パネル、その施工構造及びパネル表装材層の更新方法
【課題】下層の薄板や基体を破損させることなく、容易に表装材層を更新する。
【解決手段】一方の板面に配管収容用の溝12が設けられた板状の基体11と、溝12内に配設された熱媒流通用の配管13と、基体11上に複数層積層された薄板14A,14Bと、薄板14Bの上に積層された表装材層16とを有するパネル。薄板14Aには樹脂コーティング層18が設けられ、最下層薄板14Jと薄板14Bとは剥離可能とされている。この薄板14J,14B同士の間を剥がすことによって、表装材層16と少なくとも薄板14Bを取り除いた後、残留する薄板14J上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層する床暖房パネル表装材層の更新方法。
【解決手段】一方の板面に配管収容用の溝12が設けられた板状の基体11と、溝12内に配設された熱媒流通用の配管13と、基体11上に複数層積層された薄板14A,14Bと、薄板14Bの上に積層された表装材層16とを有するパネル。薄板14Aには樹脂コーティング層18が設けられ、最下層薄板14Jと薄板14Bとは剥離可能とされている。この薄板14J,14B同士の間を剥がすことによって、表装材層16と少なくとも薄板14Bを取り除いた後、残留する薄板14J上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層する床暖房パネル表装材層の更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下層の薄板や基体を破損させることなく、容易に表装材層を更新することができるパネル及び該パネルの施工構造と、パネル表装材層の更新方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅、集合住宅、ホテル、病院、高齢者養護施設などの建造物の床には、居住性を高める目的で、床面から暖房する床暖房構造が開発、実用化され、各種態様の床暖房構造が提案されている。特に、温水等の熱媒を通す配管を設けた床暖房構造は、ヒーター加熱によるものとは異なり、局部的に過熱状態が生じにくく、放熱性も良好であるという利点を有し、広く採用されるようになってきている。
【0003】
このような床暖房構造に用いる床暖房パネルの構造としては、図3(a),(b)((a)図は断面図、(b)図は(a)図の溝部の拡大図である。)に示す如く、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂や合板などの基体11の表面に溝12が形成され、熱媒としての温水を流す配管13がこの溝12内に設けられ、この基体11の表面に薄板14が接着材15等の付着用材料で貼り付けられ、更にこの薄板14の上に表装材層16が接着材17等の付着用材料で貼り付けられたものが一般的である。配管13としては、架橋ポリエチレン管などの樹脂管或いは銅管などの金属管が用いられる。基体11表面の薄板14は、配管13を固定するとともに、配管13からの放熱をパネル内で均質化させる役割を果たす。この薄板14としては、アルミニウム箔などが使用される。表装材層16は、床面を形成するものであり、クッション材層とこのクッション材層の上に接着された床表面材層とで構成される場合もある。なお、接着材15,17の代りに両面テープが用いられる場合もあるが、いずれの場合も、基体11、薄板14、表装材層(クッション材層及び床表面材層)16は、互いに全面接着されている。この床暖房パネルは、床の躯体面に十分な接着強度を有する接着材により全面接着されて施工される。
【0004】
このような床暖房パネルを施工した暖房床では、長期間の使用により表装材層が摩耗して表面の模様が消失したり、傷が付いたり著しい場合には剥離したりする。しかし、表装材層の下層部分は耐久性に優れ、長期使用にも十分に耐え得るため、一般的には、定期的に、或いは賃貸住宅などでは居住者が変わる毎に、また、転売時等において、表装材層を貼り替えるリフォームが行われる。
【0005】
このリフォーム時には、既存の表装材層を剥がして新品の表装材層を貼り付ければ良いが、図3に示す従来の床暖房パネルでは、表装材層16の剥離時に、表装材層16に全面接着している薄板14、更にはこの薄板14に全面接着している基体11の発泡樹脂の一部も表装材層16と共に剥ぎ取られ、破損に到る場合が多い。薄板14が剥離してしまった場合、アルミニウム箔等のごく薄い薄板14を、現場にて基体11に対して密着性良く接着することは、非常に困難であり、また基体11が剥ぎ取られた場合には、現場にてこれを補修することも非常に困難である。従って、このような場合には、床暖房パネル全体を交換する必要が生じ、多くのコストと施工時間、手間を要するようになる。
【0006】
従来、表装材層の易剥離性を高めるべく、薄板である金属箔の上面(表装材層接着面側)に合成樹脂層を設けたものが提案されている(特開2002−81662号公報)。特開2002−81662号公報では、合成樹脂層の介在により表装材層のみを剥離することができるとされている。
【特許文献1】特開2002−81662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特開2002−81662号公報のように合成樹脂層を設けた場合であっても、この合成樹脂層と表装材層との接着強度が高いと表装材層と共に合成樹脂層及び金属箔が剥ぎ取られてしまう場合がある。また、表装材層の一部が合成樹脂層側に残留しこれを容易に除去し得ない場合もある。
【0008】
従って、本発明は上記従来の問題点を解決し、下層の薄板や基体を破損させることなく、容易に表装材層を更新することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み、本発明者等は鋭意検討した結果、剥離する部分に少なくとも2枚の薄板を設け、この薄板間を剥離可能とすることにより、下層の薄板や基体を破損させることなく、容易に表装材層を更新することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明(請求項1)のパネルは、板状の基体と、該基体の一方の板面に積層された薄板と、該薄板の前記基体とは反対側の面に積層された表装材層とを有するパネルにおいて、該薄板が複数層積層され、且つ重なり合う少なくとも2層の薄板同士が剥離可能とされていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のパネルは、請求項1において、前記基体の前記一方の板面に配管収容用の溝が設けられており、該溝内に熱媒流通用の配管が配設されており、前記薄板のうちの少なくとも一つが熱拡散薄板であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3のパネルは、請求項1又は2において、前記剥離可能とされている2層の薄板同士において、これらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4のパネルは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記基体に接する薄板(以下、「最下層薄板」という。)と該基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(以下、「次層薄板」という。)と該最下層薄板との接着力よりも大きいことを特徴とするものである。
【0014】
請求項5のパネルは、請求項4において、該最下層薄板と次層薄板との間のうちこれらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6のパネルは、請求項5において、該薄板は方形であり、少なくとも1個のコーナー部に前記非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7のパネルは、請求項5において、薄板の4辺の周縁部に前記非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8のパネルは、請求項5ないし7のいずれか1項において、該最下層薄板と次層薄板との間に接着用材料が存在しないことにより前記非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項9のパネルは、請求項5ないし7のいずれか1項において、該最下層薄板と次層薄板との間に接着用材料が存在するが、該接着用材料と一方の薄板との間に、該接着用材料と低親和性の低親和性層が介在することにより前記非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10のパネルは、請求項1ないし9のいずれか1項において、
(i)前記基体と最下層薄板、
(ii)前記薄板同士、
(iii)前記表装材層に接する薄板(以下、「最上層薄板」という。)と表装材層
が、それぞれ、付着用材料により付着されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項11のパネルは、請求項1ないし10のいずれか1項において、前記表装材層が、該薄板に近い側のクッション材層と、該クッション材層よりも該薄板から遠い側の床表面材層とを有することを特徴とするものである。
【0021】
請求項12のパネルは、請求項11において、前記表装材層が、前記クッション材層と前記床表面材層とからなり、該クッション材層と該床表面材層とが、付着用材料により付着されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項13のパネルは、請求項1ないし12のいずれか1項において、前記最下層薄板が、金属薄板と、少なくとも該金属薄板の前記基体と反対側の面に施された樹脂コーティング層とを有することを特徴とするものである。
【0023】
請求項14のパネルは、請求項1ないし13のいずれか1項において、複数層積層された前記薄板のうち少なくとも1層は、複数の穴が設けられた有穴薄板であることを特徴とするものである。
【0024】
請求項15のパネルは、請求項14において、複数層積層された前記薄板のうち、少なくとも1層は穴を有しない無穴薄板であり、該無穴薄板と前記有穴薄板とが交互に積層されていることを特徴とするものである。
【0025】
請求項16のパネルは、請求項1ないし15のいずれか1項において、前記基体が、複数並列配置されて基体並列体を構成しており、該基体並列体の上に、複数層積層された前記薄板のうちの少なくとも1層が、各基体並列体上を横断するように積層されていることを特徴とするものである。
【0026】
請求項17のパネルは、請求項16において、前記基体のうち一部のものは、前記一方の板面に溝が設けられ、該溝内に熱媒流通用配管が配設された温調用基体であり、前記基体のうち他のものは、該溝及び熱媒流通用配管を具備しない平板基体であり、該温調用基体と該平板基体とが交互に配列されていることを特徴とするものである。
【0027】
請求項18のパネルは、請求項17において、前記剥離可能とされている2層の薄板のうち、基体側の薄板の上面に、前記平板基体の位置を示す表示が設けられていることを特徴とするものである。
【0028】
請求項19のパネルは、請求項18において、前記表示は、前記平板基体の幅方向中央付近であって且つ該平板基体の幅の20〜80%の範囲に設けられていることを特徴とするものである。
【0029】
請求項20のパネルは、請求項17ないし19のいずれか1項において、前記薄板のうちの少なくとも1層は熱拡散薄板であり、該熱拡散薄板は温調用基体から平板基体にかけて連続して設けられていることを特徴とするものである。
【0030】
請求項21のパネルは、請求項1ないし20のいずれか1項において、複数層積層された前記薄板同士は付着用材料を介して接着されており、少なくとも一部の薄板同士を接着する付着用材料は散点状又は線状に設けられていることを特徴とするものである。
【0031】
請求項22のパネルは、請求項17ないし20のいずれか1項において、少なくとも前記最上層薄板を含む前記表装材層側の薄板(以下、「上位薄板」という。)は、前記平板基体と略等幅又はそれよりも若干大きい幅を有しており、該平板基体の上方に配置されていることを特徴とするものである。
【0032】
請求項23のパネルは、請求項22において、前記上位薄板の側方に隣接して、該上位薄板よりも下側の薄板(以下、「下位薄板」という。)と、前記表装材層との間に、将来の表装材層の更新時に該表装材層を該下位薄板に付着させるために使用される、シート状の予備結合体が配置されていることを特徴とするものである。
【0033】
請求項24のパネルは、請求項23において、前記予備結合体は、前記上位薄板と略等幅の薄板状本体部と、該薄板状本体部上の少なくとも一方の面上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層を隠蔽する離型紙が一体化されたものであることを特徴とするものである。
【0034】
請求項25のパネルは、請求項24において、前記予備結合体の粘着剤層の一部は前記離型紙で覆われておらず、この離型紙で覆われていない粘着剤層を介して前記予備結合体が部分的に前記下位薄板側に付着していることを特徴とするものである。
【0035】
請求項26のパネルは、請求項25において、前記予備結合体の前記離型紙で覆われていない粘着剤層と、前記離型紙で覆われている粘着剤層との境界を折り線とし、前記離型紙が、前記表装材層側に位置するように該折り線に沿って、前記予備結合体が折り返され、折り線が前記上位薄板に沿って延在していることを特徴とするものである。
【0036】
請求項27のパネルは、請求項25において、前記上位薄板の両側方にそれぞれ前記予備結合体が配置されていることを特徴とするものである。
【0037】
請求項28のパネルは、請求項1ないし27のいずれか1項において、前記薄板が、複数の部分薄板から構成されていることを特徴とするものである。
【0038】
請求項29のパネル表装材層の更新方法は、請求項1ないし28のいずれか1項に記載のパネルの表装材層を新たな表装材層に交換するパネル表装材層の更新方法であって、隣接するいずれかの前記薄板同士の間を剥がすことによって、前記表装材層と、少なくとも最上層の薄板を取り除いた後、残留する薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするものである。
【0039】
請求項30のパネル表装材層の更新方法は、請求項29において、該パネルは請求項4に記載のパネルであり、前記表装材層を更新するにあたり、最下層薄板と次層薄板との間を剥がすことによって、前記表装材層と、該最下層薄板以外の薄板とを取り除いた後、残留する該最下層薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするものである。
【0040】
請求項31のパネル表装材層の更新方法は、請求項29において、前記パネルは請求項3,5ないし9のいずれか1項に記載のパネルであり、該非接着部が存在する薄板同士の間から、該非接着部よりも上側の薄板と表装材層とを取り除くことを特徴とするものである。
【0041】
請求項32のパネル表装材層の更新方法は、請求項29ないし31のいずれか1項において、残留する薄板の上に、少なくとも1層の新たな薄板を積層し、その上に前記表装材層を積層することを特徴とするものである。
【0042】
請求項33のパネル表装材層の更新方法は、請求項29において、前記パネルは請求項22に記載のパネルであり、前記表装材層を更新するにあたり、前記表装材層と、前記上位薄板のうち、少なくとも1層とを取り除いた後、取り除いた該上位薄板に対応する新たな上位薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするものである。
【0043】
請求項34のパネル表装材層の更新方法は、請求項33において、前記パネルは請求項23に記載のパネルであり、前記上位薄板と前記下位薄板との間を剥がすことによって前記表装材層を更新するに際し、新たな上位薄板を前記予備結合体を用いて構成することを特徴とするものである。
【0044】
請求項35のパネル表装材層の更新方法は、請求項34において、前記パネルは請求項24又は25に記載のパネルであり、新たな上位薄板を前記予備結合体を用いて構成するに際し、該予備結合体から離型紙を剥がして露呈させた粘着剤層を下位薄板に付着させて上位薄板とすることを特徴とするものである。
【0045】
請求項36のパネル表装材層の更新方法は、請求項35において、前記パネルは請求項26又は27に記載のパネルであり、前記予備結合体から離型紙を剥がして露呈させた粘着剤層部分を前記折り線部分に沿って反転させて前記下位薄板に対し付着させることを特徴とするものである。
【0046】
請求項37のパネル施工構造は、請求項1ないし27のいずれか1項に記載のパネルを床、壁又は天井に施工したことを特徴とするものである。
【0047】
請求項38のパネルの施工構造は、請求項37において、前記パネルを、中央領域に位置するパネルと、外周囲に位置するパネルとから構成し、該中央領域に位置するパネルの基体の少なくとも一部が、前記一方の板面に溝が設けられた温調用基体であり、該外周囲に位置するパネルの基体は、前記一方の板面に溝が設けられていない平板基体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0048】
本発明のパネルは、床、壁及び天井のいずれにも施工可能である。施工されたパネルのリフォーム時には、表層材層側を剥がして更新する。
【0049】
本発明によれば、床等のリフォーム時には、剥離可能に設けられた2層の薄板同士の間で、下層の薄板や更にその下の基体を損傷させることなく、また、表装材層側の材料を残留させることなく、容易に基体側と表装材層側とを剥離して表装材層側を取り除くことができる。このため、パネルの基体側を残して表装材層側のみを短時間で効率的に更新することができ、施工コストも安価なものとなる。
【0050】
請求項2によれば、配管内に温熱媒又は冷熱媒を流通させることにより、暖房機能又は冷房機能を有する床、壁又は天井が構成される。
【0051】
請求項4,30によれば、更新時に上記(i),(ii)又は(iii)の部分を引き剥がすことができる。
【0052】
請求項5〜9,31によれば、更新時に非接着部を設けた界面から薄板同士をスムーズに剥すことができる。
【0053】
請求項11,12によればクッション性に優れた床等を構成することができる。
【0054】
請求項13によれば、樹脂コート金属薄板とそれよりも上側の薄板との間を引き剥がすことができる。
【0055】
請求項14,15によれば、薄板の積層時に、有穴薄板の穴から付着用材料に残留する空気を抜くことにより、空気の残留による音鳴り、不陸形成、伝熱性能の低下を防止することができる。
【0056】
請求項16によれば、基体を並列させることにより大形のパネルを構成することができる。
【0057】
請求項17によれば、温調用基体と平板基体とが交互に配列し、この平板基体に対し表装材層を釘、ビス等の固定用部材を打ち付けることにより、強固なパネル施工を行える。
【0058】
請求項18によれば、前記表示により平板基体の位置を知ることができ、上記の釘又はビス等を確実に平板基体に対し打つことができ、温調用基体の配管を釘やビス等で損傷させることが防止される。
【0059】
請求項19によれば、釘又はビスを平板基体の中央付近に打つことができる。
【0060】
請求項20によれば、熱拡散薄板が温調用基体から平板基体にかけて連続して配材されるため、温調用基体からの温熱又は冷熱が平板基体側にまで十分に拡散するようになり、パネル全体の均熱化を図ることができる。
【0061】
請求項21によれば、散点状又は線状の付着用材料同士の間の非付着部を通して空気を抜くことができ、上記請求項14,15と同様の効果を得ることができる。
溝と略直交に非付着部を線状に設けることにより、少ない非付着部面積で、より効率的に空気を抜くことができる。散点状の非付着部を設ける際には、溝上に非付着部を設けることにより、より効率的に空気を抜くことができる。
【0062】
請求項22,33によれば、表装材層の更新に際し、上位薄板と下位薄板との間で引き剥がし、下位薄板を残置させ、上位薄板と表装材層とを新しいものに更新することができる。
【0063】
請求項23,34によれば、表装材層の更新に際し、予備結合体によって下位薄板と表装材層とを付着させることができるので、新たな上位薄板を現場に搬入することなく、更新作業を行うことができる。
【0064】
請求項24,35によれば、予備結合体の粘着剤層は離型紙で覆われているから、既設表装材層の搬去時にそれに随伴して予備結合体が搬去されることはない。
請求項24,25,35によれば、予備結合体の一部が下位薄板に付着しており、位置ズレすることが防止される。
【0065】
請求項26,27,36によれば、既設表装材層及び上位薄板を撤去した後、予備結合体のうち表装材層側を折り線部分から反転させて下位薄板の上に重ねることにより、予備結合体を表装材層の固定用に利用することが可能となる。従って、更新時に予備結合体の位置決めを行うことが不要であり、作業が極めて簡単となる。
【0066】
請求項27によれば、1回目の表装材層更新に際しては上位薄板の一方の側の予備結合体を用い、他方の側のものはそのままとしておき、表装材層の2回目更新に際して残りの予備結合体を用いることができるので、1つのパネルで2回まで表装材層を容易に更新することができる。
【0067】
請求項38によれば、暖房又は冷房が不要な床、壁又は天井の外周部分には熱媒を流通させないものとすることにより施工コスト、熱エネルギーコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に説明するものは本発明の実施形態の一例であって、本発明はその要旨を超えない限り、以下の説明に何ら限定されるものではない。
【0069】
以下においては、本発明のパネルを主に床暖房パネルに適用した場合を例示して説明するが、本発明のパネルは、冷房、暖房の両方に適用が可能なものであり、従って、本発明に係る後述の配管には、熱媒として温水等の温熱媒体又は冷水等の冷熱媒体が流通される。また、本発明のパネルは床冷暖房に限らず、壁冷暖房、天井冷暖房等、各所の面冷暖房用途に適用される。更に、本発明のパネルは熱媒を流通させない、従って、暖房も冷房も行わない単なる、床、壁又は天井面形成パネルにも適用される。
【0070】
[1]第1の実施形態
図1aは本発明のパネルの実施の形態を示す断面図であり、図1bは図1aの拡大図である。なお、図1aにおいては説明の便宜上各部材を切り剥して示しているが、これらは実際には図1bに示すように積層一体化されている。図1cは積層手順を示す断面図である。図2は、図1a〜1cの床暖房パネル表装材層の更新方法の実施の形態を示す断面図である。なお、図1a,1b,1c,2において、図3に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0071】
[床暖房パネル]
図1a,1bに示す床暖房パネルは、一方の板面(上面)に配管収容用の溝12が設けられており、溝12内に配管13が配設された温調用基体としての板状の基体11と、この溝12内に配設された熱媒流通用の配管13と、基体11上に積層された2枚の薄板14A,14Bと、薄板14Bの上に積層された表装材層16とを備える。薄板14Aは熱拡散薄板であり、その上面(基体11と反対側の面)には樹脂コーティング層18が設けられている。以下、この樹脂コーティング層18が設けられた薄板14Aを最下層薄板14Jと称す。また、表装材層16は、薄板14B側のクッション材層16Aと、その上に積層された床表面材層16Bとを備える。
【0072】
図1a〜1cの床暖房パネルにおいて、基体11、最下層薄板14J、薄板14B、クッション材層16A、及び床表面材層16Bは、それぞれ付着用材料19A,19B,19C,19Dを介して積層一体化されている。
【0073】
この薄板14Bが次層薄板であるが、この実施の形態では次層薄板14Bは最上層薄板も兼ねている。
【0074】
この床暖房パネルは、図1cに示すようにして施工されたものである。
【0075】
まず、図1cの(1)の通り、基体11を複数枚、施工対象床面に敷き並べるようにして配列する。なお、複数の基体11は、シート材料によって相互に連絡され、屏風状に折り畳まれており、これを展開して施工対象床面上に広げる。このように敷設した基体11の溝12に配管13を配設する。
【0076】
次に、図1cの(2)の通り、基体11の上に付着用材料19Aを塗着した後、最下層薄板14Jを貼り付ける。なお、最下層薄板14Jに予め付着用材料19Aを塗着すると共に、剥離紙やフィルムで覆っておき、施工時に該剥離紙やフィルムを剥して最下層薄板14Jを基体11に貼り付けてもよい。この場合、付着用材料19Aを現場で塗着する作業工程は省略される。
【0077】
次に、図1cの(3)の通り、付着用材料19Bを介して次層薄板14Bを最下層薄板14Jの上に貼る。この場合、付着用材料19Bは次層薄板14Bに予め塗着され、剥離紙やフィルムで覆われていることが望ましい。この剥離紙やフィルムを剥して次層薄板14Bを最下層薄板14Jの上に貼る。
【0078】
その後、図1cの(4)の通り、付着用材料19Cを介して表装材層16を次層薄板14Bの上に貼る。この場合、付着用材料19Cを次層薄板14Bの上に塗着するのが好ましい。表装材層16は、床表面材層16Bとクッション材層16Aとを付着用材料19Dを介して一体化したものとして、現場に搬入されている。
【0079】
なお、図1a〜1c,2では配管13に湯などの温熱媒体を流通させるので、基体11は暖房用基体とされ、パネルは床暖房パネルとなっているが、配管13に冷水などの冷熱媒体を流通させる場合には、基体11は冷房用基体となり、パネルは壁、天井等に好適な冷房パネルとなる。
【0080】
以下に本発明のパネルを構成する各部材の詳細について説明する。
【0081】
〈基体〉
基体11の材質は特に限定されないが、通常、断熱性に富んだ発泡合成樹脂製のものが好ましく、発泡合成樹脂製の板状体、具体的には、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられる。中でも、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。基体11を構成するこれらの板状体の厚さは、通常9〜50mmの範囲内で選ぶのが好ましい。
【0082】
〈溝〉
基体11の一方の板面には、配管13を配設するための溝12が基体11の側辺に沿って、複数本刻設されている。
【0083】
溝12の開口部の幅は、配管13の外径と同じ寸法、又はこれより僅かに大きくするのが好ましい。溝12は、その延在方向に直交する断面形状がU字形状又はコ字形状となるように形成されるが、特に、配管13から床面への伝熱性、配管13を溝12に埋設する際の施工性の面から、断面U字形とすることが好ましい。
【0084】
溝12の深さは、配管13の外径とほぼ同じ寸法とするのが好ましい。溝12の深さが配管13の外径より大きいと、配管を埋設した際に、配管13の上側に隙間ができ、熱媒の熱を効果的に床面側に伝熱することができず、伝熱効率が低下しやすくなる。
【0085】
〈放熱の配管13〉
配管13には、通常可撓性チューブが使用され、具体的には架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などの樹脂管、銅管、鋼管などの金属管のいずれを用いても良い。このうち、金属管は樹脂管に比べて高熱伝導率であるものの重量が重く、加工性、発錆等の問題があり、また、コストも高くなるため、放冷熱パネルの用途に応じて適宜使用される。
【0086】
配管の断面(長さ方向に直交する方向の断面)形状には特に制限はなく、一般的には図1に示すような円形とされるが、長円形状ないし楕円形状とすることにより、配管と薄板との接触面積を増すことができ、表面側への放冷熱効率をさらに高めることができる。ただし、この場合には基体に設ける溝の形状を配管の形状に倣って適宜設計する。
【0087】
配管13の口径は、床暖房パネルの施工対象や流通させる熱媒の種類や温度によって変更できるものであるが、一般的には外径が6mm以上13mm以下程度、内径が4mm以上10mm以下程度で、肉厚が0.8mm以上2.0mm以下程度である。
【0088】
〈熱媒〉
配管13に通す熱媒(温熱媒体)としては、温水、水蒸気、加熱オイル、あるいはエチレングリコール系水溶液、プロピレングリコール系水溶液などの不凍液などが挙げられるが、好ましくは温水である。
一方、冷熱媒体としては通常冷水が用いられる。
【0089】
〈薄板〉
薄板14A,14Bは、配管13を固定すると共に、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有することが好ましく、本発明において複数層設ける薄板(第1の実施態様においては薄板14A、14B)のうち少なくとも1層、好ましくは薄板14Aは熱拡散薄板として金属箔を用いることが好ましい。金属箔の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔、銅箔などが挙げられる。中でも、製造の難易、コストなどの観点からアルミニウム箔が好適である。金属箔の厚さは、薄すぎると強度が十分でなく、厚すぎると製品が重くなるばかりでなく、コストがかさむので、1枚当たりの薄板の厚さとして通常10μm以上2mm以下の範囲で選ぶのが好ましい。金属箔以外の薄板としては、材質については、樹脂フィルム、樹脂シート、炭素繊維シート、またはこれらを少なくとも2種類以上積層したもの等が挙げられ、その厚さは通常10μm〜2mmである。
【0090】
本発明においては、このような薄板を2層以上の複数層積層して用いる。薄板は2層以上であれば良く、その積層数には特に制限はないが、過度に積層数が多いと、施工の手間やコストも増す上に、床暖房パネルの厚みが厚く、また、配管と床表面との距離が離れることによって、伝熱効率が低下することとなる。従って、薄板の積層数は通常2〜5層であり、特に好ましくは2層であり、また、複数層積層された薄板の全体の厚さは、通常10μm以上、好ましくは40μm以上とし、一方、通常2mm以下、好ましくは200μm以下とする。
【0091】
なお、上記複数積層された薄板のうち、少なくとも1層の薄板には、厚さ方向に貫通する複数の穴を設けても良い。このような薄板を有穴薄板と呼ぶ。薄板に穴を設ける目的は、付着材用材料の層に残存した空気を抜くことにより、気泡の残留による音鳴り、不陸、伝熱性能低下を防止することにある。
【0092】
穴の直径は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上とし、一方、通常100mm以下、好ましくは50mm以下とする。穴の直径が0.01mm未満であると、空気を十分に抜くことができない場合があり、100mmを超えると放熱効果が低下する傾向となる。
【0093】
なお、表装材層をはぎとって新たな表装材層に交換する場合に、剥離面を介して2層の薄板がとなり合うこととなる。これら薄板にも穴を設けることは当然可能であるが、この場合、穴の直径を以下のように制御することが好ましい。つまり、空気を効果的に抜きつつ、剥離される表装材層側の剥離面に最も近い薄板と残留する基体側の剥離面とが一体化して表装材層の更新を困難とすることを防ぐために、剥離された薄板のうち、剥離面に最も近い薄板の穴の直径は0.1〜2mmとするのが好ましい。また、薄板の面積に対する穴の合計面積の比率は、通常5〜50%、好ましくは10〜30%とするのが好ましい。この比率が低過ぎると十分に空気を抜くことができない場合があり、高過ぎると薄板の強度が損なわれる。
【0094】
穴の形状(平面視形状)は、特に制限はなく、例えば、多角形、円形等が挙げられるが、好ましくは施工性の面から円、楕円等の円形である。なお、円形以外の形状の場合、当該穴と同じ面積の円の直径が上記範囲となるようにすることが好ましい。
穴の配列は、ランダム、薄板全域に規則的な配列のどちらでも良いが、工業生産上は、薄板全域に規則的に設けた方が好ましい。
【0095】
薄板への穴の形成方法としては、プレス、又はローラーに所定の穴を形成できる針を設け、そのローラー上に薄板を通過させる方法等が挙げられる。穴をランダム配置で形成させる場合は、針の配置をランダム配置としておけばよい。
【0096】
穴の形成ピッチ(隣接する穴の中心間距離)は、基体に埋設された配管の間隔同士の距離以下になるようにすることが好ましく、通常5mm以上、好ましくは20mm以上とし、通常200mm以下、好ましくは70mm以下である。
【0097】
本発明において、薄板をすべて穴を形成した有穴薄板とすると互いに積層された薄板同士の穴の重なり方によっては、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有しなくなる可能性がある。従って、複数積層された薄板のうち、少なくとも1層も穴を有しない無穴薄板とし、この無穴薄板と有穴薄板とが交互に積層されることが好ましい。このようにすることにより、有穴薄板の穴から、無穴薄板と有穴薄板との間の付着用材料層の残留気泡を効率的に抜き出し、音鳴り、不陸、伝熱性能低下防止効果を得ることができる。例えば、図1a〜1cのパネルにおいては、薄板14Bを有穴薄板とすることが好ましい。なお、薄板は、複数の部分薄板から構成されていてもよい。これは以下の実施形態でも同様である。
【0098】
[穴の代替としての付着用材料の散点状又は線状塗着]
穴を設ける代わりに、付着用材料を散点状又は線状(ストライプ状)に設けることによっても、薄板同士の間の空気残留を防止することができる。
【0099】
付着用材料を散点状に設ける場合の付着用材料の塗着面積割合(薄板の面積をM1とし、そのうち付着用材料を塗着した部分の面積をM2とした場合、(M2/M1)×100%として定義される。)は、通常50%以上、好ましくは80%以上、一方、通常99%以下とする。散点の点の形状は円でもよく、円以外であってもよい。1個の散点の面積は、通常10cm2以上、好ましくは20cm2以上、一方、通常1000cm2以下、好ましくは300cm2以下とする。
【0100】
ストライプ状に設ける場合、ストライプの幅は、通常10mm以上、好ましくは30mm以上、一方、通常200mm以下、好ましくは50mm以下とする。ストライプ同士の間の非接着部の間隔は、通常1mm以上、一方、通常100mm以下、好ましくは30mm以下とする。
【0101】
〈樹脂コーティング層〉
樹脂コーティング層18は、薄板14Aと薄板14Bとの剥離を容易として床暖房パネルの更新を容易なものとするために設けられるものである。
【0102】
樹脂コーティング層18を形成する樹脂の種類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6・6などのポリアミド系樹脂などが挙げられる。中でも、強度、層の作り易さ、コストなどの観点から、ポリエチレンテレフタレートが好適である。樹脂コーティング層18の厚さは、薄過ぎると樹脂コーティング層を設けたことによる剥離性の向上効果を十分に得ることができず、厚過ぎると薄板が厚い場合と同様、床暖房パネルの厚みの増加、コスト増加、伝熱効率の低下の問題が生じるため、通常3μm以上、好ましくは10μm以上とし、一方、通常300μm以下、好ましくは50μm以下とする。
【0103】
最下層薄板14Jは、加熱溶融させた樹脂を薄板に直接熱融着させる方法、又は必要に応じて接着材料を介して接着する方法、コーティングフィルムを接着剤を介して接着する方法等により薄板14Aにコーティング材を積層することにより製造することができる。
【0104】
〈表装材層〉
表装材層としては特に制限はないが、薄板側のクッション材層16Aと、この上に積層された床表面材層16Bとを備えるものが好ましい。ただし、クッション材層は必ずしも必要とされず、床表面材層のみでもよい。また、表装材層をクッション材層16Aと床表面材層16Bとで構成する場合には、クッション材層16Aと床表面材層16Bとが、付着用材料19D(詳細は後述)により付着されていることが好ましい。
【0105】
クッション材層16Aは、床表面材層上での優れた歩行感覚を得る等の面から、例えばポリウレタン発泡体、ポリオレフィン系発泡体等の発泡樹脂、又は不織布を含むものである。
【0106】
クッション材層16Aの厚さは、その材質、床暖房パネルの施工対象によっても異なるが、床暖房パネルを過度に厚くすることなく、また、配管からの伝熱効率を損なうことなく、十分な歩行性等を得る上で、通常1mm以上、好ましくは2mm以上とし、一方、通常6mm以下、好ましくは5mm以下とする。
【0107】
床表面材層16Bは、配管を埋設した基体を保護すると共に、床面外観の意匠性と耐久性を高めるためのものであり、通常は合板等の木製、発泡ゴム製で、好ましくは木製のものであり、その表面に通常は、天然木材板又は木目模様などの印刷模様を施したプラスチックフィルム、不織布、強化紙など、好ましくは天然木材板又は強化紙が貼着される。
【0108】
床表面材層16Bの厚さは、薄すぎると強度が不足して破損しやすくなり、厚すぎると配管からの伝熱効率が低下すると共に床暖房パネルの厚さが厚くなるため、通常3mm以上15mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0109】
なお、このような床表面材層16Bの上に更に樹脂塗装等を施しても良い。
【0110】
〈付着用材料〉
本実施の形態においては、(i)前記基体と最下層薄板(詳細は後述)、(ii)前記薄板同士、(iii)前記表装材層に接する薄板(以下、「最上層薄板」という。)と表装材層が、それぞれ、付着用材料(図1では19A〜19D)により付着されていることが好ましい。
付着用材料19A〜19Dとしては、後述の接着力の相互関係を十分に満たすものであり、これと接する床暖房パネルの構成部材を侵食したりすることのないものであれば良く、各種の接着剤や粘着剤、両面テープを用いることができる。これらの付着用材料による各部材の接着は、全面接着であることが好ましいが、面積の3%以上を接着する部分接着であっても良い。部分接着の場合、接着部の形状は線状、散点状等のいずれであっても良いが、特に金属箔等の薄板を他の薄板や、基体、クッション材層等と接着する場合には、少なくともその全周縁は接着部とすることが好ましい。
【0111】
〈接着力〉
本発明のパネルでは、複数層積層された薄板のうち、重なり合う少なくとも2層の薄板(図1においては、最下層薄板14Jと薄板14B)同士が剥離可能とされている。好ましくは、基体に接する薄板(最下層薄板)と基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(次層薄板)と該最下層薄板との接着力よりも大きくすることにより、表装材層を更新する際、床暖房パネルの上層である表装材層から順に剥していく際に、最下層薄板に隣接して積層される次層薄板と最下層薄板との間を容易に剥離させて、最下層薄板を基体側に残し、この最下層薄板の上に新たな薄板層を積層し、その上に表装材層を積層することにより、基体を破損することなく表装材層を更新する。
【0112】
この接着力の相関関係について、図1を参照して説明する。基体11に接する最下層薄板、即ち最下層薄板14Jと基体11との接着力は、最下層薄板14Jに隣接して積層される次層薄板14Bと最下層薄板14Jとの接着力の110%以上とすることが好ましい。なお、ここで接着力の評価基準には特に制限はないが、例えばJIS Z 0237に規定される、180度引き剥がし粘着力試験(以下、「JIS Z 0237法」と称す。)により測定される。
【0113】
例えば、最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板14B)との接着力を100%とした場合、基体と最下層薄板(基体11と最下層薄板14J)との接着力は110%以上とし、具体的には、JIS Z 0237法による接着力が次のような値となるようにすることが好ましい。
(a)基体と最下層薄板(基体11と最下層薄板14J)との接着力:通常3〜30N、好ましくは5〜20N
(b)最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板14B)との接着力:通常1〜27N、好ましくは2〜18N
【0114】
なお、最上層薄板ともなる薄板14Bと表装材層との間の接着力は、通常日常生活の使用に耐え得るに必要な強度が得られる程度であれば良い。
【0115】
従って、上述の接着力の相互関係を満たすように各部材を付着用材料により接着することが好ましい。
【0116】
このような接着力の相互関係を満たすために、接着力を大きくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を多くしたものやウレタン系の接着剤を使用し、接着力を小さくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を少なくしたものを使用するなどして、接着力を調整することが好ましい。接着力はまた、接着面積により調整することもでき、この場合には接着力の大きい箇所を全面接着とし、接着力の小さい箇所を部分接着とすれば良い。なお、部分接着の場合の接着力とは、接着部の単位面積当たりの接着力Sと全面積M、接着部面積Msとから、S×Ms÷Mで求めることができる。
【0117】
ただし、本発明は、表装材層が、クッション材層と床表面材層とで構成され、かつ基体と最下層薄板との間、及び、最下層薄板とそれに次層薄板との間が、それぞれ全面接着されている床暖房パネルにおいて、複数の薄板を設けることによる本発明の効果を有効に発揮することができ、好ましい。
【0118】
〈製造施工〉
本発明のパネルは、所定の積層構造で部材間に付着用材料を設けて各部材を積層一体化することにより製造、施工される。
【0119】
なお、本発明のパネルは、例えば、図1に示す構造で、床表面材層、クッション材層を除いた構造として予め工場で製造された床暖房パネルを現場にて床躯体面に接着し、その上から床表面材層、クッション材層を施工しても良く、また、現場にて、図1に示す構造となるように、各部材を積層して施工しても良い。但し、この場合も予め工場で、各部材を積層したものを現場にて組み合せてもよい。例えば、「表装材層16」と「薄板14B」と「最下層薄板14Jと基体11との積層体」を予め工場で製造し、現場にて組み立てる;「表装材層16」と「薄板14Bと最下層薄板14Jと基体11との積層体」を予め工場で製造し、現場にて組み立てることができる。
【0120】
[表装材層の更新方法]
上述のような本発明のパネルの表装材層を交換するには、隣接し、剥離可能に積層された薄板同士の間を剥がすことによって、表装材層と少なくとも1層の薄板を取り除いた後、残留する薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層する。好ましくは、最下層薄板と最下層薄板に隣接する次層薄板との間を剥がすことによって、表装材層と、最下層薄板以外の薄板とを取り除いた後、残留する最下層薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層する。
【0121】
以下に図1に示す床暖房パネルの表装材層を交換する更新方法について、図2を参照して説明する。
【0122】
(1) まず、図1の状態から床表面材層16Bを剥がし取る(図2(a))。
【0123】
(2) 次いで、クッション材層16Aを剥がし取る。この場合、薄板14Bを引き上げ、薄板14Bをクッション材層16Aと共に最下層薄板14Jから剥がし取るのが作業効率の面から好ましい(図2(b))。前述の如く、薄板14Bと最下層薄板14Jとの間の接着力は、最下層薄板14Jと基体11との接着力よりも小さいため、薄板14Bは最下層薄板14Jから容易に剥がし取ることができ、最下層薄板14Jや基体11が損傷することはなく、また、クッション材層16Aや薄板14Bの残留の問題もない。
【0124】
(3) 床表面材層16Bとクッション材層16A及び薄板14Bを剥がし取った後は、最下層薄板14Jの樹脂コーティング層18が表出するため、この上に新たな付着用材料19B’を介して新たな薄板14B’を接着する(図2(c))。この場合、予め薄板14B’に付着用材料19B’を積層したものを使用してもよい。
【0125】
(4) 次に、図2(d)の通り、薄板14B’上に新たな付着用材料19C’を介して表装材層16’を貼る。この表装材層16’は前記表装材層16と同じものである。なお、薄板14B’の上に付着用材料19C’を介して新たなクッション材層16A’を接着し、更に付着用材料19D’を介して床表面材層16B’を接着するようにしても良い。
【0126】
上記工程は、良好な作業性のもとに容易かつ効率的に実施することができる。
【0127】
図2についての上記説明では床表面材層16Bを剥した後、クッション材層16Aを剥し取り、この際、クッション材層16Aを次層薄板14Bと共に剥し取るのが好ましいとしている。
【0128】
この理由について、図1dを参照して説明する。図1dは、既存表装材層(更新前の表装材層)の剥離方法の詳細な図である。
【0129】
既存表装材層16を引き剥がすべく床表面材層16Bをめくり上げようとすると、床表面材層16Bよりも脆弱な発泡樹脂等よりなるクッション材層16Aが上半側と下半側とで2分されるように破れ、床表面材層16Bとクッション材層16Aの上半側とが剥し取られる(図1dの(1)参照)。
【0130】
クッション材層16Aの下半側は次層薄板14Bにくっついたまま残留する。
【0131】
そこで、図1dの(2)のように、次層薄板14Bを最下層薄板14Jから剥し取り、該次層薄板14Bに付着したクッション材層16Aの残留分も除去する。
【0132】
図1dの(3)は、最下層薄板14Jを除去した後の状態を示すものであり、図2(b)と同一図である。
【0133】
前述の通り、薄板14A上に樹脂コーティング層18が設けられ、付着用材料19Bと最下層薄板14Jとの付着力は低いものとなっているので、次層薄板14Bと、その下面側の付着用材料19Bとが最下層薄板14Jから剥し取られる。
【0134】
[次層薄板14Bの剥し取りを容易とする好ましい構成]
上記の図1d(2)のように次層薄板14Bを最下層薄板14Jから剥し取るに際して、作業者が指先や工具で次層薄板14Bを摘んで引き剥がすに際し、最下層薄板14Jも一緒に摘んで引き剥がしてしまうおそれがある。
【0135】
このようなことを防止するために、剥離可能とされている2層の薄板同士において、これらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部を設けている。具体的には、図1eのように、次層薄板14Bと最下層薄板14Jとの間のうち、両者の周縁部の少なくとも一部に、次層薄板14Bと最下層薄板14Jとが接着されていない非接着部80を設けておくのが好ましい。この非接着部80を設けておくと、図1eの(3)のように、剥し残ったクッション材層16Aと共に次層薄板14Bを剥ぎ取るに際し、次層薄板14Bの端を軽く引き上げるだけで、次層薄板14Bと最下層薄板14Jとの間が口を開くようにしてめくり上がる。そこで、この次層薄板14Bの端をしっかりと掴んで次層薄板14Bをスムーズに剥し取ることができる。
【0136】
この非接着部としては、フィルムや樹脂含浸紙、樹脂コート紙、不織布などの非接着性の薄片(低親和性層)を用いて構成することができる。この非接着性の薄片を最下層薄板14Jに取り付けておけば、次層薄板14Bと表装材層16とを何回更新しても、次層薄板14Bをこの非接着部80から剥し取り始めることができ、便利である。ただし、非接着性の薄片は次層薄板14B側に取り付けられてもよい。
【0137】
また、非接着部は非接着性の薄片を設ける代わりに、付着用材料19Bを次層薄板14Bの周縁部に配材しないことにより非接着部を形成してもよい。
【0138】
なお、非接着部80は、次層薄板14Bと最下層薄板14Jの界面の全周にわたって設けられてもよく、一部に設けられてもよい。一部に非接着部を設ける場合、次層薄板14Bと最下層薄板14Jのコーナー(隅角部)の少なくとも一部に設けるのが好ましい。この場合、すべてのコーナー部に設けてもよく、一部のコーナー部に設けられてもよい。
【0139】
非接着部の次層薄板14B及び最下層薄板14Jの幅は、パネルの端から、通常1mm以上、好ましくは5mm以上、一方、通常50mm以下、好ましくは20mm以下とする。
このようにすることによって、非接着部が存在する薄板同士の間から、非接着部よりも上側の薄板と表装材層とを取り除くことができ、パネル表装材層の更新が可能となる。
【0140】
[2]第2の実施形態
上記図1,2の実施の形態では、配管13が配設された溝12付きの温調用基体11が用いられているが、本発明では図4に示すように溝なしの基体(平板基体)11Aを用いても良い。図4(a)は、基体として平板基体11Aを用いた場合の本発明のパネル(このパネルは、床、壁、天井のいずれにも適用可能であることは、図1,2に示すパネルと同様であるが、熱媒流通用の配管が配設されていないため、このパネル単独では暖房及び冷房を行うことはできない。)の実施の形態を示す断面図であり、図4(b)は図4(a)の拡大図である。図4において、図1に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0141】
図4に示すパネルは、基体として平板基体11Aを用いたこと以外は、図1に示すパネルと同様の構成とされている。例えば、居室に図1,2に示すような床暖房パネルを敷設する場合、居室全域に床暖房パネルを敷設する必要はなく、居室の周囲部分は、暖房機能のないパネルで良い。この場合、床暖房パネルを敷設した箇所と、床暖房パネルを敷設していない箇所との間に段差が生じるのを防止するために、床暖房パネルの周辺には、基体に熱媒流通用配管が配設されていない平板基体、所謂ダミーマットを敷設する。図4に示すパネルは、このダミーマットとして使用することができる。無論、居室の床、天井、壁それぞれの全面に図4に示すパネルを敷きつめてよいことはいうまでもない。
【0142】
ダミーマットの平板基体11Aは、熱媒流通用配管を配設するための溝を形成する必要がないため、材質は特に限定されないが、通常、前述の図1,2の床暖房パネルの基体11と同様のもの、好ましくは合板やパーティクルボード等の木製板状部材が使用され、軽量性の面から好ましくは発泡樹脂を用いる。平板基体11Aの厚さは、通常9〜50mmであり、前述の床暖房パネルの温調用基体11と同じ厚さとすると段差を防止することができ好ましい。
【0143】
また、後述の如く、表装材層の固定領域を形成するために、このような平板基体11Aを設ける場合もある。この場合、平板基体11Aとしては、表装材層を含む上載荷重を支持するために十分な強度を有するものが好ましく、例えば、スギ、サクラ、ヒノキ、ラワン及び合板などの木材や、樹脂成形体で構成され、その寸法としては、長さは、通常300〜4000mm程度、厚さは、通常9〜50mm程度、幅は、通常20〜100mm程度とされる。
【0144】
図4に示すパネルは、通常、基体11Aに溝がないこと以外は、前述の基体11と同様の材質、寸法が採用され、薄板、表装材層、付着用材料、薄板相互の接着力や製造施工、表装材層の更新方法についても、前述の図1,2に示すパネルと同様の説明をそのまま適用することができる。
【0145】
このパネルにあっても、最下層薄板14Jと薄板14Bとの間で両者を剥離させることにより、平板基体11Aや最下層薄板14Jを損傷させることなく、容易に表装材層16の更新を行うことができる。
【0146】
[3]第3の実施の形態
図1,2では基体11が1枚だけ、また図4では基体11A(平板基体)が1枚だけ示されている。しかし、本発明においては、基体を、複数枚並列配置して基体並列体としてもよい。そして、この基体並列体の上に、複数積層された薄板のうちの少なくとも1層が、各基体並列体上を横断するように積層されていてもよい。このようなパネルの具体例について以下説明する。
【0147】
すなわち、基体を、図1,2に示すような溝12付きの温調用基体11と溝なしの平板基体11Aとを組み合わせて配置することにより形成してもよい。
図5は、このようなパネルの実施の形態を示す断面図である。
【0148】
図5では、複数の平板基体11Aと温調用基体11とを交互に並列配置して基体並列体を構成している。この基体並列体を構成する基体のうち一部の基体は、温調用基体11であり、基体並列体を構成する基体のうち他の基体は、平板基体11Aであり、温調用基体11と平板基体11Aとが交互に配列されている。そして、この基体並列体の上側に付着用材料19A、最下層薄板14Jが積層されている。この最下層薄板14Jの上側のうち、平板基体11Aの上方領域に、平板基体11Aと等幅か若干幅の大きい付着用材料20、薄板21、付着用材料22、薄板23、付着用材料24が積層され、この上に表装材層16が積層配置される。なお、最下層薄板14Jと薄板21と薄板23の上には、それぞれ基体11Aの位置を示す表示31,32,33が設けられている。最下層薄板14Jの薄板14Aは熱拡散薄板となっており、この熱拡散薄板は温調用基体11から平板基体11Aにかけて連続して設けられている。
【0149】
図5では、薄板23が最上層薄板となっている。そして、この最上層薄板(薄板23)を含む表装材層16側の薄板(薄板21,23)を上位薄板と呼ぶ。図5では、上位薄板(薄板21,23)は、平板基体11Aと略等幅又はそれよりも若干大きい幅を有しており、平板基体11Aの上方に配置されている。
以下、上位薄板(薄板21,23)の幅と他の部材との幅の関係の具体例について説明する。
【0150】
上記薄板21,23の幅Wbは、表装材層16を設置する際に、表装材層16と薄板23との間の付着用材料24、薄板21と薄板23との間の付着用材料22がはみ出さないようにすることが好ましい。このため、薄板21,23の幅Wbは、平板基体11A固定領域の幅Wcより大きめになるようにすることが好ましい。薄板21,23の幅Wbは、通常、平板基体11Aの幅Waに対して110%以上、好ましくは130%以上とし、一方、通常160%以下、好ましくは150%以下とする。また、平板基体11Aの両側に張り出すように薄板21,23を設けることも好ましい。
【0151】
本発明では、表装材層16の更新の際のために、剥離可能としている2層の薄板のうち、基体側の薄板の上面に、平板基体11Aの位置を示す表示が設けられていることが好ましい。このような表示の例を図5に示す。図5における最下層薄板14J、薄板21,23上の表示31,32,33は、表装材層16を固定する際の目印、具体的には、釘、ビス等の固定用部材を打設するための目印とするために形成される。この表示31〜33は、着色塗料の塗布、着色テープの貼着により、好ましくは帯状に基体11A及び薄板21,23の幅方向中央付近に形成される。その幅Wcは、釘等の固定用部材を確実に平板基体11Aに打設し、温調用基体11、特にその配管を損傷させることがないように薄板21,23よりも狭く、平板基体11Aの幅Waの20〜80%とすることが好ましい。付着用材料20,22,24の幅Wdは、付着用材料のはみ出しを防ぐために幅Waの20〜80%程度とすることが好ましい。
【0152】
なお、表装材層16は、例えば実際には後述の図12のように、側縁に実部16aが突設されており、この実部16aが釘やビスなどの固定用部材(図12では釘70)により基体(平板基体)11Aに固定される。表示31(又は32,33)は、この釘等を打つ際の目印として利用される。表示31(又は32,33)の箇所に釘等を打つと、釘は必ず基体(平板基体)11Aに打ち込まれるようになり、誤って配管13を損傷することがない。
【0153】
表示31,32,33は、最下層薄板14Jの上にそれぞれ薄板21,23を貼るときの目印として利用される。この表示31,32,33に従って薄板21,23を貼ることにより、薄板21,23が必ず基体11Aの上方に配置されるようになる。
【0154】
図5では、基体並列体と、各薄板と、付着用材料の層がバラバラに分離して図示されているが、これは層構成を説明するためのものであり、実際にはこれらは互いに重ね合わされ、付着用材料によって結合されている。
【0155】
この図5の付着用材料19A,20,22,24のうち付着用材料20による薄板21と最下層薄板14Jとの層間結合力が、他の付着用材料の層の層間結合力よりも小さなものとなっている。そのため、表装材層16を引き剥がすときには薄板21と最下層薄板14Jとの間で剥離が生じる。
【0156】
図5の構成を有したパネルの表装材層16を更新するときには、まず表装材層16を引き剥がす。この際、上述の通り、例えば、薄板21と薄板14Jとの間が剥がれる。
【0157】
このように表装材層16を引き剥がして撤去した後、表示31を目印としてその上に新しい付着用材料20,22,24の層と薄板21,23との積層物を貼着し、その上に新たな表装材層16を配設する。このようにして、表装材層16を簡単かつ迅速に更新することもできる。
【0158】
図5では、2枚の薄板21,23と3層の付着用材料20,22,24を積層した5層構造となっているが、1枚の薄板21と2層の粘着剤層20,24を積層した3層構造であってもよい。
【0159】
図5では付着用材料20部分を最弱の接着力とし、表装材層16の更新時にこの付着用材料20部分が剥離する構成としたが、付着用材料22部分を最弱の接着力とし、表装材層更新時に付着用材料22部分が剥離する構成としてもよい。
【0160】
以下に図5のパネルを構成する各部材の詳細について説明する。
【0161】
〈基体〉
基体11,11Aの材質は特に限定されないが、通常、断熱性に富んだ発泡合成樹脂製のものが好ましく、発泡合成樹脂製の板状体、具体的には、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられる。中でも、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。基体11,11Aを構成するこれらの板状体の厚さは、通常9〜50mmの範囲内で選ぶのが好ましい。
【0162】
特に、表装材層16の固定領域を形成するための平板基体11Aとしては、表装材層16を含む上載荷重を支持するために十分な強度を有するものが好ましく、例えば、スギ、サクラ、ヒノキ、ラワン及び合板などの木材や、樹脂成形体で構成され、その寸法としては、長さは、通常300〜4000mm程度、厚さは、通常9〜50mm程度、幅は、通常20〜60mm程度とされる。
【0163】
図5において、平板基体11Aと温調用基体11との配置ピッチには特に制限はないが、温調用基体11の幅に対して平板基体11Aの幅が大き過ぎると、パネル全体としての温調効率が悪く、逆に温調用基体11の幅に対して平板基体11Aの幅が小さ過ぎると、表装材層16の固定領域を十分に確保し得ない。従って、温調用基体11と平板基体11Aとの合計の幅に対して、平板基体11Aの幅の割合が0.1〜0.2程度となるようにすることが好ましい。
【0164】
〈溝〉
基体(温調用基体)11の一方の板面には、配管13を配設するための溝12が基体11の側辺に沿って、複数本刻設されている。
【0165】
溝12の開口部の幅は、配管13の外径と同じ寸法、又はこれより僅かに大きくするのが好ましい。溝12は、その延在方向に直交する断面形状がU字形状又はコ字形状となるように形成されるが、特に、配管13から床面への伝熱性、配管13を溝12に埋設する際の施工性の面から、断面U字形とすることが好ましい。
【0166】
溝12の深さは、配管13の外径とほぼ同じ寸法とするのが好ましい。溝12の深さが配管13の外径より大きいと、配管を埋設した際に、配管13の上側に隙間ができ、熱媒の熱を効果的に床面側に伝熱することができず、伝熱効率が低下しやすくなる。
【0167】
〈配管〉
配管13には、通常可撓性チューブが使用され、具体的には架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などの樹脂管、銅管、鋼管などの金属管のいずれを用いても良い。このうち、金属管は樹脂管に比べて高熱伝導率であるものの重量が重く、加工性、発錆等の問題があり、また、コストも高くなるため、放冷熱パネルの用途に応じて適宜使用される。
【0168】
配管の断面(長さ方向に直交する方向の断面)形状には特に制限はなく、一般的には図5に示すような円形とされるが、長円形状ないし楕円形状とすることにより、配管と薄板との接触面積を増すことができ、表面側への放冷熱効率をさらに高めることができる。ただし、この場合には基体に設ける溝の形状を配管の形状に倣って適宜設計する。
【0169】
配管13の寸法は、床暖房パネルの施工対象や流通させる熱媒の種類や温度によって変更できるものであるが、一般的には外径が6mm以上13mm以下程度、内径が4mm以上10mm以下程度で、肉厚が0.8mm以上2.0mm以下程度である。
【0170】
〈熱媒〉
配管13に通す熱媒(温熱媒体)としては、温水、水蒸気、加熱オイル、あるいはエチレングリコール系水溶液、プロピレングリコール系水溶液などの不凍液などが挙げられるが、好ましくは温水である。
一方、冷熱媒体としては通常冷水が用いられる。
【0171】
〈薄板〉
薄板14A,21,23は、配管13を固定すると共に、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有することが好ましく、本発明において複数層設ける薄板(第3の実施態様においては薄板14A、21,23)のうち少なくとも1層、好ましくは薄板14Aは熱拡散薄板として金属箔を用いることが好ましい。金属箔の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔、銅箔などが挙げられる。中でも、製造の難易、コストなどの観点からアルミニウム箔が好適である。金属箔の厚さは、薄すぎると強度が十分でなく、厚すぎると製品が重くなるばかりでなく、コストがかさむので、1枚当たりの薄板の厚さとして通常10μm以上2mm以下の範囲で選ぶのが好ましい。金属箔以外の薄板としては、材質については、樹脂フィルム、樹脂シート、炭素繊維シート、またはこれらを少なくとも2種類以上積層したもの等が挙げられ、その厚さは通常10μm〜2mmである。
【0172】
本発明においては、このような薄板を2層以上の複数層積層して用いる。薄板は2層以上であれば良く、その積層数には特に制限はないが、過度に積層数が多いと、施工の手間やコストも増す上に、床暖房パネルの厚みが厚く、また、配管と床表面との距離が離れることによって、伝熱効率が低下することとなる。従って、薄板の積層数は通常2〜5層であり、特に好ましくは2層であり、また、複数層積層された薄板の全体の厚さは、通常10μm以上、好ましくは40μm以上とし、一方、通常2mm以下、好ましくは200μm以下とする。
【0173】
なお、第1の実施形態と同様、上記複数積層された薄板のうち、少なくとも1層の薄板には、厚さ方向に貫通する複数の穴を設けても良い。このような薄板を有穴薄板と呼ぶ。薄板に穴を設ける目的は、付着材用材料の層に残存した空気を抜くことにより、気泡の残留による音鳴り、不陸、伝熱性能低下を防止することにある。
【0174】
穴の直径は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上とし、一方、通常100mm以下、好ましくは50mm以下とする。穴の直径が0.01mm未満であると、空気を十分に抜くことができない場合があり、100mmを超えると放熱効果が低下する傾向となる。
【0175】
なお、表装材層をはぎとって新たな表装材層に交換する場合に、剥離面を介して2層の薄板がとなり合うこととなる。これら薄板にも穴を設けることは当然可能であるが、この場合、穴の直径を以下のように制御することが好ましい。つまり、空気を効果的に抜きつつ、剥離される表装材層側の剥離面に最も近い薄板と残留する基体側の剥離面とが一体化して表装材層の更新を困難とすることを防ぐために、剥離された薄板のうち、剥離面に最も近い薄板の穴の直径は0.1〜2mmとするのが好ましい。また、薄板の面積に対する穴の合計面積の比率は、通常5〜50%、好ましくは10〜30%とするのが好ましい。この比率が低過ぎると十分に空気を抜くことができない場合があり、高過ぎると薄板の強度が損なわれる。
【0176】
穴の形状(平面視形状)は、特に制限はなく、例えば、多角形、円形等が挙げられるが、好ましくは施工性の面から円、楕円等の円形である。なお、円形以外の形状の場合、当該穴と同じ面積の円の直径が上記範囲となるようにすることが好ましい。
穴の配列は、ランダム、規則的な配列のどちらでも良いが、工業生産上は、規則的に設けた方が好ましい。
【0177】
薄板への穴の形成方法としては、プレス、又はローラーに所定の穴を形成できる針を設け、そのローラー上に薄板を通過させる方法等が挙げられる。穴をランダム配置で形成させる場合は、針の配置をランダム配置としておけばよい。
【0178】
穴の形成ピッチ(隣接する穴の中心間距離)は、基体に埋設された配管の間隔同士の距離以下になるようにすることが好ましく、通常5mm以上、好ましくは20mm以上とし、通常200mm以下、好ましくは70mm以下である。
【0179】
本発明において、薄板をすべて穴を形成した有穴薄板とすると互いに積層された薄板同士の穴の重なり方によっては、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有しなくなる可能性がある。従って、複数積層された薄板のうち、少なくとも1層も穴を有しない無穴薄板とし、この無穴薄板と有穴薄板とが交互に積層されることが好ましい。このようにすることにより、有穴薄板の穴から、無穴薄板と有穴薄板との間の付着用材料層の残留気泡を効率的に抜き出し、音鳴り、不陸、伝熱性能低下防止効果を得ることができる。なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、穴を設ける代わりに、付着用材料を散点状又は線状(ストライプ状)に設けることによっても、薄板同士の間の空気残留を防止することができる。この場合の付着用材料の設け方は、実施形態1と同様にすればよい。
【0180】
〈樹脂コーティング層〉
樹脂コーティング層18は、薄板14Aと薄板21Bとの剥離を容易として床暖房パネルの更新を容易なものとするために設けられるものである。
【0181】
樹脂コーティング層18を形成する樹脂の種類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6・6などのポリアミド系樹脂などが挙げられる。中でも、強度、層の作り易さ、コストなどの観点から、ポリエチレンテレフタレートが好適である。樹脂コーティング層18の厚さは、薄過ぎると樹脂コーティング層を設けたことによる剥離性の向上効果を十分に得ることができず、厚過ぎると薄板が厚い場合と同様、床暖房パネルの厚みの増加、コスト増加、伝熱効率の低下の問題が生じるため、通常3μm以上、好ましくは10μm以上とし、一方、通常300μm以下、好ましくは50μm以下とする。
【0182】
最下層薄板14Jは、加熱溶融させた樹脂を薄板に直接熱融着させる方法、又は必要に応じて接着材料を介して接着する方法、コーティングフィルムを接着剤を介して接着する方法等により薄板14Aにコーティング材を積層することにより製造することができる。
【0183】
〈表装材層〉
表装材層としては特に制限はない。例えば、第1の実施形態と同様とすればよい。具体的には、薄板側のクッション材層と、この上に積層された床表面材層とを備えるものが好ましい。ただし、クッション材層は必ずしも必要とされず、床表面材層のみでもよい。図5は、クッション材層を設けず、床表面材層のみで表装材層16を構成した側を示すが、更にクッション材層を設けても良い。
【0184】
クッション材層は、床表面材層上での優れた歩行感覚を得る等の面から、例えばポリウレタン発泡体、ポリオレフィン系発泡体等の発泡樹脂、又は不織布を含むものである。
【0185】
クッション材層の厚さは、その材質、床暖房パネルの施工対象によっても異なるが、床暖房パネルを過度に厚くすることなく、また、配管からの伝熱効率を損なうことなく、十分な歩行性等を得る上で、通常1mm以上、好ましくは2mm以上とし、一方、通常6mm以下、好ましくは5mm以下とする。
【0186】
床表面材層は、配管を埋設した基体を保護すると共に、床面外観の意匠性と耐久性を高めるためのものであり、通常は合板等の木製、発泡ゴム製で、好ましくは木製のものであり、その表面に通常は、天然木材板又は木目模様などの印刷模様を施したプラスチックフィルム、不織布、強化紙など、好ましくは天然木材板又は強化紙が貼着される。
【0187】
床表面材層の厚さは、薄すぎると強度が不足して破損しやすくなり、厚すぎると配管からの伝熱効率が低下すると共に床暖房パネルの厚さが厚くなるため、通常3mm以上15mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0188】
なお、このような床表面材層の上に更に樹脂塗装等を施しても良い。
【0189】
〈付着用材料〉
付着用材料も、第1の実施形態と同様とすればよい。以下具体例を説明する。
付着用材料19A,20,22,24としては、後述の接着力の相互関係を十分に満たすものであり、これと接する床暖房パネルの構成部材を侵食したりすることのないものであれば良く、各種の接着剤や粘着剤、両面テープを用いることができる。これらの付着用材料による各部材の接着は、全面接着であることが好ましいが、面積の3%以上を接着する部分接着であっても良い。部分接着の場合、接着部の形状は線状、散点状等のいずれであっても良いが、特に金属箔等の薄板を他の薄板や、基体、クッション材層等と接着する場合には、少なくともその全周縁は接着部とすることが好ましい。
【0190】
〈接着力〉
本発明のパネルでは、複数層積層された薄板のうち、重なり合う少なくとも2層の薄板(図5においては、最下層薄板14Jと薄板21)同士が剥離可能とされている。好ましくは、基体に接する薄板(最下層薄板)と基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(次層薄板)と該最下層薄板との接着力よりも大きくすることにより、表装材層を更新する際、床暖房パネルの上層である表装材層から順に剥していく際に、最下層薄板に隣接して積層される次層薄板と最下層薄板との間を容易に剥離させて、最下層薄板を基体側に残し、この最下層薄板の上に新たな薄板層を積層し、その上に表装材層を積層することにより、基体を破損することなく表装材層を更新する。
【0191】
この接着力の相関関係について、図5を参照して説明する。基体11,11Aに接する最下層薄板、即ち最下層薄板14Jと基体11,11Aとの接着力は、最下層薄板14Jに隣接して積層される次層薄板21と最下層薄板14Jとの接着力の110%以上とすることが好ましい。なお、ここで接着力の評価基準には特に制限はないが、例えばJIS Z 0237に規定される、180度引き剥がし粘着力試験(以下、「JIS Z 0237法」と称す。)により測定される。
【0192】
例えば、最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板21)との接着力を100%とした場合、基体と最下層薄板(基体11,11Aと最下層薄板14J)との接着力は110%以上とし、具体的には、JIS Z 0237法による接着力が次のような値となるようにすることが好ましい。
(a)基体と最下層薄板(基体11,11Aと最下層薄板14J)との接着力:通常3〜30N、好ましくは5〜20N
(b)最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板21)との接着力:通常1〜27N、好ましくは2〜18N
【0193】
なお、最上層薄板23と表装材層16との間の接着力は、通常日常生活の使用に耐え得るに必要な強度が得られる程度であれば良い。
【0194】
従って、上述の接着力の相互関係を満たすように各部材を付着用材料により接着することが好ましい。
【0195】
このような接着力の相互関係を満たすために、接着力を大きくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を多くしたものやウレタン系の接着剤を使用し、接着力を小さくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を少なくしたものを使用するなどして、接着力を調整することが好ましい。接着力はまた、接着面積により調整することもでき、この場合には接着力の大きい箇所を全面接着とし、接着力の小さい箇所を部分接着とすれば良い。なお、部分接着の場合の接着力とは、接着部の単位面積当たりの接着力Sと全面積M、接着部面積Msとから、S×Ms÷Mで求めることができる。
【0196】
ただし、本発明は、表装材層が、クッション材層と床表面材層とで構成され、かつ基体と最下層薄板との間、及び、最下層薄板とそれに次層薄板との間が、それぞれ全面接着されている床暖房パネルにおいて、複数の薄板を設けることによる本発明の効果を有効に発揮することができ、好ましい。
【0197】
[4]第4の実施形態
図6(a)は、1枚の薄板52の片側に粘着剤層51を設けた結合体50を図5の付着用材料20,22と、薄板21,23との積層物の代替として用いたパネルの断面図、図6(b)は図6(a)のB部分の拡大図、図6(c)は結合体50の層構成を示す断面図、図7は図6における予備結合体50’の構成を示す断面図、図8,9は図6の表装材層を更新する施工説明断面図である。図12は表装材層の固定構造を示す断面図である。
【0198】
図6(b)の通り、複数枚の基体(温調用基体)11と基体(平板基体)11Aとを並列配置した基体並列体の上に付着用材料19Aを介して最下層薄板14Jが積層されている。図5と同じく、この最下層薄板14Jは、薄板14Aと樹脂コーティング層18とからなる。
【0199】
この結合体50の薄板52は、図5の薄板21,23と同じく基体(平板基体)11Aとより若干大きい幅員を有している。薄板52には、基体(平板基体)11Aの幅方向中央付近に表示54が設けられている。この表示54は図5における前記表示32と同様のものである。つまり、結合体50の薄板52が上位薄板となる。そして、薄板14Aが、上位薄板よりも下側の薄板(下位薄板)となる。
【0200】
この結合体50の粘着剤層51,53を介して表装材層16が最下層薄板14Jに付着している。結合体50のうち下側の粘着剤層51が上側の粘着剤層53及び付着用材料19Aよりも付着力が弱いものとなっている。付着力の具体的な決め方については後述する。
【0201】
この実施の形態では、結合体50(上位薄板:薄板52)に隣接して、薄板14A(下位薄板)と、表装材層16との間に、シート状の予備結合体50’が配置されている。そして、予備結合体50’は、将来の表装材層16の更新時に表装材層16を下位薄板に付着するために使用される。
【0202】
この予備結合体50’は、図7(a)に示す如く、結合体50と略等幅の薄板(薄板状本体部)52と、薄板52上に設けられた粘着剤層51,53と、粘着剤層51,53を隠蔽する離型紙55,56が一体化したものである。この離型紙55,56の厚みは2〜100μm程度であることが好ましい。なお、図7(a)では、薄板52上の両面に粘着剤層51,53と粘着剤層51,53を隠蔽する離型紙55,56が一体化しているが、コスト、施工性の面から粘着剤層53、離型紙55は設けなくてもよい。
【0203】
予備結合体50’は、その一側縁部50aが残部に折り重なるように二つ折りされ、二つ折りの折り線50bが結合体50の側方に結合体50に沿って配置されている。この実施の形態では、該一側縁部50aの粘着剤層51が離型紙で覆われずに露呈しており、この露呈した部分の粘着剤層51が、下位薄板(薄板14A)側の最下層薄板14Jに付着している。つまり、予備結合体50’の離型紙で覆われていない粘着剤層と、離型紙で覆われている粘着剤層との境界を折り線とし、離型紙が、表装材層側に位置するように、折り線に沿って、予備結合体が折り返され、折り線が上位薄板に沿って延在している。
【0204】
この図6(b)における表装材層16の取り付け状態の一例を詳細に示したものが図12である。表装材層16は、平板基体11Aの上側に端縁が位置しており、この端縁に実部16aが突設され、該実部16aが釘70等により平板基体11Aに留め付けられている。表装材層16の更新に際しては、釘70等を引き抜いてから新しい表装材層16を配置し、再度釘打ち等を行う。表装材層16の配置に際しては、表示54を目印として利用する。
【0205】
表装材層16を更新するに際しては、まず表装材層16を引き剥がす。この際、粘着力の低い粘着剤層51が剥離し、図8の通り、結合体50が表装材層16に付着したまま最下層薄板14Jから剥ぎ取られる。図7(a)に示す如く、結合体50’は表装材層16との間に離型紙56が介在するので、表装材層16には付着せず、薄板14Jに付着したまま残留する。
【0206】
次に、予備結合体50’から離型紙56を剥ぎ取ると共に図9(a),(b)のように予備結合体50’を折り線50bを回動中心として180°反転させ、予備結合体50’を最下層薄板14Jに重ねる。このとき、予備結合体50’は平板基体11Aの上側に来る。そこで、予備結合体50’の離型紙55を剥ぎ取り、図7(b)、図9(c)のように新たな表装材層16’を重ねて取り付ける。なお、図7(a)において、予備結合体50’に、粘着剤層53、離型紙55を設けていない場合は、表示54と略等しい幅に接着剤を塗り、必要に応じて接着剤と釘を並用して新たな表装材層16’を重ねて取り付ける。
【0207】
この図6〜9の態様によると、表装材層16の更新に際し、既設表装材層16の下側に配置されていた予備結合体50’を180°反転させて結合体として利用する。従って、新たな結合体50を準備しておくことが不要であり、また、新たな結合体を正確に位置決めして貼着する作業も不要である。
【0208】
図6〜9では、結合体50に隣接して1個の予備結合体50’を配置しているので、表装材層16を1回だけ更新する場合に好適である。
【0209】
図10(a)は表装材層を2回まで、新たな結合体50なしに更新できるように、結合体50(上位薄板:薄板52)の両側に予備結合体50’,50”を配置したパネルの断面図、図10(b)は図10(a)のB部分の拡大図、第11図は予備結合体50”の利用方法を示す断面図である。
【0210】
この予備結合体50”は、上記予備結合体50’と全く同一構成のものであり、図10(b)の通り、結合体50を挟んで左右対称に配置されている。
【0211】
第1回目の表装材層更新に際しては、図6〜9と全く同様にして一方の予備結合体50’を用いる。図11(a)は第1回目の表装材層更新後の断面図であり、予備結合体50’を介して表装材層16が最下層薄板14Jに付着している。
【0212】
第2回目の表装材層更新に際しては、図11(a)の状態で表装材層16’を引き剥がす。そうすると、第1の予備結合体50’は表装材層16’に付着したまま撤去され、第2の予備結合体50”のみが残留する。そこで、予備結合体50”から離型紙56を剥がし取り、予備結合体50”を図11(b)の通り、二つ折り線を回動中心として180°反転させ、基体11Aの上方に配置する。ここで、離型紙55をはがして、その後、新たな表装材層(図示せず)を付着材料の粘着剤層53を用いて固着すると、前記図7(b)、図9(c)と同様の更新後の構成となる。
【0213】
以下に図6〜12のパネルを構成する各部材の詳細について説明する。
【0214】
〈基体〉
基体11,11Aの材質は特に限定されないが、通常、断熱性に富んだ発泡合成樹脂製のものが好ましく、発泡合成樹脂製の板状体、具体的には、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられる。中でも、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。基体11,11Aを構成するこれらの板状体の厚さは、通常9〜50mmの範囲内で選ぶのが好ましい。
【0215】
特に、表装材層16の固定領域を形成するための平板基体11Aとしては、表装材層16を含む上載荷重を支持するために十分な強度を有するものが好ましく、例えば、スギ、サクラ、ヒノキ、ラワン及び合板などの木材や、樹脂成形体で構成され、その寸法としては、長さは、通常300〜4000mm程度、厚さは、通常9〜50mm程度、幅は、通常20〜100mm程度とされる。
【0216】
図6〜12において、平板基体11Aと温調用基体11との配置ピッチには特に制限はないが、温調用ピッチ11の幅に対して平板基体11Aの幅が大き過ぎると、パネル全体としての温調効率が悪く、逆に温調用基体11の幅に対して平板基体11Aの幅が小さ過ぎると、表装材層16の固定領域を十分に確保し得ない。従って、温調用基体11と平板基体11Aとの合計の幅に対して、平板基体11Aの幅の割合が0.1〜0.2程度となるようにすることが好ましい。
【0217】
〈溝〉
基体(温調用基体)11の一方の板面には、配管13を配設するための溝12が基体11の側辺に沿って、複数本刻設されている。
【0218】
溝12の開口部の幅は、配管13の外径と同じ寸法、又はこれより僅かに大きくするのが好ましい。溝12は、その延在方向に直交する断面形状がU字形状又はコ字形状となるように形成されるが、特に、配管13から床面への伝熱性、配管13を溝12に埋設する際の施工性の面から、断面U字形とすることが好ましい。
【0219】
溝12の深さは、配管13の外径とほぼ同じ寸法とするのが好ましい。溝12の深さが配管13の外径より大きいと、配管を埋設した際に、配管13の上側に隙間ができ、熱媒の熱を効果的に床面側に伝熱することができず、伝熱効率が低下しやすくなる。
【0220】
〈配管〉
配管13には、通常可撓性チューブが使用され、具体的には架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などの樹脂管、銅管、鋼管などの金属管のいずれを用いても良い。このうち、金属管は樹脂管に比べて高熱伝導率であるものの重量が重く、加工性、発錆等の問題があり、また、コストも高くなるため、放冷熱パネルの用途に応じて適宜使用される。
【0221】
配管の断面(長さ方向に直交する方向の断面)形状には特に制限はなく、一般的には図6〜12に示すような円形とされるが、長円形状ないし楕円形状とすることにより、配管と薄板との接触面積を増すことができ、表面側への放冷熱効率をさらに高めることができる。ただし、この場合には基体に設ける溝の形状を配管の形状に倣って適宜設計する。
【0222】
配管13の寸法は、床暖房パネルの施工対象や流通させる熱媒の種類や温度によって変更できるものであるが、一般的には外径が6mm以上13mm以下程度、内径が4mm以上10mm以下程度で、肉厚が0.8mm以上2.0mm以下程度である。
【0223】
〈熱媒〉
配管13に通す熱媒(温熱媒体)としては、温水、水蒸気、加熱オイル、あるいはエチレングリコール系水溶液、プロピレングリコール系水溶液などの不凍液などが挙げられるが、好ましくは温水である。
一方、冷熱媒体としては通常冷水が用いられる。
【0224】
〈薄板〉
薄板14A,52は、配管13を固定すると共に、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有することが好ましく、本発明において複数層設ける薄板(第4の実施態様においては薄板14A、52)のうち少なくとも1層、好ましくは薄板14Aは熱拡散薄板として金属箔を用いることが好ましい。金属箔の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔、銅箔などが挙げられる。中でも、製造の難易、コストなどの観点からアルミニウム箔が好適である。金属箔の厚さは、薄すぎると強度が十分でなく、厚すぎると製品が重くなるばかりでなく、コストがかさむので、1枚当たりの薄板の厚さとして通常10μm以上2mm以下の範囲で選ぶのが好ましい。金属箔以外の薄板としては、材質については、樹脂フィルム、樹脂シート、炭素繊維シート、またはこれらを少なくとも2種類以上積層したもの等が挙げられ、その厚さは通常10μm〜2mmである。
【0225】
本発明においては、このような薄板を2層以上の複数層積層して用いる。薄板は2層以上であれば良く、その積層数には特に制限はないが、過度に積層数が多いと、施工の手間やコストも増す上に、床暖房パネルの厚みが厚く、また、配管と床表面との距離が離れることによって、伝熱効率が低下することとなる。従って、薄板の積層数は通常2〜5層であり、特に好ましくは2層であり、また、複数層積層された薄板の全体の厚さは、通常10μm以上、好ましくは40μm以上とし、一方、通常2mm以下、好ましくは200μm以下とする。
【0226】
なお、第1の実施形態と同様、上記複数積層された薄板のうち、少なくとも1層の薄板には、厚さ方向に貫通する複数の穴を設けても良い。このような薄板を有穴薄板と呼ぶ。薄板に穴を設ける目的は、付着材用材料の層に残存した空気を抜くことにより、気泡の残留による音鳴り、不陸、伝熱性能低下を防止することにある。
【0227】
穴の直径は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上とし、一方、通常100mm以下、好ましくは50mm以下とする。穴の直径が0.01mm未満であると、空気を十分に抜くことができない場合があり、100mmを超えると放熱効果が低下する傾向となる。
【0228】
なお、表装材層をはぎとって新たな表装材層に交換する場合に、剥離面を介して2層の薄板がとなり合うこととなる。これら薄板にも穴を設けることは当然可能であるが、この場合、穴の直径を以下のように制御することが好ましい。つまり、空気を効果的に抜きつつ、剥離される表装材層側の剥離面に最も近い薄板と残留する基体側の剥離面とが一体化して表装材層の更新を困難とすることを防ぐために、剥離された薄板のうち、剥離面に最も近い薄板の穴の直径は0.1〜2mmとするのが好ましい。また、薄板の面積に対する穴の合計面積の比率は、通常5〜50%、好ましくは10〜30%とするのが好ましい。この比率が低過ぎると十分に空気を抜くことができない場合があり、高過ぎると薄板の強度が損なわれる。
【0229】
穴の形状(平面視形状)は、特に制限はなく、例えば、多角形、円形等が挙げられるが、好ましくは施工性の面から円、楕円等の円形である。なお、円形以外の形状の場合、当該穴と同じ面積の円の直径が上記範囲となるようにすることが好ましい。
穴の配列は、ランダム、規則的な配列のどちらでも良いが、工業生産上は、規則的に設けた方が好ましい。
【0230】
薄板への穴の形成方法としては、プレス、又はローラーに所定の穴を形成できる針を設け、そのローラー上に薄板を通過させる方法等が挙げられる。穴をランダム配置で形成させる場合は、針の配置をランダム配置としておけばよい。
【0231】
穴の形成ピッチ(隣接する穴の中心間距離)は、基体に埋設された配管の間隔同士の距離以下になるようにすることが好ましく、通常5mm以上、好ましくは20mm以上とし、通常20mm以下、好ましくは70mm以下である。
【0232】
本発明において、薄板をすべて穴を形成した有穴薄板とすると互いに積層された薄板同士の穴の重なり方によっては、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有しなくなる可能性がある。従って、複数積層された薄板のうち、少なくとも1層も穴を有しない無穴薄板とし、この無穴薄板と有穴薄板とが交互に積層されることが好ましい。このようにすることにより、有穴薄板の穴から、無穴薄板と有穴薄板との間の付着用材料層の残留気泡を効率的に抜き出し、音鳴り、不陸、伝熱性能低下防止効果を得ることができる。例えば、図6〜9のパネルにおいては、薄板52を有穴薄板とすることが好ましい。
なお、穴を設ける代わりに、付着用材料を散点状又は線状に設けてもよい。
【0233】
〈樹脂コーティング層〉
樹脂コーティング層18は、薄板14Aと薄板52との剥離を容易として床暖房パネルの更新を容易なものとするために設けられるものである。
【0234】
樹脂コーティング層18を形成する樹脂の種類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6・6などのポリアミド系樹脂などが挙げられる。中でも、強度、層の作り易さ、コストなどの観点から、ポリエチレンテレフタレートが好適である。樹脂コーティング層18の厚さは、薄過ぎると樹脂コーティング層を設けたことによる剥離性の向上効果を十分に得ることができず、厚過ぎると薄板が厚い場合と同様、床暖房パネルの厚みの増加、コスト増加、伝熱効率の低下の問題が生じるため、3μm以上300μm以下、特に10μm以上50μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0235】
最下層薄板14Jは、加熱溶融させた樹脂を薄板に直接熱融着させる方法、又は必要に応じて接着材料を介して接着する方法、コーティングフィルムを接着剤を介して接着する方法等により薄板14Aにコーティング材を積層することにより製造することができる。
【0236】
〈表装材層〉
表装材層としては特に制限はない。例えば、第1の実施形態と同様とすればよい。具体的には、薄板側のクッション材層と、この上に積層された床表面材層とを備えるものが好ましい。ただし、クッション材層は必ずしも必要とされず、床表面材層のみでもよい。図6〜12は、クッション材層を設けず、床表面材層のみで表装材層16を構成した側を示すが、更にクッション材層を設けても良い。
【0237】
クッション材層は、床表面材層上での優れた歩行感覚を得る等の面から、例えばポリウレタン発泡体、ポリオレフィン系発泡体等の発泡樹脂、又は不織布を含むものである。
【0238】
クッション材層の厚さは、その材質、床暖房パネルの施工対象によっても異なるが、床暖房パネルを過度に厚くすることなく、また、配管からの伝熱効率を損なうことなく、十分な歩行性等を得る上で、通常1mm以上、好ましくは2mm以上とし、一方、通常6mm以下、好ましくは5mm以下とする。
【0239】
床表面材層は、配管を埋設した基体を保護すると共に、床面外観の意匠性と耐久性を高めるためのものであり、通常は合板等の木製、発泡ゴム製で、好ましくは木製のものであり、その表面に通常は、天然木材板又は木目模様などの印刷模様を施したプラスチックフィルム、不織布、強化紙など、好ましくは天然木材板又は強化紙が貼着される。
【0240】
床表面材層の厚さは、薄すぎると強度が不足して破損しやすくなり、厚すぎると配管からの伝熱効率が低下すると共に床暖房パネルの厚さが厚くなるため、通常3mm以上15mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0241】
なお、このような床表面材層の上に更に樹脂塗装等を施しても良い。
【0242】
〈付着用材料〉
付着用材料も、第1の実施形態と同様とすればよい。以下具体例を説明する。
付着用材料19A,粘着剤層51,53の付着用材料としては、後述の接着力の相互関係を十分に満たすものであり、これと接する床暖房パネルの構成部材を侵食したりすることのないものであれば良く、各種の接着剤や粘着剤、両面テープを用いることができる。これらの付着用材料による各部材の接着は、全面接着であることが好ましいが、面積の3%以上を接着する部分接着であっても良い。部分接着の場合、接着部の形状は線状、散点状等のいずれであっても良いが、特に金属箔等の薄板を他の薄板や、基体、クッション材層等と接着する場合には、少なくともその全周縁は接着部とすることが好ましい。
【0243】
〈接着力〉
本発明のパネルでは、複数層積層された薄板のうち、重なり合う少なくとも2層の薄板(図6〜12においては、最下層薄板14Jと薄板52)同士が剥離可能とされている。好ましくは、基体に接する薄板(最下層薄板)と基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(次層薄板)と該最下層薄板との接着力よりも大きくすることにより、表装材層を更新する際、床暖房パネルの上層である表装材層から順に剥していく際に、最下層薄板に隣接して積層される次層薄板と最下層薄板との間を容易に剥離させて、最下層薄板を基体側に残し、この最下層薄板の上に新たな薄板層を積層し、その上に表装材層を積層することにより、基体を破損することなく表装材層を更新する。
【0244】
この接着力の相関関係について、図6〜12を参照して説明する。基体11,11Aに接する最下層薄板、即ち最下層薄板14Jと基体11,11Aとの接着力は、最下層薄板14Jに隣接して積層される次層薄板52と最下層薄板14Jとの接着力の110%以上とすることが好ましい。なお、ここで接着力の評価基準には特に制限はないが、例えばJIS Z 0237に規定される、180度引き剥がし粘着力試験(以下、「JIS Z 0237法」と称す。)により測定される。
【0245】
例えば、最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板52)との接着力を100%とした場合、基体と最下層薄板(基体11,11Aと最下層薄板14J)との接着力は110%以上とし、具体的には、JIS Z 0237法による接着力が次のような値となるようにすることが好ましい。
(a)基体と最下層薄板(基体11,11Aと最下層薄板14J)との接着力:通常3〜30N、好ましくは5〜20N
(b)最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板52)との接着力:通常1〜27N、好ましくは2〜18N
【0246】
なお、最上層薄板ともなる薄板52と表装材層16との間の接着力は、通常日常生活の使用に耐え得るに必要な強度が得られる程度であれば良い。
【0247】
従って、上述の接着力の相互関係を満たすように各部材を付着用材料により接着することが好ましい。
【0248】
このような接着力の相互関係を満たすために、接着力を大きくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を多くしたものやウレタン系の接着剤を使用し、接着力を小さくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を少なくしたものを使用するなどして、接着力を調整することが好ましい。接着力はまた、接着面積により調整することもでき、この場合には接着力の大きい箇所を全面接着とし、接着力の小さい箇所を部分接着とすれば良い。なお、部分接着の場合の接着力とは、接着部の単位面積当たりの接着力Sと全面積M、接着部面積Msとから、S×Ms÷Mで求めることができる。
【0249】
ただし、本発明は、表装材層が、クッション材層と床表面材層とで構成され、かつ基体と最下層薄板との間、及び、最下層薄板とそれに次層薄板との間が、それぞれ全面接着されている床暖房パネルにおいて、複数の薄板を設けることによる本発明の効果を有効に発揮することができ、好ましい。
【0250】
[5]パネルの施工構造
本発明のパネルは、床、壁又は天井に施工されることが好ましい。
本発明のパネルは、前述の温調用基体11と平板基体11Aとを組み合わせて様々な施工構造を構成することができる。具体的には、パネルを、中央領域に位置するパネルと、外周囲に位置するパネルとから構成し、中央領域に位置するパネルの基体の少なくとも一部が、温調用基体であり、外周囲に位置するパネルの基体は平板基体とすることが好ましい。このような具体例について以下説明する。
【0251】
例えば、図13(a)に示す如く、温調用基体11と平板基体11Aとを交互に並列配置して室の中央領域を形成し、その外周領域に平板基体11Aを配置した構成とすることができる。
また、図13(b)に示す如く、温調用基体11のみで室の中央領域を形成し、その外周領域に平板基体11Bを配置した構成とすることもできる。
【0252】
図13(b)に示す形態においては、平板基体11Bの材質は、通常、平板基体11Aの材質と同質のものが好ましく、長さは通常500〜1000mm程度、厚さは通常9〜50mm程度、幅は通常1500〜2500mm程度とされる。室の隅部においては、平板基体11Bを隅部の面積に応じて、切断加工して使用する。
【0253】
いずれの場合も、基体の厚さを揃えて、その上に薄板と表装材層を配置することにより、段差のない面一の施工面を形成することができる。
【実施例】
【0254】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0255】
実施例1(第1の実施形態の実施例)
図1に示す床暖房パネルを形成した。床暖房パネルの構成部材として用いたものは次の通りである。
基体11:下記の溝12を形成した厚さ12mmのポリスチレン発泡体製板状体
溝形状:断面U字形
溝開口幅:8mm
溝深さ:7.2mm
配管13:外径7.2mm、内径5mmの架橋ポリエチレン管
最下層薄板14J:厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートのコーティング
層を熱融着することにより、厚さ40μmのアルミニウム箔
に形成したもの
薄板14B:厚さ40μmのアルミニウム箔
クッション材層16A:厚さ4mmのポリエステル系の不織布
床表面材層16B:厚さ9mmの合板フローリング
【0256】
また、各部材間の接着に用いた付着用材料及びそのJIS Z 0237法により測定した接着力は次の通りである。
付着用材料19A:基体11と最下層薄板14Jとの間はアクリル系粘着材によ
り全面接着した。接着力:15N
付着用材料19B:最下層薄板14Jと薄板14Bとの間はアクリル系粘着材に
より全面接着した。接着力:10N
付着用材料19C:薄板14Bとクッション材層16Aとの間はウレタン系接着材に
より全面接着した。接着力:4N(但し、クッション層材の材破
による強度)、実接着力:50N以上
付着用材料19D:クッション材層16Aと床表面材層16Bとの間はウレタン系接
着材により全面接着した。接着力:4N(但し、クッション層材
の材破による強度)、実接着力:50N以上
(上記付着用材料19C,19Dの接着力4Nとは、JIS Z 0237法により実際に測定したウレタン系接着剤の接着力であり、この場合、クッション材層が材破する。実接着力50N以上とは、JIS Z 0237法により測定し、クッション材層が材破しない場合を想定した予想値である。)
【0257】
なお、この床暖房パネルは、床躯体面に対してウレタン系接着剤により150mmピッチで、幅30mmの帯接着とした。
【0258】
この床暖房パネルについて、表装材層を更新すべく、前述の(1)〜(4)の手順で更新作業を行ったところ、薄板14Bと最下層薄板14Jとの間で上層部をきれいに剥がし取ることができ、また、その後は良好な作業性のもとに、薄板、クッション材層、床表面材層を順次施工することができた。
【0259】
比較例1
実施例1において、薄板14Bを設けず、クッション材層16を最下層薄板14Jに直接接着したこと以外は同様にして床暖房パネルを形成した。なお、クッション材層16と最下層薄板14Jとの接着はウレタン系接着剤により行い、その接着力は50Nであった。
【0260】
その結果、更新時に表装材層を剥がす際に、パネル基体と樹脂コート薄板との間で剥がれ、更にこの樹脂コート薄板に接着している基体の発泡樹脂の一部も樹脂コート薄板と共に剥ぎ取られ、更に配管も飛び出し、破損してしまった。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1a】本発明のパネルの実施の形態を示す断面図である。
【図1b】図1aの拡大図である。
【図1c】パネルの施工手順図である。
【図1d】表装材層の剥ぎ取り手順図である。
【図1e】別の実施の形態に係るパネルの断面図である。
【図2】本発明のパネル表装材層の更新方法の実施の形態を示す断面図である。
【図3】従来の床暖房パネルを示す断面図である。
【図4】(a)図は本発明のパネルの他の実施の形態を示す断面図であり、(b)図は(a)図の拡大図である。
【図5】別の実施の形態を示す断面図である。
【図6】さらに別の実施の形態を示す断面図である。
【図7】図6の実施の形態における予備結合体50’の構成を示す断面図である。
【図8】図6の実施の形態における表装材層更新方法を示す断面図である。
【図9】図6の実施の形態における表装材層更新方法を示す断面図である。
【図10】異なる実施の形態を示す断面図である。
【図11】図10の実施の形態における表装材層更新方法を示す断面図である。
【図12】表装材層の固定構造を示す断面図である。
【図13】基体の配列状況を示す室の平面図である。
【符号の説明】
【0262】
11 温調用基体
11A,11B 平板基体
12 溝
13 配管
14,14A,14B,14B’ 薄板
14J 樹脂コート薄板
16 表装材層
16A,16A’ クッション材層
16B,16B’ 床表面材層
18 樹脂コーティング層
19A,19B,19B’,19C,19C’,19D,19D’ 付着用材料
50 結合体
50’,50” 予備結合体
80 非接着部
【技術分野】
【0001】
本発明は、下層の薄板や基体を破損させることなく、容易に表装材層を更新することができるパネル及び該パネルの施工構造と、パネル表装材層の更新方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅、集合住宅、ホテル、病院、高齢者養護施設などの建造物の床には、居住性を高める目的で、床面から暖房する床暖房構造が開発、実用化され、各種態様の床暖房構造が提案されている。特に、温水等の熱媒を通す配管を設けた床暖房構造は、ヒーター加熱によるものとは異なり、局部的に過熱状態が生じにくく、放熱性も良好であるという利点を有し、広く採用されるようになってきている。
【0003】
このような床暖房構造に用いる床暖房パネルの構造としては、図3(a),(b)((a)図は断面図、(b)図は(a)図の溝部の拡大図である。)に示す如く、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂や合板などの基体11の表面に溝12が形成され、熱媒としての温水を流す配管13がこの溝12内に設けられ、この基体11の表面に薄板14が接着材15等の付着用材料で貼り付けられ、更にこの薄板14の上に表装材層16が接着材17等の付着用材料で貼り付けられたものが一般的である。配管13としては、架橋ポリエチレン管などの樹脂管或いは銅管などの金属管が用いられる。基体11表面の薄板14は、配管13を固定するとともに、配管13からの放熱をパネル内で均質化させる役割を果たす。この薄板14としては、アルミニウム箔などが使用される。表装材層16は、床面を形成するものであり、クッション材層とこのクッション材層の上に接着された床表面材層とで構成される場合もある。なお、接着材15,17の代りに両面テープが用いられる場合もあるが、いずれの場合も、基体11、薄板14、表装材層(クッション材層及び床表面材層)16は、互いに全面接着されている。この床暖房パネルは、床の躯体面に十分な接着強度を有する接着材により全面接着されて施工される。
【0004】
このような床暖房パネルを施工した暖房床では、長期間の使用により表装材層が摩耗して表面の模様が消失したり、傷が付いたり著しい場合には剥離したりする。しかし、表装材層の下層部分は耐久性に優れ、長期使用にも十分に耐え得るため、一般的には、定期的に、或いは賃貸住宅などでは居住者が変わる毎に、また、転売時等において、表装材層を貼り替えるリフォームが行われる。
【0005】
このリフォーム時には、既存の表装材層を剥がして新品の表装材層を貼り付ければ良いが、図3に示す従来の床暖房パネルでは、表装材層16の剥離時に、表装材層16に全面接着している薄板14、更にはこの薄板14に全面接着している基体11の発泡樹脂の一部も表装材層16と共に剥ぎ取られ、破損に到る場合が多い。薄板14が剥離してしまった場合、アルミニウム箔等のごく薄い薄板14を、現場にて基体11に対して密着性良く接着することは、非常に困難であり、また基体11が剥ぎ取られた場合には、現場にてこれを補修することも非常に困難である。従って、このような場合には、床暖房パネル全体を交換する必要が生じ、多くのコストと施工時間、手間を要するようになる。
【0006】
従来、表装材層の易剥離性を高めるべく、薄板である金属箔の上面(表装材層接着面側)に合成樹脂層を設けたものが提案されている(特開2002−81662号公報)。特開2002−81662号公報では、合成樹脂層の介在により表装材層のみを剥離することができるとされている。
【特許文献1】特開2002−81662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特開2002−81662号公報のように合成樹脂層を設けた場合であっても、この合成樹脂層と表装材層との接着強度が高いと表装材層と共に合成樹脂層及び金属箔が剥ぎ取られてしまう場合がある。また、表装材層の一部が合成樹脂層側に残留しこれを容易に除去し得ない場合もある。
【0008】
従って、本発明は上記従来の問題点を解決し、下層の薄板や基体を破損させることなく、容易に表装材層を更新することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み、本発明者等は鋭意検討した結果、剥離する部分に少なくとも2枚の薄板を設け、この薄板間を剥離可能とすることにより、下層の薄板や基体を破損させることなく、容易に表装材層を更新することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明(請求項1)のパネルは、板状の基体と、該基体の一方の板面に積層された薄板と、該薄板の前記基体とは反対側の面に積層された表装材層とを有するパネルにおいて、該薄板が複数層積層され、且つ重なり合う少なくとも2層の薄板同士が剥離可能とされていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のパネルは、請求項1において、前記基体の前記一方の板面に配管収容用の溝が設けられており、該溝内に熱媒流通用の配管が配設されており、前記薄板のうちの少なくとも一つが熱拡散薄板であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3のパネルは、請求項1又は2において、前記剥離可能とされている2層の薄板同士において、これらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4のパネルは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記基体に接する薄板(以下、「最下層薄板」という。)と該基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(以下、「次層薄板」という。)と該最下層薄板との接着力よりも大きいことを特徴とするものである。
【0014】
請求項5のパネルは、請求項4において、該最下層薄板と次層薄板との間のうちこれらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6のパネルは、請求項5において、該薄板は方形であり、少なくとも1個のコーナー部に前記非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7のパネルは、請求項5において、薄板の4辺の周縁部に前記非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8のパネルは、請求項5ないし7のいずれか1項において、該最下層薄板と次層薄板との間に接着用材料が存在しないことにより前記非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項9のパネルは、請求項5ないし7のいずれか1項において、該最下層薄板と次層薄板との間に接着用材料が存在するが、該接着用材料と一方の薄板との間に、該接着用材料と低親和性の低親和性層が介在することにより前記非接着部が設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10のパネルは、請求項1ないし9のいずれか1項において、
(i)前記基体と最下層薄板、
(ii)前記薄板同士、
(iii)前記表装材層に接する薄板(以下、「最上層薄板」という。)と表装材層
が、それぞれ、付着用材料により付着されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項11のパネルは、請求項1ないし10のいずれか1項において、前記表装材層が、該薄板に近い側のクッション材層と、該クッション材層よりも該薄板から遠い側の床表面材層とを有することを特徴とするものである。
【0021】
請求項12のパネルは、請求項11において、前記表装材層が、前記クッション材層と前記床表面材層とからなり、該クッション材層と該床表面材層とが、付着用材料により付着されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項13のパネルは、請求項1ないし12のいずれか1項において、前記最下層薄板が、金属薄板と、少なくとも該金属薄板の前記基体と反対側の面に施された樹脂コーティング層とを有することを特徴とするものである。
【0023】
請求項14のパネルは、請求項1ないし13のいずれか1項において、複数層積層された前記薄板のうち少なくとも1層は、複数の穴が設けられた有穴薄板であることを特徴とするものである。
【0024】
請求項15のパネルは、請求項14において、複数層積層された前記薄板のうち、少なくとも1層は穴を有しない無穴薄板であり、該無穴薄板と前記有穴薄板とが交互に積層されていることを特徴とするものである。
【0025】
請求項16のパネルは、請求項1ないし15のいずれか1項において、前記基体が、複数並列配置されて基体並列体を構成しており、該基体並列体の上に、複数層積層された前記薄板のうちの少なくとも1層が、各基体並列体上を横断するように積層されていることを特徴とするものである。
【0026】
請求項17のパネルは、請求項16において、前記基体のうち一部のものは、前記一方の板面に溝が設けられ、該溝内に熱媒流通用配管が配設された温調用基体であり、前記基体のうち他のものは、該溝及び熱媒流通用配管を具備しない平板基体であり、該温調用基体と該平板基体とが交互に配列されていることを特徴とするものである。
【0027】
請求項18のパネルは、請求項17において、前記剥離可能とされている2層の薄板のうち、基体側の薄板の上面に、前記平板基体の位置を示す表示が設けられていることを特徴とするものである。
【0028】
請求項19のパネルは、請求項18において、前記表示は、前記平板基体の幅方向中央付近であって且つ該平板基体の幅の20〜80%の範囲に設けられていることを特徴とするものである。
【0029】
請求項20のパネルは、請求項17ないし19のいずれか1項において、前記薄板のうちの少なくとも1層は熱拡散薄板であり、該熱拡散薄板は温調用基体から平板基体にかけて連続して設けられていることを特徴とするものである。
【0030】
請求項21のパネルは、請求項1ないし20のいずれか1項において、複数層積層された前記薄板同士は付着用材料を介して接着されており、少なくとも一部の薄板同士を接着する付着用材料は散点状又は線状に設けられていることを特徴とするものである。
【0031】
請求項22のパネルは、請求項17ないし20のいずれか1項において、少なくとも前記最上層薄板を含む前記表装材層側の薄板(以下、「上位薄板」という。)は、前記平板基体と略等幅又はそれよりも若干大きい幅を有しており、該平板基体の上方に配置されていることを特徴とするものである。
【0032】
請求項23のパネルは、請求項22において、前記上位薄板の側方に隣接して、該上位薄板よりも下側の薄板(以下、「下位薄板」という。)と、前記表装材層との間に、将来の表装材層の更新時に該表装材層を該下位薄板に付着させるために使用される、シート状の予備結合体が配置されていることを特徴とするものである。
【0033】
請求項24のパネルは、請求項23において、前記予備結合体は、前記上位薄板と略等幅の薄板状本体部と、該薄板状本体部上の少なくとも一方の面上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層を隠蔽する離型紙が一体化されたものであることを特徴とするものである。
【0034】
請求項25のパネルは、請求項24において、前記予備結合体の粘着剤層の一部は前記離型紙で覆われておらず、この離型紙で覆われていない粘着剤層を介して前記予備結合体が部分的に前記下位薄板側に付着していることを特徴とするものである。
【0035】
請求項26のパネルは、請求項25において、前記予備結合体の前記離型紙で覆われていない粘着剤層と、前記離型紙で覆われている粘着剤層との境界を折り線とし、前記離型紙が、前記表装材層側に位置するように該折り線に沿って、前記予備結合体が折り返され、折り線が前記上位薄板に沿って延在していることを特徴とするものである。
【0036】
請求項27のパネルは、請求項25において、前記上位薄板の両側方にそれぞれ前記予備結合体が配置されていることを特徴とするものである。
【0037】
請求項28のパネルは、請求項1ないし27のいずれか1項において、前記薄板が、複数の部分薄板から構成されていることを特徴とするものである。
【0038】
請求項29のパネル表装材層の更新方法は、請求項1ないし28のいずれか1項に記載のパネルの表装材層を新たな表装材層に交換するパネル表装材層の更新方法であって、隣接するいずれかの前記薄板同士の間を剥がすことによって、前記表装材層と、少なくとも最上層の薄板を取り除いた後、残留する薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするものである。
【0039】
請求項30のパネル表装材層の更新方法は、請求項29において、該パネルは請求項4に記載のパネルであり、前記表装材層を更新するにあたり、最下層薄板と次層薄板との間を剥がすことによって、前記表装材層と、該最下層薄板以外の薄板とを取り除いた後、残留する該最下層薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするものである。
【0040】
請求項31のパネル表装材層の更新方法は、請求項29において、前記パネルは請求項3,5ないし9のいずれか1項に記載のパネルであり、該非接着部が存在する薄板同士の間から、該非接着部よりも上側の薄板と表装材層とを取り除くことを特徴とするものである。
【0041】
請求項32のパネル表装材層の更新方法は、請求項29ないし31のいずれか1項において、残留する薄板の上に、少なくとも1層の新たな薄板を積層し、その上に前記表装材層を積層することを特徴とするものである。
【0042】
請求項33のパネル表装材層の更新方法は、請求項29において、前記パネルは請求項22に記載のパネルであり、前記表装材層を更新するにあたり、前記表装材層と、前記上位薄板のうち、少なくとも1層とを取り除いた後、取り除いた該上位薄板に対応する新たな上位薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするものである。
【0043】
請求項34のパネル表装材層の更新方法は、請求項33において、前記パネルは請求項23に記載のパネルであり、前記上位薄板と前記下位薄板との間を剥がすことによって前記表装材層を更新するに際し、新たな上位薄板を前記予備結合体を用いて構成することを特徴とするものである。
【0044】
請求項35のパネル表装材層の更新方法は、請求項34において、前記パネルは請求項24又は25に記載のパネルであり、新たな上位薄板を前記予備結合体を用いて構成するに際し、該予備結合体から離型紙を剥がして露呈させた粘着剤層を下位薄板に付着させて上位薄板とすることを特徴とするものである。
【0045】
請求項36のパネル表装材層の更新方法は、請求項35において、前記パネルは請求項26又は27に記載のパネルであり、前記予備結合体から離型紙を剥がして露呈させた粘着剤層部分を前記折り線部分に沿って反転させて前記下位薄板に対し付着させることを特徴とするものである。
【0046】
請求項37のパネル施工構造は、請求項1ないし27のいずれか1項に記載のパネルを床、壁又は天井に施工したことを特徴とするものである。
【0047】
請求項38のパネルの施工構造は、請求項37において、前記パネルを、中央領域に位置するパネルと、外周囲に位置するパネルとから構成し、該中央領域に位置するパネルの基体の少なくとも一部が、前記一方の板面に溝が設けられた温調用基体であり、該外周囲に位置するパネルの基体は、前記一方の板面に溝が設けられていない平板基体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0048】
本発明のパネルは、床、壁及び天井のいずれにも施工可能である。施工されたパネルのリフォーム時には、表層材層側を剥がして更新する。
【0049】
本発明によれば、床等のリフォーム時には、剥離可能に設けられた2層の薄板同士の間で、下層の薄板や更にその下の基体を損傷させることなく、また、表装材層側の材料を残留させることなく、容易に基体側と表装材層側とを剥離して表装材層側を取り除くことができる。このため、パネルの基体側を残して表装材層側のみを短時間で効率的に更新することができ、施工コストも安価なものとなる。
【0050】
請求項2によれば、配管内に温熱媒又は冷熱媒を流通させることにより、暖房機能又は冷房機能を有する床、壁又は天井が構成される。
【0051】
請求項4,30によれば、更新時に上記(i),(ii)又は(iii)の部分を引き剥がすことができる。
【0052】
請求項5〜9,31によれば、更新時に非接着部を設けた界面から薄板同士をスムーズに剥すことができる。
【0053】
請求項11,12によればクッション性に優れた床等を構成することができる。
【0054】
請求項13によれば、樹脂コート金属薄板とそれよりも上側の薄板との間を引き剥がすことができる。
【0055】
請求項14,15によれば、薄板の積層時に、有穴薄板の穴から付着用材料に残留する空気を抜くことにより、空気の残留による音鳴り、不陸形成、伝熱性能の低下を防止することができる。
【0056】
請求項16によれば、基体を並列させることにより大形のパネルを構成することができる。
【0057】
請求項17によれば、温調用基体と平板基体とが交互に配列し、この平板基体に対し表装材層を釘、ビス等の固定用部材を打ち付けることにより、強固なパネル施工を行える。
【0058】
請求項18によれば、前記表示により平板基体の位置を知ることができ、上記の釘又はビス等を確実に平板基体に対し打つことができ、温調用基体の配管を釘やビス等で損傷させることが防止される。
【0059】
請求項19によれば、釘又はビスを平板基体の中央付近に打つことができる。
【0060】
請求項20によれば、熱拡散薄板が温調用基体から平板基体にかけて連続して配材されるため、温調用基体からの温熱又は冷熱が平板基体側にまで十分に拡散するようになり、パネル全体の均熱化を図ることができる。
【0061】
請求項21によれば、散点状又は線状の付着用材料同士の間の非付着部を通して空気を抜くことができ、上記請求項14,15と同様の効果を得ることができる。
溝と略直交に非付着部を線状に設けることにより、少ない非付着部面積で、より効率的に空気を抜くことができる。散点状の非付着部を設ける際には、溝上に非付着部を設けることにより、より効率的に空気を抜くことができる。
【0062】
請求項22,33によれば、表装材層の更新に際し、上位薄板と下位薄板との間で引き剥がし、下位薄板を残置させ、上位薄板と表装材層とを新しいものに更新することができる。
【0063】
請求項23,34によれば、表装材層の更新に際し、予備結合体によって下位薄板と表装材層とを付着させることができるので、新たな上位薄板を現場に搬入することなく、更新作業を行うことができる。
【0064】
請求項24,35によれば、予備結合体の粘着剤層は離型紙で覆われているから、既設表装材層の搬去時にそれに随伴して予備結合体が搬去されることはない。
請求項24,25,35によれば、予備結合体の一部が下位薄板に付着しており、位置ズレすることが防止される。
【0065】
請求項26,27,36によれば、既設表装材層及び上位薄板を撤去した後、予備結合体のうち表装材層側を折り線部分から反転させて下位薄板の上に重ねることにより、予備結合体を表装材層の固定用に利用することが可能となる。従って、更新時に予備結合体の位置決めを行うことが不要であり、作業が極めて簡単となる。
【0066】
請求項27によれば、1回目の表装材層更新に際しては上位薄板の一方の側の予備結合体を用い、他方の側のものはそのままとしておき、表装材層の2回目更新に際して残りの予備結合体を用いることができるので、1つのパネルで2回まで表装材層を容易に更新することができる。
【0067】
請求項38によれば、暖房又は冷房が不要な床、壁又は天井の外周部分には熱媒を流通させないものとすることにより施工コスト、熱エネルギーコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に説明するものは本発明の実施形態の一例であって、本発明はその要旨を超えない限り、以下の説明に何ら限定されるものではない。
【0069】
以下においては、本発明のパネルを主に床暖房パネルに適用した場合を例示して説明するが、本発明のパネルは、冷房、暖房の両方に適用が可能なものであり、従って、本発明に係る後述の配管には、熱媒として温水等の温熱媒体又は冷水等の冷熱媒体が流通される。また、本発明のパネルは床冷暖房に限らず、壁冷暖房、天井冷暖房等、各所の面冷暖房用途に適用される。更に、本発明のパネルは熱媒を流通させない、従って、暖房も冷房も行わない単なる、床、壁又は天井面形成パネルにも適用される。
【0070】
[1]第1の実施形態
図1aは本発明のパネルの実施の形態を示す断面図であり、図1bは図1aの拡大図である。なお、図1aにおいては説明の便宜上各部材を切り剥して示しているが、これらは実際には図1bに示すように積層一体化されている。図1cは積層手順を示す断面図である。図2は、図1a〜1cの床暖房パネル表装材層の更新方法の実施の形態を示す断面図である。なお、図1a,1b,1c,2において、図3に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0071】
[床暖房パネル]
図1a,1bに示す床暖房パネルは、一方の板面(上面)に配管収容用の溝12が設けられており、溝12内に配管13が配設された温調用基体としての板状の基体11と、この溝12内に配設された熱媒流通用の配管13と、基体11上に積層された2枚の薄板14A,14Bと、薄板14Bの上に積層された表装材層16とを備える。薄板14Aは熱拡散薄板であり、その上面(基体11と反対側の面)には樹脂コーティング層18が設けられている。以下、この樹脂コーティング層18が設けられた薄板14Aを最下層薄板14Jと称す。また、表装材層16は、薄板14B側のクッション材層16Aと、その上に積層された床表面材層16Bとを備える。
【0072】
図1a〜1cの床暖房パネルにおいて、基体11、最下層薄板14J、薄板14B、クッション材層16A、及び床表面材層16Bは、それぞれ付着用材料19A,19B,19C,19Dを介して積層一体化されている。
【0073】
この薄板14Bが次層薄板であるが、この実施の形態では次層薄板14Bは最上層薄板も兼ねている。
【0074】
この床暖房パネルは、図1cに示すようにして施工されたものである。
【0075】
まず、図1cの(1)の通り、基体11を複数枚、施工対象床面に敷き並べるようにして配列する。なお、複数の基体11は、シート材料によって相互に連絡され、屏風状に折り畳まれており、これを展開して施工対象床面上に広げる。このように敷設した基体11の溝12に配管13を配設する。
【0076】
次に、図1cの(2)の通り、基体11の上に付着用材料19Aを塗着した後、最下層薄板14Jを貼り付ける。なお、最下層薄板14Jに予め付着用材料19Aを塗着すると共に、剥離紙やフィルムで覆っておき、施工時に該剥離紙やフィルムを剥して最下層薄板14Jを基体11に貼り付けてもよい。この場合、付着用材料19Aを現場で塗着する作業工程は省略される。
【0077】
次に、図1cの(3)の通り、付着用材料19Bを介して次層薄板14Bを最下層薄板14Jの上に貼る。この場合、付着用材料19Bは次層薄板14Bに予め塗着され、剥離紙やフィルムで覆われていることが望ましい。この剥離紙やフィルムを剥して次層薄板14Bを最下層薄板14Jの上に貼る。
【0078】
その後、図1cの(4)の通り、付着用材料19Cを介して表装材層16を次層薄板14Bの上に貼る。この場合、付着用材料19Cを次層薄板14Bの上に塗着するのが好ましい。表装材層16は、床表面材層16Bとクッション材層16Aとを付着用材料19Dを介して一体化したものとして、現場に搬入されている。
【0079】
なお、図1a〜1c,2では配管13に湯などの温熱媒体を流通させるので、基体11は暖房用基体とされ、パネルは床暖房パネルとなっているが、配管13に冷水などの冷熱媒体を流通させる場合には、基体11は冷房用基体となり、パネルは壁、天井等に好適な冷房パネルとなる。
【0080】
以下に本発明のパネルを構成する各部材の詳細について説明する。
【0081】
〈基体〉
基体11の材質は特に限定されないが、通常、断熱性に富んだ発泡合成樹脂製のものが好ましく、発泡合成樹脂製の板状体、具体的には、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられる。中でも、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。基体11を構成するこれらの板状体の厚さは、通常9〜50mmの範囲内で選ぶのが好ましい。
【0082】
〈溝〉
基体11の一方の板面には、配管13を配設するための溝12が基体11の側辺に沿って、複数本刻設されている。
【0083】
溝12の開口部の幅は、配管13の外径と同じ寸法、又はこれより僅かに大きくするのが好ましい。溝12は、その延在方向に直交する断面形状がU字形状又はコ字形状となるように形成されるが、特に、配管13から床面への伝熱性、配管13を溝12に埋設する際の施工性の面から、断面U字形とすることが好ましい。
【0084】
溝12の深さは、配管13の外径とほぼ同じ寸法とするのが好ましい。溝12の深さが配管13の外径より大きいと、配管を埋設した際に、配管13の上側に隙間ができ、熱媒の熱を効果的に床面側に伝熱することができず、伝熱効率が低下しやすくなる。
【0085】
〈放熱の配管13〉
配管13には、通常可撓性チューブが使用され、具体的には架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などの樹脂管、銅管、鋼管などの金属管のいずれを用いても良い。このうち、金属管は樹脂管に比べて高熱伝導率であるものの重量が重く、加工性、発錆等の問題があり、また、コストも高くなるため、放冷熱パネルの用途に応じて適宜使用される。
【0086】
配管の断面(長さ方向に直交する方向の断面)形状には特に制限はなく、一般的には図1に示すような円形とされるが、長円形状ないし楕円形状とすることにより、配管と薄板との接触面積を増すことができ、表面側への放冷熱効率をさらに高めることができる。ただし、この場合には基体に設ける溝の形状を配管の形状に倣って適宜設計する。
【0087】
配管13の口径は、床暖房パネルの施工対象や流通させる熱媒の種類や温度によって変更できるものであるが、一般的には外径が6mm以上13mm以下程度、内径が4mm以上10mm以下程度で、肉厚が0.8mm以上2.0mm以下程度である。
【0088】
〈熱媒〉
配管13に通す熱媒(温熱媒体)としては、温水、水蒸気、加熱オイル、あるいはエチレングリコール系水溶液、プロピレングリコール系水溶液などの不凍液などが挙げられるが、好ましくは温水である。
一方、冷熱媒体としては通常冷水が用いられる。
【0089】
〈薄板〉
薄板14A,14Bは、配管13を固定すると共に、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有することが好ましく、本発明において複数層設ける薄板(第1の実施態様においては薄板14A、14B)のうち少なくとも1層、好ましくは薄板14Aは熱拡散薄板として金属箔を用いることが好ましい。金属箔の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔、銅箔などが挙げられる。中でも、製造の難易、コストなどの観点からアルミニウム箔が好適である。金属箔の厚さは、薄すぎると強度が十分でなく、厚すぎると製品が重くなるばかりでなく、コストがかさむので、1枚当たりの薄板の厚さとして通常10μm以上2mm以下の範囲で選ぶのが好ましい。金属箔以外の薄板としては、材質については、樹脂フィルム、樹脂シート、炭素繊維シート、またはこれらを少なくとも2種類以上積層したもの等が挙げられ、その厚さは通常10μm〜2mmである。
【0090】
本発明においては、このような薄板を2層以上の複数層積層して用いる。薄板は2層以上であれば良く、その積層数には特に制限はないが、過度に積層数が多いと、施工の手間やコストも増す上に、床暖房パネルの厚みが厚く、また、配管と床表面との距離が離れることによって、伝熱効率が低下することとなる。従って、薄板の積層数は通常2〜5層であり、特に好ましくは2層であり、また、複数層積層された薄板の全体の厚さは、通常10μm以上、好ましくは40μm以上とし、一方、通常2mm以下、好ましくは200μm以下とする。
【0091】
なお、上記複数積層された薄板のうち、少なくとも1層の薄板には、厚さ方向に貫通する複数の穴を設けても良い。このような薄板を有穴薄板と呼ぶ。薄板に穴を設ける目的は、付着材用材料の層に残存した空気を抜くことにより、気泡の残留による音鳴り、不陸、伝熱性能低下を防止することにある。
【0092】
穴の直径は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上とし、一方、通常100mm以下、好ましくは50mm以下とする。穴の直径が0.01mm未満であると、空気を十分に抜くことができない場合があり、100mmを超えると放熱効果が低下する傾向となる。
【0093】
なお、表装材層をはぎとって新たな表装材層に交換する場合に、剥離面を介して2層の薄板がとなり合うこととなる。これら薄板にも穴を設けることは当然可能であるが、この場合、穴の直径を以下のように制御することが好ましい。つまり、空気を効果的に抜きつつ、剥離される表装材層側の剥離面に最も近い薄板と残留する基体側の剥離面とが一体化して表装材層の更新を困難とすることを防ぐために、剥離された薄板のうち、剥離面に最も近い薄板の穴の直径は0.1〜2mmとするのが好ましい。また、薄板の面積に対する穴の合計面積の比率は、通常5〜50%、好ましくは10〜30%とするのが好ましい。この比率が低過ぎると十分に空気を抜くことができない場合があり、高過ぎると薄板の強度が損なわれる。
【0094】
穴の形状(平面視形状)は、特に制限はなく、例えば、多角形、円形等が挙げられるが、好ましくは施工性の面から円、楕円等の円形である。なお、円形以外の形状の場合、当該穴と同じ面積の円の直径が上記範囲となるようにすることが好ましい。
穴の配列は、ランダム、薄板全域に規則的な配列のどちらでも良いが、工業生産上は、薄板全域に規則的に設けた方が好ましい。
【0095】
薄板への穴の形成方法としては、プレス、又はローラーに所定の穴を形成できる針を設け、そのローラー上に薄板を通過させる方法等が挙げられる。穴をランダム配置で形成させる場合は、針の配置をランダム配置としておけばよい。
【0096】
穴の形成ピッチ(隣接する穴の中心間距離)は、基体に埋設された配管の間隔同士の距離以下になるようにすることが好ましく、通常5mm以上、好ましくは20mm以上とし、通常200mm以下、好ましくは70mm以下である。
【0097】
本発明において、薄板をすべて穴を形成した有穴薄板とすると互いに積層された薄板同士の穴の重なり方によっては、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有しなくなる可能性がある。従って、複数積層された薄板のうち、少なくとも1層も穴を有しない無穴薄板とし、この無穴薄板と有穴薄板とが交互に積層されることが好ましい。このようにすることにより、有穴薄板の穴から、無穴薄板と有穴薄板との間の付着用材料層の残留気泡を効率的に抜き出し、音鳴り、不陸、伝熱性能低下防止効果を得ることができる。例えば、図1a〜1cのパネルにおいては、薄板14Bを有穴薄板とすることが好ましい。なお、薄板は、複数の部分薄板から構成されていてもよい。これは以下の実施形態でも同様である。
【0098】
[穴の代替としての付着用材料の散点状又は線状塗着]
穴を設ける代わりに、付着用材料を散点状又は線状(ストライプ状)に設けることによっても、薄板同士の間の空気残留を防止することができる。
【0099】
付着用材料を散点状に設ける場合の付着用材料の塗着面積割合(薄板の面積をM1とし、そのうち付着用材料を塗着した部分の面積をM2とした場合、(M2/M1)×100%として定義される。)は、通常50%以上、好ましくは80%以上、一方、通常99%以下とする。散点の点の形状は円でもよく、円以外であってもよい。1個の散点の面積は、通常10cm2以上、好ましくは20cm2以上、一方、通常1000cm2以下、好ましくは300cm2以下とする。
【0100】
ストライプ状に設ける場合、ストライプの幅は、通常10mm以上、好ましくは30mm以上、一方、通常200mm以下、好ましくは50mm以下とする。ストライプ同士の間の非接着部の間隔は、通常1mm以上、一方、通常100mm以下、好ましくは30mm以下とする。
【0101】
〈樹脂コーティング層〉
樹脂コーティング層18は、薄板14Aと薄板14Bとの剥離を容易として床暖房パネルの更新を容易なものとするために設けられるものである。
【0102】
樹脂コーティング層18を形成する樹脂の種類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6・6などのポリアミド系樹脂などが挙げられる。中でも、強度、層の作り易さ、コストなどの観点から、ポリエチレンテレフタレートが好適である。樹脂コーティング層18の厚さは、薄過ぎると樹脂コーティング層を設けたことによる剥離性の向上効果を十分に得ることができず、厚過ぎると薄板が厚い場合と同様、床暖房パネルの厚みの増加、コスト増加、伝熱効率の低下の問題が生じるため、通常3μm以上、好ましくは10μm以上とし、一方、通常300μm以下、好ましくは50μm以下とする。
【0103】
最下層薄板14Jは、加熱溶融させた樹脂を薄板に直接熱融着させる方法、又は必要に応じて接着材料を介して接着する方法、コーティングフィルムを接着剤を介して接着する方法等により薄板14Aにコーティング材を積層することにより製造することができる。
【0104】
〈表装材層〉
表装材層としては特に制限はないが、薄板側のクッション材層16Aと、この上に積層された床表面材層16Bとを備えるものが好ましい。ただし、クッション材層は必ずしも必要とされず、床表面材層のみでもよい。また、表装材層をクッション材層16Aと床表面材層16Bとで構成する場合には、クッション材層16Aと床表面材層16Bとが、付着用材料19D(詳細は後述)により付着されていることが好ましい。
【0105】
クッション材層16Aは、床表面材層上での優れた歩行感覚を得る等の面から、例えばポリウレタン発泡体、ポリオレフィン系発泡体等の発泡樹脂、又は不織布を含むものである。
【0106】
クッション材層16Aの厚さは、その材質、床暖房パネルの施工対象によっても異なるが、床暖房パネルを過度に厚くすることなく、また、配管からの伝熱効率を損なうことなく、十分な歩行性等を得る上で、通常1mm以上、好ましくは2mm以上とし、一方、通常6mm以下、好ましくは5mm以下とする。
【0107】
床表面材層16Bは、配管を埋設した基体を保護すると共に、床面外観の意匠性と耐久性を高めるためのものであり、通常は合板等の木製、発泡ゴム製で、好ましくは木製のものであり、その表面に通常は、天然木材板又は木目模様などの印刷模様を施したプラスチックフィルム、不織布、強化紙など、好ましくは天然木材板又は強化紙が貼着される。
【0108】
床表面材層16Bの厚さは、薄すぎると強度が不足して破損しやすくなり、厚すぎると配管からの伝熱効率が低下すると共に床暖房パネルの厚さが厚くなるため、通常3mm以上15mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0109】
なお、このような床表面材層16Bの上に更に樹脂塗装等を施しても良い。
【0110】
〈付着用材料〉
本実施の形態においては、(i)前記基体と最下層薄板(詳細は後述)、(ii)前記薄板同士、(iii)前記表装材層に接する薄板(以下、「最上層薄板」という。)と表装材層が、それぞれ、付着用材料(図1では19A〜19D)により付着されていることが好ましい。
付着用材料19A〜19Dとしては、後述の接着力の相互関係を十分に満たすものであり、これと接する床暖房パネルの構成部材を侵食したりすることのないものであれば良く、各種の接着剤や粘着剤、両面テープを用いることができる。これらの付着用材料による各部材の接着は、全面接着であることが好ましいが、面積の3%以上を接着する部分接着であっても良い。部分接着の場合、接着部の形状は線状、散点状等のいずれであっても良いが、特に金属箔等の薄板を他の薄板や、基体、クッション材層等と接着する場合には、少なくともその全周縁は接着部とすることが好ましい。
【0111】
〈接着力〉
本発明のパネルでは、複数層積層された薄板のうち、重なり合う少なくとも2層の薄板(図1においては、最下層薄板14Jと薄板14B)同士が剥離可能とされている。好ましくは、基体に接する薄板(最下層薄板)と基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(次層薄板)と該最下層薄板との接着力よりも大きくすることにより、表装材層を更新する際、床暖房パネルの上層である表装材層から順に剥していく際に、最下層薄板に隣接して積層される次層薄板と最下層薄板との間を容易に剥離させて、最下層薄板を基体側に残し、この最下層薄板の上に新たな薄板層を積層し、その上に表装材層を積層することにより、基体を破損することなく表装材層を更新する。
【0112】
この接着力の相関関係について、図1を参照して説明する。基体11に接する最下層薄板、即ち最下層薄板14Jと基体11との接着力は、最下層薄板14Jに隣接して積層される次層薄板14Bと最下層薄板14Jとの接着力の110%以上とすることが好ましい。なお、ここで接着力の評価基準には特に制限はないが、例えばJIS Z 0237に規定される、180度引き剥がし粘着力試験(以下、「JIS Z 0237法」と称す。)により測定される。
【0113】
例えば、最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板14B)との接着力を100%とした場合、基体と最下層薄板(基体11と最下層薄板14J)との接着力は110%以上とし、具体的には、JIS Z 0237法による接着力が次のような値となるようにすることが好ましい。
(a)基体と最下層薄板(基体11と最下層薄板14J)との接着力:通常3〜30N、好ましくは5〜20N
(b)最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板14B)との接着力:通常1〜27N、好ましくは2〜18N
【0114】
なお、最上層薄板ともなる薄板14Bと表装材層との間の接着力は、通常日常生活の使用に耐え得るに必要な強度が得られる程度であれば良い。
【0115】
従って、上述の接着力の相互関係を満たすように各部材を付着用材料により接着することが好ましい。
【0116】
このような接着力の相互関係を満たすために、接着力を大きくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を多くしたものやウレタン系の接着剤を使用し、接着力を小さくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を少なくしたものを使用するなどして、接着力を調整することが好ましい。接着力はまた、接着面積により調整することもでき、この場合には接着力の大きい箇所を全面接着とし、接着力の小さい箇所を部分接着とすれば良い。なお、部分接着の場合の接着力とは、接着部の単位面積当たりの接着力Sと全面積M、接着部面積Msとから、S×Ms÷Mで求めることができる。
【0117】
ただし、本発明は、表装材層が、クッション材層と床表面材層とで構成され、かつ基体と最下層薄板との間、及び、最下層薄板とそれに次層薄板との間が、それぞれ全面接着されている床暖房パネルにおいて、複数の薄板を設けることによる本発明の効果を有効に発揮することができ、好ましい。
【0118】
〈製造施工〉
本発明のパネルは、所定の積層構造で部材間に付着用材料を設けて各部材を積層一体化することにより製造、施工される。
【0119】
なお、本発明のパネルは、例えば、図1に示す構造で、床表面材層、クッション材層を除いた構造として予め工場で製造された床暖房パネルを現場にて床躯体面に接着し、その上から床表面材層、クッション材層を施工しても良く、また、現場にて、図1に示す構造となるように、各部材を積層して施工しても良い。但し、この場合も予め工場で、各部材を積層したものを現場にて組み合せてもよい。例えば、「表装材層16」と「薄板14B」と「最下層薄板14Jと基体11との積層体」を予め工場で製造し、現場にて組み立てる;「表装材層16」と「薄板14Bと最下層薄板14Jと基体11との積層体」を予め工場で製造し、現場にて組み立てることができる。
【0120】
[表装材層の更新方法]
上述のような本発明のパネルの表装材層を交換するには、隣接し、剥離可能に積層された薄板同士の間を剥がすことによって、表装材層と少なくとも1層の薄板を取り除いた後、残留する薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層する。好ましくは、最下層薄板と最下層薄板に隣接する次層薄板との間を剥がすことによって、表装材層と、最下層薄板以外の薄板とを取り除いた後、残留する最下層薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層する。
【0121】
以下に図1に示す床暖房パネルの表装材層を交換する更新方法について、図2を参照して説明する。
【0122】
(1) まず、図1の状態から床表面材層16Bを剥がし取る(図2(a))。
【0123】
(2) 次いで、クッション材層16Aを剥がし取る。この場合、薄板14Bを引き上げ、薄板14Bをクッション材層16Aと共に最下層薄板14Jから剥がし取るのが作業効率の面から好ましい(図2(b))。前述の如く、薄板14Bと最下層薄板14Jとの間の接着力は、最下層薄板14Jと基体11との接着力よりも小さいため、薄板14Bは最下層薄板14Jから容易に剥がし取ることができ、最下層薄板14Jや基体11が損傷することはなく、また、クッション材層16Aや薄板14Bの残留の問題もない。
【0124】
(3) 床表面材層16Bとクッション材層16A及び薄板14Bを剥がし取った後は、最下層薄板14Jの樹脂コーティング層18が表出するため、この上に新たな付着用材料19B’を介して新たな薄板14B’を接着する(図2(c))。この場合、予め薄板14B’に付着用材料19B’を積層したものを使用してもよい。
【0125】
(4) 次に、図2(d)の通り、薄板14B’上に新たな付着用材料19C’を介して表装材層16’を貼る。この表装材層16’は前記表装材層16と同じものである。なお、薄板14B’の上に付着用材料19C’を介して新たなクッション材層16A’を接着し、更に付着用材料19D’を介して床表面材層16B’を接着するようにしても良い。
【0126】
上記工程は、良好な作業性のもとに容易かつ効率的に実施することができる。
【0127】
図2についての上記説明では床表面材層16Bを剥した後、クッション材層16Aを剥し取り、この際、クッション材層16Aを次層薄板14Bと共に剥し取るのが好ましいとしている。
【0128】
この理由について、図1dを参照して説明する。図1dは、既存表装材層(更新前の表装材層)の剥離方法の詳細な図である。
【0129】
既存表装材層16を引き剥がすべく床表面材層16Bをめくり上げようとすると、床表面材層16Bよりも脆弱な発泡樹脂等よりなるクッション材層16Aが上半側と下半側とで2分されるように破れ、床表面材層16Bとクッション材層16Aの上半側とが剥し取られる(図1dの(1)参照)。
【0130】
クッション材層16Aの下半側は次層薄板14Bにくっついたまま残留する。
【0131】
そこで、図1dの(2)のように、次層薄板14Bを最下層薄板14Jから剥し取り、該次層薄板14Bに付着したクッション材層16Aの残留分も除去する。
【0132】
図1dの(3)は、最下層薄板14Jを除去した後の状態を示すものであり、図2(b)と同一図である。
【0133】
前述の通り、薄板14A上に樹脂コーティング層18が設けられ、付着用材料19Bと最下層薄板14Jとの付着力は低いものとなっているので、次層薄板14Bと、その下面側の付着用材料19Bとが最下層薄板14Jから剥し取られる。
【0134】
[次層薄板14Bの剥し取りを容易とする好ましい構成]
上記の図1d(2)のように次層薄板14Bを最下層薄板14Jから剥し取るに際して、作業者が指先や工具で次層薄板14Bを摘んで引き剥がすに際し、最下層薄板14Jも一緒に摘んで引き剥がしてしまうおそれがある。
【0135】
このようなことを防止するために、剥離可能とされている2層の薄板同士において、これらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部を設けている。具体的には、図1eのように、次層薄板14Bと最下層薄板14Jとの間のうち、両者の周縁部の少なくとも一部に、次層薄板14Bと最下層薄板14Jとが接着されていない非接着部80を設けておくのが好ましい。この非接着部80を設けておくと、図1eの(3)のように、剥し残ったクッション材層16Aと共に次層薄板14Bを剥ぎ取るに際し、次層薄板14Bの端を軽く引き上げるだけで、次層薄板14Bと最下層薄板14Jとの間が口を開くようにしてめくり上がる。そこで、この次層薄板14Bの端をしっかりと掴んで次層薄板14Bをスムーズに剥し取ることができる。
【0136】
この非接着部としては、フィルムや樹脂含浸紙、樹脂コート紙、不織布などの非接着性の薄片(低親和性層)を用いて構成することができる。この非接着性の薄片を最下層薄板14Jに取り付けておけば、次層薄板14Bと表装材層16とを何回更新しても、次層薄板14Bをこの非接着部80から剥し取り始めることができ、便利である。ただし、非接着性の薄片は次層薄板14B側に取り付けられてもよい。
【0137】
また、非接着部は非接着性の薄片を設ける代わりに、付着用材料19Bを次層薄板14Bの周縁部に配材しないことにより非接着部を形成してもよい。
【0138】
なお、非接着部80は、次層薄板14Bと最下層薄板14Jの界面の全周にわたって設けられてもよく、一部に設けられてもよい。一部に非接着部を設ける場合、次層薄板14Bと最下層薄板14Jのコーナー(隅角部)の少なくとも一部に設けるのが好ましい。この場合、すべてのコーナー部に設けてもよく、一部のコーナー部に設けられてもよい。
【0139】
非接着部の次層薄板14B及び最下層薄板14Jの幅は、パネルの端から、通常1mm以上、好ましくは5mm以上、一方、通常50mm以下、好ましくは20mm以下とする。
このようにすることによって、非接着部が存在する薄板同士の間から、非接着部よりも上側の薄板と表装材層とを取り除くことができ、パネル表装材層の更新が可能となる。
【0140】
[2]第2の実施形態
上記図1,2の実施の形態では、配管13が配設された溝12付きの温調用基体11が用いられているが、本発明では図4に示すように溝なしの基体(平板基体)11Aを用いても良い。図4(a)は、基体として平板基体11Aを用いた場合の本発明のパネル(このパネルは、床、壁、天井のいずれにも適用可能であることは、図1,2に示すパネルと同様であるが、熱媒流通用の配管が配設されていないため、このパネル単独では暖房及び冷房を行うことはできない。)の実施の形態を示す断面図であり、図4(b)は図4(a)の拡大図である。図4において、図1に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0141】
図4に示すパネルは、基体として平板基体11Aを用いたこと以外は、図1に示すパネルと同様の構成とされている。例えば、居室に図1,2に示すような床暖房パネルを敷設する場合、居室全域に床暖房パネルを敷設する必要はなく、居室の周囲部分は、暖房機能のないパネルで良い。この場合、床暖房パネルを敷設した箇所と、床暖房パネルを敷設していない箇所との間に段差が生じるのを防止するために、床暖房パネルの周辺には、基体に熱媒流通用配管が配設されていない平板基体、所謂ダミーマットを敷設する。図4に示すパネルは、このダミーマットとして使用することができる。無論、居室の床、天井、壁それぞれの全面に図4に示すパネルを敷きつめてよいことはいうまでもない。
【0142】
ダミーマットの平板基体11Aは、熱媒流通用配管を配設するための溝を形成する必要がないため、材質は特に限定されないが、通常、前述の図1,2の床暖房パネルの基体11と同様のもの、好ましくは合板やパーティクルボード等の木製板状部材が使用され、軽量性の面から好ましくは発泡樹脂を用いる。平板基体11Aの厚さは、通常9〜50mmであり、前述の床暖房パネルの温調用基体11と同じ厚さとすると段差を防止することができ好ましい。
【0143】
また、後述の如く、表装材層の固定領域を形成するために、このような平板基体11Aを設ける場合もある。この場合、平板基体11Aとしては、表装材層を含む上載荷重を支持するために十分な強度を有するものが好ましく、例えば、スギ、サクラ、ヒノキ、ラワン及び合板などの木材や、樹脂成形体で構成され、その寸法としては、長さは、通常300〜4000mm程度、厚さは、通常9〜50mm程度、幅は、通常20〜100mm程度とされる。
【0144】
図4に示すパネルは、通常、基体11Aに溝がないこと以外は、前述の基体11と同様の材質、寸法が採用され、薄板、表装材層、付着用材料、薄板相互の接着力や製造施工、表装材層の更新方法についても、前述の図1,2に示すパネルと同様の説明をそのまま適用することができる。
【0145】
このパネルにあっても、最下層薄板14Jと薄板14Bとの間で両者を剥離させることにより、平板基体11Aや最下層薄板14Jを損傷させることなく、容易に表装材層16の更新を行うことができる。
【0146】
[3]第3の実施の形態
図1,2では基体11が1枚だけ、また図4では基体11A(平板基体)が1枚だけ示されている。しかし、本発明においては、基体を、複数枚並列配置して基体並列体としてもよい。そして、この基体並列体の上に、複数積層された薄板のうちの少なくとも1層が、各基体並列体上を横断するように積層されていてもよい。このようなパネルの具体例について以下説明する。
【0147】
すなわち、基体を、図1,2に示すような溝12付きの温調用基体11と溝なしの平板基体11Aとを組み合わせて配置することにより形成してもよい。
図5は、このようなパネルの実施の形態を示す断面図である。
【0148】
図5では、複数の平板基体11Aと温調用基体11とを交互に並列配置して基体並列体を構成している。この基体並列体を構成する基体のうち一部の基体は、温調用基体11であり、基体並列体を構成する基体のうち他の基体は、平板基体11Aであり、温調用基体11と平板基体11Aとが交互に配列されている。そして、この基体並列体の上側に付着用材料19A、最下層薄板14Jが積層されている。この最下層薄板14Jの上側のうち、平板基体11Aの上方領域に、平板基体11Aと等幅か若干幅の大きい付着用材料20、薄板21、付着用材料22、薄板23、付着用材料24が積層され、この上に表装材層16が積層配置される。なお、最下層薄板14Jと薄板21と薄板23の上には、それぞれ基体11Aの位置を示す表示31,32,33が設けられている。最下層薄板14Jの薄板14Aは熱拡散薄板となっており、この熱拡散薄板は温調用基体11から平板基体11Aにかけて連続して設けられている。
【0149】
図5では、薄板23が最上層薄板となっている。そして、この最上層薄板(薄板23)を含む表装材層16側の薄板(薄板21,23)を上位薄板と呼ぶ。図5では、上位薄板(薄板21,23)は、平板基体11Aと略等幅又はそれよりも若干大きい幅を有しており、平板基体11Aの上方に配置されている。
以下、上位薄板(薄板21,23)の幅と他の部材との幅の関係の具体例について説明する。
【0150】
上記薄板21,23の幅Wbは、表装材層16を設置する際に、表装材層16と薄板23との間の付着用材料24、薄板21と薄板23との間の付着用材料22がはみ出さないようにすることが好ましい。このため、薄板21,23の幅Wbは、平板基体11A固定領域の幅Wcより大きめになるようにすることが好ましい。薄板21,23の幅Wbは、通常、平板基体11Aの幅Waに対して110%以上、好ましくは130%以上とし、一方、通常160%以下、好ましくは150%以下とする。また、平板基体11Aの両側に張り出すように薄板21,23を設けることも好ましい。
【0151】
本発明では、表装材層16の更新の際のために、剥離可能としている2層の薄板のうち、基体側の薄板の上面に、平板基体11Aの位置を示す表示が設けられていることが好ましい。このような表示の例を図5に示す。図5における最下層薄板14J、薄板21,23上の表示31,32,33は、表装材層16を固定する際の目印、具体的には、釘、ビス等の固定用部材を打設するための目印とするために形成される。この表示31〜33は、着色塗料の塗布、着色テープの貼着により、好ましくは帯状に基体11A及び薄板21,23の幅方向中央付近に形成される。その幅Wcは、釘等の固定用部材を確実に平板基体11Aに打設し、温調用基体11、特にその配管を損傷させることがないように薄板21,23よりも狭く、平板基体11Aの幅Waの20〜80%とすることが好ましい。付着用材料20,22,24の幅Wdは、付着用材料のはみ出しを防ぐために幅Waの20〜80%程度とすることが好ましい。
【0152】
なお、表装材層16は、例えば実際には後述の図12のように、側縁に実部16aが突設されており、この実部16aが釘やビスなどの固定用部材(図12では釘70)により基体(平板基体)11Aに固定される。表示31(又は32,33)は、この釘等を打つ際の目印として利用される。表示31(又は32,33)の箇所に釘等を打つと、釘は必ず基体(平板基体)11Aに打ち込まれるようになり、誤って配管13を損傷することがない。
【0153】
表示31,32,33は、最下層薄板14Jの上にそれぞれ薄板21,23を貼るときの目印として利用される。この表示31,32,33に従って薄板21,23を貼ることにより、薄板21,23が必ず基体11Aの上方に配置されるようになる。
【0154】
図5では、基体並列体と、各薄板と、付着用材料の層がバラバラに分離して図示されているが、これは層構成を説明するためのものであり、実際にはこれらは互いに重ね合わされ、付着用材料によって結合されている。
【0155】
この図5の付着用材料19A,20,22,24のうち付着用材料20による薄板21と最下層薄板14Jとの層間結合力が、他の付着用材料の層の層間結合力よりも小さなものとなっている。そのため、表装材層16を引き剥がすときには薄板21と最下層薄板14Jとの間で剥離が生じる。
【0156】
図5の構成を有したパネルの表装材層16を更新するときには、まず表装材層16を引き剥がす。この際、上述の通り、例えば、薄板21と薄板14Jとの間が剥がれる。
【0157】
このように表装材層16を引き剥がして撤去した後、表示31を目印としてその上に新しい付着用材料20,22,24の層と薄板21,23との積層物を貼着し、その上に新たな表装材層16を配設する。このようにして、表装材層16を簡単かつ迅速に更新することもできる。
【0158】
図5では、2枚の薄板21,23と3層の付着用材料20,22,24を積層した5層構造となっているが、1枚の薄板21と2層の粘着剤層20,24を積層した3層構造であってもよい。
【0159】
図5では付着用材料20部分を最弱の接着力とし、表装材層16の更新時にこの付着用材料20部分が剥離する構成としたが、付着用材料22部分を最弱の接着力とし、表装材層更新時に付着用材料22部分が剥離する構成としてもよい。
【0160】
以下に図5のパネルを構成する各部材の詳細について説明する。
【0161】
〈基体〉
基体11,11Aの材質は特に限定されないが、通常、断熱性に富んだ発泡合成樹脂製のものが好ましく、発泡合成樹脂製の板状体、具体的には、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられる。中でも、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。基体11,11Aを構成するこれらの板状体の厚さは、通常9〜50mmの範囲内で選ぶのが好ましい。
【0162】
特に、表装材層16の固定領域を形成するための平板基体11Aとしては、表装材層16を含む上載荷重を支持するために十分な強度を有するものが好ましく、例えば、スギ、サクラ、ヒノキ、ラワン及び合板などの木材や、樹脂成形体で構成され、その寸法としては、長さは、通常300〜4000mm程度、厚さは、通常9〜50mm程度、幅は、通常20〜60mm程度とされる。
【0163】
図5において、平板基体11Aと温調用基体11との配置ピッチには特に制限はないが、温調用基体11の幅に対して平板基体11Aの幅が大き過ぎると、パネル全体としての温調効率が悪く、逆に温調用基体11の幅に対して平板基体11Aの幅が小さ過ぎると、表装材層16の固定領域を十分に確保し得ない。従って、温調用基体11と平板基体11Aとの合計の幅に対して、平板基体11Aの幅の割合が0.1〜0.2程度となるようにすることが好ましい。
【0164】
〈溝〉
基体(温調用基体)11の一方の板面には、配管13を配設するための溝12が基体11の側辺に沿って、複数本刻設されている。
【0165】
溝12の開口部の幅は、配管13の外径と同じ寸法、又はこれより僅かに大きくするのが好ましい。溝12は、その延在方向に直交する断面形状がU字形状又はコ字形状となるように形成されるが、特に、配管13から床面への伝熱性、配管13を溝12に埋設する際の施工性の面から、断面U字形とすることが好ましい。
【0166】
溝12の深さは、配管13の外径とほぼ同じ寸法とするのが好ましい。溝12の深さが配管13の外径より大きいと、配管を埋設した際に、配管13の上側に隙間ができ、熱媒の熱を効果的に床面側に伝熱することができず、伝熱効率が低下しやすくなる。
【0167】
〈配管〉
配管13には、通常可撓性チューブが使用され、具体的には架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などの樹脂管、銅管、鋼管などの金属管のいずれを用いても良い。このうち、金属管は樹脂管に比べて高熱伝導率であるものの重量が重く、加工性、発錆等の問題があり、また、コストも高くなるため、放冷熱パネルの用途に応じて適宜使用される。
【0168】
配管の断面(長さ方向に直交する方向の断面)形状には特に制限はなく、一般的には図5に示すような円形とされるが、長円形状ないし楕円形状とすることにより、配管と薄板との接触面積を増すことができ、表面側への放冷熱効率をさらに高めることができる。ただし、この場合には基体に設ける溝の形状を配管の形状に倣って適宜設計する。
【0169】
配管13の寸法は、床暖房パネルの施工対象や流通させる熱媒の種類や温度によって変更できるものであるが、一般的には外径が6mm以上13mm以下程度、内径が4mm以上10mm以下程度で、肉厚が0.8mm以上2.0mm以下程度である。
【0170】
〈熱媒〉
配管13に通す熱媒(温熱媒体)としては、温水、水蒸気、加熱オイル、あるいはエチレングリコール系水溶液、プロピレングリコール系水溶液などの不凍液などが挙げられるが、好ましくは温水である。
一方、冷熱媒体としては通常冷水が用いられる。
【0171】
〈薄板〉
薄板14A,21,23は、配管13を固定すると共に、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有することが好ましく、本発明において複数層設ける薄板(第3の実施態様においては薄板14A、21,23)のうち少なくとも1層、好ましくは薄板14Aは熱拡散薄板として金属箔を用いることが好ましい。金属箔の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔、銅箔などが挙げられる。中でも、製造の難易、コストなどの観点からアルミニウム箔が好適である。金属箔の厚さは、薄すぎると強度が十分でなく、厚すぎると製品が重くなるばかりでなく、コストがかさむので、1枚当たりの薄板の厚さとして通常10μm以上2mm以下の範囲で選ぶのが好ましい。金属箔以外の薄板としては、材質については、樹脂フィルム、樹脂シート、炭素繊維シート、またはこれらを少なくとも2種類以上積層したもの等が挙げられ、その厚さは通常10μm〜2mmである。
【0172】
本発明においては、このような薄板を2層以上の複数層積層して用いる。薄板は2層以上であれば良く、その積層数には特に制限はないが、過度に積層数が多いと、施工の手間やコストも増す上に、床暖房パネルの厚みが厚く、また、配管と床表面との距離が離れることによって、伝熱効率が低下することとなる。従って、薄板の積層数は通常2〜5層であり、特に好ましくは2層であり、また、複数層積層された薄板の全体の厚さは、通常10μm以上、好ましくは40μm以上とし、一方、通常2mm以下、好ましくは200μm以下とする。
【0173】
なお、第1の実施形態と同様、上記複数積層された薄板のうち、少なくとも1層の薄板には、厚さ方向に貫通する複数の穴を設けても良い。このような薄板を有穴薄板と呼ぶ。薄板に穴を設ける目的は、付着材用材料の層に残存した空気を抜くことにより、気泡の残留による音鳴り、不陸、伝熱性能低下を防止することにある。
【0174】
穴の直径は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上とし、一方、通常100mm以下、好ましくは50mm以下とする。穴の直径が0.01mm未満であると、空気を十分に抜くことができない場合があり、100mmを超えると放熱効果が低下する傾向となる。
【0175】
なお、表装材層をはぎとって新たな表装材層に交換する場合に、剥離面を介して2層の薄板がとなり合うこととなる。これら薄板にも穴を設けることは当然可能であるが、この場合、穴の直径を以下のように制御することが好ましい。つまり、空気を効果的に抜きつつ、剥離される表装材層側の剥離面に最も近い薄板と残留する基体側の剥離面とが一体化して表装材層の更新を困難とすることを防ぐために、剥離された薄板のうち、剥離面に最も近い薄板の穴の直径は0.1〜2mmとするのが好ましい。また、薄板の面積に対する穴の合計面積の比率は、通常5〜50%、好ましくは10〜30%とするのが好ましい。この比率が低過ぎると十分に空気を抜くことができない場合があり、高過ぎると薄板の強度が損なわれる。
【0176】
穴の形状(平面視形状)は、特に制限はなく、例えば、多角形、円形等が挙げられるが、好ましくは施工性の面から円、楕円等の円形である。なお、円形以外の形状の場合、当該穴と同じ面積の円の直径が上記範囲となるようにすることが好ましい。
穴の配列は、ランダム、規則的な配列のどちらでも良いが、工業生産上は、規則的に設けた方が好ましい。
【0177】
薄板への穴の形成方法としては、プレス、又はローラーに所定の穴を形成できる針を設け、そのローラー上に薄板を通過させる方法等が挙げられる。穴をランダム配置で形成させる場合は、針の配置をランダム配置としておけばよい。
【0178】
穴の形成ピッチ(隣接する穴の中心間距離)は、基体に埋設された配管の間隔同士の距離以下になるようにすることが好ましく、通常5mm以上、好ましくは20mm以上とし、通常200mm以下、好ましくは70mm以下である。
【0179】
本発明において、薄板をすべて穴を形成した有穴薄板とすると互いに積層された薄板同士の穴の重なり方によっては、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有しなくなる可能性がある。従って、複数積層された薄板のうち、少なくとも1層も穴を有しない無穴薄板とし、この無穴薄板と有穴薄板とが交互に積層されることが好ましい。このようにすることにより、有穴薄板の穴から、無穴薄板と有穴薄板との間の付着用材料層の残留気泡を効率的に抜き出し、音鳴り、不陸、伝熱性能低下防止効果を得ることができる。なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、穴を設ける代わりに、付着用材料を散点状又は線状(ストライプ状)に設けることによっても、薄板同士の間の空気残留を防止することができる。この場合の付着用材料の設け方は、実施形態1と同様にすればよい。
【0180】
〈樹脂コーティング層〉
樹脂コーティング層18は、薄板14Aと薄板21Bとの剥離を容易として床暖房パネルの更新を容易なものとするために設けられるものである。
【0181】
樹脂コーティング層18を形成する樹脂の種類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6・6などのポリアミド系樹脂などが挙げられる。中でも、強度、層の作り易さ、コストなどの観点から、ポリエチレンテレフタレートが好適である。樹脂コーティング層18の厚さは、薄過ぎると樹脂コーティング層を設けたことによる剥離性の向上効果を十分に得ることができず、厚過ぎると薄板が厚い場合と同様、床暖房パネルの厚みの増加、コスト増加、伝熱効率の低下の問題が生じるため、通常3μm以上、好ましくは10μm以上とし、一方、通常300μm以下、好ましくは50μm以下とする。
【0182】
最下層薄板14Jは、加熱溶融させた樹脂を薄板に直接熱融着させる方法、又は必要に応じて接着材料を介して接着する方法、コーティングフィルムを接着剤を介して接着する方法等により薄板14Aにコーティング材を積層することにより製造することができる。
【0183】
〈表装材層〉
表装材層としては特に制限はない。例えば、第1の実施形態と同様とすればよい。具体的には、薄板側のクッション材層と、この上に積層された床表面材層とを備えるものが好ましい。ただし、クッション材層は必ずしも必要とされず、床表面材層のみでもよい。図5は、クッション材層を設けず、床表面材層のみで表装材層16を構成した側を示すが、更にクッション材層を設けても良い。
【0184】
クッション材層は、床表面材層上での優れた歩行感覚を得る等の面から、例えばポリウレタン発泡体、ポリオレフィン系発泡体等の発泡樹脂、又は不織布を含むものである。
【0185】
クッション材層の厚さは、その材質、床暖房パネルの施工対象によっても異なるが、床暖房パネルを過度に厚くすることなく、また、配管からの伝熱効率を損なうことなく、十分な歩行性等を得る上で、通常1mm以上、好ましくは2mm以上とし、一方、通常6mm以下、好ましくは5mm以下とする。
【0186】
床表面材層は、配管を埋設した基体を保護すると共に、床面外観の意匠性と耐久性を高めるためのものであり、通常は合板等の木製、発泡ゴム製で、好ましくは木製のものであり、その表面に通常は、天然木材板又は木目模様などの印刷模様を施したプラスチックフィルム、不織布、強化紙など、好ましくは天然木材板又は強化紙が貼着される。
【0187】
床表面材層の厚さは、薄すぎると強度が不足して破損しやすくなり、厚すぎると配管からの伝熱効率が低下すると共に床暖房パネルの厚さが厚くなるため、通常3mm以上15mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0188】
なお、このような床表面材層の上に更に樹脂塗装等を施しても良い。
【0189】
〈付着用材料〉
付着用材料も、第1の実施形態と同様とすればよい。以下具体例を説明する。
付着用材料19A,20,22,24としては、後述の接着力の相互関係を十分に満たすものであり、これと接する床暖房パネルの構成部材を侵食したりすることのないものであれば良く、各種の接着剤や粘着剤、両面テープを用いることができる。これらの付着用材料による各部材の接着は、全面接着であることが好ましいが、面積の3%以上を接着する部分接着であっても良い。部分接着の場合、接着部の形状は線状、散点状等のいずれであっても良いが、特に金属箔等の薄板を他の薄板や、基体、クッション材層等と接着する場合には、少なくともその全周縁は接着部とすることが好ましい。
【0190】
〈接着力〉
本発明のパネルでは、複数層積層された薄板のうち、重なり合う少なくとも2層の薄板(図5においては、最下層薄板14Jと薄板21)同士が剥離可能とされている。好ましくは、基体に接する薄板(最下層薄板)と基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(次層薄板)と該最下層薄板との接着力よりも大きくすることにより、表装材層を更新する際、床暖房パネルの上層である表装材層から順に剥していく際に、最下層薄板に隣接して積層される次層薄板と最下層薄板との間を容易に剥離させて、最下層薄板を基体側に残し、この最下層薄板の上に新たな薄板層を積層し、その上に表装材層を積層することにより、基体を破損することなく表装材層を更新する。
【0191】
この接着力の相関関係について、図5を参照して説明する。基体11,11Aに接する最下層薄板、即ち最下層薄板14Jと基体11,11Aとの接着力は、最下層薄板14Jに隣接して積層される次層薄板21と最下層薄板14Jとの接着力の110%以上とすることが好ましい。なお、ここで接着力の評価基準には特に制限はないが、例えばJIS Z 0237に規定される、180度引き剥がし粘着力試験(以下、「JIS Z 0237法」と称す。)により測定される。
【0192】
例えば、最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板21)との接着力を100%とした場合、基体と最下層薄板(基体11,11Aと最下層薄板14J)との接着力は110%以上とし、具体的には、JIS Z 0237法による接着力が次のような値となるようにすることが好ましい。
(a)基体と最下層薄板(基体11,11Aと最下層薄板14J)との接着力:通常3〜30N、好ましくは5〜20N
(b)最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板21)との接着力:通常1〜27N、好ましくは2〜18N
【0193】
なお、最上層薄板23と表装材層16との間の接着力は、通常日常生活の使用に耐え得るに必要な強度が得られる程度であれば良い。
【0194】
従って、上述の接着力の相互関係を満たすように各部材を付着用材料により接着することが好ましい。
【0195】
このような接着力の相互関係を満たすために、接着力を大きくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を多くしたものやウレタン系の接着剤を使用し、接着力を小さくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を少なくしたものを使用するなどして、接着力を調整することが好ましい。接着力はまた、接着面積により調整することもでき、この場合には接着力の大きい箇所を全面接着とし、接着力の小さい箇所を部分接着とすれば良い。なお、部分接着の場合の接着力とは、接着部の単位面積当たりの接着力Sと全面積M、接着部面積Msとから、S×Ms÷Mで求めることができる。
【0196】
ただし、本発明は、表装材層が、クッション材層と床表面材層とで構成され、かつ基体と最下層薄板との間、及び、最下層薄板とそれに次層薄板との間が、それぞれ全面接着されている床暖房パネルにおいて、複数の薄板を設けることによる本発明の効果を有効に発揮することができ、好ましい。
【0197】
[4]第4の実施形態
図6(a)は、1枚の薄板52の片側に粘着剤層51を設けた結合体50を図5の付着用材料20,22と、薄板21,23との積層物の代替として用いたパネルの断面図、図6(b)は図6(a)のB部分の拡大図、図6(c)は結合体50の層構成を示す断面図、図7は図6における予備結合体50’の構成を示す断面図、図8,9は図6の表装材層を更新する施工説明断面図である。図12は表装材層の固定構造を示す断面図である。
【0198】
図6(b)の通り、複数枚の基体(温調用基体)11と基体(平板基体)11Aとを並列配置した基体並列体の上に付着用材料19Aを介して最下層薄板14Jが積層されている。図5と同じく、この最下層薄板14Jは、薄板14Aと樹脂コーティング層18とからなる。
【0199】
この結合体50の薄板52は、図5の薄板21,23と同じく基体(平板基体)11Aとより若干大きい幅員を有している。薄板52には、基体(平板基体)11Aの幅方向中央付近に表示54が設けられている。この表示54は図5における前記表示32と同様のものである。つまり、結合体50の薄板52が上位薄板となる。そして、薄板14Aが、上位薄板よりも下側の薄板(下位薄板)となる。
【0200】
この結合体50の粘着剤層51,53を介して表装材層16が最下層薄板14Jに付着している。結合体50のうち下側の粘着剤層51が上側の粘着剤層53及び付着用材料19Aよりも付着力が弱いものとなっている。付着力の具体的な決め方については後述する。
【0201】
この実施の形態では、結合体50(上位薄板:薄板52)に隣接して、薄板14A(下位薄板)と、表装材層16との間に、シート状の予備結合体50’が配置されている。そして、予備結合体50’は、将来の表装材層16の更新時に表装材層16を下位薄板に付着するために使用される。
【0202】
この予備結合体50’は、図7(a)に示す如く、結合体50と略等幅の薄板(薄板状本体部)52と、薄板52上に設けられた粘着剤層51,53と、粘着剤層51,53を隠蔽する離型紙55,56が一体化したものである。この離型紙55,56の厚みは2〜100μm程度であることが好ましい。なお、図7(a)では、薄板52上の両面に粘着剤層51,53と粘着剤層51,53を隠蔽する離型紙55,56が一体化しているが、コスト、施工性の面から粘着剤層53、離型紙55は設けなくてもよい。
【0203】
予備結合体50’は、その一側縁部50aが残部に折り重なるように二つ折りされ、二つ折りの折り線50bが結合体50の側方に結合体50に沿って配置されている。この実施の形態では、該一側縁部50aの粘着剤層51が離型紙で覆われずに露呈しており、この露呈した部分の粘着剤層51が、下位薄板(薄板14A)側の最下層薄板14Jに付着している。つまり、予備結合体50’の離型紙で覆われていない粘着剤層と、離型紙で覆われている粘着剤層との境界を折り線とし、離型紙が、表装材層側に位置するように、折り線に沿って、予備結合体が折り返され、折り線が上位薄板に沿って延在している。
【0204】
この図6(b)における表装材層16の取り付け状態の一例を詳細に示したものが図12である。表装材層16は、平板基体11Aの上側に端縁が位置しており、この端縁に実部16aが突設され、該実部16aが釘70等により平板基体11Aに留め付けられている。表装材層16の更新に際しては、釘70等を引き抜いてから新しい表装材層16を配置し、再度釘打ち等を行う。表装材層16の配置に際しては、表示54を目印として利用する。
【0205】
表装材層16を更新するに際しては、まず表装材層16を引き剥がす。この際、粘着力の低い粘着剤層51が剥離し、図8の通り、結合体50が表装材層16に付着したまま最下層薄板14Jから剥ぎ取られる。図7(a)に示す如く、結合体50’は表装材層16との間に離型紙56が介在するので、表装材層16には付着せず、薄板14Jに付着したまま残留する。
【0206】
次に、予備結合体50’から離型紙56を剥ぎ取ると共に図9(a),(b)のように予備結合体50’を折り線50bを回動中心として180°反転させ、予備結合体50’を最下層薄板14Jに重ねる。このとき、予備結合体50’は平板基体11Aの上側に来る。そこで、予備結合体50’の離型紙55を剥ぎ取り、図7(b)、図9(c)のように新たな表装材層16’を重ねて取り付ける。なお、図7(a)において、予備結合体50’に、粘着剤層53、離型紙55を設けていない場合は、表示54と略等しい幅に接着剤を塗り、必要に応じて接着剤と釘を並用して新たな表装材層16’を重ねて取り付ける。
【0207】
この図6〜9の態様によると、表装材層16の更新に際し、既設表装材層16の下側に配置されていた予備結合体50’を180°反転させて結合体として利用する。従って、新たな結合体50を準備しておくことが不要であり、また、新たな結合体を正確に位置決めして貼着する作業も不要である。
【0208】
図6〜9では、結合体50に隣接して1個の予備結合体50’を配置しているので、表装材層16を1回だけ更新する場合に好適である。
【0209】
図10(a)は表装材層を2回まで、新たな結合体50なしに更新できるように、結合体50(上位薄板:薄板52)の両側に予備結合体50’,50”を配置したパネルの断面図、図10(b)は図10(a)のB部分の拡大図、第11図は予備結合体50”の利用方法を示す断面図である。
【0210】
この予備結合体50”は、上記予備結合体50’と全く同一構成のものであり、図10(b)の通り、結合体50を挟んで左右対称に配置されている。
【0211】
第1回目の表装材層更新に際しては、図6〜9と全く同様にして一方の予備結合体50’を用いる。図11(a)は第1回目の表装材層更新後の断面図であり、予備結合体50’を介して表装材層16が最下層薄板14Jに付着している。
【0212】
第2回目の表装材層更新に際しては、図11(a)の状態で表装材層16’を引き剥がす。そうすると、第1の予備結合体50’は表装材層16’に付着したまま撤去され、第2の予備結合体50”のみが残留する。そこで、予備結合体50”から離型紙56を剥がし取り、予備結合体50”を図11(b)の通り、二つ折り線を回動中心として180°反転させ、基体11Aの上方に配置する。ここで、離型紙55をはがして、その後、新たな表装材層(図示せず)を付着材料の粘着剤層53を用いて固着すると、前記図7(b)、図9(c)と同様の更新後の構成となる。
【0213】
以下に図6〜12のパネルを構成する各部材の詳細について説明する。
【0214】
〈基体〉
基体11,11Aの材質は特に限定されないが、通常、断熱性に富んだ発泡合成樹脂製のものが好ましく、発泡合成樹脂製の板状体、具体的には、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられる。中でも、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。基体11,11Aを構成するこれらの板状体の厚さは、通常9〜50mmの範囲内で選ぶのが好ましい。
【0215】
特に、表装材層16の固定領域を形成するための平板基体11Aとしては、表装材層16を含む上載荷重を支持するために十分な強度を有するものが好ましく、例えば、スギ、サクラ、ヒノキ、ラワン及び合板などの木材や、樹脂成形体で構成され、その寸法としては、長さは、通常300〜4000mm程度、厚さは、通常9〜50mm程度、幅は、通常20〜100mm程度とされる。
【0216】
図6〜12において、平板基体11Aと温調用基体11との配置ピッチには特に制限はないが、温調用ピッチ11の幅に対して平板基体11Aの幅が大き過ぎると、パネル全体としての温調効率が悪く、逆に温調用基体11の幅に対して平板基体11Aの幅が小さ過ぎると、表装材層16の固定領域を十分に確保し得ない。従って、温調用基体11と平板基体11Aとの合計の幅に対して、平板基体11Aの幅の割合が0.1〜0.2程度となるようにすることが好ましい。
【0217】
〈溝〉
基体(温調用基体)11の一方の板面には、配管13を配設するための溝12が基体11の側辺に沿って、複数本刻設されている。
【0218】
溝12の開口部の幅は、配管13の外径と同じ寸法、又はこれより僅かに大きくするのが好ましい。溝12は、その延在方向に直交する断面形状がU字形状又はコ字形状となるように形成されるが、特に、配管13から床面への伝熱性、配管13を溝12に埋設する際の施工性の面から、断面U字形とすることが好ましい。
【0219】
溝12の深さは、配管13の外径とほぼ同じ寸法とするのが好ましい。溝12の深さが配管13の外径より大きいと、配管を埋設した際に、配管13の上側に隙間ができ、熱媒の熱を効果的に床面側に伝熱することができず、伝熱効率が低下しやすくなる。
【0220】
〈配管〉
配管13には、通常可撓性チューブが使用され、具体的には架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などの樹脂管、銅管、鋼管などの金属管のいずれを用いても良い。このうち、金属管は樹脂管に比べて高熱伝導率であるものの重量が重く、加工性、発錆等の問題があり、また、コストも高くなるため、放冷熱パネルの用途に応じて適宜使用される。
【0221】
配管の断面(長さ方向に直交する方向の断面)形状には特に制限はなく、一般的には図6〜12に示すような円形とされるが、長円形状ないし楕円形状とすることにより、配管と薄板との接触面積を増すことができ、表面側への放冷熱効率をさらに高めることができる。ただし、この場合には基体に設ける溝の形状を配管の形状に倣って適宜設計する。
【0222】
配管13の寸法は、床暖房パネルの施工対象や流通させる熱媒の種類や温度によって変更できるものであるが、一般的には外径が6mm以上13mm以下程度、内径が4mm以上10mm以下程度で、肉厚が0.8mm以上2.0mm以下程度である。
【0223】
〈熱媒〉
配管13に通す熱媒(温熱媒体)としては、温水、水蒸気、加熱オイル、あるいはエチレングリコール系水溶液、プロピレングリコール系水溶液などの不凍液などが挙げられるが、好ましくは温水である。
一方、冷熱媒体としては通常冷水が用いられる。
【0224】
〈薄板〉
薄板14A,52は、配管13を固定すると共に、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有することが好ましく、本発明において複数層設ける薄板(第4の実施態様においては薄板14A、52)のうち少なくとも1層、好ましくは薄板14Aは熱拡散薄板として金属箔を用いることが好ましい。金属箔の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔、銅箔などが挙げられる。中でも、製造の難易、コストなどの観点からアルミニウム箔が好適である。金属箔の厚さは、薄すぎると強度が十分でなく、厚すぎると製品が重くなるばかりでなく、コストがかさむので、1枚当たりの薄板の厚さとして通常10μm以上2mm以下の範囲で選ぶのが好ましい。金属箔以外の薄板としては、材質については、樹脂フィルム、樹脂シート、炭素繊維シート、またはこれらを少なくとも2種類以上積層したもの等が挙げられ、その厚さは通常10μm〜2mmである。
【0225】
本発明においては、このような薄板を2層以上の複数層積層して用いる。薄板は2層以上であれば良く、その積層数には特に制限はないが、過度に積層数が多いと、施工の手間やコストも増す上に、床暖房パネルの厚みが厚く、また、配管と床表面との距離が離れることによって、伝熱効率が低下することとなる。従って、薄板の積層数は通常2〜5層であり、特に好ましくは2層であり、また、複数層積層された薄板の全体の厚さは、通常10μm以上、好ましくは40μm以上とし、一方、通常2mm以下、好ましくは200μm以下とする。
【0226】
なお、第1の実施形態と同様、上記複数積層された薄板のうち、少なくとも1層の薄板には、厚さ方向に貫通する複数の穴を設けても良い。このような薄板を有穴薄板と呼ぶ。薄板に穴を設ける目的は、付着材用材料の層に残存した空気を抜くことにより、気泡の残留による音鳴り、不陸、伝熱性能低下を防止することにある。
【0227】
穴の直径は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上とし、一方、通常100mm以下、好ましくは50mm以下とする。穴の直径が0.01mm未満であると、空気を十分に抜くことができない場合があり、100mmを超えると放熱効果が低下する傾向となる。
【0228】
なお、表装材層をはぎとって新たな表装材層に交換する場合に、剥離面を介して2層の薄板がとなり合うこととなる。これら薄板にも穴を設けることは当然可能であるが、この場合、穴の直径を以下のように制御することが好ましい。つまり、空気を効果的に抜きつつ、剥離される表装材層側の剥離面に最も近い薄板と残留する基体側の剥離面とが一体化して表装材層の更新を困難とすることを防ぐために、剥離された薄板のうち、剥離面に最も近い薄板の穴の直径は0.1〜2mmとするのが好ましい。また、薄板の面積に対する穴の合計面積の比率は、通常5〜50%、好ましくは10〜30%とするのが好ましい。この比率が低過ぎると十分に空気を抜くことができない場合があり、高過ぎると薄板の強度が損なわれる。
【0229】
穴の形状(平面視形状)は、特に制限はなく、例えば、多角形、円形等が挙げられるが、好ましくは施工性の面から円、楕円等の円形である。なお、円形以外の形状の場合、当該穴と同じ面積の円の直径が上記範囲となるようにすることが好ましい。
穴の配列は、ランダム、規則的な配列のどちらでも良いが、工業生産上は、規則的に設けた方が好ましい。
【0230】
薄板への穴の形成方法としては、プレス、又はローラーに所定の穴を形成できる針を設け、そのローラー上に薄板を通過させる方法等が挙げられる。穴をランダム配置で形成させる場合は、針の配置をランダム配置としておけばよい。
【0231】
穴の形成ピッチ(隣接する穴の中心間距離)は、基体に埋設された配管の間隔同士の距離以下になるようにすることが好ましく、通常5mm以上、好ましくは20mm以上とし、通常20mm以下、好ましくは70mm以下である。
【0232】
本発明において、薄板をすべて穴を形成した有穴薄板とすると互いに積層された薄板同士の穴の重なり方によっては、配管13の熱を表装材層16へ均熱化させて伝熱する機能を有しなくなる可能性がある。従って、複数積層された薄板のうち、少なくとも1層も穴を有しない無穴薄板とし、この無穴薄板と有穴薄板とが交互に積層されることが好ましい。このようにすることにより、有穴薄板の穴から、無穴薄板と有穴薄板との間の付着用材料層の残留気泡を効率的に抜き出し、音鳴り、不陸、伝熱性能低下防止効果を得ることができる。例えば、図6〜9のパネルにおいては、薄板52を有穴薄板とすることが好ましい。
なお、穴を設ける代わりに、付着用材料を散点状又は線状に設けてもよい。
【0233】
〈樹脂コーティング層〉
樹脂コーティング層18は、薄板14Aと薄板52との剥離を容易として床暖房パネルの更新を容易なものとするために設けられるものである。
【0234】
樹脂コーティング層18を形成する樹脂の種類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6・6などのポリアミド系樹脂などが挙げられる。中でも、強度、層の作り易さ、コストなどの観点から、ポリエチレンテレフタレートが好適である。樹脂コーティング層18の厚さは、薄過ぎると樹脂コーティング層を設けたことによる剥離性の向上効果を十分に得ることができず、厚過ぎると薄板が厚い場合と同様、床暖房パネルの厚みの増加、コスト増加、伝熱効率の低下の問題が生じるため、3μm以上300μm以下、特に10μm以上50μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0235】
最下層薄板14Jは、加熱溶融させた樹脂を薄板に直接熱融着させる方法、又は必要に応じて接着材料を介して接着する方法、コーティングフィルムを接着剤を介して接着する方法等により薄板14Aにコーティング材を積層することにより製造することができる。
【0236】
〈表装材層〉
表装材層としては特に制限はない。例えば、第1の実施形態と同様とすればよい。具体的には、薄板側のクッション材層と、この上に積層された床表面材層とを備えるものが好ましい。ただし、クッション材層は必ずしも必要とされず、床表面材層のみでもよい。図6〜12は、クッション材層を設けず、床表面材層のみで表装材層16を構成した側を示すが、更にクッション材層を設けても良い。
【0237】
クッション材層は、床表面材層上での優れた歩行感覚を得る等の面から、例えばポリウレタン発泡体、ポリオレフィン系発泡体等の発泡樹脂、又は不織布を含むものである。
【0238】
クッション材層の厚さは、その材質、床暖房パネルの施工対象によっても異なるが、床暖房パネルを過度に厚くすることなく、また、配管からの伝熱効率を損なうことなく、十分な歩行性等を得る上で、通常1mm以上、好ましくは2mm以上とし、一方、通常6mm以下、好ましくは5mm以下とする。
【0239】
床表面材層は、配管を埋設した基体を保護すると共に、床面外観の意匠性と耐久性を高めるためのものであり、通常は合板等の木製、発泡ゴム製で、好ましくは木製のものであり、その表面に通常は、天然木材板又は木目模様などの印刷模様を施したプラスチックフィルム、不織布、強化紙など、好ましくは天然木材板又は強化紙が貼着される。
【0240】
床表面材層の厚さは、薄すぎると強度が不足して破損しやすくなり、厚すぎると配管からの伝熱効率が低下すると共に床暖房パネルの厚さが厚くなるため、通常3mm以上15mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0241】
なお、このような床表面材層の上に更に樹脂塗装等を施しても良い。
【0242】
〈付着用材料〉
付着用材料も、第1の実施形態と同様とすればよい。以下具体例を説明する。
付着用材料19A,粘着剤層51,53の付着用材料としては、後述の接着力の相互関係を十分に満たすものであり、これと接する床暖房パネルの構成部材を侵食したりすることのないものであれば良く、各種の接着剤や粘着剤、両面テープを用いることができる。これらの付着用材料による各部材の接着は、全面接着であることが好ましいが、面積の3%以上を接着する部分接着であっても良い。部分接着の場合、接着部の形状は線状、散点状等のいずれであっても良いが、特に金属箔等の薄板を他の薄板や、基体、クッション材層等と接着する場合には、少なくともその全周縁は接着部とすることが好ましい。
【0243】
〈接着力〉
本発明のパネルでは、複数層積層された薄板のうち、重なり合う少なくとも2層の薄板(図6〜12においては、最下層薄板14Jと薄板52)同士が剥離可能とされている。好ましくは、基体に接する薄板(最下層薄板)と基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(次層薄板)と該最下層薄板との接着力よりも大きくすることにより、表装材層を更新する際、床暖房パネルの上層である表装材層から順に剥していく際に、最下層薄板に隣接して積層される次層薄板と最下層薄板との間を容易に剥離させて、最下層薄板を基体側に残し、この最下層薄板の上に新たな薄板層を積層し、その上に表装材層を積層することにより、基体を破損することなく表装材層を更新する。
【0244】
この接着力の相関関係について、図6〜12を参照して説明する。基体11,11Aに接する最下層薄板、即ち最下層薄板14Jと基体11,11Aとの接着力は、最下層薄板14Jに隣接して積層される次層薄板52と最下層薄板14Jとの接着力の110%以上とすることが好ましい。なお、ここで接着力の評価基準には特に制限はないが、例えばJIS Z 0237に規定される、180度引き剥がし粘着力試験(以下、「JIS Z 0237法」と称す。)により測定される。
【0245】
例えば、最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板52)との接着力を100%とした場合、基体と最下層薄板(基体11,11Aと最下層薄板14J)との接着力は110%以上とし、具体的には、JIS Z 0237法による接着力が次のような値となるようにすることが好ましい。
(a)基体と最下層薄板(基体11,11Aと最下層薄板14J)との接着力:通常3〜30N、好ましくは5〜20N
(b)最下層薄板(最下層薄板14J)とその上に積層された次層薄板(薄板52)との接着力:通常1〜27N、好ましくは2〜18N
【0246】
なお、最上層薄板ともなる薄板52と表装材層16との間の接着力は、通常日常生活の使用に耐え得るに必要な強度が得られる程度であれば良い。
【0247】
従って、上述の接着力の相互関係を満たすように各部材を付着用材料により接着することが好ましい。
【0248】
このような接着力の相互関係を満たすために、接着力を大きくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を多くしたものやウレタン系の接着剤を使用し、接着力を小さくする箇所には例えばアクリル系の粘着剤で塗布量を少なくしたものを使用するなどして、接着力を調整することが好ましい。接着力はまた、接着面積により調整することもでき、この場合には接着力の大きい箇所を全面接着とし、接着力の小さい箇所を部分接着とすれば良い。なお、部分接着の場合の接着力とは、接着部の単位面積当たりの接着力Sと全面積M、接着部面積Msとから、S×Ms÷Mで求めることができる。
【0249】
ただし、本発明は、表装材層が、クッション材層と床表面材層とで構成され、かつ基体と最下層薄板との間、及び、最下層薄板とそれに次層薄板との間が、それぞれ全面接着されている床暖房パネルにおいて、複数の薄板を設けることによる本発明の効果を有効に発揮することができ、好ましい。
【0250】
[5]パネルの施工構造
本発明のパネルは、床、壁又は天井に施工されることが好ましい。
本発明のパネルは、前述の温調用基体11と平板基体11Aとを組み合わせて様々な施工構造を構成することができる。具体的には、パネルを、中央領域に位置するパネルと、外周囲に位置するパネルとから構成し、中央領域に位置するパネルの基体の少なくとも一部が、温調用基体であり、外周囲に位置するパネルの基体は平板基体とすることが好ましい。このような具体例について以下説明する。
【0251】
例えば、図13(a)に示す如く、温調用基体11と平板基体11Aとを交互に並列配置して室の中央領域を形成し、その外周領域に平板基体11Aを配置した構成とすることができる。
また、図13(b)に示す如く、温調用基体11のみで室の中央領域を形成し、その外周領域に平板基体11Bを配置した構成とすることもできる。
【0252】
図13(b)に示す形態においては、平板基体11Bの材質は、通常、平板基体11Aの材質と同質のものが好ましく、長さは通常500〜1000mm程度、厚さは通常9〜50mm程度、幅は通常1500〜2500mm程度とされる。室の隅部においては、平板基体11Bを隅部の面積に応じて、切断加工して使用する。
【0253】
いずれの場合も、基体の厚さを揃えて、その上に薄板と表装材層を配置することにより、段差のない面一の施工面を形成することができる。
【実施例】
【0254】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0255】
実施例1(第1の実施形態の実施例)
図1に示す床暖房パネルを形成した。床暖房パネルの構成部材として用いたものは次の通りである。
基体11:下記の溝12を形成した厚さ12mmのポリスチレン発泡体製板状体
溝形状:断面U字形
溝開口幅:8mm
溝深さ:7.2mm
配管13:外径7.2mm、内径5mmの架橋ポリエチレン管
最下層薄板14J:厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートのコーティング
層を熱融着することにより、厚さ40μmのアルミニウム箔
に形成したもの
薄板14B:厚さ40μmのアルミニウム箔
クッション材層16A:厚さ4mmのポリエステル系の不織布
床表面材層16B:厚さ9mmの合板フローリング
【0256】
また、各部材間の接着に用いた付着用材料及びそのJIS Z 0237法により測定した接着力は次の通りである。
付着用材料19A:基体11と最下層薄板14Jとの間はアクリル系粘着材によ
り全面接着した。接着力:15N
付着用材料19B:最下層薄板14Jと薄板14Bとの間はアクリル系粘着材に
より全面接着した。接着力:10N
付着用材料19C:薄板14Bとクッション材層16Aとの間はウレタン系接着材に
より全面接着した。接着力:4N(但し、クッション層材の材破
による強度)、実接着力:50N以上
付着用材料19D:クッション材層16Aと床表面材層16Bとの間はウレタン系接
着材により全面接着した。接着力:4N(但し、クッション層材
の材破による強度)、実接着力:50N以上
(上記付着用材料19C,19Dの接着力4Nとは、JIS Z 0237法により実際に測定したウレタン系接着剤の接着力であり、この場合、クッション材層が材破する。実接着力50N以上とは、JIS Z 0237法により測定し、クッション材層が材破しない場合を想定した予想値である。)
【0257】
なお、この床暖房パネルは、床躯体面に対してウレタン系接着剤により150mmピッチで、幅30mmの帯接着とした。
【0258】
この床暖房パネルについて、表装材層を更新すべく、前述の(1)〜(4)の手順で更新作業を行ったところ、薄板14Bと最下層薄板14Jとの間で上層部をきれいに剥がし取ることができ、また、その後は良好な作業性のもとに、薄板、クッション材層、床表面材層を順次施工することができた。
【0259】
比較例1
実施例1において、薄板14Bを設けず、クッション材層16を最下層薄板14Jに直接接着したこと以外は同様にして床暖房パネルを形成した。なお、クッション材層16と最下層薄板14Jとの接着はウレタン系接着剤により行い、その接着力は50Nであった。
【0260】
その結果、更新時に表装材層を剥がす際に、パネル基体と樹脂コート薄板との間で剥がれ、更にこの樹脂コート薄板に接着している基体の発泡樹脂の一部も樹脂コート薄板と共に剥ぎ取られ、更に配管も飛び出し、破損してしまった。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1a】本発明のパネルの実施の形態を示す断面図である。
【図1b】図1aの拡大図である。
【図1c】パネルの施工手順図である。
【図1d】表装材層の剥ぎ取り手順図である。
【図1e】別の実施の形態に係るパネルの断面図である。
【図2】本発明のパネル表装材層の更新方法の実施の形態を示す断面図である。
【図3】従来の床暖房パネルを示す断面図である。
【図4】(a)図は本発明のパネルの他の実施の形態を示す断面図であり、(b)図は(a)図の拡大図である。
【図5】別の実施の形態を示す断面図である。
【図6】さらに別の実施の形態を示す断面図である。
【図7】図6の実施の形態における予備結合体50’の構成を示す断面図である。
【図8】図6の実施の形態における表装材層更新方法を示す断面図である。
【図9】図6の実施の形態における表装材層更新方法を示す断面図である。
【図10】異なる実施の形態を示す断面図である。
【図11】図10の実施の形態における表装材層更新方法を示す断面図である。
【図12】表装材層の固定構造を示す断面図である。
【図13】基体の配列状況を示す室の平面図である。
【符号の説明】
【0262】
11 温調用基体
11A,11B 平板基体
12 溝
13 配管
14,14A,14B,14B’ 薄板
14J 樹脂コート薄板
16 表装材層
16A,16A’ クッション材層
16B,16B’ 床表面材層
18 樹脂コーティング層
19A,19B,19B’,19C,19C’,19D,19D’ 付着用材料
50 結合体
50’,50” 予備結合体
80 非接着部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基体と、該基体の一方の板面に積層された薄板と、該薄板の前記基体とは反対側の面に積層された表装材層とを有するパネルにおいて、
該薄板が複数層積層され、且つ重なり合う少なくとも2層の薄板同士が剥離可能とされていることを特徴とするパネル。
【請求項2】
請求項1において、前記基体の前記一方の板面に配管収容用の溝が設けられており、該溝内に熱媒流通用の配管が配設されており、前記薄板のうちの少なくとも一つが熱拡散薄板であることを特徴とするパネル。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記剥離可能とされている2層の薄板同士において、これらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記基体に接する薄板(以下、「最下層薄板」という。)と該基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(以下、「次層薄板」という。)と該最下層薄板との接着力よりも大きいことを特徴とするパネル。
【請求項5】
請求項4において、該最下層薄板と次層薄板との間のうちこれらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項6】
請求項5において、該薄板は方形であり、少なくとも1個のコーナー部に前記非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項7】
請求項5において、薄板の4辺の周縁部に前記非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項において、該最下層薄板と次層薄板との間に接着用材料が存在しないことにより前記非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項9】
請求項5ないし7のいずれか1項において、該最下層薄板と次層薄板との間に接着用材料が存在するが、該接着用材料と一方の薄板との間に、該接着用材料と低親和性の低親和性層が介在することにより前記非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、
(i)前記基体と最下層薄板、
(ii)前記薄板同士、
(iii)前記表装材層に接する薄板(以下、「最上層薄板」という。)と表装材層
が、それぞれ、付着用材料により付着されていることを特徴とするパネル。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項において、前記表装材層が、該薄板に近い側のクッション材層と、該クッション材層よりも該薄板から遠い側の床表面材層とを有することを特徴とするパネル。
【請求項12】
請求項11において、前記表装材層が、前記クッション材層と前記床表面材層とからなり、
該クッション材層と該床表面材層とが、付着用材料により付着されていることを特徴とするパネル。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項において、前記最下層薄板が、金属薄板と、少なくとも該金属薄板の前記基体と反対側の面に施された樹脂コーティング層とを有することを特徴とするパネル。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項において、複数層積層された前記薄板のうち少なくとも1層は、複数の穴が設けられた有穴薄板であることを特徴とするパネル。
【請求項15】
請求項14において、複数層積層された前記薄板のうち、少なくとも1層は穴を有しない無穴薄板であり、
該無穴薄板と前記有穴薄板とが交互に積層されていることを特徴とするパネル。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項において、前記基体が、複数並列配置されて基体並列体を構成しており、
該基体並列体の上に、複数層積層された前記薄板のうちの少なくとも1層が、各基体並列体上を横断するように積層されていることを特徴とするパネル。
【請求項17】
請求項16において、前記基体のうち一部のものは、前記一方の板面に溝が設けられ、該溝内に熱媒流通用配管が配設された温調用基体であり、
前記基体のうち他のものは、該溝及び熱媒流通用配管を具備しない平板基体であり、
該温調用基体と該平板基体とが交互に配列されていることを特徴とするパネル。
【請求項18】
請求項17において、前記剥離可能とされている2層の薄板のうち、基体側の薄板の上面に、前記平板基体の位置を示す表示が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項19】
請求項18において、前記表示は、前記平板基体の幅方向中央付近であって且つ該平板基体の幅の20〜80%の範囲に設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項20】
請求項17ないし19のいずれか1項において、前記薄板のうちの少なくとも1層は熱拡散薄板であり、該熱拡散薄板は温調用基体から平板基体にかけて連続して設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項21】
請求項1ないし20のいずれか1項において、複数層積層された前記薄板同士は付着用材料を介して接着されており、
少なくとも一部の薄板同士を接着する付着用材料は散点状又は線状に設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項22】
請求項17ないし20のいずれか1項において、少なくとも前記最上層薄板を含む前記表装材層側の薄板(以下、「上位薄板」という。)は、前記平板基体と略等幅又はそれよりも若干大きい幅を有しており、該平板基体の上方に配置されていることを特徴とするパネル。
【請求項23】
請求項22において、前記上位薄板の側方に隣接して、該上位薄板よりも下側の薄板(以下、「下位薄板」という。)と、前記表装材層との間に、将来の表装材層の更新時に該表装材層を該下位薄板に付着させるために使用される、シート状の予備結合体が配置されていることを特徴とするパネル。
【請求項24】
請求項23において、前記予備結合体は、前記上位薄板と略等幅の薄板状本体部と、該薄板状本体部上の少なくとも一方の面上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層を隠蔽する離型紙が一体化されたものであることを特徴とするパネル。
【請求項25】
請求項24において、前記予備結合体の粘着剤層の一部は前記離型紙で覆われておらず、
この離型紙で覆われていない粘着剤層を介して前記予備結合体が部分的に前記下位薄板側に付着していることを特徴とするパネル。
【請求項26】
請求項25において、前記予備結合体の前記離型紙で覆われていない粘着剤層と、前記離型紙で覆われている粘着剤層との境界を折り線とし、前記離型紙が、前記表装材層側に位置するように該折り線に沿って、前記予備結合体が折り返され、折り線が前記上位薄板に沿って延在していることを特徴とするパネル。
【請求項27】
請求項25において、前記上位薄板の両側方にそれぞれ前記予備結合体が配置されていることを特徴とするパネル。
【請求項28】
請求項1ないし27のいずれか1項において、前記薄板が、複数の部分薄板から構成されていることを特徴とするパネル。
【請求項29】
請求項1ないし28のいずれか1項に記載のパネルの表装材層を新たな表装材層に交換するパネル表装材層の更新方法であって、
隣接するいずれかの前記薄板同士の間を剥がすことによって、前記表装材層と、少なくとも最上層の薄板を取り除いた後、残留する薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項30】
請求項29において、該パネルは請求項4に記載のパネルであり、前記表装材層を更新するにあたり、最下層薄板と次層薄板との間を剥がすことによって、前記表装材層と、該最下層薄板以外の薄板とを取り除いた後、残留する該最下層薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項31】
請求項29において、前記パネルは請求項3,5ないし9のいずれか1項に記載のパネルであり、
該非接着部が存在する薄板同士の間から、該非接着部よりも上側の薄板と表装材層とを取り除くことを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項32】
請求項29ないし31のいずれか1項において、残留する薄板の上に、少なくとも1層の新たな薄板を積層し、その上に前記表装材層を積層することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項33】
請求項29において、前記パネルは請求項22に記載のパネルであり、前記表装材層を更新するにあたり、前記表装材層と、前記上位薄板のうち、少なくとも1層とを取り除いた後、取り除いた該上位薄板に対応する新たな上位薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項34】
請求項33において、前記パネルは請求項23に記載のパネルであり、前記上位薄板と前記下位薄板との間を剥がすことによって前記表装材層を更新するに際し、新たな上位薄板を前記予備結合体を用いて構成することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項35】
請求項34において、前記パネルは請求項24又は25に記載のパネルであり、新たな上位薄板を前記予備結合体を用いて構成するに際し、該予備結合体から離型紙を剥がして露呈させた粘着剤層を下位薄板に付着させて上位薄板とすることを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項36】
請求項35において、前記パネルは請求項26又は27に記載のパネルであり、前記予備結合体から離型紙を剥がして露呈させた粘着剤層部分を前記折り線部分に沿って反転させて前記下位薄板に対し付着させることを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項37】
請求項1ないし27のいずれか1項に記載のパネルを床、壁又は天井に施工したことを特徴とするパネル施工構造。
【請求項38】
請求項37において、前記パネルを、中央領域に位置するパネルと、外周囲に位置するパネルとから構成し、該中央領域に位置するパネルの基体の少なくとも一部が、前記一方の板面に溝が設けられた温調用基体であり、該外周囲に位置するパネルの基体は、前記一方の板面に溝が設けられていない平板基体であることを特徴とするパネルの施工構造。
【請求項1】
板状の基体と、該基体の一方の板面に積層された薄板と、該薄板の前記基体とは反対側の面に積層された表装材層とを有するパネルにおいて、
該薄板が複数層積層され、且つ重なり合う少なくとも2層の薄板同士が剥離可能とされていることを特徴とするパネル。
【請求項2】
請求項1において、前記基体の前記一方の板面に配管収容用の溝が設けられており、該溝内に熱媒流通用の配管が配設されており、前記薄板のうちの少なくとも一つが熱拡散薄板であることを特徴とするパネル。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記剥離可能とされている2層の薄板同士において、これらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記基体に接する薄板(以下、「最下層薄板」という。)と該基体との接着力が、最下層薄板に隣接して積層される薄板(以下、「次層薄板」という。)と該最下層薄板との接着力よりも大きいことを特徴とするパネル。
【請求項5】
請求項4において、該最下層薄板と次層薄板との間のうちこれらの薄板の周縁の少なくとも一部に、これら薄板同士が接着されていない非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項6】
請求項5において、該薄板は方形であり、少なくとも1個のコーナー部に前記非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項7】
請求項5において、薄板の4辺の周縁部に前記非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項において、該最下層薄板と次層薄板との間に接着用材料が存在しないことにより前記非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項9】
請求項5ないし7のいずれか1項において、該最下層薄板と次層薄板との間に接着用材料が存在するが、該接着用材料と一方の薄板との間に、該接着用材料と低親和性の低親和性層が介在することにより前記非接着部が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、
(i)前記基体と最下層薄板、
(ii)前記薄板同士、
(iii)前記表装材層に接する薄板(以下、「最上層薄板」という。)と表装材層
が、それぞれ、付着用材料により付着されていることを特徴とするパネル。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項において、前記表装材層が、該薄板に近い側のクッション材層と、該クッション材層よりも該薄板から遠い側の床表面材層とを有することを特徴とするパネル。
【請求項12】
請求項11において、前記表装材層が、前記クッション材層と前記床表面材層とからなり、
該クッション材層と該床表面材層とが、付着用材料により付着されていることを特徴とするパネル。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項において、前記最下層薄板が、金属薄板と、少なくとも該金属薄板の前記基体と反対側の面に施された樹脂コーティング層とを有することを特徴とするパネル。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項において、複数層積層された前記薄板のうち少なくとも1層は、複数の穴が設けられた有穴薄板であることを特徴とするパネル。
【請求項15】
請求項14において、複数層積層された前記薄板のうち、少なくとも1層は穴を有しない無穴薄板であり、
該無穴薄板と前記有穴薄板とが交互に積層されていることを特徴とするパネル。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項において、前記基体が、複数並列配置されて基体並列体を構成しており、
該基体並列体の上に、複数層積層された前記薄板のうちの少なくとも1層が、各基体並列体上を横断するように積層されていることを特徴とするパネル。
【請求項17】
請求項16において、前記基体のうち一部のものは、前記一方の板面に溝が設けられ、該溝内に熱媒流通用配管が配設された温調用基体であり、
前記基体のうち他のものは、該溝及び熱媒流通用配管を具備しない平板基体であり、
該温調用基体と該平板基体とが交互に配列されていることを特徴とするパネル。
【請求項18】
請求項17において、前記剥離可能とされている2層の薄板のうち、基体側の薄板の上面に、前記平板基体の位置を示す表示が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項19】
請求項18において、前記表示は、前記平板基体の幅方向中央付近であって且つ該平板基体の幅の20〜80%の範囲に設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項20】
請求項17ないし19のいずれか1項において、前記薄板のうちの少なくとも1層は熱拡散薄板であり、該熱拡散薄板は温調用基体から平板基体にかけて連続して設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項21】
請求項1ないし20のいずれか1項において、複数層積層された前記薄板同士は付着用材料を介して接着されており、
少なくとも一部の薄板同士を接着する付着用材料は散点状又は線状に設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項22】
請求項17ないし20のいずれか1項において、少なくとも前記最上層薄板を含む前記表装材層側の薄板(以下、「上位薄板」という。)は、前記平板基体と略等幅又はそれよりも若干大きい幅を有しており、該平板基体の上方に配置されていることを特徴とするパネル。
【請求項23】
請求項22において、前記上位薄板の側方に隣接して、該上位薄板よりも下側の薄板(以下、「下位薄板」という。)と、前記表装材層との間に、将来の表装材層の更新時に該表装材層を該下位薄板に付着させるために使用される、シート状の予備結合体が配置されていることを特徴とするパネル。
【請求項24】
請求項23において、前記予備結合体は、前記上位薄板と略等幅の薄板状本体部と、該薄板状本体部上の少なくとも一方の面上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層を隠蔽する離型紙が一体化されたものであることを特徴とするパネル。
【請求項25】
請求項24において、前記予備結合体の粘着剤層の一部は前記離型紙で覆われておらず、
この離型紙で覆われていない粘着剤層を介して前記予備結合体が部分的に前記下位薄板側に付着していることを特徴とするパネル。
【請求項26】
請求項25において、前記予備結合体の前記離型紙で覆われていない粘着剤層と、前記離型紙で覆われている粘着剤層との境界を折り線とし、前記離型紙が、前記表装材層側に位置するように該折り線に沿って、前記予備結合体が折り返され、折り線が前記上位薄板に沿って延在していることを特徴とするパネル。
【請求項27】
請求項25において、前記上位薄板の両側方にそれぞれ前記予備結合体が配置されていることを特徴とするパネル。
【請求項28】
請求項1ないし27のいずれか1項において、前記薄板が、複数の部分薄板から構成されていることを特徴とするパネル。
【請求項29】
請求項1ないし28のいずれか1項に記載のパネルの表装材層を新たな表装材層に交換するパネル表装材層の更新方法であって、
隣接するいずれかの前記薄板同士の間を剥がすことによって、前記表装材層と、少なくとも最上層の薄板を取り除いた後、残留する薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項30】
請求項29において、該パネルは請求項4に記載のパネルであり、前記表装材層を更新するにあたり、最下層薄板と次層薄板との間を剥がすことによって、前記表装材層と、該最下層薄板以外の薄板とを取り除いた後、残留する該最下層薄板上に、新たな薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項31】
請求項29において、前記パネルは請求項3,5ないし9のいずれか1項に記載のパネルであり、
該非接着部が存在する薄板同士の間から、該非接着部よりも上側の薄板と表装材層とを取り除くことを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項32】
請求項29ないし31のいずれか1項において、残留する薄板の上に、少なくとも1層の新たな薄板を積層し、その上に前記表装材層を積層することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項33】
請求項29において、前記パネルは請求項22に記載のパネルであり、前記表装材層を更新するにあたり、前記表装材層と、前記上位薄板のうち、少なくとも1層とを取り除いた後、取り除いた該上位薄板に対応する新たな上位薄板を介して、新たな表装材層を積層することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項34】
請求項33において、前記パネルは請求項23に記載のパネルであり、前記上位薄板と前記下位薄板との間を剥がすことによって前記表装材層を更新するに際し、新たな上位薄板を前記予備結合体を用いて構成することを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項35】
請求項34において、前記パネルは請求項24又は25に記載のパネルであり、新たな上位薄板を前記予備結合体を用いて構成するに際し、該予備結合体から離型紙を剥がして露呈させた粘着剤層を下位薄板に付着させて上位薄板とすることを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項36】
請求項35において、前記パネルは請求項26又は27に記載のパネルであり、前記予備結合体から離型紙を剥がして露呈させた粘着剤層部分を前記折り線部分に沿って反転させて前記下位薄板に対し付着させることを特徴とするパネル表装材層の更新方法。
【請求項37】
請求項1ないし27のいずれか1項に記載のパネルを床、壁又は天井に施工したことを特徴とするパネル施工構造。
【請求項38】
請求項37において、前記パネルを、中央領域に位置するパネルと、外周囲に位置するパネルとから構成し、該中央領域に位置するパネルの基体の少なくとも一部が、前記一方の板面に溝が設けられた温調用基体であり、該外周囲に位置するパネルの基体は、前記一方の板面に溝が設けられていない平板基体であることを特徴とするパネルの施工構造。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−348724(P2006−348724A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207282(P2005−207282)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000236159)三菱化学産資株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000236159)三菱化学産資株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]