説明

パルス化大気圧グロー放電を使用する堆積の方法及び装置

処理空間(5)内で大気圧グロー放電プラズマを使用して化合物又は化学元素を堆積させる方法及び装置であって、オン時間(ton)中に電力を供給する電力供給装置(4)に接続された2つの5電極(2、3)を含み、処理空間が、堆積させるべき化合物又は化学元素の前駆物質を含む活性ガスと不活性ガスの混合物からなるガス組成物で満たされる。ガス組成物中に窒素を使用し、短いパルスを加え、処理空間内のガス組成物10の所定の残留時間を用いることによって、粉塵の形成が防止される。安定化したプラズマを使用した場合に最良の結果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理空間内で大気圧グロー放電プラズマを使用して基板上に化合物又は化学元素を堆積させる方法に関し、この方法では、大気圧グロー放電プラズマが、電力を電力供給装置から処理空間内の少なくとも2つの電極にオン時間中に加えることによって発生し、堆積させるべき化合物又は化学元素の前駆物質を含むガス組成物で満たされている。別の態様では、本発明は、ガス組成物で満たされた処理空間内でパルス化大気圧グロー放電プラズマを使用して化学元素又は化合物を堆積させるプラズマ堆積装置に関し、この装置は、少なくとも2つの電極に電力を供給する電力供給装置に接続された少なくとも2つの電極と、処理空間にガス組成物を供給するガス供給装置とを含み、このガス組成物は、少なくとも酸素、窒素、及び堆積させるべき化学元素又は化合物の前駆物質を含む。本発明の別の態様では、この装置は、化合物又は化学元素を堆積させるために使用される。
【背景技術】
【0002】
堆積の目的で大気圧グロー放電プラズマを使用する従来技術には、様々な欠点がある。これらの欠点の1つは、大気圧プラズマの安定性である。この安定性を改善するために、様々な解決策、例えば米国特許第6774569号明細書、欧州特許出願公開第1383359号パンフレット、欧州特許出願公開第1547123号パンフレット、及び欧州特許出願公開第1626613号パンフレットに記載されているものが提示されてきた。堆積の目的で大気圧グロー放電プラズマを使用することについての別の欠点は、粉塵の形成である。例えば、米国特許第5576076号明細書は、シランの存在下で大気圧グロー放電プラズマを使用して基板上に酸化シリコンを堆積させることを教示しているが、この方法では、酸化シリコンの堆積が粉末の形になる傾向がある。
【0003】
国際特許出願WO2005049228号パンフレットは、テトラアルキルオルトケイ酸塩及び大気圧グロー放電プラズマを使用して基板上に被覆を堆積させるための、粉塵の形成を防止するとされる方法を開示している。この発明では、有孔電極が使用される。
【0004】
粉塵の形成を防止する別の方法は、例えば日本特許出願要約第07−074110号公報に記載されている、低圧でグロー放電プラズマを使用するものである。
【0005】
Y. Watanabeらの論文“Formation Kinetics and Control of Dust Particles in Capacitively-Coupled Reactive Plasmas”, Physica Scripta, Vol. T89, 29-32, 2001には、容量結合された高周波放電(13.56MHz)における、減圧でのパルスオン時間(ton)及びパルスオフ時間(toff)の両方の影響についての研究が記載されている。tonの持続時間が増加するとクラスタのサイズ及び体積分率が増大するが、最も顕著な増大は10ms以上のパルスオン時間で起こることが示されている。
【0006】
化合物又は化学元素を堆積させるのに使用される大気圧グロー放電プラズマには粉塵を形成する難点があり、それにより平滑な表面の形成を達成できないこと、及び使用される装置が短期間に粉塵を累積することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6774569号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1383359号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第1547123号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第1626613号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5576076号明細書
【特許文献6】国際特許出願WO2005049228号パンフレット
【特許文献7】日本特許出願要約第07−074110号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"Formation Kinetics and Control of Dust Particles in Capacitively-Coupled Reactive Plasmas" by Y. Watanabe et al, Physica Scripta, Vol. T89, 29-32, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、プラズマ中で制御された反応過程を可能にするように、パルス化大気圧グロー放電プラズマに使用されるガス組成物中の特定の化学種の発生を制御できる方法を提供しようとするものであり、この方法によって、粉塵の形成を伴わずに基板上への層の堆積を実現することができる。本発明によれば、ガス組成物が1〜99.99%の量の窒素及び0.01〜25%の量の酸素を含む、上述のプリアンブルに従った方法が提供される。別の実施形態では、ガス組成物は0.01〜10%の量の酸素を含む。さらに別の実施形態では、酸素の量は0.01〜1%である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述のように、化合物及び化学元素などの材料の層を堆積させるのにプラズマを使用する際の問題は、粉塵又は粉末を形成することであり、その結果、堆積層の品質が悪化し(不規則、不均一など)、装置が汚れる。処理空間内には、堆積させるべき化合物の前駆物質に加えて大気圧のガス組成物が存在しなければならない。酸化プロセスの場合では、酸素が存在しなければならず、また酸素に加えて不活性ガスも存在しなければならない。不活性ガスは、ヘリウム、ネオン又はアルゴンなどの希ガスでよい。希ガスを使用する場合に、全ガス組成の約1.3%未満の酸素濃度を用いると堆積の効率が大幅に低下する。本発明者らはこれまでに、驚くべきことに窒素の追加により、可能な酸素濃度の全範囲で酸素の効率が大幅に増加することを見出している。本発明者らはさらに、全ガス組成の0.01%しかない低い酸素濃度でも非常に良好な堆積効率を得た。本発明による方法を適用すると、粉末形成が非常に少なく、表面平滑度が良好である層品質の大きな改善が結果として得られる。
【0011】
前駆物質は、例えば2〜500ppmの濃度で使用される。例えば別の実施形態では、ガス組成物が、75%〜99.99%の希ガス・窒素の混合物、及び0.01〜25%の量の酸素を含み、混合物中の窒素と希ガスの量を1〜99%とすることができ、前駆物質の量を含めた全ガス組成の合計が100%になる。
【0012】
希ガスは、例えばヘリウム、ネオン又はアルゴンから選択することができるが、常に窒素ガスが存在することを考慮に入れる。非常に低い窒素濃度での酸素の機能強化をすでに達成できているので、希ガスと窒素の比は1対99から99対1まで変えることができる。
【0013】
希ガスとしてアルゴンを使用した場合に良好な結果が得られた。
【0014】
別の実施形態では、ガス組成物がさらに、水素ガス、二酸化炭素、アンモニア、窒素酸化物、又は他の適切な任意の活性ガスなどの活性ガスを含み、活性ガスが、一部又は完全にガス組成物中の酸素の量に取って代わる。
【0015】
電力は発生器を使用して加えることができ、この発生器は、電極への周期的な電力供給源として一連の例えば正弦波列信号を供給する。その周波数範囲は10kHz〜30MHzであり、例えば100kHz〜450kHzとすることができる。
【0016】
別の実施形態では、電荷密度(電流密度と時間の積)の絶対値を制御することによって、パワーオンパルス中に発生する粉塵形成が防止される。一実施形態では、この値は5マイクロクーロン/cm未満であり、例えば2又は1マイクロクーロン/cmである。
【0017】
電極にそのように加えられる電力パルスは、あるオン時間を有することができ、このオン時間は、0.5msほどに、又はさらに0.05msほどにも短くできるが、また500msほどに長くもできる。このような短いパルスを窒素の使用と組み合わせて使用すると、結果として非常に効率的な堆積プロセスになる。
【0018】
層堆積の品質を向上させ、粉塵の形成を低減する別の方策には、オフ時間中に少なくとも2つの電極に電力を加えないことも含まれてよい。このオフ時間により、粉塵凝集中心を、オン時間中にそれが少しでも形成された場合に、崩壊させることができる。一実施形態では、オン時間は、処理空間内で前駆物質から荷電粒子を形成するのに必要な時間にほぼ相当する所定の時間よりも短い。別の実施形態では、この所定の時間は0.5ms未満であり、例えば0.3ms未満である。
【0019】
別の実施形態では、パワーオン時間にパワーオフ時間を加えたもので除算したパワーオン時間の百分率であるパルスプラズマのデューティサイクルが少なくとも1%である。言い換えると、オン時間と、オン時間とオフ時間の合計との比が1%以上である。特定の実施形態では、デューティサイクルが少なくとも10%である。窒素の使用によってデューティサイクルは、最新技術と比較しても大幅に増大させることができるが、それでもなお粉塵が形成されない。別の実施形態では、オン時間(ton)とオフ時間(toff)の合計は、処理空間内のガス組成物の残留時間にほぼ相当するが、ガスの残留時間よりも短い、例えばガス組成物の平均残留時間の10分の1ほどに小さくすることもできる。こうすることにより、例えば、指定の厚さの層を得るために必要なガス組成を正確に決定することができる。
【0020】
別の実施形態では、基板が、プラスチック、ガラス、セラミックスなどからなる群から選択される。
【0021】
均一な厚さ及び平滑な表面の堆積層を得るには、例えばストリーマ、フィラメント放電などのような不安定性を防止する安定なプラズマを得ることが重要である。別の実施形態では、プラズマ中の局所的な不安定性を相殺する安定化手段によって、大気圧グロー放電プラズマが安定化される。電力発生器の電力パルスによって、プラズマ電流及び変位電流を生じさせる電流パルスを発生する。安定化手段は、動的抵抗と静的抵抗の比が低いプラズマの種類に関連した、フィラメント放電などの局所的な電流密度変動を制御するための変位電流変化を与えるように構成される。そのような速い変動をパルス形成回路を使用して制動することによって、均一なグロー放電プラズマが得られる。別の実施形態では、変位電流変化が、印加電圧の変化を2つの電極に与えることによってもたらされ、印加電圧の変化が交流プラズマ通電電圧の動作周波数とほぼ等しく、変位電流変化が印加電圧の変化よりも少なくとも5倍高い値を有する。
【0022】
別の態様では、本発明は、上述のプリアンブルに従ったプラズマ堆積装置に関し、ガス供給装置が、ガス組成物が1〜99.99%の量の窒素及び0.01〜25%の量の酸素を含むように構成される。
【0023】
ガス供給装置、又はより一般的にはガス組成物を供給する手段は、使用される流量の少なくとも1%の精度で個々のガスを供給することができる。この精度は、処理空間にガス組成物を供給するために使用される流量の範囲にわたって維持されなければならない。このガス組成物は、0.01%〜25%の範囲の酸素濃度を有することができ、1〜99.99%の範囲の量の窒素を含む。この手段はさらに、処理空間内のガスの残留時間を決めるガラス流を提供する。この残留時間は、前述の周期時間に相当しうるが、本発明の実施形態を用いて、例えば周期時間の10倍も多くすることができる。この周期時間は、toff時間とton時間の合計であり、APG周期時間という名前も付けられている。
【0024】
別の実施形態では、ガス供給装置は、上述の様々な実施形態による方法を実施するように構成することができる。同様に、プラズマ堆積装置の電力供給装置は、上述の方法の実施形態を実施するように構成することができる。電力供給装置はさらに、上述の実施形態による方法を実施するように構成された安定化手段を備えることもできる。
【0025】
方法の実施形態に関連して上述したように、本プラズマ堆積装置は、有利なことに基板上に材料の層を堆積させるために使用することができる。この場合、プラズマ堆積装置は、堆積させるべき化合物又は化学元素の前駆物質を2〜500ppmの濃度で含むガス組成物を受け入れるように構成することができる。ガス組成物はさらに、窒素に加えて、ヘリウム、ネオン又はアルゴンなどの希ガスを含むこともできるが、希ガスと窒素の比は1対99から99対1までの範囲の値とするべきである。
【0026】
別の態様では、本発明は、処理空間内で基板上に材料の層を堆積するための、本発明のいずれかの一実施形態によるプラズマ堆積装置の使用に関する。
【0027】
本方法はまた、材料の層をフィルム又は箔に付ける場合にいくつかの特性を改善するために適用できることも見出された。例えば、本発明を用いて薄いSiO層を堆積させることによって、ポリエチレンナフタレート(PEN, polyethylene naphthalate)バリアフィルムの酸素透過率(OTR, Oxygen Transmission Rate)を(ある程度、水蒸気透過率(WVTR, water vapor transmission rate)とともに)改善することが可能である。さらに、本発明を用いて薄いSiO層を堆積させることによって、トリアセチルセルロース(TAC, triacetyl cellulose)フィルムのWVTRを改善することもまた可能である。APG放電プラズマガス中に窒素を加えることによって、より高いデューティサイクルを実現することができ、その結果、PENフィルムのOTRの改善、及びTACフィルムのWVTRの改善がもたらされる。
【0028】
一実施形態では、本発明による装置は、1nm/sを超える堆積速度、例えば5nm/s、又はさらに10nm/sを超える堆積速度を実現することができる。
【0029】
別の一実施形態では、本発明の装置は、処理空間中で基板が通る複数の経路を有することによって、又は互いに一列に配置された複数の処理空間を有することによって、材料の複数層を付けるのに使用される。この最後の実施形態では、それぞれ異なる組成の層を非常に効率的な方法で、各層の厚さを1nm以上にして、互いに重ねて付けることができる。
【0030】
堆積プロセスで使用される基板は、特定の基板に限定されず、ウェハ、セラミックス、プラスチックなどに及びうる。基板の厚さは20〜800μmの間で、例えば50μm又は200μmとすることができる。
【0031】
本発明を、添付の図面を参照し、いくつかの例示的な実施形態を用いてより詳細に以下で論じる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を実施することができるプラズマ発生装置の概略図である。
【図2】図1のプラズマ発生装置の電極に給電する電力供給装置によって発生させた周期性信号のグラフである。
【図3】HMDSOを使用した本発明の堆積物のFTIR−ATRグラフである。
【図4】HMDSOを使用した参照堆積物のFTIR−ATRグラフである。
【図5】プラズマの安定化のために使用される電気回路の実施形態の詳細図である。
【図6】プラズマの安定化のために使用される電気回路の実施形態の別の詳細図である。
【図7】本発明による装置及び方法を用いて堆積させた表面の電子顕微鏡写真である。
【図8】従来技術の方法を用いて得られた表面堆積物の電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施形態によって処理されたPENフィルムの、デューティサイクルの関数として得られた酸素透過率の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明を適用することができるプラズマ発生装置10の概略図を示す。筐体7内の処理空間としてよい処理空間5、又は開放構造による処理空間5は、2つの電極2、3を含む。一般に電極2、3は、大気圧で処理空間内にグロー放電プラズマを発生させ維持することを可能にするために誘電体バリアを備える。あるいは、複数の電極2、3が設けられる。電極2、3は電力供給装置4に接続され、この電力供給装置は、大気圧のもとで処理空間5内にグロー放電プラズマを発生させるための電極に電力を供給するように構成されている。処理空間5内には、ガスの組合せが前駆物質を含めてガス供給装置8から導入される。ガス供給装置8は、当業者に知られている貯蔵、供給及び混合の構成部分を備えることができる。その目的は、処理空間5内で前駆物質を、基板上に堆積させる化合物又は化学元素に分解させることである。一般に、ガスの組合せは、前駆物質に加えて例えば酸素のような活性ガス、及び不活性ガスの混合物を含む。このような実施形態を用いる場合には一般に、非常に短い堆積時間の後に粉塵の形成が観察され、粉塵のない平滑な堆積物を得ることができない。高品質の応用例(マイクロエレクトロニクス、透過バリア、光学応用例)に使用されるプラズマでは、粉塵の形成は重大な問題である。このような応用例では、粉塵の形成は被覆の品質を損なうおそれがある。大気圧では、プラズマの典型的な大電力密度、及び反応性分子の大きな集合により、粉塵の形成は一般的な事実である。このため、被覆の応用例に関し大気プラズマを工業用に使用することは現在、接着性を増加させるなどの末端の応用例に限定されている。大気圧でのプラズマにおける粉塵の形成のメカニズムに関し、粉塵の形成でのクラスタ化の種は、反応性分子の解離によって形成される負イオン及び正イオンであると想定される。粉塵の形成を防止するために、プラズマ内での分子の過度の分解、又はマクロポリマーの形成を回避するように分子の解離をプラズマによって制限する必要がある。低圧プラズマの使用は、これを実現する1つの方法である。低圧においてイオンは、プラズマが消えた後で数ミリ秒以上存続することができず、また低圧において粉塵粒子は、影響のあるサイズになるまで比較的遅く成長する(約10秒)。
【0034】
電力をパルス化することは、単位時間当たりにプラズマに伝達される平均エネルギーを低減させることによってプラズマの反応性を減らす別の標準的な方法である。
【0035】
一般にパルス化プラズマにおいて、粉塵の形成の抑制の標準的な方法は、プラズマのパワーオフ時間中に粉塵凝集中心が速く崩壊することに基づく。これは、プラズマオフ時間中の粉塵の「自然死」とみなすことができる。低圧プラズマでは、パワーオン時間を相対的に長くできるように(数百ms程度)、短い期間だけのパワーオフ時間が必要とされる。パワーオン時間をこれらのパルス化の例のパワーオン時間とパワーオフ時間の合計で除算したものと定義されるデューティサイクルは大きく、一般に50〜98%の範囲である。粉塵粒子の成長を遮り、したがって粉塵の形成を制限するには、数ミリ秒のオフ時間でプラズマをパルス化することで十分である。
【0036】
理論に縛られることなく、本発明は、粉塵凝集中心の「自然死」(崩壊)に基づくのではなく、プラズマ内のその密度をそのようにパワーオン時間の段階から最小にすることに基づく。パワーオフ時間の調整により凝集中心の崩壊に基づいて粉塵の形成を操作する標準的な方法とは反対に、これはむしろ、凝集中心の形成をその始まりから防止することに基づく方法である。
【0037】
例えば低圧応用例では、例えばAr/O/ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO, hexamethyldisiloxane)プラズマ内の粉塵の形成についての報告は知られていないが、高圧ではこのプラズマは、わずか数秒だけプラズマにさらされた後に極度に粉塵が付いた被覆を様々に生成する。
【0038】
大気圧での高デューティサイクルは、現在まで達成することができなかった。大気圧では、5%未満の、例えば1%のデューティサイクルが、達成可能な最高デューティサイクルであった。粉塵の形成を抑制するために大気圧でのパルス化が必要であるが、それには表面の処理が遅いという欠点がある。したがって、低デュ−ティサイクルは、反応性ラジカルの密度がプラズマオフ時間中にほとんど0に低減するという条件で、限られた範囲のガス組成物についてだけのオプションである。本発明では、本発明者らは驚くべきことにこれまでに、大気圧でのデューティサイクルを5%を超え10%さえも超える、例えば15%又は20%の値まで大幅に増大できることを見出している。前述のように、処理空間5内には、前駆物質、例えば酸素のような活性ガス、及び不活性ガスの組合せを含む、ガスを組み合わせたものが導入される。不活性ガス組成物のほとんどについて、臨界酸素濃度は、それ未満では前駆物質がもはや完全には分解しない濃度で特定でき、それによって、堆積させるべき化合物又は化学元素、並びに前駆物質又は完全に分解していない前駆物質の分子を含む堆積物が得られる。例えば、前駆物質としてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、活性ガスとして酸素、及び不活性ガスとしてアルゴンのシステムでは、本発明者らは、1.3%の臨界酸素限度未満では、HMDSOの完全な分解を達成できないことを見出した。
【0039】
驚くべきことに、本発明者らは、ガス組成物に窒素を追加することにより酸素の効率が著しく増大し、これは多くの付加的利点をもたらすことを見出した。
【0040】
例えば図4には、活性ガスとして酸素、及び不活性ガスとしてアルゴンを用い、酸素濃度が1.3%の臨界値未満でプラズマによって得られた、前駆物質としてHMDSOを有する堆積物表面からFTIR_ATRスペクトルが示されている。1280cm−1あたりに明確にCHのピークが見え、顕著な粉塵の形成になりうる前駆物質の不完全な解離を示している。図3には、活性ガスとして0.1%の濃度の酸素と、不活性ガスとして20%の窒素と79.9%のアルゴンの混合物とを用い、他の条件が同じままでプラズマによって得られた、前駆物質としてHMDSOを有する堆積物表面からのFTIR_ATRスペクトルが示されている。1280cm−1あたりにピークは観察されず、前駆物質の完全な解離を示している。
【0041】
不活性ガス組成物中に窒素を使用することによって、酸素の活性が大幅に増大され、粉塵の形成が抑制される。窒素を使用した場合には堆積の効率が、窒素を使用しない堆積と比較して向上し、これは同じ活性ガス濃度では堆積がずっと効率的であり、より高い活性ガス濃度では粉塵の形成が抑制されることを意味する。非常に少ない量の酸素を使用することにより、化学的な観点からは均質な堆積物が得られ、かつ5%よりも高く、さらに10%よりも高い、例えば20%、50%、あるいはさらに60%よりも高いデューティサイクルを、粉塵の形成なしに、又は非常に限られた量の粉塵の形成のみで得ることができる。
【0042】
一実施形態では、ガス組成物は前駆物質に加えて酸素及び窒素を含む。酸素は、例えばガス組成物の0.01〜25%で使用でき、ガス組成物はさらに、99.99%〜1%の量の窒素を含むことができる。別の一実施形態では、酸素は0.01〜10%で使用でき、ガス組成物はさらに、99.99%〜1%の量の窒素を含むことができる。さらに別の一実施形態では、酸素は0.01〜1%で使用でき、ガス組成物はさらに、99.99%〜1%の量の窒素を含むことができる。本発明の方法では、必要な酸素の量が0.01%未満であっても、完全な酸化堆積物を得ることができる。窒素に加えてガス組成物は、ヘリウム、ネオン、又はアルゴンのような希ガスを含むことができる。使用される希ガスの量は、全ガス組成のうちの1%から90%もの高さまでの範囲とすることができる。95%よりも多い、例えば99%の値さえも用いることができる。この実施形態では、前駆物質の量を含む全ガス組成は、0.01〜25%の範囲の量の酸素と、99.99%から75%までの範囲の希ガス・窒素の混合物とになり、窒素と希ガスの量は上記に特定されている通りである。希ガスとしてアルゴンを使用した場合には、非常に良好な結果が得られた。
【0043】
活性ガスに加えて不活性ガスとして窒素だけを使用する実施形態もまた、有利に用いることができる。
【0044】
パルス化が粉塵の形成を低減するので、電力供給装置4は、オン時間ton及びオフ時間toffを有する周期性電気信号を供給するように構成することができ、オン時間とオフ時間の合計がこの周期性電気信号の周期(period)すなわち周期(cycle)である。
【0045】
電力供給装置4は、広い範囲の周波数が得られる電力供給装置とすることができる。例えばこれは、低い周波数(f=10〜450kHz)の電気信号をオン時間中に供給することができる。これはまた、高い周波数の、例えばf=450kHz〜30MHzの電気信号を供給することもできる。450kHz〜1MHz、又は1〜20MHzなどのような他の周波数もまた得ることができる。オン時間は、非常に短い例えば20μsから、短い例えば500μsまで変えることができる。窒素の有益な効果により、500μsよりも長い、例えば1msのオン時間もまた用いることができる。このオン時間により、動作周波数の一連の正弦波周期を有し、オン時間の総合持続時間(例えば、正弦波の10〜30周期)が0.1〜0.3msであるパルス列が効果的に得られる。これは図2のグラフに概略的に示されている。
【0046】
別の一実施形態では、非常に短いパルスが、粉塵の形成を防止するために使用される。こうした非常に短いパルスを使用すると、粉塵の形成がさらに抑制される一方、上記のガス組成物を使用することによって1%を超えるデューティサイクルを実現できるので、堆積速度は高いレベルに保たれる。
【0047】
オン時間が非常に短いAPGプラズマを使用することによって、粒子のさらなる荷電が効果的に防止され、その結果、処理空間5内での化学反応をよりいっそう効率的に制御できるようになる。
【0048】
非常に短いパルスを使用する場合には、APGプラズマのパワーオン時間は、反応種の付加的な荷電を起こさないようにするのに十分なだけ短くなり、それによって、よりずっと効果的な堆積プロセスを可能にする。これまでのところ、この現象の満足の行く説明は提供することができない。
【0049】
ミリ秒程度のオフ時間によるプラズマのパルス化は、粉塵粒子の成長を遮るのに十分であり、したがって粉塵の形成を制限するのに十分である。
【0050】
粉塵凝集中心の密度を最小化するために、リアクタの処理空間5内のガスの残留時間程度にパルス間に休止時間(toff)を用いることもまた、本発明では有利に使用することができる。この場合、パルス間の時間は、放電空間内のガスの残留時間と同等でなければならない。例えばアルゴン/酸素/HMDSOの場合では、寿命がより長い反応種があり、これは次のパルスの開始前にフラッシュする必要がある。周期時間(パルスオン時間とパルスオフ時間の合計)よりも短い残留時間が安全側であり、この残留時間は、粉塵凝集中心の累積がないようにどの場合でも選択されなければならない。Nを使用する本発明の実施形態の場合では、残留時間は、周期時間よりも高い値まで拡大することができる。これらの実施形態では、周期時間の10倍も多い残留時間を用いることができる。
【0051】
本発明の提案されたパルス化プラズマ法は、パワーオン時間ton中の最初の段階から粉塵凝集中心の形成を抑制することに基づく。さらにこれは、パワーオフ時間toffを調整することによる、またガス組成を調整することによる粉塵凝集中心の崩壊に基づく。凝集中心の総量は、プラズマガス組成物中の堆積させるべき化合物又は化学元素の前駆物質の量、並びに上記で論じた使用されるガスの混合によって、例えば酸素の百分率と、もちろんガスフローとによって決まるように見える。ガス組成物中の前駆物質の量が低減され、かつ/又は酸素のような反応ガスの量が低減される場合には、プラズマガス中の凝集中心の量もまた低減される。ガス組成物中の前駆物質の量を低減することはもちろん、堆積プロセスの効率に影響を及ぼす。最良の結果は一般に、ガス組成物のうちの2〜500ppmの前駆物質濃度と、例えば、気相の例えば0.01%、又はより多い例えば2%であるが、25%よりは少ない例えば10%の酸素濃度とで得られる。
【0052】
窒素を使用する本発明の実施形態の場合では、粉塵凝集中心の発生を制御する効率的な方法は、電力供給装置4を、概して1%を超え、又は5%を超えて例えば10%又は20%、さらに50%からのデューティサイクルで、0.05〜0.5ms程度の短いパワーオン時間により動作させることによって実現することができる。パワーオン時間ton及びパワーオフ時間toffは、上述の条件によって課される限度内ではあるが、反応性ラジカルの大きな密度、及び効率的な堆積プロセスを維持するように調整することができる。
【0053】
さらに、本発明の様々な実施形態によりデューティサイクルを増加させることはまた、フィルム材料の特性を改善するのに用いることもできることが見出された。例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム上にS膜を堆積させるのに本発明を使用すると、より大きなデューティサイクルが使用される場合では酸素透過率(OTR)が改善される。また、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム上にS膜を堆積させるために本発明を使用しても、より大きなデューティサイクルを使用する場合では水蒸気透過率(WVTR)が改善される。
【0054】
本発明によれば、プラズマ内の大気圧での気相で粉末又は粉塵の形成を防止するために極めて短いパルスが利用され、それにより基板6上の堆積物の品質が大幅に改善する。
【0055】
本発明では、反応ガスとしての酸素は多くの利点を有するが、他の反応ガス、例えば水素、二酸化炭素、アンモニア、窒素酸化物なども使用することができる。
【0056】
本発明では、前駆物質は(それだけには限らないが)以下から選択することができる。W(CO)、Ni(CO)、Mo(CO)、Co(CO)、Rh(CO)12、Re(CO)10、Cr(CO)、又はRu(CO)12、ペンタエトキシタンタル(Ta(OC)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(又はTDMAT)、SiH、CH、B又はBCl、WF、TiCl、GeH、GeSi(GeHSiH、(GeHSiH、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキシサン(TMDSO)、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルジメチルアミノシラン、(ジメチルアミノ)トリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、1−トリメチルシリルピロール、1−トリメチルシリルピロリジン、イソプロピルアミノメチルトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、(トリメチルシリル)アニリン、2−ピペリジノエチルトリメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、1−(トリメチルシリル)イミダゾール、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、2−アミノエチルアミノメチルジメチルフェニルシラン、3−(4−メチルピペラジノプロピル)トリメチルシラン、ジメチルフェニルピペラジノメチルシラン、ブチルジメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジアニリノジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ジブチルスズジアセタート、アルミニウムイソプロポキシド、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム、ジブチルジエトキシスズ、ブチルスズトリス(2,4−ペンタンジオナト)、テトラエトキシスズ、メチルトリエトキシスズ、ジエチルジエトキシスズ、トリイソプロピルエトキシスズ、エチルエトキシスズ、メチルメトキシスズ、イソプロピルイソプロポキシスズ、テトラブトキシドスズ、ジエトキシスズ、ジメトキシスズ、ジイソプロポキシスズ、ジブトキシスズ、ジブチリロキシスズ、ジエチルスズ、テトラブチルスズ、ビス(2,4−ペンタンジオナト)スズ、アセトアセトナトエチルスズ、(2,4−ペンタンジオナト)エトキシスズ、(2,4−ペンタンジオナト)ジメチルスズ、ジアセトメチルアセタートスズ、ジアセトキシスズ、ジブトキシジアセトキシスズ、ジアセトキシスズジアセトアセトナート、スタンナン、塩化スズ、テトラクロロスタンナン、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジメチルチタン、トリ(2,4−ペンタンジオナト)エチルチタン、トリス(2,4−ペンタンジオナト)チタン、トリス(アセトメチルアセタト)チタン、トリアセトキシチタン、ジプロキシプロピオニルオキシチタン、ジブチルオキシチタン、水素化モノチタン、水素化ジチタン、トリクロロチタン、テトラクロロチタン、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエチルシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、シランテトラハイドライド、ジシランヘキサハイドライド、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、イソプロポキシアルミニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケル、ビス(2,4−ペンタンジオナト)マンガン、イソプロポキシほう素、トリ−n−ブトキシアンチモン、トリ−n−ブチルアンチモン、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオナト)スズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−t−ブチルジアセトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、ジ(2,4−ペンタンジオナト)亜鉛、及びこれらの組合せさらに、例えば欧州特許出願公開第1351321号、又は欧州特許出願公開第1371752号に記載されている前駆物質を使用することもできる。一般に前駆物質は、2〜500ppmの濃度であり、例えば全ガス組成の約50ppmで使用される。
【0057】
粗い概算として、電子密度は、(半周期にわたり平均した)電力密度に比例する。実験結果によれば、パルス持続時間とプラズマ電力密度の積は5mJ/cmより小さくなければならず、あるいはより好ましくは、パワーオンのパルス中に発生する電荷密度の絶対値(電流密度と時間の積)が、例えば5マイクロクーロン/cmよりも小さく、例えば2又は1マイクロクーロン/cmである。
【0058】
本発明による最良の堆積結果は、安定に制御された大気グロー放電プラズマを使用した場合に得られる。このような安定化は、例えば図5に示された電気回路を使用することによって実現することができ、この電気回路は、図1の電力供給装置4、及びプラズマ装置10の付随電極2、3を含む。この実施形態の電力供給装置4は、中間トランス段16に接続された、例えば交流電源手段である電源15を含む。前記交流電源手段の周波数は、10kHz〜約30MHz、より詳しくは例えば100kHz〜450kHzの間で選択され、例えば100kHz〜250kHz、又は例えば100kHz〜130kHzの間で選択される。
【0059】
この図では、電極2、3から電源(すなわち交流電源手段15、及び存在する場合は中間トランス16)に戻る電力の反射を低減するために、プラズマ制御装置内にインピーダンス整合装置が設けられている。以下で説明する実施形態では、このようなインピーダンス整合装置が設けられるが、わかりやすいようにこれ以上は論じない。インピーダンス整合装置は、既知のLC並列又はLC直列整合回路網を使用して、例えばLmatchingのインダクタンスを有するコイルと、装置の残りの静電容量(すなわち主として並列インピーダンス23(例えばコンデンサ)及び/又は電極2、3の間の放電空間5の静電容量によって形成されるもの)とを使用して実施される。高周波源15は、中間トランス段16、及びインダクタンスLmatchingを有する整合コイルを介して電極2、3に接続される。
【0060】
プラズマ(すなわちAPG)装置10のこの制御装置では、飽和時のチョークインピーダンスの減少(Lsaturation)によりチョーク21上で電圧低下が発生し、それによってチョーク21と並列のコンデンサ22の短絡が起こる。図5の実施形態では、チョーク21はグランド側(すなわち電極3)に装着されている。パルス形成回路(チョーク21及びコンデンサ22)はまた、高電圧(HV)側に装着することもでき、この場合にはチョーク21がHV側(電極2)に装着される。パルス形成回路をグランド側とHV側の両方に使用することも可能である。図示の並列コンデンサ23は、挿入された容量と、グランドに対する電極2までの高電圧(HV)線及びHV電極2の容量との合計(すなわちCparallelの合計値)を示す。
【0061】
インピーダンスがRである抵抗もまた、そのインピーダンスが高から低に急激に変化する非線形特性を有する場合には、チョーク21の代わりに使用することができる。簡単にするために、チョーク21の代わりに抵抗Rを用いてこの回路をまず論じる。この場合、抵抗の電圧は次式になる。
【0062】
【数1】

【0063】
ここでRpulseは低インピーダンス状態での抵抗の抵抗値、Cpulseは抵抗Rと並列のコンデンサ22の容量、Vはインピーダンス低下のトリガリング前の初期電圧である。変位電流変化に関しては、これは、APG装置10での電圧変化によって決まり、この電圧変化は、APGリアクタ(すなわち電極2、3の間の空間5)と直列に接続された配線と電極の寄生容量によって決まる。パルス電流が非常に大きいためにそれを電源15から供給できないと想定される場合には、それに電力供給するためのエネルギーはコンデンサ22から供給されなければならず(すなわちV/Rpulse>>Igenerator)、次式が適用される。
【0064】
【数2】

【0065】
効率的なパルスブレークダウンを得るには、RCパルス回路によって生成される電圧変化が、電源15によって発生するものよりもずっと大きくなければならない。
【0066】
RCパルスシステムが下部電極3に接続される場合には、寄生容量がAPG容量よりもずっと大きいという条件を保証するために、大きな容量23がAPG電極2、3と並列に挿入される。このようにしてグランドに対するHV電極2の容量が増大される。RCパルスシステムがHV電極2に接続される場合には、グランドに対する下部電極3の容量は、より大きい容量を直列に装着することによって増大させなければならない。
【0067】
コンデンサ22の値(Cpulse)がAPG容量(CAPG)と同等であることもまた重要である。そのインピーダンスは、抵抗R(電圧低下前)よりもずっと大きくなければならない。というのは、そうでなければコンデンサ22を大きな電圧まで充電することができないからである。
【0068】
配線の寄生容量だけに頼る場合には、CAPG/Cparallel>>1、かつCpulse<<CAPGであるので、パルス形成回路システムの効果がゼロのようなこともある。回路最適化の条件が満たされる場合には、変位電流低下は次式で与えられる。
【0069】
【数3】

【0070】
この式は、パルス形成回路の電圧変化が大きい時間中、すなわちRpulsepulse程度の時間のみ有効である。Rpulseが大きいけれどあまりには大きくない場合(Rpulse≒1/ωCpulse)には、回路中の総電流は、パルス発生、及びAPGコンデンサ(電極2、3の間)での変位電流によってあまり多く摂動を起こさないが、この式によって近似的に与えられる率で低下する。上記の低電流パルスの場合の注目すべき例外があるが、RC並列パルスシステムは実際に変位電流パルスを発生し、このパルスは、インピーダンス低下の瞬間での変位電流の急激な増加によって規定され、後で減衰する。したがって、フィラメンテーションの度合い(filamentation degree)の減少は十分に無視することができる。
【0071】
使用可能な実施形態では、非線形素子として抵抗Rは使用されず、図5に示すようにチョーク21が使用される。チョーク21が、飽和していないときにインダクタンスLchokeを有し、飽和したときには小さなインピーダンスLsaturatedにすぐに切り替わるものとして簡単化すると、上記のdI/Idtの式は次式のように書き直すことができる。
【0072】
【数4】

【0073】
効率的なdI/Idt生成のために、変位電流の低下(対数導関数)は、少なくとも1/μs程度である。抵抗Rの代わりにチョーク21が使用される場合には、いくつかの補足条件が考慮される。例えば、チョーク21は、プラズマブレークダウンの前に飽和するが、この飽和は、Lmatchingと、APG装置10内に存在する諸容量の残りとによって形成されシステムに電力供給するLC共振回路に大きく影響を及ぼさない。共振回路の摂動は、チョーク21が飽和したとき、コンデンサ22(Cpulse)が短絡してAPG装置10の容量が増大することによる。共振回路の摂動を回避するために、次式の要件が設定される。
【0074】
【数5】

【0075】
したがって再び、より大きい容量Cparallelを有するコンデンサ23が、この実施形態のAPG電極2、3及びパルス形成回路からなる直列回路と並列に装着される。
【0076】
チョーク21を飽和させるには、印加電圧の振幅がプラズマパルスのブレークダウン電圧と等しいときに計算されたチョーク21を通る電流が、少なくともその飽和電流と等しくなる。しかし、チョーク21は、プラズマブレークダウンの前に十分に飽和することができないか、又はそうでなければ、チョーク飽和によって発生したパルスがプラズマブレークダウンの前に終了する。したがって条件は、APGプラズマの電圧がブレークダウン電圧Ubrと等しいときにチョーク21が依然として飽和していることである。
【0077】
【数6】



【0078】
ここで、Imaxchokeはチョーク21を通る最大可能電流であり(チョーク21が飽和しない場合に)、すなわちチョークLchokeの非飽和インピーダンスを考慮に入れて計算されたものである。Imaxchokeにはω×Lchoke×Cpulse=1のときに共振がある。このことは、チョーク21が低い電圧(及びAPGに加えられる低い電力)で飽和することを可能にし、したがって、より低いブレークダウン電圧でのプラズマの動作を可能にする。しかし、プラズマシステムの電圧低下にもまたω×Lchoke×Cpulse=1のときに共振があり、したがって、より大きな総合電圧がシステムに加えられなければならない。
【0079】
電源15の電圧の関数として表すと、チョーク電流の共振はωchoke(CAPG+Cpulse)=1に移る。ωchokepulse>1の場合だけに、チョーク飽和の結果としてチョーク21の大きなインピーダンス低下が発生する可能性があることに注意されたい。チョーク21が飽和し始めるとインピーダンスが低下するが、飽和を高めるためにはチョーク21の電流が増加しなければならない。この条件が飽和の結果として満たされた場合に、チョーク21は、パルス形成回路の共振周波数のまわりに周波数帯域を有する高電圧の電流パルスを発生する。
【0080】
【数7】

【0081】
変位電流低下のメカニズムを以下に説明する。プラズマブレークダウンによる電流周波数帯域の変化の結果としての共振の励起により、プラズマブレークダウン中に変位電流低下及び電圧低下を得ることができる。これはインピーダンス共振による。このインピーダンスは、ω×Lchoke×(Cpulse+CAPG)=1において最小値を有する。プラズマがオンのとき、プラズマのAPG容量がプラズマによって短絡され、そのときパルス形成回路20と直列に残る唯一の容量は主に、APG容量と同等であるイオン空間電荷層(sheath)の容量である。この空間電荷層の容量と比較して、誘電体容量は無視してよい。したがって、ω×Lsaturated×(Cpulse+CAPG)=1において周波数ωresの新たな共振が得られる。ここでCAPGは、プラズマがオンでのAPGの等価容量である。チョーク21の周波数帯域がプラズマの特性周波数と一致した場合には、プラズマへの電流が増大し、APG容量及び並列容量23が放電し、電圧及び変位電流の低下が発生する。
【0082】
電圧低下及び変位電流低下のメカニズムは、以下の諸段階からなる。
・インピーダンスの変化によりプラズマがオフしたとき、電流共振周波数がプラズマの特性周波数と同等な値へ変化する。
・APG等価容量がCpulseと同等になった場合に、飽和チョーク21によって発生した電圧増加パルスもまた電流共振の帯域内の周波数を有し、プラズマ電流共振がトリガされる。
・大電流によりAPGプラズマの電圧が減少する。
【0083】
上記の諸条件では、ω×Lchoke×Cpulse=1での限られた範囲の値のみが、それらが共振と関連付けられているので許容される。結論として、重要な設計基準は、
・APG容量と同等なパルスシステム容量、
・Cparallel>CAPG
・Lsaturated<Lchoke(チョーク21のフェライトコアを選択するための条件)、
・Lsaturated×Cpulse<10−12
・ω×plasmasaturated×(CAPG+Cpulse)=1、
・チョーク飽和及び大きなインダクタンス減少を実現するために、ωchokepulse>2〜3、あるいはチョークインピーダンスが主として抵抗のときの超強飽和共振の場合でωchokepulse=1、
である。
【0084】
本発明の一代替実施形態(図6に示す)では、パルスコンデンサ22と並列に直列共振LC回路が装着され、この回路は、チョーク21と、Cresの容量を有するさらなるコンデンサ24とを含む。この実施形態のチョーク21が、図5の実施形態に使用されたチョーク21と異なる諸特性を有しうることは明らかであろう。さらなるコンデンサ24の容量Cresは、その回路がAPG装置10の動作周波数で共振するように設定される。
【0085】
【数8】

【0086】
まず、この場合ではチョーク21は、飽和することがコンデンサ22(Cpulse)の放電によって防止される。これは、周波数が次式と等しくなったときのみに起こる。
【0087】
【数9】

【0088】
プラズマブレークダウンまで、回路を通って流れる電流は主として共振周波数高周波成分からなり、共振回路は抵抗性であり抵抗Rrlcを有する。プラズマブレークダウンの後、高周波の大電流成分が発生し、チョーク21が飽和し(すなわち低いインピーダンスを有する)、共振回路のインピーダンスが増加する。チョーク21が飽和できない低いプラズマ電流では、より高い周波数を有するプラズマは、共振回路を通過せずより大きなインピーダンスCpulseのコンデンサ22を通過する。したがって、このチョーク−コンデンサ回路は準容量性になり、下部電極3の電圧には少なくとも次式の急速な上昇がある。
【0089】
【数10】

【0090】
この上昇は、チョーク飽和の影響を考慮に入れた場合にはより大きくなることができ、すなわち次式になる。
【0091】
【数11】

【0092】
この実施形態における電圧上昇の最大化については、次の条件が示される。
1/ω(Cpulse+Cres)<<Rrlc
【0093】
また、チョーク21は、プラズマ電流によってより強い飽和に押し進められるように、プラズマブレークダウンのまわりではほとんど飽和してはならず、したがって次式になる。
sat=0.8UbrωC
【0094】
上記の諸条件において、電圧上昇がプラズマ電流に依存し、したがってフィードバックがプラズマ電流に依存する(したがって低電流でのフィードバックが最少になる)ことがわかる。解決策は、プラズマブレークダウン時にプラズマからのどんな寄与もなしにチョーク21がより飽和するように、インダクタンス飽和電流を定めることでよい。この場合、電圧の上昇はチョークの飽和により発生しうる。
【0095】
図5に示された実施形態のチョークとコンデンサの並列構成には、より長時間のパルスという利点があるが、変位電流の低下を遅くもする。図6に示された実施形態のチョークとコンデンサの直列構成には、プラズマとの良好な同期、及び(ブレークダウンに最適な)変位電流のより急峻な低下という利点がある。それでもその持続時間は、ブレークダウン及び/又はカットオフ領域までに限定される。両方の実施形態(例えばそれらの一方がHV電極2に接続され、他方が下部電極3に接続される)の同時装着がいっそう良好な結果をもたらしうる。
【0096】
また、APG電極2、3のどちらか一方の側での2つの並列構成、又はAPG電極2、3のどちらか一方の側での2つの直列構成、あるいはさらに一方の側での並列構成と他方の側での直列構成によっても、さらなる安定化の改善が得られる。
【0097】
別の一実施形態は、図6の実施形態と同じ構造を有するが、この場合には、パルス形成回路は必ずしも共振せず、ただし全体で誘導性のインピーダンスを有さなければならない。チョーク21の飽和の瞬間をプラズマブレークダウンにもっと近づけるために、この実施形態ではコンデンサCres24が使用される。
【0098】
プラズマ発生装置に図5及び図6の回路を使用することにより、ストリーマ、フィラメント放電、又は他の欠陥がなく、制御され安定したプラズマが得られる。
【0099】
非常に短いパルスを供給できる電源供給装置が存在しないために、大気圧グロー放電プラズマを使用しての粉塵のない化合物堆積はこれまで実現できなかった。本発明によれば、20μsから500msまでの極めて短いパルス列を発生する可能性がある図1の電源供給装置4が使用される。粉塵の形成は、オン時間tonが、処理空間内で荷電粒子を形成するのに必要な時間よりも短い、例えば0.5ms未満、又はさらに0.3ms未満である場合に防止できることが見出された。この電源供給装置を使用すると、電圧パルス列は実際に、20〜500マイクロ秒の総持続時間(パルスオン時間)を有する一連の正弦波から形成することができる。全体でパルス列は、一般にこのような正弦波の10〜30周期を含む。電源供給装置4のデューティサイクル(オン時間tonと、オン時間tonとオフ時間toffの合計との比)は1〜50%、例えば10%と20%の間で変えることができる。
【0100】
一実施形態では、図5又は図6の安定化回路、短いパルス、及びガス組成物中に窒素が存在することを含む本発明による装置は、1nm/sを超える、例えば5nm/s、又はさらに10nm/sの堆積速度を実現することができる。
【0101】
別の一実施形態では、図5又は図6どちらかの安定化回路、短いパルス、及びガス組成物中に窒素が存在することを含む本発明の装置が使用され、処理空間中で基板が通る複数の経路を有することによって、又は互いに一列に配置された複数の処理空間を有することによって、材料の複数層を付ける。この最後の実施形態では、それぞれ異なる組成の層を非常に効率的な方法で、各層の厚さを1nm以上にして、互いに重ねて付けることができる。
【0102】
本発明で一般に使用される基板は、20μm〜800μmの厚さ、例えば50μm又は200μmの厚さを有し、Sウェハ、ガラス、セラミックス、プラスチックなどから選択することができる。本発明の方法及び装置によって化合物又は化学元素の層を、比較的低いTgを有する基板上に堆積させることができ、これは、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース、PEN、PET、ポリカーボネートなどのような通常のプラスチックにもまた堆積層を設けることができることを意味する。
【0103】
本発明による堆積層を設けた基板は、それをバリアプラスチックとして使用することができるウェハ製造などの広い範囲の応用例に使用することができ、あるいは絶縁体上に導電層が必要な応用例などに使用することができる。
【0104】
第1の例示的な参考試験は、130kHzの励起周波数と、10%デューティサイクルで200マイクロ秒のパルスオン時間とを用いて実施された。電極の典型的な寸法は、ギャップ間隔が1mmで「動作長」(幅)が4cmである。ガス流は、約1m/sの典型的なガス流速を生じる。処理空間5内のガス組成物は、アルゴン、5%のO及びHMDSO(300mg/時)の混合物を含んでいた。表面6を20000倍の倍率の像(図8)で検査したところ、明瞭な粉塵の形成を伴う表面6上の層堆積が認められた。パルスオン時間が長くなるほど、さらにずっと強い粉末形成が示された。
【0105】
本発明の一実施形態による第2の例示的な試験は、130kHzの励起周波数と、10%デューティサイクルで0.2msのパルスオン時間とを用いて実施された。電極ギャップ及びガス流は、第1の例示的な参考試験の際と同じままにした。処理空間5内のガス組成物は、4対1の比のアルゴンと窒素の混合物(すなわち約76%のアルゴン、19%のN)、5%のO、及びHMDSO(300mg/時)を含んでいた。20000倍の倍率の像(図7)で検査したところ、表面6上の非常に均一な層堆積が認められた。この場合、電子顕微鏡の焦点を表面6に合わせることができるように、試料の一部に粉塵粒子を配置しなければならなかったことに注意されたい。
【0106】
このような短いパルスを発生させるために、National Instruments製インターフェースカードPCI-MIO-16E-4を備えた一般的なパーソナルコンピュータを用いて、外部発振器が作製された。所望のパルス列がプログラムされ、アナログ信号として増幅器(この場合、タイプRFPP-LF 10a)に送出される。
【0107】
APG放電プラズマのガス組成物中に窒素を酸素の量に加えて使用することによる可能なさらなる利点を調べるために、別の実験が実施された。さらに可能な利点は、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムの酸素透過率(OTR)を改善することに関連し、あるいはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの水蒸気透過率(WVTR)を改善することに関連する。
【0108】
第1の実験では、大気圧グロー放電プラズマを用いて新写真システム(APS)のPENフィルムを処理して堆積フィルムを得た。この実験で使用されたガスは、10slm(約82.7%)のアルゴン、2slm(約16.5%)の窒素、0.1slm(約0.8%)の酸素、及び300mg/時のHMDSOであった。他の実施形態で上述した直列共振回路網及びパルス回路網を使用し130kHzの周波数で動作するプラズマ発生装置のパルスパラメータは、200μsのパルス時間、及び変化するデューティサイクルであった。2%デューティサイクル、10%デューティサイクル、及び20%デューティサイクルで実施された実験の結果が図9に示されており、図は、プラズマ処理のデューティサイクルの関数として、処理されたAPS−PENフィルムのOTRを示している(OTRは、Macon Oxtran 2/21測定装置を使用して測定された)。本方法を用いて堆積させたSiO2層は、概して60nmであった。上記の他の実験で説明したように、層の堆積は、粉塵の形成がないことにより非常に均一であった。20%のデューティサイクルでは、40というバリア改善係数(OTRsubstrate/OTRsubstrate+coating)が観測された。40%のデューティサイクルを使用した別の実験では、測定されたOTRが0.03cm/m/日という結果になり、これは、より高いデューティサイクルに対して図9に示された傾向を推定できることを示す。さらに良好な結果が、酸素含有率が0.4%しかない低い場合に得られた。
【0109】
別の一連の実験が、TACフィルム上にSを堆積させるために実施された。このようなTACフィルムの重要なパラメータはWVTRである。デューティサイクルを変化させる実験が、次のガス組成、すなわち10slmのアルゴン、2slmの窒素、0.1slmの酸素、及び300mg/時HMDSO、を用いて実施された。動作周波数は再び130kHzに設定され、パルス長は200μsであった。下表はその結果を示す。
【0110】
【表1】

【0111】
やはり、プラズマ処理装置のデューティサイクルを増大させることによって、TACフィルムのWVTRを改善できるという傾向が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空間(5)内で大気圧グロー放電プラズマを使用して基板上に化合物又は化学元素を堆積させる方法であって、大気圧グロー放電プラズマが、電力を電力供給装置(4)から前記処理空間(5)内の少なくとも2つの電極(2、3)にオン時間(ton)中に加えることによって発生し、前記処理空間(5)が、堆積させるべき前記化合物又は前記化学元素の前駆物質を含むガス組成物で満たされ、前記ガス組成物が、1〜99.99%の量の窒素及び0.01〜25%の量の酸素を含む、方法。
【請求項2】
ガス組成物がさらに、ヘリウム、ネオン、又はアルゴンなどの希ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前駆物質が2〜500ppmの濃度で使用される、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ガス組成物が、75%〜99.99%の希ガスと窒素の混合物、及び0.01〜25%の量の酸素を含み、前記混合物中の窒素及び希ガスの量それぞれが1〜99%であり、前駆物質の量を含めた全ガス組成の合計が100%になる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
希ガスがアルゴンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ガス組成物がさらに、水素ガス、二酸化炭素、アンモニア、窒素酸化物などの活性ガスを含み、前記活性ガスが、一部又は完全に前記ガス組成物中の酸素に取って代わる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
パワーオンパルス中に発生する電荷密度の絶対値が5マイクロクーロン/cm未満であり、例えば2又は1マイクロクーロン/cmである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
電力が10kHz〜30MHzの周波数範囲で加えられる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
オン時間(ton)が0.02ms〜500msである、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
オン時間(ton)が、処理空間(5)内で荷電粒子を形成するのに必要な時間にほぼ相当する所定の時間よりも短い、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
所定の時間が0.5ms未満であり、例えば0.3ms未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
オン時間(ton)と、オン時間(ton)とオフ時間(toff)の合計との比であるデューティサイクルが少なくとも1%である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
基板が、プラスチック、ガラス、セラミックスなどからなる群から選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
パルス化した大気グロー放電プラズマが、プラズマ中の局所的な不安定性を相殺する安定化手段によって安定化される、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
プラズマ中の局所的な不安定性が、プラズマ電流及び変位電流を生じさせる電極に交流プラズマ通電電圧を印加することによって相殺され、放電プラズマが、動的抵抗と静的抵抗の比が低いプラズマの種類に関連した局所的な電流密度変動を制御するための変位電流変化(dI/Idt)を与えることによって制御される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
変位電流変化が、印加電圧の変化(dV/Vdt)を2つの電極に与えることによってもたらされ、前記印加電圧の変化が交流プラズマ通電電圧の動作周波数とほぼ等しく、前記変位電流変化(dI/Idt)が印加電圧の変化(dV/Vdt)よりも少なくとも5倍高い値を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ガス組成物で満たされた処理空間(5)内でパルス化した大気圧グロー放電プラズマを使用して化学元素又は化合物を堆積させるプラズマ堆積装置であって、少なくとも2つの電極(2、3)に電力を供給する電力供給装置(4)に接続された少なくとも2つの電極(2、3)と、前記処理空間(5)にガス組成物を供給するガス供給装置(8)とを含み、前記ガス組成物が、少なくとも酸素、窒素、及び堆積させるべき化学元素又は化合物の前駆物質を含み、ガス組成物が1〜99.99%の量の窒素、及び0.01〜25%の量の酸素を含む、装置。
【請求項18】
ガス供給装置(8)がさらに、請求項2〜6のいずれかに記載の方法を実施するように構成される、請求項17に記載のプラズマ堆積装置。
【請求項19】
電力供給装置(4)が、請求項7〜12のいずれかに記載の方法を実施するように構成される、請求項17又は18に記載のプラズマ堆積装置。
【請求項20】
電力供給装置(4)が、請求項14〜16のいずれかに記載の方法を実施するように構成された安定化手段を含む、請求項17、18又は19に記載のプラズマ堆積装置。
【請求項21】
処理空間(5)内で基板(6)上に材料の層を堆積させる、請求項17〜20のいずれかに記載のプラズマ堆積装置の使用。
【請求項22】
基板がポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムであり、堆積させる材料がSである、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
基板がトリアセチルセルロース(TAC)フィルムであり、堆積させる材料がSである、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜16のいずれかに記載の方法を用いて、又は請求項17〜20のいずれかに記載の装置を用いて堆積させた堆積層を備える基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2009−538989(P2009−538989A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513076(P2009−513076)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050245
【国際公開番号】WO2007/139379
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(505232782)フジフィルム マニュファクチャリング ユーロプ ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】