説明

パルスアーク供給源を作動させる方法

本発明は、絶縁レイヤを堆積する方法及び低温コーティングの方法に関するものである。このために、アーク供給源のターゲット表面上において点火又は作動する電気スパーク放電に対して、直流とパルス又は交流電流によって同時にエネルギー供給している。又、本発明は、ターゲットが、少なくとも1つのパルス高電流源(18、18’)及び別の電源(13’、18’’)、或いは、組み合わせ回路技術によって設計された電源(21、21’、22)である電源に接続されているアーク供給源に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1、8、及び9の前文に記載されているアーク供給源を作動させる方法と、請求項34、43、及び45の前文に記載されているアーク供給源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アーク供給源のパルシングについては、既に従来技術において比較的に長期にわたって知られており、例えば、国際特許公開第02/070776号(WO 02/070776)は、TiSiNを含む様々な超硬レイヤを堆積するためのスパーク源のパルシングについて、非常に一般的な形態で記述している。
【0003】
国際特許公開第03/057939号(WO 03/057939)は、パルス高電圧源によってスパークを点火し、パルス高電流源によってスパークにエネルギーを供給するスパーク源について記述している。この場合には、スパークの動作は、不連続的である。初期材料は、金属導電陰極、導電合金、更には、炭素、並びに/又は気化可能な半導体である。しかしながら、この文献に記述されているアーク供給源は、ターゲット本体の非常に複雑な形状に起因し、特に、加工が困難な陰極材料の場合に、製造が困難であり、且つ、運転に費用を所要する。
【0004】
米国特許第6,361,663号(US6,361,663)は、導電材料から構成された陰極を有するアーク供給源について記述しており、これは、パルス又は変調パルス形態において動作しており、ピーク電流が最大5kAであって、ベース電流が、例えば、100Aである。このアーク供給源も、磁気トンネルと、完全に陰極によって取り囲まれた陽極と、を有するその設計の結果として、製造が困難であり、且つ、運転に費用を所要する。
【0005】
陰極スパーク気相堆積を利用した電気絶縁レイヤの堆積については、既に知られており、例えば、米国特許第5,518,597号(US5,518,597)は、反応プロセスを使用したこのようなレイヤの製造法について記述している。この場合には、コーティング対象表面が、アクティブなターゲット表面(これは、この場合には、陰極の気相堆積表面と同義的に使用されている)に対する光学リンクの外部に配置されている。排気した後に、不活性ガスを使用してプロセス圧力を設定する。コーティングプロセスにおいては、コーティング対象表面のすぐ近傍に(正確に表現すると、動作の際に消費されるような速度においてのみ)酸素を導入しており、安定した圧力を維持可能である。これは、ターゲットの酸化を低減すると共にスパーク放電を安定化させるには、基板の近傍における反応ガスの導入が重要であるという従来技術のその他の文献における考え方とも合致している。陽極上における望ましくない絶縁レイヤ形成の結果として生じるプロセスの中断を回避するための追加的な対策として、米国特許第5,518,597号(US5,518,597)においては、陽極を、好ましくは、約1200℃の温度に維持すると共に、費用を所要する(即ち、高価な)高融点金属によって製造しなければならない。
【0006】
これらの方法は、いずれも、気化した1つ又は複数の材料と迅速に反応して絶縁レイヤを形成する反応ガスを使用する際には、一方においては、ターゲット又は陽極のアクティブな表面を汚染することなく、且つ、他方においては、望ましくない小滴形成を回避するべく、特殊な対策を施さなければならないという共通の特徴を具備している。陽極の加熱と、前述のコーティング対象表面のすぐ近傍における反応ガスの供給及び正確な調量に加えて、このような対策には、高比率の不活性ガスによる反応ガスの希釈が含まれている。
【0007】
この場合には、ターゲットの表面が金属的に露出するか又はその導電率が少なくとも半導体の導電率に対応していることを保証するべく、特定の配慮を施さなければならない。アークスポットの領域内における半導体の正の温度勾配は、明らかにスパークの燃焼を許容するべく十分良好な導電率を結果的にもたらすが、これと関連したスパークの連続燃焼傾向の増大は、通常、金属導電ターゲット表面の場合よりも大きなスプラッタ形成に結び付く。これに関係した一連の選択肢についても従来技術において周知である。例えば、前述のように、ターゲット表面に対する光学接続ラインの外部に供給源を配置可能であるが、この結果、ターゲット材料の収率とコーティング速度が大幅に制限されることになる。追加的に又は単独で磁界を印加することにより、電気的に中性の小滴を衝突表面上にトラップしつつ、イオン化された気相成分のみをコーティング対象表面に誘導可能である。この例が、湾曲磁気フィルタ、磁気レンズ、及びこれらに類似したものである。
【0008】
スプラッタを低減するための更なる方法は、例えば、レーザービームによって制御された状態において、電流源を短く中断することにより、アクティブなターゲット表面上において、毎回、異なる地点にスパークをリストライクするというものである。この方法は、特に、炭素の陰極スパーク堆積の分野において使用されているが、金属から構成された合金の場合にも使用されている。
【0009】
これらの対策のすべて、並びに、同様に周知であるこれらの対策の組み合わせは、相当な技術的複雑性の増大及び/又はコーティング速度における大幅な減少という共通の特徴を具備している。しかしながら、絶縁コーティングをターゲット表面上に形成する場合には、前述の対策をもってしても、安定したプロセスを実現することがまだできていない。
【発明の開示】
【0010】
従って、本発明の1つの目的は、複雑な更なる対策を伴うことなしに、且つ、安定したプロセス状態において、従来のアーク供給源(アーク源)を使用して絶縁レイヤを生成可能である方法を提供することにある。
【0011】
この目的は、請求項1、8、及び9に記載されている方法と、請求項34、43、及び45に記載されているアーク供給源によって実現される。更なる本発明の実施例については、従属請求項に記述されており、これらは、個別に使用することも可能であり、或いは、技術的に有意である場合には、1つに組み合わせることも可能である。
【0012】
驚いたことに、ターゲット表面が絶縁レイヤ(層)によって少なくとも部分的に覆われている場合にも、パルス電流又は交流電流がその上部に重畳された直流を同時印加することにより、安定したアークプロセスを実現可能であることを証明することができた。
【0013】
一例として、更なる追加的な対策を伴うことなしに、純粋な酸素雰囲気中において数時間にわたってアルミニウムターゲットを作動させることが可能であった。このプロセスにおいては、ターゲット上の電圧の上昇が観察されたが、この上昇は、数分以内に安定化し、アークプロセスの中断や不安定化には結び付かなかった。このプロセスにおいてターゲットの前に直接配置された基板上に堆積された酸化アルミニウムレイヤは、同一条件において堆積された金属アルミニウムレイヤと比較して、小滴の付着によって生じる表面欠陥の完全に予想外の大幅な低減を示した。又、純粋な酸素又は純粋な窒素雰囲気中において、クロム又はチタンのターゲット、並びに、場合によっては、50%を上回る高い珪素含有量を有するこれらの材料から構成された金属ターゲットを作動させることにより、同様の結果を実現可能であった。いずれの場合にも、表面上に完全な絶縁コーティングが形成された後に、(場合によっては、プロセスの中断の後にも)、反応ガス雰囲気中において、問題を伴うことなしに、ターゲットをリストライク可能であると共に、小滴形成を低減しつつ作動させることが可能であった。このパルスモードにおいては、純粋な反応ガス雰囲気中における反応ガスによる又はそのターゲット表面との反応によるターゲット表面のコーティングを伴う動作が、小滴の形成が低減された改善されたレイヤの品質に結び付いた。
【0014】
絶縁コーティングを伴わないターゲットの動作と比較して、反応ガスの比率を、絶縁レイヤコーティングを伴わない動作と比べて供給源電圧が少なくとも10%(但し、好ましくは、少なくとも20%)だけ上昇するように少なくとも十分高く選択する必要があることが判明した。この供給源電圧における上昇は、基本的に、使用する反応ガス及びターゲット材料によって左右される。この場合には、多数の表面及び材料固有の反応パターン及び制約に起因して、直接的な数学的関係を生成することが直接的にはできないが、ターゲット表面上においてターゲット材料及び反応ガスから製造される1つ又は複数の化合物の絶縁特性が高いほど、通常、供給源電圧における差が大きくなる。
【0015】
この場合に、反応ガスとしては、一例として、酸素、窒素、アセチレン、メタン、テトラメチルシランなどのシラン、トリメチルアルミニウム、ジボラン、或いは、原則的に、酸素、窒素、珪素、硼素、又は炭素を含むすべてのガスが好適である。この方法は、高反応ガスフローを有するプロセスに特に適しており、この場合に、反応ガスの比率は、不活性ガスの比率を上回るように選択され、例えば、70%を上回るように(特に、90%を上回るように)選択される。但し、前述のように、純粋な雰囲気(即ち、反応ガスを100%含む雰囲気)中においてプロセスを有利に実行することも可能である。
【0016】
原則的に、この場合には、ターゲット材料は、前述のガスがターゲット表面上において前述のように機能することにより、例えば、酸化物、窒化物、硼化物、珪化物、炭化物、又は以上の化合物の混合物などの対応する絶縁コーティングを形成する任意の材料であってよい。但し、周期律表の第IV、V、VI族の遷移金属又はアルミニウム、硼素、炭素、又は珪素、或いは、TiAl、CrAl、TiAlCr、TiSi、TaSi、NbSi、CrSi、WCなどの前述の材料の合金又は化合物などの材料は、硬いレイヤ、障壁レイヤ、及び装飾レイヤを生成するのに特に適している。但し、この方法は、タングステン、タンタル、ニオビウム、及びモリブデンなどの高融点を有する純粋な材料の相対的に単純な気相堆積に使用することも可能である。
【0017】
特に酸素を含む雰囲気中においてターゲットを作動させる場合には、米国特許第6,602,390号(US6,602,390)に開示されているように、スプラッタを更に低減するべく、ターゲット材料を単一結晶相から構成することが有利であろう。
【0018】
直流とパルス電流又は交流電流によるアーク供給源の同時作動における更なる利点は、焼入れ鋼、青銅及び真鍮ベース上における析出合金、アルミニウム−マグネシウム合金、プラスチック、及びその他のものなどのコーティング温度の影響を受けやすい加工対象品をコーティングする際に得られる。1つ又は複数のアーク供給源が保持電流(これは、導電アーク供給源の安定した動作が単純なDC電源によって依然として可能である最小電流のことである)の近傍において直流で動作している場合には、コーティング対象の加工対象品上における温度負荷は、明らかに小さいが、同時に、コーティング速度が、産業用のアプリケーションとしては、不満足なものとなる。保持電流又は保持電力の値は、この場合には、ターゲット材料、アーク供給源の特性、及び放電の動作(例えば、これが、不活性又は反応ガスの追加を伴って又は伴うことなしに真空中において動作するかどうか)によって左右されることになる。例えば、金属露出表面、並びに、WC、TiN、又はCrNなどの化合物によれば、低電流における安定した動作を保証するための十分な導電率が提供されている。黒鉛又は珪素ターゲットは、この場合には、限界のケースを形成しており、この理由は、一方において、これらの導電率が、DCアークによって気相堆積するのに明らかに依然として十分なものではあるが、他方において、これらは、スパークが局所的に燃焼する深刻な傾向を有しており、この結果、プラズマ変動と深刻な小滴形成に結び付くことになるためであり、この理由から、例えば、黒鉛ターゲットは、最近では、好ましくは、パルスされた形態において動作している。
【0019】
対照的に、供給源がDC保持電流の近傍において動作しており、且つ、パルス電流がその上部に同時に重畳されている場合には、驚いたことに、速度を大幅に増大可能であるのみならず、匹敵する速度におけるDCコーティングと比較し、温度負荷を低く維持可能であることが判明した。DC成分は、この場合には、有利には、保持電流又は保持電力の100〜300%(好ましくは、100〜200%)に設定されている。
【0020】
後程詳述する供給源の場合には、このような保持電流のパーセンテージは、30〜90A(好ましくは、30〜60A)の範囲の電流フローのDC成分に対応している。この場合には、原則的に、アーク供給源は、プロセスガスを伴うことなしに動作可能であるが、反応ガスのみ、不活性ガスのみ、又は反応ガス及び不活性ガスの混合物を含むプロセスガスを有することが好ましい。
【0021】
この場合には、原則的に、すべての導電及び半導体材料をターゲット材料として使用可能であるが、前述のものが好ましい。
【0022】
この場合には、既知の方式において、様々な電流成分を印加及び生成可能である。例えば、直流成分は、直流ジェネレータによって生成可能であり、パルス又は交流電流成分は、パルス又は交流電流ジェネレータによって生成可能であって、これらの2つのジェネレータは、アーク供給源と少なくとも1つの陽極又は接地の間において、並列又は直列に接続可能である。
【0023】
別の選択肢は、重畳及び同期した形態において同様にスイッチング及び動作するパルス又は交流電流ジェネレータによって直流及びパルス電流成分を生成するというものである。更には、且つ、最後に、二次又は一次側においてクロッキングされた単一の電流ジェネレータにより、直流及びパルス電流成分を生成することも可能である。
【0024】
このような手順は、例えば、損耗抵抗力に関連した特定の要件が適用される加工対象品及びその表面に絶縁又は装飾特性を具備することが意図されている加工対象品をコーティングする必要がある場合に産業アプリケーションにおいて特に興味深いものである。このような方法が特に適しているレイヤの例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロム、窒化クロム、酸窒化クロム、酸化アルミニウムクロム、窒化アルミニウムクロム、酸窒化アルミニウムクロム、アルミニウムクロムオキシカルボナイトライド(aluminumchromiumoxycarbonitride)、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化珪素アルミニウム、窒化珪素アルミニウム、酸窒化珪素アルミニウム、窒化珪素チタン、酸窒化珪素チタン、窒化珪素タンタル、酸化タンタル、酸窒化タンタル、窒化珪素タングステン、窒化珪素ニオビウム、炭化チタン、炭化タングステン、炭化珪素タングステン、又は以上の材料の合金又は化合物である。
【0025】
前述の材料は、単一のレイヤ、或いは、変化する基本組成、化学量論、及び結晶配向を有する一連の複数のレイヤとして堆積可能であり、この場合に、個々のレイヤ要素のレイヤの厚さは、数ナノメートル〜数マイクロメートルの間において、必要に応じて調節可能である。更には、当業者であれば認知するように、前述のレイヤの以前に、例えば、金属又は窒化物の接着レイヤ又は様々な化合物から構成されたマッチングレイヤ(例えば、加工対象品の基板材料からレイヤ材料への徐々に変化する遷移を実現するもの)を堆積することも可能である。既知の接着レイヤは、例えば、Cr、Ti、CrN、又はTiNである。マッチングレイヤについては、例1に列挙されている。
【0026】
更には、このような方法においては、DC、パルス、又は交流バイアスを有利に印加可能であり、且つ、必要に応じて、これを供給源のパルス又は交流電流ジェネレータと同期化している。
【0027】
この場合には、少なくとも1つの不活性ガス及び少なくとも1つの反応ガスを交互に変化させて追加することにより、或いは、加工対象品表面に対して直角に少なくとも2つの反応ガスを交互に追加することにより、レイヤ組成の変化と、従って、レイヤ組成の必要に応じて徐々に変化する又は段階的に変化するプロファイルを有するマルチレイヤシステムを既知の方式において堆積可能である。このためには、同一又は異なるターゲット材料を有する複数の供給源を使用可能である。
【0028】
前述の方法は、供給源を使用して加工対象品の表面をエッチングする際にアーク供給源を作動させるべく、同様に有利な方式で使用することも可能であり、この理由は、この場合には、金属ターゲット表面の場合よりも小滴の程度が大幅に低下した状態で表面がコーティングされるためである。この場合には、DC、パルス、又は交流バイアスも、加工対象品に対して印加されるが、これは、一般的に、コーティングにおいて印加されるバイアスよりも相当に高くなっている。この場合には、例えば、−50〜−2000V(好ましくは、−200〜1500V)の基板電圧を設定可能である。エッチングによる腐食を増大させるべく、一例として、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、酸素、窒素、水素、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)、又はハロゲンを含む化合物などの成分を含むエッチングガスを更に導入可能である。
【0029】
前述の方法のいずれにおいても、パルス幅、電流パルス、電流パルスの大きさを設定することにより、又はデューティ比率により、或いは、これらのパラメータの組み合わせにより、コーティング速度及び加工対象品内に導入されるエネルギーを適合又は調節可能である。更なる選択肢は、DC源の電流を増大させるというものであるが、これは、例えば、低温のプロセスには、あまり適していない。
【0030】
このようなコーティング又はエッチング方法に適した加工対象品は、具体的には、鋼及び(銅及び鉛青銅などの)構造金属、真鍮、及び(アルミニウム−マグネシウム合金などの)特殊金属、硬金属、(窒化硼素などの)セラミック材料(特に、CBN)、サーメット化合物から構成された工具及びコンポーネント、並びに、ダイアモンド又はセラミック表面が少なくとも部分的に提供されている対応した加工対象品を含んでいる。
【0031】
このような方法の更なる適用分野は、珪素又はその他の半導体材料から構成された加工対象品のコーティングである。
【0032】
前述のパルスモードにおけるコーティングは、相対的に低周波数又は中間周波数のDC基板バイアス又はDCパルス基板バイアスが有意ではない基板の絶縁にも適していることが判明した。
【0033】
キーワードの形態において要約すれば、前述の方法を使用することにより、次のような更なる有利な効果を実現可能である。
【0034】
1.スプラッタの形成を伴うことなく、レイヤの完全な酸化/反応を防止する、スパーク気相堆積によって絶縁レイヤを生成する安定したプロセス。
【0035】
2.最初に、完全に汚染されたスパークターゲットによって動作可能である。完全に汚染されたモード又は純粋な反応ガス雰囲気中において動作することにより、反応性、即ち、酸化アルミニウムを堆積させる際の例えば酸素などの利用可能な反応成分を増大させ、これにより、相対的に大きなレイヤ成長を実現可能である。
【0036】
3.ターゲットと反応エリアの分離における局所的又は圧力ステージも不要であり、スプラッタとイオン化蒸気の複雑な分離も不要である。
【0037】
4.追加の磁界による支援を伴うことなしに、スパークの誘導を実行可能である。
【0038】
5.汚染されたターゲットの場合にも、スプラッタの量及びサイズが低減される。
【0039】
6.変調パルス動作により、相対的に高電流による動作が可能であり、この結果、ターゲット上の熱負荷を同一に維持しつつ(場合によっては、低減しつつ)、相対的に大きなイオン化が得られる。
【0040】
7.スプラッタを伴うことなしに、且つ、リストライキング及び複雑なスパークの誘導を伴うことになし、炭素及び半導体材料を効率的に気相堆積可能である。
【0041】
8.導体、半導体、及び不導体のターゲット表面の相対的に均一な除去。
【0042】
9.スパークの相対的に微細な分裂、即ち、表面上において高速移動する多数の小さなアークスポット。
【0043】
10.相対的に大きな電流パルスを使用すると共に、これと関連した基板電流の増大により、相対的に大きなイオン化が実現される。
【0044】
11.反応スパーク気相堆積のプロセス制御が、絶縁又は半導体レイヤによるターゲットのコーティングから独立している。この結果、反応ガスを混合可能であると共に、反応プロセスに傾斜を使用可能であり、これは、中間レイヤにとってのみならず、機能レイヤにとっても有利である。
【0045】
12.プロセス安定性の増大と相対的に広いプロセスウィンドウ。
【0046】
13.電流及び電圧の様々な仕様を許容する既知の電源の使用(例えば、基礎的な負荷用の低コストのDC電源などの多用途の経済的な組み合わせが可能である)。
【0047】
14.本発明は、プラズマが中断されることがなく、従って、そのために必要とされる複雑な技法を利用した反復的又は定期的なリストライキングがもはや必要ではないことを保証している。
【0048】
15.本方法は、更なるプラズマ源と組み合わせることが可能である。この文脈においては、具体的には、同時に動作する低電圧アークによる更なる励起を参照されたい。基板上におけるレイヤ堆積の場合には、これにより、反応性の更なる増大が結果的に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の適用のアプローチ
【0050】
以下の節においては、反応スパークコーティングプロセスに伴う本発明によるコーティング方法の代表的な手順について説明する。以下の節において詳細に説明されている例に基づいて、例えば、欧州特許第1,186,681号(EP1,186,681)の図3〜図6、並びに、この明細書の第7列の第18行〜第9列の第25行に記述されているBalzers Company社のRCSタイプの産業用コーティング装置を使用し、本方法によって酸化アルミニウムを様々な加工対象品上に堆積した。
【0051】
実際のコーティングプロセスに加え、必要に応じて、基板の前又は後処理に関係した更なるプロセス段階についても簡単に説明することとする。当業者には周知のように、基板の洗浄(これは、材料及び前処理に応じて様々な方式で実行される)などのこれらの段階の多くは、様々に変化可能であるが、特定の状況においては、なんらかのその他の方法により、いくつかのものを、省略、短縮、延長、又は組み合わせることも可能である。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
ホルダ(これは、2〜3回回転可能であり、且つ、このために提供されている)への加工対象品の挿入とホルダの真空処理設備内への導入が完了したら、処理チャンバを約10-4mbarの圧力に排気する。
【0053】
プロセス温度を設定するべく、アルゴン/水素雰囲気中において、(シャッタによって分離され、且つ、熱陰極を具備している)陰極チャンバと陽極接続された加工対象品の間において、放射加熱によって支援された低電圧アーク(LVA)プラズマをストライクした。
【0054】
この場合には、以下の加熱パラメータを設定した。
【0055】
放電:LVA 150A
アルゴン流量 50sccm
水素流量 300sccm
プロセス圧力 1.4x10-2mbar
基板温度 約500℃
プロセス時間 45分
【0056】
当業者であれば、この代替肢について精通しているであろう。基板は、この場合には、好ましくは、低電圧アークの陽極として接続し、且つ、好ましくは、単極又は双極で更にパルシングさせた。
【0057】
次のプロセス段階としてエッチングを開始する。このために、低電圧アークをフィラメントと補助陽極の間においてストライクする。この場合には、これに加えて、加工対象品と接地の間に、DC源、パルスDC源、又は交流電流によって動作するMF又はRF源を接続可能である。但し、加工対象品には、好ましくは、負のバイアス電圧が印加されていた。
【0058】
この場合には、以下のエッチングパラメータを設定した。
【0059】
アルゴン流量 60sccm
プロセス圧力 2.4x10-3mbar
放電:LVA 150A
基板温度 約500℃
プロセス時間 30分
【0060】
絶縁レイヤを生成する際の低電圧アーク放電の安定性を保証するべく、LVA支援プロセス段階のすべてにおいて、熱導電補助陽極を使用するか、又は補助陽極と接地の間にパルス高電流源を接続している。
【0061】
接着強度を増大させるべく、約300ナノメートルの厚さを有するCrNレイヤをスパーク気相堆積によって塗布し、且つ、必要に応じて、これに加えて、低電圧アークのプラズマによる更なるイオン化によって支援することも可能である。
【0062】
この場合には、以下の中間レイヤパラメータを設定した。
【0063】
アルゴン流量 80sccm
窒素流量 200sccm
プロセス圧力 8x10-3mbar
DC源電流:Cr 140A
基板バイアス −100V〜−40V双極
36μsの負及び4μsの正バイアス
基板温度 約500℃
プロセス時間 10分
【0064】
約5分にわたって継続する実際の機能レイヤへの切り換えのために、アルミニウムアーク供給源に60AのDC源電流を印加し、DC源の正極を陽極リングと接地に接続した。更には、単極のDCパルスを50kHzで動作する第2の並列接続された電源から重畳させる。この例においては、10μsのパルスと10μsの休止を有する対称的なデューティ比を使用しており、パルス内において最大150Aの電流を生成している。これに続いて、300sccmで(正確には、表中に列挙されているパラメータを使用して)酸素を導入した。
【0065】
アルミニウムターゲットの起動と酸素流量の設定が完了したら、Crターゲットにおける供給源電流を約10分間をかけて傾斜状にゼロに低減し、同時に窒素流量を低減する。次いで、アルゴン流量をゼロに低減する。
【0066】
純粋な反応ガス(この場合には、酸素)中において、基板を実際の機能レイヤによってコーティングする。酸化アルミニウムは、結果的に絶縁レイヤをもたらすため、パルス又はACバイアス源を使用する。
【0067】
この場合には、主要な機能レイヤパラメータを次のように設定した。
【0068】
酸素流量 300sccm
プロセス圧力 9x10-3mbar
DC源:Al 60A
パルス電流源:Al 150A、50kHz
10μsのパルス/10μsの休止
基板バイアス −40Vに維持
DCパルス又はAC
(それぞれの場合において、50〜150kHz)
基板温度 約500℃
プロセス時間 60〜120分
360分における個別実験
【0069】
コーティングプロセスは、ストライクされた低電圧アークを同時に使用することにより、実行することも可能である。この結果、相対的に大きな反応性が得られる。更には、コーティングプロセスにおける低電圧アークの同時使用は、LVA電流の大きさに応じて供給源のDC成分を更に低減可能であるという利点をも具備している。このようにして実行されるコーティングプロセスは、数時間にわたって安定している。ターゲットが、薄い滑らかな酸化物レイヤによって覆われる。スパークは、追加のパルス信号を有していない動作の場合よりもスムーズに伝播し、且つ、複数の更に小さなスパークに分裂する。スプラッタの量が大幅に低減される。
【0070】
機能レイヤと同様に、160mmのターゲット直径及び約6mmの厚さを有すると共に標準的なMAG6磁石システムを有するBalzers Company社のアーク供給源を接着レイヤ用のアーク供給源として使用した。但し、原則的には、適切な電源ユニットが接続されておれば、任意の既知の供給源をこのようなプロセスに使用可能である。
【0071】
前述のプロセスは、好適なバージョンであり、この理由は、この結果、パルス電源に対する厳しい要件が回避されることにある。DC源がスパーク用の最小電流又は保持電流を生成し、パルス高電流源を使用してスプラッタを回避している。
【0072】
機能レイヤの堆積パラメータの更なる実施例については、表1に更に詳細に記述されている。基本的に、同一の洗浄、加熱、及びエッチング段階を最初に実行し、CrN又はTiNから構成された中間レイヤを実施例1に対応した方式において堆積した。次いで、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化クロム、窒化クロム、酸化チタン、及び窒化チタンから構成された機能レイヤを表中の詳細に従って生成した。
【0073】
【表1】

【0074】
絶縁レイヤによる被覆に伴う供給源電圧の影響を比較するべく、実施例2及び実施例8においては、純粋な金属レイヤを堆積した。この場合には、高度な絶縁性を有する酸化物レイヤによるコーティングは、具体的には、供給源電圧のDC成分の大きな上昇を結果的にもたらすことが判明した。この場合には、酸素を含む反応ガスを相対的にわずかに追加した際の相対的な電圧上昇は、純粋な不活性ガス中において動作している金属露出供給源の値の約20〜50%である。窒素を使用した場合にも、供給源電圧の上昇が結果的に生じるが、その値は、相対的に小さく、例えば、約10〜最大で30%である。いずれの場合にも、パルス電圧の同時印加は、純粋なDC動作と比較して、明らかにDC供給源電圧のわずかな低減に結び付くが、金属露出供給源の本来の更に低い電圧状態に再度到達することは絶対にない。
【0075】
アーク供給源の動作の好適な周波数範囲は、5〜50kHzである。但し、この供給源は、必要に応じて、約0.5kHzの低周波数又は最大で1MHzの高周波数において動作することも可能である。更に低い周波数においては、絶縁レイヤの堆積動作が不安定になり、更に高い周波数においては、ジェネレータのコストが極端なレベルに上昇する。
【0076】
追加のマッチングレイヤが望ましい又は必要である場合には、CrN又はその他の接着レイヤの代わりに、或いは、接着レイヤと機能レイヤの間に、これらを適用可能である。この例(前述したものに加えて有利であり、且つ、酸化物被覆レイヤの堆積用のもの)は、チタン及びクロムのオキシカーバイド(oxycarbide)、並びに、アルミニウム、クロム、チタン、タンタル、ニオビウム、及びジルコニウムのオキシナイトライド(oxynitride)、オキシシリサイド(oxyslilicide)、オキシシリコン・ナイトライド(oxysilicon nitride)、及び窒化珪素である。
【0077】
陰極スパーク気相堆積によって生成される接着及びマッチングレイヤの優れた接着強度にも拘わらず、当業者には周知のように、これは、CVD、PECVD、スパッタリングなどのその他のコーティング技法によるか又は陽極接続されたるつぼからの低電圧アークによる気相堆積によって実現することも可能である。この場合には、原則的に、様々な技法の任意の組み合わせが可能であるが、このようにして実現可能である相対的に良好な接着に起因し、高イオン化を保証するプラズマ支援プロセスが好ましい。
【0078】
以下、添付の図面を参照し、本発明について更に詳しく説明するが、「簡単な図面の説明」の節に列挙されている添付図面は、様々な模範的な実施例を例示しているものに過ぎない。
【0079】
図1に示されている真空処理設備1は、DC電源13を有するアーク供給源を作動させるための従来技術において既知の構成を比較のために示している。設備1は、真空を生成するためのポンプスタンド2と、加工対象品(これは、ここでは、詳細に示されてはいない)を保持すると共にこれと電気的に接触するための基板ホルダ3と、所謂基板電圧を加工対象品に対して印加するためのバイアス電流源4と、を具備している。バイアス電流源は、DC又はAC或いは単極又は双極の基板電圧源であってよい。処理チャンバ内のプロセス圧力及びガス組成を制御するべく、不活性ガス又は反応ガスをプロセスガス吸気口11を介して導入可能である。
【0080】
アーク供給源自体のコンポーネントは、その背後に配置された冷却プレート12を有するターゲット5、点火フィンガ7、及びターゲットを有する陽極6である。スイッチ14を使用することにより、陽極及び電源13の正極のフローティング動作と、定義されたゼロ又は接地電位による動作の間において、選択可能である。
【0081】
真空処理設備1の更なる任意選択の機能は、追加のプラズマ源9であり、この場合には、プラズマ源9と補助陽極10の間において低電圧アークを作動させるための不活性ガス8、補助陽極10、及び更なる電源(これは、ここではこれ以上詳細には説明しない)、並びに、必要に応じて、低電圧アークプラズマの磁気合焦用のコイル17と、を有する熱陰極によってLVAを生成する供給源である。
【0082】
図2は、直流上に単極又は双極パルス信号を重畳するべく、2つの並列接続された電源(具体的には、DC電源13’及びパルス高電流源18)によって作動するアーク供給源を示している。この回路は、時間の経過と共に、設備1の内部、補助陽極10、及び基板ホルダ3が、絶縁レイヤを有する基板によって充填される絶縁レイヤの場合にも、反応スパーク気相堆積プロセスの安定した動作を実現する。
【0083】
比較を目的として、図1に示されているDC電源13のみにより、純粋なアルミニウムから構成されたターゲット5をアルゴン及び酸素を含む雰囲気中において作動させた場合には、わずか数分後にプロセスが不安定化し、高酸素流量によるプロセスの終了に結び付くことになる。このプロセスにおいては、図3aに示されているように、コーティングがターゲット5上に生成されることになり、大きなアイランドは、数ミリメートルのサイズを有しており、絶縁材料から構成されている。加工対象品の表面上に堆積されるレイヤは、非常に粗いものになり、且つ、完全な絶縁を提供することにはならず、この理由は、この場合には、明らかに、大量の金属スプラッタの連続反応が結果的に得られないためである。対照的に、図2に示されている本発明による方法に従って、酸素を含む雰囲気(これ以外は同一条件である)中においてターゲット5を作動させた場合には、図3bに示されているように、絶縁を提供するが完全に均一である酸化アルミニウム表面が形成されることになる。このプロセスは、数時間にわたって実行可能であり、中断可能であり、且つ、このようにして汚染されたターゲットによって再開することも可能である。同時に、これは、加工対象品の表面上におけるスプラッタの大幅な低減にも結び付く。
【0084】
次に、アーク供給源のパルス変調動作の更なる選択肢及び構成について説明することとする。図4は、並列に接続された2つのDC電源18’及び18’’を示しており、これらは、好適な同期した形態においてパルシングされている。一例として、この構成は、単極の形態において動作した際に、いくつかの利点を具備している。例えば、同一のパルス幅によって作動させた場合には、2つのパルスの間の時間を非常に短く選択することにより、対応する高デューティ比及び非常に短いサイクル持続時間を設定可能である。例えば、これと関連した1パルス当たりのエネルギー供給を制限する能力(これは、この特定のターゲット材料にとっても適切である)により、スパークの永久的な燃焼を非常に効果的に回避可能であり、スプラッタの形成が更に妨げられる。
【0085】
但し、異なるパルス幅と異なる周波数又は同一の周波数によって単極の形態で動作している場合にも、このような動作により、個々のサイクルフェーズを非常に良好に設定可能であり、従って、コーティング速度を非常に良好に制御可能である。原則的に、パルスDC電源を更に良好な交流源によって置換することも可能である。但し、この場合には、例えば、特定の形態の且つ特定のエッジ勾配を有する信号を実現することが相対的に困難である。
【0086】
同時に、図5に示されているように、2つの電源19’、19’’の概念によれば、特に有利なことに、複数の陽極20、20’を配置することにより、コーティングチャンバ内においてプラズマの相対的に良好な分布を実現可能である。この結果、電子を相対的に良好に誘導することにより、プラズマ密度及びプロセスの反応性を増大させることができる。
【0087】
図6は、2つの直列接続された電源19’、19’’によってエネルギー供給されているアーク供給源を示しており、これらの電源の中の少なくとも1つは、パルス又はAC源である。この構成によれば、アーク供給源の速度制御を特に容易に適合可能である。
【0088】
更なる模範的な実施例は、パルス電流又は直流成分をスイッチングモード電源技術によって生成する電源に関するものである。このような電源の場合には、前述の要件に準拠した信号が電源の出力に生成されるように、結果的に得られるDC信号の(その他の場合においては、望ましくない)リップルを増幅可能である。例えば、図7に概略的に示されているように、この場合には、二次クロッキングされた電源をステップアップコンバータ21として使用可能であり、或いは、図8に示されているように、同様に二次クロッキングされた電源をステップダウンコンバータ21’として使用することも可能である。対照的に、図9は、所望の信号を生成するための一次クロッキングされた電源22を示している。
【0089】
スイッチングモード電源技術を使用するすべての電源の中において、図8に示されている電源は、技術的に最も簡単に実装可能なものであり、従って、使用するのに好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】アーク供給源を有する真空処理設備を示している。
【図2】並列接続されたDC及びパルス電流源を示している。
【図3】ターゲット表面を示している。
【図4】2つの並列接続されたパルス電流源を示している。
【図5】マルチ陽極構成を示している。
【図6】直列接続された電源を示している。
【図7】短絡回路と接続された電源を示している。
【図8】二次クロッキングされた電源を示している。
【図9】一次クロッキングされた電源を示している。
【符号の説明】
【0091】
1 真空処理設備
2 ポンプスタンド
3 基板ホルダ
4 バイアス電流源
5 ターゲット
6 陽極
7 点火フィンガ
8 不活性ガス吸気口
9 プラズマ源
10 補助陽極
11 プロセスガス吸気口
12 冷却プレート
13、13’ DC電源
14 スイッチ
17 磁石コイル
18、18’、18’’ パルス電流源
19、19’、19’’ 電源
20、20’ 陽極
21 ステップアップコンバータ
21’ ステップダウンコンバータ
22 一次クロッキングされた電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク供給源を作動させる方法であって、電気スパーク放電をターゲットの表面上において点火又は作動させており、前記スパーク放電は、直流とパルス又は交流電流によって同時にエネルギー供給されている、方法において、
前記ターゲットの前記表面は、絶縁コーティングによって少なくとも部分的に覆われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記絶縁コーティングは、反応ガスを含む雰囲気中において前記供給源を作動させることによって生成されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記絶縁コーティングは、絶縁コーティングを伴わない表面による動作との比較において、少なくとも10%(好ましくは、少なくとも20%)の前記供給源電圧の前記DC成分の増大を結果的にもたらすことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
反応ガスを含む前記雰囲気は、酸素、窒素、珪素、硼素、又は炭素を含むガス、特に、酸素、窒素、アセチレン、メタン、シラン、テトラメチルシラン、テトラメチルアルミニウム、ジボランからなる成分の中の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記反応ガスの比率は、不活性ガスの比率を上回っており、好ましくは、70%超であり、更に好ましくは、約90%超であるか又は略100%であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記ターゲット材料は、周期律表中の第IV、V、VI族の遷移金属又はアルミニウム、硼素、炭素、又は珪素、或いは、TiAl、CrAl、TiAlCr、TiSi、TaSi、CrSi、WCなどの前述の材料の合金又は化合物からなる材料の中の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記絶縁コーティングは、前記ターゲット材料の酸化物、窒化物、硼化物、珪化物、炭化物、又は前記ターゲット材料の化合物の混合物から構成されていることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
アーク供給源を作動させる方法であって、電気スパーク放電をターゲットの表面上において点火又は作動させており、前記スパーク放電は、直流とパルス又は交流電流によって同時にエネルギー供給されている、方法において、
前記電流フローの前記DC成分は、保持電流の100〜300%(好ましくは、100〜200%)の範囲内において設定されることを特徴とする方法。
【請求項9】
アーク供給源を作動させる方法であって、電気スパーク放電をターゲットの表面上において点火又は作動させており、前記スパーク放電は、直流とパルス又は交流電流によって同時にエネルギー供給されている、方法において、
前記電流フローの前記DC成分は、30〜90A(好ましくは、30〜60A)の範囲内において設定されることを特徴とする方法。
【請求項10】
反応ガス、不活性ガス、或いは、反応ガス及び不活性ガスが追加されることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ターゲット材料は、周期律表中の第IV、V、VI族の遷移金属又はアルミニウム、硼素、炭素、又は珪素、或いは、TiAl、CrAl、TiAlCr、TiSi、TaSi、CrSi、WCなどの前述の材料の合金又は化合物からなる材料の中の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記ターゲット材料は、単一結晶相から構成されている請求項1、8、又は9の何れか一項記載の方法。
【請求項13】
前記直流成分は、直流ジェネレータによって生成され、前記パルス又は交流電流成分は、パルス又は交流電流ジェネレータによって生成されており、前記2つのジェネレータは、アーク陰極と少なくとも1つの陽極又は接地の間において、並列又は直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項記載の方法。
【請求項14】
前記直流成分及び前記パルス電流成分は、重畳及び同期した状態において動作する2つのパルス及び交流電流ジェネレータによって生成されており、前記2つのジェネレータは、アーク陰極と少なくとも1つの陽極又は接地の間において、並列又は直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項記載の方法。
【請求項15】
前記直流及び前記パルス電流成分は、二次クロッキングされた電流ジェネレータによって生成されおり、前記ジェネレータは、アーク陰極と少なくとも1つの陽極又は接地の間において、並列又は直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項記載の方法。
【請求項16】
前記直流及び前記パルス電流成分は、一次クロッキングされた電流ジェネレータによって生成されており、前記ジェネレータは、アーク陰極及び少なくとも1つの陽極又は接地の間において、並列又は直列に接続されている請求項1〜12の何れか一項記載の方法。
【請求項17】
加工対象品上に1つ又は複数のレイヤを堆積させるべく、請求項1〜16の何れか一項記載のアーク供給源を作動させることを特徴とするコーティング方法。
【請求項18】
前記レイヤは、周期律表の第IV、V、又はVI族の遷移金属及びアルミニウム、並びに、酸素、窒素、炭素、硼素、又は珪素を有するこれらの化合物からなる材料の中の少なくとも1つから構成されることを特徴とする請求項17記載のコーティング方法。
【請求項19】
前記レイヤは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロム、窒化クロム、酸窒化クロム、酸化アルミニウムクロム、窒化アルミニウムクロム、酸窒化アルミニウムクロム、アルミニウムクロムオキシカルボナイトライド、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化珪素アルミニウム、窒化珪素アルミニウム、酸窒化珪素アルミニウム、窒化珪素チタン、酸窒化珪素チタン、窒化珪素タンタル、酸化タンタル、酸窒化タンタル、窒化珪素タングステン、炭化珪素タングステン、窒化珪素ニオビウム、炭化チタン、炭化タングステン、又は前述の材料の合金又は化合物からなる材料の中の少なくとも1つから構成されていることを特徴とする請求項17記載のコーティング方法。
【請求項20】
DC、パルス、又は交流バイアスが前記加工対象品に印加されることを特徴とする請求項17記載のコーティング方法。
【請求項21】
前記供給源からのパルス電流又は交流電流に対して同期化された状態において、パルス又は交流バイアスが印加されることを特徴とする請求項20記載のコーティング方法。
【請求項22】
前記レイヤ組成を変化させるべく、少なくとも1つの不活性ガス又は反応ガスを第1流量において少なくとも一回追加し、次いで、少なくとも1つの更なる反応ガスを第2流量において追加する(逆も又同様)ことを特徴とする請求項17記載のコーティング方法。
【請求項23】
前記第1流量は、前記第2流量を設定する前、その最中、又はその後に低減され、前記第2流量は、低い値から更に高い値に設定される(逆も又同様)ことを特徴とする請求項22記載のコーティング方法。
【請求項24】
前記レイヤ組成において実質的に一定の又は段階的な変動を生成するべく、前記追加又は設定プロセスは、傾斜又は階段の形態において実行される請求項22記載のコーティング方法。
【請求項25】
前記第1及び前記第2流量を交互に増大及び減少させることによって複数のレイヤ要素を有するレイヤが堆積されることを特徴とする請求項22記載のコーティング方法。
【請求項26】
複数の供給源を同一又は異なるターゲット材料と共に同時に作動させることを特徴とする請求項17記載のコーティング方法。
【請求項27】
金属イオンによってエッチングするエッチング方法において、少なくとも1つの加工対象品をエッチングするべく、DC、パルス、又は交流バイアスが印加された状態において、請求項1〜15の何れか一項記載のアーク供給源を作動させることを特徴とするエッチング方法。
【請求項28】
−50〜−2000V(好ましくは、−200〜−1500V)のDCバイアスを前記加工対象品上に設定することを特徴とする請求項27記載のエッチング方法。
【請求項29】
追加のエッチングガスを導入することを特徴とする請求項27又は28に記載のエッチング方法。
【請求項30】
前記エッチングガスは、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、酸素、窒素、水素、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)、又はハロゲンを含む化合物からなる成分の中の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項29記載のエッチング方法。
【請求項31】
前記コーティング速度及び前記加工対象品内に導入される前記エネルギーは、前記電流パルスのパルス幅、前記電流パルスの大きさ、及びデューティ比からなるパラメータの中の少なくとも1つを調節することによって設定されることを特徴とする請求項17〜30の何れか一項記載のコーティング又はエッチング方法。
【請求項32】
前記加工対象品は、工具又はコンポーネントであることを特徴とする請求項17〜31の何れか一項記載のコーティング又はエッチング方法。
【請求項33】
前記加工対象品は、珪素又はなんらかのその他の半導体材料から基本的に構成されていることを特徴とする請求項16〜28の何れか一項記載のコーティング又はエッチング方法。
【請求項34】
ターゲット(5)及び少なくとも1つの対向電極(6、20、20’)及び前記ターゲット(5)に接続された電源ユニットを具備したアーク供給源において、
前記電源ユニットは、少なくとも1つの第1パルス高電流源(18、18’)と、更なる電源(13’、18’’)とを、有することを特徴とするアーク供給源。
【請求項35】
前記電源ユニットは、DC電流源(13’)を更に有しており、該DC電流源は、少なくとも保持電流を維持するべく設計されていることを特徴とする請求項34記載のアーク供給源。
【請求項36】
前記電源ユニットは、少なくとも保持電流を維持するべく設計されたDC電流源(13’)を更に有することを特徴とする請求項34記載のアーク供給源。
【請求項37】
前記電源ユニットは、第2のパルス高電流源(18’’)を更に有しており、該第2パルス高電流源は、重畳されたパルス信号を有する保持電流を設定できるように、前記第1パルスアーク供給源と同期化可能であることを特徴とする請求項34記載のアーク供給源。
【請求項38】
前記パルスアーク供給源(18’、18’’)は、前記保持電流が、電圧が前記ターゲット又は前記電極に対して印加されない個々のパルス休止又は前記パルス休止のすべてにおいて、1つ又は複数の保持電流休止を具備するように、同期化可能であり、この場合に、前記保持電流休止は、前記アークプラズマが前記休止において消火されないように、非常に短く設定可能であることを特徴とする請求項36記載のアーク供給源。
【請求項39】
前記保持電流休止は、1ns〜1μs(特に、1〜100ns)に設定可能であることを特徴とする請求項37記載のアーク供給源。
【請求項40】
前記第1パルス高電流源(18、18’)及び更なる電源(13’、18’’)は、並列又は直列に接続されることを特徴とする請求項34記載のアーク供給源。
【請求項41】
前記第1パルス高電流源(18、18’)及び更なる電源(13’、18’’)は、並列又は直列に接続されることを特徴とする請求項34記載のアーク供給源。
【請求項42】
少なくとも前記第1パルス高電流源(18、18’)又は少なくとも前記更なる電源(13’、18’’)は、前記ターゲット(5)と前記ターゲットを有する電極(6)との間又は更なる電極(20、20’)の間に接続されることを特徴とする請求項34記載のアーク供給源。
【請求項43】
ターゲット(5)及び少なくとも1つの対向電極(6、20、20’)及び前記ターゲット(5)に接続された電源ユニットを具備したアーク供給源において、
前記電源ユニットは、二次クロッキングされた電源(21、21’)であり、これにより、前記二次クロッキングされた電源(21、21’)の信号は、DC保持電流が生成され、この上部にパルス信号又はAC信号が重畳されるように、変調されることを特徴とするアーク供給源。
【請求項44】
前記二次クロッキングされた電源は、ステップダウンコンバータ(21’)又はステップアップコンバータ(21)の形態であることを特徴とする請求項42記載のアーク供給源。
【請求項45】
ターゲット(5)及び少なくとも1つの対向電極(6、20、20’)及び前記ターゲット(5)に接続された電源ユニットを具備したアーク供給源において、
前記電源ユニットは、一次クロッキングされた電源(22)であり、これにより、前記一次クロッキングされた電源(22)の信号は、DC保持電流が生成され、この上部にパルス信号又はAC信号が重畳されるように、変調されることを特徴とするアーク供給源。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2008−533686(P2008−533686A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502213(P2008−502213)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000123
【国際公開番号】WO2006/099758
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507317351)エルリコン トレーディング アクチェンゲゼルシャフト,トリューブバハ (7)
【Fターム(参考)】