説明

パーキンソン病の治療のために有用なカテコールアミン誘導体

本発明は、式Iの新規のカテコールアミン誘導体、その調製方法、それを含有する医薬組成物、および治療におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のカテコールアミンおよびカテコールアミン誘導体、これらの調製方法、これらを含有する医薬組成物、ならびに治療におけるこれらの使用に関する。さらに、本発明の化合物は、PETリガンドとしても有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病およびハンチントン病などの神経変性疾患は、老齢人口と共にさらに広まりつつある。その発病が通常50歳から80歳の間である1つの特定の神経変性疾患はパーキンソン病(PD)である。PDは、振戦と、歩行、運動および協調の困難とを特徴とする脳の障害である。
【0003】
ドーパミン(DA)は神経伝達化学物質であり、脳細胞によって用いられて、抹消の筋肉運動を制御または調節するためのインパルスを伝達する。PDは、脳の黒質緻密帯におけるDA含有ニューロンの進行性劣化によって引き起こされると考えられる。DA含有ニューロンの変性は、脳内のDA量の低下をもたらす。この過程は神経細胞の機能を妨害するので、インパルスが適切に伝達されず、筋肉の制御および機能の損失が起こると考えられる。
【0004】
現在、PDのための治療法は存在しない。通常、治療は主に、DAを(レボ)−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)(DAに代謝される)と置き換えるか、あるいはDA受容体を刺激する化学剤を投与するかのいずれかによってPDの症状を制御することを目的としている。これらの受容体は、2つの種類、D1型受容体およびD2型受容体に大別される。前者は、D1受容体およびD5受容体に分けられ、D2受容体ファミリーは、D2、D3、およびD4受容体からなる。
【0005】
特定のヒドロキシル化(フェノールまたはカテコール)フェニルエチルアミン(それ自体か、あるいは半剛性/剛性の環系の一部を形成する)は、少なくとも動物モデルではドーパミン作用活性を有することが知られている。しかしながら、これらは経口生物学的利用能が低いかまたは無い(その初回通過代謝が高いためである可能性が最も高い)ので、これらの臨床用途は限られている。しかしながら、この化合物群に属するアポモルフィンは、非経口送達(通常は、間欠的な皮下投与または日中の持続点滴)ではあるがPD治療において臨床的に使用される。鼻腔内および舌下製剤など、PDにおけるアポモルフィン治療のための代替送達戦略に関していくつかの臨床研究が行われている。しかしながら、これらの努力はまだPDの臨床治療の選択肢をもたらしていない。
【0006】
直接的なDA受容体アゴニストは、DA自己受容体およびシナプス後DA受容体を活性化することができる。自己受容体刺激の効果は、例えばアポモルフィンが低用量で投与される場合には優勢であると思われるが、より高い用量では、シナプス後受容体の刺激の強化がDA伝達の減弱を上回る。例えばアポモルフィンの低用量での人間における抗精神病効果は、おそらく自己受容体刺激によるものである[臨床データの論考については非特許文献1を参照されたい]。
【0007】
L−DOPAは、乏しいPKプロファイルを有する効果的なPD薬(ドーパミンのプロドラッグ)であり、運動異常および他の応答変動をもたらす。選択的D2−アゴニスト(例えば、プラミペキソール)はより少ない運動異常を与えるが、後期PDにおいて効力が欠けており、最終的にはL−DOPAによる補完または置換を必要とする。L−DOPAおよびアポモルフィンは現在最も効果的なPD薬であり、これらはD1およびD2受容体の両方を刺激する。
【0008】
前述のように、カテコールアミンの経口生物学的利用能が乏しいことによって、これらの経口薬としての臨床用途は妨げられている。関連のフェノールアミンは同様の乏しい経口生物学的利用能を有し、これらの経口活性薬としての臨床用途は限定される。しかしながら、この化合物群に属するロチゴチンは、経皮送達に基づく新しいPD薬として最近導入された。アポモルフィンに関して、経皮送達または植込錠による送達が可能性のある投与形態を提供し得ることが動物試験により示された。しかしながら、植込錠からのアポモルフィンの送達をサルで研究した際[非特許文献2]、ほとんどの場合に、植込み手術の後の局所的な刺激および他の合併症を予防するために動物を免疫抑制剤デキサメタゾンで治療しなければならないことが分かった。またアポモルフィンの経皮送達は、局所的な皮膚刺激および着色に関連している。
【0009】
PDは別として、ドーパミン作用のターンオーバーの増大が有益であり得る他の疾患は、運動緩徐およびうつ病を予防するための、そして上記のような認知の様々な側面を含む精神機能の改善における老年医学(geriatrics)である。これはうつ病患者にプラス効果を有することができ、食欲抑制剤として肥満に使用され得る。これは、微細脳機能障害(MBD)、ナルコレプシー、そして潜在的に、統合失調症の陰性症状、陽性症状および認知症状を改善し得る。不穏下肢症候群(RLS)および周期性四肢運動障害(PLMD)は、DAアゴニストで臨床的に治療される別の適応症である。さらに、インポテンスおよび勃起不全もDAアゴニストによる治療によって改善される見込みがある。このように、勃起不全(男性のインポテンス)および例えば閉経期の女性における性的刺激(膣潤滑の刺激および陰核の勃起)はDA受容体刺激によって潜在的に達成され得るので、女性および男性の両方における性機能の改善は、DAアゴニストによる治療のための可能性のあるもう1つの適応症である。これに関連して、アポモルフィン(舌下で与えられる場合)が勃起不全を改善するために臨床的に使用されることも注目すべきである。ハンチントン病におけるL−DOPAおよびD2アゴニストプラミペキソール治療の臨床研究によって有望な結果が示され、従って、ハンチントン病の治療は、本発明の化合物のもう1つの潜在的な用途である。DAは心血管および腎臓系の調節に関与し、従って、腎不全および高血圧症は本発明の化合物の別の適応症であると考えることができる。
【0010】
カテコールアミンの非経口製剤の代替案はプロドラッグの使用を含む。臨床用途のためのこのような化合物の開発に関する問題は、ヒトにおけるカテコールアミン自体への転化の予測に関連する困難である。十二指腸送達のための腸溶性NPAエステル[例えば、Wikstroem、Dijkstra、Cremers、Ivoの特許文献1を参照されたい]、およびD1様アゴニストのアドロゴリド(Adrogolide)[ABT−431、DAS−431、A−86929のジアセチルプロドラッグ]など、カテコールアミンの様々なエステルプロドラッグが文献で報告されている。アドロゴリドは人間において経口投与の後に高い肝臓初回通過代謝を受け、結果として、低い経口生物学的利用能(約4%)を有する。PD患者では、静脈内(IV)アドロゴリドは、L−DOPAの効力に匹敵する抗パーキンソン病効力を有する[非特許文献3]。代替的なアプローチは、対応するメチレン−ジ−オキシ(MDO)アセタールとして、ホルムアルデヒド以外のアルデヒドから誘導されるアセタールとして、あるいは種々のケトンから誘導されるケタールとして、カテコール内に2つのヒドロキシル基を「マスキングすること(masking)」を含む。このプロドラッグ原理は、20年以上前にアポルフィンについて報告されている[非特許文献4]。アポモルフィンおよび関連化合物のこれらの潜在的なプロドラッグのうち、N−n−プロピルアポモルフィン(NPA)およびホルムアルデヒドから誘導されるものだけがPDの動物モデルにおいて著しい効力を示した。それ以来約25年にわたって、これらの発見は、MDOマスキングされたアポモルフィンまたは関連化合物に基づくPD薬に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第02100377号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/14279A1号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Tamminga、J.Neurol.Trans.、109(3),411(2002年)
【非特許文献2】F.Bibbiani、L.C.Constantini、R.Patel、T.N.Chase Experimental Neurology 2005、192、73
【非特許文献3】Giardina、Williams、CNS Drug Reviews、7、305(2001年)
【非特許文献4】Baldessarini、Ram、Neumeyer、Neuroropharmacology、21(10)、953(1982年)
【非特許文献5】Journal of Pharmaceutical Science、66、2−19(1977年)
【非特許文献6】Cannon、Lee、Beres、Goldman、J.Heterocycl.Chem.、17、1633(1980年)
【非特許文献7】Bradbury、Costall、Naylor、Neuropharmacology 23(9)、1025(1984年)
【非特許文献8】Bradbury、Cannon、Costall、Naylor、Eur.J.Pharmacol.105(1−2)、33(1984年)
【非特許文献9】Itoh、Goldman、Kebabain、Eur.J.Pharmacol.、108(1)、99(1985年)
【非特許文献10】「SMART and SAINT、Area Detector Control and Integration Software」、バージョン5.054、Bruker Analytical X−Ray Instruments Inc.、Madison、USA(1998年)
【非特許文献11】Sheldrick「SADABS、Program for Empirical Correction of Area Detector Data」バージョン2.03、University of Goettingen、Germany(2001年)
【非特許文献12】Sheldrick「SHELXTL,Structure Determination Programs」、バージョン6.12、Bruker Analytical X−Ray Instruments Inc.、Madison、USA(2001年)
【非特許文献13】Lin、Haadsma−Svensson、Phillips、Lahti、McCall、Piercey、Schreur、von Voigtlander、Smith、Chidester、J.Med.Chem.、36(8)、1069(1993年)
【非特許文献14】Taber、Neubert、Rheingold、J.Am.Chem.Soc.、124(42)、12416(2002年)
【非特許文献15】Mellin、Hacksell、Tetrahedron、43(22)、5443(1987年)
【非特許文献16】Gensler、Samour、J.Org.Chem.、18(1)、9、(1953年)
【非特許文献17】Cabiddu、Cadoni、De Montis、Fattuoni、Melis、Usai、Tetrahedron、59(24)、4383(2003年)
【非特許文献18】Ram、Neumeyer、J.Org.Chem.、46(13)、2830(1981年)
【非特許文献19】Nichols、Brewster、Johnson、Oberlender、Riggs、J.Med.Chem.、33(2)、703(1990年)
【非特許文献20】Bourry、Akue−Gedu、Rigo、Henichart、Sanz、Couturier、J.Heterocycl.Chem.、40、989(2003年)
【非特許文献21】Ungerstedt、Arbuthnott、Brain Res.、24、485(1970年)
【非特許文献22】Setler、Sarau、Zirkle、Saunders、Eur.J.Pharmacol.、50(4)、419(1978年)
【非特許文献23】Ungerstedt、Herrera−Marschitz、Jungnelius、Staahle、Tossman、Zetterstroem、「Advances in Dopamine Research」(Kohsaka編)、Pergamon Press、Oxford、219頁(1982年)
【非特許文献24】Arnt、Hytell、Psychopharmacology、85(3)、346(1985年)
【非特許文献25】Sonsalla、Manzino、Heikkila、J.Pharmacol Exp.Ther.、247(1)、180(1988年)
【非特許文献26】Lundblad、Andersson、Winkler、Kirik、Wierup、Cenci、Eur.J.Neurosci.、15(1)、120(2002年)
【非特許文献27】Sullivan、Tucker、Dale、Methods Mol.Biol.、114、125(1999年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この分野における長年の関心にもかかわらず、PDの治療のために効率的で耐容性のよい経口活性薬を開発することに関する要求は、明らかにまだ満たされていない。連続ドーパミン作用刺激を与える混合型D1様/D2様アゴニストは、このようなまだ満たされていない要求を満足させ得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、本発明者らによってPDおよびハンチントン病などの神経変性疾患の現在市販されている治療法の適切な代替案を提供することが分かった新規のカテコールアミン誘導体と、例えば、運動異常障害、認知機能障害および下肢静止不能症候群(RLS)などの本明細書において検討される他の適応症の治療と、体内で代謝可能なこれらのプロドラッグである化合物とに関する。
【0015】
認知機能障害は、いくつかの患者群、例えば、統合失調性患者、うつ病患者または精神病患者、および注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病、軽度認知機能障害(MCI)、認知症、不安症、加齢性記憶障害、アルツハイマー病または心的外傷後ストレス障害の患者、ならびにパーキンソン病およびアルツハイマー病に加えてベンゾジアゼピンまたは三環式抗うつ薬を服用する様々な神経変性疾患の患者において経験され得る。「認知機能障害」という語句は、注意、学習、記憶および実行機能(外部刺激に対する関連の反応)の困難を指す。これらには、注意の欠如、混乱した思考、緩慢な思考、理解の困難、乏しい集中、問題解決の障害、乏しい記憶、思考の表現の困難、および/または思考、感情および行動の統合ならびに不適切な思考の消去の困難、そして注意および覚醒状態、言語学習および記憶、視覚学習および記憶、処理の速度および社会的認知における困難が含まれ得る。
【0016】
本発の目的は、強力なドーパミンD1様およびD2様アゴニストの両方である新規の化合物を提供することであり、これらは神経および精神疾患の治療において使用することができる。
【0017】
本発明のさらなる目的は、ドーパミン作用のターンオーバーの増大に都合よく応答するPDおよび他の疾患または障害の治療における経口投与のための新規の化合物を提供することである。
【0018】
PET(陽電子放出断層撮影)分析は、PDの診断における重要な手段である。本発明の化合物のいくつかは、DA受容体の画像研究のためのPETリガンドとして、またはこのようなリガンドの調製のための中間体として潜在的な用途を有し、例えば、受容体の局在研究において、そしてDA受容体に対して親和性を有する化合物の受容体占有率決定のために適用され得る。従って、さらなる目的は、有用なPETリガンドであると考えられる本発明の放射標識化合物を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、本明細書を読めば明らかになるであろう。
【0020】
従って、1つの態様では、本発明は、式I:
【化1】

(式中、
n=0、1であり、
およびRは、水素、C1〜6アルカノイル、フェニルアセチルまたはベンゾイルから独立して選択されるか、あるいはRおよびRは縮合して、メチレン(CH)基、カルボニル(C=O)基、またはオキサリル(O=C−C=O)基を形成し、
は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、シクロ−プロピル、シクロ−ブチル、アリル、プロパルギル、ヒドロキシエチル、3−フルオロプロピルおよび2−フルオロエチルからなる群から選択される)
の化合物およびその薬学的に許容可能な酸との付加塩に関するが、ただしこの化合物は、以下のラセミ体:
・ ラセミ体−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
・ ラセミ体−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
・ ラセミ体−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
・ ラセミ体−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール
のうちの1つではないものとする。
【0021】
1〜6アルカノイル基は、1〜6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖アルカノイル基を意味し、その例としては、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基などが挙げられる。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、実質的に純粋な単一のエナンチオマーまたは単一のジアステレオマーの形態である式Iの化合物に関する。
【0023】
別の特定の実施形態では、本発明は、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマーの混合物、または実質的に純粋な多形体の形態である式Iの化合物に関する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、トランス−縮合環系を有する式Iの化合物に関する。別の実施形態では、本発明は、シス−縮合環系を有する式Iの化合物に関する。
【0025】
一実施形態では、本発明は、n=0である式Iの化合物に関する。別の実施形態では、本発明は、n=1である式Iの化合物に関する。
【0026】
本発明の別個の実施形態では、化合物は、実験セクションで開示される特定の化合物の1つから選択される。
【0027】
特定の実施形態では、本発明は、Rが水素、メチル、エチル、n−プロピル、アリル、およびプロパルギルからなる群から選択される式Iの化合物に関する。別の実施形態では、本発明は、Rがシクロ−プロピル、シクロ−ブチル、およびヒドロキシエチルからなる群から選択される式Iの化合物に関する。
【0028】
特定の実施形態では、本発明は、n=1であり、さらに実質的に純粋な(4aR,10aR)−エナンチオマーであることを特徴とする式Iの化合物に関する。
【0029】
本発明は、さらに、RおよびRがいずれも水素であり、Rが水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択される式Iの化合物に関する。
【0030】
また本発明は、RおよびRが縮合してメチレン(CH)基を形成し、Rが水素、メチル、エチルおよびn−プロピル、例えばメチルおよびn−プロピルなどからなる群から選択される式Iの化合物にも関する。
【0031】
本発明の別個の実施形態では、化合物は以下の特定の化合物:
trans−1−メチル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオール、
シス−1−メチル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオール、
trans−1−n−プロピル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオール、
シス−1−n−プロピル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオール、
(4aR,10aR)−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aS,10aS)−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aS,10aS)−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aS,10aS)−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aS,10aS)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−(2−ヒドロキシエチル)−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−アリル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−プロパ−2−イニル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−シクロ−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−シクロ−ブチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(6aR,10aR)−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザ−シクロペンタ[a]アントラセン、
(6aR,10aR)−7−メチル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセン、
(6aR,10aR)−7−エチル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザ−シクロペンタ[a]アントラセン、
(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザ−シクロペンタ[a]アントラセン、
酢酸(4aR,10aR)−7−アセトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステル、
酢酸(4aS,10aS)−7−アセトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステル、
2,2−ジメチルプロピオン酸(4aR,10aR)−7−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステル、
酢酸(4aS,10aS)−6−アセトキシ−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−7−イルエステル、
酢酸(4aS,10aS)−6−アセトキシ−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−7−イルエステル、
2,2−ジメチルプロピオン酸(4aR,10aR)−7−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5、10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステル、
のうちの1つまたはその薬学的に許容可能な酸付加塩から選択される。
【0032】
別の態様では、本発明は、式Iの放射標識化合物と、PET研究、インビボ結合研究およびインビトロアッセイなど種々の生物学的アッセイにおけるその使用とに関する。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の薬剤としての使用を提供する。
【0034】
式Iの化合物(遊離塩基または薬学的に許容可能な酸付加塩のいずれかもしくは医薬組成物として)は、例えば、経口、経頬、舌下、非経口または腸管外などの適切な方法で投与することができ、このような投与のための適切な形態、例えば、経口投与のためには錠剤、カプセル、粉末、シロップ、溶液または分散液の形態、非経口投与のためには例えば経皮パッチの形態、あるいは腸管外投与のためには注射用分散液または溶液の形態で化合物を提供することができる。1つの実施形態では、式Iの化合物は、固体薬剤実体(entity)の形態で、適切には錠剤またはカプセルとして投与される。
【0035】
式Iの化合物は、様々な種類の有機および無機酸と共に薬学的に許容可能な酸付加塩を形成する。このような塩も本発明の一部である。
【0036】
式Iの化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩は、当該技術分野において周知であるように、薬学的に許容可能な酸から形成される。このような塩には、非特許文献5において列挙され、当業者に知られている薬学的に許容可能な塩が含まれる。このような塩を形成するために使用される典型的な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸、メタリン酸、ピロリン酸などが挙げられる。脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸およびヒドロキシアルカン二酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの有機酸から誘導される塩も使用され得る。従って、このような薬学的に許容可能な塩としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、α−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−ジカルボン酸塩、ヘキシン−1,4−ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、プロピオール酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2−ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、ナフタレン−1,5−スルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。
【0037】
固体医薬品の調製方法も当該技術分野において周知である。従って、錠剤は、活性成分を通常の佐剤、増量剤および希釈剤と混合し、続いて簡便な錠剤成形機(tabletting machine)で混合物を圧縮することによって調製され得る。佐剤、増量剤および希釈剤の例は、微結晶性セルロース、コーンスターチ、ポテトスターチ、ラクトース、マンニトール、ソルビトールタルカム、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ラクトース、ゴムなどを含む。活性成分と適合性であれば、着色剤、芳香剤、防腐剤などの他の任意の佐剤または添加剤が使用されてもよい。
【0038】
特に、本発明に従う錠剤製剤は、従来の佐剤または希釈剤との混合物において式Iの化合物を直接圧縮することによって調製することができる。あるいは、式Iの化合物(場合により、従来の佐剤または希釈剤との混合物において)の湿式造粒または溶融造粒も錠剤の圧縮のために使用され得る。
【0039】
注射のための式Iの化合物の溶液は、活性成分および可能性のある添加剤を注射用溶媒(好ましくは、無菌水)の一部に溶解し、溶液を所望の容積に調整し、溶液を滅菌して、適切なアンプルまたはバイアルに充填することによって調製することができる。等張化剤、防腐剤、酸化防止剤、可溶化剤など、当該技術分野において従来使用される任意の適切な添加剤が添加されてもよい。あるいは、例えば遊離塩基としての活性成分を、消化性または非消化性の油、これらの混合物または類似物中に溶解して、長時間にわたって活性成分を放出することができる筋肉内デポー製剤を調製することもできる。
【0040】
経皮パッチなどの経皮用途において使用される式Iの化合物の医薬製剤は、場合により、活性成分の皮膚の通過を容易にするために浸透活性化剤を含有してもよい。
【0041】
別の態様では、本発明は、治療的に有効な量の式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩と、1つまたは複数の薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤および賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、経皮投与、経鼻投与、頬側投与、筋肉内投与または皮下投与などの非経口投与のために、治療的に有効な量の式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を含む医薬組成物が提供され、RおよびRはいずれも水素であり、Rは水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択される。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害の治療のための薬剤を調製するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、精神病、インポテンス、腎不全、心不全または高血圧症の治療のための薬剤を調製するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0045】
別の態様では、本発明は、哺乳類の認知機能障害の治療のための薬剤を製造するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0046】
またさらなる態様では、本発明は、下肢静止不能症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)の治療のための薬剤を製造するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0047】
異なる態様では、本発明は、哺乳類の運動障害、運動不足(poverty of movement)、運動異常障害(dyskinetic disorder)、歩行障害または企図振戦の治療のための薬剤を製造するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0048】
さらなる態様では、本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害を治療するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0049】
さらなる態様では、本発明は、精神病、インポテンス、腎不全、心不全または高血圧症を治療するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0050】
別の態様では、本発明は、哺乳類の認知機能障害を治療するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0051】
またさらなる態様では、本発明は、下肢静止不能症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)を治療するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0052】
異なる態様では、本発明は、哺乳類の運動障害、運動不足、運動異常障害、歩行障害または企図振戦を治療するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0053】
別個の態様では、本発明は、経口投与または非経口投与を目的とする薬剤を製造するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用を提供する。
【0054】
また本発明は、治療的に有効な量の式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を哺乳類に投与することを含む、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害を患っている哺乳類の治療方法も提供する。
【0055】
別の態様では、本発明は、治療的に有効な量の式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を哺乳類に投与することを含む、精神病、インポテンス、腎不全、心不全または高血圧症を患っている哺乳類の治療方法も提供する。
【0056】
さらなる態様では、本発明は、有効な量の式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を哺乳類に投与することを含む、認知機能障害を患っている哺乳類の治療方法を提供する。
【0057】
また本発明は、治療的に有効な量の式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な付加塩を哺乳類に投与することを含む、下肢静止不能症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)を患っている哺乳類の治療方法にも関する。
【0058】
また本発明は、別個の態様では、治療的に有効な量の式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を哺乳類に投与することを含む、運動障害、運動不足、運動異常障害、歩行障害または企図振戦を患っている哺乳類の治療方法にも関する。
【0059】
本発明の特定の実施形態では、哺乳類はヒト対象者である。遊離塩基としての上記の式(I)の化合物の1日の用量で計算される式Iの化合物の治療的に有効な量は、適切には、0.01〜125mg/日の間であり、より適切には0.05〜100mg/日の間であり、例えば、0.1〜50mg/日の間であるのが好ましい。
【0060】
特定の実施形態では、式Iの化合物の1日の用量は、1〜10mg/日の間である。
【0061】
別の実施形態では、式Iの化合物の1日の用量は、約1mg/日よりも少ない。
【0062】
別個の実施形態では、式Iの化合物の1日の用量は、約0.1mg/日である。
【0063】
さらなる実施形態では、本発明は、0.001mg〜125mgの式Iの化合物を含む経口製剤を提供する。
【0064】
さらなる実施形態では、本発明は、0.001mg〜0.1mgの式Iの化合物を含む経口製剤を提供する。
【0065】
さらなる実施形態では、本発明は、0.01mg〜1mgの式Iの化合物を含む経口製剤を提供する。
【0066】
さらなる実施形態では、本発明は、0.1mg〜10mgの式Iの化合物を含む経口製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】hD5−トランスフェクトされたCHO−Gal6細胞におけるドーパミンによる細胞内Ca2+放出の濃度依存性刺激に対する用量反応曲線である。
【図2】実施例2d2の結晶構造である。絶対配置は、「重い」臭素原子の異常散乱によって決定した。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の化合物は、2つのキラル中心(以下の式において*で示される)を含有する。
【化2】

【0069】
従って、本発明の化合物は、2つの異なるジアステレオマー形態、シス異性体およびトランス異性体で存在することができ、これらの形態はいずれも本発明の範囲内である。
【化3】

【0070】
本発明の化合物の環原子は、以下のように番号が付けられる。
【化4】

【0071】
ジアステレオマー形態はそれぞれさらに2つのエナンチオマー形態を含み、これは、式Iの化合物が全体で個々の(R,R)、(R,S)、(S,S)および(S,R)エナンチオマーとして存在することを意味する。
【0072】
式Iの化合物は経口活性のアポモルフィン類似体のように挙動することが分かっており、これによって、ドーパミン作用のターンオーバーの増大に都合よく応答するパーキンソン病および他の疾患/障害の治療に関して潜在的に有用であるとされる。
【0073】
本発明の特定の実施形態は、認知機能障害の状態にある哺乳類の認知を改善するための式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な付加塩の使用に関し、この状態は統合失調症に関連する。本発明の別の実施形態では、状態はパーキンソン病に関連する。本発明の別の実施形態では、状態は、AIDS認知症などの認知症に関連する。本発明の別の実施形態では、状態は不安障害に関連する。本発明の別の実施形態では、状態は加齢性記憶障害に関連する。本発明の別の実施形態では、状態は、特に高齢者における大うつ病を含むうつ病に関連する。本発明の別の実施形態では、状態はベンゾジアゼピンの使用に関連する。本発明の別の実施形態では、状態は三環式抗うつ薬の使用に関連する。本発明の別の実施形態では、状態はアルツハイマー病に関連する。本発明の別の実施形態では、状態は注意欠陥多動性障害(ADHD)に関連する。本発明の別の実施形態では、状態は心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関連する。
【0074】
さらなる実施形態では、本発明は、哺乳類の運動異常を治療するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な付加塩の使用に関する。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、大うつ病などのうつ病、双極性障害または不安症を患っている哺乳類を治療するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な付加塩の使用に関する。
【0076】
本発明によると、本発明の方法によってエナンチオマー的に純粋な形態で調製された式Iの非誘導体化カテコールアミン(RおよびR=H)の2つのトランス−エナンチオマーの間には、興味深い神経薬理学的な違いが見出された。このようにして、(4aR,10aR)エナンチオマーは、200nM未満のEC50値を有する強力なデュアルD1/D2アゴニストである[使用したインビトロアッセイの説明については実験セクションを参照]が、(4aS,10aS)対掌体ははるかに強力でないD1アゴニストであり、やや強いD2アゴニズムを示すだけであることが実証された。
【0077】
式Iの化合物の(4aR,10aR)エナンチオマーのいくつかをさらにD5親和性について試験し、10nM未満のEC50値を有する非常に強力なD5アゴニストであることが証明された。
【0078】
n=1、RおよびR=水素ならびにR=水素、メチル、エチルおよびn−プロピルである式Iのラセミ化合物は既に開示されており[例えば、非特許文献6を参照]、そのドーパミン作用活性が議論されている[例えば、非特許文献7、非特許文献8を参照]。n=1、RおよびR=水素ならびにR=エチルである式Iのラセミ化合物は、D1およびD2受容体の両方を刺激することが報告されている[非特許文献9]。しかしながら、これらの従来技術の文献はどれも、式Iの化合物のエナンチオ選択性、またはインビトロ対インビボで得られる異なる選択性について議論していない。
【0079】
上記のように、化合物アポモルフィンは、PD治療において現在臨床的に使用されている。アポモルフィンは、混合型D1様/D2様アゴニストである。
【化5】

【0080】
D1およびD2受容体に対するその効果について本発明の化合物をインビトロおよびインビボで試験すると、その薬理学的プロファイルはアポモルフィンのものとは大きく異なる(詳細については実験セクションを参照)。
【0081】
式Iの非誘導体化カテコールアミン(RおよびR=H)のD1/D2選択性比は、インビトロ測定をインビボ測定と比較したときに劇的に変化することが実証された。インビトロアッセイでは、これらの化合物は、D1受容体よりもD2受容体に対して著しく強力である(通常、比率は約100である)。しかしながら、インビボでの比率は、2〜10倍の選択性に移行する。従って、本発明の化合物に対してインビトロデータからインビボ状態への外挿を行うことができないことは明らかである。
【0082】
上記のように、現在利用可能な情報は、D1様アゴニスト(いずれかのサブタイプまたは混合型D1/D5アゴニストに対して選択的)が、例えば、精神病、PD、およびアルツハイマー病(AD)、およびハンチントン病における認知機能障害の治療において重要な用途を有し得るという仮説を支持する。これは、式Iの化合物などのデュアル作用のD1/D2アゴニストについてもそうであろう。
【0083】
特定の実施形態では、従って、本発明は、n=1であり、RおよびRがいずれも水素であり、Rが水素、メチル、エチル、n−プロピル、アリル、およびプロパルギルからなる群から選択される式Iの化合物の実質的に純粋な(4aR,10aR)エナンチオマーに関する。
【0084】
別の実施形態では、本発明は、n=1であり、RおよびRがいずれも水素であり、Rがn−プロピルである式Iの化合物の実質的に純粋な(4aR,10aR)エナンチオマーに関する。
【0085】
別の実施形態では、本発明は、n=1であり、RおよびRがいずれも水素であり、Rがメチルである式Iの化合物の実質的に純粋な(4aR,10aR)エナンチオマーに関する。
【0086】
別個の実施形態では、本発明は、n=1である式Iの化合物の実質的に純粋な(4aR,10aR)エナンチオマーに関する。
【0087】
また本発明は、PETリガンドまたはその中間体として使用される式Iの化合物にも関する。所望の放射標識は、[11C]ヨウ化メチル、[11C]トリフル酸メチルなどの11C−標識前駆体を含む放射標識前駆体の使用によって導入することができる。化合物は、H、18Fによって標識化されてもよい。従って、本発明の特定の実施形態では、放射標識が11C、H、18Fまたは123Iから選択される式Iの放射標識化合物が提供される。
【0088】
およびRがいずれも水素である式Iの放射標識化合物は、放射性リガンドとして特に好ましい。
【0089】
特定の実施形態では、本発明は、n=1であり、RおよびRがいずれも水素であり、Rが3−(18F)−フルオロプロピルまたは2−(18F)−フルオロエチルである式Iの放射標識化合物に関する。
【0090】
別の実施形態は、式Iの化合物の遊離塩基、またはその塩、もしくはこれらの医薬組成物、および本明細書において記載されるような用途に関し、式Iの化合物は少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%のトランス−ジアステレオマー過剰率を有する(10%のトランス−ジアステレオマー過剰率は、問題となる混合物中のシス−ジアステレオ異性体に対するトランス−ジアステレオ異性体の比が55:45であることを意味する)。
【0091】
さらなる実施形態は、式Iの化合物の遊離塩基、またはその塩、もしくはこれらの医薬組成物、および本明細書において記載されるような用途に関し、式Iの化合物は、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%のエナンチオマー過剰率を有する(例えば、(4aR,10aR)配置を有する式Iの化合物の10%のエナンチオマー過剰率は、問題となる混合物中の(4aR,10aR)−エナンチオマーと(4aS,10aS)−エナンチオマーとの間の比が55:45であることを意味する)。
【0092】
別の態様では、本発明は、カテコール部分がメチレンジオキシ(MDO)プロドラッグ誘導体としてマスキングされた式Iの化合物を含み、これはインビボで切断されて(インビボ代謝による可能性が最も高い)、活性カテコールアミンを生成することができる(n=1について以下で例示される)。
【化6】

【0093】
従って、本発明は、RおよびRが縮合されてメチレン(CH)基を形成する式Iの化合物にも関する。
【0094】
別の態様では、本発明はカテコール部分がジエステル誘導体としてマスキングされた上記の式Iの化合物も含み、これもインビボで切断されて、活性カテコールアミンを生成することができる(n=1、ならびにRおよびR=アセチルについて以下で例示される)。
【化7】

【0095】
本発明はさらに、RおよびRが2つの異なる置換基である非対称性の式Iの化合物のジエステル誘導体を含む。また本発明は、環状ジエステル(カルボネート)が生じるようにRおよびRが縮合してカルボニル(C=O)基を形成する化合物も含む。
【0096】
本発明はさらに、n=0であり、RおよびRが縮合されてメチレン(CH)基を形成し、Rが水素およびメチル、エチル、n−プロピルからなる群から選択される式Iの化合物の実質的に純粋なトランス−ジアステレオ異性体に関する。
【0097】
また本発明は、n=1であり、RおよびRが縮合してメチレン(CH)基を形成し、Rが水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択される式Iの化合物の実質的に純粋な(4aR,10aR)エナンチオマーにも関する。
【0098】
別個の実施形態では、本発明は、Rが水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択され、そしてRおよびRの少なくとも1つがC1〜6アルカノイルであるか、あるいはRおよびRの少なくとも1つがベンゾイルであるか、あるいはRおよびRの少なくとも1つがフェニルアセチルである式Iの化合物に関する。
【0099】
本発明はさらに、Rが水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択され、そしてRおよびRの少なくとも1つがピバロイルなどのC1〜6アルカノイルであるか、あるいはRおよびRの少なくとも1つがベンゾイルであるか、あるいはRおよびRの少なくとも1つがフェニルアセチルである、式Iの実質的に純粋なトランス−ジアステレオ異性体に関する。
【0100】
また本発明は、Rが水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択され、そしてRおよびRの少なくとも1つがピバロイルなどのC1〜6アルカノイルであるか、あるいはRおよびRの少なくとも1つがベンゾイルであるか、あるいはRおよびRの少なくとも1つがフェニルアセチルである、式Iの実質的に純粋な(4aR,10aR)エナンチオマーにも関する。
【0101】
本発明との関連では、特に医薬品用途のために、式(I)の化合物が実質的にエナンチオマー的に純粋またはジアステレオマー的に純粋であると特定される場合、化合物は立体化学的に比較的純粋であり、好ましくはエナンチオマー過剰率またはジアステレオマー過剰率は、少なくとも60%、少なくとも70%、そしてより好ましくは少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも96%、または好ましくは少なくとも98%である(80%のエナンチオマー過剰率は、例えば、問題となる混合物中の(4aS,10aS)に対する(4aR,10aR)の比が90:10であることを意味する)ことが理解される。
【実施例】
【0102】
実験セクション
一般的方法
分析LC/MSデータは、大気圧光イオン化を備えたPE Sciex API 150EX機器およびShimadzu LC−8A/SLC−10A LCシステムにおいて得た。純度は、UV(254nm)およびELSDトレースのインテグレーションによって決定した。MS機器はPESciex(API)からのものであり、APPI源を備え、正イオンモードで操作した。UVトレースにおける保持時間(RT)は分で表される。溶媒Aは水中の0.05%のTFAで作ったが、溶媒Bはアセトニトリル中の0.035%のTFAおよび5%の水で作った。いくつかの異なる方法を用いた。
【0103】
方法14:API 150EXおよびShimadzu LC8/SLC−10A LCシステム。カラム:C−18 4.6×30mm、3.5μm(Symmetry、Waters)。カラム温度:室温。勾配:イオン対による逆相。流量:2mL/分。注入容積:10micro−L。勾配:4分間かけてA中10%のBから100%のBまで、次にA中10%のBで1分間。全実行時間:5分。
【0104】
方法17:API 150EXおよびShimadzu LC8/SLC−10A LCシステム。カラム:C−18 4.6×30mm、4μm(Phenomenex Synergi Hydro)。温度:室温。勾配:イオン対による逆相。流量:2mL/分。注入容積:10micro−L。勾配:4分間かけてA中2%のBから100%のBまで、次にA中10%のBで1分間。全実行時間:5分。
【0105】
方法25:API 150EXおよびShimadzu LC10AD/SLC−10A LCシステム。カラム:dC−18 4.6×30mm、3μm(Atlantis、Waters)。カラム温度:40℃。勾配:イオン対による逆相。流量:3.3mL/分。注入容積:15micro−L。勾配:2.4分間かけてA中2%のBから100%のBまで、次にA中2%のBで0.4分間。全実行時間:2.8分。
【0106】
方法101:API 150EXおよびShimadzu LC8/SLC−10A LCシステム。カラム:C−18 4.6×30mm、3.5μm(Symmetry、Waters)。カラム温度:60℃。勾配、イオン対による逆相。流量:3.3mL/分。注入容積:15micro−L。勾配:2.4分間かけてA中10%のBから100%のBまで、次にA中10%のBで0.4分間。全実行時間:2.8分。
【0107】
方法102:API 150EXおよびShimadzu LC8/SLC−10A LCシステム。カラム:dC−18 4.6×30mm、3μm(Atlantis、Waters)。カラム温度:40℃。勾配、イオン対による逆相。流量:3.3mL/分。注入容積:15micro−L。勾配:2.4分間かけてA中2%のBから100%のBまで、次にA中2%のBで0.4分間。全実行時間:2.8分。
【0108】
方法111:API 150EXおよびShimadzu LC8/SLC−10A LCシステム。カラム:C−18 4.6×30mm、3.5μm(Symmetry、Waters)。カラム温度:60℃。勾配、イオン対による逆相。流量:3.3mL/分。注入容積:10micro−L(1micro−Lをカラムに注入)。勾配:2.4分間かけてA中10%のBから100%のBまで、次にA中10%のBで0.4分間。全実行時間:2.8分。
【0109】
方法314:API 150EXおよびShimadzu LC8/SLC−10A LCシステム。カラム:C−18 4.6×30mm、3.5μm(Symmetry、Waters)。カラム温度:室温。流量 2mL/分。注入容積:10micro−L。勾配:4分間にわたってA中10%のB、次に100%のBで0.1分間、次にA中10%のBで0.9分間。全実行時間:5.0分。
【0110】
方法23 SUN:API 150EXおよびShimadzu LC8/SLC−10A LCシステム。カラム:C−18 4.6×30mm、3.5μm(Sunfire、Waters)。カラム温度:40℃。勾配、イオン対による逆相。流量:3.3mL/分。注入容積:15micro−L。勾配:2.4分間かけてA中10%のBから100%のBまで、次にA中10%のBで0.4分間。全実行時間:2.8分。
【0111】
分取LC/MS精製は、大気圧化学イオン化を有する同じ機器において実施した。カラム:5μmの粒径の50×20mm YMC ODS−A。方法:7分間で80%のAから100%のBまで、および22.7mL/分の流速の直線勾配溶出。フラクション捕集は、分流MS検出(split−flow MS detection)によって実施した。
【0112】
標準ParrシェーカーまたはArgonautからのEndavour機器のいずれかを用いて水素化反応を行った。全ての場合において、低圧を用いた(1〜5バールの水素圧)。
【0113】
「シリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)」という用語は以下の意味を有する:精製すべき化合物を通常少量のDCMに溶解し、シリカゲルが予め充填されたカラムに添加し、EtOAcおよびヘプタンの混合物を用いて溶出させる(均一溶媒方式か、あるいはヘプタン中0〜100%のEtOAcなどの勾配を用いる)。使用されるシリカゲルが充填されたカラムの一例は、「ISOLUTE SPE COLUMNS」である[例えば、International sorbent technologyからの20g FLASH Si 70ml]。あるいは、シリカゲル[例えば、Machery−Nagel 60M、0.04〜0.063mm、230〜400メッシュ]を用いて古典的な手動のクロマトグラフィ精製を実施し、標準TLC分析による化合物の同定は、シリカゲル[例えば、Merck 60 F254]がプレコートされたアルミニウム板において実施した。UVランプ(254nm)を用いる照明によって、あるいは10%硫酸水(250mL)中のモリブデン酸アンモニウム(6.25g)および硫酸セリウム(IV)(2.5g)の溶液に浸漬した後炭化させることによって化合物を視覚化した。
【0114】
密封マイクロ波反応バイアル中でマイクロ波加速された反応を行った。Personal ChemistryからのSmith Synthesizerにおいて実験を行った。
【0115】
「凍結乾燥した」という用語は、WWR InternationalからのChrist Aplha 2−4 LSC機器を用いる物質のフリーズドライを指す。
【0116】
「乾燥(NaSO)した」および「乾燥(MgSO)した」という用語は、それぞれ乾燥NaSOまたはMgSOを添加した後、適切な時間攪拌して、有効な乾燥プロセスを保証することによって有機層からの水の除去を指す。次に、ろ過により固体を除去し、通常ろ液を真空で濃縮する(以下を参照)。
【0117】
「真空で濃縮した」という用語は、以下の意味を有する:標準ロータリーエバポレーターを用いて減圧で混合物から揮発性物質を除去した。「40℃において真空で乾燥した」という用語は、油ポンプに接続されて40℃に加熱された標準真空オーブンの使用を指す。「真空で乾燥した」という用語は、乾燥すべき物質が、直接油ポンプに接続されたフラスコに十分な時間入れられて揮発性成分を除去する乾燥プロセスを指す。
【0118】
X線結晶構造決定は、以下のように実施した。Cryostream窒素ガスクーラーシステムを用いて化合物の結晶を120Kまで冷却した。CCDエリアセンシティブ検出器の付いたSiemens SMART Platform回折計においてデータを収集した。直接法により構造を解明し、全てのデータのFに対する全マトリックス最小二乗法によって精密化した。構造内の水素原子は、電子密度差マップ中に見出され得る。非水素原子は異方的に精密化した。全ての水素原子は、O−H=0.84、C−H=0.99〜1.00、N−H=0.92〜0.93オングストロームを有するライディングモデル(riding model)を用いて計算された位置にあった。全ての水素原子に対して、熱パラメータを固定した[結合原子に対してU(H)=1.2U]。Flack x−パラメータは0.0(1)〜0.05(1)の範囲であり、絶対構造が正しいことが示される。データ収集、データ削減および吸収のために使用したプログラムは、SMART、SAINTおよびSADABSであった[非特許文献10、非特許文献11を参照]。構造を解明するため、そして分子グラフィックスのためにプログラムSHELXTL[非特許文献12を参照]を用いた。
【0119】
マーカッシュ構造IaおよびIbのための一般的な合成方法
【化8】

【0120】
【化9】

中間体I(その合成は本明細書に記載される)から出発して、中間体Iからの化合物25の合成のための本明細書における条件下での第1級アミンRNHとの縮合によってマーカッシュ1a−1が得られる。例えば化合物13および14の合成のための本明細書における条件下でのLAHによるマーカッシュ1a−1の還元によって、マーカッシュ1a−2が提供される。シス/トランス混合物を分離した後、例えば実施例1a1の合成のために本明細書において記載される条件下で、いずれかのジアステレオマーを48%HBrまたは関連試薬で処理してメトキシ基を切断し、マーカッシュ1aを与えることができる。例えば実施例3b1の合成のために本明細書において記載される条件下で、塩基の存在下におけるマーカッシュ1aとCHClBrまたは関連試薬とのさらなる反応は、マーカッシュ1a−MDOを与える。得られたマーカッシュ1a−MDOは、BCl/(n−ブチル)NIまたは関連試薬による処理によって、元のマーカッシュ1aに転化することができる。例えば、実施例4a1の合成のために本明細書において記載されるように、マーカッシュ1aは、TFA中の適切な酸クロリドによる処理によって、マーカッシュ1a−ジエステルに転化することができ、マーカッシュ1a−ジエステルが得られる。この物質は加水分解されて、マーカッシュ1aになることができる。
【0121】
【化10】

トランス配置の中間体II(その合成は本明細書に記載される)(エナンチオマー系は、中間体III(その合成も本明細書に記載される)から調製することができる)から出発して、例えば中間体IIの実施例2f1への転化のために本明細書において記載される条件下での直接N−アルキル化、あるいは例えば中間体IIの実施例2h1への転化のために本明細書において記載される条件下での還元的アミノ化を用いてトランス−マーカッシュ1b−1を得ることができる。このマスキングされたカテコールアミンは、例えば実施例2c1の合成のために本明細書において記載される条件下での48%HBrによる処理によって、あるいは、例えば中間体IIの実施例2g1への転化のために本明細書において記載される条件下でのBBrとの反応によって、標準条件下で脱保護することができ、トランス−マーカッシュ1bが得られる。例えば実施例3b1の合成のために本明細書において記載される条件下で、塩基の存在下におけるCHClBrまたは関連試薬とのさらなる反応を適用して、トランス−マーカッシュ1b−MDOを得ることができる。得られたトランス−マーカッシュ1b−MDOは、BCl/(n−ブチル)NIまたは関連試薬による処理によって、元のトランス−マーカッシュ1bに転化することができる。代替戦略は中間体IIのトランス−マーカッシュ1b−2へのアシル化を含み、これは、トランス−マーカッシュ1bおよびトランス−マーカッシュ1b−MDO類似体(RはCHRであると定義され得る)を標的にするために、例えば実施例2e1の合成のために本明細書において記載される条件下で、LAHまたは関連試薬によってトランス−マーカッシュ1b−1に還元することができる。例えば、実施例4a1の合成のために本明細書において記載されるように、TFA中の適切な酸クロリドによるトランス−マーカッシュ1bの処理を用いて、トランス−マーカッシュ1b−ジエステルを調製することができる。これらのジエステルのトランス−マーカッシュ1b−ジエステルは加水分解されて、親カテコールアミンのトランス−マーカッシュ1bになることができる。R=CHである分子のトランス−マーカッシュ1bは、例えば実施例2b1の合成のために本明細書において記載される条件下でのLAHまたは関連試薬による処理によって、化合物11(その純粋なエナンチオマー化合物11Aおよび化合物11Bの使用は、生成物を光学的に調製するために用いることができる)から調製することができ、続いて、得られたトランス−マーカッシュ1b−1は、上記のように、トランス−マーカッシュ1b、トランス−マーカッシュ1b−MDO、またはトランス−マーカッシュ1b−ジエステルに変えられる。
【0122】
【化11】

トランス配置の実施例3a1(中間体IIからのその合成は本明細書に記載される)(エナンチオマー系は、中間体III(その合成も本明細書に記載される)から調製することができる)から出発して、例えば中間体IIの実施例2f1への転化のために本明細書において記載される条件下での直接N−アルキル化、あるいは例えば中間体IIの実施例2h1への転化のために本明細書において記載される条件下での還元的アミノ化を用いて、トランス−マーカッシュ1b−MDOを得ることができる。代替戦略は実施例3a1のトランス−マーカッシュ1b−3へのアシル化を含み、これは、トランス−マーカッシュ1b−MDO類似体(RはCHであると定義され得る)を標的にするために、例えば中間体IIの実施例2e1への転化のために本明細書において記載される条件下で、LAHまたは関連試薬によって還元することができる。さらに、実施例3a1は、例えば化合物8の合成のために本明細書において報告される条件下でBoc保護されて、トランス−マーカッシュ1b−4を提供することができ、これは、トランス−マーカッシュ1b−MDO類似体(R=CHである)を標的にするために、LAHまたは関連試薬によって還元することができる。トランス−マーカッシュ1b−MDOのために、例えばBCl/(n−ブチル)NIによるの処理を用いてトランス−マーカッシュ1bを得ることができる。
【0123】
【化12】

マーカッシュ1b−6(このような化合物の合成については、本明細書中の化合物25の合成の説明を参照)から出発して、例えばPd/Cおよび水素ガスによる処理を用いて、シス−マーカッシュ1b−7を得ることができる。アミド基の開裂は、シス−マーカッシュ1b−8を与えることができる。例えば中間体IIの実施例2f1への転化のために本明細書において記載される条件下での直接N−アルキル化、あるいは例えば中間体IIの実施例2h1への転化のために本明細書において記載される条件下での還元的アミノ化を用いて、シス−マーカッシュ1b−MDOを得ることができる。上記のトランス系の場合のように、例えばBCl/(n−ブチル)NIによる処理を用いてシス−マーカッシュ1bを得ることができ、これは、例えば実施例3b1の合成のために本明細書において記載される条件下で、塩基の存在下におけるCHClBrまたは関連試薬との反応によって、元のシス−マーカッシュ1b−MDOに転化することができ、シス−マーカッシュ1b−MDOが得られる。例えば実施例4a1の合成のために本明細書に記載されるように、TFA中の適切な酸クロリドによるシス−マーカッシュ1b物質の処理を用いて、シス−マーカッシュ1b−ジエステルを調製することができる。これらのジエステルは加水分解されて、親カテコールアミンのシス−マーカッシュ1bになることができる。シス−マーカッシュ1b−8の還元を用いて、シス−マーカッシュ1b−MDO類似体を調製することができる(本明細書で記載されるように、RはCHであると定義され得る)。
【0124】
本発明の化合物の調製のための有用な中間体
以下の中間体は、本発明の化合物の調製において有用である。
【化13】

【0125】
以下のセクションでは、中間体の調製のための一般的な合成方法が提供され、その後に特定の実施例が続く。
【0126】
ベンゾ[f]インドールカテコールアミンの調製のための一般手順
【化14】

中間体I(その合成は本明細書に記載される)を第1級アミンと反応させ、次に、得られたエナミン−ラクタムをアランによって、そして次に水素化ホウ素ナトリウムによって還元する。これにより、シス/トランス保護ベンゾ[f]インドールカテコールアミンの混合物が生じる。これらのジアステレオマーは、例えば、シリカゲルクロマトグラフィによって分離される[密接に関連した合成の例としては、非特許文献13を参照]。マスキングされたカテコールアミンは、例えば、48%HBrまたはBBrによる処理によって遊離される。
【0127】
中間体Iの調製
【化15】

【0128】
ラセミ体3−アリル−5,6−ジメトキシ−3,4−ジヒドロ−1H−ナフタレン−2−オン(化合物2)
【化16】

THF(25mL)中のラセミ体5,6−ジメトキシ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−カルボン酸メチルエステル(6.60g)[化合物1、非特許文献14において記載されるように調製]の溶液を、0℃のTHF(125mL)中のLDA(27mL、THF/ヘプタン/エチルベンゼン中に2M)溶液に液滴で添加した。溶液を0℃で1.5時間攪拌した。臭化アリル(3.44mL)を添加し、溶液を一晩攪拌した。EtO(300mL)および1MのHCl(300mL)を添加し、層を分離した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。残留油をDMSO(25mL)中に溶解させ、水(2.5mL)およびLiCl(1g)を添加した。反応混合物を150℃で0.5時間攪拌し、室温に冷却した。EtOAc(250mL)および水(250mL)を添加し、層を分離した。水層をEtOAc(125mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって精製して、2.55gの化合物2が白色固体で得られた。
【0129】
ラセミ体3’−アリル−5’,6’ジメトキシ−3’,4’−ジヒドロ−1’H−スピロ[[1,3]ジオキソラン−2,2’−ナフタレン](化合物3)
【化17】

CH(OCH(4.53mL)、エチレングリコール(5.68mL)およびPTSA(20mg)を、DCM(45mL)中の化合物2(2.55g)の攪拌溶液に添加した。溶液を室温で4.5時間攪拌し、次に、飽和NaHCO水(45mL)の添加によって反応を停止させた。有機層を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって精製して、2.52gの化合物3が油で得られた。
【0130】
ラセミ体3−アリル−5,6−ジメトキシ−3,4−ジヒドロ−1H−ナフタレン−2−オン(中間体I)
【化18】

KMnO(4.75g)を室温で水(1.7L)中のNaIO(98g)の攪拌溶液に添加した。溶液を0.5時間攪拌した後、KCO(12.7g)および溶液をさらに5分間攪拌した。t−ブチルアルコール(500mL)中の化合物3(14.8g)の溶液を添加した。溶液を3時間攪拌し、次に氷/水浴上で冷却した。亜硫酸水素ナトリウム(38〜40%水溶液)を0.5時間かけて液滴で添加した。DCM(1L)を添加し、層を分離した。水層を追加のDCM(0.4L)で抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮して、11.3gの暗色油を生じた。この物質をアセトニトリル(225mL)中に溶解させ、MeOH(190mL)中のAcCl(37mL)の溶液を添加した。溶液を室温で5分間攪拌し、次に4℃で一晩保持し、次に室温で2時間攪拌した。水(45mL)を添加し、溶液を3時間攪拌した後、これを真空で濃縮した。粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって精製して、3.62gの中間体Iが油で得られた。
【0131】
ベンゾ[g]キノリンカテコールアミンの調製のための一般手順
【化19】

1,2,6−トリメトキシナフタレン[非特許文献14に記載されるように調製することができる]の位置選択的なリチオ化の後、密接に関連した化合物のための文献の手順に従って[非特許文献15]、例えば化合物5の合成のために本明細書において記載される条件下でのIによる処理によって、アクリロニトリルとのHeckカップリングのための基質が提供される。本明細書に記載されるようにさらに5段階の後、重要な中間体IIを得ることが可能である。この物質は、SFCを用いて実験規模で分割することができる。2つのエナンチオマーは次に脱保護され、直接アルキル化、還元的アミノ化、または2段階のアシル化/還元のいずれかを用いて窒素原子が官能基化される。最後に、マスキングされたカテコールアミンは48%HBrまたはBBrによる処理によって標準条件下で遊離される。
【0132】
中間体IIおよびIIIの調製
【化20】

【0133】
7−ヨード−1,2,6−トリメトキシ−ナフタレン(化合物5)
【化21】

アルゴン下および−78℃の乾燥THF(200mL)中の化合物4(26.2g、非特許文献14において記載されるように調製)の攪拌溶液に、s−ブチルリチウム(シクロヘキサン中1.2M、110mL)をゆっくり添加した。溶液を−78℃で3時間攪拌した。乾燥THF(50mL)中のヨウ素(30.5g)の溶液を10分間かけて添加した。次に、得られた混合物を−78℃でさらに10分攪拌した。飽和NHCl(100mL)、水(240mL)、およびEtO(240mL)の添加によって反応混合物を反応停止させた。有機層を10%亜硫酸ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、真空で濃縮した。未反応出発物質を蒸留で除去することによって粗物質を精製した。シリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって残渣をさらに精製して純粋でない固体物質を生じ、これをEtOAc/ヘプタンからの沈殿によって精製して、11.46gの化合物5が得られた。
【0134】
(E/Z)−3−(3,7,8−トリメトキシ−ナフタレン−2−イル)−アクリロニトリル(化合物6)
【化22】

マイクロ波反応バイアル内の乾燥アセトニトリル(10.7mL)中の化合物5(3.41g)の懸濁液に、アクリロニトリル(1.19mL)Pd(OAc)(73mg)、およびトリエチルアミン(1.48mL)を添加した。バイアルを密封し、マイクロ波照射下において混合物を145℃で40分間加熱した。この手順は、さらに2回行った(全部で10.23gの化合物5を使用)。粗反応混合物を合わせて、触媒をろ過して除去し、ろ液を真空で濃縮した。EtO(300mL)および2MのHCl(150mL)の間で残渣を分配させた。有機層を塩水(100mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、真空で濃縮した。粗物質(7.34g)をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって精製して、5.23gの化合物6がオレフィン異性体の混合物として得られた。
【0135】
3−(3,7,8−トリメトキシ−ナフタレン−2−イル)−プロピオニトリル(化合物7)
【化23】

化合物6(5.23g)をCHCl(15mL)および99%EtOH(100mL)中に溶解させた。10%Pd/C(0.8g)を添加し、Parrシェーカーを用いて3バールの水素圧下で45分間、溶液を水素化した。触媒をろ過して除去し、ろ液にシリカゲルの小さいプラウ(plough)を通過させた(溶離液:99%EtOH)。収量:白色固体として4.91gの化合物7。
【0136】
[3−(3,7,8−トリメトキシ−1,4−ジヒドロ−ナフタレン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸t−ブチルエステル(化合物8)
【化24】

化合物7(5.0g)を99%EtOH(150mL)中に溶解させ、窒素雰囲気下で混合物を加熱還流させた。ナトリウム金属(5g)を小さい塊で3時間かけて添加した。混合物をさらに2時間還流させてから、室温で2日間攪拌した。次に、これを再度加熱還流させ、追加のナトリウム金属(3.68g)を添加し、混合物を一晩還流させた。氷/水浴上で冷却した後、固体塩化アンモニウム(20g)および水(25mL)の添加によって反応を停止させた。得られた混合物をろ過し、ろ液を真空で濃縮した。残渣をジエチルエーテル(50mL)および水(50mL)の間で分配させた。水層を37%HClで中和し、ジエチルエーテル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(50mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮して油が得られた。この物質をTHF(50mL)中に溶解させ、室温でBocO(2.34g)およびEtN(1.78mL)によって処理した。6日後に、揮発性物質を真空で除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって精製した。これにより、純粋でない化合物8(1.52g)が提供された。
【0137】
ラセミ体6,7−ジメトキシ−2,3,4,4a,5,10−ヘキサヒドロ−ベンゾ[g]キノリン塩酸塩(化合物9)
【化25】

化合物8(上記のステップからの1.52g)をMeOH(20mL)中に溶解させた。37%HCl(3.5mL)を添加し、混合物を4時間還流させた。水を共沸除去するためにトルエンを用いて揮発性物質を真空で除去した。これにより、純粋でない化合物9(0.89g)が黄色の油で提供された。
【0138】
ラセミ体トランス−6,7−ジメトキシ−3,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]キノリン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(化合物11)
【化26】

化合物9(0.89g)をMeOH(10mL)中に溶解させ、NaCNBH(0.19g)を添加した。反応を室温で一晩攪拌した。氷/水浴上で粗混合物を冷却してから、EtO(1mL)中の2MのHClによって反応を停止させた。混合物をEtO(50mL)、水(50mL)、および2MのNaOH(10mL)の間で分配させた。水層をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮して、純粋でない遊離アミン(化合物10)が得られた。この物質をTHF(25mL)中に溶解させ、BocO(0.68g)およびEtN(0.86mL)により室温で1時間処理した。粗混合物を真空で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって精製して、1.18gのわずかに純粋でないラセミ化合物11が提供された。
【0139】
ラセミ体トランス−6,7−ジメトキシ−3,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]キノリン−1−カルボン酸t−ブチルエステルのエナンチオマーのSFC分離(化合物11Aおよび11B)
【化27】

Chiralcel OD21.2×250mmカラムを備えたBerger SFC multigram II機器におけるキラルSFCを用いて、化合物11(19.7g)をそのエナンチオマーに分割した。溶媒系:CO/EtOH(85:15)、方法:50mL/分の流速の一定勾配。フラクション捕集は、UV230nm検出によって実施した。速く溶出するエナンチオマー(4aR、10aRエナンチオマー、化合物11A):9.0gの白色固体。遅く溶出するエナンチオマー(4aS、10aSエナンチオマー、化合物11b):8.1gの白色固体。
【0140】
(4aR,10aR)−6,7−ジメトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン塩酸塩(中間体II)
【化28】

MeOH(15mL)中に溶解した化合物11A(0.54g)を、EtO7.5(mL)中の5MのHClによって室温で2時間処理した。混合物を真空で濃縮し、固体を真空で乾燥させ、0.44gの中間体IIが白色固体で与えられた。
【0141】
(4aS,10aS)−6,7−ジメトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン塩酸塩(中間体III)
【化29】

エナンチオマー出発物質(化合物11B、0.52g)を用いて、上記の中間体IIについて記載された手順に従って、0.38gの中間体IIIが白色固体で得られた。LC/MS(方法14):RT1.31分。
【0142】
中間体IIおよびIIIの絶対配置の決定
実施例2d2の絶対配置をX線結晶構造解析によって決定し、中間体IIおよびIII、そしてそれによりこれらの誘導体の立体化学の明白な決定を可能にした。
【0143】
MDO−カテコールアミンの調製のための一般手順
【化30】

カテコールアミン臭化水素酸塩を塩基の存在下でCHBrClまたは同様の試薬によって処理し、メチレン−ジ−オキシ(MDO)カテコールアミンが得られた[この変化についての一般的な参考文献としては、例えば、非特許文献16、非特許文献17が参照され、カテコールアミンについての参考文献としては、非特許文献18、非特許文献19が参照される]。
【0144】
カテコールアミンのジアシルカテコールアミンへの転化のための一般手順
【化31】

カテコールアミン臭化水素酸塩は、溶媒としてTFAを用いて塩化アシルで処理される。粗ジアシルカテコールアミンは、酸化アルミニウムクロマトグラフィによって精製される[この変化についての参考文献としては、例えば、Wikstroem、Dijkstra、Cremers、Andren、Marchais、Jurvaの特許文献2、新しいアポルフィンエステルおよび治療におけるその使用が参照される]。
【0145】
化合物12〜17の調製
【化32】

【0146】
ラセミ体5,6−ジメトキシ−1−メチル−1,3,3a,4−テトラヒドロ−ベンゾ[f]インドール−2−オン(化合物12)
【化33】

マイクロ波反応バイアル内のトルエン(7mL)中の中間体I(830mg)の攪拌溶液に、メチルアミン(0.75mL、EtOH中8M)の溶液を添加し、AcOH(0.34mL)を添加した。反応器を密封し、マイクロ波照射下において混合物を120℃で15分間加熱した。溶液を真空で濃縮し、残渣を真空で乾燥させた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって精製した。収量:油として210mgの化合物12。
【0147】
5,6−ジメトキシ−1−メチル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドールのラセミ体トランス−およびシス−異性体(化合物13および14)
【化34】

0℃においてLAH(3.9mL、THF中1M)の攪拌溶液に、AlCl(174mg)を添加した。混合物を室温まで温めてから、再度0℃に冷却した。この混合物に、THF(4ml)中に溶解した化合物12(200mg)を添加し、混合物を室温で1時間攪拌した。混合物を0℃に冷却し、次にウェットなNaSOの添加により反応を停止させた。無機塩をろ過して除去し、ろ液を真空で濃縮した。残渣を99%EtOH中に溶解させ、NaBH(146mg)を添加し、溶液を室温で一晩攪拌した。2MのHCl水(3mL)の添加によって反応混合物を反応停止させた。真空濃縮によって揮発性物質のほとんどを除去し、残渣をEtOで抽出した。有機層を追加の希HClで抽出した。合わせた希HCl層を9MのNaOHによって塩基性化し、次にEtOで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、真空で濃縮した。粗混合物をシリカゲルクロマトグラフィ(MeOH/EtOAc)によって精製した。収量:油として4mgの化合物13(遅く溶出する異性体)、および油として32mgの化合物14(速く溶出する異性体)。
【0148】
ラセミ体5,6−ジメトキシ−1−n−プロピル−1,3,3a,4−テトラヒドロ−ベンゾ[f]インドール−2−オン(化合物15)
【化35】

メチルアミンの代わりにn−プロピルアミンを用いて、化合物12について記載した手順に従って中間体I(1.39g)から調製。化合物15の収量:固体として0.69g。
【0149】
5,6−ジメトキシ−1−n−プロピル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドールのラセミ体トランス−およびシス−異性体(化合物16および17)
【化36】

化合物12の代わりに化合物15(400mg)から、化合物13および14と同様にして化合物16および17を調製した。粗生成混合物をシリカゲルクロマトグラフィ(MeOH/EtOAc)によって精製した。収量:油として55mgの化合物16(遅く溶出する異性体)、および油として40mgの化合物17(速く溶出する異性体)。
【0150】
化合物25の調製
【化37】

【0151】
5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イルメチル)−ベンゾ[1,3]ジオキソール(化合物19)
その合成が文献に記載される[例えば、非特許文献20を参照]5−クロロメチル−ベンゾ[1,3]ジオキソール(12.7g、化合物18)は、フラスコ内でビスピナコラト−ジボロン(18.9g)、リン酸カリウム(47.4g)、酢酸パラジウム(II)(0.17g)、およびトリフェニルホスフィン(0.59g)と混合される。1,4−ジオキサン(100mL)が添加され、混合物は一晩加熱還流される。粗混合物をろ過し、ろ過ケーキを少量のEtOAcで洗浄する。ろ液を飽和NaHCO水でおよび飽和NaCl水で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、真空で濃縮する。残渣をDCM中に溶解させ、シリカゲルによりろ過して、化合物19を油で得る(14.4g)。
【0152】
2−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル−ニコチン酸エチルエステル(化合物20)
化合物19(31g)をDMF(300mL)中に溶解させた。溶液に、エチル2−クロロ−ニコチナート(11.6mL)、トリフェニルホスフィン(3.1g)、酢酸パラジウム(II)(0.9g)、およびリン酸カリウム(51g)を添加した。得られた混合物を80℃に一晩加熱した。次に、追加のエチル2−クロロ−ニコチナート(11.6mL)を添加し、混合物を100℃に約24時間加熱した。粗混合物を室温まで冷却し、無機固体をろ過して除去した。ろ液をEtOAcおよび飽和NHCl水の間で分配させた。有機層を1MのHCl水で抽出した。水層を25%のNH水により塩基性化し、EtOAcで抽出した。有機層を乾燥(NaSO)させ、真空で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(ヘプタン/EtOAc)によって精製して、純粋でない化合物20(4.5g)が油で得られた。
【0153】
2−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル−ピペリジン−3−カルボン酸エチルエステル(化合物21)
化合物20(1.0g)をAcOH(3mL)中に溶解させ、室温で一晩、PtO上で水素化(1バール)した。セライトを用いて触媒をろ過して除去し、ろ液を真空で濃縮した。残渣を2MのNaOH水およびDCMの間で配分した。有機層を乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮して、化合物21(0.85g)が油で得られた。
【0154】
2−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル−1−プロピオニル−ピペリジン−3−カルボン酸エチルエステル(化合物22)
化合物21(0.84g)をDCM(10mL)中に溶解させてから、DIPEA(1.0mL)および塩化プロピオニル(0.3mL)を添加した。混合物を室温で1.5時間攪拌してから、数滴の37%HCl水および水の添加によって反応を停止させた。粗混合物をDCMおよび飽和NaHCO水の間で分配させた。有機層を乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮して、化合物22(0.97g)を得た。
【0155】
2−(6−ブロモ−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−1−プロピオニル−ピペリジン−3−カルボン酸(化合物24)
化合物22(0.87g)をTHF(5mL)中に溶解させ、2MのNaOH水(10mL)によって60℃で一晩処理した。2−メチル−THFを用いて粗混合物を抽出した。有機層を1Mのクエン酸水と共に攪拌してから、2−メチルTHFで抽出し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮して、化合物23が固体で得られた。この物質をDMF(10mL)中に溶解させ、NBS(0.44g)によって室温で2時間処理した。粗混合物をMTBEで希釈し、1MのHCl水で2回洗浄した。有機層を乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮して、化合物24(0.67g)が固体で得られた。
【0156】
5−ブロモ−7−プロピオニル−6a,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−6H−1,3−ジオキサ−7−アザ−シクロペンタ[a]アントラセン−11−オン(化合物25)
化合物24(0.56g)をTFAA(6mL)中に懸濁させ、TFA(4mL)を添加した。混合物を80℃で5時間攪拌した。氷/27%NaOH水により反応を停止させ、生成物を2−メチル−THF中に抽出した。有機層を飽和NaHCO水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮して、化合物25(0.34g)が得られた。
【0157】
本発明の化合物の調製
本明細書において開示される本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【0158】
1b1 ラセミ体trans−1−メチル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオールトリフルオロアセテート
【化38】

化合物13(4mg)を48%HBr(1mL)中に懸濁させ、密封したマイクロ波反応バイアル内で、マイクロ波照射下で155℃に0.5時間加熱した。粗混合物を真空で濃縮し、残渣を分取LC/MSによって精製した。収量:白色固体として6mg。LC/MS(方法25):RT0.52分、ELSD94.1%、UV82.9%。MH:220.3。
【0159】
1b2 ラセミ体シス−1−メチル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオールトリフルオロアセテート
【化39】

化合物14(32mg)を48%HBr(1.5mL)中に懸濁させ、密封したマイクロ波反応バイアル内で、マイクロ波照射下で155℃に0.5時間加熱した。粗混合物を真空で濃縮し、残渣を分取LC/MSによって精製した。収量:白色固体として23mg。LC/MS(方法25):RT0.52分、ELSD93.5%、UV92.7%。MH:220.2。
【0160】
1d1 ラセミ体trans−1−n−プロピル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオールトリフルオロアセテート
【化40】

化合物16(55mg)を48%HBr(2mL)中に懸濁させ、密封したマイクロ波反応バイアル内で、マイクロ波照射下で155℃に0.5時間加熱した。粗混合物を真空で濃縮し、残渣を分取LC/MSによって精製した。収量:白色固体として30mg。LC/MS(方法25):RT0.69分、ELSD99.7%、UV97.9%。MH:248.2。
【0161】
1d2 ラセミ体シス−1−n−プロピル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオールトリフルオロアセテート
【化41】

化合物17(40mg)を48%HBr(2mL)中に懸濁させ、密封したマイクロ波反応バイアル内で、マイクロ波照射下で155℃に0.5時間加熱した。粗混合物を真空で濃縮し、残渣を分取LC/MSによって精製した。収量:白色固体として8mg。LC/MS(方法25):RT0.69分、ELSD99.1%、UV97.8%。MH:248.3。
【0162】
2a1 (4aR,10aR)−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化42】

中間体II(19mg)をマイクロ波反応バイアルに入れ、48%HBrを添加した。中隔によってバイアルを密封し、マイクロ波照射下で混合物を160℃で0.5時間攪拌した。粗混合物を真空で濃縮し、残渣を分取LC/MSによって精製した。実施例2a1の収量:白色固体として12.6mg。LC/MS(方法17):RT1.48分、ELSD95.9%、UV87.1%。MH:220.1。
【0163】
2a2 (4aS,10aS)−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化43】

中間体III(16mg)をマイクロ波反応バイアルに入れ、48%HBr(1mL)を添加した。反応器を密封し、マイクロ波照射下で混合物を170℃で1時間攪拌した。沈殿した生成物をろ過して除去し、真空で乾燥させた。実施例2a2の収量:固体として11mg。LC/MS(方法17):RT1.27分、ELSD88%、UV75.1%、MH:220.1。
【0164】
2b1 (4aR,10aR)−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化44】

化合物11A(3×270mg)を3本のマイクロ波バイアルに添加した後、乾燥THF(7.75mL)およびLAH(THF中1.0M、2.3mL)を添加した。バイアルを密封し、90℃に15分加熱した。3つの粗混合物を氷/水(30mL)中に注ぎ、中間体をEtO(3×50mL)中に抽出した。合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(MeOH/EtOAc)によって精製した。得られた中間体を48%HBr(4mL)中に懸濁させ、マイクロ波条件下で0.5時間、150℃で処理した。沈殿した物質を単離し、マイクロ波条件下85℃でMeOH(10mL)と共に攪拌し、ろ過して、生成物を提供した。実施例2b1の収量:固体として289mg。LC/MS(方法25):RT0.54分、ELSD98.2%、UV93.8%、MH:234.1。
【0165】
2b2 (4aS,10aS)−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化45】

化合物11B(174mg)から出発して、実施例2b1について記載した手順に従った。実施例2b2の収量:固体として121mg。LC/MS(方法17):RT1.35分、ELSD99.4%、UV100%、MH:234.0。
【0166】
2c1 (4aR,10aR)−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化46】

マイクロ波反応バイアル内で、AcCl(0.13g)およびEtN(0.34g)を、室温でTHF(4.4mL)中の中間体III(0.19g)の懸濁液に添加した。バイアルを密封し、マイクロ波照射下において混合物を110℃で5分間攪拌した。反応混合物を氷/水浴上で冷却し、LAH(2mL、THF中1M)を液滴で添加した。マイクロ波照射下で、得られた透明な溶液を80℃で10分間攪拌し、次に、氷−水(20mL)中に注ぎ、EtO(2×40mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。粗中間体をシリカゲルクロマトグラフィ(MeOH/EtOAc/EtN)によって精製し、78mgの油が得られた。この物質をマイクロ波反応バイアルに入れ、48%HBr(2mL)を添加した。バイアルを密封し、マイクロ波照射下において混合物を150℃で0.5時間攪拌した。反応容器を室温まで冷却し、茶色の固体が沈殿した。マイクロ波反応バイアル内で、粗生成物をEtOH(1mL)中に懸濁させた。反応器を密封し、マイクロ波照射下において混合物を90℃で5分間攪拌した。バイアルを4℃で一晩保管し、沈殿した物質をろ過により単離し、真空で乾燥した。実施例2c1の収量:固体として51mg。LC/MS(方法14):RT0.56分、ELSD98.6%、UV97.6%、MH:248.2。
【0167】
2c2 (4aS,10aS)−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化47】

エナンチオマー出発物質の中間体III(284mg)を用いて、実施例2c1について記載した手順に従った。実施例2c2の収量:固体として122mg。LC/MS(方法14):RT0.56分、ELSD98.9%、UV97.4%、MH:247.1。
【0168】
2d1 (4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化48】

化合物11A(0.5g)を99%EtOH(5mL)中に溶解させ、EtO中2MのHCl(4mL)によって室温で一晩処理した。粗混合物を真空で濃縮し、残渣をEtOAcおよび10%のNaOH水(5mL)の間で分配させた。水層をEtOAcで抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。残渣を99%EtOH(5mL)中に溶解させ、プロピオンアルデヒド(0.52mL)、NaCNBH(0.45g)、およびAcOH(3滴)によって室温で一晩処理した。粗混合物を飽和NaHCO水(12.5mL)、水(12.5mL)、およびEtOAc(2×25mL)の間で配分した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(MeOH/EtOAc)によって精製した。マイクロ波条件下において、得られた中間体を48%HBr(3mL)によって150℃で1時間処理してから、粗混合物を4℃で一晩保管した。沈殿した物質をろ過によって単離し、真空で乾燥させた。実施例2d1の収量:固体として103mg。LC/MS(方法25):RT0.77分、ELSD99.1%、UV95.3%、MH:262.3。
【0169】
2d2 (4aS,10aS)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化49】

化合物11B(0.5g)から出発して、実施例2d1について記載した手順に従った。実施例2d2の収量:固体として70mg。LC/MS(方法25):RT0.70分、ELSD99.0%、UV94.1%、MH:262.1。
【0170】
実施例2d2の少量のサンプルをMeOH中に溶解させ、室温で2ヶ月かけてゆっくり結晶化させた。形成した白色結晶を捕集し、X線分析(図2を参照)を受けさせた。
【0171】
2e1 (4aR,10aR)−1−(2−ヒドロキシ−エチル)−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールトリフルオロアセテート
【化50】

EtN(0.05mL)および塩化メトキシアセチル(4滴)を、マイクロ波反応バイアル内において室温でTHF(1.5mL)中の中間体II(28mg)の懸濁液に添加した。バイアルを密封し、マイクロ波照射下において混合物を110℃で5分間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、LAH(0.25mL、THF中1M)を液滴で添加した。粗混合物を室温で一晩保管し、次に、水(2mL)中に注ぎ、EtO(2×5mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をシリカゲルクロマトグラフィ(MeOH/EtOAc/EtN)によって精製し、11mgの油が得られた。この物質をマイクロ波反応バイアル内に入れ、48%HBr(0.5mL)を添加した。バイアルを密封し、マイクロ波照射下において混合物を150℃で0.5時間攪拌した。粗混合物を真空で濃縮し、残渣を分取LC/MSによって精製した。実施例2e1の収量:油として3.4mg。LC/MS(方法314):RT0.45分、ELSD99%、254nmにおいて非常に弱いUVシグナル、MH:263.8。
【0172】
2f1 (4aR,10aR)−1−アリル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化51】

CO(0.17g)および臭化アリル(0.09mL)を、室温でDMF(7mL)中の中間体II(0.20g)の攪拌溶液に添加した。懸濁液を室温で1時間攪拌し、次に、水(10mL)中に注ぎ、EtOAc(3×15mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、ろ過し、真空で濃縮した。粗中間体をシリカゲルクロマトグラフィ(MeOH/EtOAc/EtN)によって精製した。収量:透明な油として156mg。この物質をDCM(3.5mL)中に溶解させ、BBr(0.9mL、DCM中1M)を−78℃において液滴で添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌し、次に、MeOH(10mL)をゆっくりと添加することによって−78℃で反応を停止させた。反応混合物を室温で5分間攪拌してから、EtO(10mL)を添加した。反応フラスコを4℃で1時間保管し、沈殿した生成物をろ過によって単離し、真空で乾燥した。実施例2f1の収量:白色固体として50mg。LC/MS(方法25):RT0.72分、ELSD99.7%、UV100%、MH:260.3。
【0173】
2g1 (4aR,10aR)−1−プロパ−2−イニル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール
【化52】

CO(105mg)および塩化プロパルギル(45mg)を、室温でDMF(5mL)中の中間体II(142mg)の攪拌溶液に添加した。懸濁液を室温で一晩攪拌し、次に、水(20mL)中に注ぎ、EtOAc(2×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水で2回洗浄し、乾燥(NaSO)させ、真空で濃縮した。粗中間体をシリカゲルクロマトグラフィ(MeOH/EtOAc/EtN)によって精製して、透明な油を得た。この物質をDCM(3mL)中に溶解させ、BBr(0.8mL、DCM中1M)を−78℃において液滴で添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌し、次に、MeOH(1.5mL)をゆっくりと添加することによって−78℃で反応を停止させた。反応混合物を室温で10分間攪拌してから、真空で濃縮した。粗生成物をMeOH/EtOからの沈殿によって精製した。実施例2g1の収量:白色固体として25mg。LC/MS(方法25):RT0.69分、ELSD99.3%、UV100%、MH:258.3。
【0174】
2h1 (4aR,10aR)−1−シクロ−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化53】

(1−エトキシシクロプロポキシ)トリメチルシラン(1.05mL)を、MeOH(2.5mL)およびAcOH(0.5mL)中の中間体II(250mg)、NaCNBH(276mg)の攪拌溶液に添加した。バイアルを中隔によって閉鎖し、混合物を75℃で12時間攪拌した。粗混合物をろ過し、ろ液を真空で濃縮した。粗生成物をEtOAc中に溶解させ、シリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc)によって精製して、油が得られた。EtOAc中に溶解させて0.5%HClで抽出することによってこの物質をさらに精製した。水層を塩基性化し、次に、EtOAc(2×25mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥(NaSO)させ、真空で濃縮した。残渣を48%HBr(1.5mL)中に懸濁させ、マイクロ波照射下で、密封したマイクロ波反応バイアル内において150℃で45分間加熱した。沈殿した物質をろ過によって単離し、真空で乾燥させた。実施例2h1の収量:オフホワイトの固体として91mg。LC/MS(方法102):RT0.60分、ELSD99.2%、UV96.5%、MH:260.0。
【0175】
2i1 (4aR,10aR)−1−シクロ−ブチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール臭化水素酸塩
【化54】

中間体II(250mg)を1,2−ジクロロエタン中に溶解させ、NaCNBH(280mg)およびシクロブタノン(0.32mL)を添加し、混合物を室温で一晩攪拌した。次に、追加のNaCNBH(60mg)を添加し、混合物を週末にかけて室温で攪拌した。反応を水で停止させた。水層を1,2−ジクロロエタンで抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/MeOH/EtN)によって精製して、油(160mg)が得られた。122mgのこの物質を48%HBr(3mL)中に溶解させ、マイクロ波照射下、密封バイアル内で150℃に15分間加熱した。沈殿した物質をろ過によって捕集し、真空で乾燥させた。残渣に分取LC/MS精製を受けさせた。実施例2i1の収量:固体として13.3mg。LC/MS(方法102):RT0.73分、ELSD100%、UV76.4%、MH:274.0。
【0176】
3a1 (6aR,10aR)−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザ−シクロペンタ[a]アントラセン塩酸塩
【化55】

中間体II(567mg)を、乾燥DMF(20mL)中の臭化ベンジル(0.36mL)およびKCO(472mg)によって0.75時間処理した。粗混合物を水(20mL)中に注ぎ、中間体をEtOAc(3×30mL)中に抽出した。合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、真空で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって精製し、白色固体(234mg)が得られた。マイクロ波条件下で、220mgのこの物質を48%HBr(6.5mL)によって160℃で0.5時間処理した。沈殿した中間体をMeOHで洗浄し、乾燥させて、白色固体(180mg)が得られた。160mgのこの物質を、マイクロ波条件下で、DMF(2mL)中のCsCO(326mg)、CHBrCl(49microL)によって110℃で0.5時間処理した。追加のCsCO(300mg)およびCHBrCl(160microL)を添加し、マイクロ波条件下で混合物を120℃に0.5時間加熱した。粗混合物をEtOAc(20mL)で希釈し、塩水(2×20mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、真空で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/ヘプタン)によって精製して、固体(94mg)が得られた。この物質を、MeOH(20mL)中の10%Pd/C(約50mg)、5滴の37%HCl、および水素ガス(3バール)によって2時間処理した。触媒をろ過して除去し、ろ液を真空で濃縮した。得られた固体を真空で乾燥させて、実施例3a1が白色固体(79mg)で得られた。LC/MS(方法25):rt0.90分、ELSD99.8%、UV95.6%.MH:232.1。
【0177】
3b1 (6aR,10aR)−7−メチル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセン
【化56】

実施例2b1(700mg)、CsCO(1.7g)、CHBrCl(0.22mL)およびDMF(5mL)をマイクロ波照射下において、密封マイクロ波反応バイアル内で110℃に0.5時間加熱した。シリカゲル(MeOH/DCM)のプラグを通過させることによって、粗混合物を精製した。実施例3b1の収量:固体として7mg。LC/MS(方法23SUN):RT0.62分。ELSD99.0%。UV80.7%。MH:246.3。
【0178】
3c1 (6aR,10aR)−7−エチル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザ−シクロペンタ[a]アントラセン塩酸塩
【化57】

実施例2c1(475mg)、CsCO(1.2g)、CHBrCl(0.15mL)、およびDMF(5mL)をマイクロ波照射下において、密封マイクロ波反応バイアル内で110℃に0.5時間加熱した。シリカゲル(MeOH/DCM)のプラグを通過させることによって、粗混合物を精製した。単離した物質をMeOH中に溶解させ、EtO中の2MのHClを添加した後、EtOを添加した。沈殿した生成物をろ過によって単離し、真空で乾燥させた。実施例3c1の収量:固体として15mg。LC/MS(方法23)。RT0.87分。ELSD94.8%。UV90.9%。MH:260.0。
【0179】
3d1(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザ−シクロペンタ[a]アントラセン塩酸塩
【化58】

実施例2d1(7.80g)、CsCO(18.6g)、CHBrCl(2.2mL)、およびDMF(180mL)をアルゴン雰囲気中で100℃に1時間加熱した。粗反応混合物を分離漏斗に添加し、氷/水(300mL)で希釈した。得られた混合物をEtO(3×300mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(200mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(EtOAc/MeOH)によって精製して、淡赤色の固体が得られ、これをMeOH(25mL)中に溶解させ、EtO(20mL)中の2MのHClおよびEtO(100mL)の添加によって塩酸塩として沈殿させた。沈殿した生成物をろ過によって単離し、真空で乾燥させた。実施例3d1の収量:5.1g。LC/MS(方法111):RT0.70分。ELSD100%。UV97.0%。MH:274.0。
【0180】
4a1 酢酸(4aR,10aR)−7−アセトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステルトリフルオロアセテート
【化59】

DCM(1mL)およびTFA(3mL)中の実施例2a1(90mg)の攪拌懸濁液にAcClを添加した。溶液を室温で2.5時間攪拌してから、真空で濃縮した。残渣に分取LC/MS精製を受けさせた。実施例4a1を含有するフラクションを貯蔵し、真空で濃縮することによってアセトニトリルを除去した。残留水溶液を真空で凍結乾燥させた。実施例4a1の収量:白色固体として49mg。LC/MS(方法14):RT1.33分、ELSD99.5%、UV98.7%。MH:304.0。
【0181】
4a2 酢酸(4aR,10aR)−7−アセトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステルトリフルオロアセテート
【化60】

実施例2a2(30mg)から出発して、実施例4a1について記載した手順に従った。実施例4a2の収量:白色固体として21mg。LC/MS(方法14):RT1.33分、ELSD99.5%、UV98.5。MH:304.0。
【0182】
4b1 2,2−ジメチル−プロピオン酸(4aR,10aR)−7−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4,4a,5、10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステルトリフルオロアセテート
【化61】

PivCl(0.064mL)を、0℃でTFA(0.7mL)中の実施例2b1(41mg)の攪拌溶液に添加した。溶液を0℃で5分間攪拌してから、追加のPivCl(0.128mL)を添加した。溶液を室温で2時間攪拌してから、真空で濃縮し、残渣に分取LC/MS精製を受けさせた。実施例4b1を含有するフラクションを貯蔵し、真空で濃縮することによってアセトニトリルを除去し、水性残渣を真空で凍結乾燥させて、生成物を得た。実施例4b1の収量:白色固体として7mg。LC/MS(方法14):RT2.27分、ELSD99.6%、UV77.6%。MH:401.2。
【0183】
4b2 酢酸(4aS,10aS)−6−アセトキシ−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−7−イルエステルトリフルオロアセテート
【化62】

実施例2b2(18mg)を、TFA(0.5mL)中のAcCl(56micro−L)によって室温で約1時間処理した。粗混合物を真空で濃縮した。残渣を分取LC/MSによって精製した。実施例4b2を含有するフラクションを貯蔵し、真空で濃縮することによってアセトニトリルを除去し、水性残渣を真空で凍結乾燥させて生成物を得た。実施例4b2の収量:白色固体として6mg。LC/MS(方法14):RT1.33分、ELSD99.8%、UV93.7%。MH:318.0。
【0184】
4c2 酢酸(4aS,10aS)−6−アセトキシ−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−7−イルエステルトリフルオロアセテート
【化63】

実施例2c2(32mg)から実施例4b1のように調製した。実施例4c2の収量:固体として7mg。LC/MS(方法14):RT1.41分、ELSD98.6%、UV53.2%。MH:332.2。
【0185】
4d1 2,2−ジメチル−プロピオン酸(4aR,10aR)−7−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5、10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステルトリフルオロアセテート
【化64】

実施例2d1(44mg)から出発して、実施例4b1と同様の方法で実施例4d1を調製した。実施例4d1の収量:白色固体として14mg。LC/MS(方法14):RT2.45分、ELSD97.7%、UV83.9%。MH:430.2。
【0186】
5d1 ラセミ体シス−7−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザ−シクロペンタ[a]アントラセン
【化65】

化合物25(0.34g、THF(5mL)中に溶解)を、0℃でTHF(5mL)中のLAH(0.3g)の懸濁液に添加した。混合物を40分間攪拌してから、氷/水によって反応を停止させ、27%NaOH水によって塩基性化した。生成物を2−メチル−THF中に抽出した。有機層を飽和NaHCO水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空で濃縮した。残渣をMeOH(3mL)中に溶解させ、数mgの5%Pd/C、37%のHCl水(10滴)、および水素ガス(3バール)によって50℃で約1時間、さらに室温(1バールの水素圧)で一晩処理した。翌朝、数mgの追加の5%Pd/Cを添加し、混合物を50℃で一晩水素化(3バール)した(この手順は、合計4日間にわたって数回繰り返した)。触媒をろ過して除去し、ろ液を真空で濃縮した。残渣を2MのNaOH水およびDCMの間で分配させた。有機層を飽和NaHCO水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、EtO中2MのHClで希釈し、真空で濃縮した。残渣をMeOH中に溶解させ、EtO中の2MのHClによって0℃で処理した。沈殿した生成物をろ過によって単離した。実施例5d1の収量:白色固体として53mg。LC/MS(方法111):RT0.71分、ELSD100%、UV61%。MH:274.1。
【0187】
略語および使用される化学物質の一覧
以下の略語が使用される。この段落は、使用される化学物質もこれらの商業的供給源と共に概説する(標準溶媒については含まれない)。
【0188】
AcCl=塩化アセチル(例えば、Aldrich 23,957−7)。ACh=アセチルコリン。AcOH=酢酸。AD=アルツハイマー病。ADME=吸収−分布−代謝−排泄。臭化アリル(例えば、Fluka 05870)AlCl=塩化アルミニウム(例えば、Aldrich 29,471−3)。α=比旋光度。BBr=三臭化ホウ素(DCM溶液として使用される、Aldrich 17,893−4)。BocO=Boc無水物/二炭酸ジ−t−ブチル(例えば、Aldrich 19,913−3)。塩水=飽和塩化ナトリウム水溶液。BSA=ウシ血清アルブミン。(s−ブチル)リチウム(シクロ−ヘキサン溶液として使用される、例えばAldrich 19,559−6)。cAMP=環状アデノシン一リン酸。セライト=ろ過助剤。CHBrCl=ブロモクロロメタン(Aldrich 13,526−7)。CHI=ヨウ化メチル/ヨードメタン(例えば、Aldrich 28,956−6)。CHO細胞=チャイニーズハムスター卵巣細胞。ClAcCl=塩化クロロアセチル(例えば、Aldrich 10,449−3)。CsCO=炭酸セシウム(Aldrich 441902)。CuI=ヨウ化銅(I)(Aldrich 215554)。シクロブタノン(例えば、Aldrich C9,600−1)。シクロ−プロピル臭化メチル/(ブロモメチル)−シクロ−プロパン(Aldrich 24,240−3)。DA=ドーパミン。D1=ドーパミンD1受容体。D2=ドーパミンD2受容体。D3=ドーパミンD3受容体。D4=ドーパミンD4受容体。D5=ドーパミンD5受容体。DCM=ジクロロメタン/塩化メチレン。1,6−ジブロモ−2−ナフトール(例えば、Aldrich D4,180−5)。DMF=ジメチルホルムアミド。DMSO=ジメチルスルホキシド。L−DOPA=(レボ)−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン。DOPAC=3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DA代謝産物)。EC50=問題となる化合物のベースラインと最大応答との中間の応答を誘発するために必要とされる濃度。ELSD=蒸発光散乱検出。EtN=トリエチルアミン。EtNH=ジエチルアミン。EtOAc=酢酸エチル。2−クロロ−ニコチン酸エチル(例えば、ABCR AV20359)。99%EtOH=無水エタノール。臭化エチルマグネシウム(EtO中の3M溶液として使用される、Aldrich 18,987−1)。EtO=ジエチルエーテル。[(1−エトキシシクロプロピル)−オキシ]トリメチルシラン(Aldrich 332739)。エチレングリコール=1,2−エタンジオール。35%H=35%の過酸化水素水溶液(例えば、Aldrich 34,988−7)。FLIPR=蛍光イメージングプレートリーダー。FSB=ウシ胎児血清。h=時間。48%HBr=48%の臭化水素水溶液。18%/37%HCl=18%/37%の塩化水素水溶液。1MのHCl/2MのHCl=1M/2Mの塩化水素水溶液(特に言及しない限りは2MのEtO溶液として、市販されている、例えば、Aldrich 45,518−0)。HMPA=ヘキサメチル亜リン酸トリアミド。HVA=ホモバニリン酸(DA代謝産物)。i=イソ。IBMX=3−i−ブチル−1−メチルキサンチン。i.d.=内径。1−ヨードプロパン(例えば、Aldrich 17,188−3)。KCO=炭酸カリウム(例えば、Aldrich 20,961−9)。KMnO=過マンガン酸カリウム(例えば、Aldrich 39,912−4)。KO=ノックアウト。LDA=リチウムジ−i−プロピルアミド(THF/ヘプタン/エチルベンゼン溶液として使用、Fluka 62491)。LC/MS=高性能液体クロマトグラフィ/質量分析計。LAH=水素化リチウムアルミニウム(1MのTHF溶液として使用、Aldrich 21,277−6)。LiCl=塩化リチウム(例えば、Aldrich 31,046−8)。L−Selectride=トリ−s−ブチルホウ水素化リチウム(1MのTHF溶液として使用、Aldrich 17,849−7)。MDO=メチレン−ジ−オキシ。MED=最小有効用量。MEDNemonapride=ネモナプリドの存在下での最小有効用量。MeOH=メタノール。塩化メトキシアセチル(例えば、Aldrich M965−3)。min=分。MBD=微細脳機能障害。2−メチル−THF(例えば、Aldrich 41,424−7)。MPTP=1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン。MTBE=メチルt−ブチルエーテル。n=ノルマル。NaCNBH=シアノホウ水素化ナトリウム(Aldrich 15,615−9)。Na=重亜硫酸ナトリウム(38〜40%の水溶液として使用、例えば、Riedel 13438)。NaH=水素化ナトリウム(60%の分散液として使用、Aldrich 45,291−2)。NaIO=過ヨウ素酸ナトリウム(例えば、Aldrich 31,144−8)。1M/9MのNaOH=1M/9Mの水酸化ナトリウム水溶液。NaOMe=ナトリウムメトキシド(約5Mのメタノール溶液として使用、例えば、Aldrich 15,625−6)。NPA=N−n−プロピルアポモルフィン。6−OHDA=6−ヒドロキシドーパミン。PBS=リン酸緩衝食塩水(0.15Mの塩化ナトリウムを有する0.02Mのリン酸ナトリウム緩衝液、pHは7.4に調整)。PD=パーキンソン病。PFC=前前頭皮質。Pd/C=パラジウム−オン−チャコール(例えば、Aldrich 20,569−9)。Pd(OAc)=酢酸パラジウム(II)(Alfa Aesar 010516)。ピペロニルアルコール(例えば、Aldrich P4,940−6)。PK=薬物動態。PLMD=周期性四肢運動障害。塩化プロパルギル(例えば、Aldrich 14,399−5)。プロピオンアルデヒド(例えば、Aldrich 58,812−4)。PTSA=パラ−トルエンスルホン酸水和物(例えば、Aldrich 40,288−5)。PivCl=塩化ピバロイル/塩化トリメチルアセチル(例えば、Aldrich T7,260−5)。RLS=下肢静止不能症候群。rt=室温。RT=保持時間。s=第2級。sat.NaHCO=飽和炭酸水素ナトリウム水溶液。sat.NHCl=飽和塩化アンモニウム水溶液。SC=皮下。SFC=超臨界フラッシュクロマトグラフィー。ナトリウム金属(例えば、Aldrich 28,205−7)。t=第3級。TBAI=テトラ−n−ヨウ化ブチルアンモニウム(例えば、Aldrich 14,077−5)。TFA=トリフルオロ酢酸。TFAA=トリフルオロ酢酸無水物。THF=テトラヒドロフラン(4オングストロームのモレキュラーシーブ上で乾燥)。TLC=薄層クロマトグラフィ。CH(OCH=オルトギ酸トリメチル(例えば、Aldrich 30,547−2)。UV=紫外線純度(特に言及されない限り、254nmにおける)。
【0189】
薬理学的試験
D1 cAMPアッセイ
ヒト組換えD1受容体を安定して発現するCHO細胞においてD1受容体仲介のcAMP形成を刺激または阻害するための化合物の能力は、以下のように測定した。実験の3日前に細胞を11000細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに播種した。実験の当日、予熱したG緩衝液(PBS(リン酸緩衝食塩水)中に1mMのMgCl、0.9mMのCaCl、1mMのIBMX(3−i−ブチル−1−メチルキサンチン))中で細胞を1回洗浄し、G緩衝液中に希釈した30nMのA68930および試験化合物の混合物(アンタゴニズム)またはG緩衝液中に希釈した試験化合物(アゴニズム)を100micro−L添加することによってアッセイを開始した。
【0190】
細胞を37℃で20分間インキュベートし、100micro−LのS緩衝液(0.1MのHClおよび0.1mMのCaCl)の添加によって反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68micro−LのN緩衝液(0.15MのNaOHおよび60mMのNaOAc)を添加し、プレートを10分間振とうさせた。60micro−lの反応液を、40micro−Lの60mMの酢酸ナトリウム(pH6.2)を含有するcAMP FlashPlates(DuPont NEN)に移し、100micro−LのICミックス(50mMの酢酸ナトリウム(pH6.2)、0.1%のナトリウムアジド、12mMのCaCl、1%のBSA(ウシ血清アルブミン)および0.15micro−Ci/mLの125I−cAMP)を添加した。4℃で18時間のインキュベーションの後、プレートを1回洗浄し、Wallac TriLuxカウンターでカウントした。
【0191】
D2 cAMPアッセイ
ヒトD2受容体でトランスフェクトされたCHO細胞においてD2受容体仲介のcAMP形成の阻害を刺激または阻害するための化合物の能力は、以下のように測定した。実験の3日前に細胞を8000細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに播種した。実験の当日、予熱したG緩衝液(PBS中の1mMのMgCl、0.9mMのCaCl、1mMのIBMX)中で細胞を一回洗浄し、G緩衝液中の1micro−Mのキンピロール、10microMのホルスコリンおよび試験化合物(アンタゴニズム)またはG緩衝液中の10micro−Mのホルスコリンおよび試験化合物(アゴニズム)の混合物を100micro−l添加することによってアッセイを開始した。
【0192】
細胞を37℃で20分間インキュベートし、100micro−lのS緩衝液(0.1MのHClおよび0.1mMのCaCl)の添加によって反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68micro−LのN緩衝液(0.15MのNaOHおよび60mMの酢酸ナトリウム)を添加し、プレートを10分間振とうさせた。60micro−Lの反応液を、40micro−Lの60mMのNaOAc(pH6.2)を含有するcAMP FlashPlates(DuPont NEN)に移し、100micro−LのICミックス(50mMのNaOAc(pH6.2)、0.1%のナトリウムアジド、12mMのCaCl、1%のBSAおよび0.15micro−Ci/ml125I−cAMP)を添加した。4℃で18時間のインキュベーションの後、プレートを1回洗浄し、Wallac TriLuxカウンターでカウントした。
【0193】
D5アッセイ
hD5−トランスフェクトされたCHO−Ga16細胞におけるドーパミンによる細胞内Ca2+放出の濃度依存性刺激。細胞にfluoro−4、カルシウム指示染料を1時間ロードした。FLIPR(蛍光イメージングプレートリーダー)によってカルシウム応答(蛍光変化)を2.5分間モニターした。それぞれのデータポイントについて2通りのウェルからのピーク応答(EC50)を平均し、薬物濃度と共にプロットした(ドーパミンの図1を参照)。
【0194】
蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPRTM)(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて、種々のウェルに種々の濃度を添加することによってアゴニストへの濃度効果曲線を構成した。曲線をS字形用量反応式I=Imax/(1+(EC50/[アゴニスト]))に適合させた。式中、EC50値は、最大半量活性化を生じるアゴニストの濃度であり、nはHill係数である。適合は、Graphpad Prism 4ソフトウェア(San Diego、CA)を用いて行った。
【0195】
D1/D2の精査
ドーパミンアゴニストは、D1様受容体またはD2様受容体のいずれかもしくはその両方の活性を有する。片側の6−OHDA病変を有するラットにおける回転応答を用いて、両方の受容体型を刺激し回転を誘発するその能力について化合物を評価した[非特許文献21、非特許文献22、非特許文献23]。実験は、問題となる化合物の回転を誘発するための最小有効用量(MED)を決定することからなる。MEDが決定されたら、第2の実験を実施して、ネモナプリドの遮断を乗り越えるための化合物のMED(MEDNemonapride)を決定する。ネモナプリドは、D2様受容体を遮断するD2様アンタゴニストであり、そのために、観察される回転はいずれもD1様受容体における活性に依存し得る。最後に、MEDNemonaprideが分かったら、MEDNemonapride用量を用いて第3の実験を実行し、D1様アンタゴニスト、SCH23390単独、D2様アンタゴニスト、ネモナプリド単独の効果を観察し、そして最後にSCH23390およびネモナプリドによる併用治療の効果を観察した。この第3の実験によって、いずれかのアンタゴニスト単独としての両方の受容体における化合物の活性は試験化合物によって誘発される回転応答を部分的にしか阻害できないが、併用治療はラットの全ての回転を完全に遮断することが確認される[非特許文献24、非特許文献25]。このモデルは、混合型D1様/D2様アゴニストの原理証明化合物としてアポモルフィンを用いて検証した。
【0196】
優位性モデル
アポモルフィンおよびL−DOPAは、重度のドーパミン欠乏のマウスモデルにおいて運動性の欠損を逆転させることができる。アポモルフィンおよびL−DOPAはいずれもD1およびD2様ドーパミン受容体を刺激する。D2様受容体におけるアゴニストであるプラミペキソールは、このモデルでは無効である。本明細書に含まれる化合物のいくつかをこのモデルにおいて試験し、マウスにおける自発運動を回復できるという点でアポモルフィンおよびL−DOPAと同様のプロファイルが示された。このようにして、これらの化合物は、D2様受容体のみを標的とするプラミペキソールなどの他の化合物よりも「優れている」。
【0197】
運動異常モデル
文献[非特許文献26]に記載される動物モデルを用いて、本発明の化合物のいくつかの運動異常プロファイルを研究した。このパラダイムにおいて、本発明の化合物のいくつかは、薬物で未処置の動物においてL−DOPAまたはアポモルフィンよりも少ない運動異常を生じた。本発明の化合物のいくつかはさらに、動物をL−DOPAからプラミペキソールに変更した場合に観察されたよりも大幅に、L−DOPAに誘発された運動異常を低減した。
【0198】
方法−細胞培養
変性pEXJベクターを用いてヒトD5(hD5)発現構築物を作った。乱雑なヒトGalpha16Gタンパク質(CHO−Ga16)を発現する安定な細胞株を(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)から購入した。5%CO中に37℃で10%のFSB(ウシ胎児血清)、1%のL−グルタミンおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を含有するHAMS F−12培地(Invitrogen、Carlsbad、CA)中で細胞を培養した。アッセイの48時間前に、リポフェクタミンプラス(lipofectamine Plus)法(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて、CHO−Ga16細胞にhD5受容体DNAを一過性にトランスフェクトし、血清およびP/Sの無い培地で1日成長させた。アッセイの24時間前に、poly−D−リジンにより前処理をした黒壁で透明底の384ウェルプレート(Becton Dickinson、USA)内に、hD5がトランスフェクトされたCHO−Ga16細胞をウェルあたり10,000細胞の密度で播種した。次に、5%のCO中に37℃で1.5%のFBS、1%のL−グルタミンおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を含有するHAMS F−12細胞成長培地で細胞を培養した。
【0199】
方法−細胞内カルシウム動員アッセイ
細胞内遊離カルシウム濃度([Ca2+)の測定のために、新たに調製した添加緩衝液で培地を置き換えた。添加緩衝液は、1×HBSS(Invitrogen)、20mMのHEPES(Sigma)、0.1%のBSA(Sigma)、1.5micro−MのFluoro−4−Am(Molecular Probes)、および2.5mMのプロベネシド(新たに調製)(Sigma)を含有する。プレートを37℃および5%COで1時間インキュベートし、洗浄緩衝液で3回洗浄した。洗浄緩衝液は、Fluo−4−AMを除いて、添加緩衝液と同じ成分を含有する。次に、細胞を蛍光イメージャープレートリーダー(FLIPRTM、Molecular Devices)に入れ、種々の化合物の添加の前後に細胞蛍光をモニターした。
【0200】
対象となる化合物を洗浄緩衝液中で4×最終濃度に希釈し、透明な丸底プレートに分注した。アルゴンイオンレーザーを用いて488nm波長で染料を励起させ、標準の510〜570nm発光を用いてシグナルを検出した[非特許文献27]。種々のウェルに種々の濃度を添加することによってアゴニストの濃度効果曲線を構成した。薬物の添加の後、ピーク蛍光から基底値を差し引くことによって、相対蛍光を測定する。次にデータを収集し、FLIPRTMソフトウェアおよびGraphPad Prism4を用いて分析した。
【0201】
アゴニストリガンドによって生じるシグナルのその阻害について化合物のアンタゴニスト活性をアッセイした。増大する濃度の化合物と共に細胞をプレインキュベートし、次に上記の方法を用いてアゴニストで刺激した。
【0202】
インビトロ肝細胞アッセイ
冷凍貯蔵した雄ラット肝細胞(Sprague Dawley)および10人のドナー(男性および女性)から貯蔵したヒト肝細胞をIn Vitro Technologies Inc.(BA、USA)から購入した。水浴中37℃で細胞を解凍し、生細胞をカウントし、5mMのHepes緩衝液を有するダルベッコ変法イーグル培地(高グルコース)中(全体で100micro−L)で、96ウェルプレートに播種した。各ウェルは、ラット肝細胞およびヒト肝細胞それぞれについて250.000および500.000細胞/mLを含有した。プレインキュベーションの15分後にインキュベーションを開始し、ラットについては0、5、15、30および60分の時点で、そしてヒト肝細胞については0、30、60、90および120分の時点で停止した。インキュベーションは、10%の1MのHClを含有する等量の氷冷アセトニトリルの添加によって停止した。遠心分離の後、20micro−Lの上澄みを、HPLC Column Atlantis dC18 3micro−m、150×2.1mm i.d.(Waters、MA、USA)に注入した。移動相は、以下の組成を有した。A:5%アセトニトリル、95%HO、3.7ml/lの25%NH水、1.8mL/Lのギ酸。移動相B:100%アセトニトリルおよび0.1%ギ酸。流速は0.3ml/分であった。勾配は、0%から75%までのBで、5分から20分まで操作し、Q−TOFmicro質量分析計(Waters、MA、USA)を用いて溶出液を分析した。生成物/代謝産物の形成は、正確な質量測定および一致する保持時間を与える合成標準物との比較によって確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造I
【化1】

[式中、n=0、1であり、
およびRは水素、C1〜6アルカノイル、フェニルアセチルまたはベンゾイルから独立して選択され、
は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、シクロ−プロピル、シクロ−ブチル、アリル、プロパルギル、ヒドロキシエチル、3−フルオロプロピルおよび2−フルオロエチルからなる群から選択される]
を有する化合物およびその薬学的に許容可能な酸付加塩(ただし、前記化合物は以下のラセミ体:
・ ラセミ体−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
・ ラセミ体−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
・ ラセミ体−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
・ ラセミ体−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
のうちの1つではないことを条件とする)。
【請求項2】
が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、アリル、およびプロパルギル、例えば、メチルおよびn−プロピルからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、シクロ−プロピル、シクロ−ブチル、およびヒドロキシエチルからなる群から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
n=0である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
n=1である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
さらに、実質的に純粋なトランス−ジアステレオ異性体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
およびRの少なくとも1つがアセチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
およびRの少なくとも1つがピバロイルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
およびRの少なくとも1つがベンゾイルまたはフェニルアセチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
n=1であり、さらに、実質的に純粋な(4aR,10aR)−エナンチオマーであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、以下:
trans−1−メチル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオール、
シス−1−メチル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオール、
trans−1−n−プロピル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオール、
シス−1−n−プロピル−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[f]インドール−5,6−ジオール、
(4aR,10aR)−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aS,10aS)−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aS,10aS)−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aS,10aS)−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aS,10aS)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−(2−ヒドロキシエチル)−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−アリル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−プロパ−2−イニル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−シクロ−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
(4aR,10aR)−1−シクロ−ブチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、
酢酸(4aR,10aR)−7−アセトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステル、
酢酸(4aS,10aS)−7−アセトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステル、
2,2−ジメチルプロピオン酸(4aR,10aR)−7−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステル、
酢酸(4aS,10aS)−6−アセトキシ−1−メチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−7−イルエステル、
酢酸(4aS,10aS)−6−アセトキシ−1−エチル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−7−イルエステル、
2,2−ジメチルプロピオン酸(4aR,10aR)−7−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5、10,10a−オクタヒドロ−ベンゾ[g]キノリン−6−イルエステル、
またはその薬学的に許容可能な酸付加塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
およびRが両方とも水素であり、Rが、水素、メチル、エチルおよびn−プロピル、例えば、メチルおよびn−プロピルからなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
およびRがC1〜6アルカノイルであり、Rが水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
n=0であり、RおよびRが両方とも水素であり、Rが水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項15】
n=0であり、RおよびRがC1〜6アルカノイルであり、そしてRが水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物の薬剤としての使用。
【請求項17】
治療的に有効な量の式Iの化合物と、1つまたは複数の薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤および賦形剤とを含む医薬組成物であって、前記式Iの化合物が、以下の構造:
【化2】

[式中、n=0、1であり、
およびRは水素、C1〜6アルカノイル、フェニルアセチルまたはベンゾイルから独立して選択され、
は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、シクロ−プロピル、シクロ−ブチル、アリル、プロパルギル、ヒドロキシエチル、3−フルオロプロピルおよび2−フルオロエチルからなる群から選択される]、
およびその薬学的に許容可能な酸付加塩を有する、医薬組成物。
【請求項18】
およびRが両方とも水素であり、Rが水素、メチル、エチルおよびn−プロピルからなる群から選択される、非経口投与のための請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
経皮投与、経鼻投与、頬側投与、筋肉内投与、腸管外投与、または皮下投与のための請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
式Iの化合物が、実質的に純粋なジアステレオ異性体または実質的に純粋なエナンチオマーである、請求項17〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
哺乳類の神経変性障害の治療のための薬剤を調製するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用。
【請求項22】
哺乳類のパーキンソン病またはハンチントン病の治療のための請求項21に記載の化合物の使用。
【請求項23】
哺乳類の精神病、インポテンス、腎不全、心不全、または高血圧症の治療のための薬剤を調製するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用。
【請求項24】
哺乳類の認知機能障害の治療のための薬剤を製造するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用。
【請求項25】
哺乳類の下肢静止不能症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)の治療のための薬剤を製造するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用。
【請求項26】
哺乳類の運動障害、運動不足、運動異常障害、歩行障害または企図振戦の治療のための薬剤を製造するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用。
【請求項27】
哺乳類の運動異常の治療のための薬剤を製造するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用。
【請求項28】
哺乳類のうつ病、双極性障害および不安症の治療のための薬剤を製造するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用。
【請求項29】
哺乳類の統合失調症、パーキンソン病、AIDS認知症などの認知症、不安障害、加齢性記憶障害、特に高齢者における大うつ病を含むうつ病、アルツハイマー病、注意欠陥多動性障害(ADHD)または心的外傷後ストレス障害(PTSD)から選択される障害または疾患に関連する認知機能障害の治療のための薬剤を製造するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩の使用。
【請求項30】
前記哺乳類がヒト対象者である請求項21〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
哺乳類の神経変性障害を治療するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項32】
哺乳類のパーキンソン病またはハンチントン病を治療するための請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
哺乳類の精神病、インポテンス、腎不全、心不全、または高血圧症を治療するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項34】
哺乳類の認知機能障害を治療するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項35】
哺乳類の下肢静止不能症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)を治療するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項36】
哺乳類の運動障害、運動不足、運動異常障害、歩行障害、または企図振戦を治療するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項37】
哺乳類の運動異常を治療するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項38】
哺乳類のうつ病、双極性障害および不安症を治療するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項39】
哺乳類の統合失調症、パーキンソン病、AIDS認知症などの認知症、不安障害、加齢性記憶障害、特に高齢者における大うつ病を含むうつ病、アルツハイマー病、注意欠陥多動性障害(ADHD)または心的外傷後ストレス障害(PTSD)から選択される障害または疾患に関連する認知機能障害を治療するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩。
【請求項40】
前記哺乳類がヒト対象者である請求項31〜39のいずれか一項に記載の治療のための化合物。
【請求項41】
パーキンソン病またはハンチントン病などの神経変性障害を患っている哺乳類を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項42】
精神病、インポテンス、腎不全、心不全または高血圧症を患っている哺乳類を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項43】
認知機能障害を患っている哺乳類を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項44】
下肢静止不能症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)を患っている哺乳類を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な付加塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項45】
運動障害、運動不足、運動異常障害、歩行障害または企図振戦を患っている哺乳類を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項46】
運動異常を患っている哺乳類を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項47】
大うつ病などのうつ病、双極性障害または不安症を患っている哺乳類を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項48】
統合失調症、パーキンソン病、AIDS認知症などの認知症、不安障害、加齢性記憶障害、特に高齢者における大うつ病を含むうつ病、アルツハイマー病、注意欠陥多動性障害(ADHD)または心的外傷後ストレス障害(PTSD)から選択される障害または疾患に関連する認知機能障害を患っている哺乳類を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩を前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項49】
前記哺乳類がヒト対象者である請求項41〜48のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−536890(P2010−536890A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522187(P2010−522187)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050215
【国際公開番号】WO2009/026935
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】