説明

パッチ転写媒体の製造方法、及びパッチ転写媒体

【課題】
繊維質素材へ転写でき、転写後には耐擦傷性に優れ、低コストで、環境負荷の少ないパッチ転写媒体、パッチ転写媒体の製造方法及びパッチ転写繊維質素材を提供する。
【解決手段】
(1)透明基材11/ホログラム層15/反射層17/印刷層18からなる転写材10準備工程と、(2)支持基材31/離型層13を設けてなる支持材30準備工程と、(3)離型層13面へ未硬化なハードコート層形成工程と、(4)未硬化なハードコート層面と透明基材11面とを未硬化な接着剤層で積層した後に、電離放射線を照射して硬化させる積層工程と、(5)印刷層18面へホットメルトからなる接着層19を設ける接着層形成工程と、(6)ハードコート層14/接着剤層29/透明基材11/ホログラム層15/反射層17/印刷層18/接着層19からなる転写部23を、ハーフカット処理してパッチ21とするハーフカット処理工程と、とからなることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチ転写媒体の製造方法に関し、さらに詳しくは、少なくとも耐擦傷性に優れる電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層、及び意匠性に優れるホログラム層を有するパッチを繊維質基材へ転写性よく転写でき、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化なハードコート層及び電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層の2層を電離放射線の1回の照射で同時に硬化させて、硬化したハードコート層及び硬化した接着剤層とすることで、低コストで製造できるパッチ転写媒体の製造方法、及びパッチ転写媒体、転写後は電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層及び電離放射線硬化樹脂を主成分とする接着剤層の2層が最表面となって耐擦傷性に優れ、かつ意匠性に優れるホログラムを有するパッチ転写繊維質素材に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「ドライラミネーション」は「DLM」の略語、同意語、機能的表現、通称、又は業界用語である。また、「ホログラム」は「ホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。さらに、電離放射線硬化性樹脂は電離放射線の照射で硬化して電離放射線硬化樹脂となる。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明のパッチ転写媒体の製造方法、パッチ転写媒体を用いてパッチを転写してなるパッチ転写繊維質素材(媒体)の主なる用途としては、例えば、Tシャツなどの衣類、カートン、ケース、外装紙などの包装材類、バッグ類などの装身具、鑑賞券、グリーティングカード、封筒、タグ、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、ネームプレート、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、履物、靴などの類などがある。しかしながら、転写後には電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層が最表面となって耐擦傷性に優れ、かつ意匠性に優れるホログラムを有するパッチを低コストで製造でき、かつ、アイロン等で加熱加圧することで転写する用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)近年、個人の好みが多様化し個性化が進み、多くの個人向け商品は多品種小ロット生産の傾向が高まっている。ステーショナリーやアパレル製品では、1個人に1つのオンリーワン製品までが要望されている。しかしながら、従来の布や紙などの繊維質素材、例えばTシャツへの装飾の形成は直接スクリーン印刷するか、転写紙へオフセットやスクリーン印刷法で印刷した後に、Tシャツへ転写する方法のために、転写後には装飾がが最表面となって耐久性に劣るという問題点があった。
また、装飾面へ、熱転写性樹脂層を有するハードコート層熱転写フィルムを重ね合わせ、アイロンや加熱ロール等を用いて、透明性を有する熱転写性樹脂層を転写させ、装飾上に保護層を形成することが行われている。しかしながら、上記の保護層はアイロン又は熱ロールによる転写時に、部分的に転写する必要があることから、箔切れ性を有する必要がある。この場合、保護層を数ミクロン程度の厚さの樹脂膜にせざるを得ないことから、強靱な耐擦傷性、耐薬品性等の耐久性を持たせることが出来ないという欠点があった。
さらに、PETやOPPフィルムと共に転写するタイプもあるが、該フィルムは特に鋭利なものによる耐擦傷性に劣り、傷付き易いという問題点があった。
従って、布や紙などの繊維質素材への装飾は、意匠性に優れるホログラムを有するパッチ転写媒体をアイロン等で加熱加圧することで容易に転写でき、かつ、転写後は電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層及び電離放射線硬化樹脂を主成分とする接着剤層の2層が最表面となって耐擦傷性に優れるパッチ転写繊維質素材、かつまた、パッチ転写媒体自身は電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化なハードコート層及び電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層の2層を電離放射線の1回の照射で同時に硬化させて、硬化したハードコート層及び硬化した接着剤層とすることで、低コストで製造できるパッチ転写媒体の製造方法がが求められている。
【0005】
(先行技術)従来、本出願人は基材、剥離性樹脂層、保護機能を兼ねたホログラム層、反射層及び接着層を設けてなるホログラム転写箔が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、転写時には部分的な転写であり、箔切れ性をよくするために、ホログラム層を数ミクロン程度の厚さの樹脂膜にせざるを得ず、媒体の表面へ転写されて最表面となり、多数回の繰り返し使用されると、強靱な耐擦傷性や耐溶剤性などの耐久性に欠けるという欠点がある。
また、本出願人は樹脂層を設けたシート基材と、ホログラム形成層と受容層を設けた透明シートが積層され、ホログラム形成層及び受容層を含めて透明シート部にハーフカット処理が施され、樹脂層と透明シートの間で剥離する中間転写記録媒体を開示している(例えば、特許文献2〜3参照。)。しかしながら、受容層が必須で、該受容層へ印画して再転写するもので、媒体へ印画された画像の耐擦傷性や耐溶剤性などの耐久性を付与することについては言及していないという欠点がある。
さらに、本出願人は(A)透明基材の一方の面に、メッシュ状領域と接地用領域40を有する導電体層が積層され、メッシュ状領域に平坦化処理が施されてなる電磁波遮蔽シート1と、(B)一方の面に接着剤層が積層され、接地用領域40の少なくとも一部を露出することが可能な、接着性光学フィルタ20とを、接着性光学フィルタ20の接着剤層側を、電磁波遮蔽シート1の導電体層側に向け、且つ接着性光学フィルタ20が電磁波遮蔽シート1におけるディスプレイの画像表示領域部分直上に対峙する様に連続供給して、接着、及び積層し、電磁波遮蔽シート1の側端縁を接地用領域40として露出させるディスプレイ用複合フィルタの製造方法を開示され(例えば、特許文献4参照。)、この明細書中に、導電体層貼り付け用の接着剤として電離放射線硬化性樹脂が例示(0028)され、かつ、機能発現層のうちハードコート層として電離放射線硬化性樹脂を用いた塗膜(0052)も記載されている。しかしながら、前記接着剤及び前記ハードコート層の2層を、電離放射線で同時に硬化させる点については何ら記載されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2008−9134号公報
【特許文献2】特開2002−274060号公報
【特許文献3】特開2004−284096号公報
【特許文献4】特開2007−258557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、布や紙などの繊維質素材への装飾は、意匠性に優れるホログラムを有するパッチ転写媒体をアイロン等で加熱加圧することで容易に転写でき、かつ、転写後は電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層及び電離放射線硬化樹脂を主成分とする接着剤層の2層が最表面となって耐擦傷性に優れるパッチ転写繊維質素材、かつまた、パッチ転写媒体自身は電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化なハードコート層及び電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層の2層を電離放射線の1回の照射で同時に硬化させて、硬化したハードコート層及び硬化した接着剤層とすることで、低コストで製造できるパッチ転写媒体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、
請求項1の発明に係わるパッチ転写媒体の製造方法は、(1)透明基材と、該透明基材の一方の面にホログラム層、反射層及び印刷層を設けてなる転写材を準備する転写材準備工程と、(2)支持基材と、該支持基材の一方の面へ離型層を設けてなる支持材を準備する支持材準備工程と、(3)前記支持材の離型層面へ、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化なハードコート層形成工程と、(4)前記未硬化なハードコート層面と前記転写材の透明基材面とを、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層を介して積層した後に、電離放射線を照射し前記未硬化なハードコート層及び前記未硬化な接着剤層を同時に硬化させて、硬化したハードコート層及び硬化した接着剤層とすることで積層体とする積層工程と、(5)前記積層体の前記印刷層面へ、ホットメルトからなる接着層を設ける接着層形成工程と、(6)上記硬化したハードコート層、硬化した接着剤層、透明基材、ホログラム層、反射層、印刷層及び接着層からなる構成を転写部とし、該転写部をハーフカット処理を施してパッチとし、該パッチが前記支持材の離型層面へ剥離可能に積層されているようにするハーフカット処理工程と、からなるように、したものである。
請求項2の発明に係わるパッチ転写媒体は、請求項1に記載のパッチ転写媒体の製造方法で製造されたパッチ転写媒体であって、上記硬化したハードコート層、硬化した接着剤層、透明基材、ホログラム層、反射層、印刷層及び接着層から構成される転写部をハーフカット処理を施してパッチとし、該パッチが前記支持材の離型層面へ剥離可能に積層されているように、したものである。
請求項3の発明に係わるパッチ転写繊維質素材は、請求項2に記載のパッチ転写媒体の前記接着層面と繊維質素材からなる被転写体とを重ね合わせて、アイロンで加熱加圧した後に、前記支持基材及び離型層とを剥離し除去することで、前記パッチが前記被転写体へ転写されてなり、最表面が硬化したハードコート層となることで耐擦傷性に優れ、かつ意匠性に優れるホログラムを有するように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、布や紙などの繊維質素材への装飾は、意匠性に優れるホログラムを有するパッチ転写媒体をアイロン等で加熱加圧することで容易に転写でき、かつ、転写後は電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層及び電離放射線硬化樹脂を主成分とする接着剤層の2層が最表面となって耐擦傷性に優れ、また、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化なハードコート層及び電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層の2層を電離放射線の1回の照射で同時に硬化させて、硬化したハードコート層及び硬化した接着剤層とすることで低コストで製造でき、さらに、電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層、及び電離放射線硬性樹脂を主成分とする接着剤層は、無溶媒で塗布し硬化させて塗膜化できるので、溶媒を使用しない分が低コストで、溶媒を環境へ排出しないので、溶媒回収費用もなく、燃焼させて排出する場合の二酸化炭素の排出もなく、環境への負荷が少ないパッチ転写媒体の製造方法が提供される。
請求項2の本発明によれば、布や紙などの繊維質素材への装飾は、意匠性に優れるホログラムを有するパッチ転写媒体をアイロン等で加熱加圧することで容易に転写でき、かつ、転写後は電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層及び電離放射線硬化樹脂を主成分とする接着剤層の2層が最表面となって耐擦傷性に優れるパッチ転写媒体が提供される。
請求項3の本発明によれば、最表面の電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層及び電離放射線硬化樹脂を主成分とする接着剤層の2層が最表面となって、耐久性、特に耐擦傷性に優れるパッチ転写繊維質素材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明のパッチ転写媒体の製造方法を示すステップ図である。
図2は、本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ1の転写材準備工程で準備する転写材の断面図である。
図3は、本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ2の支持材準備工程で準備する支持材の断面図である。
図4は、本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ3のハードコート層形成工程後の断面図である。
図5は、本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ4の積層工程の説明と、積層工程後の積層体の断面図である。
図6は、本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ5の接着層形成工程後の断面図である。
図7は、本発明の1実施例を示すパッチ転写媒体の断面図である。
図8は、本発明のパッチ転写媒体を用いて繊維質基材への転写を説明する説明図である。
図9は、本発明のパッチ転写媒体を用いて転写した本発明の1実施例を示すパッチ転写繊維質素材の断面図である。
【0011】
(パッチ転写媒体の製造方法)本発明のパッチ転写媒体の製造方法について説明する。本発明のパッチ転写媒体の製造方法は、図1に示すように、
ステップ1S1の(1)透明基材11と、該透明基材11の一方の面にホログラム層15、反射層17及び印刷層18を設けてなる転写材10を準備する転写材準備工程と、ステップ2S2の(2)支持基材31と、該支持基材31の一方の面へ離型層13を設けてなる支持材30を準備する支持材準備工程と、ステップ3S3の(3)前記支持材30の離型層13面へ、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化なハードコート層形成工程と、ステップ4S4の(4)前記未硬化なハードコート層面と前記転写材10の透明基材11面とを、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層を介して積層した後に、電離放射線を照射し前記未硬化なハードコート層及び前記未硬化な接着剤層を同時に硬化させて、硬化したハードコート層14及び硬化した接着剤層29とすることで積層体50とする積層工程と、ステップ5S5の(5)前記積層体50の前記印刷層18面へ、ホットメルトからなる接着層19を設ける接着層形成工程と、ステップ6S6の(6)上記硬化したハードコート層14、硬化した接着剤層29、透明基材11、ホログラム層15、反射層17、印刷層18及び接着層19からなる構成を転写部23とし、該転写部23をハーフカット処理を施してパッチ21とし、該パッチ21が前記支持材30の離型層13面へ剥離可能に積層されているようにするハーフカット処理工程と、とからなっている。
【0012】
(ステップ1)ステップ1S1は(1)透明基材11と、該透明基材11の一方の面にホログラム層15、反射層17及び印刷層18を設けてなる転写材10を準備する。転写材10は図2に示すように、透明基材11と、該透明基材11の一方の面にホログラム層15、透明反射層17及び印刷層18からなっている。
【0013】
(透明基材)透明基材11としては、ハーフカット処理された部分を境界にして、ハードコート層14、接着剤層29、透明基材11、ホログラム層15、反射層17、印刷層18及び接着層19からなる構成を転写部23の1部として切断され、被転写体である繊維質基材101へ転写されて、ハードコート層14及び接着剤層29とともに保護機能を発現する。透明性と、耐候性、耐摩擦性、耐薬品性等の耐久性を有するものであれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレートなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、セロファンなどのセルロース系フィルムなどが例示できる。該透明基材11は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。
【0014】
また、該透明基材11は、延伸又は未延伸のフィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。厚は、通常2.5〜50μm程度が適用できるが、2.5〜25μmが好適である。該透明基材11は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。また、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えてもよい。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートのフィルムが、耐熱性、機械的強度がよいため好適に使用され。
【0015】
(ホログラム層)ホログラム層15としては、電離放射線硬化樹脂を主成分とし、必要に応じてシリコーンやフィラーなどの添加物を含ませてもよい。
【0016】
該電離放射線硬化性樹脂としては、好ましくは、(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂を用い、好ましくはポリエチレンワックスを含ませて、塗布し乾燥して電離放射線で硬化させて、電離放射線硬化樹脂とすればよい。
【0017】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂(本明細書では電離放射線硬化性樹脂組成物Mと呼称する)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物、具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂などが例示できる。具体的には、MHX405ニス(ザ・インクテック(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)、ユピマーUV・V3031(三菱化学(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)が例示できる。
【0018】
(ホログラム層の形成)ホログラム層15の形成は、上記の電離放射線硬化性樹脂を主成分とし、必要に応じてシリコーンやフィラー、光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して、ホログラム(レリーフ)を賦型後に電離放射線で反応(硬化)させればよい。ホログラム層15の厚さは、通常、1〜10μm程度、好ましくは2〜5μmである。
【0019】
(ホログラム)次に、ホログラム層15の表面には、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定の微細な凹凸(レリーフ構造)を賦型し、硬化させる。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。レリーフ形状は凹凸形状であり、特に限定されるものではなく、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものでもよく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンなどでもよい。
【0020】
ホログラム層15面へ、レリーフ形状を賦形(複製ともいう)する。ホログラムの賦型は、公知の方法によって形成でき、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記樹脂層上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。
【0021】
また、ホログラム層15に形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。ホログラム層15は、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、紫外線や電子線などの電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(微細な凹凸=レリーフ構造=ホログラム)となる。
【0022】
(反射層)反射層17は、所定のレリーフ構造を設けたホログラム層15面のレリーフ面へ、反射層17へ設けることにより、レリーフの反射及び/又は回折効果を高めるので、ホログラム層15の反射率のより高れば、特に限定されない。該反射層17としては、真空薄膜法などによる金属薄膜などの金属光沢反射層、又は透明反射層のいずれでもよいが、金属光沢反射層は部分的に設け、透明反射層は被転写体へ形成されている画像の面へ転写しても、画像が観察できるので好ましい。透明反射層としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム層15よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Au等の酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したもの等が例示できる。またアルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが200Å以下になると、透明性が出て使用できる。透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム層15のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより設ければよい。
【0023】
(印刷層)印刷層18としては、特に限定されず、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの公知の印刷法で、印刷すればよい。印刷図柄の色も特に限定されず、カラー、単色、複色、マタリックなどいずれでもよく、画像のパターンも特に限定されず、文字、記号、数字、イラスト、写真などいずれでもよい。図柄は転写されて基材11面から観察されるので、正常に観察できるように印刷すればよい。これを用いて、例えばTシャツへ転写すれば、好みに応じたホログラムと図柄を有するTシャツができる。
【0024】
(ステップ2)ステップ2S2は(2)支持基材31と、該支持基材31の一方の面へ離型層13を設けてなる支持材30を準備する。支持材30は図3に示すように、支持基材31へ離型層13が設けられている。
【0025】
(支持基材)支持基材31としては、特に限定されず、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、コート紙、合成樹脂またはエマルジョン含浸紙、あるいは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレートなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、セロファンなどのセルロース系フィルムなどのフィルムが例示できる。上記の支持基材31上に後述さる剥離性樹脂層33を設ける際に、接着性を向上させるために、支持基材31表面をコロナ放電処理したり、プライマー層を設けてもよい。
【0026】
支持材30は10μm〜100μmの厚みのものが好ましく、シート基材が薄すぎると得られるパッチ転写媒体20のいわゆるコシがなくなり、熱転写プリンターで搬送できなかったり、パッチ転写媒体20にカールやシワが発生したりする。一方、支持材30が厚すぎると、得られるパッチ転写媒体20が厚くなりすぎ、熱転写プリンタで搬送駆動させる力が大きくなりすぎて、熱転写プリンタに故障が生じたり、正常に搬送できなかったりする。
【0027】
(離型層)離型層13としては、通常、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがあるが、好ましくはメラミン系樹脂を用い、後述するハードコート層14と組合わせることで、離型層13との剥離性が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。離型層13の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層13の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
【0028】
(耐熱滑性層)パッチ転写媒体20では、必要に応じて、支持基材31の剥離性樹脂層33面と反対面に耐熱滑性層を設けてもよい。パッチ転写媒体20を用いて被転写体101へ再転写はサーマルヘッドやヒートロール等の熱転写プリンタが用いるので、その熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、耐熱滑性層を設けてもよい。耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0029】
また、耐熱滑性層に添加、又は上塗りする滑り性付与剤としては、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及び燐酸エステル系化合物からなる層であり、更に充填剤を添加することがより好ましい。耐熱滑性層は、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、支持基材31の背面に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等で塗布し乾燥して形成すればよい。
【0030】
(ステップ3)ステップ3S3は(3)前記支持材30の離型層13面へ、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化なハードコート層を形成すると、図4に示す構成となる。
【0031】
(ハードコート層)ハードコート層14としては、少なくとも電離放射線硬化樹脂を主成分とし、必要に応じてフィラーを含むようにする。硬化前の電離放射線硬化性樹脂としては、(イ)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(ロ)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(ハ)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで、電離放射線硬化性を有するウレタン変性アクリレート樹脂である。好ましいウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの詳細は、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂が好ましい。具体的には、MHX405ニス(ザ・インクテック(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)、ユピマーUV・V3031(三菱化学(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)が例示できる。
【0032】
(フィラー)フィラーとしてはマイクロシリカやポリエチレンワックスなどが例示でき、ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。その添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。転写後にはハードコート層14が最表面層となり、含まれるフィラーは、機械的な摩擦、及び摩耗から媒体を保護し、後述する画像などの固有情報も保護する。
【0033】
(1)ポリエチレンワックスを含ませることで、転写後にはハードコート層14が最表面層となるが、極めて過酷な環境での使用、長期間にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤、機械的な摩擦、及び摩耗から被転写体を保護し、傷付きにくく耐久性に優れる。(2)ハードコート層14はメラミン系樹脂を用いた離型層13と界面を接しているので、ハードコート層14と離型層13との間で剥離し、安定した剥離性となる。
【0034】
また、電離放射線硬化樹脂とフィラーを含むハードコート層14に、ポリエステル系樹脂を含ませることが好ましく、ポリエステル樹脂としては、数平均分子量が13000〜30000で、1分子当たり2〜10個の水酸基を有するポリエステルポリオールが柔軟性及び硬化時の低収縮性の点で好ましい。該ポリエステル樹脂としては、例えば、バイロン−200、バイロン−103、バイロン−600(以上、東洋紡績社製商品名)、アロンメルトPES310−S30(東亞合成化学工業社製商品名)などが例示でき、エリーテルUE3400シリーズ、UE3500シリーズ、UE3600シリーズ(以上、ユニチカ社製商品名)などの熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂に対するポリエステル樹脂の配合割合は質量基準で、電離放射線硬化性樹脂:ポリエステル樹脂=100:10〜40が好ましく、この範囲未満では硬化後のハードコート層14の柔軟性が不足し、かつ、硬化時の収縮性が大きく反ったりし、この範囲を超えるとハードコート性が不足する。
【0036】
(ハードコート層の形成)まず、未硬化なハードコート層を形成する。上記の電離放射線硬化性樹脂にポリエチレンワックス、必要に応じて、ポリエステル系樹脂、光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して、未硬化なハードコート層を形成する。なお、未硬化なハードコート層の紫外線などの電離放射線で硬化(反応)は、後述するステップ4S4の、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層を介して積層した後に、電離放射線を照射し前記未硬化なハードコート層及び前記未硬化な接着剤層を同時に硬化させる。
【0037】
(ハードコート層の厚味)本発明では、極めて過酷な環境での使用、使用期限がなかったり、長期にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤や機械的な摩擦及び摩耗、特に引掻きから保護し、傷付きにくい耐久性を付与するために、ハードコート層14の厚みは1〜25μm程度、好ましくは3〜15μmである。なお、未硬化なハードコート層が硬化するとやや薄くなるが僅かで誤差範囲内である。
【0038】
(ステップ4)ステップ4S4は(4)前記未硬化なハードコート層面と前記転写材の透明基材面とを、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層を介して積層した後に、電離放射線を照射し前記未硬化なハードコート層及び前記未硬化な接着剤層を同時に硬化させて、硬化したハードコート層及び硬化した接着剤層とすることで積層体50とし、図5に示すような構成となる。
【0039】
(積層工程)支持材30の離型層13面へ設けた未硬化なハードコート層面と、転写材10の透明基材11面とを、接着剤19を介してのドライラミネーション法で積層方する。ドライラミネーション法では通常ウレタン系2液接着剤を用いるが、本願発明の接着剤19としては、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層を介して積層した後に電離放射線を照射する。該電離放射線の1回の照射で、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化なハードコート層及び電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層の2層を同時に硬化させて、硬化したハードコート層14及び硬化した接着剤層29とすることで積層体50となり、低コストで製造できる。
【0040】
さらに、電離放射線硬化樹脂を主成分とするハードコート層、及び電離放射線硬性樹脂を主成分とする接着剤層は、無溶媒で塗布し硬化させて塗膜化できるので、溶媒を使用しない分が低コストで、溶媒を環境へ排出しないので、溶媒回収費用もなく、燃焼させて排出する場合の二酸化炭素の排出もなく、環境への負荷が少なくできる。

【0041】
(積層)未硬化な接着剤層は支持材30の離型層13面へ塗布してから、転写材10の透明基材11面とを重ね合せてもよく、この逆でもよい。また、支持材30の離型層13面、及び/又は転写材10の透明基材11面へ、接着促進のために、易接着処理やプライマ層を設けてもよい。
【0042】
(ステップ5)ステップ5S5は(5)前記積層体50の前記印刷層18面へ、ホットメルトからなる接着層19を設ける接着層形成工程であり、図6に示すような構成となる。
【0043】
(接着層)接着層19としては、常温または常圧では接着性がなく、加熱または加圧した時にのみ接着力を発揮する感熱または感圧接着剤であれば特に限定されないが、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂等の比較的低融点の樹脂が好ましい。上記のような樹脂を熱で熔融させて液状とし、ロールコート、コンマコートや、ホットマルトアプリケーター法で、塗布し冷却すればよい。被転写体がポーラスな繊維質基材101で浸透するので、厚味が30〜150μmが好ましい。また、接着層19には白色顔料、体質顔料、蛍光増白剤を含有させてもよく、これらは転写後の白色度を向上させたり、繊維質基材101の色を隠蔽することができる。
【0044】
(ステップ6)ステップ6S6は(6)上記硬化したハードコート層14、硬化した接着剤層29、透明基材11、ホログラム層15、反射層17、印刷層18及び接着層19からなる構成を転写部23とし、該転写部23をハーフカット処理を施してパッチ21とし、該パッチが前記支持材30の離型層13面へ剥離可能に積層されているようにするハーフカット処理工程である。
【0045】
(ハーフカット工程)ハーフカット処理法としては、カッター刃を取り付けた上型と台座の間に、カット前の積層状態のパッチ転写媒体20を挿入して、上型を上下動させる方法や、シリンダータイプのロータリーカッター方法、レーザー加工手段により熱処理加工方法等、ハーフカットできる方法であれば特に制限はない。パッチ21部分とそれ以外部分を除去しなくてもよいが、図7に示すパッチ転写媒体20の断面のように、ハーフカットしてパッチ21部分のみを残して、それ以外部分を予め剥離し除去しておく(当業者はカス取りという)のが好ましい。被転写体へパッチ21を転写する際に、ハーフカット処理された部分で透明基材11部が切断されることがなく、確実に転写することができる。
【0046】
なお、ハーフカットは、一般的には、パッチ21の回り一周分単位で連続的にカットを施す、四隅等の部分的にアンカット(全くカットがない)部分、ミシン目部分を設けたりして、熱転写プリンター搬送中等取扱で、ハーフカットの部分が剥離するトラブルを防ぐことができる。なお、支持材30の少なくとも1部はカットされず連続状にしておく。ハーフカット処理で切断の深さが深過ぎると、支持基材31まで切断されて、プリンター搬送中にハーフカット加工部で切断され、搬送トラブルが発生しやすくなる。
【0047】
パッチ21の形状としては、特に限定されないが、例えば矩形、楕円形、丸形、ドーナッツ形などが例示できる。ハーフカット処理されたパッチ21部分が被転写体の転写される全面の大きさよりも小さくてもよく、また、パッチ21部分が、被転写体に対して、部分的に抜けている部分があってもよく、さらに、パッチ転写媒体20の全幅が、被転写体の転写される面の幅よりも広くてもよい。
【0048】
(パッチ転写媒体)パッチ転写媒体20の転写部23はハーフカットされてパッチ21となり、支持材30の離型層13面へ剥離可能に積層されている。このように本発明のパッチ転写媒体の製造方法で製造された本発明のパッチ転写媒体20は、支持基材31/離型層13からなる離型層13面に、ハードコート層14/接着剤層29/透明基材11/ホログラム層15/反射層17/印刷層18/接着層19からなる転写部23をハーフカット処理したパッチ21が、剥離可能に積層されており、転写時には、離型層13とハードコート層14の界面で剥離し、硬化したハードコート層14面が最表面となり、硬化したハードコート層14/硬化した接着剤層29/透明基材11、の3層が強固な保護機能を発現する。
【0049】
(パッチ転写繊維質基材)図8に示すように、本発明のパッチ転写媒体20の接着層19面と繊維質素材101からなる被転写体とを重ね合わせて、アイロンなどで加熱加圧した後に、支持基材31/離型層13を剥離し除去することで、前記パッチ21が繊維質素材101へ転写され、図8のパッチ転写繊維質素材100となる。
【0050】
(被転写体)繊維質素材101が被転写体となるが、繊維質の素材であれば特に限定されず、紙パルプ、天然又は合成樹脂繊維、ガラス繊維などの繊維を、抄紙、織物、不織布などが例示できる。形態としても特に限定されず、例えば、ノート及びカタログなどの紙類、Tシャツ、エプロン、帽子などの衣類、靴類などが例示できる。また、繊維質素材101の媒体はその少なくとも1部に着色、印刷、その他の加飾が施されていてもよい。
【0051】
(転写方法)被転写体への転写する転写方法としては、公知の転写法でよく、アイロンを例示したが、例えば、熱刻印によるホットスタンプ(箔押)、熱ロールによる転写、サーマルヘッド(感熱印画ヘッド)によるサーマルプリンタ(熱転写プリンタともいう)などの公知の方法が適用できる。また、パッチ21の形状に合わせて加熱し転写してもよい。
【0052】
(耐久性)パッチ転写繊維質素材100の表面がハードコート層14/接着剤層29/透明基材11/ホログラム層15/反射層17/印刷層18/接着層19からなるパッチ21が転写され、硬化したハードコート層14面が最表面となり、硬化したハードコート層14/硬化した接着剤層29/透明基材11の3層が強固な保護機能を発現する。多数回の繰り返し使用でも、パッチ転写繊維質素材100の表面と保護し、機械的化学的な損傷から長期間にわたって保護できる。特にハードコート層14は、鋭利なものによる引掻きに対しても強靱な耐擦傷性に優れ、硬化した接着剤層29もハードコート層14の裏面から相乗効果を高めている。また、ハードコート層14がポリエステル樹脂を含んだ電離放射線硬化樹脂の場合には、強靱な耐擦傷性に優れると共に柔軟性があり、パッチ転写繊維質素材100の屈曲にも耐え、かつ、硬化時の収縮性が少なく反りもないので、転写性が安定している。さらにまた、フィルム状の透明基材11により耐熱性、耐溶剤性などの物理的科学的な耐久性にも優れる。さらに、ホログラム層15のホログラム及び印刷層18の図柄は意匠性とセキュリティ性に優れる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0054】
(実施例1)(S1)透明基材11と、該透明基材11の一方の面にホログラム層15、透明反射層17及び印刷層18を設けてなる転写材10を準備する転写材準備工程
透明基材11として厚さ16μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、下記のホログラム層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが2μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた。
・<ホログラム層組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名)100部
反応性シリコーン(信越化学社製、商品名X−22−1602) 0.5部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 2部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア184) 5部
溶媒(メチルエチルケトン:酢酸エチル=1:1) 300部
次に、該層面へ、2光束干渉法による回折格子から2P法で複製した擬似連続絵柄としたプレス型を複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させて、ホログラム層15を形成した。
該ホログラム層15のレリーフ面へ、厚さ50nmの酸化チタンを真空蒸着法で形成して、透明反射層17とした。
該透明反射層17面へ、ポリエステル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂の等量混合体からなるプライマ層を介して、シルクスクリーン印刷法で小さなハート形を散りばめた図柄を透明ピンクインキで印刷し乾燥して印刷層18を設け、透明基材11/ホログラム層15/透明反射層17/印刷層18の層構成からなる転写材10を得た。
(S2)支持基材31と、該支持基材31の一方の面へ離型層13を設けてなる支持材30を準備する支持材準備工程と、
支持基材31として、厚さ50μmのPETフィルムを用い、一方の面へ公知のポリイミド系樹脂からなる耐熱滑性層組成物を乾燥後の塗布量が2μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて耐熱滑性層を形成し、他方の面へ、グラビアコート法で下記の離型層樹脂組成物(塗工液)を乾燥後2μmになるように塗布し乾燥して、180℃20秒間焼き付けて、離型層13を形成し、耐熱滑性層/支持基材31/離型層13から構成される支持材30を得た。
・<離型層の樹脂組成物>
TCM01メジューム(大日本インキ社製、メラミン樹脂商品名) 25部
溶媒(MEK:トルエン=1:1) 75部
(S3)前記支持材30の離型層13面へ、下記のハードコート層組成物ををグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた。
・<ハードコート層組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名) 100部
エリーテル3520EA(ユニチカ社製、共重合ポリエステル樹脂商品名)20部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 5部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア184) 5部
溶媒(メチルエチルケトン:酢酸エチル=1:1) 300部
(S4)前記の未硬化なハードコート層面へ、下記のプライマ層組成物をグラビアコーターで乾燥後の厚さが0.5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させてプライマ層を形成した。該プライマ層面へ、下記の接着剤層組成物をグラビアリバースコーターで厚さが3μmになるように塗工し、直ちに前記転写材10の透明基材11面とを加圧して積層し、高圧水銀灯を用いて転写材10面側から紫外線を照射して、前記未硬化なハードコート層及び前記未硬化な接着剤層を同時に硬化させて、積層体50とした。
・<プライマ層組成物>
バイロン300(東洋紡社製、商品名) 50部
塩化ビニル酢ビニル共重合樹脂 50部
溶媒(トルエン:酢酸エチル=1:1) 300部
・<接着剤層組成物>
UV−X−5457(東亞合成社製、電離放射線硬化性接着剤)100部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア907) 5部
(S5)前記積層体50の前記印刷層18面へ、下記のホットメルト組成物を厚さが50μmになるようにホットメルトアプリケーターを用いて150℃で熔融し塗布し冷却して、接着層19を得た
・<接着層組成物>
エリーテルUE−3700(ユニチカ社製、ホットメルト、商品名) 100部
(S6)上記の接着層19付き積層体50を、角丸の矩形状のカッター刃を取り付けた上型と台座とのプレス方式のハーフカット処理とカス取りを行えるハーフカット部で硬化したハードコート層14、硬化した接着剤層29、透明基材11、ホログラム層15、反射層17、印刷層18及び接着層19の層構成部分を54mm×85mmで角丸形状(パッチ21となる)にハーフカット処理を施し、カス取りして、パッチ21が離型層13面から剥離可能に積層された連続巻取状の実施例1のパッチ転写媒体20を得た。
【0055】
図8に示すように、実施例1のパッチ転写媒体20の接着層19面と、繊維質基材101として、ポリエステル製のTシャツへ重ねて、パッチ転写媒体20面から加熱したアイロンを押し当てて転写した後に、耐熱滑性層/支持基材31/離型層13を剥離し除去して、パッチ21が転写されたTシャツ(パッチ転写繊維質素材100)を得た。パッチ転写媒体20は転写時の剥離性もよく、容易に安定して正常に転写することができた。該Tシャツの表面はパッチ21で(ハードコート層14/接着剤層29/透明基材11/ホログラム層15/反射層17/印刷層18/接着層19)で覆われて、最表面となり、パッチ転写繊維質素材100の表面がからなるパッチ21が転写され、硬化したハードコート層14面が最表面となり、硬化したハードコート層14/硬化した接着剤層29/透明基材11の3層が相乗して強固な保護機能を発現した。多数回の繰り返し使用でも、パッチ転写繊維質素材100の表面と保護し、機械的化学的な損傷から長期間にわたって保護でき、特にハードコート層14は、鋭利なものによる引掻きに対しても強靱な耐擦傷性に優れ、硬化した接着剤層29もハードコート層14の裏面から相乗効果を高めた。また、ハードコート層14がポリエステル樹脂を含んだ電離放射線硬化樹脂の場合には、硬化時の収縮性が少なく反りもないので、転写性が安定しており、強靱な耐擦傷性に優れると共に柔軟性があり、パッチ転写繊維質素材100の屈曲にも耐えた。さらに、フィルム状の透明基材11により耐熱性、耐溶剤性などの物理的科学的な耐久性にも優れていた。さらにまた、ホログラム層15のホログラム及び印刷層18の図柄は意匠性とセキュリティ性に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のパッチ転写媒体の製造方法を示すステップ図である。
【図2】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ1の転写材準備工程で準備する転写材の断面図である。
【図3】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ2の支持材準備工程で準備する支持材の断面図である。
【図4】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ3のハードコート層形成工程後の断面図である。
【図5】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ4の積層工程の説明と、積層工程後の積層体の断面図である。
【図6】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ5の接着層形成工程後の断面図である。
【図7】本発明の1実施例を示すパッチ転写媒体の断面図である。
【図8】本発明のパッチ転写媒体を用いて繊維質基材への転写を説明する説明図である。
【図9】本発明のパッチ転写媒体を用いて転写した本発明の1実施例を示すパッチ転写繊維質素材の断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10:転写材
11:基材
13:離型層
14:ハードコート層
15:ホログラム層
17:反射層
18:印刷層
19:接着層
20:パッチ転写媒体
21:パッチ
23:転写部
29:接着剤層
30:支持材
31:支持基材
50:積層体
100:パッチ転写繊維質素材
101:繊維質素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)透明基材と、該透明基材の一方の面にホログラム層、反射層及び印刷層を設けてなる転写材を準備する転写材準備工程と、(2)支持基材と、該支持基材の一方の面へ離型層を設けてなる支持材を準備する支持材準備工程と、(3)前記支持材の離型層面へ、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化なハードコート層形成工程と、(4)前記未硬化なハードコート層面と前記転写材の透明基材面とを、電離放射線硬化性樹脂を主成分とする未硬化な接着剤層を介して積層した後に、電離放射線を照射し前記未硬化なハードコート層及び前記未硬化な接着剤層を同時に硬化させて、硬化したハードコート層及び硬化した接着剤層とすることで積層体とする積層工程と、(5)前記積層体の前記印刷層面へ、ホットメルトからなる接着層を設ける接着層形成工程と、(6)上記硬化したハードコート層、硬化した接着剤層、透明基材、ホログラム層、反射層、印刷層及び接着層からなる構成を転写部とし、該転写部をハーフカット処理を施してパッチとし、該パッチが前記支持材の離型層面へ剥離可能に積層されているようにするハーフカット処理工程と、からなることを特徴とするパッチ転写媒体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパッチ転写媒体の製造方法で製造されたパッチ転写媒体であって、上記硬化したハードコート層、硬化した接着剤層、透明基材、ホログラム層、反射層、印刷層及び接着層から構成される転写部をハーフカット処理を施してパッチとし、該パッチが前記支持材の離型層面へ剥離可能に積層されていることを特徴とするパッチ転写媒体。
【請求項3】
請求項2に記載のパッチ転写媒体の前記接着層面と繊維質素材からなる被転写体とを重ね合わせて、アイロンで加熱加圧した後に、前記支持基材及び離型層とを剥離し除去することで、前記パッチが前記被転写体へ転写されてなり、最表面が硬化したハードコート層となることで耐擦傷性に優れ、かつ意匠性に優れるホログラムを有することを特徴とするパッチ転写繊維質素材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−5887(P2010−5887A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167107(P2008−167107)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】