各周波数成分の大小を比較することで、ラフネスの大小関係を判定することができる。
【0006】
研究開発においてはこれらの手法がとられており、非特許文献7から9に記すように、実際の報告例もある。しかしノイズの影響が大きいこれらのスペクトルから、目視で周波数分布に関するラインエッジラフネスの特徴を瞬時に把握することは難しい。ノイズの多いフーリエスペクトルを目視で比較検討することは、時間がかかる上、見る人によって異なる結果が得られる可能性がある。簡単に周波数分布の特徴を表す指標が必要になる。特に大量生産における検査工程では、そのニーズはより大きい。
また従来のCD計測は、ラインエッジラフネスの存在を前提としていない。例えばラインエッジラフネスの存在下では、ライン上のどこを計測するかによって、CD値も変わる。このためウエハ面内のCD均一性やウエハ間のCD変動量の計測値がランダムに発生するラインエッジラフネスに左右されるようになり、アニール温度のばらつきや下地膜厚ばらつきに起因するCDばらつきを正しく計測できなくなっている。CD計測方法自体にも対策が必要となりつつある。
【0007】
尚、ラインエッジラフネスという言葉は、ラインパターンのエッジ位置のばらつきを意味する言葉であるが、しばしば、エッジの位置のばらつきとライン幅のラインに沿ったばらつきの両方に対して、使われる言葉である。以下、特にエッジ位置のばらつきに限った言葉としては、狭義のラインエッジラフネス、という表現を用いることとする。また特にライン幅のラインに沿ったばらつきについては、ライン幅ラフネスという表現を用いることとする。
【0008】
【非特許文献1】ダイジェスト オブ エス アイ エス ピー エー ディー 2000年、第131頁から第134頁(Digest of SISPAD 2000 (2000), pp131-134)
【0009】
【非特許文献2】アイ イー ディー エム テクニカルダイジェスト 2000年、第563頁から第567頁(IEDM Technical Digest 2000 (2000), pp563-567)
【非特許文献3】アイ イー イー イー エレクトロン デバイス レターズ 第22巻(2001年)、第287頁から第289頁(IEEE Electron Device Letters, 22(2001), pp287-289)
【非特許文献4】プロシーディングス オブ エス・ピー・アイ・イー 4689巻(2002年)、第733頁から第741頁(Proc. SPIE 4689(2002),pp733-741)
【非特許文献5】アイ イー ディー エム テクニカルダイジェスト 2002年、第303頁から第306頁(IEDM Technical Digest 2002 (2002), pp303-306)
【非特許文献6】アイ イー ディー エム テクニカルダイジェスト 2002年、第307から第310頁(IEDM Technical Digest 2002 (2002), pp307-310)
【非特許文献7】プロシーディングス オブ エス・ピー・アイ・イー 5038巻(2003年)、第689頁から第696頁(Proc. SPIE 5038(2003),pp689-696)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上に述べたような背景から、ラインエッジラフネスのフーリエスペクトルの特徴を集約した指標が必要である。またラインエッジラフネス以外のCD変動要因を正しく計測するために、ラインエッジラフネスの影響をうけないCD計測方法が必要である。
本発明が解決しようとする課題は、ラインエッジラフネスの周波数分布の特徴や、ラインエッジラフネスの成分を除いたライン幅で表される、微細ラインパターン形状の特徴を求めるための方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における最も簡単なものは、特定の周波数帯に属する成分を抜き出して表示する、というものである。微細パターンの境界となる点の位置ないしは微細パターンの寸法を基準となる直線に沿って一定間隔で計測した結果即ち、パターンエッジの系列データないしはパターン寸法の系列データをフーリエ変換して得られるフーリエ級数の絶対値の二乗すなわちパワースペクトルをP(f)と書くことにする。ここでfは空間周波数である。単位をmm-1とする。このとき、元の系列データの統計的な標準偏差sとP(f)との間には次の関係がある。
【0012】
【数1】

次にこの右辺の積算範囲のうち、着目するfの範囲を、操作者が設定する。操作者がfの積算範囲をa mm-1からb mm-1まで、と指定したら、この領域の成分scは以下の式により計算される。
【0013】
【数2】

即ち、a≦f≦bを満たす全てのP(f)の和がsc2となる。
【0014】
大量のサンプルについてこの量を計算したい場合は、検査用の観測装置上であるいは観測結果を呼び出せるよう設定したコンピュータ上で上記の手順を実行できるようにしておく。またa,bの値は検査のたびに入力しなくて済むよう、前もって設定し、その値を繰り返し自動的に呼び出して計算を行うことを可能にしておけばよい。
指標としては、sc2、sc、2sc、3sc、6scが適当である。このうちsc2は上記の計算により直接求めることができる、残りの量はsc2の平方根を求め、各々それの1倍、2倍、3倍、6倍を求めればよい。尚、操作者がどの指標を用いるかは予め設定しておく。1つの系列データと、設定されたa,bの値から得られる指標の値は検査用の観測装置あるいはコンピュータ上に表示される。また自動的に電子ファイルとして記録することが可能である。
【0015】
このような方法を用いれば、予め設定された任意の周波数領域帯のラフネスの成分を迅速に、操作者の判断を必要とせずに求め、その結果をあとでチェックできるように保存しておくことができる。
また、用いる対象パターンとしてはさまざまなパターンが可能であるが、特にラインパターンを用いるとよい。これは、データを取得する間隔が任意に設定できるためである。例えば密集ホールパターンの直径を系列データとして用いる場合は、データ間の間隔をパターンの周期と等しくとらねばならない。
【0016】
また、用いる系列データとしては、2mm以上の長さに渡る領域から得られたデータがよい。十分長い周期のラフネス成分が解析できるからである。この値の根拠は非特許文献7に示されている。この文献によれば、ラインエッジラフネスの大きさは、計測を行う領域のライン方向の長さL(本発明においては、系列データの長さに相当する)に大きく依存するが、その依存性はLが2mm以上になると極めて小さくなる。これは、ラフネスを解析する際には2mm程度までの領域を計測すればよく、また逆に、2mm程度までの領域を計測しなければ長周期のラフネス成分の挙動は分からないということを示している。また、系列データを取得する際の間隔は10nmより小さい値がよい。これは十分短い周期の成分が解析できるからである。非特許文献7によれば、L=2mmの領域のラフネスを観測する際に誤差5%以下でラフネスの大きさを求めるためには、10-20nm間隔でエッジの形状を抽出する必要がある。したがってここでは、10nm以下のサンプリング間隔が推奨される。
【0017】
また、前述の方法で、積算範囲を0.5mm-1からある一定の値までとした指標の値を長周期成分ないしは低周波数成分と定義することが可能である。また一方、積算範囲をある一定の値から100mm-1までとした指標の値を短周期成分ないしは高周波数成分と定義することが可能である。ここで述べた長周期成分計算のための積算範囲の上限や短周期成分計算のための積算範囲の下限としては、1以上10以下の値を用いるとよい。なぜならば、ラインエッジラフネスの空間周波数分布(フーリエ振幅スペクトル)は多くの場合図1に示すように、振幅が空間周波数の逆数に比例する領域と、振幅が空間周波数のm乗(ただしmの値は0から高々0.3程度)に比例する領域とから成っており、このふたつの領域の境界となる周波数(f0)が1mm-1から10mm-1の間にあるからである(尚、図1のグラフは横・縦軸とも対数プロットである)。この由来は不明だが、この領域を境に、ラフネスの発生メカニズムが変わるものと予測される。従って、ラフネスをこの境界で分離し、それぞれ数値化することは、ラフネス解析の立場から見て妥当である。このように積算範囲を統一することで、積算範囲の値の設定を簡略化できるという効果がある。尚、積算範囲の決定方法としては、他にもある。例えば、着目されるトランジスタのゲート幅wgの逆数を長周期成分計算のための積算範囲の上限や短周期成分計算のための積算範囲の下限として用いてもよい。これはラフネスの発生原因よりもむしろ、デバイスへの影響を考慮した方法といえる。
【0018】
また、特にライン幅ラフネスに対してこの方法を適用している時には、同時にf=0の成分を取り出すと、ゆらぎの影響を取り除いたライン幅を得ることができる。この値はまた、全ての系列データの相加平均と等しい。
周波数分布を反映したライン幅ラフネス評価方法としては、さらに次に示す方法がある。即ち、そのラインパターンから作成される典型的なサイズのトランジスタの、性能劣化を引き起こす短周期ラフネス成分即ち前述の第一のラフネスと、性能ばらつきを引き起こす長周期ラフネス成分即ち第二のラフネスとを算出するというものである。(この方法は狭義のラインエッジラフネスの評価方法ではない。)おおよその手順は以下のようなものである。
【0019】
まず、ラインパターン上で図2のようにライン幅の系列データw1,w2、・・・wM'を取得する。このデータが得られた観察範囲のラインに沿った方向の長さをL1とする。このM'個の値w1, w2, ・・・wM'の標準偏差を求め、s0と定義する。この値は、ゲート幅L1のトランジスタを作成したときに、トランジスタ領域内に発生するライン幅ラフネスの大きさの指標となる。
この系列データから、連続するM個のデータで構成されたグループを取り出す。グループの数をNとする。即ち、一番目のグループはw1, w2,・・・wM、二番目のグループはwM+1, wM+2, ・・・w2M、となる。ここでN及びMは
【0020】
【数3】

を満たす。M個のデータを得る観察領域の長さをL2とする。
次に、各グループについてデータの平均値と標準偏差を算出する。これによって標準偏差の値がN個得られるので、これらの平均値を求め、s1と定義する。この値は、ゲート幅L2のトランジスタを作成したときに、トランジスタ領域内に発生するライン幅ラフネスの大きさの指標となる。平均ライン幅の値がN個得られるので、これらの標準偏差を求め、s2と定義する。この値は、ゲート幅L2のトランジスタを作成したときの、CD値のトランジスタ間ばらつきの指標となる。
次に、上記の手順で得られた3点、P(L1, s0)、Q(L2, s1)、R(L2, s2)を、以下のフィッティング曲線の組でフィッティングする。
【0021】
【数4】

ここでαはフィッティングパラメータ、g(L)、h(L)は理論計算に基づいて得られる関数である。これら二つの関数形を理論計算から求めた例を以下に記す。
【0022】
まず図1に示した関数で、離散フーリエ係数の絶対値を仮定する。次に、離散フーリエ係数の位相を乱数で与える。これにより離散フーリエ係数が仮定されるので、これをフーリエ逆変換し、仮想的なライン幅ラフネスの系列データを作成することができる。実際に10mm以上の領域に対応する系列データを小さい間隔で取得することは難しいが、このような計算では、コンピュータシステムが許す限り、領域長Lを長く、間隔を小さくすることができる。
【0023】
このようにして得られた仮想的な系列データ(長さLmaxの領域に対応)の標準偏差をsmaxとする。次にこの系列データから任意のゲート幅Lのトランジスタを作成したときの、トランジスタ領域内のライン幅ラフネス指標s_intra(L)、CD値のトランジスタ間ばらつき指標s_inter(L)を計算し、
【0024】
【数5】

と定義する。但しこの場合、g(L)及びh(L)は離散フーリエ係数を仮定した際に用いられるパラメータm及びf0の関数となる。この場合、フィッティングパラメータはα、m、f0となる。尚、例としてm=0.1の時に得られるg(L)及びh(L)を図3に示す。
さらにフーリエ振幅スペクトルを他の関数形で仮定することで、より適切なフィッティング関数g(L)、h(L)を得ることも可能である。
【0025】
次に、検査対象となるパターンから作成するトランジスタのゲート幅wgと、得られたフィッティングパラメータとから、短周期ラフネスの指標3s_intra(wg)と長周期ラフネスの指標3s_inter(wg)を算出する。但し、
【0026】
【数6】

である。
【0027】
このようにして得られる3s_intra及び3s_interの値は、トランジスタ性能の分布と直結している。例えば非特許文献7で議論されている短周期ラフネス、長周期ラフネスの値として上記の具体的な手順で得られる3s_intra及び3s_interの値を用い同文献に記されている計算手順によって、容易にトランジスタ性能の分布を見積もることができる。
またこのとき、フィッティングの信頼性を高く保つためには第一に、十分長い領域の観測結果が必要であり、これには元の系列データを取得する領域の長さは2mm以上とすることが適当である。第二に、標準偏差を求めるという統計的処理をするにあたって十分なサンプル数が必要であり、これにはグループの数Nを6以上とすることが適切である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のパターン形状評価方法及びその装置は、ラインエッジラフネスのうち特にデバイス特性に重要な影響を及ぼす周波数成分を、取り出して数値化することを可能にする。デバイス特性に影響する成分の周波数帯は、デバイス構造や最終的な製品の仕様に依存するため、装置のユーザーが容易に設定を変更できるものでなくてはならないが、本発明ではそれが可能となり、製品に合ったオーダーメイドの検査が実現し、生産性が向上する。
【実施例1】
【0029】
本発明の第一の実施例を図4から図9を用いて説明する。図4は本実施例で用いた検査装置の構成を表す模式図、図5は本実施例において検査されたチップのウエハ上の位置を表す模式図、図6は観察の結果得られた二次元信号強度分布を解析する部分の手順を示すフロー、図7は検査装置のディスプレイに表示されたフーリエスペクトル、図8は測定結果の系列データをフーリエ変換して、フーリエ係数の絶対値の二乗の値を積算する範囲を指定入力するためのウインドウ、図9は図7に示されたスペクトル上に積算範囲およびパワースペクトルの積分値sc2から得られるラフネス指標3scが示された図であり、一つのラインパターンの解析が終了したときに検査装置のディスプレイに表示される評価結果である。
【0030】
本実施例では、半導体素子生産時の検査工程にて本発明装置を用いた検査を実施し、長周期ラフネスをモニターすることによって製造の歩留まりを向上した例を示す。
本実施例で記述される半導体製造プロセスでは、短チャネル効果が生じにくい構造をもつトランジスタを生産していた。そのため、周期の短いライン幅ラフネスの影響は比較的小さかった。しかし周期の長いラフネスによるトランジスタ性能のばらつきは無視できず、致命的な歩留まり低下を招く恐れがあり、リソグラフィ工程終了後の寸法検査時に長周期ラフネスをモニターする必要があった。ラフネスの指標が一定値以下のウエハは次工程に回されるが、一定値を超えたウエハはレジスト剥離を経て再度リソグラフィを行う。
【0031】
以下、本実施例の具体的な手順を示す。
まずリソグラフィ工程を終えたウエハを図4に示す検査装置に投入した。ウエハ407はステージ408上に載せられ、電子線403を照射される。ウエハ上の、検査されるチップは図5の斜線部分に示されるように決められていた。このチップ上の同じ相対座標に存在する長さ5mm、幅約100nmのラインパターンが検査対象となるパターンである。これらの各パターン上のほぼ中心位置を視野中心とするよう、ステージ408や照射電子線403が移動して、各パターンに関して検査を行った。この検査の手順は図6に示される。
【0032】
まず、工程601にてラインパターンの二次元信号強度分布を得た。ここでは二次元の画像として表示した。この際、x方向(画像向かって水平方向)は倍率15万倍、y方向(x方向に垂直な方向)は倍率5万倍であり、得られる像の視野はx方向に900nm、y方向に2700nmであった。ラインパターンがy方向にほぼ平行になるよう画像が調整されてあった。この画像に対してノイズ低減処理(工程602)を行った後、画像中央部に検査領域を設定し(工程603)、ライン幅の計測を行った(工程604)。計測箇所のy方向の間隔は7.8125nmで計測箇所数は256箇所、計測を行った領域(検査領域)のy方向の長さは2000nmであった。こうして得られるライン幅の系列データをw1, w2, ・・・w256とする。
【0033】
次に、工程605にてこれらの系列データはフーリエ変換され、フーリエ係数の絶対値A(f)が得られた。fは以下の式で表される空間周波数で、ここではその単位をmm-1とした。
【0034】
【数7】

Lは検査領域のy方向の長さで、この実施例の場合は2.0である。
【0035】
次に工程606に進み、検査装置ディスプレイ上にフーリエ振幅スペクトルと、積算範囲入力ウィンドウが表示された。またフーリエ振幅スペクトル上には、f=0に相当するフーリエ振幅から算出したライン幅平均値とライン幅分布の標準偏差の3倍即ち3sとが、それぞれCD及びLWRとして示された。前者は、ライン幅の変動成分を除いた値である。これらを図7、図8に示す。
【0036】
図8に示すように積算範囲入力ウインドウを用いて、計算量(図中Outputと表示)、積算したい空間周波数領域の下限、上限を設定できる。計算量はマウス操作によりデータのばらつきの標準偏差sc、その2倍(2sc)、3倍(3sc)、6倍(6sc)、あるいは分散(sc2)から選択できるようになっているが、デフォルトは3scであった。これは半導体製造においてラインエッジラフネスの程度を標準偏差の3倍で示すことが一般的になっていることによる。また空間周波数領域の下限欄のデフォルト値は0.5となっていた。これは前述のように、ラフネスをラインに沿って2mm以上の長さの領域で計測することが望ましいためである。また上限欄のデフォルト値は5となっていた。これは一般に長周期ラフネスを計測する必要が生じるようなゲート幅の小さいトランジスタを対象として本発明がなされたという背景による。近年のトレンドによれば、メモリなどの小さいデバイスではゲート幅が200nm程度となっている。そのため対応する空間周波数5mm-1をデフォルト値とした。
【0037】
次に図8に示された積算範囲入力ウィンドウに、積算したい空間周波数領域の下限と上限を入力した(工程607)。ここでは下限値はデフォルト値を用い0.5とし、一方上限は2と入力した。これらの値は以下のような考え方で決められた。まず前者の0.5という値は周期に換算すると2mmで、検査領域の長さに相当する。なるべく長周期ラフネスを正確に計測するため、積算範囲の下限をこれに相当する値とした。またここで用いられたレジスト材料では、そのパターンのラインエッジラフネスのフーリエ振幅スペクトルが多数求められており、パラメータf0が2程度になることが確認されていた。この生産工場においてはさまざまなゲート幅のデバイスを同時に作成しており、ゲート幅Wgに応じて長・短周期の境界を変えて寸法検査を行うことができなかっため、デバイススペクトル形状においてA(f)のf依存性が変わる周波数f0を長・短周期ラフネスの境界と定め、全てのデバイスの寸法検査において、1/f0より長い周期の成分を長周期ラフネスと定義していた。
【0038】
積算範囲が入力されると、工程608に進み、図7に示されたスペクトル上のf=0.5からf=2に相当する領域がハッチで示され、同時に画面上にパワースペクトルの積分値sc2から得られるラフネス指標3scが示された。この様子を図9に示す。計測結果は検査装置の記憶領域に保存され、このパターンの検査は終了した。
この図6に示された工程の検査が、図5に示されたチップ上の予定された全てのラインパターンに対して行われた。次に、ウエハの良否判定がなされた。
【0039】
本実施例の半導体製造工程では、CD値は95から105nmを合格とした。これは検査パターンがゲート長100nmのゲートパターンであり、ゲート長とデバイス性能との関係を予めシミュレーションした結果から、必要な性能(しきい値電圧)を得るためにはゲート長が95から105nmの範囲にあるものだけを合格とすべきであることが分かっていたためである。また3sは10nm以下を合格基準とした。これは、この基準を満たさないパターンは次工程のドライエッチングにおいてパターン形状が劣化しショートが発生することが経験的に確認されていたためである。また長周期ラフネス成分3scは2.5nm以下を合格基準とした。これは予めシミュレーションした結果から、この基準を満たさないチップでは含まれるトランジスタのうち10%以上が必要な性能をもたず、デバイスとして機能しないことが予測されていたからである。検査されたチップのパターン合計10個について、全部がこの基準を満たしている場合にウエハを良品と判定、次工程に回していた。これは歩留まり90%以上を達成するための目安として、ウエハ内で選んだ10個のチップすべてが合格となる必要があったためである。本ウエハでは上記のチップにおいて良品の基準を満たさなかったため、このウエハはリソグラフィ工程をやり直すことになった。
【0040】
このように本発明を実施することにより、早い段階で不良品になる可能性の高いウエハを取り除き、製造をやり直すことが可能になったため、歩留まりが向上するとともに廃棄ウエハが大幅に減少し環境への負荷が減らされた。
また上記の手順で得られたCD値はラインエッジラフネスの影響を殆ど受けない。そのため、ウエハ面内のCD均一性やウエハ間のCDばらつきを算出する際にこれらの値を用いて、より精確にこれらの量を算出することができた。
【0041】
尚、上記の手順を操作者なしで自動的に行うことも可能である。その場合には積算領域の入力は予めなされており、検査パターンごとに図8において数値を入力する必要はない。またチップごとに得られた検査結果は自動的にファイル化され保存される。
また上記の手順においてはディスプレイ上に表示されるスペクトルをフーリエ振幅スペクトルとしたが、パワースペクトルでもよい。実際に行う計算はパワースペクトル上の積分であることから、パワースペクトルを表示させるとより直感的に理解がしやすく、誤操作に気づきやすいという利点がある。
【実施例2】
【0042】
本発明の第二の実施例を図4及び図10を用いて説明する。図4は本実施例で用いた検査装置の構成を表す模式図である。図10は本実施例において観察の結果得られた二次元信号強度分布を解析する部分の手順を示すフローである。
【0043】
本実施例では、半導体素子生産時の検査工程にて本発明装置を用いた検査を実施し、長周期に加えて短周期ラフネスをモニターすることによって製造の歩留まりを向上した例を示す。
本実施例で記述される半導体製造プロセスでは、主としてゲート幅wgが300nm程度のトランジスタを作成しており、周期が300nmよりも長いラフネスによるトランジスタ性能のばらつきが、歩留まり低下を招く恐れがあった。同時に、周期100nm以下の細かいラフネスがレジストパターン上に存在すると、ドライエッチング時にその部分がダメージを受けて大きく削れてしまうという現象が見いだされた。このため、リソグラフィ工程終了後の寸法検査時に、周期300nm以上の長周期ラフネスと同時に周期100nm以下の短周期ラフネスをモニターする必要が生じた。
【0044】
以下、本実施例の具体的な手順を示す。尚使用した検査装置、ウエハ上のチップ配置、検査対象となるパターンは全て第一の実施例と同じである。
第一の実施例と同じように、まずリソグラフィ工程を終えたウエハを図4に示す検査装置に投入した。検査されるパターンやその位置は第一の実施例と同じであった。
各パターンに対して行われた検査内容を、図10を用いて説明する。
【0045】
まず、工程1001にてラインパターンの電子顕微鏡観察像を得た。観察倍率や視野のサイズは第一の実施例の工程601における値と同じである。この画像に対してノイズ低減処理(工程1002)を行い、検査領域を適切に設定した(工程1003)。次に工程1004に示すようにライン幅系列データを取得した。この際の条件も第一の実施例の工程604と同じである。次に工程1005に進み系列データはフーリエ変換され、工程1006にてそのスペクトルが表示された。また同時に積算範囲入力ウィンドウが表示された。
【0046】
次に示された積算範囲入力ウィンドウに、積算空間周波数領域の下限と上限を入力した(工程1007)。ここではまず長周期ラフネス指標の計算領域として各々0.5、3.3とした。これらの値は以下のような考え方で決められた。まず前者の0.5という値は周期に換算すると2mmで、検査領域の長さに相当する。これまでの研究によれば、ラフネスは2mm程度の周期までを計測すればおおよその傾向がつかめる。そこで検査領域長を2mmとし、積算範囲の下限もこれに相当する値とした。また、本ウエハ上では主としてゲート幅300nmのトランジスタを作成していたため、それよりも周期が長い成分を長周期ラフネスとして観測したかった。3.3という値は周期300nmに対応する空間周波数である。
積算範囲が入力されると、工程1008に進み、f=0.5からf=3.3に相当する領域のパワースペクトルの積分値sc2が計算され、この値から得られるラフネス指標3scが示された。
【0047】
次に、短周期ラフネス指標も求めたかったためここで終了せず(工程1009でNを選択)、工程1007に進んだ。積算領域入力ウインドウに別の値を入れた。入力した下限値は10、上限値は100であった。この下限値はドライエッチング後のパターンに大きな影響を与えると考えられる最大周期(100nm)が対応する周波数である。またノイズ低減によって周期が10nmよりも短い成分はフィルタリングされていたため、積算領域の上限をこの値が対応する周波数に設定した。
これらの数値を入力すると、工程1008に進み、短周期ラフネス指標が表示された。このパターンに対する検査はこれで終了したため工程1010に進み、上記全ての評価結果が検査装置の記憶領域に保存され、本パターンに関する検査は終了した。
この検査が、図5に示されたチップ上の予定された全てのラインパターンに対して行われた。次に、ウエハの良否判定がなされた。
【0048】
本実施例の半導体製造工程では、CD値は95から105nm、3sは10nm以下、長周期ラフネス3scは5nm以下、短周期ラフネス3scは2.5nm以下を合格基準とし、検査されたチップのパターン合計10個について、全部がこの基準を満たしている場合にウエハを良品と判定、次工程に回していた。本ウエハでは全てのチップにおいてこれらの基準が満たされたため、本ウエハは次工程であるドライエッチングに回された。
このように本発明を実施することにより、早い段階で不良品になる可能性の高いウエハを取り除き、製造をやり直すことが可能になったため、歩留まりが向上するとともに廃棄ウエハが大幅に減少し環境への負荷が減らされた。
【実施例3】
【0049】
本発明の第三の実施例を図6、図11及び図12を用いて説明する。図6は本実施例において電子顕微鏡観察像を解析する部分の手順を示すフロー、図11は本実施例において検査したサンプルのレジスト膜の下層パターン、図12は本実施例において検査したレジストパターンの例である。
【0050】
本実施例では、半導体素子生産時の検査工程にて本発明装置を用いた検査を実施し、特定の周波数をもつライン幅変動をモニターすることによって製造の歩留まりを向上した例を示す。
本実施例で記述される半導体製造プロセスでは、重要なラインパターンの層を加工するステップより前に、その下地層に、図11に示すようにゲート用のラインと垂直な方向に走る金属材料のラインパターンを形成していた。この金属パターンの上に絶縁材料を製膜し平坦になるよう加工した後、反射防止膜を形成し、レジスト膜を塗布形成し、このレジスト膜をライン状に加工する。
【0051】
しかし反射防止が不十分であると、下地の金属パターンからの反射がレジストパターンに影響し、図12に示すように、ライン幅が変動してしまう。図中の1201は反射防止膜の下層にある金属のラインパターンであり、レジストパターン1202は金属の上にあたる部分で細っている。そのためリソグラフィ工程終了後の寸法検査時に、下地の金属パターンの周期と同期するライン幅変動の成分をモニターする必要が生じた。尚、本実施例における金属パターンの画像内y方向のピッチは0.4mmであった。
【0052】
以下、本実施例の具体的な手順を示す。
本検査では、第一の実施例で述べた各パターンに対する検査を行った。その手順は第一の実施例と同じく図6で表される。検査対象となるパターン上に視野を移し、工程601で二次元信号強度分布を取得した。観察倍率や視野のサイズは第一の実施例と同じであった。
次に工程602に進んでノイズを低減した後、工程603で検査領域を設定した。次に工程604でライン幅の系列データを取得した。ここでも計測パラメータは第一の実施例と全て同じであった。次に工程605でフーリエ変換を施した結果が工程606で積算範囲入力ウィンドウとともに検査装置モニター上に表示された。
ここで工程607にて、積算範囲の下限を2、上限を3と入力し、この成分の抽出を行ったところ、全体のラフネス指標(3s)は10.2nmであるのに対し、この成分3scは4.7nmとなった。これらの数値は検査装置の記憶領域に保存された。
【0053】
上記の値はピッチ0.4mmに対応する周波数のライン幅変動が極めて大きいことを意味している。本実施例では、上記の積算範囲で算出される3scと全体のラフネス指標3sとの比が0.4以上の値となった時に反射防止が不十分であると判定することにしていた。従って反射防止が不十分であると結論された。
【0054】
本発明により、特定の原因によるライン幅の変動をモニタリングすることが可能であった。またこの結果から、反射防止膜の製膜工程を検査したところ、反射防止膜の材料が有効期限を切れており、そのため粘性にむらが生じたものと分かった。このように、ラフネス発生の原因を特定し対策することが可能になった。
【実施例4】
【0055】
本発明の第四の実施例を図4、図5、図13及び図14を用いて説明する。図4は本実施例で用いた検査装置の構成を表す模式図、図5は本実施例において検査されたチップのウエハ上の位置を表す模式図、図13は本実施例において観察の結果得られた二次元信号強度分布を解析する部分の手順を示すフロー、図14は本実施例の解析の結果画面に表示されるウィンドウの概略図である。
【0056】
本実施例では、半導体素子生産時の検査工程にて本発明装置を用いた検査を実施し、着目するゲート幅のトランジスタについて、その性能劣化を引き起こす短周期ラフネスと、性能ばらつきを引き起こす長周期ラフネスの両方をモニターすることによって製造の歩留まりを向上した例を示す。
本実施例で記述される半導体製造プロセスでは、主としてゲート幅wgが500nm程度のトランジスタを作成しており、周期が500nmよりも長いラフネスによるトランジスタ性能のばらつきが、歩留まり低下を招く恐れがあった。同時に、トランジスタ性能の劣化に関係するトランジスタ領域内のラフネスも迅速に評価する必要があった。このため、リソグラフィ工程終了後の寸法検査時に、検査時間を増やさずに長周期ラフネスと短周期ラフネスをモニターする必要が生じた。
【0057】
以下に具体的な手順を示す。まずリソグラフィ工程を終えたウエハを図4に示す検査装置に投入した。ウエハ407はステージ408上に載せられ、電子線403を照射される。ウエハ上の、検査されるチップは図5の斜線部分に示されるように決められていた。このチップ上の同じ相対座標に存在する長さ3mm、幅約60nmのラインパターンが検査対象となるパターンである。これらの各パターン上のほぼ中心位置を視野中心とするよう、ステージ408や照射電子線403が移動して、検査装置のソフトウエハにより、各パターンに関して検査が行われた。この検査の手順は図13に示される。
【0058】
まず、工程1301にてラインパターンの二次元信号強度分布を得た。ここでは二次元の画像として表示した。この際、x方向(画像向かって水平方向)は倍率20万倍、y方向(x方向に垂直な方向)は倍率6万倍であり、得られる像の視野はx方向に675nm、y方向に2250nmであった。ラインパターンはy方向にほぼ平行になるよう画像が調整された。この画像に対してノイズ低減処理(工程1302)を行った後、画像中央部に検査領域が設定された(工程1303)。すると自動的に計測が行われ、系列データが取得された(工程1304)。計測箇所のy方向の間隔は10nmで計測箇所数は200箇所、計測を行った領域(検査領域)のy方向の長さは2000nmであった。こうして得られるライン幅の系列データをw1, w2, ・・・w200とする。次に工程1305でこれら200個のデータの標準偏差s0が計算された。この値は3.5nmであった。
【0059】
次に工程1306に進む。ここでは200個のデータが20個ずつ合計10個のグループに分割された。20個のデータは連続していなければならない。即ち、第一のグループに含まれるデータはw1, w2, ・・・w20、第二のグループではw21, w22, ・・・w40となり、第十のグループではw181, w182, ・・・w200である。ここで新しくできたグループは、長さ200nmに相当する領域のライン幅系列データとなる。次に工程1307に進み、前工程で得られた10個のグループについて、グループ内の20個のデータの平均値と標準偏差が算出された。これらの標準偏差をs1,1, s1,2, ・・・s1,10、平均値をCD1, CD2, ・・・CD10、とする。さらにこれら10個の標準偏差の平均値s1、10個の平均値の標準偏差s2が求められた。次の工程1308では、これらの計算結果が観察画像表示ウィンドウに示された。本製造プロセスでは従来、標準偏差ではなく標準偏差の3倍の値を判断基準として用いていたため、3s0、3s1、3s2が表示された。
【0060】
次に工程1309に進み、三つの値の組(L1, s0)、(L2, s1)、(L2, s2)を理論曲線g(L)、h(L)を用いて(数4)に示す関数とフィッティングパラメータとでフィッティングした。ここでL1=200nm、L2=2000nmである。用いた理論曲線g(L)、h(L)の組は予め検査装置の記憶領域に保存してあった。これらの理論曲線はシミュレーションにより求めたものであった。
【0061】
フィッティングパラメータの値が決定した後工程1310に進み、着目するトランジスタのゲート幅ないしは長・短周期の境界として定義したい長さwgを設定した。ここでは500nmとした。次に工程1311にて、(数6)から、短周期ラフネスの指標3s_intra(wg)と長周期ラフネスの指標3s_inter(wg)の値がそれぞれ、7.4nm、7.6nmと求まった。これらの結果は工程1312にて画面に表示されるとともに、検査装置の記憶領域に保存された。この様子を図14に示す。
【0062】
この検査が、図5に示されたチップ上の予定された全てのラインパターンに対して行われた。次に、ウエハの良否判定がなされた。
本実施例の半導体製造工程では、CD値は55から65nm、3sは12nm以下、短周期ラフネス3s_intra(wg)は9nm以下、長周期ラフネスの指標3s_inter(wg)は8nm以下を基準とし、検査されたチップのパターン合計10個について、全部がこの基準を満たしている場合にウエハを良品と判定、次工程に回していた。本ウエハでは全てのチップにおいてこれらの基準が満たされたため、本ウエハは次工程であるドライエッチングに回された。
【0063】
尚、上記の例では検査ごとにwgの値を入力していたが、予めこの値を設定しておくことによって操作者がwgの値を入力する工程を省くことが可能であった。この場合、検査時間が短縮される。
また、上記の短・長周期ラフネス指標を用いて、例えば非特許文献1や非特許文献7に記されている手法でラフネス起因のトランジスタ性能劣化やばらつきを簡単に見積もることができる。具体的には3s_intraの結果から、トランジスタの内部のゲート長分布を中心値が設計値で分散がs_intra2となるガウス分布であると仮定し、しきい値電圧の低下や暗電流の増加を計算することができる。また3s_interの結果から、前述のゲート長分布の中心値がs_inter程度の幅をもったガウス分布になると仮定し、トランジスタが複数個あった場合のしきい値電圧の分布を算出することができる。
【実施例5】
【0064】
本発明の第五の実施例を図15を用いて説明する。図15は本実施例で得られたパワースペクトルの概略図である。
本実施例では、半導体素子生産工程を構築するための研究開発段階において、観察条件の異なる2枚のパターン画像に対して本発明を適用し、ラフネスの大小を判定した例を示す。
本実施例では、実施例1で用いた装置を用いた。本例を実施した際には装置にウエハサンプルはロードされておらず、装置は、コンピュータ内部の記憶領域に保存されている2枚の画像を解析する目的で用いられた。これら2枚の観察画像に写っているパターンは1本のラインパターンであり、画像のほぼ中央にあった。
【0065】
まず記憶領域から第一の観察結果を呼び出し、画面上に表示した。この画像の観倍率はx方向y方向倍率とも15万倍であった。画像に映っている領域の寸法は縦・横とも900nmであった。画像は縦横とも512ピクセルで構成されており、ライン幅などの計測はピクセル上に対応する位置で行う必要があった。画像にノイズ低減処理を施した結果、y方向の実質的な分解能は5.3nmとなった。この画像内のラインパターンの局所ライン幅を5.3nm間隔で128箇所計測し、128個のデータからなる第一の系列データを得た。計測間隔は実質的な分解能(ここでは5.3)より小さくしても意味がないができるだけ高周波成分まで正確に計測することが望ましいため、実質的な分解能に等しくした。第二に、系列データの数を128としたのは高速フーリエ変換を行うためには2のベキ乗の数値である必要があり、また計測間隔との積が900nmを超えない範囲でできるだけ多くしたためである。この系列データはライン上、675nmの長さに相当する。このデータをフーリエ変換し、パワースペクトルを表示した。
【0066】
次に記憶領域から第二の観察結果を呼び出し、表示した。この画像の観察倍率はx方向15万倍、y方向4万倍であった。画像に映っている領域の寸法は縦3375nm、横900nmであった。画像にノイズ低減処理を施した結果、y方向の実質的な分解能は13.2nmとなった。この画像内のラインパターンの局所ライン幅を13.2nm間隔で128箇所計測し、第二の系列データを得た。これらの値の選び方は第一の画像の場合と同様である。このデータはライン上、1687.5nmの長さに相当する。第一の系列データのパワースペクトルと同じグラフ上にこの系列データのパワースペクトルも表示した。この様子を図15に示す。
【0067】
積算範囲の値は、第一・第二のスペクトルに共通の周波数領域を用いればよい。これはパワースペクトルをみれば簡単に判断できる。ここでは、2mm-1から30mm-1とし、この値をそれぞれのデータの積算範囲入力ウインドウに入力したところ、第一の系列データでは3scは4.2nm、第二の系列データでは6.3nmという結果が得られ、第一の画像のパターンのほうがラフネスが小さいことがわかった。
【0068】
積算範囲を設定して積分値3scを計算することは系列データのサンプリング条件(全体の長さとサンプリング間隔)を決めて系列データを求め、そのデータから3sを求めることに等しい。しかし本機能を用いない場合、異なる条件で観察された2枚の画像に対して同じ条件のサンプリングを行うことは手順が煩雑で困難である。本発明により、簡単な手順で積算範囲を決め、ふたつのデータを比較することが可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のパターン形状評価方法及びその装置は、半導体製造時の検査工程において、ラインエッジラフネスのうち特にデバイス特性に重要な影響を及ぼす周波数成分を評価する。これによりデバイス構造や最終的な製品の仕様に合ったパターン形状検査が可能となり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】一般的なラインエッジラフネスのフーリエ振幅スペクトルの関数形を現す概略図。
【図2】本発明で解析されるライン幅の系列データの取得方法を現す概念図。
【図3】本発明で用いられる、長周期ラフネスと短周期ラフネスの大きさの検査領域長依存性を表す関数の例。
【図4】本発明の第一、第二及び第四の実施例の装置構成を表す概念図。
【図5】本発明の第一、第二及び第四の実施例で検査を行ったチップのウエハ上の位置を示す概念図。
【図6】本発明の第一及び第三の実施例における手順の一部を表すフローチャート。
【図7】本発明の第一の実施例で解析されたフーリエ振幅スペクトル。
【図8】本発明の第一の実施例において検査装置画面上に現れる積算範囲入力ウィンドウ。
【図9】本発明の第一の実施例で得られた解析結果の表示の概念図。
【図10】本発明の第二の実施例における手順の一部を表すフローチャート。
【図11】本発明の第三の実施例において解析されるレジストパターンの下層に形成された金属材料のラインパターンの概念図。
【図12】本発明の第三の実施例において解析されるレジストパターンと、その下層に形成された金属材料のラインパターンの概念図。
【図13】本発明の第四の実施例における手順の一部を表すフローチャート。
【図14】本発明の第四の実施例で得られた解析結果の表示の概念図。
【図15】本発明の第五の実施例で得られたパワースペクトル。
【符号の説明】
【0071】
401 走査型電子線顕微鏡の筐体
402 電子銃
403 電子線
404 収束レンズ
405 偏向器
406 対物レンズ
407 観察ウエハ
408 ステージ
409 二次電子
410 検出器
411 走査型電子線顕微鏡の制御系
412 検査を行うコンピュータ
501 パターンが形成されたウエハ
601 二次元信号強度分布の取得
602 ノイズ低減
603 検査領域設定
604 系列データ取得
605 フーリエ変換
606 フーリエスペクトルと積算範囲入力ウィンドウの表示
607 積算範囲の設定
608 計算、計算結果の表示及び結果の保存
1001 二次元信号強度分布の取得
1002 ノイズ低減
1003 検査領域設定
1004 系列データ取得
1005 フーリエ変換
1006 フーリエスペクトルと積算範囲入力ウィンドウの表示
1007 積算範囲の設定
1008 計算及び計算結果の表示
1009 現状データの評価を終了するか続けるかの選択
1010 計算結果の保存
1101 金属材料から成るラインパターン
1102 絶縁材料から成るラインパターン
1201 レジスト膜下層の金属材料から成るラインパターン
1202 レジストパターン
1301 二次元信号強度分布の取得
1302 ノイズ低減
1303 検査領域設定
1304 系列データ取得
1305 s0の計算
1306 系列データの分割
1307 s1及びs2の計算
1308 計算結果の画面上への表示
1309 理論曲線によるフィッティング
1310 Wg設定
1311 ラフネス指標の計算
1312 全結果の表示と保存
1401 取得した観察画像
1402 検査対象のラインパターン
1403 検査領域を表す枠線
1404 結果表示領域。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走査型顕微鏡を用いた非破壊観測及び画像処理による詳細な形状計測あるいは寸法計測による微細パターンの検査方法、検査装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体その他の産業における微細加工技術の向上に伴い、パターンの設計値からのわずかなずれが問題になってきた。特に、上面観察でも見てとれるような二次元的な形状の劣化や寸法変動は、デバイスの性能に大きな影響を与える。そこで、エッジラフネスやCD変動量(ウエハ面内のCD均一性やウエハ間のCDばらつきなど)をより正確に計測・評価する必要が生じた。例えば、トランジスタのゲートに発生するエッジラフネスは、第一に、局所的な短チャネル効果を生じる。そのためトランジスタ内の平均ゲート長が設計値通りであっても、トランジスタ性能は設計値よりも悪くなる。第二に、トランジスタ内の平均ゲート長自体が、設計値からずれてしまう。
【0003】
上に述べたエッジラフネス、特にラインパターン上のエッジラフネス(ラインエッジラフネス)のトランジスタ性能への影響は、例えば非特許文献1から7に記すように、近年活発に議論されるようになった。その結果、計測装置においても、従来の寸法計測に加えてラインエッジラフネスの計測という課題が生じた。一般には、ラインエッジ位置あるいはライン幅を一定間隔で計測した系列データを統計処理して得られる、最大値と最小値の差や分布の標準偏差の3倍などが、ラインエッジラフネスの指標とされている。しかしこれらの指標一種類による判断には、二つ問題がある。第一には、サンプリング条件が異なるデータを比較することができない。非特許文献7に述べられているように、指標の値はデータのサンプリング条件(ラフネスの程度を算出するための計測領域のサイズやエッジ点を抽出するサンプリング間隔)に大きく依存するからである。例えばA,B二種類のパターンを異なる観察倍率で計測した場合1ピクセルあたりの長さや分解能が異なるため、ラインエッジラフネスを求めるためのエッジ点の検出間隔や計測領域を二種類の画像に対して等しくなるように設定するのは非常に困難である。
【0004】
このためラフネスの大小については議論をあきらめて再度計測しなおすことが多かった。このような問題は研究開発段階において生じやすい。第二に、1種類の指標ではラフネスの周期は表現できない。例えば初めに述べたゲート上のラインエッジラフネスの場合、第一の例として述べた局所的な短チャネル効果を生むラフネスは、比較的周期の短いものである。一方第二の例で述べた、平均ゲート長のずれを生むラフネスは、周期が長い。ゲート幅が短いトランジスタを作る工程では、相対的に周期の長いラフネスが大きくなる。そのため、一個一個のトランジスタの性能は劣化しないものの、全体として性能ばらつきが大きくなる。一方、ゲート幅が長いトランジスタの作成工程では、性能ばらつきは少ないものの、いずれのトランジスタにおいても短チャネル効果が生じやすくなる。
【0005】
半導体量産システムにおいて高い生産性を実現するためには、製品の性質やトランジスタ構造に合った評価を行う必要がある。そのためには、いつも一定計測条件の下でラインエッジラフネスの程度のみを計測するのではなく、空間周期の特徴を含んだ指標が必要になる。
ラインエッジラフネスの空間周期の特徴を表すには、ラインエッジ位置あるいはライン幅を一定間隔で計測した系列データをフーリエ変換し、フーリエスペクトル(振幅スペクトルないしはパワースペクトル)を表示すればよい。これは前述の第二の課題を解決するものであるが、同時に第一の課題も解決できる。系列データの計測条件によらず、フーリエスペクトルの各周波数成分の大小を比較することで、ラフネスの大小関係を判定することができる。
【0006】
研究開発においてはこれらの手法がとられており、非特許文献7から9に記すように、実際の報告例もある。しかしノイズの影響が大きいこれらのスペクトルから、目視で周波数分布に関するラインエッジラフネスの特徴を瞬時に把握することは難しい。ノイズの多いフーリエスペクトルを目視で比較検討することは、時間がかかる上、見る人によって異なる結果が得られる可能性がある。簡単に周波数分布の特徴を表す指標が必要になる。特に大量生産における検査工程では、そのニーズはより大きい。
また従来のCD計測は、ラインエッジラフネスの存在を前提としていない。例えばラインエッジラフネスの存在下では、ライン上のどこを計測するかによって、CD値も変わる。このためウエハ面内のCD均一性やウエハ間のCD変動量の計測値がランダムに発生するラインエッジラフネスに左右されるようになり、アニール温度のばらつきや下地膜厚ばらつきに起因するCDばらつきを正しく計測できなくなっている。CD計測方法自体にも対策が必要となりつつある。
【0007】
尚、ラインエッジラフネスという言葉は、ラインパターンのエッジ位置のばらつきを意味する言葉であるが、しばしば、エッジの位置のばらつきとライン幅のラインに沿ったばらつきの両方に対して、使われる言葉である。以下、特にエッジ位置のばらつきに限った言葉としては、狭義のラインエッジラフネス、という表現を用いることとする。また特にライン幅のラインに沿ったばらつきについては、ライン幅ラフネスという表現を用いることとする。
【0008】
【非特許文献1】ダイジェスト オブ エス アイ エス ピー エー ディー 2000年、第131頁から第134頁(Digest of SISPAD 2000 (2000), pp131-134)
【0009】
【非特許文献2】アイ イー ディー エム テクニカルダイジェスト 2000年、第563頁から第567頁(IEDM Technical Digest 2000 (2000), pp563-567)
【非特許文献3】アイ イー イー イー エレクトロン デバイス レターズ 第22巻(2001年)、第287頁から第289頁(IEEE Electron Device Letters, 22(2001), pp287-289)
【非特許文献4】プロシーディングス オブ エス・ピー・アイ・イー 4689巻(2002年)、第733頁から第741頁(Proc. SPIE 4689(2002),pp733-741)
【非特許文献5】アイ イー ディー エム テクニカルダイジェスト 2002年、第303頁から第306頁(IEDM Technical Digest 2002 (2002), pp303-306)
【非特許文献6】アイ イー ディー エム テクニカルダイジェスト 2002年、第307から第310頁(IEDM Technical Digest 2002 (2002), pp307-310)
【非特許文献7】プロシーディングス オブ エス・ピー・アイ・イー 5038巻(2003年)、第689頁から第696頁(Proc. SPIE 5038(2003),pp689-696)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上に述べたような背景から、ラインエッジラフネスのフーリエスペクトルの特徴を集約した指標が必要である。またラインエッジラフネス以外のCD変動要因を正しく計測するために、ラインエッジラフネスの影響をうけないCD計測方法が必要である。
本発明が解決しようとする課題は、ラインエッジラフネスの周波数分布の特徴や、ラインエッジラフネスの成分を除いたライン幅で表される、微細ラインパターン形状の特徴を求めるための方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における最も簡単なものは、特定の周波数帯に属する成分を抜き出して表示する、というものである。微細パターンの境界となる点の位置ないしは微細パターンの寸法を基準となる直線に沿って一定間隔で計測した結果即ち、パターンエッジの系列データないしはパターン寸法の系列データをフーリエ変換して得られるフーリエ級数の絶対値の二乗すなわちパワースペクトルをP(f)と書くことにする。ここでfは空間周波数である。単位をμm−1とする。このとき、元の系列データの統計的な標準偏差σとP(f)との間には次の関係がある。
【0012】
【数1】

次にこの右辺の積算範囲のうち、着目するfの範囲を、操作者が設定する。操作者がfの積算範囲をaμm−1からbμm−1まで、と指定したら、この領域の成分σは以下の式により計算される。
【0013】
【数2】

即ち、a≦f≦bを満たす全てのP(f)の和がσとなる。
【0014】
大量のサンプルについてこの量を計算したい場合は、検査用の観測装置上であるいは観測結果を呼び出せるよう設定したコンピュータ上で上記の手順を実行できるようにしておく。またa,bの値は検査のたびに入力しなくて済むよう、前もって設定し、その値を繰り返し自動的に呼び出して計算を行うことを可能にしておけばよい。
指標としては、σ、σ、2σ、3σ、6σが適当である。このうちσは上記の計算により直接求めることができる、残りの量はσの平方根を求め、各々それの1倍、2倍、3倍、6倍を求めればよい。尚、操作者がどの指標を用いるかは予め設定しておく。1つの系列データと、設定されたa,bの値から得られる指標の値は検査用の観測装置あるいはコンピュータ上に表示される。また自動的に電子ファイルとして記録することが可能である。
【0015】
このような方法を用いれば、予め設定された任意の周波数領域帯のラフネスの成分を迅速に、操作者の判断を必要とせずに求め、その結果をあとでチェックできるように保存しておくことができる。
また、用いる対象パターンとしてはさまざまなパターンが可能であるが、特にラインパターンを用いるとよい。これは、データを取得する間隔が任意に設定できるためである。例えば密集ホールパターンの直径を系列データとして用いる場合は、データ間の間隔をパターンの周期と等しくとらねばならない。
【0016】
また、用いる系列データとしては、2μm以上の長さに渡る領域から得られたデータがよい。十分長い周期のラフネス成分が解析できるからである。この値の根拠は非特許文献7に示されている。この文献によれば、ラインエッジラフネスの大きさは、計測を行う領域のライン方向の長さL(本発明においては、系列データの長さに相当する)に大きく依存するが、その依存性はLが2μm以上になると極めて小さくなる。これは、ラフネスを解析する際には2μm程度までの領域を計測すればよく、また逆に、2μm程度までの領域を計測しなければ長周期のラフネス成分の挙動は分からないということを示している。また、系列データを取得する際の間隔は10nmより小さい値がよい。これは十分短い周期の成分が解析できるからである。非特許文献7によれば、L=2μmの領域のラフネスを観測する際に誤差5%以下でラフネスの大きさを求めるためには、10〜20nm間隔でエッジの形状を抽出する必要がある。したがってここでは、10nm以下のサンプリング間隔が推奨される。
【0017】
また、前述の方法で、積算範囲を0.5μm−1からある一定の値までとした指標の値を長周期成分ないしは低周波数成分と定義することが可能である。また一方、積算範囲をある一定の値から100μm−1までとした指標の値を短周期成分ないしは高周波数成分と定義することが可能である。ここで述べた長周期成分計算のための積算範囲の上限や短周期成分計算のための積算範囲の下限としては、1以上10以下の値を用いるとよい。なぜならば、ラインエッジラフネスの空間周波数分布(フーリエ振幅スペクトル)は多くの場合図1に示すように、振幅が空間周波数の逆数に比例する領域と、振幅が空間周波数のm乗(ただしmの値は0から高々0.3程度)に比例する領域とから成っており、このふたつの領域の境界となる周波数(f)が1μm−1から10μm−1の間にあるからである(尚、図1のグラフは横・縦軸とも対数プロットである)。この由来は不明だが、この領域を境に、ラフネスの発生メカニズムが変わるものと予測される。従って、ラフネスをこの境界で分離し、それぞれ数値化することは、ラフネス解析の立場から見て妥当である。このように積算範囲を統一することで、積算範囲の値の設定を簡略化できるという効果がある。尚、積算範囲の決定方法としては、他にもある。例えば、着目されるトランジスタのゲート幅wgの逆数を長周期成分計算のための積算範囲の上限や短周期成分計算のための積算範囲の下限として用いてもよい。これはラフネスの発生原因よりもむしろ、デバイスへの影響を考慮した方法といえる。
【0018】
また、特にライン幅ラフネスに対してこの方法を適用している時には、同時にf=0の成分を取り出すと、ゆらぎの影響を取り除いたライン幅を得ることができる。この値はまた、全ての系列データの相加平均と等しい。
周波数分布を反映したライン幅ラフネス評価方法としては、さらに次に示す方法がある。即ち、そのラインパターンから作成される典型的なサイズのトランジスタの、性能劣化を引き起こす短周期ラフネス成分即ち前述の第一のラフネスと、性能ばらつきを引き起こす長周期ラフネス成分即ち第二のラフネスとを算出するというものである。(この方法は狭義のラインエッジラフネスの評価方法ではない。)おおよその手順は以下のようなものである。
【0019】
まず、ラインパターン上で図2のようにライン幅の系列データw, w, ・・・wM’を取得する。このデータが得られた観察範囲のラインに沿った方向の長さをLとする。このM’個の値w,w, ・・・wM’の標準偏差を求め、σと定義する。この値は、ゲート幅Lのトランジスタを作成したときに、トランジスタ領域内に発生するライン幅ラフネスの大きさの指標となる。
この系列データから、連続するM個のデータで構成されたグループを取り出す。グループの数をNとする。即ち、一番目のグループはw, w, ・・・w、二番目のグループはwM+1, wM+2, ・・・w2M、となる。ここでN及びMは
【0020】
【数3】

を満たす。M個のデータを得る観察領域の長さをLとする。
次に、各グループについてデータの平均値と標準偏差を算出する。これによって標準偏差の値がN個得られるので、これらの平均値を求め、σと定義する。この値は、ゲート幅Lのトランジスタを作成したときに、トランジスタ領域内に発生するライン幅ラフネスの大きさの指標となる。平均ライン幅の値がN個得られるので、これらの標準偏差を求め、σと定義する。この値は、ゲート幅Lのトランジスタを作成したときの、CD値のトランジスタ間ばらつきの指標となる。
次に、上記の手順で得られた3点、P(L,σ)、Q(L,σ)、R(L,σ)を、以下のフィッティング曲線の組でフィッティングする。
【0021】
【数4】

ここでαはフィッティングパラメータ、g(L)、h(L)は理論計算に基づいて得られる関数である。これら二つの関数形を理論計算から求めた例を以下に記す。
【0022】
まず図1に示した関数で、離散フーリエ係数の絶対値を仮定する。次に、離散フーリエ係数の位相を乱数で与える。これにより離散フーリエ係数が仮定されるので、これをフーリエ逆変換し、仮想的なライン幅ラフネスの系列データを作成することができる。実際に10μm以上の領域に対応する系列データを小さい間隔で取得することは難しいが、このような計算では、コンピュータシステムが許す限り、領域長Lを長く、間隔を小さくすることができる。
【0023】
このようにして得られた仮想的な系列データ(長さLmaxの領域に対応)の標準偏差をσmaxとする。次にこの系列データから任意のゲート幅Lのトランジスタを作成したときの、トランジスタ領域内のライン幅ラフネス指標σ_intra(L)、CD値のトランジスタ間ばらつき指標σ_inter(L)を計算し、
【0024】
【数5】

と定義する。但しこの場合、g(L)及びh(L)は離散フーリエ係数を仮定した際に用いられるパラメータm及びfの関数となる。この場合、フィッティングパラメータはα、m、fとなる。尚、例としてm=0.1の時に得られるg(L)及びh(L)を図3に示す。
さらにフーリエ振幅スペクトルを他の関数形で仮定することで、より適切なフィッティング関数g(L)、h(L)を得ることも可能である。
【0025】
次に、検査対象となるパターンから作成するトランジスタのゲート幅wと、得られたフィッティングパラメータとから、短周期ラフネスの指標3σ_intra(w)と長周期ラフネスの指標3σ_inter(w)を算出する。但し、
【0026】
【数6】

である。
【0027】
このようにして得られる3σ_intra及び3σ_interの値は、トランジスタ性能の分布と直結している。例えば非特許文献7で議論されている短周期ラフネス、長周期ラフネスの値として上記の具体的な手順で得られる3σ_intra及び3σ_interの値を用い同文献に記されている計算手順によって、容易にトランジスタ性能の分布を見積もることができる。
またこのとき、フィッティングの信頼性を高く保つためには第一に、十分長い領域の観測結果が必要であり、これには元の系列データを取得する領域の長さは2μm以上とすることが適当である。第二に、標準偏差を求めるという統計的処理をするにあたって十分なサンプル数が必要であり、これにはグループの数Nを6以上とすることが適切である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のパターン形状評価方法及びその装置は、ラインエッジラフネスのうち特にデバイス特性に重要な影響を及ぼす周波数成分を、取り出して数値化することを可能にする。デバイス特性に影響する成分の周波数帯は、デバイス構造や最終的な製品の仕様に依存するため、装置のユーザーが容易に設定を変更できるものでなくてはならないが、本発明ではそれが可能となり、製品に合ったオーダーメイドの検査が実現し、生産性が向上する。
【実施例1】
【0029】
本発明の第一の実施例を図4から図9を用いて説明する。図4は本実施例で用いた検査装置の構成を表す模式図、図5は本実施例において検査されたチップのウエハ上の位置を表す模式図、図6は観察の結果得られた二次元信号強度分布を解析する部分の手順を示すフロー、図7は検査装置のディスプレイに表示されたフーリエスペクトル、図8は測定結果の系列データをフーリエ変換して、フーリエ係数の絶対値の二乗の値を積算する範囲を指定入力するためのウインドウ、図9は図7に示されたスペクトル上に積算範囲およびパワースペクトルの積分値σから得られるラフネス指標3σが示された図であり、一つのラインパターンの解析が終了したときに検査装置のディスプレイに表示される評価結果である。
【0030】
本実施例では、半導体素子生産時の検査工程にて本発明装置を用いた検査を実施し、長周期ラフネスをモニターすることによって製造の歩留まりを向上した例を示す。
本実施例で記述される半導体製造プロセスでは、短チャネル効果が生じにくい構造をもつトランジスタを生産していた。そのため、周期の短いライン幅ラフネスの影響は比較的小さかった。しかし周期の長いラフネスによるトランジスタ性能のばらつきは無視できず、致命的な歩留まり低下を招く恐れがあり、リソグラフィ工程終了後の寸法検査時に長周期ラフネスをモニターする必要があった。ラフネスの指標が一定値以下のウエハは次工程に回されるが、一定値を超えたウエハはレジスト剥離を経て再度リソグラフィを行う。
【0031】
以下、本実施例の具体的な手順を示す。
まずリソグラフィ工程を終えたウエハを図4に示す検査装置に投入した。ウエハ407はステージ408上に載せられ、電子線403を照射される。ウエハ上の、検査されるチップは図5の斜線部分に示されるように決められていた。このチップ上の同じ相対座標に存在する長さ5μm、幅約100nmのラインパターンが検査対象となるパターンである。これらの各パターン上のほぼ中心位置を視野中心とするよう、ステージ408や照射電子線403が移動して、各パターンに関して検査を行った。この検査の手順は図6に示される。
【0032】
まず、工程601にてラインパターンの二次元信号強度分布を得た。ここでは二次元の画像として表示した。この際、x方向(画像向かって水平方向)は倍率15万倍、y方向(x方向に垂直な方向)は倍率5万倍であり、得られる像の視野はx方向に900nm、y方向に2700nmであった。ラインパターンがy方向にほぼ平行になるよう画像が調整されてあった。この画像に対してノイズ低減処理(工程602)を行った後、画像中央部に検査領域を設定し(工程603)、ライン幅の計測を行った(工程604)。計測箇所のy方向の間隔は7.8125nmで計測箇所数は256箇所、計測を行った領域(検査領域)のy方向の長さは2000nmであった。こうして得られるライン幅の系列データをw, w, ・・・w256とする。
【0033】
次に、工程605にてこれらの系列データはフーリエ変換され、フーリエ係数の絶対値A(f)が得られた。fは以下の式で表される空間周波数で、ここではその単位をμm−1とした。
【0034】
【数7】

Lは検査領域のy方向の長さで、この実施例の場合は2.0である。
【0035】
次に工程606に進み、検査装置ディスプレイ上にフーリエ振幅スペクトルと、積算範囲入力ウィンドウが表示された。またフーリエ振幅スペクトル上には、f=0に相当するフーリエ振幅から算出したライン幅平均値とライン幅分布の標準偏差の3倍即ち3σとが、それぞれCD及びLWRとして示された。前者は、ライン幅の変動成分を除いた値である。これらを図7、図8に示す。
【0036】
図8に示すように積算範囲入力ウインドウを用いて、計算量(図中 Outputと表示)、積算したい空間周波数領域の下限、上限を設定できる。計算量はマウス操作によりデータのばらつきの標準偏差σ、その2倍(2σ)、3倍(3σ)、6倍(6σ)、あるいは分散(σ)から選択できるようになっているが、デフォルトは3σであった。これは半導体製造においてラインエッジラフネスの程度を標準偏差の3倍で示すことが一般的になっていることによる。また空間周波数領域の下限欄のデフォルト値は0.5となっていた。これは前述のように、ラフネスをラインに沿って2μm以上の長さの領域で計測することが望ましいためである。また上限欄のデフォルト値は5となっていた。これは一般に長周期ラフネスを計測する必要が生じるようなゲート幅の小さいトランジスタを対象として本発明がなされたという背景による。近年のトレンドによれば、メモリなどの小さいデバイスではゲート幅が200nm程度となっている。そのため対応する空間周波数5μm−1をデフォルト値とした。
【0037】
次に図8に示された積算範囲入力ウィンドウに、積算したい空間周波数領域の下限と上限を入力した(工程607)。ここでは下限値はデフォルト値を用い0.5とし、一方上限は2と入力した。これらの値は以下のような考え方で決められた。まず前者の0.5という値は周期に換算すると2μmで、検査領域の長さに相当する。なるべく長周期ラフネスを正確に計測するため、積算範囲の下限をこれに相当する値とした。またここで用いられたレジスト材料では、そのパターンのラインエッジラフネスのフーリエ振幅スペクトルが多数求められており、パラメータfが2程度になることが確認されていた。この生産工場においてはさまざまなゲート幅のデバイスを同時に作成しており、ゲート幅Wに応じて長・短周期の境界を変えて寸法検査を行うことができなかっため、デバイススペクトル形状においてA(f)のf依存性が変わる周波数fを長・短周期ラフネスの境界と定め、全てのデバイスの寸法検査において、1/fより長い周期の成分を長周期ラフネスと定義していた。
【0038】
積算範囲が入力されると、工程608に進み、図7に示されたスペクトル上のf=0.5からf=2に相当する領域がハッチで示され、同時に画面上にパワースペクトルの積分値σから得られるラフネス指標3σが示された。この様子を図9に示す。計測結果は検査装置の記憶領域に保存され、このパターンの検査は終了した。
この図6に示された工程の検査が、図5に示されたチップ上の予定された全てのラインパターンに対して行われた。次に、ウエハの良否判定がなされた。
【0039】
本実施例の半導体製造工程では、CD値は95から105nmを合格とした。これは検査パターンがゲート長100nmのゲートパターンであり、ゲート長とデバイス性能との関係を予めシミュレーションした結果から、必要な性能(しきい値電圧)を得るためにはゲート長が95から105nmの範囲にあるものだけを合格とすべきであることが分かっていたためである。また3σは10nm以下を合格基準とした。これは、この基準を満たさないパターンは次工程のドライエッチングにおいてパターン形状が劣化しショートが発生することが経験的に確認されていたためである。また長周期ラフネス成分3σは2.5nm以下を合格基準とした。これは予めシミュレーションした結果から、この基準を満たさないチップでは含まれるトランジスタのうち10%以上が必要な性能をもたず、デバイスとして機能しないことが予測されていたからである。検査されたチップのパターン合計10個について、全部がこの基準を満たしている場合にウエハを良品と判定、次工程に回していた。これは歩留まり90%以上を達成するための目安として、ウエハ内で選んだ10個のチップすべてが合格となる必要があったためである。本ウエハでは上記のチップにおいて良品の基準を満たさなかったため、このウエハはリソグラフィ工程をやり直すことになった。
【0040】
このように本発明を実施することにより、早い段階で不良品になる可能性の高いウエハを取り除き、製造をやり直すことが可能になったため、歩留まりが向上するとともに廃棄ウエハが大幅に減少し環境への負荷が減らされた。
また上記の手順で得られたCD値はラインエッジラフネスの影響を殆ど受けない。そのため、ウエハ面内のCD均一性やウエハ間のCDばらつきを算出する際にこれらの値を用いて、より精確にこれらの量を算出することができた。
【0041】
尚、上記の手順を操作者なしで自動的に行うことも可能である。その場合には積算領域の入力は予めなされており、検査パターンごとに図8において数値を入力する必要はない。またチップごとに得られた検査結果は自動的にファイル化され保存される。
また上記の手順においてはディスプレイ上に表示されるスペクトルをフーリエ振幅スペクトルとしたが、パワースペクトルでもよい。実際に行う計算はパワースペクトル上の積分であることから、パワースペクトルを表示させるとより直感的に理解がしやすく、誤操作に気づきやすいという利点がある。
【実施例2】
【0042】
本発明の第二の実施例を図4及び図10を用いて説明する。図4は本実施例で用いた検査装置の構成を表す模式図である。図10は本実施例において観察の結果得られた二次元信号強度分布を解析する部分の手順を示すフローである。
【0043】
本実施例では、半導体素子生産時の検査工程にて本発明装置を用いた検査を実施し、長周期に加えて短周期ラフネスをモニターすることによって製造の歩留まりを向上した例を示す。
本実施例で記述される半導体製造プロセスでは、主としてゲート幅wが300nm程度のトランジスタを作成しており、周期が300nmよりも長いラフネスによるトランジスタ性能のばらつきが、歩留まり低下を招く恐れがあった。同時に、周期100nm以下の細かいラフネスがレジストパターン上に存在すると、ドライエッチング時にその部分がダメージを受けて大きく削れてしまうという現象が見いだされた。このため、リソグラフィ工程終了後の寸法検査時に、周期300nm以上の長周期ラフネスと同時に周期100nm以下の短周期ラフネスをモニターする必要が生じた。
【0044】
以下、本実施例の具体的な手順を示す。尚使用した検査装置、ウエハ上のチップ配置、検査対象となるパターンは全て第一の実施例と同じである。
第一の実施例と同じように、まずリソグラフィ工程を終えたウエハを図4に示す検査装置に投入した。検査されるパターンやその位置は第一の実施例と同じであった。
各パターンに対して行われた検査内容を、図10を用いて説明する。
【0045】
まず、工程1001にてラインパターンの電子顕微鏡観察像を得た。観察倍率や視野のサイズは第一の実施例の工程601における値と同じである。この画像に対してノイズ低減処理(工程1002)を行い、検査領域を適切に設定した(工程1003)。次に工程1004に示すようにライン幅系列データを取得した。この際の条件も第一の実施例の工程604と同じである。次に工程1005に進み系列データはフーリエ変換され、工程1006にてそのスペクトルが表示された。また同時に積算範囲入力ウィンドウが表示された。
【0046】
次に示された積算範囲入力ウィンドウに、積算空間周波数領域の下限と上限を入力した(工程1007)。ここではまず長周期ラフネス指標の計算領域として各々0.5、3.3とした。これらの値は以下のような考え方で決められた。まず前者の0.5という値は周期に換算すると2μmで、検査領域の長さに相当する。これまでの研究によれば、ラフネスは2μm程度の周期までを計測すればおおよその傾向がつかめる。そこで検査領域長を2μmとし、積算範囲の下限もこれに相当する値とした。また、本ウエハ上では主としてゲート幅300nmのトランジスタを作成していたため、それよりも周期が長い成分を長周期ラフネスとして観測したかった。3.3という値は周期300nmに対応する空間周波数である。
積算範囲が入力されると、工程1008に進み、f=0.5からf=3.3に相当する領域のパワースペクトルの積分値σが計算され、この値から得られるラフネス指標3σが示された。
【0047】
次に、短周期ラフネス指標も求めたかったためここで終了せず(工程1009でNを選択)、工程1007に進んだ。積算領域入力ウインドウに別の値を入れた。入力した下限値は10、上限値は100であった。この下限値はドライエッチング後のパターンに大きな影響を与えると考えられる最大周期(100nm)が対応する周波数である。またノイズ低減によって周期が10nmよりも短い成分はフィルタリングされていたため、積算領域の上限をこの値が対応する周波数に設定した。
これらの数値を入力すると、工程1008に進み、短周期ラフネス指標が表示された。このパターンに対する検査はこれで終了したため工程1010に進み、上記全ての評価結果が検査装置の記憶領域に保存され、本パターンに関する検査は終了した。
この検査が、図5に示されたチップ上の予定された全てのラインパターンに対して行われた。次に、ウエハの良否判定がなされた。
【0048】
本実施例の半導体製造工程では、CD値は95から105nm、3σは10nm以下、長周期ラフネス3σは5nm以下、短周期ラフネス3σは2.5nm以下を合格基準とし、検査されたチップのパターン合計10個について、全部がこの基準を満たしている場合にウエハを良品と判定、次工程に回していた。本ウエハでは全てのチップにおいてこれらの基準が満たされたため、本ウエハは次工程であるドライエッチングに回された。
このように本発明を実施することにより、早い段階で不良品になる可能性の高いウエハを取り除き、製造をやり直すことが可能になったため、歩留まりが向上するとともに廃棄ウエハが大幅に減少し環境への負荷が減らされた。
【実施例3】
【0049】
本発明の第三の実施例を図6、図11及び図12を用いて説明する。図6は本実施例において電子顕微鏡観察像を解析する部分の手順を示すフロー、図11は本実施例において検査したサンプルのレジスト膜の下層パターン、図12は本実施例において検査したレジストパターンの例である。
【0050】
本実施例では、半導体素子生産時の検査工程にて本発明装置を用いた検査を実施し、特定の周波数をもつライン幅変動をモニターすることによって製造の歩留まりを向上した例を示す。
本実施例で記述される半導体製造プロセスでは、重要なラインパターンの層を加工するステップより前に、その下地層に、図11に示すようにゲート用のラインと垂直な方向に走る金属材料のラインパターンを形成していた。この金属パターンの上に絶縁材料を製膜し平坦になるよう加工した後、反射防止膜を形成し、レジスト膜を塗布形成し、このレジスト膜をライン状に加工する。
【0051】
しかし反射防止が不十分であると、下地の金属パターンからの反射がレジストパターンに影響し、図12に示すように、ライン幅が変動してしまう。図中の1201は反射防止膜の下層にある金属のラインパターンであり、レジストパターン1202は金属の上にあたる部分で細っている。そのためリソグラフィ工程終了後の寸法検査時に、下地の金属パターンの周期と同期するライン幅変動の成分をモニターする必要が生じた。尚、本実施例における金属パターンの画像内y方向のピッチは0.4μmであった。
【0052】
以下、本実施例の具体的な手順を示す。
本検査では、第一の実施例で述べた各パターンに対する検査を行った。その手順は第一の実施例と同じく図6で表される。検査対象となるパターン上に視野を移し、工程601で二次元信号強度分布を取得した。観察倍率や視野のサイズは第一の実施例と同じであった。
次に工程602に進んでノイズを低減した後、工程603で検査領域を設定した。次に工程604でライン幅の系列データを取得した。ここでも計測パラメータは第一の実施例と全て同じであった。次に工程605でフーリエ変換を施した結果が工程606で積算範囲入力ウィンドウとともに検査装置モニター上に表示された。
ここで工程607にて、積算範囲の下限を2、上限を3と入力し、この成分の抽出を行ったところ、全体のラフネス指標(3σ)は10.2nmであるのに対し、この成分3σは4.7nmとなった。これらの数値は検査装置の記憶領域に保存された。
【0053】
上記の値はピッチ0.4μmに対応する周波数のライン幅変動が極めて大きいことを意味している。本実施例では、上記の積算範囲で算出される3σと全体のラフネス指標3σとの比が0.4以上の値となった時に反射防止が不十分であると判定することにしていた。従って反射防止が不十分であると結論された。
【0054】
本発明により、特定の原因によるライン幅の変動をモニタリングすることが可能であった。またこの結果から、反射防止膜の製膜工程を検査したところ、反射防止膜の材料が有効期限を切れており、そのため粘性にむらが生じたものと分かった。このように、ラフネス発生の原因を特定し対策することが可能になった。
【実施例4】
【0055】
本発明の第四の実施例を図4、図5、図13及び図14を用いて説明する。図4は本実施例で用いた検査装置の構成を表す模式図、図5は本実施例において検査されたチップのウエハ上の位置を表す模式図、図13は本実施例において観察の結果得られた二次元信号強度分布を解析する部分の手順を示すフロー、図14は本実施例の解析の結果画面に表示されるウィンドウの概略図である。
【0056】
本実施例では、半導体素子生産時の検査工程にて本発明装置を用いた検査を実施し、着目するゲート幅のトランジスタについて、その性能劣化を引き起こす短周期ラフネスと、性能ばらつきを引き起こす長周期ラフネスの両方をモニターすることによって製造の歩留まりを向上した例を示す。
本実施例で記述される半導体製造プロセスでは、主としてゲート幅wが500nm程度のトランジスタを作成しており、周期が500nmよりも長いラフネスによるトランジスタ性能のばらつきが、歩留まり低下を招く恐れがあった。同時に、トランジスタ性能の劣化に関係するトランジスタ領域内のラフネスも迅速に評価する必要があった。このため、リソグラフィ工程終了後の寸法検査時に、検査時間を増やさずに長周期ラフネスと短周期ラフネスをモニターする必要が生じた。
【0057】
以下に具体的な手順を示す。まずリソグラフィ工程を終えたウエハを図4に示す検査装置に投入した。ウエハ407はステージ408上に載せられ、電子線403を照射される。ウエハ上の、検査されるチップは図5の斜線部分に示されるように決められていた。このチップ上の同じ相対座標に存在する長さ3μm、幅約60nmのラインパターンが検査対象となるパターンである。これらの各パターン上のほぼ中心位置を視野中心とするよう、ステージ408や照射電子線403が移動して、検査装置のソフトウエハにより、各パターンに関して検査が行われた。この検査の手順は図13に示される。
【0058】
まず、工程1301にてラインパターンの二次元信号強度分布を得た。ここでは二次元の画像として表示した。この際、x方向(画像向かって水平方向)は倍率20万倍、y方向(x方向に垂直な方向)は倍率6万倍であり、得られる像の視野はx方向に675nm、y方向に2250nmであった。ラインパターンはy方向にほぼ平行になるよう画像が調整された。この画像に対してノイズ低減処理(工程1302)を行った後、画像中央部に検査領域が設定された(工程1303)。すると自動的に計測が行われ、系列データが取得された(工程1304)。計測箇所のy方向の間隔は10nmで計測箇所数は200箇所、計測を行った領域(検査領域)のy方向の長さは2000nmであった。こうして得られるライン幅の系列データをw, w, ・・・w200とする。次に工程1305でこれら200個のデータの標準偏差σが計算された。この値は3.5nmであった。
【0059】
次に工程1306に進む。ここでは200個のデータが20個ずつ合計10個のグループに分割された。20個のデータは連続していなければならない。即ち、第一のグループに含まれるデータはw, w, ・・・w20、第二のグループではw21, w22, ・・・w40となり、第十のグループではw181,w182,・・・w200である。ここで新しくできたグループは、長さ200nmに相当する領域のライン幅系列データとなる。次に工程1307に進み、前工程で得られた10個のグループについて、グループ内の20個のデータの平均値と標準偏差が算出された。これらの標準偏差をσ1,1, σ1,2, ・・・σ1,10、平均値をCD, CD, ・・・CD10、とする。さらにこれら10個の標準偏差の平均値σ、10個の平均値の標準偏差σが求められた。次の工程1308では、これらの計算結果が観察画像表示ウィンドウに示された。本製造プロセスでは従来、標準偏差ではなく標準偏差の3倍の値を判断基準として用いていたため、3σ、3σ、3σが表示された。
【0060】
次に工程1309に進み、三つの値の組(L,σ)、(L,σ)、(L,σ)を理論曲線g(L)、h(L)を用いて(数4)に示す関数とフィッティングパラメータとでフィッティングした。ここでL=200nm、L=2000nmである。用いた理論曲線g(L)、h(L)の組は予め検査装置の記憶領域に保存してあった。これらの理論曲線はシミュレーションにより求めたものであった。
【0061】
フィッティングパラメータの値が決定した後工程1310に進み、着目するトランジスタのゲート幅ないしは長・短周期の境界として定義したい長さwを設定した。ここでは500nmとした。次に工程1311にて、(数6)から、短周期ラフネスの指標3σ_intra(w)と長周期ラフネスの指標3σ_inter(wg)の値がそれぞれ、7.4nm、7.6nmと求まった。これらの結果は工程1312にて画面に表示されるとともに、検査装置の記憶領域に保存された。この様子を図14に示す。
【0062】
この検査が、図5に示されたチップ上の予定された全てのラインパターンに対して行われた。次に、ウエハの良否判定がなされた。
本実施例の半導体製造工程では、CD値は55から65nm、3σは12nm以下、短周期ラフネス3σ_intra(w)は9nm以下、長周期ラフネスの指標3σ_inter(w)は8nm以下を基準とし、検査されたチップのパターン合計10個について、全部がこの基準を満たしている場合にウエハを良品と判定、次工程に回していた。本ウエハでは全てのチップにおいてこれらの基準が満たされたため、本ウエハは次工程であるドライエッチングに回された。
【0063】
尚、上記の例では検査ごとにwの値を入力していたが、予めこの値を設定しておくことによって操作者がwの値を入力する工程を省くことが可能であった。この場合、検査時間が短縮される。
また、上記の短・長周期ラフネス指標を用いて、例えば非特許文献1や非特許文献7に記されている手法でラフネス起因のトランジスタ性能劣化やばらつきを簡単に見積もることができる。具体的には3σ_intraの結果から、トランジスタの内部のゲート長分布を中心値が設計値で分散がσ_intraとなるガウス分布であると仮定し、しきい値電圧の低下や暗電流の増加を計算することができる。また3σ_interの結果から、前述のゲート長分布の中心値がσ_inter程度の幅をもったガウス分布になると仮定し、トランジスタが複数個あった場合のしきい値電圧の分布を算出することができる。
【実施例5】
【0064】
本発明の第五の実施例を図15を用いて説明する。図15は本実施例で得られたパワースペクトルの概略図である。
本実施例では、半導体素子生産工程を構築するための研究開発段階において、観察条件の異なる2枚のパターン画像に対して本発明を適用し、ラフネスの大小を判定した例を示す。
本実施例では、実施例1で用いた装置を用いた。本例を実施した際には装置にウエハサンプルはロードされておらず、装置は、コンピュータ内部の記憶領域に保存されている2枚の画像を解析する目的で用いられた。これら2枚の観察画像に写っているパターンは1本のラインパターンであり、画像のほぼ中央にあった。
【0065】
まず記憶領域から第一の観察結果を呼び出し、画面上に表示した。この画像の観倍率はx方向y方向倍率とも15万倍であった。画像に映っている領域の寸法は縦・横とも900nmであった。画像は縦横とも512ピクセルで構成されており、ライン幅などの計測はピクセル上に対応する位置で行う必要があった。画像にノイズ低減処理を施した結果、y方向の実質的な分解能は5.3nmとなった。この画像内のラインパターンの局所ライン幅を5.3nm間隔で128箇所計測し、128個のデータからなる第一の系列データを得た。計測間隔は実質的な分解能(ここでは5.3)より小さくしても意味がないができるだけ高周波成分まで正確に計測することが望ましいため、実質的な分解能に等しくした。第二に、系列データの数を128としたのは高速フーリエ変換を行うためには2のベキ乗の数値である必要があり、また計測間隔との積が900nmを超えない範囲でできるだけ多くしたためである。この系列データはライン上、675nmの長さに相当する。このデータをフーリエ変換し、パワースペクトルを表示した。
【0066】
次に記憶領域から第二の観察結果を呼び出し、表示した。この画像の観察倍率はx方向15万倍、y方向4万倍であった。画像に映っている領域の寸法は縦3375nm、横900nmであった。画像にノイズ低減処理を施した結果、y方向の実質的な分解能は13.2nmとなった。この画像内のラインパターンの局所ライン幅を13.2nm間隔で128箇所計測し、第二の系列データを得た。これらの値の選び方は第一の画像の場合と同様である。このデータはライン上、1687.5nmの長さに相当する。第一の系列データのパワースペクトルと同じグラフ上にこの系列データのパワースペクトルも表示した。この様子を図15に示す。
【0067】
積算範囲の値は、第一・第二のスペクトルに共通の周波数領域を用いればよい。これはパワースペクトルをみれば簡単に判断できる。ここでは、2μm−1から30μm−1とし、この値をそれぞれのデータの積算範囲入力ウインドウに入力したところ、第一の系列データでは3σは4.2nm、第二の系列データでは6.3nmという結果が得られ、第一の画像のパターンのほうがラフネスが小さいことがわかった。
【0068】
積算範囲を設定して積分値3σを計算することは系列データのサンプリング条件(全体の長さとサンプリング間隔)を決めて系列データを求め、そのデータから3σを求めることに等しい。しかし本機能を用いない場合、異なる条件で観察された2枚の画像に対して同じ条件のサンプリングを行うことは手順が煩雑で困難である。本発明により、簡単な手順で積算範囲を決め、ふたつのデータを比較することが可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のパターン形状評価方法及びその装置は、半導体製造時の検査工程において、ラインエッジラフネスのうち特にデバイス特性に重要な影響を及ぼす周波数成分を評価する。これによりデバイス構造や最終的な製品の仕様に合ったパターン形状検査が可能となり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】一般的なラインエッジラフネスのフーリエ振幅スペクトルの関数形を現す概略図。
【図2】本発明で解析されるライン幅の系列データの取得方法を現す概念図。
【図3】本発明で用いられる、長周期ラフネスと短周期ラフネスの大きさの検査領域長依存性を表す関数の例。
【図4】本発明の第一、第二及び第四の実施例の装置構成を表す概念図。
【図5】本発明の第一、第二及び第四の実施例で検査を行ったチップのウエハ上の位置を示す概念図。
【図6】本発明の第一及び第三の実施例における手順の一部を表すフローチャート。
【図7】本発明の第一の実施例で解析されたフーリエ振幅スペクトル。
【図8】本発明の第一の実施例において検査装置画面上に現れる積算範囲入力ウィンドウ。
【図9】本発明の第一の実施例で得られた解析結果の表示の概念図。
【図10】本発明の第二の実施例における手順の一部を表すフローチャート。
【図11】本発明の第三の実施例において解析されるレジストパターンの下層に形成された金属材料のラインパターンの概念図。
【図12】本発明の第三の実施例において解析されるレジストパターンと、その下層に形成された金属材料のラインパターンの概念図。
【図13】本発明の第四の実施例における手順の一部を表すフローチャート。
【図14】本発明の第四の実施例で得られた解析結果の表示の概念図。
【図15】本発明の第五の実施例で得られたパワースペクトル。
【符号の説明】
【0071】
401 走査型電子線顕微鏡の筐体
402 電子銃
403 電子線
404 収束レンズ
405 偏向器
406 対物レンズ
407 観察ウエハ
408 ステージ
409 二次電子
410 検出器
411 走査型電子線顕微鏡の制御系
412 検査を行うコンピュータ
501 パターンが形成されたウエハ
601 二次元信号強度分布の取得
602 ノイズ低減
603 検査領域設定
604 系列データ取得
605 フーリエ変換
606 フーリエスペクトルと積算範囲入力ウィンドウの表示
607 積算範囲の設定
608 計算、計算結果の表示及び結果の保存
1001 二次元信号強度分布の取得
1002 ノイズ低減
1003 検査領域設定
1004 系列データ取得
1005 フーリエ変換
1006 フーリエスペクトルと積算範囲入力ウィンドウの表示
1007 積算範囲の設定
1008 計算及び計算結果の表示
1009 現状データの評価を終了するか続けるかの選択
1010 計算結果の保存
1101 金属材料から成るラインパターン
1102 絶縁材料から成るラインパターン
1201 レジスト膜下層の金属材料から成るラインパターン
1202 レジストパターン
1301 二次元信号強度分布の取得
1302 ノイズ低減
1303 検査領域設定
1304 系列データ取得
1305 s0の計算
1306 系列データの分割
1307 s1及びs2の計算
1308 計算結果の画面上への表示
1309 理論曲線によるフィッティング
1310 Wg設定
1311 ラフネス指標の計算
1312 全結果の表示と保存
1401 取得した観察画像
1402 検査対象のラインパターン
1403 検査領域を表す枠線
1404 結果表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に荷電粒子線を照射しながら走査して、被測定物から放出される二次電子または反射電子を検出して、その強度の2次元分布を濃淡画像化する工程と、
前記画像内の評価対象パターンの境界となる点の位置を、基準直線に沿って一定間隔で計測して、パターンエッジの系列データを生成する工程と、
前記系列データをフーリエ変換する工程と、
特定の周波数領域の指定入力、または予め設定された特定の周波数領域に従い、前記特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を算出する工程と、及び
前記評価対象パターン形状の特徴を表す指標として、前記合計値、前記合計値の平方根、前記合計値の平方根の2倍、前記合計値の平方根の3倍、および前記合計値の平方根の6倍の少なくとも一つ以上の値を表示する工程とを含むことを特徴とするパターン形状評価方法。
【請求項2】
被測定物に荷電粒子線を照射しながら走査して、被測定物から放出される二次電子または反射電子を検出して、その強度の2次元分布を濃淡画像化する工程と、
前記画像内の評価対象パターンを、基準直線に沿って一定間隔で前記基準直線と垂直方向の前記評価対象パターンの寸法を計測して、パターン寸法の系列データを生成する工程と、
前記系列データをフーリエ変換する工程と、
特定の周波数領域の指定入力、または予め設定された特定の周波数領域に従い、前記特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を算出する工程と、及び
前記評価対象パターン形状の特徴を表す指標として、前記合計値、前記合計値の平方根、前記合計値の平方根の2倍、前記合計値の平方根の3倍、および前記合計値の平方根の6倍の少なくとも一つ以上の値を表示する工程とを含むことを特徴とするパターン形状評価方法。
【請求項3】
前記評価対象パターンがラインパターンであることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項4】
前記基準直線に沿って計測を行う間隔が10nm以下の値であり、前記計測された領域の前記基準直線に沿った長さが2mm以上であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項5】
前記特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を算出する工程は、
前記指定入力される、または前記予め設定される特定の周波数領域の下限が0.5mm-1、上限が1 mm-1から10 mm-1の間のある値である場合について前記合計値を算出する工程であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項6】
前記特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を算出する工程は、
前記指定入力される、または前記予め設定される特定の周波数領域の下限が
指定される特定の周波数領域の下限が1 mm-1から10 mm-1の間のある値で、上限が100 mm-1である場合について前記合計値を算出する工程であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項7】
前記指定入力される、または前記予め設定される特定の周波数領域の上限あるいは下限が、作成される物品上のパターン長の逆数であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項8】
前記指定入力される、または前記予め設定される特定の周波数領域の上限あるいは下限が、作成されるトランジスタのゲート幅の逆数であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項9】
前記系列データをフーリエ変換する工程に続いて、
前記パターン寸法の系列データから寸法のゆらぎの成分を取り除いたパターン寸法を、前記系列データをフーリエ変換して得られるフーリエ係数の絶対値のうち、空間周波数が0の場合の値から算出することを特徴とする請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項10】
微細パターンの寸法を、基準直線に沿って一定間隔で計測して、前記パターン寸法の系列データを生成する工程と、
前記系列データの分布の標準偏差s0を算出する工程と、
前記系列データを連続するM個のデータずつN個のグループに分ける工程と、
前記各グループ内のM個のデータの平均値と標準偏差を算出する工程と、
前記工程で得られたN個の標準偏差の平均値s1を得るとともに、前記工程で得られたN個の平均値の標準偏差s2を算出する工程と、
前記s0、s1、およびs2の値を予め求めておいた基準曲線でフィッティングする工程と、
前記得られたフィッティング曲線と、設定された寸法Lとから、長さLの領域内のパターン寸法のばらつきの予測値と、長さLの領域の代表寸法値を複数領域について求めたときの代表寸法値間のばらつきの予測値とを算出する工程とを含むことを特徴とするパターン形状評価方法。
【請求項11】
前記計測されたパターン領域の基準となる直線に沿った長さが2mm以上であり、Nが6以上であることを特徴とする請求項10に記載のパターン形状評価方法。
【請求項12】
前記系列データをフーリエ変換して得られるフーリエ係数の絶対値もしくはフーリエ係数の絶対値の二乗を周波数に対してプロットした図を表示する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項13】
操作者が指定入力した特定の周波数領域を、前記の図の上に表示する工程をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のパターン形状評価方法。
【請求項14】
前記評価対象パターン形状の特徴を表す指標として、前記パターンエッジの系列データまたは前記パターン寸法の系列データをフーリエ変換して得られるフーリエ級数の絶対値の二乗すなわちパワースペクトルP(f)を求め、空間周波数fの特定の積算範囲(a mm-1からb mm-1まで)を満たす全てのP(f)の和であるsc2、sc、2sc、3sc、または6scのいずれかを選択するように、メニューを提示して、操作者に選択を促す工程をさらに含むことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項15】
荷電粒子線源と、
前記荷電粒子線源より放出された荷電粒子線を収束レンズ及び対物レンズを通して試料に照射し走査する光学系と、
前記試料を載置するステージと、
前記荷電粒子線の照射によって試料から放出される二次電子ないしは反射電子の強度を検出する検出器と、
前記走査によって得られる二次電子ないしは反射電子の二次元強度分布から、ラインパターンのエッジ位置ないしは寸法の変動のうち任意の周波数領域の空間周波数をもつ成分、ないしは任意の周波数を境界としそれよりも低い空間周波数をもつ成分と高い空間周波数をもつ成分、ないしは空間周波数が0となる成分を抽出し表示する手段とを有することを特徴とするパターン形状評価装置。
【請求項16】
パターンが形成された半導体ウエハを検査ステージに載置する工程と、
前記パターンを視野に収めるように荷電粒子線を照射しながら走査して、前記ウエハから放出される二次電子または反射電子を検出して、その強度の2次元分布を濃淡画像化する工程と、
前記画像内の前記評価対象パターンを、基準直線に沿って一定間隔で前記基準直線と垂直方向の前記評価対象パターンの寸法を計測して、パターン寸法の系列データを生成する工程と、
前記系列データのCD値、および標準偏差を算出する工程と、
前記系列データをフーリエ変換して、予め設定された特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を求め、前記合計値、前記合計値の平方根、前記合計値の平方根の2倍、前記合計値の平方根の3倍、または前記合計値の平方根の6倍の値のいずれかを評価指標として算出する工程と、
前記CD値、前記標準偏差、および前記評価指標のそれぞれの値が、予め設定されたそれぞれの基準値を満たす場合に、前記半導体ウエハを合格と判定して、次の半導体プロセスへ投入する工程と、および
前記CD値、前記標準偏差、および前記評価指標の少なくとも1つの値が、予め設定されたそれぞれの基準値を満たさない場合に、前記半導体ウエハを不合格と判定して、前記半導体ウエハを前記形成されたパターンを再度形成し直す半導体プロセスへ投入する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に荷電粒子線を照射しながら走査して、被測定物から放出される二次電子または反射電子を検出して、その強度の2次元分布を濃淡画像化する工程と、
前記画像内の評価対象パターンの境界となる点の位置を、基準直線に沿って一定間隔で計測して、パターンエッジの系列データを生成する工程と、
前記系列データをフーリエ変換する工程と、
特定の周波数領域の指定入力、または予め設定された特定の周波数領域に従い、前記特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を算出する工程と、及び
前記評価対象パターン形状の特徴を表す指標として、前記合計値、前記合計値の平方根、前記合計値の平方根の2倍、前記合計値の平方根の3倍、および前記合計値の平方根の6倍の少なくとも一つ以上の値を表示する工程とを含むことを特徴とするパターン形状評価方法。
【請求項2】
被測定物に荷電粒子線を照射しながら走査して、被測定物から放出される二次電子または反射電子を検出して、その強度の2次元分布を濃淡画像化する工程と、
前記画像内の評価対象パターンを、基準直線に沿って一定間隔で前記基準直線と垂直方向の前記評価対象パターンの寸法を計測して、パターン寸法の系列データを生成する工程と、
前記系列データをフーリエ変換する工程と、
特定の周波数領域の指定入力、または予め設定された特定の周波数領域に従い、前記特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を算出する工程と、及び
前記評価対象パターン形状の特徴を表す指標として、前記合計値、前記合計値の平方根、前記合計値の平方根の2倍、前記合計値の平方根の3倍、および前記合計値の平方根の6倍の少なくとも一つ以上の値を表示する工程とを含むことを特徴とするパターン形状評価方法。
【請求項3】
前記評価対象パターンがラインパターンであることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項4】
前記基準直線に沿って計測を行う間隔が10nm以下の値であり、前記計測された領域の前記基準直線に沿った長さが2μm以上であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項5】
前記特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を算出する工程は、
前記指定入力される、または前記予め設定される特定の周波数領域の下限が0.5μm−1、上限が1μm−1から10μm−1の間のある値である場合について前記合計値を算出する工程であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項6】
前記特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を算出する工程は、
前記指定入力される、または前記予め設定される特定の周波数領域の下限が
指定される特定の周波数領域の下限が1μm−1から10μm−1の間のある値で、上限が100μm−1である場合について前記合計値を算出する工程であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項7】
前記指定入力される、または前記予め設定される特定の周波数領域の上限あるいは下限が、作成される物品上のパターン長の逆数であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項8】
前記指定入力される、または前記予め設定される特定の周波数領域の上限あるいは下限が、作成されるトランジスタのゲート幅の逆数であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項9】
前記系列データをフーリエ変換する工程に続いて、
前記パターン寸法の系列データから寸法のゆらぎの成分を取り除いたパターン寸法を、前記系列データをフーリエ変換して得られるフーリエ係数の絶対値のうち、空間周波数が0の場合の値から算出することを特徴とする請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項10】
微細パターンの寸法を、基準直線に沿って一定間隔で計測して、前記パターン寸法の系列データを生成する工程と、
前記系列データの分布の標準偏差σを算出する工程と、
前記系列データを連続するM個のデータずつN個のグループに分ける工程と、
前記各グループ内のM個のデータの平均値と標準偏差を算出する工程と、
前記工程で得られたN個の標準偏差の平均値σを得るとともに、前記工程で得られたN個の平均値の標準偏差σを算出する工程と、
前記σ、σ、およびσの値を予め求めておいた基準曲線でフィッティングする工程と、
前記得られたフィッティング曲線と、設定された寸法Lとから、長さLの領域内のパターン寸法のばらつきの予測値と、長さLの領域の代表寸法値を複数領域について求めたときの代表寸法値間のばらつきの予測値とを算出する工程とを含むことを特徴とするパターン形状評価方法。
【請求項11】
前記計測されたパターン領域の基準となる直線に沿った長さが2μm以上であり、Nが6以上であることを特徴とする請求項10に記載のパターン形状評価方法。
【請求項12】
前記系列データをフーリエ変換して得られるフーリエ係数の絶対値もしくはフーリエ係数の絶対値の二乗を周波数に対してプロットした図を表示する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項13】
操作者が指定入力した特定の周波数領域を、前記の図の上に表示する工程をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のパターン形状評価方法。
【請求項14】
前記評価対象パターン形状の特徴を表す指標として、前記パターンエッジの系列データまたは前記パターン寸法の系列データをフーリエ変換して得られるフーリエ級数の絶対値の二乗すなわちパワースペクトルP(f)を求め、空間周波数fの特定の積算範囲(aμm−1からbμm−1まで)を満たす全てのP(f)の和であるσ、σ、2σ、3σ、または6σのいずれかを選択するように、メニューを提示して、操作者に選択を促す工程をさらに含むことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のパターン形状評価方法。
【請求項15】
荷電粒子線源と、
前記荷電粒子線源より放出された荷電粒子線を収束レンズ及び対物レンズを通して試料に照射し走査する光学系と、
前記試料を載置するステージと、
前記荷電粒子線の照射によって試料から放出される二次電子ないしは反射電子の強度を検出する検出器と、
前記走査によって得られる二次電子ないしは反射電子の二次元強度分布から、ラインパターンのエッジ位置ないしは寸法の変動のうち任意の周波数領域の空間周波数をもつ成分、ないしは任意の周波数を境界としそれよりも低い空間周波数をもつ成分と高い空間周波数をもつ成分、ないしは空間周波数が0となる成分を抽出し表示する手段とを有することを特徴とするパターン形状評価装置。
【請求項16】
パターンが形成された半導体ウエハを検査ステージに載置する工程と、
前記パターンを視野に収めるように荷電粒子線を照射しながら走査して、前記ウエハから放出される二次電子または反射電子を検出して、その強度の2次元分布を濃淡画像化する工程と、
前記画像内の前記評価対象パターンを、基準直線に沿って一定間隔で前記基準直線と垂直方向の前記評価対象パターンの寸法を計測して、パターン寸法の系列データを生成する工程と、
前記系列データのCD値、および標準偏差を算出する工程と、
前記系列データをフーリエ変換して、予め設定された特定の領域の周波数に対するフーリエ係数の絶対値の二乗の値を全て足し合わせて合計値を求め、前記合計値、前記合計値の平方根、前記合計値の平方根の2倍、前記合計値の平方根の3倍、または前記合計値の平方根の6倍の値のいずれかを評価指標として算出する工程と、
前記CD値、前記標準偏差、および前記評価指標のそれぞれの値が、予め設定されたそれぞれの基準値を満たす場合に、前記半導体ウエハを合格と判定して、次の半導体プロセスへ投入する工程と、および
前記CD値、前記標準偏差、および前記評価指標の少なくとも1つの値が、予め設定されたそれぞれの基準値を満たさない場合に、前記半導体ウエハを不合格と判定して、前記半導体ウエハを前記形成されたパターンを再度形成し直す半導体プロセスへ投入する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−38779(P2006−38779A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222737(P2004−222737)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】