説明

パノラマ撮影システム

【課題】異なる光軸方向におけるパノラマ画像を得ることができるパノラマ撮影システムを提供する。
【解決手段】光軸が直交するパノラマレンズ鏡胴110及び結像レンズ鏡胴120を備える。結像レンズ鏡胴120は、入射瞳面121を含み、パノラマレンズ鏡胴110は、パノラマレンズ10、リレーレンズ12及び反射素子14を備える。パノラマレンズ10は、物側に凸状となった環状入射面S1と、結像側に凸状となっており、前記環状入射面S1から入射した光を反射する環状反射面S2と、物側に凹状となっており、前記環状反射面S2からの光を反射する円状反射面S3と、結像側に凸状となっており、前記円状反射面S3からの光を結像側に出射する円状出射面S4と、を含む。円状出射面S4からの光線はリレーレンズ12を介して入射瞳面121に伝えられ、結像レンズ鏡胴120によってパノラマ画像123を結像する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学システムに関し、特にパノラマ撮影システムに関するものである。
【0002】
従来のパノラマ撮影システムは、同じ光軸に沿って順番に配列されたパノラマレンズ、複数の光学レンズ及びイメージセンサーを備える。前記光学レンズは、前方の映像を捕捉し、前記パノラマレンズは、前記光学レンズの光軸の360度周囲における映像を捕捉し、前記イメージセンサーは、前記パノラマレンズ及び結像レンズが捕捉した映像を感知してパノラマ画像を形成する。
【0003】
しかし、これらの光路の設計において、パノラマレンズを経過した光線は光学レンズを介してのみイメージセンサーに伝えられるため、同じ光軸方向におけるパノラマ画像しか得ることができない。従って、異なる光軸方向におけるパノラマ画像を得ることができず、消費者らの広角撮影に対する多様な要求を満足させることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の問題点に鑑みて、本発明は、異なる光軸方向におけるパノラマ画像を得ることができるパノラマ撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題を解決するために、本発明に係るパノラマ撮影システムは、パノラマレンズ鏡胴及び前記パノラマレンズ鏡胴に接続されている結像レンズ鏡胴を備える。前記パノラマレンズ鏡胴の光軸と前記結像レンズ鏡胴の光軸とは直交し、前記結像レンズ鏡胴は、入射瞳面を含み、前記パノラマレンズ鏡胴は、物側から結像側に向かって、パノラマレンズ、リレーレンズ及び反射素子を順番に備え、前記パノラマレンズは、側方向からの光線を360度全周囲から入射させることができ且つ正の屈折力を有し、物側に面すると共に物側に凸状となった環状入射面と、結像側に面すると共に結像側に凸状となっており、前記環状入射面から入射した光を反射する環状反射面と、前記環状入射面の内周縁に接続し且つ物側に凹状となっており、前記環状反射面からの光を反射する円状反射面と、前記環状反射面の内周縁に接続し且つ正の屈折力を有し、結像側に凸状となっており、前記円状反射面からの光を結像側に出射する円状出射面と、を含み、前記円状出射面から出射した光線は前記リレーレンズを介して前記反射素子に伝えられ、この伝えられた光線は前記反射素子によって反射して前記入射瞳面に伝えられ、前記反射した光線は前記入射瞳面によって前記結像レンズ鏡胴に入射してパノラマ画像を結像する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るパノラマ撮影システムは、パノラマレンズ鏡胴内に反射素子が設置されることで、前記パノラマレンズ鏡胴の光軸と結像レンズ鏡胴の光軸とが直交して、前記パノラマ撮影システムの厚さが減少すると共に、異なる光軸方向におけるパノラマ画像を得ることができ、幅広い消費者らの要求を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るパノラマ撮影システムの光路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づいて、本発明に係るパノラマ撮影システムについて詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明に係るパノラマ撮影システム100の光路を示す図である。前記パノラマ撮影システム100は、パノラマレンズ鏡胴110と、前記パノラマレンズ鏡胴110に接続されている結像レンズ鏡胴120と、を備える。本実施形態において、前記パノラマ撮影システム100は、ビジコンカメラ(図示せず)に用いられ、前記結像レンズ鏡胴120は、前記ビジコンカメラのボディ内部に設置され、前記パノラマレンズ鏡胴110は、ビジコンカメラのボディ外部に設置される。前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸と前記結像レンズ鏡胴120の光軸とは直交する。また、前記パノラマ撮影システム100を、撮影機能を有する携帯電話又はカメラに用いることができる。
【0010】
前記結像レンズ鏡胴120は、物側から結像側に向かって、複数の結像レンズ(図示せず)及びイメージセンサー(図示せず)を順番に備える。前記結像レンズは、入射瞳面121を有し、前記イメージセンサーは、結像面123を有する。前記入射瞳面121を経過した光線が前記結像面123に伝えられて、前記イメージセンサーに画像信号を発生させる。本実施形態において、Oは、前記結像レンズ鏡胴120の光軸である。前記イメージセンサーは、電荷結合素子(CCD)イメージセンサー又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサーとすることができる。
【0011】
前記パノラマレンズ鏡胴110は、物側から結像側に向かって、パノラマレンズ10、リレーレンズ12及び反射素子14を順番に備える。本実施形態において、Oは、前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸である。前記光軸Oは、前記光軸Oと直交する。前記パノラマレンズ10及び前記リレーレンズ12の位置は固定されている。即ち、前記パノラマレンズ10及び前記リレーレンズ12は前記光軸Oに沿って移動しない。
【0012】
前記パノラマレンズ10は、光学ガラス又はプラスチックからなる。本実施形態において、前記パノラマレンズ10は、プラスチック製レンズである。前記パノラマレンズ10の幾何学的な対称軸線は、前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oとの共同軸線になっている。前記パノラマレンズ10は、環状入射面S、環状反射面S、円状反射面S及び円状出射面Sを含む。
【0013】
前記環状入射面Sは、円錐台の側面に近似し、該側面は、前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oに対して対称である。前記環状入射面Sは、物側に面し、且つ物側に近接する第一円周縁101及び結像側に近接する第二円周縁102を含む。ここで、前記物側に近接することとは、前記第一円周縁101が前記第二円周縁102に対して物側に近接していることを指し、前記結像側に近接することとは、前記第二円周縁102が前記第一円周縁101に対して結像側に近接していることを指す。前記第一円周縁101の直径は前記第二円周縁102の直径より小さく、また前記環状入射面Sの幅は均一である。前記環状入射面Sは、物側に対して正の屈折力を有し、且つ物側に凸状になった表面である。前記環状入射面Sを360度囲む光線は、前記環状入射面Sに投射されて前記パノラマレンズ10内に進入する。本実施形態において、前記360度の光線のうち、前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oに垂直する平面に対して−10度〜40度の角度の範囲内において前記パノラマ撮影システムに入射した物が、前記パノラマレンズ10に入射する。
【0014】
前記環状反射面Sは、前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oに対して対称である。前記環状反射面Sは、結像側に面し、且つ結像側に近接する第三円周縁103及び物側に近接する第四円周縁104を含む。ここで、前記結像側に近接することとは、前記第三円周縁103が前記第四円周縁104に対して結像側に近接していることを指し、前記物側に近接することとは、前記第四円周縁104が前記第三円周縁103に対して物側に近接していることを指す。前記第三円周縁103の直径は前記第四円周縁104の直径より小さく、前記環状反射面Sの幅は均一である。前記環状反射面Sは、物側に対して正の屈折力を有し、且つ結像側に凸状になった表面である。前記環状反射面Sには反射膜が成膜されている。前記環状入射面Sから入射した光線は、前記環状反射面Sによって反射して前記円状反射面Sに伝えられる。
【0015】
前記円状反射面Sの円周縁は、前記環状入射面Sの第一円周縁101に接続されている。前記円状反射面Sは、前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oに対して対称である。前記円状反射面Sは、物側に対して負の屈折力を有し、且つ結像側に凹状になった表面である。前記円状反射面Sには反射膜が成膜されている。前記環状反射面Sからの光線は、前記円状反射面Sによって反射して前記円状出射面Sに伝えられる。
【0016】
前記円状出射面Sの円周縁は、前記環状反射面Sの第三円周縁103に接続されている。前記円状出射面Sは、前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oに対して対称である。前記円状出射面Sは、物側に対して正の屈折力を有し、且つ結像側に凸状になった表面である。前記円状反射面Sには反射膜が成膜されている。前記円状反射面Sからの光線は、前記円状出射面Sを介して前記パノラマレンズ10から出射する。
【0017】
前記円状反射面Sの第四円周縁104と前記円状入射面Sの第二円周縁102とは、円環状の平面である連結面105を通じて連結されている。前記円環状の連結面105の直径は、前記第二円周縁102又は前記第四円周縁104の直径より大きい。
【0018】
前記リレーレンズ12は、正の屈折力を有するレンズであり、且つ対物側の光入射面S及び結像側の光出射面Sを含む。前記光入射面Sは、負の屈折力を有する表面であり、前記光出射面Sは、正の屈折力を有する表面である。前記リレーレンズ12の少なくとも1つの表面(即ち、光入射面S又は光出射面S)は、非球面である。前記リレーレンズ12は、前記パノラマレンズ10から出射された光線を前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oへ集光する。本実施形態において、前記リレーレンズ12はプラスチックからなり、コスト及び重さを低減する。
【0019】
前記反射素子14は、平面鏡又は反射プリズムである。本実施形態において、前記反射素子14は、前記結像レンズ鏡胴120の光軸O及び前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oそれぞれに対して45度角を成す。前記反射素子14は、前記パノラマレンズ10から出射した全部の光線を反射する。また、前記反射素子14は、前記結像レンズ鏡胴120の光軸O及び前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oと任意の角度(例えば、30度角又は60度角)を成すように設置することができる。
【0020】
光線が前記環状入射面Sの任意点から屈折して前記パノラマレンズ10内部に進入してから、この進入した光線は前記環状反射面Sによって反射して前記円状反射面Sに伝えられ、この反射した光線は前記円状反射面Sによって再度反射した前記円状出射面Sに伝えられ、この再度反射した光線は前記円状出射面Sを介して前記パノラマレンズ10から出射して前記リレーレンズ12に伝えられ、この伝えられた光線は前記リレーレンズ12によって集光されるように前記反射素子14に伝えられる。前記集光された光線は前記反射素子14によって反射してから、前記結像レンズ鏡胴120に進入してパノラマ画像を結像する。前記パノラマレンズ10が捕捉した360度のパノラマ画像は、前記リレーレンズ12及び入射瞳面121を経過した後前記イメージセンサーの結像面123において結像する。前記イメージセンサーは結像したパノラマ画像を対応する電気信号に変換してから、液晶、CRT等のようないろいろな表示装置を介して表示する。
【0021】
下記の表1及び表2のパラメータを参照しながら、前記パノラマ撮影システム100におけるパノラマレンズ10及びリレーレンズ12に関してより詳細に説明する。その中で、Rは対応する表面の曲率半径であり、Dは対応する表面と次の表面との光軸における間隔であり、Ndは対応するレンズの屈折率であり、Vdは対応する表面のアッベ数である。
【0022】
【表1】

【0023】
本実施形態において、前記パノラマレンズ10及び前記リレーレンズ12における各光学表面には、全て非球面を採用する。
【0024】
前記パノラマレンズ10及び前記リレーレンズ12が非球面を採用する場合、レンズ表面中心を原点とし、光軸をz軸とすると、採用される非球面の表現式は以下の通りである。
【0025】
【数1】

【0026】
ただし、yは光軸から非球面上における任意点までの高さであり、Rは曲率半径であり、kは円錐定数(Conic Constant)であり、Aは、4番目のオーダーの非球面係数(4th order Aspherical Coefficient)であり、Aは、6番目のオーダーの非球面係数(6th order Aspherical Coefficient)である。前記パノラマレンズ10及び前記リレーレンズ12の非球面係数は表2の通りである。
【0027】
【表2】

【0028】
本発明に係るパノラマ撮影システム100は、パノラマレンズ鏡胴110内に反射素子14が設置されることで、前記パノラマレンズ鏡胴110の光軸Oと結像レンズ鏡胴120の光軸Oとが直交して、前記パノラマ撮影システム100の厚さが減少すると共に、異なる光軸方向におけるパノラマ画像を得ることができ、幅広い消費者らの要求を満足させることができる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、該変形又は修正も又、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0030】
100 パノラマ撮影システム
10 パノラマレンズ
12 リレーレンズ
14 反射素子
101 第一円周縁
102 第二円周縁
103 第三円周縁
104 第四円周縁
105 連結面
110 パノラマレンズ鏡胴
120 結像レンズ鏡胴
121 入射瞳面
123 結像面
環状入射面
環状反射面
円状反射面
円状出射面
光入射面
光出射面
、O 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パノラマレンズ鏡胴と、前記パノラマレンズ鏡胴に接続されている結像レンズ鏡胴をと、備えるパノラマ撮影システムにおいて、
前記パノラマレンズ鏡胴の光軸と前記結像レンズ鏡胴の光軸とが直交し、
前記結像レンズ鏡胴は、入射瞳面を含み、
前記パノラマレンズ鏡胴は、物側から結像側に向かって、パノラマレンズ、リレーレンズ及び反射素子を順番に備え、
前記パノラマレンズは、側方向からの光線を360度全周囲から入射させることができ且つ正の屈折力を有し、物側に面すると共に物側に凸状となった環状入射面と、結像側に面すると共に結像側に凸状となっており、前記環状入射面から入射した光を反射する環状反射面と、前記環状入射面の内周縁に接続し且つ物側に凹状となっており、前記環状反射面からの光を反射する円状反射面と、前記環状反射面の内周縁に接続し且つ正の屈折力を有し、結像側に凸状となっており、前記円状反射面からの光を結像側に出射する円状出射面と、を含み、
前記円状出射面から出射した光線は前記リレーレンズを介して前記反射素子に伝えられ、この伝えられた光線は前記反射素子によって反射して前記入射瞳面に伝えられ、前記反射した光線は前記入射瞳面によって前記結像レンズ鏡胴に入射してパノラマ画像を結像することを特徴とするパノラマ撮影システム。
【請求項2】
前記環状入射面は、前記環状入射面の周縁のうち結像側に近接する第二円周縁をさらに含み、前記第一円周縁と前記第二円周縁との間の幅は均一であり、前記第一円周縁の直径は前記第二円周縁の直径より小さく、
前記環状反射面は、前記環状反射面の周縁のうち物側に近接する第四円周縁をさらに含み、前記第三円周縁と前記第四円周縁との間の幅は均一であり、前記第三円周縁の直径は前記第四円周縁の直径より小さく、
前記円状入射面の第二円周縁と前記円状反射面の第四円周縁とは、円環状の平面である連結面を通じて連結されていることを特徴とする請求項1に記載のパノラマ撮影システム。
【請求項3】
前記パノラマレンズ及び前記リレーレンズは、プラスチック製レンズであることを特徴とする請求項1又は2に記載のパノラマ撮影システム。
【請求項4】
前記リレーレンズは、正の屈折力を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のパノラマ撮影システム。
【請求項5】
前記リレーレンズは、正の屈折力を有するレンズであり、且つ対物側の光入射面及び結像側の光出射面を含み、
前記光入射面は、負の屈折力を有する表面であり、前記光出射面は、正の屈折力を有する表面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のパノラマ撮影システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−93760(P2012−93760A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232692(P2011−232692)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(503023069)鴻富錦精密工業(深▲セン▼)有限公司 (399)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】