説明

パネルの製造方法

【課題】溝状の張り出し部内に屈曲ノズルを用いることなく合成樹脂発泡材料を注入して容易にパネルを製造することができ、しかも張り出し部内の品質を一定にすることができるパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】下面材11の端部に形成された溝状の張り出し部13内への合成樹脂発泡材料の注入に際し、搬送中の下面材11の上方に配置した予備注入機のノズル58から下面材へ向けて合成樹脂発泡材料を吐出すると共に、吐出した合成樹脂発泡材料が下面材11に到達する前に、予備注入機のノズル58よりも下面材11の幅方向中央寄りの位置から合成樹脂発泡材料へ向けてガス噴射ノズルからガスを噴射し、下面材11に到達する前の合成樹脂材料の流れを噴射したガスにより張り出し部13へ向かう方向へ変更して張り出し部13内に合成樹脂発泡材料を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅方向端部に内向きに開口した溝状の張り出し部が形成された下面材を搬送して張り出し部に合成樹脂発泡材料を注入した後、下面材の幅方向端部間に合成樹脂発泡材料を導入し、次に上面材を搬送して合成樹脂発泡材料を発泡硬化させることにより、下面材及び上面材と発泡体が一体になったパネルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記パネルを製造する際に、下面材の張り出し部内に合成樹脂発泡材料を注入する方法として、張り出し部に入り込む屈曲ノズルによって合成樹脂発泡材料を注入することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
屈曲ノズルによって合成樹脂発泡材料を張り出し部に注入する方法は、屈曲ノズルに合成樹脂発泡材料が詰まり易い問題がある。また、屈曲ノズルの詰まりを生じにくくするため、注入する合成樹脂発泡材料自体を高圧に加圧したり、空気圧を加えたりして合成樹脂発泡材料を屈曲ノズルから噴射させることも行われているが、そのようにしても、パネルを連続して長時間製造する場合には張り出し部への注入が長時間になるため、屈曲ノズルに合成樹脂発泡材料が徐々に詰まるようになって屈曲ノズルからの吐出量が一定しなくなったり、最悪の場合には吐出できなくなったりしてパネルの品質が不均一になるおそれがある。したがって、屈曲ノズルの清掃を定期的に行なう必要があり、その清掃作業が面倒であった。
【0004】
また、合成樹脂発泡材料に空気圧を加える注入機としてエアミックス方式のものがある。エアミックス方式の注入機は、合成樹脂発泡材料としてポリウレタン発泡材料を用いるものであり、ポリウレタン発泡材料を構成するイソシアネート成分とポリオール成分をそれぞれ原料タンクから精密定量ポンプでミキシングヘッドに送ると共に、ミキシングヘッドに空気を圧送してイソシアネート成分とポリオール成分を空気圧で混合し、混合後の発泡材料をミキシングヘッド先端のノズルから噴射する構造となっている。このエアミックス方式においては、原料の撹拌が空気圧によるため、原料粘度の上昇時には撹拌が充分にされなかったり、張り出し部への注入開始時や温調のできていない高粘度の原料がミキシングヘッドに流れた時などにはイソシアネート成分とポリオール成分の配合比率が狂ったりする事があり、その場合に張り出し部へ注入された発泡材料が規定の物性を満たさなくなるおそれがある。
【0005】
また、下面材の搬送方向に対して直交する方向の下面材の両端部近傍と中央部の上方とに配置した3個の分配ノズルから下面材上に合成樹脂発泡材料を注入散布する方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、この方法では下面材の端部における張り出し部の幅(奥行き)が大きい場合、張り出し部内に合成樹脂発泡材料を充分に注入することができず、注入不足によるボイドや空隙が発生して断熱機能の低下や、強度不足を生じ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−131464号公報
【特許文献2】特開平10−202672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、下面材の幅方向端部に内向きに開口した溝状の張り出し部内に、屈曲ノズルを用いることなく合成樹脂発泡材料を注入して容易にパネルを製造することができ、しかも張り出し部内の品質を一定にすることができるパネルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、下面材を水平に搬送し、前記下面材における搬送方向と直交する下面材の幅方向の端部を内側へ屈曲して形成した内向きに開口した溝状の張り出し部内に、予備注入機により合成樹脂発泡材料を注入し、その後に前記下面材の幅方向端部間に合成樹脂発泡材料を主注入機で導入し、次いで前記下面材上に上面材を搬送し、前記合成樹脂発泡材料を発泡硬化させて前記下面材と前記上面材間に発泡体が一体となったパネルを製造する方法において、前記張り出し部内への合成樹脂発泡材料の注入に際し、前記搬送中の下面材の上方に配置した前記予備注入機のノズルから前記下面材へ向けて合成樹脂発泡材料を吐出すると共に、吐出した合成樹脂発泡材料が前記下面材に到達する前に、前記予備注入機のノズルよりも前記下面材の幅方向中央寄りの位置から前記合成樹脂発泡材料へ向けてガス噴射ノズルからガスを噴射し、前記下面材に到達する前の合成樹脂材料の流れを前記噴射したガスにより前記張り出し部へ向かう方向へ変更して前記張り出し部内に合成樹脂発泡材料を注入することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ガス噴射ノズルの向きは、水平面又は前記下面材の搬送方向の少なくとも何れか一方に対して傾斜していることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記ガス噴射ノズルからガスを上下方向よりも水平方向への広がりが大きい扇状に噴射させることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記予備注入機がサーキュレイト方式の低圧注入機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、下面材の張り出し部内への合成樹脂発泡材料の注入に際し、搬送中の下面材の上方に配置した予備注入機のノズルから前記下面材へ向けて合成樹脂発泡材料を吐出すると共に、吐出した合成樹脂発泡材料が前記下面材に到達する前に、前記予備注入機のノズルよりも前記下面材の幅方向中央寄りの位置から前記合成樹脂発泡材料へ向けてガス噴射ノズルからガスを噴射し、前記下面材に到達する前の合成樹脂材料の流れを前記噴射したガスにより前記張り出し部へ向かう方向へ変更して前記張り出し部内に合成樹脂発泡材料を注入するため、張り出し部内へ合成樹脂発泡材料を注入するために屈曲ノズルを予備注入機に設ける必要がない。そのため、屈曲ノズルの清掃が不要になってパネルの製造を容易に行うことができる。しかも、屈曲ノズルの詰まりによって張り出し部内への合成樹脂発泡材料の注入不良を生じることもなく、張り出し部の品質を一定にすることができる。さらに、張り出し部の幅(奥行き)が大きい場合でも、ガスの噴射圧力を大にすることにより張り出し部内に合成樹脂発泡材料を充分に注入することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、前記ガス噴射ノズルの向きが、水平面又は前記下面材の搬送方向の少なくとも何れか一方に対して傾斜しているため、ガス噴射ノズルから噴射されたガスが合成樹脂発泡材料に当たった後に下面材の張り出し部で跳ね返されることがあっても、ガス噴射ノズルから下面材の張り出し部に至るガスの往路とは異なる方向へガスが跳ね返されることになり、跳ね返されたガスによって合成樹脂発泡材料がガス噴射ノズル側へ押し戻されるのを防ぐことができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、ガス噴射ノズルからガスを上下方向よりも水平方向への広がりが大きい扇状に噴射させるため、前記ガスによって合成樹脂発泡材料が水平方向へ大きく広がった偏平な扇状で張り出し部に至ることになり、上下方向に狭い溝状の張り出し部に効率よく合成樹脂発泡材料を注入することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、予備注入機がサーキュレイト方式の低圧注入機であるため、吐出時まで合成樹脂発泡材料がサーキュレイト(循環)し、合成樹脂発泡材料の粘度が一定になりやすいことから、吐出量が一定になり、張り出し部への合成樹脂発泡材料の注入量を一定にしやすい。さらに低圧注入機から吐出される合成樹脂発泡材料は、殆ど加圧されることなく自重で落下して速度が遅いため、下面材に到達する前の合成樹脂発泡材料に効果的にガスを噴射して合成樹脂発泡材料の流れを張り出し部へ向かう方向へ変えるのが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造方法によって得られたパネルの中央部を省略した斜視図である。
【図2】本発明の製造方法に用いられる装置の概略を示す側面図である。
【図3】同装置の一部について概略を示す平面図である。
【図4】同装置における予備注入機のノズル付近を示す平面図である。
【図5】図4の5−5断面図である。
【図6】同装置において下面材の張り出し部へ合成樹脂発泡材料を注入する際を示す平面図である。
【図7】図6の7−7断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のパネルの製造方法について説明する。図1に示すパネル10は、本発明の製造方法によって製造されたものであり、下面材11と上面材31の間に合成樹脂発泡体21が形成されて下面材11、上面材31及び合成樹脂発泡体21が一体に接合されたいわゆるサンドイッチパネルである。前記パネル10は、建築材等における断熱パネルとして好適なものである。なお、前記下面材11は前記パネル10の製造時に下側とされる面材であり、他方、前記上面材31は前記パネル10の製造時に上側とされる面材である。
【0018】
前記下面材11及び上面材31は、金属の薄板などからなる。前記下面材11には、幅方向Wの一端部に張り出し部13が形成されている。前記下面材11の張り出し部13は、前記パネル10を幅方向に連結する際に他のパネルとの嵌合部とされる部分である。前記張り出し部13は、前記下面材11における幅方向Wの一端部を内側(下面材11の幅方向中央側)へ屈曲させて形成したものであり、内向きに開口した(下面材11の中央側を向いて開口した)溝状になっている。前記張り出し部13の寸法は、強度、連結性、及び張り出し部13内に形成される合成樹脂発泡体による良好な断熱性等を考慮して定められる。好ましくは、図5に示すように、張り出し部13の内部幅(奥行き)w1/内部高さh1の値(比)が5〜9であり、具体的には、張り出し部の内部幅(奥行き)w1が25〜75mm、内部高さh1が3〜8mmである。なお、図1に示すように、前記下面材11における幅方向Wの反対側端部には、他のパネルの前記張り出し部13が嵌る凹部15が表面に形成されている。
【0019】
また、前記パネル10の幅方向Wの一端部において下面と上面との中間位置には、前記下面材11及び上面材31の端部を屈曲させて形成した小突部10aを有し、反対側の端部における下面と上面との中間位置には、前記下面材11及び上面材31の端部を屈曲させて形成した凹部10bを有する。前記小突部10aと凹部10bは、前記パネル10を幅方向に連結する際に他のパネルの凹部10b及び小突部10aが嵌るようになっている。
【0020】
前記合成樹脂発泡体21は、液状の合成樹脂発泡材料から発泡硬化したものであり、断熱性や剛性等の点からポリウレタン発泡体、特には硬質ポリウレタン発泡体が好適である。
【0021】
次に、前記パネル10の製造方法について説明する。まず、本発明のパネルの製造方法に用いられる製造装置について、図2から図5を用いて説明する。図2に示すように、パネルの製造装置は、下側コンベア41、上側コンベア45、下面材供給ロール49、上面材供給ロール53、予備注入機57、ガス噴射装置61、主注入機65を備える。
【0022】
下側コンベア41は、下面材11を水平に一方向へ搬送するものである。一方、上側コンベア45は、前記下側コンベア上方に所定間隔離れて設けられ、後述するように合成樹脂発泡材料が導入された下面材11上に上面材31を配置して一方向へ搬送するものである。
【0023】
下面材供給ロール49は、巻き取られた下面材11を前記下側コンベア41上へ供給するものである。前記下面材供給ロール49と予備注入機57間には、図示しない下面材端部屈曲装置が設けられ、前記下面材端部屈曲装置によって下面材11の幅方向端部が前記張り出し部13や小突部10a及び凹部10b等の所定形状に屈曲される。
【0024】
上面材供給ロール53は、巻き取られた上面材13を前記上側コンベア45の下面へ供給するものである。前記上面材供給ロール53と上側コンベア45間には、図示しない上面材端部屈曲装置が設けられ、前記上面材端部屈曲装置によって上面材13の幅方向端部が前記小突部10a及び凹部10b等の所定形状に屈曲される。
【0025】
予備注入機57は、前記下面材11の張り出し部13内に注入する合成樹脂発泡材料を下面材11へ向けて吐出するものであり、公知のサーキュレイト方式の低圧注入機からなる。前記予備注入機57におけるミキシングヘッドに設けられたノズル58は、搬送中の下面材11上方に配置され、前記下面材11へ向けて下向きにされている。サーキュレイト方式の低圧注入機は、ポリウレタン発泡体の注入機として多用されている注入機であり、非注入時にはポリウレタン発泡材料を構成するポリオール成分とイソシアネート成分が、それぞれ原料タンクとミキシングヘッドを結ぶ流路を一定圧力と一定量で循環している。一方、注入時にはミキシングヘッドでそれぞれの成分の流路が開口してポリオール成分とイソシアネート成分がミキシングヘッド内に吐出され、ミキシングヘッド内の撹拌羽根によって混合撹拌された後に殆ど加圧されることなくノズル58から自重でポリウレタン発泡材料が落下する。また、前記予備注入機57のノズル58の位置は、図4及び図5に示すように、ノズル58の下端(下方延長線)と前記下面材11の張り出し部13の開口端14との水平距離aが2.5〜7mmとなるように、前記張り出し部13の開口端14よりも下面材の中央寄り(幅W方向における中央寄り)にするのが好ましい。
【0026】
ガス噴射装置61は、図6及び図7に示すように、前記予備注入機57のノズル58から下面材11へ向けて吐出した合成樹脂発泡材料21aが下面材11へ到達する前に、合成樹脂発泡材料21aにガス63を噴射して合成樹脂材料21aの流れを下面材11の張り出し部13へ向かう方向へ変更して張り出し部13内に合成樹脂発泡材料を注入するためのものであり、コンプレッサー等を有するものからなる。噴射するガス63としては、エア(空気)が扱い易く、安価であるために好ましい。噴射するガスの圧力は、前記予備注入機57のノズル58から吐出された合成樹脂発泡材料21aの流れを効率よく下面材11の張り出し部13へ変更させるため、0.2〜0.6MPaとするのが好ましい。また、図4及び図5に示すように、前記ガス噴射装置61のガス噴射ノズル62は、前記予備注入機57のノズル58よりも下面材13の中央寄り、すなわち予備注入機57のノズル58に対して前記下面材11の張り出し部13とは反対側に位置すると共に、ガス噴射ノズル62の前方延長線(すなわちガスの噴射方向)が、前記予備注入機57のノズル58から吐出される合成樹脂発泡材料の落下経路を横切って前記張り出し部13へ至るように向けられている。符号bは予備注入機57のノズル58の下方延長線からガス噴射ノズル62までの距離である。
【0027】
また、前記ガス噴射ノズル62(ガス噴射ノズル62の前方延長線)は、水平面又は前記下面材11の搬送方向の少なくとも何れか一方に対して傾斜するのが好ましい。なお、下面材11の搬送方向に対して傾斜とは、下面材11の搬送方向に対して垂直及び平行の何れでもないことであり、換言すると前記下面材11の幅方向Wに対して傾斜している(幅方向Wに対して平行及び垂直の何れとも異なっている)ことである。このようにすれば、ガス噴射ノズル62から噴射されたガス63が合成樹脂発泡材料に当たった後に下面材11の張り出し部13に斜めに当たることになり、前記下面材11の張り出し部13でガス63が跳ね返されることがあっても、ガス噴射ノズル62から下面材11の張り出し部13に至るガスの往路とは異なる方向へガスが跳ね返され、この跳ね返されたガスの経路に予備注入機57のノズル58部分が位置しないようにできるため、前記張り出し部13で跳ね返されたガスによって合成樹脂発泡材料がガス噴射ノズル62側へ押し戻されるのを防ぐことができる。なお、搬送中の下面材11における端部間の平面も水平面を構成している。符号αはガス噴射ノズル62と水平面(図示の例では下面材11)との間の角度(傾斜角度)であり、またβはガス噴射ノズル62と下面材11の搬送方向との間の角度(傾斜角度)である。
【0028】
さらに、図6及び図7に示すように、前記ガス63は、上下方向よりも水平方向への広がりが大きい扇状に噴射させるのが好ましい。このようにすれば、噴射したガス63によって合成樹脂発泡材料21aが水平方向へ大きく広がった偏平な扇状で前記下面材11の張り出し部13内に至ることになり、上下方向に狭い溝状の張り出し部13内に効率よく合成樹脂発泡材料21aを注入することができる。なお、前記ガス63を上下方向よりも水平方向への広がりが大きい扇状に噴射させるには、前記ガス噴射ノズル62の吹き出し口を水平な偏平な開口とすればよい。
【0029】
主注入機65は、前記下面材11の張り出し部13へ予備注入機57により合成樹脂発泡材料21aを注入した後、前記下面材11の幅方向端部間に合成樹脂発泡材料21bを導入するために用いられ、公知のサーキュレイト方式の低圧注入機あるいは高圧注入機の何れでもよい。前記主注入機65のノズル66の位置は、前記予備注入機57のノズル58よりも下面材11の搬送方向前方位置であって、前記上面材31が下面材11上に配置される位置よりも手前の位置とされる。すなわち前記予備注入機57のノズル58の位置と、前記上面材31が下面材11上方に配置される位置との間に主注入機65のノズル66が下面材13へ向けて下向きに配置されている。さらに、前記主注入機65のノズル66は、前記下面材11の幅方向Wへ往復するトラバース装置(図示せず)に取り付けられ、搬送中の下面材11上に幅方向Wへ往復しながら合成樹脂発泡材料を導入(吐出)するように構成されている。
【0030】
前記製造装置を用いるパネルの製造方法は、予備注入工程と、本注入工程と、上面材配置工程とよりなる。
予備注入工程では、前記下面材供給ロール49から供給されて前記下側コンベア41によって一方向へ搬送されている前記下面材11へ向けて前記予備注入機57のノズル58から合成樹脂発泡材料21aを下方へ吐出し、吐出した合成樹脂発泡材料21aが下面材11へ到達する前に、前記ガス噴射ノズル62からガス63を落下中の合成樹脂発泡材料21aへ向けて噴射する。噴射されたガス63は合成樹脂発泡材料21aに衝突し、落下中の合成樹脂発泡材料21aの流れを、図6及び図7に示すように下面材11の張り出し部13へ向かう方向へ変更させ、前記張り出し部13内に合成樹脂発泡材料21aを注入する。このとき、合成樹脂発泡材料21aは、噴射されたガス63によって前記張り出し部13内の奥まで充分に注入される。
【0031】
本注入工程では、前記予備注入工程後、すなわち前記下面材11の張り出し部13に合成樹脂発泡材料21aを注入した後、前記主注入機65のノズル66から合成樹脂発泡材料21bを吐出して搬送中の下面材11の幅方向W端部間に導入する。その際、図3に示すように、前記主注入機65のノズル66を幅方向Wにトラバース(往復)させることにより、合成樹脂発泡材料21bを下面材11の端部間に満遍なく導入する。
【0032】
上面材配置工程では、前記主注入機65のノズル66から下面材11上に合成樹脂発泡材料21bを導入した後、前記上面材供給ロール53から供給される上面材31を前記下面材11上に配置する。そして、前記合成樹脂発泡材料21a及び合成樹脂発泡材料21bを発泡硬化させ、前記下面材11と上面材31間に合成樹脂発泡体21を形成し、前記下面材11と上面材31及び発泡体21が一体となった前記パネル10を形成する。その後パネル10は、所定長に切断される。このようにして製造されたパネル10は、前記張り出し部13内に形成された合成樹脂発泡体に欠肉や空洞が無く、張り出し部13における断熱性等の品質が良好かつ一定のものである。
【実施例】
【0033】
前記製造装置における下側コンベア41及び上側コンベア45の搬送速度を10m/min、合成樹脂発泡材料21a,21bを硬質ウレタン発泡材料、予備注入機57をサーキュレイト方式の低圧注入機、主注入機65を高圧注入機、噴射するガスをエアとし、前記張り出し部13に関する条件を表1のようにして実施例及び比較例のパネルを製造した。なお、主注入機65による下面材の両端部間に対する合成樹脂発泡材料の吐出は、吐出量10kg/min、主注入機65のノズル66のトラバース速度120m/min、発泡体のフリー密度40kg/mである。比較例は、ガス噴射装置61によるガス噴射を行わないで、予備注入機57のノズル58から合成樹脂発泡材料を下面材へ向けて吐出した例である。
【0034】
【表1】

【0035】
なお、パネルは長さ1000mmで切断した。また、製造したパネルを幅方向と平行に所定間隔で複数箇所切断し、また張り出し部を幅方向と直交方向に切断して、張り出し部における合成樹脂発泡体の充填状態を目視で確認した。その結果、実施例では張り出し部内の合成樹脂発泡体に空洞部が無く、合成樹脂発泡体が充分に充填されていた。それに対し、比較例では張り出し部内に空洞部が存在し、合成樹脂発泡体の充填が不足していた。
【0036】
前記実施例では下面材における幅方向の一端部のみに張り出し部を設けているが、幅方向の両端部に張り出し部を設けた場合にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 パネル
11 下面材
13 張り出し部
21 合成樹脂発泡体
21a、21b 合成樹脂発泡材料
31 上面材
41 下側コンベア
45 上側コンベア
49 下面材供給ロール
53 上面材供給ロール
57 予備注入機
58 予備注入機のノズル
61 ガス噴射装置
62 ガス噴射ノズル
65 主注入機
66 主注入機のノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面材を水平に搬送し、前記下面材における搬送方向と直交する下面材の幅方向の端部を内側へ屈曲して形成した内向きに開口した溝状の張り出し部内に、予備注入機により合成樹脂発泡材料を注入し、その後に前記下面材の幅方向端部間に合成樹脂発泡材料を主注入機で導入し、次いで前記下面材上に上面材を搬送し、前記合成樹脂発泡材料を発泡硬化させて前記下面材と前記上面材間に発泡体が一体となったパネルを製造する方法において、
前記張り出し部内への合成樹脂発泡材料の注入に際し、前記搬送中の下面材の上方に配置した前記予備注入機のノズルから前記下面材へ向けて合成樹脂発泡材料を吐出すると共に、吐出した合成樹脂発泡材料が前記下面材に到達する前に、前記予備注入機のノズルよりも前記下面材の幅方向中央寄りの位置から前記合成樹脂発泡材料へ向けてガス噴射ノズルからガスを噴射し、前記下面材に到達する前の合成樹脂材料の流れを前記噴射したガスにより前記張り出し部へ向かう方向へ変更して前記張り出し部内に合成樹脂発泡材料を注入することを特徴とするパネルの製造方法。
【請求項2】
前記ガス噴射ノズルの向きは、水平面又は前記下面材の搬送方向の少なくとも何れか一方に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のパネルの製造方法。
【請求項3】
前記ガス噴射ノズルからガスを上下方向よりも水平方向への広がりが大きい扇状に噴射させることを特徴とする請求項1又は2に記載のパネルの製造方法。
【請求項4】
前記予備注入機がサーキュレイト方式の低圧注入機であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−16237(P2011−16237A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160452(P2009−160452)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000113517)BASF INOACポリウレタン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】