パルス圧縮における送信波形生成方法、送信波形生成プログラム及び送信波形生成方法によって製造されたパルス圧縮装置
【課題】S/Nの損失が少なくかつサイドローブレベルをより一層に低下させることができるパルス圧縮における送信波形生成方法を提案する。
【解決手段】レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の波形をP(f)とし、リニアチャープ波のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出し、波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じ、さらにその波形をフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが波形P(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換したものを送信波形とする。
【解決手段】レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の波形をP(f)とし、リニアチャープ波のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出し、波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じ、さらにその波形をフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが波形P(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換したものを送信波形とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス圧縮における送信波形生成方法、送信波形生成プログラム及び該送信波形生成方法によって製造されたレーダ装置、超音波診断装置、超音波非破壊検査装置等のパルス圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパルス圧縮装置において、ハードウエア等の制約により送信電力を大きくすることができない状況下では、送信電力を疑似的に向上させ、遠距離の探知性能を向上させる技術としてパルス圧縮法を利用することが知られている。パルス圧縮法として、典型的な方法は、線形FM変調波(リニアチャープ波)を送信し、目標で反射してきた反射波を受信し、送信波と同じ波形の参照波と受信波との相関をとってパルス圧縮波とする方法である。
【0003】
図12に示すように周波数を時間と共に線形に変化させた場合、そのパワースペクトル密度は矩形状である。パルス圧縮波は、パワースペクトル密度の逆フーリエ変換となるから、sinc関数として得られる。よって、メインローブの他に、その両側に、レンジサイドローブが現れるという問題がある。また、現実のパワースペクトル密度は理想的な矩形状にはなっておらず、周波数の立ち上がりと立ち下がりの部分にリンギングノイズ状のリプルが発生しており、このリプルによって、レンジサイドローブがより増幅される傾向となる、という問題が発生する。
【0004】
従来このレンジサイドローブについての対策としては、次の方法が知られている。
1) パルス圧縮後段で、レンジサイドローブ抑圧処理を行う(例えば、特許文献1、非特許文献1、2)
2) 振幅変調をかけたレンジサイドローブレベルが低い送信波を使用する(例えば、特許文献2、非特許文献3)
3) 周波数変調をかけたレンジサイドローブレベルが低い送信波を使用する(例えば、非特許文献4、5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−142507号公報
【特許文献2】特開平5−27019号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Merrill Skolnik, “RADAR HANDBOOK Third Edition”, 2008, McGraw-Hill
【非特許文献2】J.R.Klauder, A.C.Price, S.Darlington, and W.J.Albersheim, “The Theory and Design of Chirp Radars”, 1960, The Bell System Technical Journal vol.39
【非特許文献3】Y.Takeuchi, “Chirped Excitation for <-100dB Time Sidelobe Echo Sounding”, 1995, IEEE Ultrasonics Symposium p1309-p1314
【非特許文献4】C.E.Cook, J.Paolillo, “A Pulse Compression Predistortion Function for Efficient Sidelobe Reduction in High-Power Radar”, 1964, Proc IEEE 52 p377-p389
【非特許文献5】Armin.W.Doerry, “Generating Nonlinear FM Chirp Waveforms for Radar”, 2006, SANDIA REPORT
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、1)の方法では、パルス圧縮後段にレンジサイドローブ抑圧回路を設ける必要があり、回路規模が増大するという問題がある。また、レンジサイドローブ抑圧処理の結果としてS/N損失が悪化するという問題がある。例えば、非特許文献2の方法で行った場合、レンジサイドローブレベルを−40dB程度にするためには、S/Nが1dB程度損失する。
【0008】
2)の方法では、振幅変調をかける範囲を長くとれば十分に低いサイドローブレベルを得ることができるものの、振幅変調をかけたことで送信電力が低下して、S/N損失が生じる。例えば、非特許文献3では、−100dB以下のサイドローブレベルを得ているものの、振幅変調の影響により、S/Nに6dBの損失が生じている。
【0009】
3)の方法では、S/Nの損失はないものの、得られるサイドローブレベルは−40〜−50dB程度である。
【0010】
このように従来の方法では、それぞれ問題を有しており、特に1)、2)のようにS/Nが損失した場合にコストに与える影響が大きく、損失したS/Nを補うためには、送信電力を大きくしなければならない、という問題がある。
【0011】
また、要求されるサイドローブレベルが−50dB以下である場合には、3)の方法では限界がある。
【0012】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、その目的は、S/Nの損失が少なくかつサイドローブレベルをより一層に低下させることができるパルス圧縮における送信波形生成方法、送信波形生成プログラム及び送信波形生成方法によって製造されたパルス圧縮装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1記載の発明は、チャープ波を用いて送信波を送信し、送信波の反射波を受信してその受信信号をパルス圧縮してパルス圧縮波形を得るパルス圧縮のための送信波形生成方法であって、
レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の第1目的波形をP1(f)とし、リニアチャープ波形のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P1(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出する周波数変調工程と、
周波数変調工程で算出したノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じる振幅変調工程と、
振幅変調工程で得られた波形をさらにフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが送信波形のパワースペクトル密度の第2目的波形P2(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換した波形を生成する周波数軸上での補正工程と、
を備え、リニアチャープ波形から送信波形を生成するパルス圧縮における送信波形生成方法であることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記周波数変調工程において、チャープ率c(t)が前記振幅変調工程で乗じる窓関数w(t)の二乗に比例するような波形を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記周波数変調工程で用いる前記第1目的波形P1(f)と、前記周波数軸上での補正工程において用いる前記第2目的波形P2(f)とは同一であることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記周波数軸上での補正工程において用いる前記第2目的波形P2(f)は、振幅変調工程で得られた前記波形のパワースペクトル密度の波形を平滑化したものであることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発明において、前記周波数変調工程で用いる前記第1目的波形P1(f)は、窓関数であることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発明において、前記周波数軸上での補正工程は、振幅変調工程で得られた前記波形をフーリエ級数展開して得られた振幅スペクトルをA(f)としたときに、振幅スペクトルA(f)に√(P2(f))/A(f)を乗じて振幅スペクトルの補正を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、チャープ波を用いて送信波を送信し、送信波の反射波を受信してその受信信号をパルス圧縮してパルス圧縮波形を得るパルス圧縮のための送信波形生成プログラムであって、
コンピュータに、
レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の第1目的波形をP1(f)とし、リニアチャープ波形のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P1(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出する周波数変調工程と、
周波数変調工程で算出したノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じる振幅変調工程と、
振幅変調工程で得られた波形をさらにフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが送信波形のパワースペクトル密度の第2目的波形P2(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換した波形を生成する周波数軸上での補正工程と、
を実行させて、リニアチャープ波形から送信波形を生成するパルス圧縮における送信波形生成プログラムであることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法により生成された送信波形を格納するメモリと、該メモリから送信波形信号を読み出す波形読み出し部と、送信波形信号をD/A変換してアナログ送信信号に変換するD/Aコンバータと、送信信号を増幅する増幅器と、増幅された送信信号を送信波として放射すると共に送信波の反射波を受信するトランスデューサと、受信波をA/D変換して受信波形信号に変換するA/Dコンバータと、受信波形信号と参照波形信号との相関をとってパルス圧縮波形信号を求めるパルス圧縮部と、を備えるパルス圧縮装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、パルス圧縮のための送信波形を生成するにあたり、周波数変調工程において、リニアチャープ波形に基づき周波数変調を行ってノンリニアチャープ波形とし、そのパワースペクトル密度が、レンジサイドローブが十分に低い所望のレベルとなる理想のパルス圧縮波形のフーリエ変換である第1目的波形となるように周波数変調を行い、振幅変調工程において、ノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りに窓関数を乗ずることで、周波数変調工程で算出されたノンリニアチャープ波形のパワースペクトル密度のリプルを除去することができ、さらに周波数軸上での補正工程において、周波数軸上でスペクトルを合わせることで、振幅変調工程で落としきれないリプルをさらに除去する。このようにして生成される送信波形を用いて、送受信を行いパルス圧縮を行うと、S/N損失が少なくかつ所望の低いレベルのサイドローブレベルを持つパルス圧縮波形とすることができる。
【0022】
周波数変調工程において、チャープ率を、振幅変調工程で乗じる窓関数の二乗に比例するようにすることで、振幅変調工程による抑圧によるパワースペクトル密度の変動を予め考慮して変調を行うことができ、パルス圧縮波形のレンジサイドローブが所望のレベルとなるようにすることができる。
【0023】
また、周波数変調工程で用いる第1目的波形P1(f)と、周波数軸上での補正工程において用いる第2目的波形P2(f)とを、同じとすることで、パルス圧縮波形を前記レンジサイドローブが所望のレベルとなったパルス圧縮波形とすることができる。または、周波数軸上での補正工程において用いる第2目的波形P2(f)を、振幅変調工程で得られた波形のパワースペクトル密度の波形を平滑化したものとすることで、周波数軸上での補正工程での負荷を低減させることができる。
【0024】
また、第1目的波形P1(f)を任意の窓関数から選択することにより、その逆フーリエ変換した波形がレンジサイドローブの低い波形とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるパルス圧縮における送信波形生成方法によって製造されたパルス圧縮装置の全体を表す概略ブロック図である。
【図2】リニアチャープ波形とノンリニアチャープ波形の時間と瞬時周波数との関係を表す図である。
【図3】リニアチャープ波形とノンリニアチャープ波形のパワースペクトル密度の関係を表す図である。
【図4】周波数変調後のチャープ波の説明図である。
【図5】振幅変調後の窓関数をかけた送信波を表す波形図である。
【図6】送信波形を生成してパルス圧縮装置を製造する手順を表すフローチャートである。
【図7】周波数係数を求めるフローチャートである。
【図8】パルス圧縮波形の目的波形(破線)と生成波形(実線)を表し、(a)は周波数変調工程後、(b)は振幅変調工程後、(c)は周波数軸上での補正工程後を表す。
【図9】送信波形のパワースペクトル密度のログスケールの目的波形(破線)と生成波形(実線)を表し、(a)は周波数変調工程後、(b)は振幅変調工程後、(c)は周波数軸上での補正工程後を表す。
【図10】送信波形のパワースペクトル密度のリニアスケールの目的波形(破線)と生成波形(実線)を表し、(a)は周波数変調工程後、(b)は振幅変調工程後、(c)は周波数軸上での補正工程後を表す。
【図11】生成された送信波形の時間と瞬時周波数との関係を表す図である。
【図12】従来のリニアチャープ波による(a)は送信波の時間と瞬時周波数との関係を表す図、(b)は送信波形、(c)は送信波のパワースペクトル密度、(d)はリニアスケールで示したパルス圧縮波形、(e)はログスケールで示したパルス圧縮波形である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるパルス圧縮における送信波形生成方法によって製造されたパルス圧縮装置10を表している。パルス圧縮装置10としては、レーダ装置、超音波診断装置、超音波非破壊検査装置等の電波、超音波といった探知波を送受信する装置とすることが可能である。
【0027】
図示したように、パルス圧縮装置10は、送信波形信号及び参照波形信号が格納されたメモリ12、メモリ12に格納された送信波形信号を読み出す波形読み出し部14、波形読み出し部14で読み出したディジタル送信波形信号をアナログ送信信号に変換するD/Aコンバータ16、D/Aコンバータ16からのアナログ送信信号を増幅するアンプ18、アンプ18で増幅された信号を送信波として放射すると共に、目標から反射してきた反射波を受信するアンテナや超音波変換器等のトランスデューサ20、トランスデューサ20からの受信波をディジタル受信波形信号に変換するA/Dコンバータ24、メモリ12に格納された参照波形信号を読み出すと共に受信波形信号との相関をとることでパルス圧縮波形を得るパルス圧縮部26と、を備える。レーダ装置など、周波数の変換を行うものでは、D/Aコンバータ直後とA/Dコンバータ直前に、変調回路が加えられる。
【0028】
メモリ12で格納される送信波形信号及び参照波形信号は原則、同じ波形信号である。
【0029】
波形読み出し部14及びパルス圧縮部26は、マイクロコンピュータまたはFPGAなどで構成することができる。
【0030】
ここで、パルス圧縮装置10はレーダ装置とした場合、従来のマイクロ波を発振するマグネトロンを使用せずに、アンプ18例えば半導体アンプによる増幅信号を使用することができ、これによって、従来のマグネトロンを使用する送信電力よりも低い送信電力となっており、この低い送信電力をパルス圧縮によって疑似的に向上させることができる。
【0031】
パルス圧縮部26で行うパルス圧縮は、受信波形信号と参照波形信号との相関処理がなされ、畳み込み演算
【0032】
【数1】
で表される。ここで、X(t)はパルス圧縮波形、x(t)は受信波形、r*(t)は参照波形で、送信波形の複素共役波形、Tは送信パルス幅である。パルス圧縮を離散系で表せば、単純なFIRフィルタ処理となる。
送信波が反射されて戻ってきたときは、(1)式は、
【0033】
【数2】
となる。即ち、パルス圧縮部26で出力されるパルス圧縮波形は送信波の自己相関関数となる。ウィナー・ヒンチンの定理により、送信波の自己相関関数は送信波のパワースペクトル密度を逆フーリエ変換した波形である。
【0034】
例えば、リニアチャープの場合、送信波形のパワースペクトル密度は近似的に矩形と見なせるため、そのパルス圧縮波形は高いレンジサイドローブレベルを持つ。従って、レンジサイドローブを低くするためには、送信波形は、そのパワースペクトル密度を逆フーリエ変換したときに低いサイドローブレベルとなるような波形が選択されるとよいことが分かる。
【0035】
以下、そのように所望の低いレベルとなるレンジサイドローブを持つ波形を理想のパルス圧縮波形とし、そのフーリエ変換した波形を、送信波形のパワースペクトル密度の目的波形とする。目的波形としては、任意の窓関数とすることができ、窓関数としては、ハニング窓、ハミング窓、ガウス窓などとすることができる。
【0036】
本発明は、この送信波形のパワースペクトル密度を目的波形に整形するための方法を提案するものである。目的波形に整形するために、好ましい実施形態では、リニアチャープ波に対して、1)周波数変調、2)振幅変調、3)周波数軸上での補正の3段階の処理を順次行う。これらの各工程の処理について順次説明を行う。
【0037】
1) 周波数変調
周波数変調では、図2に示すように、リニアチャープ波形を変形させて、ノンリニアチャープ波形として、そのパワースペクトル密度を目的波形に近い波形にする。
【0038】
このため、チャープ率とパワースペクトル密度の強度とは反比例の関係にあることを利用する(図3)。パルス幅T、周波数掃引幅Bのリニアチャープを考えた場合、チャープ率はc=B/Tで一定である。これに対して、パワースペクトル密度の目的波形をP(f)とし、リニアチャープのパワースペクトルをP’(f)とすると、チャープ率c(t)を、
【0039】
【数3】
とすれば、目的波形のパワースペクトルが得られる。ここで、Cは周波数掃引幅Bに関する制約条件である
【0040】
【数4】
を満足させるための定数である。このCを周波数定数と呼ぶ。離散系においては、k番目のサンプリング点の時刻をtk、サンプリング間隔をΔtとして、チャープ率c(tk)を、
【0041】
【数5】
とすれば、目的波形のパワースペクトルが得られることになる。
【0042】
但し、次段で振幅変調を行うため、パワースペクトル密度の振幅変調の影響を予め考慮する必要がある。即ち、振幅がw倍された区間の周波数は、パワーがw2倍されると近似的にみなせる。従って、パワースペクトル密度を目的波形に整形するためには、振幅変調によるパワーの落ち込みを予め考慮して、
【0043】
【数6】
とする。ここでwkは、k番目のサンプリング点における振幅変調量である。
【0044】
2)振幅変調
1)の周波数変調のみでパワースペクトル密度の波形整形をした場合、リプルが生じてパワースペクトル密度の波形が歪む。このリプルが発生する要因について簡単に説明する。図4は、離散系での周波数変調後のチャープ波モデルである。k番目の離散点でのチャープ率ck、周波数fk、位相φk、パワースペクトル密度の目的波形をP(f)、リニアチャープのパワースペクトル密度をP’(f)、周波数係数をCとする。
ここで、時刻tk〜tk+1の波形はリニアチャープで、
【0045】
【数7】
と書ける。周波数変調によりパワースペクトルを整形したノンリニアチャープ波形X(t)は、各微小時間のリニアチャープの和で、
【0046】
【数8】
である。(8)式からX(t)の周波数特性は、
【0047】
【数9】
となる。(9)式の積分項はxk(t)の周波数特性で、(7)式を代入すると、
【0048】
【数10】
となる。(10)式をさらに書き直すと、
【0049】
【数11】
となる。ここで、Z(u)は複素フレネル積分で
【0050】
【数12】
である。よって、
【0051】
【数13】
は(11)式の複素フレネル積分の寄与を受け、この複素フレネル積分の寄与により、X(t)の周波数特性は、目的波形に対してリプルとして生じることになる。
【0052】
このようなリプルを除去するために、送信波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる振幅変調を行う。
【0053】
振幅変調波形は、図5に示すような窓関数などの滑らかに減衰する関数を用いるとよい。窓関数の違いが性能に与える影響は小さいために、任意の窓関数w(t)またはwkを用いることができる。
【0054】
3) 周波数軸上での補正
1)の周波数変調及び2)の振幅変調を行って生成された送信波形は、そのパワースペクトル密度の波形にまだ僅かなリプルまたは歪みが残存することを避けることはできず、この僅かに残ったリプルまたは歪みがパルス圧縮波形のレンジサイドローブの原因となる。このさらに残ったパワースペクトル密度の波形からリプルまたは歪みを除去して目的波形となるようにするために、周波数軸上での補正を行い、送信波形の振幅スペクトルがパワースペクトル密度の目的波形P(f)の振幅スペクトル√(P(f))と一致するように補正する。
【0055】
送信波x(t)、送信波の振幅スペクトルA(f)、送信波の位相スペクトルφ(f)とする。
まず、送信波x(t)をフーリエ級数展開する。このとき、
【0056】
【数14】
である。
次に、フーリエ級数の項それぞれに、
【0057】
【数15】
を乗じる。即ち、
【0058】
【数16】
とする。
【0059】
(16)式で振幅を補正したスペクトルを逆フーリエ変換して時間軸波形に戻して、送信波形とする。
【0060】
次に、以上の1)〜3)までの原理に基づき、送信波形を生成してパルス圧縮装置10を製造する方法を図6のフローチャートに基づき説明する。この処理は、送信波形生成プログラムによりコンピュータで実行することができる。
【0061】
(1) まず、送信パルス幅T、周波数掃引幅B、サンプリング間隔Δt、パワースペクトルの目的波形P(f)(=第1目的P1(f))を設定する(ステップS10)。
例えば、目的波形としてハニング窓とする場合、P(f)は、
【0062】
【数17】
である。ここで、便宜上、時刻T/2における周波数fC、及び位相φは0とし、周波数fは−B/2→B/2と変化させることとする。このとき、
【0063】
【数18】
となり、T/2を中心に対称となるので、T/2〜Tの範囲についてのみ計算を行うことで、計算を簡略化することができる。
【0064】
(2) 以上の準備が整った状態で、周波数係数Cを算出する(ステップS12)。
周波数係数Cは、(4)式を満足するものであり、周波数係数Cを変数とする関数B(C)としたときに、(6)式からB(C)は以下の式で表される。
【0065】
【数19】
【0066】
ここで、CはC=kBP’(f)/Tで表され、kは定数である。リニアチャープのパワースペクトルであるP’(f)は矩形として考えられるので、P’(f)も定数と見なすことができる。
従って、P’(f)をkに含めてC=kB/Tとして考えると、B(C)はCに関して単調増加する関数であり、
【0067】
【数20】
となるClとCuを考えると、B(C)=BとなるCは、ClとCuの区間に存在する。よって、図7に示すフローチャートで示す2分探査を行えば、B(C)=BとなるCを求めることができる。
【0068】
(3) 次に、求めたC及び次式
【0069】
【数21】
を用いて、チャープ率c(tk)と周波数f(tk)を算出する(ステップS14)。算出区間はT/2〜Tである。
【0070】
(4) 次に、次式を用いて位相を求め、波形を算出する(ステップS16)。
【0071】
【数22】
【0072】
尚、ステップS14及びステップS16において、サンプリング点の総数が偶数(2N)であるときには、時刻T/2となるデータ位置が、N番目のサンプリング点と、N+1番目のサンプリング点との間の位置となる。この場合には、データの中心がT/2からΔtだけずれた時刻として計算するとよい。計算誤差として僅かなものであっても、この誤差がレンジサイドローブの原因となるからである。
【0073】
(5) 次に、次式を用いて0〜T/2の波形を決定する(ステップS18)。
【0074】
【数23】
【0075】
(6) x(t)をフーリエ級数展開をする(ステップS20)。
【0076】
【数24】
【0077】
(7) 振幅スペクトルを目的波形のパワースペクトル密度P(f)(=第2目的P2(f))で補正し、補正した振幅スペクトルを逆フーリエ変換して時間軸波形に戻す(ステップS22)。
【0078】
【数25】
【0079】
(8) ステップS22で得られた波形x(t)を、メモリ12に格納して、パルス圧縮装置10を構成する(ステップS23)。
【0080】
図8〜図10は、パルス幅T=12.8μsec、掃引幅B=28MHz(−14MHz〜14MHz)とし、目的の波形P(f)をガウス窓
【0081】
【数26】
とし、振幅変調工程における窓関数をハニング窓
【0082】
【数27】
とした場合の各工程におけるパルス圧縮波形、パワースペクトル密度のログスケール、リニアスケールの波形をそれぞれ表しており、破線が目的波形、実線が生成波形を表している。また、図11は、生成された送信波形の周波数遷移を表している。
【0083】
図8〜図10から分かるように、1)の周波数変調工程を行っただけでは、振幅変調分を予め加味して変調を行っているため、パルス圧縮波形及び送信波形において、それぞれ目的波形と生成波形との間に大きな差があり、2)の振幅変調工程を経ると、生成波形が目的波形に近いものとすることができるが、これだけではまだ差があり、パルス圧縮波形にレンジサイドローブが現れている。3)の周波数軸上での補正工程を経ると、生成波形は目的波形とほぼ同じになり、パルス圧縮波形のサイドローブレベルが低下できる。この例の場合、S/N損失が0.30dB、サイドローブレベルはおよそ−90dBである。
【0084】
このように、本発明によれば、生成される送信波形を用いて、送受信を行いパルス圧縮を行うと、S/N損失が少なくかつ所望の低いレベルのサイドローブレベルを持つパルス圧縮波形とすることができる。
【0085】
尚、以上の実施形態では、予め決めた目的波形にパワースペクトル密度の波形が一致するように生成を行ったが、これに限るものではなく、予め決められた目的波形(=第1目的P1(f))と、最終的な目的波形(=第2目的P2(f))とを、異ならしめることもできる。具体的には、1)の周波数変調工程と2)の振幅変調工程とを経て得たパワースペクトル密度の波形を平滑化してできる波形を最終目的(=第2目的P2(f))とすることとして、3)の周波数軸上での補正工程での補正量を僅かにすることもできる。1)の周波数変調工程と2)の振幅変調工程とを経て得た波形を平滑化したものであっても、リプルが除去されたものであれば、それを逆フーリエ変換したときに低いサイドローブレベルとすることができるからである。平滑化してできる波形としては、振幅変調工程で得られた波形との偏差が最小二乗値をとる任意の窓関数その他の関数とすることができる。
【0086】
周波数軸上での補正は、その補正量が僅かとすることが好ましい。周波数軸上での乗算は時間軸上での畳み込みとなるので、周波数軸上での乗算が大きいと、時間軸に戻した波形が大きく崩れるおそれがあるからである。従って、周波数軸上での補正は、1)の周波数変調工程と2)の振幅変調工程で、目的とする波形に極力近づけた上で行うことが必要である。
【符号の説明】
【0087】
10 パルス圧縮装置
12 メモリ
14 波形読み出し部
16 D/Aコンバータ
18 アンプ(増幅器)
20 トランスデューサ
24 A/Dコンバータ
26 パルス圧縮部
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス圧縮における送信波形生成方法、送信波形生成プログラム及び該送信波形生成方法によって製造されたレーダ装置、超音波診断装置、超音波非破壊検査装置等のパルス圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパルス圧縮装置において、ハードウエア等の制約により送信電力を大きくすることができない状況下では、送信電力を疑似的に向上させ、遠距離の探知性能を向上させる技術としてパルス圧縮法を利用することが知られている。パルス圧縮法として、典型的な方法は、線形FM変調波(リニアチャープ波)を送信し、目標で反射してきた反射波を受信し、送信波と同じ波形の参照波と受信波との相関をとってパルス圧縮波とする方法である。
【0003】
図12に示すように周波数を時間と共に線形に変化させた場合、そのパワースペクトル密度は矩形状である。パルス圧縮波は、パワースペクトル密度の逆フーリエ変換となるから、sinc関数として得られる。よって、メインローブの他に、その両側に、レンジサイドローブが現れるという問題がある。また、現実のパワースペクトル密度は理想的な矩形状にはなっておらず、周波数の立ち上がりと立ち下がりの部分にリンギングノイズ状のリプルが発生しており、このリプルによって、レンジサイドローブがより増幅される傾向となる、という問題が発生する。
【0004】
従来このレンジサイドローブについての対策としては、次の方法が知られている。
1) パルス圧縮後段で、レンジサイドローブ抑圧処理を行う(例えば、特許文献1、非特許文献1、2)
2) 振幅変調をかけたレンジサイドローブレベルが低い送信波を使用する(例えば、特許文献2、非特許文献3)
3) 周波数変調をかけたレンジサイドローブレベルが低い送信波を使用する(例えば、非特許文献4、5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−142507号公報
【特許文献2】特開平5−27019号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Merrill Skolnik, “RADAR HANDBOOK Third Edition”, 2008, McGraw-Hill
【非特許文献2】J.R.Klauder, A.C.Price, S.Darlington, and W.J.Albersheim, “The Theory and Design of Chirp Radars”, 1960, The Bell System Technical Journal vol.39
【非特許文献3】Y.Takeuchi, “Chirped Excitation for <-100dB Time Sidelobe Echo Sounding”, 1995, IEEE Ultrasonics Symposium p1309-p1314
【非特許文献4】C.E.Cook, J.Paolillo, “A Pulse Compression Predistortion Function for Efficient Sidelobe Reduction in High-Power Radar”, 1964, Proc IEEE 52 p377-p389
【非特許文献5】Armin.W.Doerry, “Generating Nonlinear FM Chirp Waveforms for Radar”, 2006, SANDIA REPORT
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、1)の方法では、パルス圧縮後段にレンジサイドローブ抑圧回路を設ける必要があり、回路規模が増大するという問題がある。また、レンジサイドローブ抑圧処理の結果としてS/N損失が悪化するという問題がある。例えば、非特許文献2の方法で行った場合、レンジサイドローブレベルを−40dB程度にするためには、S/Nが1dB程度損失する。
【0008】
2)の方法では、振幅変調をかける範囲を長くとれば十分に低いサイドローブレベルを得ることができるものの、振幅変調をかけたことで送信電力が低下して、S/N損失が生じる。例えば、非特許文献3では、−100dB以下のサイドローブレベルを得ているものの、振幅変調の影響により、S/Nに6dBの損失が生じている。
【0009】
3)の方法では、S/Nの損失はないものの、得られるサイドローブレベルは−40〜−50dB程度である。
【0010】
このように従来の方法では、それぞれ問題を有しており、特に1)、2)のようにS/Nが損失した場合にコストに与える影響が大きく、損失したS/Nを補うためには、送信電力を大きくしなければならない、という問題がある。
【0011】
また、要求されるサイドローブレベルが−50dB以下である場合には、3)の方法では限界がある。
【0012】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、その目的は、S/Nの損失が少なくかつサイドローブレベルをより一層に低下させることができるパルス圧縮における送信波形生成方法、送信波形生成プログラム及び送信波形生成方法によって製造されたパルス圧縮装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1記載の発明は、チャープ波を用いて送信波を送信し、送信波の反射波を受信してその受信信号をパルス圧縮してパルス圧縮波形を得るパルス圧縮のための送信波形生成方法であって、
レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の第1目的波形をP1(f)とし、リニアチャープ波形のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P1(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出する周波数変調工程と、
周波数変調工程で算出したノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じる振幅変調工程と、
振幅変調工程で得られた波形をさらにフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが送信波形のパワースペクトル密度の第2目的波形P2(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換した波形を生成する周波数軸上での補正工程と、
を備え、リニアチャープ波形から送信波形を生成するパルス圧縮における送信波形生成方法であることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記周波数変調工程において、チャープ率c(t)が前記振幅変調工程で乗じる窓関数w(t)の二乗に比例するような波形を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記周波数変調工程で用いる前記第1目的波形P1(f)と、前記周波数軸上での補正工程において用いる前記第2目的波形P2(f)とは同一であることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記周波数軸上での補正工程において用いる前記第2目的波形P2(f)は、振幅変調工程で得られた前記波形のパワースペクトル密度の波形を平滑化したものであることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発明において、前記周波数変調工程で用いる前記第1目的波形P1(f)は、窓関数であることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発明において、前記周波数軸上での補正工程は、振幅変調工程で得られた前記波形をフーリエ級数展開して得られた振幅スペクトルをA(f)としたときに、振幅スペクトルA(f)に√(P2(f))/A(f)を乗じて振幅スペクトルの補正を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、チャープ波を用いて送信波を送信し、送信波の反射波を受信してその受信信号をパルス圧縮してパルス圧縮波形を得るパルス圧縮のための送信波形生成プログラムであって、
コンピュータに、
レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の第1目的波形をP1(f)とし、リニアチャープ波形のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P1(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出する周波数変調工程と、
周波数変調工程で算出したノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じる振幅変調工程と、
振幅変調工程で得られた波形をさらにフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが送信波形のパワースペクトル密度の第2目的波形P2(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換した波形を生成する周波数軸上での補正工程と、
を実行させて、リニアチャープ波形から送信波形を生成するパルス圧縮における送信波形生成プログラムであることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法により生成された送信波形を格納するメモリと、該メモリから送信波形信号を読み出す波形読み出し部と、送信波形信号をD/A変換してアナログ送信信号に変換するD/Aコンバータと、送信信号を増幅する増幅器と、増幅された送信信号を送信波として放射すると共に送信波の反射波を受信するトランスデューサと、受信波をA/D変換して受信波形信号に変換するA/Dコンバータと、受信波形信号と参照波形信号との相関をとってパルス圧縮波形信号を求めるパルス圧縮部と、を備えるパルス圧縮装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、パルス圧縮のための送信波形を生成するにあたり、周波数変調工程において、リニアチャープ波形に基づき周波数変調を行ってノンリニアチャープ波形とし、そのパワースペクトル密度が、レンジサイドローブが十分に低い所望のレベルとなる理想のパルス圧縮波形のフーリエ変換である第1目的波形となるように周波数変調を行い、振幅変調工程において、ノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りに窓関数を乗ずることで、周波数変調工程で算出されたノンリニアチャープ波形のパワースペクトル密度のリプルを除去することができ、さらに周波数軸上での補正工程において、周波数軸上でスペクトルを合わせることで、振幅変調工程で落としきれないリプルをさらに除去する。このようにして生成される送信波形を用いて、送受信を行いパルス圧縮を行うと、S/N損失が少なくかつ所望の低いレベルのサイドローブレベルを持つパルス圧縮波形とすることができる。
【0022】
周波数変調工程において、チャープ率を、振幅変調工程で乗じる窓関数の二乗に比例するようにすることで、振幅変調工程による抑圧によるパワースペクトル密度の変動を予め考慮して変調を行うことができ、パルス圧縮波形のレンジサイドローブが所望のレベルとなるようにすることができる。
【0023】
また、周波数変調工程で用いる第1目的波形P1(f)と、周波数軸上での補正工程において用いる第2目的波形P2(f)とを、同じとすることで、パルス圧縮波形を前記レンジサイドローブが所望のレベルとなったパルス圧縮波形とすることができる。または、周波数軸上での補正工程において用いる第2目的波形P2(f)を、振幅変調工程で得られた波形のパワースペクトル密度の波形を平滑化したものとすることで、周波数軸上での補正工程での負荷を低減させることができる。
【0024】
また、第1目的波形P1(f)を任意の窓関数から選択することにより、その逆フーリエ変換した波形がレンジサイドローブの低い波形とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるパルス圧縮における送信波形生成方法によって製造されたパルス圧縮装置の全体を表す概略ブロック図である。
【図2】リニアチャープ波形とノンリニアチャープ波形の時間と瞬時周波数との関係を表す図である。
【図3】リニアチャープ波形とノンリニアチャープ波形のパワースペクトル密度の関係を表す図である。
【図4】周波数変調後のチャープ波の説明図である。
【図5】振幅変調後の窓関数をかけた送信波を表す波形図である。
【図6】送信波形を生成してパルス圧縮装置を製造する手順を表すフローチャートである。
【図7】周波数係数を求めるフローチャートである。
【図8】パルス圧縮波形の目的波形(破線)と生成波形(実線)を表し、(a)は周波数変調工程後、(b)は振幅変調工程後、(c)は周波数軸上での補正工程後を表す。
【図9】送信波形のパワースペクトル密度のログスケールの目的波形(破線)と生成波形(実線)を表し、(a)は周波数変調工程後、(b)は振幅変調工程後、(c)は周波数軸上での補正工程後を表す。
【図10】送信波形のパワースペクトル密度のリニアスケールの目的波形(破線)と生成波形(実線)を表し、(a)は周波数変調工程後、(b)は振幅変調工程後、(c)は周波数軸上での補正工程後を表す。
【図11】生成された送信波形の時間と瞬時周波数との関係を表す図である。
【図12】従来のリニアチャープ波による(a)は送信波の時間と瞬時周波数との関係を表す図、(b)は送信波形、(c)は送信波のパワースペクトル密度、(d)はリニアスケールで示したパルス圧縮波形、(e)はログスケールで示したパルス圧縮波形である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるパルス圧縮における送信波形生成方法によって製造されたパルス圧縮装置10を表している。パルス圧縮装置10としては、レーダ装置、超音波診断装置、超音波非破壊検査装置等の電波、超音波といった探知波を送受信する装置とすることが可能である。
【0027】
図示したように、パルス圧縮装置10は、送信波形信号及び参照波形信号が格納されたメモリ12、メモリ12に格納された送信波形信号を読み出す波形読み出し部14、波形読み出し部14で読み出したディジタル送信波形信号をアナログ送信信号に変換するD/Aコンバータ16、D/Aコンバータ16からのアナログ送信信号を増幅するアンプ18、アンプ18で増幅された信号を送信波として放射すると共に、目標から反射してきた反射波を受信するアンテナや超音波変換器等のトランスデューサ20、トランスデューサ20からの受信波をディジタル受信波形信号に変換するA/Dコンバータ24、メモリ12に格納された参照波形信号を読み出すと共に受信波形信号との相関をとることでパルス圧縮波形を得るパルス圧縮部26と、を備える。レーダ装置など、周波数の変換を行うものでは、D/Aコンバータ直後とA/Dコンバータ直前に、変調回路が加えられる。
【0028】
メモリ12で格納される送信波形信号及び参照波形信号は原則、同じ波形信号である。
【0029】
波形読み出し部14及びパルス圧縮部26は、マイクロコンピュータまたはFPGAなどで構成することができる。
【0030】
ここで、パルス圧縮装置10はレーダ装置とした場合、従来のマイクロ波を発振するマグネトロンを使用せずに、アンプ18例えば半導体アンプによる増幅信号を使用することができ、これによって、従来のマグネトロンを使用する送信電力よりも低い送信電力となっており、この低い送信電力をパルス圧縮によって疑似的に向上させることができる。
【0031】
パルス圧縮部26で行うパルス圧縮は、受信波形信号と参照波形信号との相関処理がなされ、畳み込み演算
【0032】
【数1】
で表される。ここで、X(t)はパルス圧縮波形、x(t)は受信波形、r*(t)は参照波形で、送信波形の複素共役波形、Tは送信パルス幅である。パルス圧縮を離散系で表せば、単純なFIRフィルタ処理となる。
送信波が反射されて戻ってきたときは、(1)式は、
【0033】
【数2】
となる。即ち、パルス圧縮部26で出力されるパルス圧縮波形は送信波の自己相関関数となる。ウィナー・ヒンチンの定理により、送信波の自己相関関数は送信波のパワースペクトル密度を逆フーリエ変換した波形である。
【0034】
例えば、リニアチャープの場合、送信波形のパワースペクトル密度は近似的に矩形と見なせるため、そのパルス圧縮波形は高いレンジサイドローブレベルを持つ。従って、レンジサイドローブを低くするためには、送信波形は、そのパワースペクトル密度を逆フーリエ変換したときに低いサイドローブレベルとなるような波形が選択されるとよいことが分かる。
【0035】
以下、そのように所望の低いレベルとなるレンジサイドローブを持つ波形を理想のパルス圧縮波形とし、そのフーリエ変換した波形を、送信波形のパワースペクトル密度の目的波形とする。目的波形としては、任意の窓関数とすることができ、窓関数としては、ハニング窓、ハミング窓、ガウス窓などとすることができる。
【0036】
本発明は、この送信波形のパワースペクトル密度を目的波形に整形するための方法を提案するものである。目的波形に整形するために、好ましい実施形態では、リニアチャープ波に対して、1)周波数変調、2)振幅変調、3)周波数軸上での補正の3段階の処理を順次行う。これらの各工程の処理について順次説明を行う。
【0037】
1) 周波数変調
周波数変調では、図2に示すように、リニアチャープ波形を変形させて、ノンリニアチャープ波形として、そのパワースペクトル密度を目的波形に近い波形にする。
【0038】
このため、チャープ率とパワースペクトル密度の強度とは反比例の関係にあることを利用する(図3)。パルス幅T、周波数掃引幅Bのリニアチャープを考えた場合、チャープ率はc=B/Tで一定である。これに対して、パワースペクトル密度の目的波形をP(f)とし、リニアチャープのパワースペクトルをP’(f)とすると、チャープ率c(t)を、
【0039】
【数3】
とすれば、目的波形のパワースペクトルが得られる。ここで、Cは周波数掃引幅Bに関する制約条件である
【0040】
【数4】
を満足させるための定数である。このCを周波数定数と呼ぶ。離散系においては、k番目のサンプリング点の時刻をtk、サンプリング間隔をΔtとして、チャープ率c(tk)を、
【0041】
【数5】
とすれば、目的波形のパワースペクトルが得られることになる。
【0042】
但し、次段で振幅変調を行うため、パワースペクトル密度の振幅変調の影響を予め考慮する必要がある。即ち、振幅がw倍された区間の周波数は、パワーがw2倍されると近似的にみなせる。従って、パワースペクトル密度を目的波形に整形するためには、振幅変調によるパワーの落ち込みを予め考慮して、
【0043】
【数6】
とする。ここでwkは、k番目のサンプリング点における振幅変調量である。
【0044】
2)振幅変調
1)の周波数変調のみでパワースペクトル密度の波形整形をした場合、リプルが生じてパワースペクトル密度の波形が歪む。このリプルが発生する要因について簡単に説明する。図4は、離散系での周波数変調後のチャープ波モデルである。k番目の離散点でのチャープ率ck、周波数fk、位相φk、パワースペクトル密度の目的波形をP(f)、リニアチャープのパワースペクトル密度をP’(f)、周波数係数をCとする。
ここで、時刻tk〜tk+1の波形はリニアチャープで、
【0045】
【数7】
と書ける。周波数変調によりパワースペクトルを整形したノンリニアチャープ波形X(t)は、各微小時間のリニアチャープの和で、
【0046】
【数8】
である。(8)式からX(t)の周波数特性は、
【0047】
【数9】
となる。(9)式の積分項はxk(t)の周波数特性で、(7)式を代入すると、
【0048】
【数10】
となる。(10)式をさらに書き直すと、
【0049】
【数11】
となる。ここで、Z(u)は複素フレネル積分で
【0050】
【数12】
である。よって、
【0051】
【数13】
は(11)式の複素フレネル積分の寄与を受け、この複素フレネル積分の寄与により、X(t)の周波数特性は、目的波形に対してリプルとして生じることになる。
【0052】
このようなリプルを除去するために、送信波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる振幅変調を行う。
【0053】
振幅変調波形は、図5に示すような窓関数などの滑らかに減衰する関数を用いるとよい。窓関数の違いが性能に与える影響は小さいために、任意の窓関数w(t)またはwkを用いることができる。
【0054】
3) 周波数軸上での補正
1)の周波数変調及び2)の振幅変調を行って生成された送信波形は、そのパワースペクトル密度の波形にまだ僅かなリプルまたは歪みが残存することを避けることはできず、この僅かに残ったリプルまたは歪みがパルス圧縮波形のレンジサイドローブの原因となる。このさらに残ったパワースペクトル密度の波形からリプルまたは歪みを除去して目的波形となるようにするために、周波数軸上での補正を行い、送信波形の振幅スペクトルがパワースペクトル密度の目的波形P(f)の振幅スペクトル√(P(f))と一致するように補正する。
【0055】
送信波x(t)、送信波の振幅スペクトルA(f)、送信波の位相スペクトルφ(f)とする。
まず、送信波x(t)をフーリエ級数展開する。このとき、
【0056】
【数14】
である。
次に、フーリエ級数の項それぞれに、
【0057】
【数15】
を乗じる。即ち、
【0058】
【数16】
とする。
【0059】
(16)式で振幅を補正したスペクトルを逆フーリエ変換して時間軸波形に戻して、送信波形とする。
【0060】
次に、以上の1)〜3)までの原理に基づき、送信波形を生成してパルス圧縮装置10を製造する方法を図6のフローチャートに基づき説明する。この処理は、送信波形生成プログラムによりコンピュータで実行することができる。
【0061】
(1) まず、送信パルス幅T、周波数掃引幅B、サンプリング間隔Δt、パワースペクトルの目的波形P(f)(=第1目的P1(f))を設定する(ステップS10)。
例えば、目的波形としてハニング窓とする場合、P(f)は、
【0062】
【数17】
である。ここで、便宜上、時刻T/2における周波数fC、及び位相φは0とし、周波数fは−B/2→B/2と変化させることとする。このとき、
【0063】
【数18】
となり、T/2を中心に対称となるので、T/2〜Tの範囲についてのみ計算を行うことで、計算を簡略化することができる。
【0064】
(2) 以上の準備が整った状態で、周波数係数Cを算出する(ステップS12)。
周波数係数Cは、(4)式を満足するものであり、周波数係数Cを変数とする関数B(C)としたときに、(6)式からB(C)は以下の式で表される。
【0065】
【数19】
【0066】
ここで、CはC=kBP’(f)/Tで表され、kは定数である。リニアチャープのパワースペクトルであるP’(f)は矩形として考えられるので、P’(f)も定数と見なすことができる。
従って、P’(f)をkに含めてC=kB/Tとして考えると、B(C)はCに関して単調増加する関数であり、
【0067】
【数20】
となるClとCuを考えると、B(C)=BとなるCは、ClとCuの区間に存在する。よって、図7に示すフローチャートで示す2分探査を行えば、B(C)=BとなるCを求めることができる。
【0068】
(3) 次に、求めたC及び次式
【0069】
【数21】
を用いて、チャープ率c(tk)と周波数f(tk)を算出する(ステップS14)。算出区間はT/2〜Tである。
【0070】
(4) 次に、次式を用いて位相を求め、波形を算出する(ステップS16)。
【0071】
【数22】
【0072】
尚、ステップS14及びステップS16において、サンプリング点の総数が偶数(2N)であるときには、時刻T/2となるデータ位置が、N番目のサンプリング点と、N+1番目のサンプリング点との間の位置となる。この場合には、データの中心がT/2からΔtだけずれた時刻として計算するとよい。計算誤差として僅かなものであっても、この誤差がレンジサイドローブの原因となるからである。
【0073】
(5) 次に、次式を用いて0〜T/2の波形を決定する(ステップS18)。
【0074】
【数23】
【0075】
(6) x(t)をフーリエ級数展開をする(ステップS20)。
【0076】
【数24】
【0077】
(7) 振幅スペクトルを目的波形のパワースペクトル密度P(f)(=第2目的P2(f))で補正し、補正した振幅スペクトルを逆フーリエ変換して時間軸波形に戻す(ステップS22)。
【0078】
【数25】
【0079】
(8) ステップS22で得られた波形x(t)を、メモリ12に格納して、パルス圧縮装置10を構成する(ステップS23)。
【0080】
図8〜図10は、パルス幅T=12.8μsec、掃引幅B=28MHz(−14MHz〜14MHz)とし、目的の波形P(f)をガウス窓
【0081】
【数26】
とし、振幅変調工程における窓関数をハニング窓
【0082】
【数27】
とした場合の各工程におけるパルス圧縮波形、パワースペクトル密度のログスケール、リニアスケールの波形をそれぞれ表しており、破線が目的波形、実線が生成波形を表している。また、図11は、生成された送信波形の周波数遷移を表している。
【0083】
図8〜図10から分かるように、1)の周波数変調工程を行っただけでは、振幅変調分を予め加味して変調を行っているため、パルス圧縮波形及び送信波形において、それぞれ目的波形と生成波形との間に大きな差があり、2)の振幅変調工程を経ると、生成波形が目的波形に近いものとすることができるが、これだけではまだ差があり、パルス圧縮波形にレンジサイドローブが現れている。3)の周波数軸上での補正工程を経ると、生成波形は目的波形とほぼ同じになり、パルス圧縮波形のサイドローブレベルが低下できる。この例の場合、S/N損失が0.30dB、サイドローブレベルはおよそ−90dBである。
【0084】
このように、本発明によれば、生成される送信波形を用いて、送受信を行いパルス圧縮を行うと、S/N損失が少なくかつ所望の低いレベルのサイドローブレベルを持つパルス圧縮波形とすることができる。
【0085】
尚、以上の実施形態では、予め決めた目的波形にパワースペクトル密度の波形が一致するように生成を行ったが、これに限るものではなく、予め決められた目的波形(=第1目的P1(f))と、最終的な目的波形(=第2目的P2(f))とを、異ならしめることもできる。具体的には、1)の周波数変調工程と2)の振幅変調工程とを経て得たパワースペクトル密度の波形を平滑化してできる波形を最終目的(=第2目的P2(f))とすることとして、3)の周波数軸上での補正工程での補正量を僅かにすることもできる。1)の周波数変調工程と2)の振幅変調工程とを経て得た波形を平滑化したものであっても、リプルが除去されたものであれば、それを逆フーリエ変換したときに低いサイドローブレベルとすることができるからである。平滑化してできる波形としては、振幅変調工程で得られた波形との偏差が最小二乗値をとる任意の窓関数その他の関数とすることができる。
【0086】
周波数軸上での補正は、その補正量が僅かとすることが好ましい。周波数軸上での乗算は時間軸上での畳み込みとなるので、周波数軸上での乗算が大きいと、時間軸に戻した波形が大きく崩れるおそれがあるからである。従って、周波数軸上での補正は、1)の周波数変調工程と2)の振幅変調工程で、目的とする波形に極力近づけた上で行うことが必要である。
【符号の説明】
【0087】
10 パルス圧縮装置
12 メモリ
14 波形読み出し部
16 D/Aコンバータ
18 アンプ(増幅器)
20 トランスデューサ
24 A/Dコンバータ
26 パルス圧縮部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャープ波を用いて送信波を送信し、送信波の反射波を受信してその受信信号をパルス圧縮してパルス圧縮波形を得るパルス圧縮のための送信波形生成方法であって、
レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の第1目的波形をP1(f)とし、リニアチャープ波形のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P1(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出する周波数変調工程と、
周波数変調工程で算出したノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じる振幅変調工程と、
振幅変調工程で得られた波形をさらにフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが送信波形のパワースペクトル密度の第2目的波形P2(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換した波形を生成する周波数軸上での補正工程と、
を備え、リニアチャープ波形から送信波形を生成するパルス圧縮における送信波形生成方法。
【請求項2】
前記周波数変調工程において、チャープ率c(t)が前記振幅変調工程で乗じる窓関数w(t)の二乗に比例するような波形を算出する請求項1記載の送信波形生成方法。
【請求項3】
前記周波数変調工程で用いる前記第1目的波形P1(f)と、前記周波数軸上での補正工程において用いる前記第2目的波形P2(f)とは同一である請求項1または2記載の送信波形生成方法。
【請求項4】
前記周波数軸上での補正工程において用いる前記第2目的波形P2(f)は、振幅変調工程で得られた波形のパワースペクトル密度の波形を平滑化したものである請求項1または2記載の送信波形生成方法。
【請求項5】
前記周波数変調工程で用いる前記第1目的P1(f)は、窓関数であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の送信波形生成方法。
【請求項6】
前記周波数軸上での補正工程は、振幅変調工程で得られた前記波形をフーリエ級数展開して得られた振幅スペクトルをA(f)としたときに、振幅スペクトルA(f)に√(P2(f))/A(f)を乗じて振幅スペクトルの補正を行う請求項1ないし5のいずれか1項に記載の送信波形生成方法。
【請求項7】
チャープ波を用いて送信波を送信し、送信波の反射波を受信してその受信信号をパルス圧縮してパルス圧縮波形を得るパルス圧縮のための送信波形生成プログラムであって、
コンピュータに
レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の第1目的波形をP1(f)とし、リニアチャープ波形のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P1(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出する周波数変調工程と、
周波数変調工程で算出したノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じる振幅変調工程と、
振幅変調工程で得られた波形をさらにフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが送信波のパワースペクトル密度の第2目的波形P2(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換した波形を生成する周波数軸上での補正工程と、
を実行させて、リニアチャープ波形から送信波形を生成するパルス圧縮における送信波形生成プログラム。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法により生成された送信波形を格納するメモリと、該メモリから送信波形信号を読み出す波形読み出し部と、送信波形信号をD/A変換してアナログ送信信号に変換するD/Aコンバータと、送信信号を増幅する増幅器と、増幅された送信信号を送信波として放射すると共に送信波の反射波を受信するトランスデューサと、受信波をA/D変換して受信波形信号に変換するA/Dコンバータと、受信波形信号と参照波形信号との相関をとってパルス圧縮波形信号を求めるパルス圧縮部と、を備えるパルス圧縮装置。
【請求項1】
チャープ波を用いて送信波を送信し、送信波の反射波を受信してその受信信号をパルス圧縮してパルス圧縮波形を得るパルス圧縮のための送信波形生成方法であって、
レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の第1目的波形をP1(f)とし、リニアチャープ波形のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P1(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出する周波数変調工程と、
周波数変調工程で算出したノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じる振幅変調工程と、
振幅変調工程で得られた波形をさらにフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが送信波形のパワースペクトル密度の第2目的波形P2(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換した波形を生成する周波数軸上での補正工程と、
を備え、リニアチャープ波形から送信波形を生成するパルス圧縮における送信波形生成方法。
【請求項2】
前記周波数変調工程において、チャープ率c(t)が前記振幅変調工程で乗じる窓関数w(t)の二乗に比例するような波形を算出する請求項1記載の送信波形生成方法。
【請求項3】
前記周波数変調工程で用いる前記第1目的波形P1(f)と、前記周波数軸上での補正工程において用いる前記第2目的波形P2(f)とは同一である請求項1または2記載の送信波形生成方法。
【請求項4】
前記周波数軸上での補正工程において用いる前記第2目的波形P2(f)は、振幅変調工程で得られた波形のパワースペクトル密度の波形を平滑化したものである請求項1または2記載の送信波形生成方法。
【請求項5】
前記周波数変調工程で用いる前記第1目的P1(f)は、窓関数であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の送信波形生成方法。
【請求項6】
前記周波数軸上での補正工程は、振幅変調工程で得られた前記波形をフーリエ級数展開して得られた振幅スペクトルをA(f)としたときに、振幅スペクトルA(f)に√(P2(f))/A(f)を乗じて振幅スペクトルの補正を行う請求項1ないし5のいずれか1項に記載の送信波形生成方法。
【請求項7】
チャープ波を用いて送信波を送信し、送信波の反射波を受信してその受信信号をパルス圧縮してパルス圧縮波形を得るパルス圧縮のための送信波形生成プログラムであって、
コンピュータに
レンジサイドローブが所望のレベルとなるパルス圧縮波形のフーリエ変換の第1目的波形をP1(f)とし、リニアチャープ波形のパワースペクトル密度の波形をP’(f)としたときに、リニアチャープ波形に基づき、そのチャープ率c(t)がP’(f(t))/P1(f(t))に比例するようなノンリニアチャープ波形を算出する周波数変調工程と、
周波数変調工程で算出したノンリニアチャープ波形の立ち上がりと立下りを抑圧させる窓関数w(t)を乗じる振幅変調工程と、
振幅変調工程で得られた波形をさらにフーリエ級数展開し、その振幅スペクトルが送信波のパワースペクトル密度の第2目的波形P2(f)の振幅スペクトルとなるように補正し、それを逆フーリエ変換した波形を生成する周波数軸上での補正工程と、
を実行させて、リニアチャープ波形から送信波形を生成するパルス圧縮における送信波形生成プログラム。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法により生成された送信波形を格納するメモリと、該メモリから送信波形信号を読み出す波形読み出し部と、送信波形信号をD/A変換してアナログ送信信号に変換するD/Aコンバータと、送信信号を増幅する増幅器と、増幅された送信信号を送信波として放射すると共に送信波の反射波を受信するトランスデューサと、受信波をA/D変換して受信波形信号に変換するA/Dコンバータと、受信波形信号と参照波形信号との相関をとってパルス圧縮波形信号を求めるパルス圧縮部と、を備えるパルス圧縮装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−38948(P2011−38948A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188026(P2009−188026)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】
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