説明

パルプ原料の解砕法及び解砕装置

【課題】
酢酸セルロースのアセチル化時の反応性に優れ、ファイバー量(未反応セルロース成分)が少ないセルロースアセテートを得るためのパルプ原料の解砕方法。
【解決手段】
平面形状が円形などの相対する2枚の解砕手段を備えた解砕機を用い、前記解砕手段間の中心部にパルプ原料を供給した後、解砕手段を回転させることにより解砕する解砕する。前記解砕手段が、解砕手段本体部と該本体部の面に形成された解砕機能部とからなり、解砕機能部が粗解砕機能部領域とその周縁に形成された微解砕機能部領域から構成され、粗解砕機能部領域がピラミッド歯群などから構成され、微解砕機能部が線状歯で形成されたパルプ原料の解砕法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸セルロースの製造原料となるパルプ原料の解砕法およびその解砕法を用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸セルロースは、衣料用繊維、タバコフィルター、プラスチックス、フィルム、塗料等の多岐にわたって汎用されており、主たる製造原料は木材パルプとコットンリンターである。これらのパルプ原料には、酢酸セルロース製造時における反応性を高めたり、製品の収率や品質を高めたりするため、解砕処理がなされる。かかる解砕処理にはピンミル型等の解砕機が一般に使用されているが、解砕機による解砕処理だけでは必ずしも満足できない場合があり、より高収率で高品質の製品を得ようとするため、種々の方法を組み合わせた解砕法が試みられている。
【0003】
例えば、蒸気による活性化と反応装置中での強い剪断攪拌によってこれを解決しようとする方法があるが例えばWO9325584号公報(特許文献1)、これは反応器そのものを新設する必要があり、また水が系中に入ることによる無水酢酸のロスが大きいという問題がある。また、米国特許第3767642号(特許文献2)では、αセルロース含量92〜93%の木材パルプを利用するに当たって、希酢酸水溶液中で離解してスラリーとした後、脱液と酢酸置換を繰り返すいわゆるスラリー前処理を用いている。しかし、この方法は多量の含水酢酸を副生するため、酢酸の濃縮回収に多量のエネルギーを必要とし、経済的、環境保全的に好ましくない。
また、特許第2823944号(特許文献3)には、通称ジェットミルと呼ばれるタイプの解砕機を用いた解砕法が開示されている。しかし、この種の装置は、従来のアトリションミルと比べると設備費が高く、多量の気流とともに処理するためパルプのロスが大きいという問題がある。更に、特許2669555号(特許文献4)及び特開平5−9201公報(特許文献5)には、少量の水を加えてシートを解砕する方法が開示されているが、水量のコントロールが難しく、反応に悪影響を及ぼしかねないという問題がある。
【0004】
上記のように、解砕機と他の補助的方法を併用した従来の技術には、原料パルプのアセチル化時の反応性を却って低下させたり、工業的に実施するには設備費、ランニングコストが大きいものになったりする問題がある。
【0005】
解砕機あるいは解砕方法の改良により、高品質のセルロースアセテートを得ようとする試みも行われている。例えば特開2001−29817号公報(特許文献6)では、特定要件又は特定構造で規定される解砕機能面を有する解砕機を使用した解砕のみによって、酢酸セルロース製造時における反応性のよいパルプ原料を供給し、高収率でかつ高品質の酢酸セルロースの製造を可能とするパルプ原料の解砕法提供することが提案されている。この方法ではピンミル型の解砕機で粗解砕を行った後更に、特定の形状の解砕刃を持つ解砕機により解砕する。
【0006】
すなわち、この方法では平面形状が円形又はそれに類する形状の相対する2枚の解砕手段を備えた解砕機を用い、前記解砕手段間の中心部にパルプ原料を供給した後、一方又は両方の解砕手段を回転させることにより解砕し、解砕物を遠心力により周縁方向に移動させ、外部に排出する酢酸セルロース製造用のパルプ原料の解砕法であり、前記解砕手段が、解砕手段本体部と該本体部の中心部を除く面に形成された解砕機能部とからなり、解砕機能部が、その表面に解砕手段本体部の中心から周縁に向かって形成された幅方向の断面凸状の線状歯を有しており、前記線状歯は周方向に所定の間隔をおいて、かつ半径方向に連続的に又は非連続的に形成されたものであるパルプ原料の解砕法である。
【0007】
この解砕方法は微細解砕に関するものであり、すなわちパルプ原料を粗解砕した後に微細解砕する段階で用いられる技術である。実施例では粗解砕した原料パルプに対して、上記の特定の要件または特定構造で規定される上記の幅方向の断面凸状の線状歯を有した解砕機で解砕する様態が記載されている。すなわち、前記公報の実施例においては実施例1としてろ過度が223(実施例1のクリアランスが3.8mmの場合)から285(実施例1のクリアランスが2.0mmの場合)が記載されている。
また発明の詳細な説明では、粗解砕とその後の微細解砕とを一つの解砕機で行うこともでき、その場合には組み込まれる解砕機能部を適宜交換してもよいし、一つの解砕手段中に、微細解砕ができる本発明の解砕機能部領域と粗解砕機能部領域を組み込んだ構造のものにしてもよいことが記載されている。([段落0030]など)
しかしながら、前記文献には粗解砕と微細解砕を同時に一つの解砕機で行う場合について何ら詳細に記載はされていない。
【0008】
近年、セルロースアセテートの用途として偏光板保護膜用の光学フィルムに用いられることが主要な用途となっている。この用途の光学フィルムは、プラットパネルディスプレイ用途に用いられる。そして、プラットパネルディスプレイ用途の中には、液晶テレビ用のプラットパネルディスプレイが多くなり、この液晶テレビの技術においては大画面化とフルハイビジョンに代表される高細密化が著しい。この用途では、僅かな微量な光学的な欠点も問題とされるので、セルロースアセテートの光学フィルムにおいては精密ろ過されるのが技術的な常用手段となっている。
したがって、セルロースアセテートにおいてもより一層の濾過性の向上が求められている。
前記文献に記載されている技術では未解砕物を減少させることができるものの、濾過度の改善や、ファイバー量(DCM不溶解物量)の改善効果には限界があった。
【特許文献1】WO9325584号公報
【特許文献2】米国特許第3767642号
【特許文献3】特許第2823944号
【特許文献4】特許2669555号
【特許文献5】特開平5−9201公報
【特許文献6】特開2001−29817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の解砕法では改善できなかった濾過度やファイバー量がより小さい酢酸セルロースを提供するものである。
尚、酢酸セルロースは、一般に前処理工程、アセチル化工程、中和工程及び鹸化・熟成工程を経て製造されるが、本発明は、前処理工程に先だって行われる原料パルプの解砕法の改善手段を提供するもので、解砕手段表面の構造等に特徴を有するものである。なお、本発明においては、解砕手段の表面を除く解砕機の構造については特に限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち本発明は、平面形状が円形又はそれに類する形状の相対する2枚の解砕手段を備えた解砕機を用い、前記解砕手段間の中心部にパルプ原料を供給した後、一方又は両方の解砕手段を回転させることにより解砕し、解砕物を遠心力により周縁方向に移動させ、外部に排出する酢酸セルロース製造用のパルプ原料の解砕法であり、前記解砕手段が、解砕手段本体部と該本体部の中心部を除く面に形成された解砕機能部とからなり、解砕機能部が少なくとも二種類の異なった解砕機能を有する、一段で粗解砕から微解砕まで行う解砕方法を提供するものである。
【0011】
すなわち、解砕機能部が粗解砕機能部領域と微解砕機能部領域から構成されている解砕手段を提供する。粗解砕機能部領域は解砕機能部の中心部に近い部分に配され、微解砕機能部領域は粗解砕機能部領域の周縁部に配されている。
【0012】
粗解砕機能部領域がピラミッド形状からなる刃を解砕機能部の中央部に配し、更に粗解砕機能部の外周に幅方向の断面凸状の線状歯を有した微解砕機能部領域を有しており、前記線状歯は周方向に所定の間隔をおいて、かつ半径方向に連続的に又は非連続的に形成されたものであるパルプ原料の解砕法を提供する。
【0013】
また本発明は、解砕手段本体が円形であるとき、微解砕機能部領域の各線状歯又は線状歯群が、解砕手段本体の直径方向に対して非平行になるように中心部から周縁に向かって形成されている前記パルプ原料の解砕法を提供する。
【0014】
本発明の解砕法で使用するパルプ原料は、木材パルプやコットンリンター等であるが、その純度、密度及び強度等の物性値は限定されるものではなく、その含水量も限定されるものではないが、本発明の解砕法は、解砕し易くするためにのみ水を添加する必要はない。
【発明の効果】
【0015】
本発明のパルプ原料の解砕法によれば、従来の乾式解砕機で生じていたアセチル化反応性に影響を与えるようなパルプ繊維の機械的劣化の程度が小さくなるだけではなく、従来の乾式解砕方式や、粗解砕後に微解砕をする二段階解砕法では達し得なかった低い濾過度や、ファイバー量(DCM不溶解物量)の酢酸セルロースやトリアセチルセルロースを得ることができる。そして透明性、濾過性、可紡性により優れた2次酢酸セルロース特にはトリアセチルセルロースを工業的に容易に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
前記特開2001−29817号公報(特許文献6)に記載されている二段階の解砕でかつ特定の線状歯を有する解砕方法は、未解砕パルプをほとんど生じることがない優れた解砕方法である。しかしながら、前記の通りこのような優れた解砕方法を用いても近年のセルロースアセテートに求められる低い濾過度や、ファイバー量を達成することができなかった。
【0017】
すなわち、前記特許文献1である特開2001−29817号公報に記載されている通り、前記公報での実施例1の解砕パルプを用いてセルロースエステルを合成した製造例1に明らかな通り、微細解砕時のクリアランス(線状歯と線状歯の間の間隔)を0.5から3.8mmまで調整したとしても濾過度は223から285程度のものしか得ることが出来ない。
【0018】
クリアランスは前記特許文献の段落番号[0027]の記載の通り、0.3〜5mmである。クリアランスを小さくするとパルプの解砕効率が低下したり、詰まりなどの機械的なトラブルが生じたりする。したがってクリアランスを小さくすることは解砕パルプの品質面でも製造面でも好ましくはない。一方、0.5から3.8mmの間でクリアランスを大きくすると濾過度は若干改善される。しかし、これ以上クリアランスを大きくすると未解砕パルプが解砕機を通り抜けるのでやはり濾過度やファイバー量を悪化させる。
【0019】
前記特許文献の実施例1で記載されている解砕結果では、解砕の程度は良好である。いずれの解砕パルプも未解砕量(解砕粒を気流篩で分級したとき、4メッシュ(開口径4.76mm)を通過できないパルプ片の量)が0wt%である。このように、解砕性が優れるにも拘らず、濾過度や、ファイバー量を一定のレベル以上には向上できない原因について本発明者らは検討を行った。
その結果、前記特許文献に記載されている二段階の解砕では、解砕性と濾過度や、ファイバー量の低減がより厳しい水準では両立させることが困難である。すなわち、粗解砕と微解砕を二段階で行う場合、粗解砕工程を終了した解砕パルプは未解砕パルプ片(解砕粒を気流篩で分級したとき、4メッシュ(開口径4.76mm)を通過できないパルプ片)を含有している一方で、細かく解砕されたパルプ粉末も含有している。
【0020】
このように粗解砕工程を終了した粗解砕パルプはパルプ微粉末と未解砕パルプ片の混合物であり、これは粗解砕条件をどのように調整しても補正できない。(すなわち、未解砕パルプ片を無くしたり、あるいは、パルプ微粉末を無くしたりする事はできない。)
このような粗解砕パルプを、次工程で微解砕した場合、微解砕の解砕部分に一部の微粉末が付着して角質化してゆく。そしてある程度角質化した段階で何らかのきっかけにより解砕機能部から脱落して微解砕パルプの中に混入してゆく。
【0021】
前記の角質化したパルプ微粉末それ自体は、形状としては十分に小さいので未解砕片として篩の残留分になることはない。しかし、前記角質化したパルプ微粉末は、アセチル化の工程での反応性が通常の微細化パルプと異なるものである。すなわち、角質化しているため、同じ形状、大きさの通常の微細化パルプよりも反応性に劣る。その結果、反応が十分進めない部分が残留する。このため、このような角質化したパルプ微粉末が微解砕パルプに含まれる場合には、解砕度が十分に高いにも拘らず濾過度やファイバー量が高くなってしまうことが見出した。
【0022】
角質化したパルプ微粉末の反応性が良くない理由については明確ではないが、角質化することでパルプのセルロースに密度が変わったり、あるいはアセチル化の反応液の浸透がし難くなったりする可能性が考えられる。
【0023】
本発明では粗解砕と微細解砕を一段で行うことを特徴とする。すなわち、本発明では2枚の解砕手段を備えた解砕機を用い、前記解砕手段間の中心部にパルプ原料を供給した後、一方又は両方の解砕手段を回転させることにより解砕し、解砕物を遠心力により周縁方向に移動させ、外部に排出する酢酸セルロース製造用のパルプ原料の解砕法であり、前記解砕手段が、解砕手段本体部と該本体部の面に形成された解砕機能部とからなり、解砕機能部が少なくと粗解砕機能部領域とその周縁部分に形成された微解砕機能部領域から構成されている解砕手段である。
【0024】
本発明の好ましい様態では、パルプ原料は解砕手段間の中心部に供給される。中心部には解砕機能部はないか、少なくとも片側の解砕機能部しかないが解砕手段が回転することにより、遠心力によりパルプ原料は周縁方向へ移動させられる。
【0025】
そして、粗解砕部でパルプ原料は粗解砕される。この場合、解砕機能部が粗解砕機能部領域とその周縁に形成された微解砕機能領域から構成される。この様な構成にすることにより、前記の微解砕機能領域でのパルプ粉末の角質化を防止することができる。すなわち、粗解砕工程を別途設置している場合は、粗解砕終了時には微解砕装置に掛ける事ができる程度の解砕されたパルプにする必要があり、この過程での粗解砕で生じた微粉末パルプが微解砕機能部の歯に付着することが角質化の原因であると思われる。
【0026】
本発明では、解砕機能部が粗解砕機能部領域とその周縁に形成された微解砕機能部領域から構成され、粗解砕が解砕機能部の中心部により近いところで行われ、解砕されたパルプは遠心力で直ちに、微解砕機能部領域に送られ微解砕される。粗解砕の時点では、細かく解砕されたパルプも存在する一方で、まだ大きな未解砕物も存在する。微解砕機能部領域では、細かく解砕されたパルプを解砕し、他方大きな未解砕物は微解砕機能部領域に送り込まれないので、粗解砕機能部領域に留まり、微解砕機能部領域で解砕できる大きさまで、粗解砕機能部領域で解砕される。これにより、粗解砕部分で過度に微細な微粉末パルプが生じることが無い。このため、微解砕機能部領域で微粉末パルプが角質化することがなく、濾過度やファイバー量を悪化させることがない。そして、粗解砕が不十分なパルプは微解砕機能部領域に送り込まれないので、微解砕機能部領域においては、精細歯型の微解砕機能を十分に発揮できる。
【0027】
更に本発明においては精細歯型において概略円周方向に堰止めを設けることができる。堰止めを設けた場合には通常の二段解砕では、堰止め部で角質化したパルプが生じることが多いいが本発明の粗解砕と微細解砕を一段で行うことを特徴とする解砕法であれば堰止め部を設けても解砕パルプが角質化することが少なく、良好な解砕性を確保できる。
【0028】
以下、本発明のパルプ原料の解砕方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、パルプ原料の解砕に使用する一般的な解砕機の構造を示す概略図であり、図2は、図1の解砕機に組み込んで使用する解砕機能部の平面図である。
【0029】
まず、図1及び図2に基づいて、本発明の解砕法で使用する解砕機用の特定の解砕手段について説明する。
【0030】
図1に示すように、解砕機10には、解砕手段本体部11、12と、それらの面に形成された解砕機能部21、22とからなる2枚の解砕手段5、6が相対して配置されている。
すなわち解砕手段5は解砕手段本体部11と解砕機能部21から構成されている。同様に、解砕手段6は解砕手段本体部12と解砕機能部22から構成されている。解砕手段5乃至6は何れか片側が回転すれば、その機能を達成する。
【0031】
解砕手段本体部11、12は、平面形状が円形又はそれに類する形状のもので、側面形状は、解砕機全体の構造に応じて、例えば図1に示すように適宜設定できる。すなわち、解砕手段本体部11、12は円盤状形状特には、何れか片側にはドーナッツ盤形状が好ましく用いられる。
【0032】
本発明において解砕機自体は特に限定されず、例えば、通常ディスクリファイナーと呼ばれる(株)長谷川鉄工所製スーパーファイブレーター、相川鉄工株式会社製AW型ダブルディスクリファイナー、MR型リサイクル・リファイナー、CR型リサイクル・リファイナー、Sprout,Waldron&Co製のDouble runner attrition mill等を用いることができ、通常コニカルリファイナーと呼ばれるアセック(株)製コニカルフレーカー等を用いることができる。
【0033】
原料の投入を容易にするためには、解砕手段5乃至6のいずれか片側を固定された解砕手段とし、もう一方を回転する解砕手段として構成することが好ましい。そして、固定された解砕手段の中央部から原料を投入する構成にすれば、原料の投入の開口部を大きくできるので好ましい。
【0034】
解砕機能部21、22は、解砕手段本体部11、12の表面に直接形成されていてもよいが、解砕機能部21、22自体を別途作製して、解砕手段本体部11、12に着脱自在にすることが望ましい。以下においては、かかる着脱自在型の解砕機能部を有する解砕手段について説明する。
【0035】
解砕機能部21、22の表面は、解砕手段本体部11、12の平面形状に合致した円形又はそれに類する平面形状のもので、前記の好ましい解砕機の構造上、解砕手段本体部11、12のいずれか一つは中心部がないドーナツ状のものにすることが好ましい。なお、解砕機能部21、22は使用上の便宜から、例えば円周方向に複数に分割し、組み合わせたときに全体としてドーナツ状になるようにすることもできる。尚、上記の通り解砕手段本体部11、12のいずれか一つは中心部がある円盤状とすることもできる。その場合は解砕機能部21、22は中心部がある円盤状とすることができる。そして、解砕手段の本体の中央部付近にも解砕機能部を設けることができるので好ましい。
この解砕機能部21、22は、いずれか一方の解砕手段本体部11、12にのみ設けることができる、この場合は回転する解砕手段本体部に解砕機能部を設けることが必要である。しかしながら、解砕効率の点から、両方に設けることが望ましい。
【0036】
以下において、解砕手段本体部11、12に組み込む解砕機能部21、22の表面の各形態について説明する。
【0037】
図2に示すように、解砕機能部21、22は粗解砕機能部領域23とその周縁に形成された微解砕機能部領域24から構成される。すなわち、解砕機能部21、22の表面には、粗解砕機能部領域23であるピン歯型、ボルト型歯29あるいはピラミッド歯群25とその周縁には微解砕機能部領域24である線状歯群30が形成される。
粗解砕機能部領域については従来の常用されている粗解砕技術を用いることができる。例えばピンミル型の解砕機で用いられている歯型であれば用いることができる。また下記の通り一部の歯にボルト型歯型を用いることができる。
【0038】
特には粗解砕機能部領域にはピラミッドパターンの歯群を少なくともその歯群の一部に用いることが好ましい。すなわち、粗解砕機能部領域23の設ける歯型としては、ピラミッドパターンの歯群を用いた場合には、粗解砕性が良好であり、同時に歯部以外の空隙の空間も大きく取れるので好ましい。好ましい粗解砕機能部領域23に設ける歯型構成としては、ボルト型歯29とピラミッド型歯25を組み合わせて形成することが好ましい。
すなわち粗解砕機能部領域23は解砕手段本体部11、12は中心部が存在する円盤状である場合は、その解砕機能部は解砕手段本体部11、12の中央付近の表面から粗解砕領域23とすることができる。この場合、回転中心部分に近い部分にはボルト型歯29を設けることが好ましい。そして、解砕手段本体部の回転中心部からやや円周方向の部分に、ピラミッド型歯25を設置することが好ましい。ボルト型歯29の解砕効率はそれほど高くないが、解砕機能部21、22を解砕手段本体部11、12に固定する固定具を兼ねて設置することができるので、装置設計上好都合である。
【0039】
粗解砕機能部領域23におけるこのピラミッドパターン歯群25は、複数の形状のピラミッド歯25〜29(以下「ピラミッド歯25等」と称する)からなるものである。それらは解砕手段本体部11、12の中心から周縁に向かって異なる大きさのピラミッド歯を配することができる。そして、解砕手段本体部11、12の中心に近い部分においては、ピラミッド歯の寸法を大きくすることが好ましい。単純に四角錐、あるいは三角錐の形状のまま寸法を大きくした場合は、ピラミッド歯の高さが高くなる。そして、このため、解砕手段本体部11、12の間の間隔が必要以上に大きくなる可能性もあるので頂点部が切断された形状の変形四角錐型歯26あるいは頂点部が切断された形状の変形三角錐型歯の形状にすることが望ましい。
【0040】
ピラミッド歯25等は解砕手段本体部11、12の中心からの同心円の円周上に複数列配することが好ましく、ピラミッド歯25等の配列の数としては5列から15列、好ましくは6列から10列である。5列以下では、粗解砕の効率が低下する。また10列を超えた配列数とした場合はピラミッド歯の残りの空隙が少なくなりやはり解砕効率が低下する。上記の変形四角錐型歯26のような大きな寸法のピラミッド歯を配した解砕手段本体部11、12の中心から近い位置の同心円の円周上の列配では隣り合う配列とのピラミッド歯同士の干渉を避けるために、互い違いに変形四角錐型歯型歯26を配しても良い。
【0041】
解砕手段本体部11、12の中心からの同心円でやや周縁に近い配列では、その内側の配列に対してピラミッド歯の寸法をやや小さくすることができる。この場合は、単純に四角錐形状ピラミッド型歯27であっても良い。更に、解砕手段本体部11、12の中心からの同心円でより周縁に近い配列では、ピラミッド型歯の寸法を小さくすることが好ましい。
【0042】
この場合、ピラミッド歯は三角錐形状ピラミッド型歯28であってもよい。三角推形状ピラミッド型歯28では三角錐底面三角形の鋭角の対辺が回転方向の進行方向になるように配するのでもよい。
【0043】
このように、解砕手段本体部11、12の中心からの同心円で中心から周縁まで異なる形状、寸法のピラミッド歯26等を配することでもよい。前記の通りのピラミッド歯26等を配することにより、解砕手段本体部11、12の中心から近い位置の同心円周上の列配ではパルプ原料に対する衝突衝撃を得ることができ、効率的に粗解砕ができる。またその外側同心円上の配列では、衝突衝撃よりも摩擦抵抗よる剪断力が作用することにより、より細かい粗解砕が可能となる。
【0044】
複数のピラミッド歯25等は、周方向に所定の間隔をおいて形成されている。よって、複数のピラミッド歯25等の間には、平面部分29が存在する。平面部分29はピラミッド歯25等の基準となる面でもある。この平面部分29を含む平面は、解砕手段本体部11、12の回転軸に対して直交する平面に対して角度を持っていてもよい。すなわち、図3に示す通り断面形状で見た場合に0度からから30度程度、好ましくは5度から30度程度、より好ましくは7度から25度程度の角度を持っていても良い。角度を有している場合には、粗解砕機能部領域は解砕手段5、6の外周(円板状の場合は円周)に近づくに従い、このような角度を有することにより、粗解砕機能部領域から微解砕機能部領域への解砕機能部21、22の間で形成される空間を容易に減少させることができ、解砕性を向上させる。
【0045】
次に微解砕機能領域部の詳細について述べる。微解砕機能部領域24においては線状歯群30を形成することができる。この線状歯群30は、複数の線状歯31〜38(以下「線状歯31等」と称する)からなるもので、それらは解砕手段本体部11、12の中心から周縁に向かって形成された幅方向の断面凸状のものである。そして、複数の線状歯31等は、周方向に所定の間隔をおいて形成されている。よって、複数の線状歯31等間には、それらの平面形状に対応する溝41、42〜47(以下「溝41等」と称する)が存在する。
【0046】
これらの線状歯31等(溝41等)の間隔は同一でも異なっていてもよいが、1〜10mmに設定することが好ましく、3〜8mmに設定することがより好ましい。本発明においては微解砕機能部領域24において粗解砕されたパルプをそれほど滞留させなくても微解砕が可能であるため、線状歯31等(溝41等)の間隔を大きくすることができる。これにより、微解砕機能部領域24で微粉末パルプが角質化することを防止することができる。
【0047】
さらに、線状歯31等は、半径方向に連続的に又は非連続的に形成されていてもよく、例えば、1又は2以上の線状歯が、半径方向に2又は3以上に分離して形成されていてもよい。線状歯31等は、中心から周縁に向かうにしたがって幅が狭くなるように又は幅が広くなるように設定することができる。
【0048】
線状歯は、図2に示すような中心から周縁に向かって形成された2以上の線状歯を、直交及び/又は斜交するようにして、さらに断面凸状の線状歯を形成してもよい。この場合の直交の位置及び斜交の位置や方向は限定されない。例えば、図2において、線状歯31と32を横切るようにして、更に円周方向の線状歯39を形成することができ、このとき溝41は溝42と溝43に半径方向に2分割されることになる。この場合、円周方向の線状歯39は線状歯31、32と同一の高さとする必要はなく、円周方向の線状歯39が線状歯31、32の高さと比較して低いものであっても良い。円周方向の線状歯39は解砕機能部21、22の円周と平行であってもよく、緩やかな角度を持って交差する様に設定されているのでも良い。この場合、円周方向の線状歯39は、解砕機能部21、22の回転方向の反対方向に行くに従い、回転中心から離れてゆくような曲線を描くものでも良い。
【0049】
線状歯は、解砕手段本体部11、12の平面形状が円形であるとき、各線状歯又は線状歯群が、解砕手段本体部11、12の直径方向に対して平行及び/又は非平行になるように中心部から周縁に向かって形成することができる。好ましい様態としては、解砕手段本体部11、12の直径方向に対して非平行であることが好ましい。
【0050】
線状歯は、中心から周縁に向かって直線状や曲線状に形成でき、さらに斜め方向にも形成できるほか、線状歯の平面の配置状態が波形やジグザグ状になるようにすることもできる。
【0051】
線状歯は、断面が凸状であれば、その断面形状は特に限定されるものではなく、正方形、長方形、台形等の四角形、三角形、半円形又は不定形にすることができるが、四角形又は三角形が好ましい。但し、溝の幅方向の断面形状は解砕機能上特に重要な意味はなく、四角形、三角形(V字型)、U字型、半円形等であってもよい。加工のし易さ、線状歯の力学的強度という点で、三角形、U字型、半円形のように、溝底に近づく程、幅が小さくなる形状が好ましい。
【0052】
微解砕機能部領域24での解砕機能部11、12間の最小間隔(相対する線状歯面と線状歯面との間隔で、図1中にLで示す。以下「クリアランス」と称する。)は、好ましくは0.3〜5mm、より好ましくは1〜3mmである。クリアランスは同時に解砕機能部の外周部分では解砕機能部11と12の排出間隙60を形成する。
また、このクリアランスは、図3に示すように、解砕手段本体部11、12の中心部に近い部分すなわち粗解砕機能部領域23は大きくとり、逆に周縁部に配した微解砕機能部領域24は小さくとり、粗解砕機能部領域23では中心に近い部分から周縁部に向かうしたがって徐々に小さくなるように設定することが望ましい。微解砕機能部領域24では、クリアランスを変化させる必要はない。したがってクリアランスは、解砕手段本体部11、12の外周部での相対する線状歯面と線状歯面との間隔となる。
解砕機能部11、12間のクリアランスをこのように設定するには、解砕機能部11、12のピラミッド歯26等形成された面に、中心から周縁に向かって徐々に又は複数段に分けて角度を付ければよい。
【0053】
次に、図1に示す解砕機に、図2に示すような特定構造の解砕機能部を組み込んだ解砕手段を用いた場合の解砕法について、説明する。酢酸セルロースの製造用原料であるパルプ原料は、2枚の解砕手段本体部11、12の中心部又はその近傍(図1中に矢印で示す)に供給する。シート状のまま供給することができる。シート状で供給するためパルプ原料は、2枚の解砕手段本体部11、12の中心部に供給する方が良い。解砕手段本体部11をドーナッツ盤状の形状にすると、解砕手段6にシート状の原料を供給するために解砕手段本体部11中央部に大きな開口部を設けやすい。
シート状でパルプ原料を供給するためには、ロール状のパルプ原料を適当な巾にスリット(長さ方向に裁断)して供給することができる。図1においてパルプ原料は、巾10cm程度にスリットされた上で送りロール(2及び3)で構成されるフィード部4により解砕手段5及び6の中央部に供給される。この方法で原料パルプを供給する場合は、粗解砕されたパルプをスクリュウ等の搬送手段で解砕手段に供給する方法に比較して、原料パルプの閉塞などのトラブルを少なくすることができる。
【0054】
次に、解砕手段5を固定し、解砕手段6を回転させることによりパルプ原料を解砕する。解砕手段6中央部に設けられた開口部から上記の手段で原料パルプを供給する。供給された原料パルプは解砕手段6の回転に伴い、解砕手段本体部11、12で形成された空間に遠心力で移動する。
粗解砕機能部領域23では原料パルプはピラミッドパターン歯群25により粗解砕される。パルプは常に遠心力で微解砕機能部領域24に移動しようとするが、微解砕機能部領域24のクリアランスが粗解砕の不十分なパルプ片の移動を排除し、サイズ分級する。このため粗解砕の不十分なパルプ片は粗解砕機能部領域23に止まり、粗解砕され次第、微解砕機能部領域24における線状歯31等により微解砕される。
この微細解砕過程において、微解砕物は遠心力により線状歯間の溝を通って周縁方向に移動していき、排出間隙60から外部に排出され、回収される。
【実施例】
【0055】
以下に本発明を具体的に説明する実施例を示すが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。実施例中の部は重量部を、%は重量%を示すものである。なお、酢酸セルロースの物性測定は次の方法で行った。
【0056】
(1)濾過度:
二酢酸セルロース(セルロースダイアセテート)の場合は、96%アセトン水溶液に20%濃度に溶解した二酢酸セルロース溶液を30℃で、所定の濾布(有効面積1.77cm2)を通し、次式により濾過度(Kw)を算出する。
三酢酸セルロース(セルローストリアセテート)の場合は塩化メチレン/メタノール=9/1(体積比)混合溶媒に16%濃度に溶解した三酢酸セルロース溶液を25℃で、所定の濾布(有効面積1.77cm2)を通し、次式により濾過度(Kw)を算出する。
Kw=(2−P2/P1)/(P1+P2)X10
P1:濾過開始から20分間の濾過量(ml)
P2:20分より60分までの40分間の濾過量(ml)
濾過度の物性的意味は、所定の濾布上での目詰まりの度合いである。即ち、濾過度は酢酸セルロースのアセトン溶液中の不溶解分の多少を表しており、濾過度の大きい酢酸セルロースは未反応ファイバーやゲルなどの不溶解分が多いと考えられる。よって、濾過度の大きい酢酸セルロースは、製膜前の濾過工程での閉塞物も多くなり、そのような酢酸セルロースは濾過性が悪いと考えられる。
【0057】
(2)ファイバー量
ファイバー量は、酢酸セルロース中のジクロロメタン/メタノール(重量比9:1)に対する不溶物の比率を意味し、この不溶物の一部は反応が完結していない原料セルロースである。このファイバー量は、同一種のパルプから得られた酢酸セルロースの濾過度と正の相関を示すことが明らかになっており、品質に対する代用指標として用いることができる。ファイバー量の測定は、以下の要領で行う。乾燥した試料3〜5gにジクロロメタン/メタノール(重量比9:1)を加え、全量を150gとし、3時間以上、スターラーで撹拌する。メンブレンフィルター(Millipore JC 10.0μm)を50℃の真空乾燥機で3時間乾燥させた後、秤量する。上記酢酸セルロース溶液をこのメンブレンフィルターで濾過し、濾過残渣を3回以上、各々50mlのジクロロメタン/メタノール(重量比9:1)にて洗浄する。濾過残渣を載せたメンブレンフィルターを50℃の真空乾燥機で3時間乾燥させ、デシケーターで放冷後、秤量する。重量増加を試料酢酸セルロースの重量で割り、%表示した。
【0058】
(3)未解砕物量
未解砕物量は、解砕物を気流篩で分級したとき、4メッシュ(開孔径4.76mm)を通過できないパルプ片(即ち、酢酸セルロース製造時におけるアセチル化反応性等が劣る)のパルプ原料片に対する割合(重量%)である。
【0059】
比較例1
比較例として二段階での解砕による方法を用いた。
【0060】
(粗解砕処理)
まず、微細解砕処理に適用する前段において、Saiccor社製パルプSaiaceLDを約10cm幅に裂いた後、ピラミッドパターンのプレートC2975(最大傾斜角の平均値20.1度;最大静止摩擦係数0.35)を装着し、クリアランスを2mmに調整した試験用ディスクリファイナーNuncy Penna 17756 Size 105−A(Sprout,Waldron&Co.)に投入し、3600rpmで粗解砕処理を行った。
【0061】
(微解砕処理)
次に、プレート(解砕機能部。図1中の21、22)をD2A505(Durametal社)(最大傾斜角の平均値32.1度;最大静止摩擦係数0.56)に替え、同一解砕機で3600rpm、クリアランス3.8mm(図1中のL)の条件で、粗解砕処理したパルプを微細解砕した。
得られたパルプは明らかに粗解砕パルプよりも小さく、よくほぐされており、粗解砕パルプに対する回収率は99.7%であった。粗解砕パルプとクリアランスが0.5、2.0及び3.8mmでの微細解砕パルプ中の未解砕物量を求めた。
結果を表1に示す。
【0062】
実施例1
Saiccor社製パルプSaiaceLDを約10cm幅に裂いた後、ピラミッドパターンの粗解砕機能部領域と線状歯の微解砕機能部領域を持つ図2に示した解砕機能部を持つ歯を装着した解砕機に投入した。クリアランスは1.0mmと1.5mmに調整し、1800rpmの回転数で一段で微細解砕した。
得られたパルプは明らかによくほぐされており、良好な微解砕が行われていた。クリアランスが1.0と1.5mmの場合の微細解砕パルプ中の未解砕物量を求めた。
上記の実施例1及び比較例1の各解砕パルプを原料として、下記の方法により二酢酸セルロースを製造した。
【0063】
解砕パルプを水分が5%になるように調湿した後、前処理機に入れ、5%調湿パルプ100部に対し氷酢酸100部を均一にスプレーし、室温にて1時間放置した。次に、無水酢酸250部、酢酸375部、硫酸1部の混合液を捏和式反応機に入れ、ジャケットに温度調節水を通して12℃に冷却しておき、これに前記の酢酸を吸収させたパルプを投入し、撹拌混合した。反応混合物の温度は当初16℃前後となるが、これを温度調節水により等速度で昇温し、60分かけて57℃に到達せしめた後、10分間で50℃まで冷却し、その後、目的の重合度を得るために必要な時間として10分、同温度で保持した。
【0064】
次に、24%酢酸マグネシウム水溶液10部を添加混合し、硫酸を中和した。反応混合物をオートクレーブに移し、密閉下、撹拌しながらジャケットに過熱水を通し、90分かけて150℃に昇温し、同温度で50分間保持した。その後、ノズルを通して少量ずつ大気圧下に取り出し、放冷した。冷却した酢酸セルロース溶液をミキサーで撹拌しながら、3倍量の10%希酢酸中に投入し、フレーク状の沈殿を得た。この沈殿を十分量の流水で洗浄し、100℃のオーブンで2時間乾燥し、二酢酸セルロースを得た。この二酢酸セルロースについて濾過度、ファイバー量を測定した。この測定結果を表1に示す。
【表1】

【0065】
比較例2として比較例1と同様に二段階での解砕による方法を用いた。
比較例2
(粗解砕処理)
原料パルプはSaiccor社製パルプSAI-ACEを用いた。粗解砕処理は比較例
1と同様に行った。
(微解砕処理)
次に、比較例1と同一解砕機で3600rpm、クリアランス1mm(図1中のL)及び1800rpm,クリアランス2mmの条件で、パルプを微細解砕した。
得られたパルプは明らかに粗解砕パルプよりも小さく、よくほぐされており、粗解砕パルプに対する回収率は99.7%であった。粗解砕パルプとクリアランスが1.0及び2.0mmでの微細解砕パルプ中の未解砕物量を求めた。結果を表2に記す。
また実施例1、比較例1と同様にして二酢酸セルロースを製造しこの二酢酸セルロースについて濾過度、ファイバー量を測定した。この測定結果を表2に示す。
【0066】
実施例2
Saiccor社製パルプSAI-ACE を用いた。実施例1と同一の解砕刃を有する解砕機に投入した。クリアランスは1.0mmと2.0mmに調整し、回転数1800rpmの条件で一段で微細解砕した。
得られたパルプは明らかによくほぐされており、良好な微解砕が行われていた。クリアランスが1.0と2.0mmの場合の微細解砕パルプ中の未解砕物量を求めた。結果を表2に記す。
また実施例1、比較例1と同様にして二酢酸セルロースを製造しこの二酢酸セルロースについて濾過度、ファイバー量を測定した。この測定結果を表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
比較例3
比較例3として比較例1と同様に二段階での解砕による方法を用いた。
(粗解砕処理)
比較例1と同様にして、Rayonier社製パルプSulfatate−HJを粗解砕処理した。
(微解砕処理)
次に、比較例1と同一解砕機で3600rpm、クリアランス0.5mm(図1中のL)及び1800rpm,クリアランス1.5mmの条件で、パルプを微細解砕した。
微細解砕パルプ中の未解砕物量を求めた。結果を表3に記す。
【0069】
上記の比較例3の解砕パルプを用いて下記の方法で三酢酸セルロースを製造した。
まず解砕パルプを水分が5.5%になるように調湿した後、前処理機に入れ、5%調湿パルプ100部に対し、氷酢酸50部を均一にスプレーし、室温にて1時間放置した。次に、−10℃に冷却してシャーベット状になった無水酢酸263部、酢酸433部を捏和式反応機に入れ、硫酸8.2部を加えた後、解砕パルプを投入した。その後、70分かけて41℃まで昇温した後、直ちに37℃まで冷却し、同温度で70分間保持した。
【0070】
次に、24%酢酸マグネシウム水溶液3.8部を添加混合すると同時に47℃まで昇温し、同温度で35分間保持した後、さらに蒸留水1.98部を加え、25分かけて65℃に昇温した。同温度で40分間保持した後、24%酢酸マグネシウム水溶液3.9部を添加混合した後、生成した高粘度溶液を取り出し、3倍量の10%希酢酸中に投入し、家庭用ミキサーで撹拌し、1時間煮沸処理した。さらに、十分量の蒸留水で水洗した後、100℃のオーブンで2時間乾燥し、三酢酸セルロースを得た。ファイバー量は、製造例3が0.017%、比較製造例5が0.028%であった。
【0071】
実施例3
Rayonier社製パルプSulfatate−HJを用いた。実施例1と同一の解砕刃を有する解砕機に投入した。クリアランスは1.5mmと2.0mmに調整し、回転数1800rpmの条件で一段で微細解砕した。
得られたパルプは明らかによくほぐされており、良好な微解砕が行われていた。クリアランスが1.5と2.0mmの場合の微細解砕パルプ中の未解砕物量を求めた。結果を表3に記す。
また比較例3と同様にして三酢酸セルロースを製造しこの三酢酸セルロースについて濾過度、ファイバー量を測定した。この測定結果を表3に示す。
【表3】

【0072】
上記の表1乃至3から明らかな通り、本発明の解砕手段を用いた解砕方法により解砕されたパルプを用いた酢酸セルロースは濾過度に優れるとともにファイバー量も少なくものを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の解砕法を説明するための解砕機の概略図である。
【図2】本発明の解砕法に使用する解砕機能部の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が円形又はそれに類する形状の相対する2枚の解砕手段を備えた解砕機を用い、前記解砕手段間の中心部にパルプ原料を供給した後、一方又は両方の解砕手段を回転させることにより解砕し、解砕物を遠心力により周縁方向に移動させ、外部に排出する酢酸セルロース製造用のパルプ原料の解砕法であり、前記解砕手段が、解砕手段本体部と該本体部の面に形成された解砕機能部とからなり、解砕機能部が粗解砕機能部領域とその周縁に形成された微解砕機能部領域から構成され、粗解砕機能部領域がピン歯型、ボルト型歯、およびまたはピラミッド歯群から構成され、微解砕機能部が、その表面に解砕手段本体部の中心から周縁に向かって形成された幅方向の断面凸状の線状歯を有しており、前記線状歯は周方向に所定の間隔をおいて、かつ半径方向に連続的に又は非連続的に形成されたものであるパルプ原料の解砕法。
【請求項2】
パルプ原料が少なくとも塊状、シート状、短冊状、バンド状である請求項1に記載のパルプ原料の解砕法。
【請求項3】
微解砕領域において、所定間隔をおいて配置された2以上の線状歯間を直交及び/又は斜交するようにして、更に断面凸状の線状歯が設けられている請求項1又は2記載のパルプ原料の解砕法。
【請求項4】
微解砕領域において、所定間隔をおいて配置された2以上の線状歯間を直交及び/又は斜交するようにして、更に断面凸状の線状歯が設けられ、その線状歯の高さが、所定間隔をおいて配置された2以上の線状歯の高さよりも低いように形成された請求項3に記載にパルプ原料の解砕法。
【請求項5】
粗解砕領域において、粗解砕機能部領域を形成する歯が少なくとも頂点部が切断された形状の変形四角錐形状の歯あるいは頂点部が切断された形状の変形三角錐型歯の何れかとピラミッド歯群から構成されたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のパルプ原料の解砕法。
【請求項6】
微解砕領域において、所定間隔をおいて配置された2以上の線状歯間を直交及び/又は斜交するようにして、更に断面凸状の線状歯が設けられ、その線状歯が解砕機能部の回転方向の反対方向に行くに従い、回転中心から離れてゆくような曲線を描くことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のパルプ原料の解砕法。
【請求項7】
平面形状が円形又はそれに類する形状の相対する2枚の解砕手段を備えた解砕機であり、請求項1から6何れかに記載の解砕法を用いた解砕装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−11967(P2009−11967A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178557(P2007−178557)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】