説明

パネルの固定構造

【課題】 連結部材の露出を防止でき、直交状に交わるパネル同士を、体裁良く、また少ない部品で簡単且つ迅速に固定できるようにする。
【解決手段】 上から見て直交状に配置する一方のパネル1と他方のパネル2とを、両パネル1、2が作る角部に配する連結具5で固定する。連結具5を、一方のパネル1の下部に取り付ける第1部材6と、この第1部材6の取り付け位置に対応して他方のパネル2の下部に取り付ける第2部材7とで形成する。上記の第1部材6は起立状の係合部6aを備える。上記の第2部材7は、上記の係合部6aに上から抱き込むようにして係着する垂下状の嵌め付け部7aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの固定構造に関する。更に詳しくは、例えば天板を備えたキッチンキャビネットの前板と側板、側板と背板のように、上から見て90度隔てて交わるパネル同士の固定に適するよう形成したパネルの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキャビネットにおいて、ダイニング側の化粧パネル(背板)を固定する構造としては、天板の奥の立ち上がり部の上端と、化粧パネルの上端部とを接合し、この箇所に逆角樋形(断面コの字形)の部材を嵌め付け、この部材で固定する構造が知られている。
【0003】
ところで、例えば対面型のキッチンキャビネットは、背板がダイニングやリビングルームに面するため、この種キャビネットのパネルの固定構造は、連結部品の露出を防止して体裁良く、しかも少ない部品で簡単且つ迅速に固定できるよう形成されているのが望ましい。
しかるに、従来の特許文献1の構造は、上記の通り、パネルの接合箇所に連結部品を嵌め付け、この連結部品でパネル同士を挟み付けて固定する構造であった。
従って、これによると、嵌め付け部材が露出するのを避けられず、体裁が悪くなり、露出部分にゴミが溜まって掃除の必要性が生じ、露出する連結部品によって思わぬ怪我をすることもあった。
また従来構造は、上記の通り、パネルの、例えば上端同士を接合する必要があるため、これによると、キャビネットの側板と背板のように、上から見て90度隔てて交わる箇所のパネルの固定には利用できない、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−124972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、連結部材の露出を防止でき、直交状に交わるパネル同士を、体裁良く、また少ない部品で簡単且つ迅速に固定できるよう形成したパネルの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、上から見て直交状に配置される一方のパネル1と他方のパネル2とを、両パネル1、2が作る角部に配する連結具5で固定するパネルの固定構造であって、上記の連結具5が、一方のパネル1の下部に取り付けられる第1部材6と、この第1部材6の取り付け位置に対応して他方のパネル2の下部に取り付けられる第2部材7とで形成され、上記の第1部材6が起立状の係合部6aを備え、上記の第2部材7が、上記の係合部6aに上から抱き込むようにして係着する垂下状の嵌め付け部7aを備えて形成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
ここで、両パネル1、2が作る角部とは、上から見て90度隔てて交わる箇所を意味し、角から多少離れた位置(近傍)を含む。また本発明の場合、第1部材6、第2部材7は、通常、金属板を曲げ加工することで形成されるが、その材料や製造法は自由である。また係合部6aの形状は、嵌め付け部7aの形状に合わせて適宜選定されるので良い。ここで、係着とは、嵌め付け部7aと係合部6aとが確実に組み合わされて離れない状態になる、ということを意味する。
【0008】
而して、本発明は、起立状の係合部6aが、板片状に形成され、一方のパネル1の第1部材6用の取り付け面1aに対して直交状に配置されているのが好ましい(請求項2)。
なぜならこれによると、嵌め付け部7aとの係着の範囲が広くなり、嵌め付け部7aを嵌め付け易くなるからである。
【0009】
また本発明は、垂下状の嵌め付け部7aが、下端になるほど外側に傾斜して起立状の係合部6aの上端と擦接する傾斜状部7a1を備えて形成されているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、傾斜状部7a1を係合部6aの上端にあてがって他方のパネル2を下ろすことにより、係合部6aに嵌め付け部7aを円滑に嵌め付けることができるからである。
【0010】
また本発明は、一方のパネル1が天板3を備えた対面型キッチンキャビネット4の側板であり、他方のパネル2が当該キャビネット4の背板であるのが好ましい(請求項4)。
なぜならこれによると、対面型キッチンキャビネット4の側板と背板との連結を、体裁良く、迅速にでき、また少ない部品で簡単にできるからである。
【0011】
またこの場合、本発明は、他方のパネル2の上端に対応する天板3の下側位置に、他方のパネル2の上端を嵌め付けるための箇所8が形成され、この箇所8に他方のパネル2の上端が配置され、この箇所8に差し込む隙間閉塞材9で他方のパネル2の上端が固定可能に形成されているのが好ましい(請求項5)。
なぜならこれによると、他方のパネル2の上端を露出させることなく体裁良く固定でき、他方のパネル2の交換、取り外しも、隙間閉塞材9を外すだけで簡単にできるからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、このように一方のパネルと他方のパネルとを連結する連結具が、一方のパネルの下部に取り付けられる第1部材と、この第1部材の取り付け位置に対応して他方のパネルの下部に取り付けられる第2部材とで形成され、上記の第1部材が起立状の係合部を備え、上記の第2部材が上記の係合部を上から抱き込むよう突き出されて係合部に係着する垂下状の嵌め付け部を備えて形成されているものである。
従って、本発明によれば、連結具の露出を防止できるから体裁良く、また少ない部品で簡単且つ迅速にパネルを直交状に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の固定構造の好適な一実施形態を示すパネル設置時の要部側面図である。
【図2】同上固定構造のパネル固定後の要部側面図である。
【図3】第1部材の斜視図である。
【図4】第1部材の側面図である。
【図5】第1部材の平面図である。
【図6】第1部材の正面図である。
【図7】第2部材の斜視図である。
【図8】第2部材の平面図である。
【図9】第2部材の正面図である。
【図10】図9のX−X線における断面図である。
【図11】他方のパネルの上端の嵌め付け構造を示す、キャビネットの側面図である。
【図12】他の実施形態を示すパネル設置時の要部斜視図である。
【図13】図12の実施形態のパネル設置時の要部側面図である。
【図14】他の固定構造用の連結部材を示す斜視図である。
【図15】図14の連結部材の正面図である。
【図16】図14の連結部材の平面図である。
【図17】図14の連結部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な一実施形態を、添付図面に従って説明する。
図1等において、1は上から見て直交状に配置される一方のパネルであり、2は他方のパネルである。一方のパネル1は、この実施形態では、図11に示されるように、天板3を備えた対面型キッチンキャビネット4の側板である。また他方のパネル2は、当該キャビネット4の背板である。
【0015】
5は、両パネル1、2が作る角部に配される連結具である。一方のパネル1と他方のパネル2は、この連結具5で直交状に固定される。連結具5は、一方のパネル1の下部に取り付けられる第1部材6と、この第1部材6の取り付け位置に対応して他方のパネル2の下部に取り付けられる第2部材7とで形成される。
【0016】
上記の第1部材6は、起立状の係合部6aを備え、上記の第2部材7は上記の係合部6aを上から抱き込むよう係合部6aに係着する垂下状の嵌め付け部7aを備えて形成されている。第1部材6及び第2部材7は、図3、図7等に示されるように、例えば金属板が曲げ加工されることにより形成される。
【0017】
また起立状の係合部6aは、この実施形態では、垂直の板片状に形成されている。そして、図3、図5等に示されるように、この係合部6aは、一方のパネル1の第1部材6用の取り付け面1aに対して直交状に配置されている。
【0018】
6b(図3参照)は、係合部6aと一体化した水平板部である。この水平板部6bは、一方のパネル1の第1部材6用の取り付け面1aに面接触する垂直板部6cと一体状に形成され、金属板が鉤形に曲げ加工されることにより形成されている。垂直板部6cの、係合部6aと対応する側の端部6dは、一方のパネル1の側端面1bに当接するよう、鉤形に曲げられている。なお、6eは第1部材6を一方のパネル1にネジ止めするためのネジ孔である。
本発明は、第1部材6が、このように形成されているため、水平板部6bの下面を一方のパネル1の下端面に合わせ、また端部6dを一方のパネル1の側端面1bに当接させて、第1部材6をパネル1に固定することができる。従ってこれによると、第1部材6の上下方向の位置決めを容易化できる。
【0019】
また第2部材7の嵌め付け部7aは、図1、図7等に示されるように、下端になるほど外側に傾斜して起立状の係合部6aの上端と擦接する傾斜状部7a1を備えて形成されている。嵌め付け部7aは、金属板が曲げ加工され、他方のパネル2の取り付け面2aに面接触する平板部7bと一体状に形成されている。
【0020】
具体的には、図7、図9等の図面上において、平板部7bの下部の両側から上向きに切込み7cが入れられ、間の箇所7dが、図10に示されるように、クランク形に曲げ加工されることにより形成されている。この実施形態の場合、角度A、Bは、90度である。そして、間の箇所7dの下部が、外側に傾斜状に曲げられ、傾斜状部7a1に形成されている。なお、7eは、第2部材7を他方のパネル2にネジ止めするためのねじ孔である。
本発明の場合、第2部材7は、上記の切込み7cにより、その外側に脚片7fが左右一対状に形成される。従って、第2部材7を他方のパネル2に取り付ける場合は、脚片7fの下端部を、他方のパネル2の下端面に合わせて取り付けることができるから、これによれば、第2部材7の上下方向の位置決めを容易化できる。
【0021】
而して、第2部材7がネジ止めされた他方のパネル2は、この実施形態では上記の通り、天板3を備えた対面型キッチンキャビネット4の背板である。他方のパネル2としての背板は、この実施形態では天板3の下側に嵌め付けられることにより、固定されている。
【0022】
具体的には、図11に示されるように、他方のパネル2としての背板の上端に対応する天板3の下側位置に、背板の上端を嵌め付けるための箇所8が形成されている。この箇所8は、キャビネット4を側面から見たとき、天板3の立ち下げ片3aと、一方のパネル1としての側板と、天板3の奥側(後側)の位置とで囲まれる下面開口状のスペースである。他方のパネル2の上端は、この箇所8に配置され、この箇所8に差し込まれる隙間閉塞材9で固定される。なお、隙間閉塞材9は、ネジ10で止め付けられる。
【0023】
次に、パネルの連結の仕方を説明する。
作業者は、先ず、一方のパネル1の下部の所定位置に、第1部材6を、その水平板部6b、端部6dを利用してネジ止めする。また、この第1部材6に対応する他方のパネル2の下部位置に、第2部材7を、パネル2の下端面に脚片7fを合わせてネジ止めする。
【0024】
次に作業者は、一方のパネル1を先に立て、この一方のパネル1の第1部材6に第2部材7が係着するよう、第2部材7の嵌め付け部7aの傾斜状部7a1を、第1部材6の係合部6aの上端にあてがいながら、他方のパネル2を徐々に下ろして立てる。そして作業者が、他方のパネル2を垂直にして上から押すと(パネルの重さによっては自重により)、嵌め付け部7aが係合部6aを抱き込むように、係合部6aに係着する。これにより他方のパネル2としての背板が、一方のパネル1である側板に固定される。
【0025】
以上の処において、本発明は、上記の連結具5が、図12、図13に示されるように形成されているのでも良い。
この実施形態の連結具5は、上例と同様、一方のパネル1に取り付けられる第1部材6と、他方のパネル2に取り付けられる第2部材7とで形成されている。そして第1部材6の基本構成は上例と同様であるが、係合部6aは、一方のパネル1の側端面1bから遠く離された位置に配置されている。
【0026】
また第2部材7は、第1部材6に対応する、他方のパネル2の下部に、上例と同様、ネジ11で取り付けられる。この第2部材7は、この実施形態では、縦向きの細板状に形成され、他方のパネル2の取り付け面2aから、上記の係合部6aに嵌め付け部7aが嵌め付け可能になるよう長く突き出されている。
【0027】
第2部材7は、この実施形態では上記の通り、縦向きの細板状に形成されている。そのため、上例の傾斜状部7a1は、嵌め付け部7aを形成する鉤形垂直部7a2の内側に実現されている。
而してこの実施形態の場合も、上例と同様、他方のパネル2を持ち上げ、第2部材7の嵌め付け部7aを、一方のパネル1の係合部6aに上から嵌め付けることにより、両パネル1、2が固定されるものである。
【0028】
なお、一方のパネル1と他方のパネル2を直交状に連結する場合、角部に配する連結用の部材としては、その他、例えば図14〜図17に示されるものがある。
この実施形態の連結部材12は、一方のパネル1の取り付け面1aに取り付けられる鉤形状の取付部12aと、他方のパネル2(図16参照)を載せるための受け部12bとを一体状に備え、金属板で形成されている。なお、連結部材12は、ネジ孔12cを介して一方のパネル1にネジ止めされる。
そして受け部12bの前側は立ち上げられ、起立片部12dに形成されている。他方のパネル2は、この起立片部12dにより、前後の位置が決定され、位置ずれが防止される。
【0029】
また、上例の各実施形態において、本発明は、一方のパネル1と他方のパネル2との接合面に、パッキン等が挟み込まれているのでも良い。なぜならこれによると、両パネル1、2の接合部の水密性、気密性を図ることができ、またガタツキ等を抑えることができるからである。
【符号の説明】
【0030】
1 一方のパネル
2 他方のパネル
5 連結具
6 第1部材
6a 係合部
7 第2部材
7a 嵌め付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上から見て直交状に配置される一方のパネルと他方のパネルとを、両パネルが作る角部に配する連結具で固定するパネルの固定構造であって、上記の連結具が、一方のパネルの下部に取り付けられる第1部材と、この第1部材の取り付け位置に対応して他方のパネルの下部に取り付けられる第2部材とで形成され、上記の第1部材が起立状の係合部を備え、上記の第2部材が、上記の係合部に上から抱き込むようにして係着する垂下状の嵌め付け部を備えて形成されていることを特徴とするパネルの固定構造。
【請求項2】
請求項1記載のパネルの固定構造であって、起立状の係合部が、板片状に形成され、一方のパネルの第1部材用の取り付け面に対して直交状に配置されていることを特徴とするパネルの固定構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のパネルの固定構造であって、垂下状の嵌め付け部が、下端になるほど外側に傾斜して起立状の係合部の上端と擦接する傾斜状部を備えて形成されていることを特徴とするパネルの固定構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のパネルの固定構造であって、一方のパネルが天板を備えた対面型キッチンキャビネットの側板であり、他方のパネルが当該キャビネットの背板であることを特徴とするパネルの固定構造。
【請求項5】
請求項4記載のパネルの固定構造であって、他方のパネルの上端に対応する天板の下側位置に、他方のパネルの上端を嵌め付けるための箇所が形成され、この箇所に他方のパネルの上端が配置され、この箇所に差し込む隙間閉塞材で他方のパネルの上端が固定可能に形成されていることを特徴とするパネルの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−177226(P2011−177226A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42203(P2010−42203)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】