説明

パターン検査装置およびパターン検査方法

【課題】微細パターンを有する製品のパターン計測を含めた検査のために照明光によるパターン画像を撮像する方式の検査装置において、簡便に検査領域外からの光の外乱影響を除去する検査装置を提供すること。
【解決手段】平面基板2aを載置するステージ1と、このステージに載置された平面基板の被検査物2bを照明する光源7と、被検査物を撮像する撮像装置8とを備えるパターン検査装置であって、平面基板に略平行に近接して設けられた液晶シャッター4を備え、この液晶シャッターが、被検査物の検査対象領域3に応じて、遮光領域5と透光領域6とを可変分割形成できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンを有する製品のパターン計測を含めた検査のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスクやカラーフィルタ等の微細パターンを有する製品のパターン計測を含めた検査において、被検査物の検査対象領域は、パターン形成された基板表面の全域の場合もあれば、特定領域のみの場合もある。後者の特定領域の例として、XY方向に同パターンで同サイズの領域が多面付けされた場合の一個の面や、異種パターンが複数面付けされたハイブリッドタイプの場合の限定領域など多種多様である。
【0003】
このような被検査物を検査する装置で、少なくともエリアカメラ、ラインカメラといった撮像素子を使用する場合には、検査対象領域外を通る照明光の明るさが検査対象領域内の画像輝度に影響を及ぼし、ダイナミックレンジを低下させることがある。また、検査対象領域外に形成されたパターンが多重反射等を引き起こすことで対象領域内に写り込み、検査の性能を劣化させてしまうことがある。
【0004】
上記の問題への対策として、メカ的に部分遮光するマスクを用意し、検査対象領域外を遮光した状態で画像取込を行うことで外乱影響を除去することができる。また、対象領域に写り込んだ部位をソフト的に除去するなどの手法を用いることもある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−76216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被検査物の各種パターンに対してメカ的に1対1に対応させた遮光マスクを用意して、検査の不必要な領域を遮光する方法は、被検査物が多品種になると、各々に対応する遮光マスクの作製と交換設置が非常に多くの負荷を要する。また、ソフト的に除去する方法は、所定の結果を得るためにシーケンス動作が増し、検査開始から終了までの工程時間が長くなる。異種パターンが複数個面付けされたハイブリッドタイプの場合は尚更で、各パターン毎に同動作が必要となるので膨大な処理時間が必要となってしまう。
【0007】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、微細パターンを有する製品のパターン計測を含めた検査のために照明光によるパターン画像を撮像する方式の検査装置において、簡便に検査領域外からの光の外乱影響を除去する検査装置を提供することである。また、本発明が解決しようとする他の課題は、前記検査装置を使用するパターン検査方法において、簡便に検査領域外からの外乱影響を除去する効果の大きい検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、透明な平面基板上に形成された被検査物のパターンを検査するパターン検査装置において、平面基板を載置するステージと、このステージに載置された平面基板の被検査物を照明する光源と、被検査物を撮像する撮像装置とを備えるパターン検査装置であって、平面基板に略平行に近接
して設けられた液晶シャッターを備え、この液晶シャッターが、被検査物の検査対象領域に応じて、遮光領域と透光領域とを可変分割形成できるものであることを特徴とするパターン検査装置である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記液晶シャッターが、前記遮光領域として垂直配向型の暗状態(黒状態)を形成する方式であることを特徴とする請求項1に記載のパターン検査装置である。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記液晶シャッターと前記被検査物との平面位置合わせ状態を検知する手段を有し、前記平面位置合わせ状態に応じて、前記液晶シャッターが前記遮光領域と透光領域とを可変分割形成する位置を修正する機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載のパターン検査装置である。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のパターン検査装置を使用するパターン検査方法であって、前記液晶シャッターの透光領域内の液晶画素の明状態(白状態)の画素の密度を該領域内で均一な任意の値に制御することによって、該領域の明るさを設定することを特徴とするパターン検査方法である。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記被検査物としてフォトマスクを対象とする請求項4に記載のパターン検査方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、遮光領域と透光領域とを可変分割形成できる液晶シャッターを設置することで、検査対象領域を任意に限定でき、各種パターン毎に遮光マスクを作製して交換設置する必要が無く、簡便に検査領域外からの光の外乱影響を除去する検査装置を提供することができる。また、前記検査装置を使用するパターン検査方法において、簡便に検査領域外からの光の外乱影響を除去する効果の大きい検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の装置の主な構成を説明するための概念図である。
【図2】本発明に使用する液晶シャッターの例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態を図面に従って説明する。図1は、本発明の装置の主な構成を説明するための概念図である。
【0016】
透明な平面基板2a上に形成された被検査物2bの検査対象領域3を限定して検査する例を示す。図では詳細パターンを省略するが、検査対象領域3の中に一群のパターンがあり、微細パターンも含まれている。被検査物2bがフォトマスクやカラーフィルタの場合においても同様である。白抜きで表現される検査対象領域3は、複数の領域を選ぶことができ、また、網掛けされた複数の枠は、検査対象領域でない他のパターン領域を示す。
【0017】
本発明の検査装置は、前記被検査物2bが形成された平面基板2aと、従って前記平面基板2aを載置するために設けられた検査用のステージ1と略平行に近接して、液晶シャッター4を設けることを特徴とする。液晶シャッター4は、遮光領域5と透光領域6とを可変分割形成できるものであって、透光領域6が前記被検査物2bの前記検査対象領域3に対応するように遮光領域5と透光領域6との境界線を決めればよい。
【0018】
平行に近接対面した上述の平面基板2aと液晶シャッター4の組の一方の側に照明光源7を設け、他方の側に撮像装置8を設ける。これにより、検査対象領域3を通過する照明
光のみによる透過光パターンの信号を撮像装置8に入力できる。図に示すように、液晶シャッター4の側から照明する方が、光の外乱影響を上流で除去する点で、より好ましい。照明光源7としては、通常の検査用光源が使用でき、撮像装置8としては、一般的な固体撮像カメラ等が用いられる。被検査物2bの検査対象領域3の広がりと撮像のための走査方式により、ラインセンサを撮像装置8として使用することもできる。
【0019】
前記平面基板2aと液晶シャッター4との位置合わせは、本来、正確でなければならないが、液晶シャッター4の前記遮光領域5と透光領域6とを可変分割形成する位置の修正機能を別途設けることにより、機械的な位置合わせの精度を必ずしも高くする必要が無くなる。すなわち、前記液晶シャッター4と前記平面基板2a上の被検査物2bとの平面位置合わせ状態を検知する手段9を設け、検知結果の情報を処理して、液晶シャッターに形成する各領域の位置修正量を算出して補正指示するための制御系10を設けることにより、上述の位置修正機能が得られる。前記平面位置検知手段9として、レーザを利用した位置センサを用いることができる。前記制御系10は、撮像装置8からの情報処理も併せて行うことができ、また、処理結果に基づいて、液晶シャッター4への指示および駆動を行うことができる(図示せず)。
【0020】
前記液晶シャッター4の方式は種々可能であり、アクティブマトリクス駆動のタイプでは、TN型、IPS型、VA型等が代表的である。特にVA型(垂直配向型)は、遮光領域5をつくるための暗状態(黒状態)として液晶に印加される電圧のOFF状態を用い、液晶層を上下から挟み込む2枚の偏光板の偏光方向を直交させて使用することにより、光の漏れの少ない良質な黒を得ることができるので、透光領域6との高いコントラストを得る上で好ましい。前記TN型やIPS型においては、光の漏れの少ない黒を得ることが難しく、遮光領域5と透光領域6との高いコントラストを得る上では不利となる。
【0021】
図2は、本発明に使用する液晶シャッターの例を説明するための断面模式図である。
液晶層15を挟む2枚のガラス基板11の内面側に、一方は、共通電極12と配向膜14が形成され、他方は画素電極13と配向膜14が形成される。それぞれのガラス基板11の外面側には、偏光板16、17を偏光方向を直交させて貼り付ける。ブロック矢印18は照明光を示し、液晶シャッターにより、選択された透過光19が得られる。
【0022】
前述の垂直配向型液晶を用いた液晶シャッターにおいて、液晶層に印加する電圧を制御することにより、V=0の画素は暗状態(黒状態)とし、V=Vthの一定電圧とする画素は明状態(白状態)とすることができる。液晶シャッターの各画素は、異なる電圧をかけることで液晶分子の向きを変え、光の透過を制御することにより明るさを調整できるが、電圧一定で、液晶シャッターの透光領域6内の明状態(白状態)の画素の密度を均一に制御することによって、該領域の明るさを自由に設定することも可能である。
【0023】
なお、上述のように一群の透光領域6内の画素が白/黒混合した状態であっても、撮像装置8により検出される画像は被検査物2bの検査対象領域3に焦点を合わせるので、撮像倍率を高くしても液晶シャッター4の画素が検出画像を乱すことは無く、明るさの調節機能のみを発揮することができる。
【0024】
特に前記被検査物2bとして、フォトマスクを対象とする場合は、検査対象領域3のパターンの微細化が著しく、光学的な外乱の影響を受け易いため、明るさの調節を容易に行える本発明のパターン検査方法が有力である。
【0025】
一般的な液晶表示装置では、カラーフィルタと呼ばれる部材によってカラー化を実現させている。本発明では、単純に透過光をON/OFF制御するシャッターとしての機能を必要とするだけであるので、カラーフィルタは基本的に不必要としているが、種々の検査
内容により、カラーフィルタによってカラー化させて、照明光および撮像装置への入力光の波長分布を限定することも可能である。
また、最終段の偏光板後の光に対してλ/2やλ/4板を付加することで、直線偏光を円偏光にしたりする光学的な工夫を加え、その光を被検査物に照射することで効果があるような検査計測用途に用いることも容易に考えられる。
【0026】
このように遮光領域を任意選択させた状態で、エリアカメラやラインカメラといった撮像素子を用いて検査画像を得ることで、検査領域外の外乱要因を取り除いた画像に対して画像処理を実施し、高精度な結果を簡便に得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1・・・ステージ
2a・・平面基板
2b・・被検査物
3・・・検査対象領域
4・・・液晶シャッター
5・・・遮光領域
6・・・透光領域
7・・・照明光源
8・・・撮像装置
9・・・平面位置検知手段
10・・制御系
11・・ガラス基板
12・・共通電極
13・・画素電極
14・・配向膜
15・・液晶層
16、17・・偏光板
18・・照明光
19・・透過光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な平面基板上に形成された被検査物のパターンを検査するパターン検査装置において、平面基板を載置するステージと、このステージに載置された平面基板の被検査物を照明する光源と、被検査物を撮像する撮像装置とを備えるパターン検査装置であって、平面基板に略平行に近接して設けられた液晶シャッターを備え、この液晶シャッターが、被検査物の検査対象領域に応じて、遮光領域と透光領域とを可変分割形成できるものであることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
前記液晶シャッターが、前記遮光領域として垂直配向型の暗状態(黒状態)を形成する方式であることを特徴とする請求項1に記載のパターン検査装置。
【請求項3】
前記液晶シャッターと前記被検査物との平面位置合わせ状態を検知する手段を有し、前記平面位置合わせ状態に応じて、前記液晶シャッターが前記遮光領域と透光領域とを可変分割形成する位置を修正する機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載のパターン検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のパターン検査装置を使用するパターン検査方法であって、前記液晶シャッターの透光領域内の液晶画素の明状態(白状態)の画素の密度を該領域内で均一な任意の値に制御することによって、該領域の明るさを設定することを特徴とするパターン検査方法。
【請求項5】
前記被検査物としてフォトマスクを対象とする請求項4に記載のパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−58965(P2011−58965A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209236(P2009−209236)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】