説明

パリペリドンの精製方法

【課題】工業的規模で実現可能な、パリペリドンの簡単な効率的精製方法を提供すること。
【解決手段】パリペリドンを、塩酸塩のようなその塩を形成することにより精製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パリペリドン(paliperdone)を、塩酸塩のようなその薬学的に許容される塩を用いることにより、精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パリペリドン、すなわち、下記式(I):
【0003】
【化1】

【0004】
の(±)-3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンズイソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-9-ヒドロキシ-2-メチルプロパンジオール-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オンは、ベンズイソキサゾールに属する5-HT拮抗薬(antagonist)であり、統合失調症(schizophrenia)の治療に用いられる。パリペリドンは、米国特許第5,158,952号明細書から知られており、これは、下記スキームに従って、適切な塩基の存在下、溶媒中で、式(II)の3-(クロロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-9-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-a]-ピリミジン-4-オンを、式(III)の6-フルオロ-3-(4-ピペリジニル)-1,2-ベンゾイソキサゾールと反応させることによるその調製を開示している。
【0005】
【化2】

【0006】
米国特許第5,158,952号明細書に例示されている調製方法に従って得られる遊離塩基(free base)としてのパリペリドンは、化学的収率およびHPLC純度が非常に低い。従って、前記方法は、工業的規模での製造にあまり適していない。既知の調製方法は、通常、式(IV)のパリペリドンのN−酸化物および式(V)のカルバメートのような不純物をパリペリドンに混合させてしまう。遊離塩基としてパリペリドンを精製する方法を開示している国際公開第2008/021346号明細書は、これらの不純物を開示しており、これらは反応条件に従って変化し得る量で形成される。(IV)のN−酸化物の場合は、反応混合物からパリペリドンを単離する際の条件によって変化する量で得られる。
【0007】
【化3】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,158,952号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/021346号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
知られているように、精製の効率は、出発および最終パリペリドン多形体(polymorph)の結晶構造に依存し、その精製に用いられる異なる溶媒混合物へのパリペリドンの溶解度は、実際、その構造と共に変化する。
【0010】
パリペリドンに関するEMEA(European Medicines Agency)ウェブサイト( HYPERLINK "http://www.emea.europa.eu/humandocs/PDFs/EPAR/invega/H-746-en6.pdf" http://www.emea.europa.eu/humandocs/PDFs/EPAR/invega/H-746-en6.pdf)に提示されている文書の2/58頁に示されているように、水和形(hydrate form)および溶媒和形(solvate form)に加えて、I形およびII形と呼ばれるパリペリドンの2種の多形結晶形があり、I形が熱力学的に最も安定である。パリペリドンの固体多形の種類は数多く、しばしば、異なる結晶形の混合物として結晶化されるために、既知の方法では、遊離塩基複合体(free base complex)としての精製を工業的にも不可能としている。従って、工業的規模で実現可能な、パリペリドンの簡単な効率的精製方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
パリペリドンを水和塩基として調製し、続いてそれを既知のI形に転化することによるパリペリドン精製方法が、今回、見出された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】パリペリドン塩酸塩1:1(パリペリドン:酸)のXRPDスペクトルである。
【図2】パリペリドン塩酸塩1:1(パリペリドン:酸)のDSCサーモグラムである。
【図3】パリペリドン塩基水和物のXRPDスペクトルである。
【図4】パリペリドン塩基水和物のDSCサーモグラムである。
【図5】パリペリドン結晶I形のXRPDスペクトルである。
【図6】パリペリドン結晶I形のDSCサーモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(図面および分析方法の簡単な説明)
パリペリドンおよびパリペリドン塩酸塩の結晶形は、電位差滴定(potentiometric titration)および銀滴定(argentimetric titration)、X線粉末回折(XRPD:X-lay powder diffraction)、1H-NMR核磁気共鳴分光分析(1H-NMR Nuclear Magnetic Resonance spectrometry)および示差走査熱量分析(DSC:differential scanning calorimetry)により特徴付けられた。化合物の水含量(KF)は、カール・フィッシャー技術による滴定によって決められた。X線回折スペクトル(XRPD)は、Ital-Structures製のAPD-2000自動θ/θ粉末および液体回折計を用いて、下記操作条件下に収集した:CuKα線(λ=1.5418Å)、2θ角範囲3〜40°および刻み幅(step size)0.03°で走査、1秒間。1H-NMRスペクトルは、溶媒としてDMSO-d6を用いて、Varian Mercury 300スペクトロメーターを用いて得た。DSCサーモグラムは、Mettler-Toledo DSC 822e示差走査熱量計を用いて、下記操作条件下に得た:アルミニウムカプセル、10°/分の割合で30〜300℃の範囲、パージングガスとして窒素(80ml/分)。粒径は、良く知られているレーザー光散乱技術により、Malvern Mastersizer MS1インストルメントを用いて、下記操作条件下に決めた:
・300RF mmレンズ、レーザー光長2.4mm;
・SPAN 85(登録商品)1%を含むヘキサン(ACS試薬)10ml中に分散されたサンプル500mg、予備音波処理(pre-sonication)無し、攪拌速度2500rpm。
【0014】
図1は、パリペリドン塩酸塩1:1(パリペリドン:酸)のXRPDスペクトルである。
【0015】
図2は、パリペリドン塩酸塩1:1(パリペリドン:酸)のDSCサーモグラムである。
【0016】
図3は、パリペリドン塩基水和物のXRPDスペクトルである。
【0017】
図4は、パリペリドン塩基水和物のDSCサーモグラムである。
【0018】
図5は、パリペリドン結晶I形のXRPDスペクトルである。
【0019】
図6は、パリペリドン結晶I形のDSCサーモグラムである。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、パリペリドン、例えば粗パリペリドンを精製し、それを水和形で得るための方法であって、
a)水中で強プロトン酸とのパリペリドン1:1(パリペリドン:酸)付加塩を形成する工程、
b)そのように得られた固形物を回収する工程、
c)そのように得られたパリペリドン1:1(パリペリドン:酸)付加塩を水性溶媒中に含む分散液を形成する工程、
d)前記分散液を塩基で処理する工程、および
e)そのように得られたパリペリドン塩基水和物を回収する工程
を有する方法に関する。
【0021】
出発材料として用いられるパリペリドンは、米国特許第5,158,952号明細書に従って得られるような粗パリペリドンであることができる。
【0022】
工程a)によるパリペリドン付加塩は、例えば、強プロトン酸との付加塩、好ましくは、薬学的に許容される、典形的にはハロゲン化水素酸、好ましくは塩酸;または、硫酸もしくはスルホン酸、好ましくは、パラトルエンスルホン酸との付加塩であってよい。
【0023】
最も好ましくは、付加塩はパリペリドン塩酸塩である。
【0024】
パリペリドン付加塩は、例えば、水中の粗パリペリドンの懸濁液を、先に定義したような酸の濃厚水溶液で処理することにより得ることができる。
【0025】
そのように得られた固体パリペリドン付加塩は、濾過または遠心分離のような既知の技術を用い、任意に、続いて乾燥、好ましくは減圧下の乾燥を行うことにより、回収することができる。生成物は、好ましくは、ブフナーフィルターを通して濾過し、続いて、略室温〜約60℃の温度、好ましくは約45〜約55℃、より好ましくは約50℃で、減圧下に乾燥することにより回収される。
【0026】
固体パリペリドン付加塩は、99%以上、特に99.5%以上、より好ましくは99.9%以上の純度のパリペリドン塩が得られるまで、水から、または、C3-C6ケトン、典形的にはアセトンまたはメチルエチルケトン、より好ましくはアセトン;C1-C6アルカノール、例えば、メタノール、エタノールもしくはイソプロパノール;非環式エーテル、例えば、ジエチルエーテル;および環式エーテル、例えば、テトラヒドロフランもしくはジオキサンからなる群より選択される少なくとも一種の溶媒、好ましくは一種または二種の溶媒と水とを含む混合物から、一回または二回以上、好ましくは一回または二回再結晶することにより、必要に応じて精製することができる。
【0027】
再結晶は、例えば、約70℃から溶媒沸点までの温度、好ましくは約90℃に混合物を加熱し、次に、反応混合物を約0〜約20℃の温度、好ましくは約0〜約5℃に冷却することにより行うことができる。
【0028】
工程a)における強プロトン酸が塩酸である場合、このように得られるパリペリドン塩酸塩は、水に貧溶性の結晶性固形物であり、溶融ピークが276±2℃である図2に示すようなDSCサーモグラム、および、最も強い回折ピークが、2θ中で9.9;10.3;11.4;12.1;12.7;14.7;15.4;16.1;19.1;19.8;20.9;24.7;27.4±0.2°にある図1に示すXRPDスペクトルを特徴とする。
【0029】
このように得られるパリペリドン塩酸塩結晶の粒径は、約25μm〜約250μmのD50の値を特徴とする。D50は、粒子サンプルの50%(体積基準)が特定の値以下の直径を有するような粒子直径である。必要であれば、この値は、マイクロナイゼーション(micronisation)または微粉砕(fine grinding)により低下させることができる。
【0030】
電位差酸−塩基滴定および銀滴定によれば、このように得られるパリペリドン塩酸塩は、パリペリドンと、当量の塩酸との1:1付加塩(パリペリドン一塩酸塩)である。塩化物の滴定量は、7.8%(一塩酸塩の理論値は7.6〜8.0%)である。同様に、水酸化ナトリウムを用いるその電位差滴定は、等価点および水酸化ナトリウムの化学量論的消費を示す。
【0031】
パリペリドン塩酸塩の前記結晶形は、新規であると共に、本発明のさらなる目的である。
【0032】
工程c)による、水性溶媒中のパリペリドン1:1付加塩の分散液は、例えば、アセトンまたはメチルエチルケトンのようなC3-C5ケトン、およびメタノールまたはイソプロパノールのようなC1-C5アルカノール、好ましくはイソプロパノール、からそれぞれ独立して選択される、一種または二種以上、好ましくは一種または二種の水混和性の溶媒と水とを含む混合物からなる水性溶媒中に、先に得られた固形物を懸濁させることにより調製することができる。この水と溶媒との混合物は、以下、「水性溶媒」と呼ぶ。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、工程c)で先に報告されたパリペリドン精製プロセスは、1:1付加塩を強プロトン酸で処理して、1:2(パリペリドン:酸)付加塩の溶液を得ることを含むことができる。
【0034】
1:2付加塩[パリペリドン:酸]の溶液は、例えば、1:1(パリペリドン:酸)付加塩の水分散液を先に定義された強プロトン酸で処理することにより得ることができる。1:1(パリペリドン:酸)付加塩を形成するために用いられるものと同じ酸が、好ましく用いられる。
【0035】
1:1または1:2付加塩の前記分散液を、次に、工程d)に従って、塩基で処理する。塩基は、例えば、無機塩基、典形的には、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウムまたは水酸化バリウムのようなアルカリ土類金属水酸化物、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化バリウム;または、ナトリウムもしくはカリウムエトキシドまたはtert-ブトキシドのようなC1-C6アルコキシド;またはtert-アミンのような有機塩基、例えば、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン、であってよい。より好ましくは、塩基は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0036】
このように得られる固体パリペリドン水和物は、濾過または遠心分離のような既知の技術により回収することができ、必要に応じて、続いて、乾燥、好ましくは減圧下に乾燥することができる。好ましくは、生成物は、濾過により、続いて、略室温〜約60℃の温度、好ましくは約45〜約55℃、より好ましくは約50℃で、減圧下に乾燥することにより回収される。
【0037】
このように得られる固体パリペリドン塩基水和物は、略二水和物として定義できるように、水含量が約7.0〜約8%、好ましくは約7.3〜約7.5%である。
【0038】
このように得られるパリペリドン塩基水和物は、溶融ピークが182.5±2℃である図4に示すようなDSCサーモグラムにより特徴付けられる。前記水和形は、最も強い回折ピークが2θ中で5.1;10.3;10.9;12.1;12.7;13.6;14.6;15.4;16.2;19.7;20.7;23.8;25.1;26.0;27.3±0.2°にある図3に示すようなXRPDスペクトルを有し、水和形がそこから誘導される付加塩に実質的に等しい純度を有し、それにより、医薬品への規制要求を満たす。
【0039】
必要に応じて、このように得られるパリペリドン塩基水和物は、米国特許第5,158,952号明細書の実施例4に従って得られる、より安定なI形の無水結晶性多形のような別の結晶形に転化することができる。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、パリペリドン塩基水和物は、
−パリペリドン水和物を、先に定義したような水性溶媒中に、または、アセトンまたはメチルエチルケトンのような直鎖または分岐C3-C8ケトン、およびC1-C5アルカノール、好ましくはイソプロパノールから選択される有機溶媒中に、約70℃〜溶媒沸点の温度、好ましくは約90℃で溶解し、
−続いて、反応混合物を、約0〜約20℃の温度、好ましくは約0〜約5℃の温度に冷却し、そして
−そのように得られた固形物を回収する、
ことを含むプロセスにより、パリペリドン無水結晶I形に転化することができる。
【0041】
より好ましくは、前記溶媒は、水/アセトン混合物または、アセトンである。
【0042】
固形物は、既知の方法により回収し、室温〜約60℃の温度、好ましくは約45〜約55℃、より好ましくは約50℃で乾燥することができる。
【0043】
本発明のさらなる目的は、
−水中に強プロトン酸との1:2[パリペリドン:酸]付加塩を含む溶液を形成する工程;
−C1-C5アルカノールおよび直鎖または分岐C3-C8ケトンから選択される有機溶媒中に溶解された塩基で、前記溶液を処理する工程、
−そのように得られた無水パリペリドン結晶I形を回収する工程、
を含む、無水パリペリドン結晶I形を調製する方法である。
【0044】
先に定義したような強プロトン酸との1:2[パリペリドン:酸]付加塩の溶液は、例えば、先に報告したように形成することができる。
【0045】
塩基は、例えば、先に定義したような有機または無機塩基、好ましくは、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムまたは重炭酸アンモニウム、より好ましくは、トリエチルアミンであってよい。
【0046】
有機溶媒は、好ましくは、C1-C5アルカノール、より好ましくはメタノールである。
【0047】
溶液は、約0℃〜約30℃の温度、好ましくは約20℃〜約30℃の温度で、塩基で処理することができ、続いて、反応混合物を、約0℃〜約20℃の温度、好ましくは約0℃〜約5℃の温度に冷却することができる。
【0048】
無水パリペリドン結晶I形は、濾過のような既知の方法を用い、続いて、室温〜約60℃の温度、好ましくは約45〜約55℃、より好ましくは約50℃で乾燥することにより、回収することができる。
【0049】
多形パリペリドンI形は、溶融ピークが187±2℃である図6に示すようなDSCサーモグラム、および、最も強い回折ピークが、2θ中に7.6;8.3;10.4;12.6;13.3;13.9;14.6;15.1;16.3;17.6;18.7;19.4;20.2;20.7;22.2;24.8;25.2±0.2°にある図5に示すXRPDスペクトルを特徴とする、水に貧溶性の結晶性固形物である。
【0050】
このように得られる結晶性多形パリペリドン結晶のサイズ(大きさ)は、約25μm〜約1000μmのD50の値を特徴とし、このD50は、粒子サンプルの50%(体積基準)が特定の値以下の直径を有するような粒子直径を示す。必要に応じて、この値は、マイクロナイゼーション(micronisation)または微粉砕(fine grinding)により低下させることができる。
【0051】
このように得られる結晶性多形パリペリドンI形は、純度が99.5%以上、より好ましくは99.9%以上である。
【0052】
本発明のさらなる目的は、図2に示すようなDSCサーモグラムおよび図1に示すようなXRPDスペクトルを有するパリペリドン塩酸塩を、有効成分として、および薬学的に許容される賦形剤および/またはビヒクル(担体)を含む医薬組成物である。この医薬組成物は、既知の方法により調製することができる。
【0053】
本発明の好ましい態様によれば、パリペリドン、例えば粗生成物としてのパリペリドンは、米国特許第5,158,952号明細書に開示された合成経路を通して、しかし、溶媒としてメタノールを用い、トリエチルアミンの存在下に反応を行って、得ることができる。実際、驚くべきことに、式(III)の化合物の、式(II)の化合物によるアルキル化反応において塩基としてトリエチルアミンを用いると、減圧下に反応溶媒を蒸発させることにより単離され、収率が95%以上、好ましくは96.5%以上である(HPLC滴定)、粗パリペリドンが生成されることが分かった。
【0054】
従って、本発明のさらなる目的は、メタノール中でトリエチルアミンの存在下に、ここに定義される式(III)で示される化合物をここに定義される式(II)で示される化合物でアルキル化することを含む、パリペリドンの調製方法である。
【実施例】
【0055】
以下の実施例により本発明を説明する。
実施例1
3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンズイソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-9-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-a]-ピリミジン-4-オン塩酸塩(パリペリドン塩酸塩)の合成
6-フルオロ-3-(4-ピペリジニル)-1,2-ベンズイソキサゾール塩酸塩(300g、1.17モル)、3-(クロロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-9-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(343g、1.40モル)およびトリエチルアミン(272g、2.69モル)を、窒素雰囲気下に3000ml反応器においてメタノール(1.5L)に懸濁させ、反応混合物を、還流温度で18〜20時間加熱する。生成物への転化はHPLC滴定により調べ、溶液中収率96.5%を得る。混合物を濃縮して残渣を得る。そのように得られた生成物は、パリペリドン結晶I形の特徴である図5に示すXRPDスペクトルおよび図6に示すDSCサーモグラムを有する。
【0056】
混合物を、脱塩水(1.5L)および36.5%塩酸(113g、1.13モル)とともに用い、pH3〜4の溶液を得る。次に、固形物が再沈殿し、混合物を0℃に冷却し、濾過する。固形物を、0〜5℃に冷却された脱塩水で洗い(2×150ml)、次に、0〜5℃に冷却されたアセトンで洗う(3×200ml)。固形物を、炉内で減圧下に50℃の温度で16〜18時間乾燥する。パリペリドン塩酸塩451gを得、その電位差滴定が99.9%、銀滴定が7.8%、HPLC純度が99.2%、および合計収率が90%である。生成物は、図1に示すXRPDスペクトル、および図2に示すDSCサーモグラムを有する。
【0057】
実施例2
パリペリドン塩酸塩の精製
HPLC純度が98.8%であるパリペリドン塩酸塩(20.0g、43.2ミリモル)、例えば実施例1に開示の手順と同様にして得られたものを、250mlフラスコ中、室温で、不活性雰囲気下、アセトン(30ml)と脱塩水(30ml)からなる溶媒混合物中に懸濁させる。混合物を沸点まで加熱し、固形物が完全に溶解するまでこの温度を維持する。次に、混合物を室温までゆっくり冷却し、次に、少なくとも1時間、0〜5℃に冷却する。懸濁固形物を濾過し、0〜5℃の温度に冷却されたアセトンで洗い(3×10ml)、次に、炉内にて50℃で一晩乾燥する。生成物18.0gが得られ、そのHPLC純度が99.7%であり結晶収率が90%である。生成物は、図1に示すXRPDスペクトル、および図2に示すDSCサーモグラムを有する。
【0058】
実施例3
パリペリドン塩酸塩の精製
HPLC純度が99.4%であるパリペリドン塩酸塩(38.3g、82.7ミリモル)、例えば実施例1に開示の手順と同様にして得られたものを、250mlフラスコ中、不活性雰囲気下、脱塩水(110ml)に加え、混合物を約90℃の温度に加熱し、溶媒が完全に溶解するまでこの温度を維持する。次に、混合物を室温まで約3時間冷却し、さらに、約0〜約5℃に少なくとも1時間冷却する。固形物を濾過により回収し、0〜5℃に冷却された水で洗う(2×25ml)。炉内で温度50℃で乾燥後、HPLC純度99.9%および収率96%で生成物36.7gを得る。生成物は、図1に示すXRPDスペクトル、および図2に示すDSCサーモグラムを有する。
【0059】
実施例4
パリペリドン塩基水和物の沈殿
実施例1、2または3から得られるパリペリドン塩酸塩(300g、0.620mol)を、窒素雰囲気下に維持された2000mlフラスコ中、室温で、脱塩水(900ml)中に塩酸(68.1g、0.681mol)を含む36.5%溶液に添加する。そのように得られた溶液に、脱色性木炭(15g)を加え、次に、15〜20分間攪拌する。木炭を、パーライトパネルを通して濾過することにより除去する。透明になった溶液を、イソプロピルアルコール(1200ml)と水酸化ナトリウムの30%水溶液(250g、1.86モル)を含む3000ml反応器に、ゆっくり添加する。添加中、温度を10℃より低く維持し、沈殿の形成が観察される。添加完了後、混合物を約1時間冷たく保ち、次に濾過する。固形物を、水/イソプロパノールの1:1混合物で洗い(3×150ml)、次に、炉内で、50℃の温度で一晩乾燥する。生成物258gが得られ、その電位差滴定が94.7%およびKFが7.5%であり、HPLC純度が99.9%であり、沈殿収率が93%である。生成物は、図3に示すXRPDスペクトル、および図4に示すDSCサーモグラムを有する。
【0060】
実施例5
パリペリドン水和物のパリペリドン結晶I形への転化
実施例4で得られたパリペリドン塩基水和物を、不活性雰囲気中に維持された10リッター反応器において、アセトン(6.0L)と脱塩水(2.0L)からなる溶媒混合物中に懸濁させる。混合物を、固形物が完全に溶解するまで、沸点に加熱し、次に、室温まで一晩自然冷却させる。混合物を0〜5℃の温度に少なくとも2時間冷却し、固形物を濾過し、0〜5℃に冷却されたアセトンで洗う(3×250ml)。固形物を炉内で減圧下に温度50℃で乾燥し、電位差滴定が99.6%、KFが0.04%およびHPLC純度が99.9%である生成物180gを得る。結晶収率は92%である。生成物は、図5に示すXRPDスペクトル、および図6に示すDSCサーモグラムを有する。
【0061】
実施例6
結晶性パリペリドンI形の沈殿
パリペリドン塩酸塩(30g、0.062モル)を、室温で、不活性雰囲気下に維持されたフラスコ内において、脱塩水(150ml)中に塩酸(6.8g、0.068モル)を含む36.5%溶液に添加する。そのように得られた溶液に、脱色性木炭(1.5g)を加え、次に、15〜20分間攪拌する。木炭を、パーライトパネルを通して濾過することにより除去する。透明になった溶液を、メタノール(150ml)中にトリエチルアミン(19g、0.19モル)を含む溶液にゆっくり添加する。添加中、温度を30℃より低く維持し、沈殿の形成が観察される。添加完了後、混合物を0〜5℃の温度に約1時間冷却し、濾過する。固形物を、水/メタノールの1/1混合物で洗い(3×15ml)、次に、炉内で、50℃の温度で一晩乾燥する。生成物25gが得られ、その電位差滴定が99.5%であり、KFが0.06%であり、HPLC純度が99.9%である。生成物は、図5に示すXRPDスペクトル、および図6に示すDSCサーモグラムを有する。
【0062】
実施例7
パリペリドン結晶I形の調製
KFが7.3%であるパリペリドン水和物(2.7kg、5.8モル)を、窒素で不活性にされた200リッター反応器において、アセトン(110L)に懸濁させ、混合物を還流温度で2時間加熱する。混合物を、温度0℃に約3.5時間冷却する。固形物を濾過し、0〜5℃に冷却されたアセトンで洗う(2×2.5L)。生成物を、減圧下に50℃で18〜20時間加熱して乾燥させる。生成物2.5kgが得られ、その収率が96%であり、電位差滴定が99.8%であり、KFが0.05%であり、HPLC純度が99.9%である。生成物は、図5に示すXRPDスペクトル、および図6に示すDSCサーモグラムを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パリペリドンを精製し、それを水和形で得るための方法であって、
a)水中で強プロトン酸とのパリペリドン1:1(パリペリドン:酸)付加塩を形成する工程、
b)そのように得られた固形物を回収する工程、
c)そのように得られたパリペリドン1:1(パリペリドン:酸)付加塩を水性溶媒中に含む分散液を形成する工程、
d)前記分散液を塩基で処理する工程、および
e)そのように得られたパリペリドン塩基水和物を回収する工程
を有する方法。
【請求項2】
強プロトン酸が、ハロゲン化水素酸、硫酸およびスルホン酸からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性溶媒が、水と、一種または二種以上の水混和性溶媒を含む混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水混和性溶媒がC3-C5ケトンまたはC1-C5アルカノールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程c)が、さらに、請求項2に定義される強プロトン酸との1:1付加塩を処理して、1:2(パリペリドン:酸)付加塩を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程c)で得られた分散液または請求項5による1:2付加塩の溶液を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、C1-C6アルコキシドおよびtert-アミンからなる群より選択される塩基で処理する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
パリペリドン水和物を、請求項3に定義される水性溶媒に、または直鎖もしくは分岐C3-C8ケトンおよびC1-C5アルカノールから選択される有機溶媒に、約70℃〜溶媒沸点の温度で溶解させる工程;
続いて、反応混合物を約0〜約20℃の温度に冷却する工程;および
そのように得られた固形物を回収する工程
を含むプロセスにより、続いて行われるパリペリドン塩基水和物を結晶I形に転化することを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
溶媒が水/アセトン混合物、またはアセトンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水中に強プロトン酸との1:2付加塩[パリペリドン:酸]を含む溶液を形成する工程;
前記溶液を、C1-C5アルカノールおよびC3-C8ケトンから選択される有機溶媒に溶解された塩基で処理する工程;および
そのように得られた無水パリペリドン結晶I形を回収する工程
を含むプロセスにより、続いて行われるパリペリドン塩基水和物を結晶I形に転化することを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
強プロトン酸が請求項2のように定義される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
塩基が請求項6のように定義される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
有機溶媒がメタノールである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
最も強い回折ピークが2θ中で9.9;10.3;11.4;12.1;12.7;14.7;15.4;16.1;19.1;19.8;20.9;24.7;27.4±0.2°にある図1に示すようなXRPDスペクトルを有するパリペリドン塩酸塩の結晶形。
【請求項14】
溶融ピークが276±2℃である図2に示すようなDSCサーモグラムを有する、請求項13に記載の結晶形。
【請求項15】
メタノール中でトリエチルアミンの存在下に、式(III):
【化1】

で示される化合物を、式(II):
【化2】

で示される化合物でアルキル化することを含んでなる、パリペリドンの調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−254692(P2010−254692A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97492(P2010−97492)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(507161569)ディフアルマ フランチス ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (11)
【氏名又は名称原語表記】DIPHARMA FRANCIS S.R.L.
【Fターム(参考)】