説明

パンタグラフ監視装置

【課題】列車の屋根上を撮影した画像を解析して、パンタグラフのホーンの折れの有無を検出することを可能としたパンタグラフ監視装置を提供する。
【解決手段】列車の屋根上を撮影する監視カメラと、監視カメラによって撮影された入力画像を画像処理することによりパンタグラフの状態を監視する画像処理装置とを備えたパンタグラフ監視装置において、画像処理装置が、入力画像上のホーンに対して設定される複数の検査点に基づいてパンタグラフのホーンを検査直線として抽出する検査直線設定部5hと、検査直線と予め設定する基準直線との間の検査角度を算出する検査角度計算部5iと、検査角度に基づいてホーンの折れの有無を判断するホーン折れ判断部5jとを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の屋根上を撮影した画像を解析してパンタグラフの状態を検査する装置に関し、特にパンタグラフのホーンの折れの有無を画像処理により検出するパンタグラフ監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車の屋根上を撮影した画像を解析してパンタグラフの状態を検査する装置として、すり板の厚さを計測する装置が提案されている。例えば、特許文献1では、フラッシュランプを照射して斜め上方からパンタグラフを撮影した画像を用い、すり板上面とすり板と舟体との結合面ラインを撮影画像の輝度差から検出し、すり板上面のエッジと結合面ラインのエッジの間の距離としてすり板の厚さを求める装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、ストロボ照射して水平よりもやや斜め下方からパンタグラフを撮影した画像を用い、画像中から濃淡エッジを検出し、そのエッジを繋ぐことによってすり板上面座標値とすり板下面座標値を求め、これらの座標値の差分からすり板の厚さを求める装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−312832号公報
【特許文献2】特開2002−150271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載されている装置は、パンタグラフを撮影した画像を解析することにより、パンタグラフの舟体に設置されているすり板の厚さを計測する装置である。このため、パンタグラフの状態としてすり板の摩耗具合を検査することができる。すり板の摩耗は、電気列車への電力供給のため架線とすり板が走行中に常時接触することによりすり板が徐々に削れることで発生するものである。
【0006】
しかしながら、パンタグラフに発生する異常はすり板の摩耗だけではない。パンタグラフのより大きな異常としては、図15に示すようなパンタグラフ1aのホーン1bに発生する折れがある。ホーン1bに折れが発生した状態で列車が走行を続けると、パンタグラフ1aと接触する架線及び架線を支える周辺構造物に大きな損傷を与える可能性がある。そのため、ホーン1bに折れが発生した場合には列車を止めて、架線及び周辺構造物の損傷を抑える必要がある。
【0007】
このようなことから本発明は、列車の屋根上を撮影した画像を解析して、パンタグラフのホーンの折れの有無を検出することを可能としたパンタグラフ監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための第1の発明に係るパンタグラフ監視装置は、列車の屋根上を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された入力画像を画像処理することによりパンタグラフの状態を監視する画像処理手段とを備えたパンタグラフ監視装置において、前記画像処理手段が、前記入力画像から前記パンタグラフのホーンの形状を検査直線として検出する検査直線検出手段、前記検査直線と前記検査直線の状態を検査するための比較対象である基準直線との間の検査角度を算出する検査角度計算手段、及び、前記検査角度が予め設定したホーン角度範囲に含まれるか否かに基づいて前記ホーンの状態を監視するホーン折れ判断手段を有するパンタグラフホーン形状検査処理手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明に係るパンタグラフ監視装置は、第1の発明に係るパンタグラフ監視装置において、前記検査直線検出手段が、前記入力画像上の前記ホーンに対して設定される複数の検査点に基づいて前記検査直線を取得する検査直線設定部を有することを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明に係るパンタグラフ監視装置は、第1の発明に係るパンタグラフ監視装置において、前記検査直線検出手段が、前記入力画像上の前記ホーンを囲むように設定されたホーン検査範囲内から抽出したエッジのデータに基づいて前記検査直線を取得する直線抽出部を有することを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明に係るパンタグラフ監視装置は、第2の発明に係るパンタグラフ監視装置において、前記パンタグラフホーン形状検査処理手段が、前記入力画像を取り込む画像データ入力手段と、パンタグラフ検出情報を取得するパンタグラフ検出情報入力手段と、検査小領域の大きさ、探索領域の大きさ、ホーン角度範囲からなる検査設定情報を出力する検査設定手段と、前記ホーン折れ判断部における判断結果を出力する結果データ出力手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明に係るパンタグラフ監視装置は、第3の発明に係るパンタグラフ監視装置において、前記パンタグラフホーン形状検査処理手段が、前記入力画像を取り込む画像データ入力手段と、パンタグラフ検出情報を取得するパンタグラフ検出情報入力手段と、前記ホーン検査範囲の大きさ、前記検査直線を前記ホーンの一部とみなすか否かを判断するために用いる直線最小長さ、及びホーン角度範囲からなる検査設定情報を出力する検査設定手段と、前記ホーン折れ判断部における判断結果を出力する結果データ出力手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明に係るパンタグラフ監視装置は、第1乃至第5のいずれかの発明に係るパンタグラフ監視装置において、前記検査角度計算手段が、前記基準直線を前記入力画像上の前記パンタグラフの位置に応じて設定する基準直線計算部を有することを特徴とする。
【0014】
また、第7の発明に係るパンタグラフ監視装置は、第1乃至第6のいずれかの発明に係るパンタグラフ監視装置において、前記ホーン折れ判断手段が、前記検査直線の傾きが予め設定したホーン角度範囲に含まれるか否かに基づいて前記ホーンの折れの有無を判断するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係るパンタグラフ監視装置によれば、列車の屋根上を撮影する撮影手段と、撮影手段によって撮影された入力画像を画像処理することによりパンタグラフの状態を監視する画像処理手段とを備えたパンタグラフ監視装置において、画像処理手段が、入力画像からパンタグラフのホーンの形状を検査直線として検出する検査直線検出手段、検査直線と検査直線の状態を検査するための比較対象である基準直線との間の検査角度を算出する検査角度計算手段、及び、検査角度が予め設定したホーン角度範囲に含まれるか否かに基づいてホーンの状態を監視するホーン折れ判断手段を有するパンタグラフホーン形状検査処理手段を備えるので、列車の屋根上を撮影した画像を解析してホーンの折れの有無を検出することができ、架線および架線を支える周辺構造物の損傷を防止することができる。
【0016】
また、第2の発明に係るパンタグラフ監視装置によれば、検査直線検出手段が、入力画像上のホーンに対して設定される複数の検査点に基づいて検査直線を取得する検査直線設定部を有するので、ホーンの折れを高精度に検出することができる。
【0017】
また、第3の発明に係るパンタグラフ監視装置によれば、検査直線検出手段が、入力画像上のホーンを囲むように設定されたホーン検査範囲内から抽出したエッジのデータに基づいて検査直線を取得する直線抽出部を有するので、ホーンの折れを高精度に検出することができる。
【0018】
また、第4の発明に係るパンタグラフ監視装置によれば、パンタグラフホーン形状検査処理手段が、入力画像を取り込む画像データ入力手段と、パンタグラフ検出情報を取得するパンタグラフ検出情報入力手段と、検査小領域の大きさ、探索領域の大きさ、ホーン角度範囲からなる検査設定情報を出力する検査設定手段と、ホーン折れ判断部における判断結果を出力する結果データ出力手段とを備えるので、ホーンの折れを確実に検出することができる。
【0019】
また、第5の発明に係るパンタグラフ監視装置によれば、パンタグラフホーン形状検査処理手段が、入力画像を取り込む画像データ入力手段と、パンタグラフ検出情報を取得するパンタグラフ検出情報入力手段と、ホーン検査範囲の大きさ、検査直線をホーンの一部とみなすか否かを判断するために用いる直線最小長さ、及びホーン角度範囲からなる検査設定情報を出力する検査設定手段と、ホーン折れ判断部における判断結果を出力する結果データ出力手段とを備えるので、ホーンの折れを確実に検出することができる。
【0020】
また、第6の発明に係るパンタグラフ監視装置によれば、検査角度計算手段が、基準直線を入力画像上のパンタグラフの位置に応じて設定する基準直線計算部を有するので、比較的軽微なホーンの折れを検出することができる。
【0021】
また、第7の発明に係るパンタグラフ監視装置によれば、ホーン折れ判断手段が、検査直線の傾きが予め設定したホーン角度範囲に含まれるか否かに基づいてホーンの折れの有無を判断するように構成されたので、ホーンの折れの有無からなるパンタグラフの損傷情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係るパンタグラフ監視装置の設置例を示す説明図である。
【図2】本発明の実施例3における監視カメラの設置例を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例1に係るパンタグラフホーン形状検査処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図4(a)は本実施例に係る基準パンタグラフ画像の一例を示す説明図、図4(b)は本実施例に係る検査パンタグラフ画像の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例1における検査直線及び検査角度の例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例2に係るパンタグラフホーン形状検査処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例2におけるホーン検査範囲の設定例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例2における検査直線の抽出例を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例3に係るパンタグラフホーン形状検査処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施例3において検査点を設定する例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施例3に係るパンタグラフホーン検査処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施例3において基準直線を設定する例を示す説明図である。
【図13】図13(a)はパンタグラフの上面図、図13(b)はパンタグラフの正面図、図13(c)はパンタグラフの側面図である。
【図14】画像上の位置によるパンタグラフの見え方の変化の一例を示す説明図である。
【図15】パンタグラフのホーンの折れの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るパンタグラフ監視装置の詳細を説明する。
【実施例1】
【0024】
図1乃至図5に基づいて本発明に係るパンタグラフ監視装置の第1の実施例について説明する。図1は本実施例に係るパンタグラフ監視装置の設置例を示す説明図、図2は本実施例における監視カメラの設置例を示す説明図、図3は本実施例に係るパンタグラフホーン形状検査処理部の概略構成を示すブロック図、図4(a)は本実施例に係る基準パンタグラフ画像の一例を示す説明図、図4(b)は本実施例に係る検査パンタグラフ画像の一例を示す説明図、図5は本実施例における検査直線及び検査角度の例を示す説明図である。
【0025】
図1に示すように、本実施例においてパンタグラフ監視装置は、列車1の接近を検知するためのセンサ2、列車1の屋根上を照らす照明装置3、列車1の屋根上の照明装置3によって照らされる領域を撮影する撮影手段としての監視カメラ4、及びこれらセンサ2、照明装置3及び監視カメラ4に接続された画像処理手段としての画像処理装置5から構成されている。
【0026】
センサ2は、例えばレール6の振動等を測定するものであり、レール6に取り付けられるとともに列車接近警報手段としての列車接近警報部(図示せず)に接続されている。列車接近警報部は、センサ2の出力に応じて列車1の接近の有無を検知するものであり、列車1が接近していると判断した場合には警報として列車接近信号を画像処理装置5の後述する撮影処理部5Aへ送信する。
【0027】
照明装置3は、センサ2に対して列車1の進行方向前方に設置され、撮影処理部5Aからの信号に基づいて点灯及び消灯を行うように構成されている。
【0028】
監視カメラ4は、照明装置3と概ね同位置に、列車1の屋根上の照明装置3によって照らされた領域を撮影するように設置され、図2に示すように、監視カメラ4のレンズの焦点位置を基準座標系の原点O、線路6の枕木9方向をX軸方向、列車の進行方向をY軸方向、鉛直方向をZ軸方向とすると、カメラ光軸をZ軸方向に、カメラの画像センサ横軸をX軸方向に、監視カメラ4の画像センサ縦軸をY軸方向に向けて設置される。ここで、図2中に示す符号Hはレンズ焦点位置からパンタグラフまでの鉛直距離である。さらに、本実施例において監視カメラ4は、撮影処理部5Aからの信号に基づいて撮影の開始、終了を行うように構成されている。この監視カメラ4によって撮影した画像は画像処理装置5の後述するパンタグラフ検索処理部5Bへ送信される。
【0029】
なお、照明装置3及び監視カメラ4が設置される位置は、センサ2から所定の距離だけ離間した位置、例えば、センサ2の出力に基づいて監視カメラ4を起動したときに、列車1がこの監視カメラ4の視野内に進入する直前にこの監視カメラ4による撮影を開始することができる位置とする。
【0030】
画像処理装置5は、パンタグラフ1aの撮影を制御する撮影処理部5Aと、監視カメラ4によって撮影された画像中からパンタグラフ1aを検出するパンタグラフ検索処理部5Bと、監視カメラ4によってパンタグラフ1aの画像を解析してパンタグラフホーンの折れを検出するパンタグラフホーン形状検査処理部5Cとから構成されている。
【0031】
撮影処理部5Aは、センサ2、照明装置3、及び監視カメラ4を制御して通過する列車1の屋根上を撮影する処理を行う部分である。
【0032】
パンタグラフ検出処理部5Bは、撮影処理部5Aにより撮影した列車1の屋根上の画像からパンタグラフ1aの画像を検出し、この画像上のパンタグラフ1aの位置等をパンタグラフ検出情報として画像のデータとともに出力する処理を行う部分である。
【0033】
パンタグラフホーン形状検査処理部5Cは、パンタグラフ検索処理部5Bにより検出されたパンタグラフ1aが撮影されている画像のデータを解析して、パンタグラフホーンの折れの有無を検出する処理を行う部分である。
【0034】
ここで、撮影処理部5A及びパンタグラフ検索処理部5Bにおける処理は既知の手法(例えば、特願2009−014850等参照)を用いるものとし、詳細な説明は省略する。
【0035】
以下、パンタグラフホーン形状検査処理部5Cについて詳細に説明する。パンタグラフホーン形状検査処理部5Cは、図3に示すように、画像データ入力部5a、パンタグラフ検出情報入力部5b、設定部5c、記憶部5d、検査小領域設定部5e、検査点探索領域設定部5f、検査点検出部5g、検査直線設定部5h、検査角度計算部5i、ホーン折れ判断部5j、及び、結果データ出力部5kを備えている。
【0036】
画像データ入力部5aは、データベース(図示せず)から取り出した図4(a)に示すような基準パンタグラフ画像7のデータと、監視カメラ4から取得した図4(b)に示すような検査パンタグラフ画像8のデータとを、パンタグラフ検索処理部5Bから入力し、これらを画像データとして記憶部5dに保管する。ここで、基準パンタグラフ画像7はパンタグラフ1aを撮影した画像の中から選択されたパンタグラフホーンに折れのない画像であり、予めデータベースに登録しておくものとする。また、検査パンタグラフ画像8は撮影処理部5Aにより制御され監視カメラ4で撮影された画像のうち、パンタグラフ検索処理部5Bにおいて検査対象とするパンタグラフ1aを検出した画像である。
【0037】
パンタグラフ検出情報入力部5bは、パンタグラフ検索処理部5Bから、検査パンタグラフ画像8上のパンタグラフ1aの位置等からなるパンタグラフ検出情報を入力し、これを記憶部5dに保管する。
【0038】
設定部5cは、記憶部5dから基準パンタグラフ画像7のデータを入力し、この基準パンタグラフ画像7上のホーン1bに対して検査基準点P(図8では、PL1,PL2,PL3,PR1,PR2,PR3)を設定する。また、検査小領域サイズWA1,WA2、探索領域サイズWB1,WB2、ホーン角度範囲を設定し、各設定データを検査設定情報としてまとめ、検査設定情報として記憶部5dに保管する。ここで、検査基準点Pは、図4(a)に示すように、基準パンタグラフ画像7上の左右のホーン1bそれぞれの根元、中央、先端の三箇所に設定される。以下、これらをそれぞれホーン根元検査基準点PL1,PR1、ホーン中央検査基準点PL2,PR2、ホーン先端検査基準点PL3,PR3と呼称し、総称する場合に検査基準点Pと呼称する。また、検査小領域サイズWA1,WA2は後述する検査小領域Aの大きさを決定するパラメータ、探索領域サイズWB1,WB2は後述する検査点探索領域Bの大きさを決定するパラメータである。また、ホーン角度範囲はホーン1bの折れの有無を判断するために設定されたものであり、検査パンタグラフ画像8でのパンタグラフ1aの長手方向軸14と後述する検査直線L1とのなす角である検査角度θの正常な範囲である。
【0039】
記憶部5dは、各処理部から出力されるデータを入力し保管するとともに、各処理部からの要求に応じて必要なデータを所望の処理部へ出力する。
【0040】
検査小領域設定部5eは、記憶部5dから検査基準点P及び検査小領域サイズWA1,WA2の情報を入力し、検査基準点Pを中心とした矩形領域である検査小領域Aを設定する。検査小領域Aの情報は記憶部5dに保管される。ここで、検査小領域は、図4(a)に示すように、基準パンタグラフ画像7上に設定したホーン根元検査基準点PL1,PR1、ホーン中央検査基準点PL2,PR2、ホーン先端検査基準点PL3,PR3それぞれを中心とする領域であり、以下、それぞれホーン根元小領域AL1,AR1、ホーン中央小領域AL2,AR2、ホーン先端小領域AL3,AR3と呼称し、総称する場合に検査小領域Aと呼称する。
【0041】
検査点探索領域設定部5fは、記憶部5dから探索領域サイズWB1,WB2の情報とパンタグラフ検出情報を入力し、検査パンタグラフ画像8上の適切な位置に検査点探索領域Bを設定する。検査点探索領域Bの情報は記憶部5dに保管される。ここで、図4(b)に示すように、検査点探索領域Bは検査パンタグラフ画像8から上記ホーン根元検査基準点PL1,PR1、ホーン中央検査基準点PL2,PR2、ホーン先端検査基準点PL3,PR3に対応する点を抽出するために設定される領域である。より詳しくは、検査点探索領域Bは検査パンタグラフ画像8に対し、パンタグラフ検出情報から得られたパンタグラフ1aの位置に基づいて推定される左右それぞれのホーン1bの根元、中央、先端の位置を含むように設定される。以下、ホーン1bの根元、中央、先端に対して設定される検査点探索領域を、それぞれホーン根元探索領域BL1,BR1、ホーン中央探索領域BL2,BR2、ホーン先端探索領域BL3,BR3と呼称し、総称する場合に検査点探索領域Bと呼称する。
【0042】
検査点検出部5gは、記憶部5dから基準パンタグラフ画像7と検査パンタグラフ画像8の各画像データ、検査小領域A、及び検査点探索領域Bの情報を入力し、領域相関法により検査パンタグラフ画像8上に検査点Qを検出する。検査点Qの情報は記憶部5dに保管される。ここで、図4(b)に示すように、検査点Qは検査基準点Pに対応する検査パンタグラフ画像8上の点である。以下、ホーン根元検査基準点PL1,PR1、ホーン中央検査基準点PL2,PR2、ホーン先端検査基準点PL3,PR3に対応する点を、それぞれホーン根元検査点QL1,QR1、ホーン中央検査点QL2,QR2、ホーン先端検査点QL3,QR3と呼称し、これらを総称する場合に検査点Qと呼称する。
【0043】
検査直線設定部5hは、記憶部5dから検査点Qの情報を入力し、検査直線L1を設定する。検査直線L1の情報は記憶部5dに保管される。ここで、検査直線L1は、図5に示すように、検査パンタグラフ画像8上の左右のホーン1bにおいて相互に隣接する検査点Qを通る直線である。以下、ホーン根元検査点QL1とホーン中央検査点QL2を通る直線、ホーン根元検査点QR1とホーン中央検査点QR2を通る直線をそれぞれ第一検査直線LL1,LR1、ホーン中央検査点QL2とホーン先端検査点QL3を通る直線、ホーン中央検査点QR2とホーン先端検査点QR3を通る直線をそれぞれ第二検査直線LL2,LR2と呼称し、総称する場合に検査直線L1と呼称する。
【0044】
検査角度計算部5iは、記憶部5dから検査直線L1の情報とパンタグラフ検出情報を入力し、検査角度θを計算する。検査角度θの情報は記憶部5dに保管される。ここで、検査角度θは、図5に示すように各検査直線L1とパンタグラフの長手方向に平行なパンタグラフの長手方向軸L0とのなす角度である。以下、パンタグラフの長手方向軸L0と第一検査直線LL1,LR1とのなす角度を第一検査角度θL1,θR1、パンタグラフの長手方向軸L0と第二検査直線LL2,LR2とのなす角度を第二検査角度θL2,θR2と呼称し、総称する場合に検査角度θと呼称する。
【0045】
ホーン折れ判断部5jは、記憶部5dから検査角度θとホーン角度範囲の情報を入力し、ホーン1bの折れの有無を検出して、得られたホーン1bの折れの有無の情報をホーン折れ検査結果データとしてまとめる。ホーン折れ検査結果データは記憶部5dに保管される。
【0046】
結果データ出力部5kは、ホーン折れ検査結果データを記憶部5dから取り出し、これをパンタグラフホーン形状検査結果として出力する。
【0047】
次に、本実施例に係るパンタグラフ監視装置における舟体検査処理の流れを簡単に説明する。本実施例に係るパンタグラフ監視装置においては、まず、画像データ入力部5a及びパンタグラフ検出情報入力部5bにおいて、画像データ及びパンタグラフ検出情報を入力し、設定部5cにおいて、検査基準点P、及び、検査小領域サイズWA1,WA2、探索領域サイズWB1,WB2、ホーン角度範囲を設定する。
【0048】
続いて、検査小領域設定部5e、検査点探索領域設定部5f、検査点検出部5gにおいて、予め設定した検査基準点P、検査小領域サイズWA1,WA2、探索領域サイズWB1,WB2に基づき検査点Qの検出を行う。
【0049】
以下に検査点Qの検出について詳しく説明する。まず、検査点Qの検出を行う場合は、検査小領域設定部5eにおいて検査基準点P、検査小領域サイズWA1,WA2に基づいて基準パンタグラフ画像7に対して検査小領域Aを設定し、検査点探索領域設定部5fにおいて探索領域サイズWB1,WB2に基づき検査パンタグラフ画像8に対して検査点探索領域Bを設定する。なお、検査探索領域Bの設定位置については、それぞれの検査パンタグラフ画像8においてパンタグラフ1aの適切な位置に設定されるように、パンタグラフ検出情報を基にパンタグラフ1aの画像上の位置に応じて相対的に平行移動し設定するものとする。
【0050】
その後、検査点検出部5gにより、基準パンタグラフ画像7に設定した検査小領域Aの画像データと検査パンタグラフ画像8に設定した検査点探索領域Bの画像データとの比較を行い、検査点探索領域Bにおいて検査小領域Aの画像データと最も似ている画像データが存在する位置を検出する。こうして取得した検査パンタグラフ画像8上の位置を検査点Qとして設定する。なお、領域相関法における画像データの比較については、絶対値差分、正規化相関、方向符号照合(例えば、F.ULLAH, S.KANEKO and S.IGARASHI, "Orientation Code Matching for Robust Object Search", IEICE Trans. Inf. & Syst., Vol.E84-D, No.8, pp.999-1006, 2001等参照)等の手法を用いることができる。
【0051】
検査点Qを検出したら、続いて、検査直線設定部5hにより、図5に示すように左右それぞれのホーン1bに対して検出した検査点Qについて、相互に隣接する点を通る直線Lを設定する。詳しくは、検査パンタグラフ画像8において検出した検査点Qの情報を基に、図5に示すように左右のホーン1bについてそれぞれ検査直線LL1,LL2、検査直線LR1,LR2を設定する。このようにして設定した検査直線L1の状態を検査することで、ホーン1bの折れの有無を判断する。
【0052】
続いて、検査角度計算部5iにより、図5に示すように左右それぞれのホーン1bについて検査角度θを計算する。詳しくは、検査直線L1の情報を基に、図5に示すように左右のホーン1bについてそれぞれ検査角度θを計算する。なお、パンタグラフ1aの長手方向軸L0はパンタグラフ検出情報から得られるものとする。
【0053】
続いて、ホーン折れ判断部5jにより、検査角度θがホーン角度範囲に入るか否かを求め、ホーン1bの折れの有無を判断する。ホーン角度範囲については設定部5cにより予め設定しておくものとする。
【0054】
最後に、結果データ出力部5kによりホーン折れ検査結果データを出力する。
上記の処理をパンタグラフホーン形状検査が終了するまで繰り返す。
【0055】
このように構成される本実施例に係るパンタグラフ監視装置によれば、監視カメラ4によって列車1の屋根上を撮影した画像を用いてパンタグラフ1aのホーン1bの折れの有無を検出することができる。
【実施例2】
【0056】
図6乃至図8に基づいて、本発明の第2の実施例を詳細に説明する。図6は本実施例に係るパンタグラフホーン形状検査処理部の概略構成を示すブロック図、図7は本実施例においてホーン検査範囲を設定する例を示す説明図、図8は本実施例において抽出された検査直線の例を示す説明図である。
【0057】
図6に示すように、本実施例は、実施例1に比較してパンタグラフホーン形状検査処理部5Cの構成が異なるものである。その他の構成は実施例1において説明したものと概ね同様であり、以下、同一の処理を行う部分には同一の符合を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0058】
図6に示すように、本実施例においてパンタグラフホーン形状検査処理部5Cは、画像データ入力部5a、パンタグラフ検出情報入力部5b、設定部5c、記憶部5d、ホーン検査範囲設定部5l、鮮鋭化処理部5m、直線抽出部5n、検査角度計算部5i、ホーン折れ判断部5j、及び結果データ出力部5kを備えている。
【0059】
設定部5cは、ホーン検査範囲サイズWC1,WC2、直線最小長さ、ホーン角度範囲を設定する。これらの各設定データを検査設定情報としてまとめ、これを記憶部5dへ保管する。ここで、ホーン検査範囲サイズWC1,WC2は図7に示すように後述するホーン検査範囲Cの大きさを決定するパラメータ、直線最小長さは予め設定される検査直線を検出するための最小の長さである。また、ホーン角度範囲はホーン1bの折れの有無を判断するために設定されたものであり、検査パンタグラフ画像8でのパンタグラフ1aの長手方向軸14と後述する検査直線L2とのなす角である検査角度θの正常な範囲である。
【0060】
ホーン検査範囲設定部5lは、記憶部5dからパンタグラフ検出情報とホーン検査範囲サイズWC1,WC2の情報を入力し、ホーン検査範囲Cを設定する。ホーン検査範囲Cの情報は記憶部5dに保管される。ここで、ホーン検査範囲Cは、パンタグラフ検出情報から得られる検査パンタグラフ画像8上におけるパンタグラフ1aの位置に応じて設定される領域であり、図7に示すように、左右のホーン1bを囲むように設定される。以下、画像の左側に位置するホーン1bに対して設定される範囲、画像の右側に位置するホーン1bに対して設定される範囲をそれぞれホーン検査範囲CL,CRと呼称し、総称する場合にホーン検査範囲Cと呼称する。
【0061】
鮮鋭化処理部5mは、記憶部5dからホーン検査範囲CL,CRの情報と検査パンタグラフ画像8のデータを入力し、ホーン検査範囲CL,CR内にあるエッジの抽出を行い、これをエッジデータとしてまとめる。エッジデータは記憶部5dに保管される。鮮鋭化処理の方法としては、ソーベルフィルタやLOG等の微分フィルタを使用するものとする。
【0062】
直線抽出部5nは、記憶部5dからエッジデータと直線最小長さの情報を入力し、図8に示すようにホーン検査範囲CL,CR内から直線最小長さ以上の長さを持つ直線を抽出し、これを検査直線L2としてまとめる。検査直線L2の情報は記憶部5dに保管される。なお、直線最小長さよりも短い直線についてはこれを除外する。
【0063】
検査角度計算部5iは、記憶部5dから検査直線L2の情報とパンタグラフ検出情報を入力し、各検査直線L2とパンタグラフの長手方向軸L0とのなす角度である検査角度θ(図8では第一検査角度θL1、及び、第二検査角度θL2)を計算する。検査角度θの情報は記憶部5dに保管される。
【0064】
ホーン折れ判断部5jは、記憶部5dから検査角度θとホーン角度範囲の情報を入力し、ホーン1bの折れの有無を判断してホーン折れ検査結果データとしてまとめる。ホーン折れ検査結果データは記憶部5dに保管される。
【0065】
結果データ出力部5kは、ホーン折れ検査結果データを記憶部5dから取り出し、これをパンタグラフホーン形状検査結果として出力する。
【0066】
次に、本実施例に係るパンタグラフ監視装置における舟体検査処理の流れを簡単に説明する。本実施例に係るパンタグラフ監視装置においては、まず、設定部5cによりホーン検査範囲サイズWC1,WC2、直線最小長さ、及びホーン角度範囲を設定する。
【0067】
続いて、ホーン検査範囲設定部5lにより、パンタグラフ検出情報入力部5bにおいて入力したパンタグラフ検出情報、設定部5cにより設定したホーン検査範囲サイズWC1,WC2を用いて、ホーン検査範囲Cを設定する。
【0068】
続いて、図8に示すように、鮮鋭化処理部5mにより検査パンタグラフ画像8に対してパンタグラフ1aの左右にそれぞれ設定したホーン検査範囲CL,CR内からエッジを抽出し、直線抽出部5nにより抽出したエッジのデータを基に検査直線LL,LRを検出する。その後、図8に示すように、検査角度計算部5iによりパンタグラフ1aの長手方向軸L0と検査直線LL,LRとのなす角として検査角度θを算出する。
【0069】
続いて、ホーン折れ判断部5jにより、検査角度θがホーン角度範囲に入るか否かに基づいてホーン1bの折れの有無を判断し、最後に、結果データ出力部5kによりホーン折れ検査結果データを出力する。上記の処理をパンタグラフホーン形状検査が終了するまで繰り返す。
【0070】
このように構成される本実施例に係るパンタグラフ監視装置によれば、実施例1に示した装置の効果に加え、画像が暗くホーン1b先端部分が見えにくいような環境条件においても、ホーン1bから画像処理により直線を抽出することができるため、パンタグラフ1aのホーン1bの折れの有無を検出することができる。
【実施例3】
【0071】
図9乃至図13に基づいて本発明に係るパンタグラフ監視装置の第3の実施例を説明する。図9は本実施例に係るパンタグラフホーン形状検査処理部の概略構成を示すブロック図、図10は本実施例における検査点の設定例を示す説明図、図11は本実施例に係るパンタグラフホーン形状検査処理の流れを示すフローチャート、図12は本実施例における基準直線の設定例を示す説明図、図13はパンタグラフを示す説明図、図14は画像上の位置に対するパンタグラフの形状の変化を示す説明図である。
【0072】
本実施例は上述した実施例1に比較して、パンタグラフホーン形状検査処理部5Cの構成が異なるものである。以下、図3又は図6に示し上述したものと同様の処理を行うものについては同一符号を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0073】
図9に示すように、本実施例においてパンタグラフホーン形状検査処理部5Cは、画像データ入力部5a、パンタグラフ検出情報入力部5b、パンタグラフ形状データ入力部5o、設定部5c、記憶部5d、検査直線検出部5p、基準直線計算部5q、検査角度計算部5i、ホーン折れ判断部5j、及び、結果データ出力部5kを備えている。
【0074】
パンタグラフ形状データ入力部5oは、パンタグラフ1aの三次元的な形状データであるパンタグラフ形状データを入力し、記憶部5dへ保管する。
【0075】
設定部5cは、実施例1又は実施例2における処理に加え、レンズ焦点距離f、画像1ピクセルあたりの画像センサ上での大きさa、レンズ焦点位置からパンタグラフまでの鉛直距離Hを設定する。そして、全ての設定情報を検査設定情報としてまとめ、記憶部5dへ保管する。ここで、レンズ焦点距離fは監視カメラ4のレンズの焦点距離である。
【0076】
検査直線検出部5pは、検査設定情報、パンタグラフ検出情報、及び画像データを記憶部5dから入力し、検査直線L3(L1又はL2)を検出する。即ち、実施例1または実施例2において説明した検査パンタグラフ画像8を解析して検査直線L3を出力するまでの一連の処理を行う。
【0077】
基準直線計算部5qは、記憶部5dから検査設定情報、パンタグラフ検出情報、パンタグラフ形状データを入力し、検査パンタグラフ画像8上のパンタグラフ1aの位置に応じて、ホーン1bの画像中の位置における正常な形状に基づいて得られる直線(以下、「基準直線」と呼ぶ)LBを求める。基準直線LBは記憶部5dに保管される。
【0078】
検査角度計算部5iは、記憶部5dから検査直線L3及び基準直線LBを入力し、検査直線L3と基準直線LBとのなす角度として検査角度θを計算する。検査角度θは記憶部5dに保管される。
【0079】
ホーン折れ判断部5jは、記憶部5dから検査角度θとホーン角度範囲の情報を入力し、ホーン1bの折れの有無を判断して、得られたホーン1bの折れの有無の情報をホーン折れ検査結果データとしてまとめる。ホーン折れ検査結果データは記憶部5dに保管される。
【0080】
結果データ出力部5kは、ホーン折れ検査結果データを記憶部5dから取り出し、これをパンタグラフホーン形状検査結果として出力する。
【0081】
以下に、図11を用いて本実施例に係るパンタグラフ監視装置における舟体検査処理の流れを簡単に説明する。図11に示すように、本実施例に係るパンタグラフホーン形状検査装置においては、まず、設定部5cにより検査パンタグラフ画像8上のパンタグラフ中心位置Pcを算出する(ステップS1)。
【0082】
続いて、設定部5cにより検査パンタグラフ画像8上のパンタグラフ中心位置Pcを基準座標系上のパンタグラフ中心位置PC(Xp,Yp,Zp)へ変換する処理を行う(ステップS2)。
【0083】
基準座標系上のパンタグラフ中心位置PC(Xp,Yp,Zp)は、まず、パンタグラフ検出情報から得られる検査パンタグラフ画像8上のパンタグラフ1aの位置に基づいて検査パンタグラフ画像8上におけるパンタグラフ1aの中心位置Pcを求め、この中心位置Pcを座標変換することにより取得することができる。
【0084】
ここで、検査パンタグラフ画像8上のパンタグラフ1aの中心位置Pcから基準座標系上のパンタグラフ1aの中心位置PC(Xp,Yp,Zp)への座標変換は、以下の処理により行う。
【0085】
すなわち、基準座標系における位置をQ(X,Y,Z)、カメラ画像センサ上の位置をq(x,y)、画像上の位置をw(u,v)、レンズ焦点距離をf、画像の中心位置をwp(uc,vc)、画像1ピクセル辺りの画像センサ上での大きさをaとすると、画像上位置w(u,v)とカメラ画像センサ上位置q(x,y)との関係は次式(1),(2)で表せる。
x=a(u−uc) ・・・(1)
y=−a(v−vc) ・・・(2)
【0086】
また、カメラ画像センサ上位置q(x,y)と基準座標系上の位置Q(X,Y,Z)との関係は次式(3),(4)で表せる。
X=−Z(x/f) ・・・(3)
Y=−Z(y/f) ・・・(4)
【0087】
つまり、レンズ焦点位置Oから測定対象(ここでは、パンタグラフ1a)までの鉛直距離(高さ)Hが分かれば、測定対象の画像上位置から基準座標系における三次元位置を求めることができる。またその逆計算も可能である。ここで、本発明において監視カメラ4のレンズ焦点位置からパンタグラフ1aまでの鉛直距離Hは、設計データもしくは装置設置時の計測により既知であるので、その値を予め求めて記憶部5dに保管しておくものとする。
【0088】
このように、上記(1)〜(4)式を用いることにより、検査パンタグラフ画像8上のパンタグラフ1aの中心位置Pcを基準座標系上のパンタグラフ1aの中心位置PC(Xp,Yp,Zp)に座標変換することができる。
【0089】
ステップS2に続いては、設定部5cにより基準座標系上の検査基準点Pの位置を計算する(ステップS3)。基準座標系上の検査基準点Pの位置の計算は以下のように行う。まず、図10に示すように、パンタグラフ1aの左右のホーン1b上にそれぞれ複数の検査基準点P(本実施例では、左右それぞれのホーン1bに対して根元、中央、先端の三箇所にホーン根元検査基準点PL1,PR1、ホーン中央検査基準点PL2,PR2、ホーン先端検査基準点PL3,PR3)を設定する。
【0090】
例えば、ホーン根元検査基準点PL1,PR1、ホーン中央検査基準点PL2,PR2、ホーン先端検査基準点PL3,PR3が、基準座標系においてパンタグラフ中心の位置PCからそれぞれ次の位置オフセット(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2,Z2)、(X3,Y3,Z3)を持つ場合、ホーン根元検査基準点PL1,PR1、ホーン中央検査基準点PL2,PR2、ホーン先端検査基準点PL3,PR3の基準座標系上での位置はそれぞれ(Xp+X1,Yp+Y1,Zp+Z1)、(Xp+X2,Yp+Y2,Zp+Z2)、(Xp+X3,Yp+Y3,Zp+Z3)となる。このようにして検査パンタグラフ画像8上におけるパンタグラフ1aの位置に応じて、各検査基準点Pを設定する。なお、検査基準点Pのパンタグラフ中心位置PCからの位置オフセットのデータについてはパンタグラフの三次元的な形状データであるパンタグラフ形状データから得られる。
【0091】
続いて、このようにして得られた各検査基準点Pの基準座標系における位置を基に、前述した座標変換によって各検査基準点Pの検査パンタグラフ画像8上における位置を求める(ステップS4)。その後、ステップS4において求めた検査パンタグラフ画像8上の検査基準点Pの位置に基づき基準直線LBを求める。具体的には、図12に示すように、検査基準点PL1とPL2、PR1とPR2を通る直線としてそれぞれ第一基準直線LBL1,LBR1、検査基準点PL2とPL3、PR2とPR3を通る直線としてそれぞれ第二基準直線LBL2,LBR2を求める(ステップS5)。なお、以下の説明において第一基準直線LBL1,LBR1、第二基準直線LBL2,LBR2を総称する場合は基準直線LBと呼称する。
【0092】
続いて、検査直線検出部5pにより検査パンタグラフ画像8上のパンタグラフ1aのホーン1bから上述した実施例1または実施例2において説明した処理により検査直線L3を検出し(ステップS6)、最後に、ステップS5において検出した基準直線LBと、ステップS6において検出した検査直線L3とのなす角度として検査角度θを求め、この検査角度θがホーン角度範囲に入るか否かを検査することで、ホーン1bの折れの有無を判断する(ステップS7)。
【0093】
上記ステップS1〜ステップS7の処理をパンタグラフホーン形状検査が終了するまで繰り返す。
【0094】
このように構成される本実施例に係るパンタグラフ監視装置によれば、実施例1、実施例2に係るパンタグラフ監視装置による効果に加えて、比較的軽微なホーンの折れを検出することができる。
【0095】
すなわち、パンタグラフ1aのホーン1bは図13に示すように上下方向に折れ曲がった立体的な構造になっている。そのため、正常なパンタグラフ1aを撮影した場合であっても、図14に示すようにパンタグラフ1aの上面を監視カメラ4で撮影した検査パンタグラフ画像8上ではホーン1bの形状が場所によって異なる。そのため、上述した実施例1、実施例2ではホーン1bから抽出した検査直線L3の角度によって異常の有無を判断する許容値であるホーン角度範囲を大きく設定する必要があった。
【0096】
これに対し、本実施例では検査パンタグラフ画像8上のパンタグラフ1aの位置に応じて基準直線LBを設定し、この形状と検査直線との検査角度θを求めてホーン1bの折れを検出する構成であるので、実施例1、実施例2に比較してより確実にホーン1bの折れを検出することができる。
【0097】
なお、本実施例では、各処理部から出力されるデータを記憶部5dに保管するとともに、各処理部からの要求に応じて必要なデータを記憶部5dから所望の処理部へ出力する例を示したが、例えば、各処理部から出力されるデータを、直接所望の処理部へ入力するようにしてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0098】
また、検査直線検出手段としては、入力画像からパンタグラフのホーンを検査直線として抽出することができればよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、列車の屋根上を撮影した画像を解析してパンタグラフの状態を監視するパンタグラフ関し装置に適用可能であり、特にパンタグラフのホーンの形状を監視するパンタグラフ監視装置に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0100】
1…列車、2…センサ、3…照明装置、4…監視カメラ、5…画像処理装置、5A…撮影処理部、5B…パンタグラフ検索処理部、5C…パンタグラフホーン検査処理部、5a…画像データ入力部、5b…パンタグラフ検出情報入力部、5c…設定部、5d…記憶部、5e…検査小領域設定部、5f…検査点探索領域設定部、5g…検査点検出部、5h…検査直線設定部、5i…検査角度計算部、5j…ホーン折れ判断部、5k…結果データ出力部、5l…ホーン検査範囲設定部、5m…鮮鋭化処理部、5n…直線抽出部、5o…パンタグラフ形状データ入力部、5p…検査直線検出部、5q…基準直線計算部、6…レール、7…基準パンタグラフ画像、8…検査パンタグラフ画像、9…枕木、A…検査小領域、B…検査点探索領域、C…ホーン検査範囲、H…鉛直距離、L…検査直線、LB…基準直線、P…検査点、WA…検査小領域サイズ、WB…検査点探索領域サイズ、WC…ホーン検査範囲サイズ、θ…検査角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の屋根上を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された入力画像を画像処理することによりパンタグラフの状態を監視する画像処理手段とを備えたパンタグラフ監視装置において、
前記画像処理手段が、前記入力画像から前記パンタグラフのホーンの形状を検査直線として検出する検査直線検出手段、前記検査直線と前記検査直線の状態を検査するための比較対象である基準直線との間の検査角度を算出する検査角度計算手段、及び、前記検査角度が予め設定したホーン角度範囲に含まれるか否かに基づいて前記ホーンの状態を監視するホーン折れ判断手段を有するパンタグラフホーン形状検査処理手段を備える
ことを特徴とするパンタグラフ監視装置。
【請求項2】
前記検査直線検出手段が、前記入力画像上の前記ホーンに対して設定される複数の検査点に基づいて前記検査直線を取得する検査直線設定部を有する
ことを特徴とする請求項1記載のパンタグラフ監視装置。
【請求項3】
前記検査直線検出手段が、前記入力画像上の前記ホーンを囲むように設定されたホーン検査範囲内から抽出したエッジのデータに基づいて前記検査直線を取得する直線抽出部を有する
ことを特徴とする請求項1記載のパンタグラフ監視装置。
【請求項4】
前記パンタグラフホーン形状検査処理手段が、前記入力画像を取り込む画像データ入力手段と、パンタグラフ検出情報を取得するパンタグラフ検出情報入力手段と、検査小領域の大きさ、探索領域の大きさ、ホーン角度範囲からなる検査設定情報を出力する検査設定手段と、前記ホーン折れ判断部における判断結果を出力する結果データ出力手段とを備える
ことを特徴とする請求項2に記載のパンタグラフ監視装置。
【請求項5】
前記パンタグラフホーン形状検査処理手段が、前記入力画像を取り込む画像データ入力手段と、パンタグラフ検出情報を取得するパンタグラフ検出情報入力手段と、前記ホーン検査範囲の大きさ、前記検査直線を前記ホーンの一部とみなすか否かを判断するために用いる直線最小長さ、及びホーン角度範囲からなる検査設定情報を出力する検査設定手段と、前記ホーン折れ判断部における判断結果を出力する結果データ出力手段とを備える
ことを特徴とする請求項3に記載のパンタグラフ監視装置。
【請求項6】
前記検査角度計算手段が、前記基準直線を前記入力画像上の前記パンタグラフの位置に応じて設定する基準直線計算部を有する
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載のパンタグラフ監視装置。
【請求項7】
前記ホーン折れ判断手段が、前記検査直線の傾きが予め設定したホーン角度範囲に含まれるか否かに基づいて前記ホーンの折れの有無を判断するように構成された
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のパンタグラフ監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−180049(P2011−180049A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46049(P2010−46049)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】