説明

パッケージトレイ

【課題】下部収納部を使用することによりパッケージトレイの下面側に荷物を収納可能にする一方で、下部収容部を使用しないときには荷室に広いラゲージスペースを確保する。
【解決手段】本発明は、車両における荷室50の上方に配置されたパッケージトレイ10であって、板状のトレイ本体部20と、トレイ本体部20の車両後方側に設けられたストッパ取付孔25と、車両前方側がトレイ本体部20に回動可能に支持されるとともに車両後方側がトレイ本体部20の下面に対して開閉可能とされた枠材30と、枠材30に張設された柔軟部材31と、枠材30の後端部に設けられ、ストッパ取付孔25と係合することにより枠材30を閉じた状態に固定するストッパ33とを備え、トレイ本体部20の下面と柔軟部材41との間に下部収納部60が形成される構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における荷室の上方に配置されたパッケージトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパッケージトレイとして、下記特許文献1に記載のパッケージトレイが知られている。このパッケージトレイは、トレイ本体部の下面側に設けられた下部収納部を備えている。この下部収納部は箱形をなし、後方に開口している。この後方開口部から下部収納部の内部に荷物を収納することができる。
【特許文献1】特開平10−138840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の下部収納部は箱形をなしており、使用の有無にかかわらず、荷室のラゲージスペースを狭めてしまう。このため、大きな荷物を積載する際には、下部収納部が不要になるものの、下部収納部がパッケージトレイの一部として構成されているため、下部収納部を取り外すことはできない。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、下部収納部を使用することによりパッケージトレイの下面側に荷物を収納可能にする一方で、下部収容部を使用しないときには荷室に広いラゲージスペースを確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両における荷室の上方に配置されたパッケージトレイであって、板状のトレイ本体部と、トレイ本体部の車両後方側に設けられた被係合部と、車両前方側がトレイ本体部に回動可能に支持されるとともに車両後方側がトレイ本体部の下面に対して開閉可能とされた枠材と、枠材に張設された柔軟部材と、枠材の後端部に設けられ、被係合部と係合することにより枠材を閉じた状態に固定する係合部とを備え、トレイ本体部の下面と柔軟部材との間に下部収納部が形成される構成としたところに特徴を有する。
【0006】
このような構成によると、下部収納部に荷物を収納する際には、枠材を開いた状態とし、柔軟部材を撓ませることで柔軟部材に荷物を載せた後、枠材を閉じて係合部を被係合部に係合させることにより、枠材を閉じた状態に保持する。これにより、パッケージトレイの下面側に形成されるデッドスペースを利用して荷物を収納することができる。一方、荷室に大きな荷物を積載したいときには、下部収納部に収納された荷物を取り出して柔軟部材を平坦な形状に戻すことにより、荷室に広いラゲージスペースを確保することができる。
【0007】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
下部収納部は、トレイ本体部の左右両側部と枠材の左右両側部とを連結し、開いた状態における枠材を保持する一対の保持部材を備えて構成してもよい。
このような構成によると、両保持部材によって枠材を開いた状態に保持できる。
【0008】
両保持部材は、枠材を閉じることにより下部収納部の内部に収納される構成としてもよい。
このような構成によると、枠材を閉じたときに両保持部材が下部収納部の外部にはみ出さないため、パッケージトレイの意匠的効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下部収納部を使用することによりパッケージトレイの下面側に荷物を収納することができる一方で、下部収容部を使用しないときには荷室に広いラゲージスペースを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3の図面を参照しながら説明する。本実施形態におけるパッケージトレイ10は、図1に示すように、車両における荷室50の上方に配置される。このパッケージトレイ10は、図3に示すように、板状のトレイ本体部20、ネット(本発明の「柔軟部材」の一例)31が張設されてなる枠材30、トレイ本体部20の下面側における左右両側部と枠材30の左右両側部とを連結する一対の保持部材40などによって構成されている。なお、以下の説明において前側(前方)とは車両前後方向を基準として車両前方側のことをいい、後側(後方)とは車両前後方向を基準として車両後方側のことをいう。
【0011】
トレイ本体部20は、平面部21と、平面部21の外周縁部において上方に膨出した形態をなす外周壁部22とを備えて構成されている。トレイ本体部20は、合成樹脂材料、木質系材料などによって構成されている。また、トレイ本体部20は、合成樹脂材料からなるものは射出成形、ブロー成形により成形され、木質系材料からなるものは、ボード状に形成された成形前基材を熱プレスすることによって所定の形状に成形されている。
【0012】
荷室50の左右両側を構成する側壁(デッキサイド)には、図1に示すように、一対のデッキサイドトリム51が取り付けられている。両デッキサイドトリム51の上部には、一対の台座52が設置されている。左右の両台座52上にトレイ本体部20の左右両側部を載置することで、トレイ本体部20が荷室50の上方に配置されている。
【0013】
両台座52の側面には、左右方向内側に突出する一対の支持ピン53が設けられている。一方、外周壁部22の左右両側部には、下方に切り欠かれた一対の切り欠き溝23が形成されている。両切り欠き溝23は、両支持ピン51によって支持されている。これにより、トレイ本体部20は、両支持ピン51の軸心を通る回動軸を中心として上下方向に回動可能に支持されている。
【0014】
枠材30は、可撓性を有する合成樹脂材料によって形成されている。枠材30には、ネット31に所定の張力が付与された状態でネット31の外周縁部が溶着または係止されている。これにより、ネット31は、自然状態において平坦な形状に保持されている。
【0015】
枠材30の左右両側部における前側には、一対のヒンジ部32が設けられている。両ヒンジ部32は、枠材30の前端部30Fよりもやや前方に突出した位置に設けられている。両ヒンジ部32は、左右方向内側(両ヒンジ部32が互いに対向する側)に突出して設けられている。また、枠材30の後端部30Rにおける中央には、ストッパ(本発明の「係合部」の一例)33が後方に突出して設けられている。
【0016】
トレイ本体部20において両ヒンジ部32と対応する位置には、一対のヒンジ開口24が設けられている。両ヒンジ開口24は、両ヒンジ部32を挿通可能とする幅広部と、この幅広部から前方に延びる幅狭部とから構成されている。
【0017】
両ヒンジ部32は、両ヒンジ開口24の幅広部を通って平面部21の下面側から上面側に挿入された後、幅狭部に向けて前方に押し込まれることにより、平面部21の上面によって支持される。これにより、枠材30は、両ヒンジ部32の軸心を通る回動軸を中心として回動可能に支持される。したがって、枠材30の後端部30Rは、図1に示す開放位置と図2に示す閉止位置との間で、トレイ本体部20の下面に対して開閉可能とされる。
【0018】
トレイ本体部20の外周壁部21においてストッパ33と対応する位置には、ストッパ取付孔(本発明の「被係合部」の一例)25が開口している。これにより、ストッパ取付孔25にストッパ33が内側から差し込まれることにより枠材30の後端部30Rが閉止位置に保持される。
【0019】
両保持部材40は可撓性を有する布材などによって構成されている。両保持部材40は、詳細にはトレイ本体部20の下面側における左右両側部と枠材30の左右両側部とを連結することにより設けられている。両保持部材40によって枠材30の左右両側部が支持されることにより、枠材30の後端部30Rが開放位置に保持される。一方、枠材30の後端部30Rが閉止位置に移動したときに、両保持部材40が内側に折り畳まれた状態となる。
【0020】
上記した構成によると、ネット31とトレイ本体部20の下面との間に、下部収納部60が形成される。枠材30の後端部30Rが開放位置にあるときには、枠材30の後端部30Rとトレイ本体部20の下面との間に後部開口が形成され、この後部開口からネット31上に荷物を載せることができるようになっている。ネット31は、荷物の自重によって荷室50側に撓み変形し、ネット31が荷物を包み込むようにして荷物が支持される。この後、枠材30の後端部30Rを閉止位置に移動させ、ストッパ33をストッパ取付孔25に嵌め込むと、後部開口が閉止され、枠材30の後端部30Rが閉止位置に保持される。
【0021】
一方、ネット31上に荷物を載せないで枠材30の後端部30Rを閉止位置に保持した状態では、ネット31がトレイ本体部20の下面に沿って配置されるため、荷室50に広いラゲージスペースを確保することができる。このとき、保持部材40は、下部収納部60の内部に収納され、外部にはみ出さないため、パッケージトレイ10の意匠的効果を高めることができる。
【0022】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、下部収納部60を使用する場合には、図1に示すように、枠材30の後端部30Rを開放位置にセットする。枠材30は、両保持部材40によって支持されているため、枠材30の後端部30Rが開放位置よりも下方に移動してしまうことが規制される。このとき、枠材30の後端部30Rとトレイ本体部20の下面との間には、後部開口が形成され、この後部開口から下部収納部60の内部に荷物を搬入する。荷物は、ネット31上に載置され、ネット31が下方に撓んだ状態となる。この後、枠材30の後端部30Rを上方に移動させると、両ヒンジ部32によって回動し、ストッパ33をストッパ取付孔25に嵌め込むことにより、枠材30の後端部30Rが閉止位置に保持される。
【0023】
次に、下部収納部60を使用しない場合には、図2に示すように、ストッパ33をストッパ取付孔25に嵌め込むことにより、枠材30の後端部30Rを閉止位置に保持させる。このとき、荷室50には、両保持部材40がはみ出ていないので、パッケージトレイ10の見栄えを良くすることができる。さらに、ネット31は平坦な形状とされており、トレイ本体部20の下面に沿って配置されているため、荷室50に広いラゲッジスペースを確保することができる。したがって、荷室50に大きな荷物を積載することができる。
【0024】
以上のように本実施形態では、必要に応じて下部収納部60に荷物を収納することができ、下部収納部60を使用しないときには、荷室50に広いラゲッジスペースを確保することができる。このとき、ストッパ33をストッパ取付孔25に嵌め込んで係合させることにより枠材30の後端部30Rを閉止位置に保持できるとともに、枠材30の左右両側部を両保持部材40によって支持することにより枠材30の後端部30Rを開放位置に保持できる。さらに、両保持部材40は、閉止位置において下部収納部60の内部に収納されるため、パッケージトレイ10の意匠的効果を高めることができる。
【0025】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図4を参照しながら説明する。本実施形態におけるパッケージトレイ11は、実施形態1におけるヒンジ部32の保持構造を一部変更したものであって、その他の共通する構成、作用、および効果については実施形態1と重複するため、説明を省略する。本実施形態では、図4に示すように、トレイ本体部26が上側半割体26Aと下側半割体26Bとによって構成されている。下側半割体26Bには、ヒンジ部32を通過させるヒンジ開口24が設けられており、この点は実施形態1と共通する。ヒンジ開口24の前方には、ヒンジ部32を弾性的に挟み付けて回動可能に支持する弾性片27が設けられている。このため、ヒンジ部32は、弾性片27によって外れ止めされた状態で回動可能となっている。さらに、上側半割体26Aにおいて弾性片27と対応する位置は、上方に膨出した形態となっているため、上側半割体26Aと弾性片27との干渉が回避されている。このようにすると、パッケージトレイ11の見栄えを良くしつつ、ヒンジ部32の外れ止めをすることができる。
【0026】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図5を参照しながら説明する。本実施形態におけるパッケージトレイ12は、トレイ本体部28が実施形態1とは異なる製造方法で成形されたものである。すなわち、本実施形態のトレイ本体部28はブロー成形によって形成されており、ヒンジ開口24がブロー成形における空気の吹き込み口とされている。このようにすると、パッケージトレイ12を中空にすることができるため、パッケージトレイ12を軽量化することができる。また、ヒンジ部32が外部から見えないため、パッケージトレイ12の見栄えを良くすることができる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態ではネット31によって柔軟部材を構成したものの、本発明によると、伸縮可能な布材などによって柔軟部材を構成してもよい。
【0028】
(2)本実施形態ではストッパ33をストッパ取付孔25に嵌合することによって両者を係合させるものを例示しているものの、本発明によると、凹凸嵌合以外の係合手段を用いてもよい。例えば、ストッパ33の代わりにL字状のフックを用いてトレイ本体部20に引っ掛けるようにしてもよい。
【0029】
(3)本実施形態では保持部材40を可撓性を有する布材によって構成しているものの、本発明によると、保持部材としてワイヤなどを用いてもよい。
【0030】
(4)本実施形態では両保持部材40が折り畳まれて下部収納部60の内部に収納されるものを例示しているものの、本発明によると、両保持部材40が圧縮されることにより下部収納部60の内部に収納されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態1において下部収納部に荷物を収納可能な状態を示した斜視図
【図2】実施形態1において下部収納部を使用しない状態を示した斜視図
【図3】実施形態1におけるパッケージトレイの分解斜視図
【図4】実施形態2におけるヒンジ部の保持構造を示した断面図
【図5】実施形態3におけるトレイ本体部の内部構造を示した断面図
【符号の説明】
【0032】
10,11,12…パッケージトレイ
20,26,28…トレイ本体部
25…ストッパ取付孔(被係合部)
30…枠材
31…ネット(柔軟部材)
33…ストッパ(係合部)
40…保持部材
50…荷室
60…下部収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における荷室の上方に配置されたパッケージトレイであって、
板状のトレイ本体部と、
前記トレイ本体部の車両後方側に設けられた被係合部と、
車両前方側が前記トレイ本体部に回動可能に支持されるとともに車両後方側が前記トレイ本体部の下面に対して開閉可能とされた枠材と、
前記枠材に張設された柔軟部材と、
前記枠材の後端部に設けられ、前記被係合部と係合することにより前記枠材を閉じた状態に固定する係合部とを備え、
前記トレイ本体部の下面と前記柔軟部材との間に下部収納部が形成されることを特徴とするパッケージトレイ。
【請求項2】
前記下部収納部は、前記トレイ本体部の左右両側部と前記枠材の左右両側部とを連結し、開いた状態における前記枠材を保持する一対の保持部材を備えて構成されているパッケージトレイ。
【請求項3】
前記両保持部材は、前記枠材を閉じることにより前記下部収納部の内部に収納される請求項2に記載のパッケージトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137645(P2010−137645A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314447(P2008−314447)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】