説明

ヒト組織前駆細胞の接着および分化の、レイシ媒介増強

本開示は、医薬的に活性な抽出物および画分、ならびにそれを使用して真核細胞接着を増大させ、真核細胞の分化を増大させてB細胞、樹状細胞および軟骨細胞の数を増加させ、および未分化の造血細胞を維持する方法を提供する。これらの方法は、免疫応答を調節し、造血活性を調節し、ある型の真核組織を工学的に作製するのに有用である。本開示は、「レイシ」としても知られるGanoderma lucidumおよびGanoderma tsugaeの成分からの医薬的に活性な抽出物および画分、ならびにそれを調製する方法を提供する。これらの抽出物および画分は、免疫応答の調節および造血活性の増大において特に活性であることが見出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本開示は、2006年9月21日に出願された米国仮出願第60/846,676号の利益を主張するものであり、その仮出願の開示は、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、「レイシ」としても知られるGanoderma lucidumおよびGanoderma tsugaeの成分からの医薬的に活性な抽出物および画分、ならびにそれを調製する方法を提供する。これらの抽出物および画分は、免疫応答の調節および造血活性の増大において特に活性であることが見出されている。
【背景技術】
【0003】
細胞接着分子は、特に胚発生、神経可塑性および腫瘍転移の間の細胞間相互作用の可動化において重要な役割を演じる。細胞膜上の複合グリコシドは、幹細胞および幹細胞由来真核細胞のホーミング、可動化、分化、形態発生および接着の決定において重要な役割を演じる。したがって、正常な組織前駆細胞上の複合多糖および膜受容体発現を同定し、特徴付けることは、真核細胞および真核細胞をベースとする生物の健康、疾患の状態およびホメオスタシスの調節において重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、精製レイシ抽出物を対象に投与することを含む方法であって、細胞表面マーカーの単核細胞発現が少なくとも1%増加する方法が開示される。
【0005】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、VCAMおよび/またはNCAMである。
【0006】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、未熟樹状細胞マーカーからなる群より選択される。
【0007】
別の実施形態において、未熟樹状細胞マーカーは、CD1a、CD14、CD40、CD80およびCD86からなる群より選択される。
【0008】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、成熟樹状細胞マーカーからなる群より選択される。
【0009】
別の実施形態において、成熟樹状細胞マーカーは、CD83からなる群より選択される。
【0010】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、造血細胞マーカーからなる群より選択される。
【0011】
別の実施形態において、造血細胞マーカーは、CD34、CD38、CD133およびCXCR4からなる群より選択される。
【0012】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、B細胞マーカーからなる群より選択される。
【0013】
別の実施形態において、B細胞マーカーは、CD19からなる群より選択される。
【0014】
別の実施形態において、精製レイシは、IL−4およびGM−CSFからなる群より選択される少なくとも1つのサイトカインとともに、対象に同時投与される。
【0015】
別の実施形態において、精製レイシ抽出物を対象に投与することを含む方法であって、細胞表面マーカーのMSCおよび/またはPLAの発現が少なくとも1%増加する方法が開示される。
【0016】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、BMP−2、アグリカンおよびIL−1からなる群より選択される。
【0017】
別の実施形態において、レイシは、インスリン、TGF−B1および/またはアスコルベート−2−ホスフェートからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とともに、対象に同時投与される。
【0018】
別の実施形態において、精製レイシを対象に投与し、CD34+/CD38−細胞プロテオームの発現を失う、対象のMSCおよび/またはPSA細胞の割合が少なくとも1%減少する。
【0019】
別の実施形態において、ある量の骨格形成剤と、ある量のレイシ抽出物とを含む組合せが開示される。
【0020】
別の実施形態において、上記の組合せは、ある量の単核細胞をさらに含む。
【0021】
別の実施形態において、上記の組合せは、MSCおよび/またはPLA細胞のある量をさらに含む。
【0022】
別の実施形態において、上記の組合せは、医療用デバイスをさらに含む。
【0023】
別の実施形態において、上記の組合せは、生物に移植可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】FACS分析により特徴付けられる、精製レイシとともにまたは精製レイシなしでインキュベートしたときにin vitroで特定の細胞表面マーカーを発現する懸濁および接着単核細胞の割合を示す図である。
【図2A】インキュベーション容器上での細胞の相対的集密度の目視観察により特徴付けられる、精製レイシとともにまたは精製レイシなしでインキュベートしたときの、in vitroでの単核細胞マーカーの接着の量を質的に示す図である。
【図2B】インキュベーション容器上での細胞の相対的集密度の目視観察により特徴付けられる、精製レイシとともにまたは精製レイシなしでインキュベートしたときの、in vitroでの単核細胞マーカーの接着の量を質的に示す図である。
【図2C】インキュベーション容器上での細胞の相対的集密度の目視観察により特徴付けられる、精製レイシとともにまたは精製レイシなしでインキュベートしたときの、in vitroでの単核細胞マーカーの接着の量を質的に示す図である。
【図2D】インキュベーション容器上での細胞の相対的集密度の目視観察により特徴付けられる、精製レイシとともにまたは精製レイシなしでインキュベートしたときの、in vitroでの単核細胞マーカーの接着の量を質的に示す図である。
【図2E】インキュベートした細胞の形態の目視観察により特徴付けられる、精製レイシとともにまたは精製レイシなしでインキュベートしたときの、in vitroでの単核細胞の形態変化を質的に示す図である。
【図3】図3Aは、ウェスタンブロット分析によりアッセイされる、in vitroで細胞により発現されるV−CAMおよびN−CAM細胞表面マーカーの相対的発現レベルを示す図である。図3Aの軸は、次のとおりである:水平(左から右に):CD1a(+)/CD14(−);CD40;CD80;CD83;CD86;垂直:CDマーカー発現%。図3Bおよび3Cは、FACS分析により特徴付けられる、精製レイシとともにまたは精製レイシなしでインキュベートしたときにin vitroで特定の細胞表面マーカーを発現する細胞の割合を示す図である。図3Bの軸は、次の通りである:水平(左から右に):CD1a(+)/CD14(−);CD40;CD80;CD83;CD86;垂直:CDマーカー発現%。図3Dは、FACS分析により特徴付けられる、精製レイシとともにまたは精製レイシなしでインキュベートしたときにin vitroでCD19+細胞表面マーカーを発現する細胞の相対的個体数を示す図である。図3Dの軸は、次のとおりである:水平(左から右に):CD1a;CD3;CD14;CD16;CD19;CD34+CD45;CD56;CD83;垂直:対照に対する割合0;0.5;1;1.5;2;2.5;3;3.5。図3Eは、FACS分析により特徴付けられる、精製レイシとともにまたは精製レイシなしでインキュベートしたときにin vitroでCD83細胞表面マーカーを発現する細胞の相対的個体数を示す図である。図3Eの軸は、次のとおりである:水平:CD1a;CD3;CD14;CD19;CD56;CD83;垂直:対照に対する割合0;0.5;1;1.5;2;2.5;3;3.5。図3Fおよび3Gは、mRNA(cDNA、PCR)分析により特徴付けられる、レイシ抽出物とともにまたはレイシ抽出物なしでin vitroでインキュベートした細胞により発現される種々のサイトカインの相対的レベルを示す図である。図3Fの軸は、次のとおりである:水平:IL−1;IL−6;MCP−1;RANTES;GRO;GRO−1;MIP−1;垂直:0;20;40;60;80;100。図3Gの軸は、次のとおりである:水平:アンジオゲニン;IL−4;PARC;垂直:0;20;40;60;80;100。
【図4】図4Aおよび4Bは、FACSおよび/または全mRNA分析により評価される、CD34+細胞表面マーカーおよびCD34+/CD38−プロテオームを発現する、レイシ抽出物とともにまたはレイシ抽出物なしでin vitroでインキュベートしたPSAおよびMSC細胞の相対数を示す図である。図4Aの軸は、次のとおりである:垂直:0;5;10;15;20;25;水平:1日目;4日目;7日目;12日目。図4Bの軸は、次のとおりである:垂直:0%;20%;40%;60%;80%;100%;水平:CD34+;CD34+/CD38−;CD34+/CD38+;38+;38−。図4C〜4Fは、FACSおよび/または全mRNA分析により評価される、CD34+細胞表面マーカーおよびCD34+/CD38−プロテオームを発現する、種々のレイシ抽出物画分とともにまたはレイシ抽出物画分なしでin vitroでインキュベートした細胞の相対数を示す図である。図4Cの軸は、次のとおりである:垂直:「対照に対する割合」0、1、2、3;水平:F3(100ug/ml);F6−10(10ug/ml);F11−15(10ug/ml);F16−20(10ug/ml)。図4Dの軸は、次のとおりである:垂直:「対照に対する割合」0、0.5、1、1.5、2、2.5、3;水平:F3(100ug/ml);F6−10(10ug/ml);F11−15(10ug/ml);F16−20(10ug/ml)。図4Eの軸は、次のとおりである:垂直:「対照に対する割合」0、0.5、1、1.5、2、2.5、3;水平:F3(100ug/ml);F6−10(10ug/ml);F11−15(10ug/ml);F16−20(10ug/ml)。図4Fの軸は、次のとおりである:垂直:「対照に対する割合」0、2、4、6、8;水平:F3(100ug/ml);F6−10(10ug/ml);F11−15(10ug/ml);F16−20(10ug/ml)。
【図5】図5A〜5Cは、(位相差顕微鏡検による)軟骨球体形成、種々の細胞プロテオーム成分および細胞表面マーカーのウェスタンブロット分析、ならびに軟骨細胞分化の形態学的および細胞計数分析により特徴付けられる、軟骨細胞の形態に分化したレイシ抽出物とともにまたはレイシ抽出物なしでin vitroでインキュベートした間葉系幹細胞の相対数を示す図である。5Aの軸は、次のとおりである:垂直:「軟骨細胞(SIC)数」0、50、100、150;水平:「日数」0、3、7。凡例は:対照、F3(50ug/ml)、F3(100ug/ml)。5Bの軸は、次のとおりである:垂直:「軟骨細胞」0;200;400;600;800;1000;1200;1400;1600;水平:3日目;7日目。凡例は:対照、+F3(100ug/ml)。
【図6】図6は、(位相差顕微鏡検による)軟骨球体形成、種々の細胞プロテオーム成分および細胞表面マーカーのウェスタンブロット分析、ならびに軟骨細胞分化の形態学的および細胞計数分析により特徴付けられる、軟骨細胞の形態に分化したレイシ抽出物とともにまたはレイシ抽出物なしでin vitroでインキュベートした間葉系幹細胞の相対数を示す図である。図6において:左側のウェスタンブロット:垂直:Chfa−1;BMP−2;BMP−4;PPAR−r;IL−11;水平:CMのみ;CM+F3。右側のウェスタンブロット:垂直:アグリガン(Aggregan);II型コラーゲン;コンドロアドヘリン;NCAM;ICAM;GAPDH;水平:CMのみ;CM+F3。グラフ中:垂直の欄:「軟骨細胞(SIC)数」0;50;100;150;水平の欄:「日」0;3;7。凡例:−対照、−F3(50ug/ml)、−F3(100ug/ml)。
【図7】表1は、TMS法によりアッセイされた、レイシ粗抽出物の炭水化物の組成を示す。
【図8】表2は、十分に確立された方法によりアッセイされた、レイシ粗抽出物のアミノ酸組成を示す。
【図9】表3は、TMS法によりアッセイされた、種々のレイシ精製画分の相対的炭水化物組成を示す。
【図10】表4は、全RNAの分析(例えばRT−pCR)によりアッセイされた、種々のレイシ試料で処理したマウス脾細胞のサイトカイン発現を示す。
【図11】表5は、対象の種々のサイトカインの発現のレベルをアッセイするために用いた、RT−pCRで用いた種々のプライマー配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示を説明する目的で、以下の用語は、以下に記載される関連する定義について言及することを意図する。
【0026】
「血管新生」は、あらかじめ存在する血管からの新しい血管の成長を伴う生理的プロセスを意味する。
【0027】
「接着細胞」は、インキュベーション培地の吸引の後にインキュベーション容器の表面に付着したままの細胞を意味する。接着細胞は、その後、インキュベーション容器の表面から、化学的および/または物理的プロセスにより、例えばトリプシン溶液の使用により分離させることができる。
【0028】
「投与する」は、静脈内、皮下、局所、経皮、皮内、経粘膜、腹腔内、筋内、嚢内、眼窩内、心内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外、および胸骨内の注射および注入を含む経口または非経口の投与、ならびに任意の医療用デバイスまたは身体内に挿入される(一時的または永続的に)物体の成分としての同時投与を意味する。
【0029】
「アグリカン」は、プロテオグリカン、または炭水化物で修飾されたタンパク質を意味する。コラーゲンとともに、アグリカンは、軟骨、特に関節軟骨の主要な構造成分を形成する。
【0030】
「接着している細胞の量」は、インキュベーション容器の表面に接着している細胞の相対数のアッセイを意味する。このアッセイは、インキュベーション容器の表面上の接着細胞の集密度の目視観察、または接着細胞のトリプシン処理およびその後の溶液中のトリプシン処理された細胞の代表的試料の計数のような種々の方法により行い得る。
【0031】
「B細胞」は、T細胞により支配される細胞媒介免疫応答に対する体液性免疫応答において大きい役割を演じる任意のリンパ球のクラスを意味する。B細胞は、ほとんどの哺乳動物の骨髄で生成されるので、B細胞と呼ばれる。B細胞の主な機能は、可溶性抗原に対する抗体を作製することである。B細胞は、適応免疫系の必須成分である。
【0032】
「BMP−2」は、サイトカイン型の骨形態形成タンパク質を意味する。
【0033】
「緩衝液」は、少量の酸もしくは塩基の添加、または希釈の際の水素イオンおよび水酸イオンの濃度(よってpH)の変化に抵抗する溶液を意味する。緩衝液は、弱酸およびその共役塩基(より一般的)、または弱塩基およびその共役酸(あまり一般的でない)からなる。
【0034】
「軟骨」は、関節、外耳および喉頭のような身体内の種々の部分で見出される、靭性で弾力性のある繊維状の結合組織を意味する。胚性および若年の脊椎骨格の主要な構成成分、これは成熟とともに大部分が骨に変換される。
【0035】
「CD」は、白血球上に存在する細胞表面分子の同定および探索のために用いられるプロトコルである表面抗原分類を意味する。CD分子は、多数の様式で作用でき、しばしば、細胞にとって重要な受容体またはリガンド(受容体を活性化する分子)として作用する。シグナルカスケードが通常開始され、細胞の挙動を変更する(細胞シグナル伝達を参照されたい)。いくつかのCDタンパク質は、細胞シグナル伝達において役割を演じないが、細胞接着のようなその他の機能を有する。
【0036】
「細胞表面マーカー」は、真核細胞の細胞表面に存在するタンパク質、およびその特定のタンパク質に特異的な任意の遺伝子発現生成物(in vivoまたはin vitroで特徴付けられているかにかかわらず)(例えばmRNAまたはcDNA)を意味する。
【0037】
「遠心分離機」は、中心軸の周りを回転して、含有された異なる比重の物質を分離するか、または液体中に懸濁されたコロイド状の粒子を分離する区画から本質的になる装置を意味する。
【0038】
「軟骨細胞」は、軟骨で見出される真核細胞の型を意味する。軟骨細胞は、コラーゲンおよびプロテオグリカンから主になる軟骨基質を生成および維持する。軟骨細胞の前駆細胞は、間葉系幹細胞である。
【0039】
「軟骨新生」は、それにより軟骨が形成されるプロセスを意味する。
【0040】
「サイトカイン」は、生物においてシグナル伝達化合物として用いられるタンパク質およびペプチドの任意の群を意味する。これらの化学シグナルは、ホルモンおよび神経伝達物質に似ており、ある細胞が別の細胞と通信することを可能にするために用いられる。
【0041】
「樹状細胞」は、哺乳動物の免疫系の部分を形成する免疫細胞を意味する。これらの主な機能は、抗原物質を加工して、それを表面上で免疫系の他の細胞に提示して、抗原提示細胞として機能する。
【0042】
「樹状細胞マーカー」は、樹状細胞の表面上で通常見出される細胞表面分子の任意の群を意味する。
【0043】
「分化する」は、それにより、真核細胞が「型」(例えば樹状細胞、軟骨細胞)を獲得する;例えば、遺伝的物質の変化を必要とせずに細胞形態が変化するプロセスを意味する。
【0044】
「内皮の」は、管腔内の循環血液と血管壁の残りとの間の界面を形成する、血管の内表面を裏打ちする細胞の薄層を意味する。
【0045】
「発現」は、それにより、DNA配列のような遺伝子を含む遺伝情報が、タンパク質またはRNAのような物理的および生物学的に機能的な遺伝子産物として実現されるプロセスを意味する。発現は、免疫学的(例えばMACS、FACS)および/または分子生物学的(例えば全RNA分析)技術により定量され得る。
【0046】
「FACS」は、蛍光細胞分離法(例えばフローサイトメトリー)を意味する。FACSは、細胞を研究し精製するために用いられる強力な方法である。流体の細流中に保持された個別の細胞が、1本または複数本のレーザビームを通過することにより、光が散乱し、蛍光色素が種々の周波数で光を放射する。フォトマルチプライヤチューブ(PMT)は、光を電気シグナルに変換し、細胞のデータが収集される。細胞の亜集団が同定され、抗体−抗原の関係により特定の型の細胞に連結された蛍光色素の電荷に基づいて高純度(約100%)で分類される。
【0047】
「フィコール−ハイパック(Ficoll−Hypaque)」は、リンパ球を、血液中のその他の形成された要素から分離するための密度勾配遠心分離技術を意味する。試料は、フィコール−メトリゾ酸ナトリウムの比重の勾配上に重層する。遠心分離の後に、リンパ球は、血漿−フィコールの界面から回収される。
【0048】
「ゲル濾過」は、タンパク質、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドの、サイズに基づく分離を意味する。分子は、多孔性ビーズの床を通過して移動し、多少ビーズの中に拡散する。より小さい分子は、ビーズの孔の中にさらに拡散するので、床の中をよりゆっくりと通過して移動するが、より大きい分子は中にあまりまたはまったく入り込まないので、床の中をより速く通過する。分子量および3次元の形状がともに、保持の程度に貢献する。ゲル濾過クロマトグラフィーは、分子サイズの分析のため、混合物中の成分の分離のため、または巨大分子の調製物からの塩の除去もしくは緩衝剤交換のために用いられ得る。
【0049】
「複合多糖」は、他の型の化学的構成成分に共有結合した炭水化物単位からなる化合物の型を意味する。
【0050】
「糖タンパク質」は、ポリペプチド主鎖に共有結合したオリゴ糖鎖(グリカン)を含有するタンパク質を意味する。
【0051】
「グリコシド」は、分子の糖部分が分子のある他の部分に結合した特定の分子を意味する。
【0052】
「グリコシル化」は、糖類をタンパク質および脂質に付加するプロセスまたはその結果を意味する。
【0053】
「GM−CSF」は、サイトカインである、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を意味する。
【0054】
「造血細胞」は、血液を形成する幹細胞を意味する。他の型の細胞のうち、T細胞およびB細胞は、これらの細胞から生じる。
【0055】
「造血系マーカー」は、造血幹細胞の表面上に通常見出される細胞表面分子の任意の群を意味する。
【0056】
「未熟樹状細胞」は、高いエンドサイトーシス活性および低いT細胞活性化能力を特徴とする樹状細胞を意味する。未熟樹状細胞は、病原体およびタンパク質の他の供給源を貪食できる。
【0057】
「細胞マーカーの発現の増加」は、細胞表面タンパク質の特定の型またはその特定の型の細胞表面タンパク質をコードするmRNA分子の量の増加を意味する。種々のタンパク質分子が、特定の真核細胞形態に関連する。発現の増加は、抗体結合細胞分類(「FACS」)を用いて、または磁気活性化細胞分類(「MACS」)によりアッセイできる。あるいは、発現の増加は、特定の型のCD分子の生成をコードするmRNAの細胞内発現の量が間接的に決定されるRT−PCRの使用によりアッセイできる。
【0058】
「インキュベートする」は、容器(場合によりプラスチックまたはガラス)内で液体培地中にセ氏約37度、5%二酸化炭素およびある程度の湿度の条件で真核細胞をin vitroで成長および/または維持することを意味する。インキュベートされた真核細胞には、成長培地、サイトカインおよび/または他の緩衝液もしくは他の溶液の任意の組合せが、場合によって補充される。
【0059】
「インターロイキン」は、通信の手段として(「インター」)、白血球細胞(白血球、よって「ロイキン」)により発現されると最初は考えられていたサイトカイン(分泌されるシグナル伝達分子)の任意の群を意味する。免疫系の機能は、インターロイキンに大部分依存し、これらのいくつかの欠損はほとんど報告されておらず、それらはすべて自己免疫疾患または免疫不全を特徴とする。インターロイキンは、例えばIL−1、IL−2などの略号を用いて通常表記される。
【0060】
「発現を失う」は、それにより、特定の発現される遺伝子(実現、例えば特定のタンパク質またはmRNA配列として)が、真核細胞内でもはや存在しないか、または発現される量もしくは頻度が減少するプロセスを意味する。発現の喪失は、MACSもしくはFACS分析、または全mRNA分析により定量可能である。
【0061】
「凍結乾燥する」は、腐敗しやすい物質を保存するか、またはその物質をより輸送しやすくするために典型的に用いられる凍結乾燥脱水プロセスを意味する。凍結乾燥は、物質を凍結し、次いで周囲圧力を低下させ、十分な熱を加えて物質中の凍結水を固体相から気体に直接昇華させることにより行われる。
【0062】
「マクロファージ」は、単球とよばれる特定の白血球細胞に起源を発する組織内の細胞を意味する。単球およびマクロファージは、貪食細胞であり、ともに、脊椎動物の非特異的防御(または自然免疫)および特異的防御(または細胞性免疫)において作用する。これらの役割は、細胞破片および病原体を、静止または可動性細胞のいずれかとして貪食し(飲み込み、次いで消化する)、リンパ球およびその他の免疫細胞を刺激して、病原体に応答することである。
【0063】
「MACS」は、磁気細胞分離法を意味する。MACSは、希少細胞を全血から、該細胞を抗体標識常磁性ビーズに結合させることにより単離する分離法である。血液は、常磁性ビーズを捕捉する高磁場勾配を有するカラムを通過する。
【0064】
「成熟樹状細胞」は、病原体と接触し、その細胞表面に病原体タンパク質の断片を提示できる樹状細胞を意味する。
【0065】
「間葉」(胚性結合組織としても知られる)は、胚の中胚葉(3層の胚盤の中間層)から主に発生する組織の塊を意味する。粘稠度が粘性である間葉は、コラーゲン束および繊維芽細胞を含有する。間葉は、後に、血管、血液関連器官および結合組織に分化する。
【0066】
「単核細胞」は、脊椎動物の骨髄で生成され、血液および組織に放出されてそこでマクロファージに発達する大きい貪食性の単核白血球を意味し、大きい、長円形またはいくらか陥没した核を含有し、多量の細胞質および多数の細胞小器官に囲まれている。本開示を説明する目的で、単核細胞は、in vitro、in vivoおよびin vivoにあったが、その後単離され抽出された単核細胞を含む。
【0067】
「形態」は、真核細胞、生物または生物の構成要素の外観(形状、構造、色、パターン)および/または個性を意味する。
【0068】
「mRNA」は、メッセンジャーリボ核酸を意味する。mRNAは、タンパク質生成物の化学的「青写真」をコードするRNA分子である。
【0069】
「MSC」は、骨髄由来幹細胞の型を意味する。
【0070】
「NCAM」は、真核細胞の他の真核細胞、および種々の細胞外基質成分との結合の媒介に重要な細胞表面分子を意味する。
【0071】
「PBMNC」は、末梢血由来単核細胞を意味する。
【0072】
「PBS」は、緩衝剤であるリン酸緩衝食塩水を意味する。
【0073】
「PLA」は、脂肪(脂肪組織)由来幹細胞を意味する。
【0074】
「分化軟骨細胞の形態を示す細胞の割合」は、分化した軟骨細胞の形態を示す造血細胞または分化可能な真核細胞の数の評価を意味する。形態のこの変化は、位相差顕微鏡検による観察、細胞表面上のN−CAMの存在の増加の測定(例えばmRNAまたはFACS分析による)、および細胞内BMP−2、IL−1および/またはアグリカン遺伝子発現の対応する増加の測定(例えばmRNA分析による)により定量可能である。
【0075】
「CD34+、CXCR4+および/またはCD38−を発現する細胞の割合」は、CD34+、CXCR+および/またはCD38−発現の測定(例えばmRNA、FACSおよび/またはMACS分析による)により定量可能なCD34+、CXCR4+および/またはCD38−を発現する真核細胞の数のアッセイを意味する。
【0076】
「周皮細胞」は、小血管の壁と会合している間葉様細胞を意味する。比較的未分化の細胞と同様に、周皮細胞は、これらの血管を支持する役目をするが、これは、繊維芽細胞、平滑筋細胞、または必要であればマクロファージにも分化できる。
【0077】
「プロテオーム」は、mRNA、MACSおよびFACS分析によりアッセイ可能な、所定の時間に真核細胞に存在する発現されたタンパク質の完全な組を意味する。
【0078】
「精製レイシ」は、本明細書に参照により組み込まれる米国本出願第11/553,402号に記載されるようにして調製されるレイシ抽出物を意味し、ここで、精製レイシは、末端フコース残基を含有する多糖類またはグリコペプチドを含む。
【0079】
「レイシ」は、キノコGanoderma lucidumおよびその近縁のGanoderma tsugaeのある形の名称を意味する。
【0080】
「幹細胞」は、血液細胞のような特異的専門細胞を生じる専門化されていない細胞を意味する。
【0081】
「間質細胞」は、疎性結合組織で見出される器官の結合組織細胞を意味する。これらは、子宮粘膜(子宮内膜)、前立腺、骨髄前駆細胞および卵巣、ならびに造血系などと最もしばしば会合している。これらは、生物組織の支持構造を構成し、実質細胞を支持する細胞である。
【0082】
「対象」は、限定されないが、in vivoまたはin vitroで投与を受ける、任意の真核細胞または真核細胞をベースとする生物を意味する。
【0083】
「懸濁細胞」は、インキュベーション容器の表面に接着していないインキュベートされた真核細胞を意味する。
【0084】
「0.1N Tris緩衝剤」は、緩衝液を意味する。
【0085】
「VCAM」は、細胞表面分子(CD−106としても知られる)を意味する。VCAM−1は、リンパ球、単球、好酸球および好塩基球の接着を促進する。
【0086】
本開示の詳細な実施形態は、本明細書に開示される。しかし、開示される実施形態は、種々の形で具体化され得る実施形態の単なる説明であることが理解されるべきである。さらに、開示の種々の実施形態に関して与えられる実施例のそれぞれは、説明を意図し、限定するものでない。さらに、図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、いくつかの図面は、特定の構成要素の細部を示すために誇張されている場合がある。よって、本明細書に開示される具体的な構造および機能の詳細は、制限するものではなく、本開示を様々に使用することを当業者に教示するための代表的な基礎にすぎないものと解釈されるべきである。
【0087】
一実施形態において、レイシ組織をホモジナイズすることと、レイシ抽出物を水に溶解することと、レイシ抽出物/水混合物を少なくとも約24時間、レイシ抽出物/水混合物の温度を少なくとも約セ氏4度の温度に維持しながら攪拌することと、レイシ抽出物/水混合物を、不溶性物質を除去するのに十分な時間遠心分離することと、レイシ抽出物/水混合物から水の少なくとも一部分を除去するために、遠心分離されたレイシ抽出物/水混合物から水を、少なくともセ氏約35度の温度で蒸発させることと、得られた濃縮レイシ抽出物/水混合物を凍結乾燥することと、凍結乾燥されたレイシ抽出物を液相に再懸濁することと、再懸濁されたレイシ抽出物を精製することとを含む方法が開示される。
【0088】
別の実施形態において、凍結乾燥されたレイシ抽出物を、0.1N Tris緩衝剤に再懸濁する。別の実施形態において、凍結乾燥されたレイシ抽出物を再懸濁し、得られた懸濁液を、pH7.0に調整する。別の実施形態において、再懸濁されたレイシ抽出物を、ゲル濾過を用いて精製する。別の実施形態において、再懸濁されたレイシ抽出物ゲル濾過を、一連の画分として回収し、そのそれぞれを、糖成分を検出するために、アントロン分析またはフェノール−硫酸法に供する。別の実施形態において、濾過された再懸濁レイシ抽出物を、透析して過剰の塩を除去する。別の実施形態において、レイシ抽出物を、アニオン交換に供し、塩化ナトリウム溶液で溶出し、場合によって再分画する。別の実施形態において、濾過された再懸濁レイシ抽出物を、濾過の後に再び凍結乾燥する。
【0089】
別の実施形態において、複数の単核細胞を精製レイシ抽出物と組み合わせることと、単核細胞およびレイシ抽出物を、細胞マーカーの単核細胞発現を増加させるように十分な時間インキュベートすることとを含む方法が開示される。
【0090】
別の実施形態において、上記の組合せは、条件的培養培地をさらに含む。別の実施形態において、条件的培養培地は、AIM−Vである。別の実施形態において、AIM−V条件的培地は、無血清である。別の培地において、AIM−V条件的培養培地には、胎児ウシ血清を補充する。別の実施形態において、AIM−V条件的培養培地には、IL−4およびGM−CSFを補充する。
【0091】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、VCAMおよび/またはNCAMである。
【0092】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、未熟樹状細胞マーカーからなる群より選択される。別の実施形態において、未熟樹状細胞マーカーは、CD1a、CD14、CD40、CD80およびCD86からなる群より選択される。
【0093】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、成熟樹状細胞マーカーからなる群より選択される。別の実施形態において、成熟樹状細胞マーカーは、CD83からなる群より選択される。
【0094】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、造血細胞マーカーからなる群より選択される。別の実施形態において、造血細胞マーカーは、CD34、CD38、CD133およびCXCR4からなる群より選択される。
【0095】
別の実施形態において、細胞表面マーカーは、B細胞マーカーからなる群より選択される。別の実施形態において、B細胞マーカーは、CD19からなる群より選択される。
【0096】
別の実施形態において、精製レイシ抽出物と単核細胞との組合せは、IL−4およびGM−CSFからなる群より選択される少なくとも1つのサイトカインをさらに含む。
【0097】
別の実施形態において、精製レイシ抽出物(単独または単核細胞との組合せ)は、治療を必要とする人に投与可能である。
【0098】
別の実施形態において、十分量の精製レイシ抽出物を対象に投与して、BMP−2、アグリカンおよびIL−1からなる群より選択される細胞表面マーカーの発現を増加させることを含む方法が開示される。
【0099】
別の実施形態において、組合せは、条件的培養培地をさらに含む。別の実施形態において、条件的培養培地は、AIM−Vである。別の実施形態において、AIM−V条件的培地は、無血清である。別の培地において、AIM−V条件的培養培地には、ウシ胎児血清を補充する。別の実施形態において、AIM−V条件的培養培地には、IL−4およびGM−CSFを補充する。
【0100】
別の実施形態において、精製レイシ抽出物は、キットオプションTGF、コンドロイチン、および/またはグルコサミン骨格形成剤の一部として提供される。別の実施形態において、医療用デバイスとともにまたは医療用デバイスなしで、1つまたは複数の骨格形成剤との組合せ試薬を同時投与することを含む組合せが開示され、該医療用デバイス内で、該試薬および/または骨格形成剤が対象に送り込まれる。
【0101】
別の実施形態において、MSCおよび/またはPLA細胞と精製レイシ抽出物との組合せは、インスリン、TGF−B1および/またはアスコルベート−2−ホスフェートからなる群より選択される化合物をさらに含む。
【0102】
別の実施形態において、複数のMSCおよび/またはPLA細胞を、in vitroで精製レイシ抽出物と組み合わせる工程と、MSCおよび/またはPLA細胞とレイシ抽出物とをある時間インキュベートする工程と、細胞プロテオームの特徴としてCD34+、CXCR4+および/またはCD38−を保持するインキュベートされたMSCおよび/またはPSA細胞の割合を定量的に評価する工程とを含む方法であって、レイシ抽出物とインキュベートした全細胞数の割合としてのCD34+、CXCR4+および/またはCD38−を発現する細胞の割合が、精製レイシ抽出物なしでインキュベートした等しい全細胞数の割合としてのCD34+、CXCR4+および/またはCD38−を発現する細胞の割合と比較して増加する方法が開示される。
【0103】
別の実施形態において、精製レイシ抽出物(単独またはMSCおよび/もしくはPSA細胞との組合せ)は、治療を必要とする人に投与可能である。
【実施例】
【0104】
材料。レイシ粗抽出物(アルカリ抽出(0.1N NaOH)、中和およびエタノール沈澱により調製)を、Pharmanex Co.(CA、USA)から得た。Immobiline DryStrip(pH3〜10 NL(非直線)、18cm)およびIPG緩衝剤(pH3〜10 NL)は、Amersham Pharmacia Biotech(Uppsala、Sweden)から購入した。CHAPS、Tris緩衝剤、アガロース、ヨードアセトアミドおよびアルファ−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸は、Sigma Co.(St.Louis、MO、USA)から、ジチオエリスリトール(DTE)は、Merck Co.(Darmstast、Germany)から、アクリルアミド、過硫酸アンモニウム(APS)およびTEMEDは、Bio−Rad(Hercules、CA、USA)から、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびグリシンは、Fluka(Buchs、Switzerland)から、配列決定グレードのトリプシンは、Promega(Madison、WI、USA)から購入した。
【0105】
レイシ抽出物の精製。28mgの粗抽出物を、2mLのTris緩衝剤(pH7.0、0.1N)に溶解し、遠心分離して不溶物を除去した(7mg)。上清を、Sephacryl S−500カラム(100cm×1.6cm)を用いるゲル濾過クロマトグラフィーにより、0.1N Tris緩衝剤(pH7.0)を溶離液として用いて精製した。流速は0.5mL/分に設定し、チューブあたり7.5mLを回収した。クロマトグラフィーの後に、各画分をアントロン分析に供して、糖成分を検出した。5つの画分を回収し(画分1〜5)、それぞれ透析して、過剰の塩を除去し、凍結乾燥してそれぞれ1.0、6.2、5.3、2.1および1mg未満を得た。
【0106】
アントロン比色法。氷水浴中に浸漬した一連の試験管中のそれぞれ1.5mLのアントロン(9,10−ジヒドロ−9−オキソアントラセン)溶液(100mLの濃硫酸に溶解した0.2gのアントロン)に、1.5mLの試料(20〜40μg/mLのD−グルコースまたは等価物)を注意深く重層した。すべて添加した後に、試験管を迅速に振とうし、次いで氷水浴中に再び入れた。試験管を、沸騰水浴中で5分間加熱し、次いで冷却した。光学密度を、1時間以内に、蒸留水に対して625nmで読み取った。標準、試薬ブランクおよび不明物(unknown)は、他の炭水化物供給源の混入の可能性があるので、3回測定した。計算は、光学密度が炭水化物濃度に正比例するという基本に基づいて行った。
【0107】
脾臓細胞のマイトジェン誘発増殖および比色MTTアッセイ。全脾臓細胞を、BALB/c雄性マウス(6週齢)から採集し、10%FCS(胎児ウシ血清)を含有するRPMI−1640培地に懸濁し、遠心分離して上清を除去した。回収した沈澱細胞を、まず、1mLのRBC溶解緩衝剤(8% NHCl)に懸濁し、次いで14mLを超える同じ溶解緩衝剤を加えて、赤血球細胞を破壊した。1分後に、溶液を15mLのRPMI−1640培地で希釈して反応を停止し、遠心分離して細胞を回収し、細胞最終濃度を2×10細胞/mLに、RPMI−1640培地を用いて調整した。コンカナバリンA(ConA、最終濃度:1μg/mL)を、得られた混合物に加えた。細胞を、レイシ抽出物(または部分精製画分)とともにまたはレイシ抽出物なしで、96ウェルELISAプレート中で、37℃にて5%COとともに72時間インキュベートした。細胞増殖を、MTTアッセイに基づいて測定した。
【0108】
MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に5mg/mLで溶解し、濾過して滅菌およびMTTのいくつかのバッチに存在する少量の不溶性残渣の除去を行った。以下に示す時間に、25μLのMTT溶液を、アッセイのすべてのウェルに加え、プレートを、37℃にて4時間インキュベートした。酸−イソプロパノール(イソプロパノール中に100μLの0.04N HCl)をすべてのウェルに加え、完全に混合して、濃青色の結晶を溶解した。室温にて数分間後にすべての結晶を確実に溶解させ、プレートを、Perkin Elmer ELISAリーダー(HTS 7000 plus)で、570nmの試験波長、620nmの参照波長を用いて読み取った。プレートは、イソプロパノールの添加後1時間以内に通常は読み取った。
【0109】
逆転写(RT)およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)。マウス脾臓細胞を、健康なマウス(BALB/c雄性マウス、6週齢)から無菌的に回収し、理想的細胞濃度(4×10細胞/mL)に調整し、10%のFCS(胎児ウシ血清)を含有するRPMI−1640培地中で、37℃にて5% COとともにインキュベートした。6時間後に、細胞を、Qiagen RNAeasyミニキットを用いるRNA抽出に供して、約1μgの所望のRNAを得た。逆転写(RT)は、Gibco BRLからのThermoscript R/T PCRシステム、およびThemoscriptシステムプロトコルIを用いて行った。反応は、次のようにして行った:8μLのRNA、2μLのプライマー(オリゴ(dT)20)(配列番号23)、2μLの10mM dNTPミックスおよびDEPC HO(0.1%ジエチルピロカーボネート処理HO)を各チューブに加え、これを、次いで、65℃にて5分間インキュベートし、直ちに氷上に置いた。次のものを、各チューブに8μLの混合物として加えた:4μLの5×cDNA緩衝剤、1μLの0.1Mジチオトレイトール(DTT)、1μLのRNaseOut(リボヌクレアーゼ阻害剤)および1μLのThermoscript R/T、および1μLのDEPC水。混合物を室温にて10分間、次いで55℃にて30分間インキュベートして、cDNAの最初の鎖の合成を可能にした。反応物を85℃にて5分間インキュベートすることにより、酵素活性を停止させ、次いでチューブを氷上に10分間置いた。試料を、PCRに使用するまで−20℃にて保存した。
【0110】
各試料(3μL)を、各反応チューブに加え、次の試薬を47μLの混合物として加えた:5μLの10×PCR緩衝剤、4μLの10mM dNTPミックス、2μLの各プライマー(10OD/mL、センスおよびアンチセンス)、33μLのDEPC HO、および1μLのProZyme(登録商標)(DNAポリメラーゼ、PROtech Technologyから)。反応チューブを、Stratagene PCR Robocycler(Gradient96)に入れ、次の条件下で運転した:92℃にて2分間の1サイクル(最初の変性)、次いで91℃にて10秒間(変性)、59℃にて25秒間(プライマーアニーリング)および72℃にて25秒間(プライマー伸長)の連続30サイクル。反応物は、ゲル電気泳動により分析した。
【0111】
糖組成分析−−TMS法。単糖分析のために、多糖抽出物/画分を、0.5Mメタノール性HCl(Supelco)を用いて80℃にて16時間、加メタノール分解し、500μLのメタノール、10μLのピリジンおよび50μLの無水酢酸を用いて再びN−アセチル化し、次いで、Sylon HTP(登録商標)トリメチルシリル化試薬(Supelco)を、室温にて20分間用いて処理し、乾燥して、ヘキサンに再溶解した。トリメチルシリル化誘導体のGC−MS分析を、HP5973 Mass Selective Detectorに接続されたHewlett−Packard(HP)Gas Chromatograph 6890を用いて行った。試料を、ヘキサンに溶解した後に、HP−5MS融解石英キャピラリカラム(30m×0.25mmI.D.、HP)にスプリットレスで注入した。カラムのヘッド圧は、約8.2psiに維持して、ヘリウムをキャリアガスとして用いて一定流速1mL/分にした。最初のオーブン温度は、60℃にて1分間保持し、140℃まで25℃/分、250℃まで5℃/分で上昇させ、次いで、300℃まで10℃/分で上昇させた。
【0112】
レイシ粗抽出物の炭水化物組成分析は、主要成分としてのグルコースおよびマンノースとともに、フコース、N−アセチルグルコサミン、キシロースおよびラムノースを含む他の糖類が、より少量存在することを示した(表1)。粗抽出物は、15.6%のタンパク質を含有し、そのアミノ酸分析を、表2に示した。
【0113】
画分3の組成および活性をさらに理解するために、これを、プロテアーゼKで処理して、タンパク質成分を部分的に分解した。結果は、ConA刺激脾臓細胞の増殖が変わらなかったことを示した。しかし、α1,2−フコシダーゼによる糖分解切断は、画分3の活性を完全に喪失させた(MTTアッセイに基づく)。対照的に、画分3の活性は、α1,3/4−フコシダーゼでの処理の後にわずかに減少した。この実験は、活性成分が、α1,2−フコース結合を有する末端フコース残基を含有する多糖またはグリコペプチドであることを確立する。まとめると、主要活性成分は、α1,2−結合を有する必須の末端フコース残基を含有する糖タンパク質である。タンパク質部分は、活性に必要でない。
【0114】
アミノ酸組成分析。分析は、十分に確立された方法に基づいて行った。レイシ粗抽出物の試料(6mg)を、1mLの6M HClおよびTFA(4/1)溶液に溶解し、140℃にて3時間加熱した。混合物を濃縮して、乾燥残渣を得て、100μLのクエン酸塩緩衝剤に溶解した。少量(4μL)を取り、アミノ酸分析機(Jeol JLC−6AH)による組成分析に供した。
【0115】
プロテオーム研究のための試料調製。レイシ抽出物で処理したマウス脾臓細胞を、8M尿素、2%CHAPS、65mM DTE、2%v/v均一pH勾配(IPG)緩衝剤pH3〜10NL(非直線)および微量のブロモフェノールブルーを含有する350μLの溶解緩衝剤中で溶解した。試料を、13,000rpmにて10分間遠心分離した。試料中の全タンパク質濃度を、Bio−Radタンパク質濃度アッセイキットを用いて測定した。500μgのタンパク質に等しい試料を、2次元電気泳動のための固定pH勾配ストリップ(pH3〜10NL、18cm)に添加した。
【0116】
2次元電気泳動および画像処理。分離は、Hochstrasserら10に記載されるようにして行った。等電点電気泳動は、IPGPhor装置(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて行った。第2次元は、10〜15%ポリアクリルアミド勾配ゲルで、Protean II xL 2Dマルチセル(Bio−Rad)を用いて行った。タンパク質スポットは、蛍光色素Sypro Ruby(商標)(Molecular Probes)を用いて染色した。
【0117】
Sypro Rubyで染色したゲルを、10Mbの画像を生成する蛍光レーザスキャナ(Bio−Rad)を用いてスキャンした。画像を、ImageMaster(商標)ソフトウェア(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて分析した。各ゲルについて、初期設定のスポット検出パラメータを用いて、スポットを検出し、自動で定量した。手動のスポット編集を、ゲルの目視検査に従って行った。タンパク質の添加量およびゲル染色におけるいずれの差も修正するために、相対的容量を算出した。
【0118】
MALDI−TOF MS分析。Sypro Rubyで染色したタンパク質スポットを、ゲルから切り出し、50%CHCN中の200μLの50mM重炭酸アンモニウムpH8.5緩衝剤で洗浄した。CHCN中での脱水、および高速真空遠心分離の後に、ゲルの切片を、100mM重炭酸アンモニウム、pH8.5、1mM CaCl、10%CHCNおよび50ngの配列決定グレードのトリプシンを含有する消化緩衝剤中で膨潤させた。得られたペプチドを、50%CHCN/5%TFAを用いて、1晩の消化の後に抽出した。ペプチド混合物の1μLの一定量を、MALDIターゲット96ウェルプレートに入れ、数秒後に、1μLのマトリクス溶液(50%CHCN/0.1%TFA中のα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸)を加えた。混合物を、周囲温度にて乾燥させた。陽イオン質量スペクトルを、窒素レーザを備えたMALDI反射飛行時間型質量分析計M@LDI(Micromass UK、Manchester、UK)で測定した。報告されたスペクトルは、50〜100レーザ照射から取得した。
【0119】
フコシダーゼ処理の一般的な手法。50mMクエン酸緩衝剤(pH6.0)中のレイシ抽出物または画分3の試料10mgを、α1,2−またはα1,3/4−フコシダーゼ(5単位)で、37℃にてある期間(2〜12時間)処理した。混合物を沸騰水中で5分間加熱して、酵素活性を破壊し、HOに対して4℃にて透析し、凍結乾燥して活性研究のための乾燥粉末を得た。
【0120】
(実施例2)
材料。レイシ粗抽出物(アルカリ抽出(0.1N NaOH)、中和およびエタノール沈澱により調製)を、Pharmanex Co.(CA、USA)から得た。すべての化学薬品および試薬は、記載しない限り、Sigma Co.(81.Louis、MO、USA)から得た。
【0121】
レイシ抽出物の精製。100グラムのレイシ粗抽出物を、3Lの再蒸留水に溶解し、4℃にて24時間攪拌し、1時間遠心分離して不溶物を除去した。得られた溶液を、35℃にて濃縮して少容量にし、凍結乾燥して濃茶色の粉末70gを得て、このうち2.5gを少容量のTris緩衝剤(pH7.0、0.1N)に溶解して、Sephacryl S−500カラム(95cm×2.6cm)を用いるゲル濾過クロマトグラフィーにより、0.1N Tris緩衝剤(pH7.0)を溶離液として用いて精製した。流速は0.6mL/分に設定し、チューブあたり7.5mLを回収した。クロマトグラフィーの後に、各画分をアントロン分析またはフェノール−硫酸法に供して、糖成分を検出した。
【0122】
5つの画分を回収し(画分1〜5)、それぞれ透析して、過剰の塩を除去し、凍結乾燥して、450mgの画分3を得た。
【0123】
画分3を、0.5mL/分の流速にて0.2および0.8M NaClで溶出するDiaion−W A30アニオン交換体(Cl形、40cm×3.5cm)のカラムにさらに供し、2つの画分を、それぞれF3G1(画分3に基づいて11%の収率)およびF3G2(画分3に基づいて10%の収率)と命名した。別の画分(F3G3、画分3に基づいて11%の収率)は、カラムを2M NaOHでさらに溶出したときに生じた。
【0124】
F3G2のゲル濾過クロマトグラフィーは、0.5mL/分の流速にて再蒸留水で溶出するTSK HW−75カラム(130cm×2.6cm)で行った。2つの画分を回収した;すなわち、G2H1(F3G2に基づいて19%の収率)およびG2H2(F3G2に基づいて69%の収率)。
【0125】
アントロン比色法。氷水浴中に浸漬した一連の試験管中のそれぞれ1.5mLのアントロン(9,10−ジヒドロ−9−オキソアントラセン)溶液(100mLの濃硫酸に溶解した0.2gのアントロン)に、1.5mLの試料(20〜40μg/mLのD−グルコースまたは等価物)を注意深く重層した。すべて添加した後に、試験管を迅速に振とうし、次いで氷水浴中に再び入れた。試験管を、沸騰水浴中で5分間加熱し、次いで冷却した。光学密度を、1時間以内に、蒸留水に対して625nmで読み取った。標準、試薬ブランクおよび不明物は、他の炭水化物供給源の混入の可能性があるので、3回測定した。計算は、光学密度が炭水化物濃度に正比例するという基本に基づいて行った。
【0126】
逆転写(RT)およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)。マウス脾臓細胞を、健康なマウス(BALB/c雄性マウス、6週齢)から無菌的に回収し、理想的細胞濃度(3×10細胞/mL)に調整し、10%のFCS(胎児ウシ血清)を含有するRPMI−1640培地中で、37℃にて5% CO2とともにインキュベートした。6時間後に、細胞を、Qiagen RNAeasyミニキットを用いるRNA抽出に供して、約1μgの所望のRNAを得た。逆転写(RT)は、Gibco BRLからのThermoscript R/T PCRシステム、およびThermoscriptシステムプロトコルIを用いて行った。反応は、次のようにして行った:1μgのRNA、1μLのプライマー(オリゴ(dT)20)(配列番号23)、および2μLの10mM dNTPミックスを、0.2mLの各チューブに加え、DEPC HO(0.1%ジエチルピロカーボネート処理HO)を用いて全容量を12μLに調整した。混合物を65℃にて5分間インキュベートし、直ちに氷上で冷却した。次のものを、各チューブに8μLの混合物として加えた:4μLの5×cDNA緩衝剤、1μLの0.1Mジチオトレイトール(DTT)、1μLのRNaseOut(リボヌクレアーゼ阻害剤)および1μLのThermoscript R/T、および1μLのDEPC水。混合物を室温にて10分間、次いで50℃にて1時間インキュベートして、cDNAの最初の鎖の合成を可能にした。反応物を85℃にて5分間インキュベートすることにより酵素活性を停止させ、次いでチューブを氷上に10分間置いた。試料を、PCRに使用するまで−20℃にて保存した。
【0127】
各試料(2μL)を、各反応チューブに加え、次の試薬を25μLの混合物として加えた:2.5μLの10×PCR緩衝剤、2μLの10mM dNTPミックス、2.5μLの10mMの各プライマー(センスおよびアンチセンス)、13μLのDEPC HO、および1μLのProZyme(登録商標)(DNAポリメラーゼ、PROtech Technologyから)。反応チューブを、Strategene PCR Robocycler(Gradient96)に入れ、次の条件下で運転した:94℃にて2分間の1サイクル(最初の変性)、次いで94℃にて1分間(変性)、1分間のプライマーアニーリング(プライマーに応じて種々の温度、詳細は表5を参照されたい)および72℃にて1分間(プライマー伸長)の連続25サイクル。反応物は、ゲル電気泳動により分析した。
【0128】
サイトカイン発現についてのRT−PCR研究によると(表4)、F3G2での処理は、上記の10種のサイトカインすべての著しい発現を導き、よって、このことにより、これが、画分3の主要な活性成分を含有すると結論付けた。TNF−αおよびIL−1の発現は、F3G1およびF3G3の研究において検出可能であった。これらの画分がともに、画分3またはF3G2とは異なって、炎症経路のみを惹起できることが興味深い。
【0129】
TSK HW−75カラムでのF3G2のさらなるゲル濾過クロマトグラフィーにより、図6に示すように、2つの画分G2H1(F3G2に基づいて19%の収率)およびG2H2(F3G2に基づいて69%の収率)が得られた。RT−PCR研究による予備的な結果は、前者の画分が、同じ量のF3G2およびG2H2よりも、IL−1β、IL−6、INF−γ、TNF−αおよびGM−CSFの発現について、より高い活性を有することを示した。
【0130】
糖組成分析−−TMS法。単糖分析のために、多糖抽出物/画分を、0.5Mメタノール性HCl(Supelco)を用いて80℃にて16時間、加メタノール分解し、500μLのメタノール、10μLのピリジンおよび50μLの無水酢酸を用いて再びN−アセチル化し、次いで、Sylon HTP(登録商標)トリメチルシリル化試薬(Supelco)を、室温にて20分間用いて処理し、乾燥して、ヘキサンに再溶解した。トリメチルシリル化誘導体のGC−MS分析を、HP5973 Mass Selective Detectorに接続されたHewlett−Packard(HP)Gas Chromatograph 6890を用いて行った。試料を、ヘキサンに溶解した後に、HP−5MS融解石英キャピラリカラム(30m×0.25mmI.D.、HP)にスプリットレスで注入した。カラムのヘッド圧は、約8.2psiに維持して、ヘリウムをキャリアガスとして用いて一定流速1mL/分にした。最初のオーブン温度は、60℃にて1分間保持し、140℃まで25℃/分、140℃まで25℃/分で上昇させ、次いで、300℃まで10℃/分で上昇させた。
【0131】
レイシ粗抽出物、画分3、F3G1、F3G2およびF3G3の炭水化物組成分析はすべて、主要成分としてのグルコースおよびマンノースとともに、フコース、ガラクトース、Nアセチルグルコサミンおよびキシロースを含む他の糖類のより少量の成分が存在することを示した(表3)。F3G2およびF3G3ではガラクトースの割合が著しく減少したことが興味深い。
【0132】
MNC単離
単核細胞(MNC)を単離するために、各臍帯血(CB)またはヒト末梢血(PB)単位を、リン酸緩衝食塩水(PBS)/2mM EDTAで1:1に希釈し、フィコール−ハイパック溶液に注意深く添加した。2000rpmにて40分間、室温での密度勾配遠心分離の後に、MNCを界面から回収し、PBS/EDTAで2〜3回洗浄した。
【0133】
樹状細胞(DC)培養
2×10PBMNCを、25cm組織培養フラスコ(Cloning)に、4ml RPMI(Invitrogen)培地中に播種し、37℃にて5%二酸化炭素を含む湿潤雰囲気中で1時間インキュベートした後に、非接着細胞を回収し、接着細胞を、ヒトサイトカインIL−4およびGM−CSF(R&D)を補充した無血清AIM−V培地中で、F3とともに/なしで培養した。7日間の培養期間の間に、PBMNCは樹状細胞の形態に変化した。
【0134】
同時培養系でのHSC ex−vivo増殖
CD34+細胞を、磁気細胞分離法(MACS)CD34単離キットを用いて濃縮した。通常、2〜5×10のCD34+細胞が、1×10のMNCから、FACS分析により確認して90〜95%の純度で得られた。マウス間質株化細胞(MS−5)を、CD34+細胞の同時培養のために間質層として用いた。MS−5を、10%FBSおよびPSN抗生物質を補充した低グルコースDMEM中で1週間を超えて培養した。1×10細胞/mLの密度の精製CD34+細胞密度を、2mmol/Lのl−グルタミン、PSN抗生物質、10U/mlの組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO;R&D)、50ng/mLの幹細胞因子(SCF;R&D)、50ng/mLのflt3−リガンド(FL;R&D systems、Minneapolis、MN、USA)および10ng/mLのインターロイキン−6(Il−6;R&D systems、Minneapolis、MN、USA)を補充した4mLの無血清EX−VIVO 10培地に再懸濁した。精製CD34+細胞は、MS−5フィーダーとともに、25Tフラスコ中で同時培養される。8日目に、懸濁細胞を、プレートを穏やかに振とうした後に回収した。残りの弱く付着した造血細胞は、各ウェルに3mLのDMEMを加えることにより完全に回収した。細胞および生細胞の総数は、血球計数器を用いて、光学顕微鏡の下でトリパンブルー非染色細胞数を計数することにより概算した。
【0135】
AD−MSC単離および軟骨新生
AD−MSCは、未処理のヒト脂肪吸引物から得て、本明細書に参照により明確に組み込まれるChienら、Bioorganic & Medicinal Chemistry、12巻、5603〜5609頁(2004年)に記載されるようにして培養した。簡単に、未処理の脂肪吸引物を、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)で十分に洗浄して、混入破砕物および赤血球細胞を除去した。洗浄した吸引物を、PBS中の0.075%コラゲナーゼ(I型;Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)で、37℃にて30分間、穏やかに混合しながら処理した。コラゲナーゼは、等容量のDMEM/10%胎児ウシ血清(FBS)を用いて不活性化し、下澄物を低速で10分間遠心分離した。細胞の沈殿物をDMEM/10%FBSに再懸濁し、100μmメッシュフィルタを通して濾過して、破砕物を除去した。濾過物を上記で詳述したように遠心分離し、維持培地中に、通常の組織培養プレートに播種した。AD−MSCは、10%FBS(Hyclone)を補充したDMEM−LG(GIBCO)で維持した。AD−MSCは、10%FBS(Hyclone)を補充したDMEM−LG(GIBCO)で維持した。MSCのin vitro分化は、軟骨新生培地で処理した:1%FBS、6.25μg/mlインスリン、10ng/ml TGF−β1(R&D)および50nMアスコルベート−2−ホスフェートを補充したDMEM−LG。軟骨新生分化のために、10μlあたり1〜2×10のより高い細胞密度を、軟骨球体形成のために用いた。培養の間、軟骨細胞を3日目および7日目に計数した。
【0136】
RT−PCR
全細胞RNAを、RNeasy全RNA単離キット(Qiagen)を用いて単離し、cDNAを、SuperScript First−strand Synthesis System(Invitrogen)を用いて逆転写した。特定の遺伝子を、PCRにより、Fast−Run Taq Master Kit(Protech Technology、Taipei、Taiwan)を用いて増幅した。
【0137】
FACS分析
成人末梢血由来樹状細胞および臍帯血増殖HSCを、特定の表面抗原についてFACSにより特徴決定した。採集した細胞を回収し、フルオレセインイソチオシアネートまたはフィコエリスリンにコンジュゲートした抗マーカーモノクローナル抗体を用いて、製造者の提案に従って、100μlリン酸緩衝剤中で、室温にて15分間の力価で染色した。細胞表面マーカーは、樹状細胞マーカー(CD1a、CD40、CD80、CD83、CD86)および造血系マーカー(CD34、CD38、CD133、CXCR4)を含んでいた。細胞を、フローサイトメトリーシステム(FACSCalibur;Becton,Dickinson)を用いて分析した。陽性の細胞を計数し、非染色細胞のシグナルと比較した。
【0138】
ヒトサイトカインアレイ分析
回収したPBMNCを、条件的培地中で7日の間に、樹状細胞に変換した。培養培地は、F3とともに/なしでヒトサイトカインIL−4およびGM−CSF(R&D)を補充したAIM−Vである。細胞により分泌されたサイトカインを、RayBio(商標)ヒトサイトカイン抗体アレイキット(RayBiotech、Norcross、Ga)により検出した。サイトカイン抗体アレイメンブレンを、室温にて30分間ブロックした。ブロッキング溶液を除去し、次いで、2mlの条件的培地をメンブレンとともに1.5時間インキュベートした。メンブレンを、洗浄緩衝剤I、IIを用いて洗浄し、次いで、ビオチンコンジュゲート抗体を、メンブレンに1時間加えた。洗浄の後に、HRPコンジュゲートストレプトアビジンをメンブレンに40分間加え、次いで、X線フィルムをACL試薬により感光させた。画像は、KODAK 1D 3.5ソフトウェアを用いて分析し、次いで、データを標準化してEXCELでグラフを描いた。
【0139】
結果:
F3は、造血単核細胞(MNC)における細胞接着分子(CAM)発現に影響する:
細胞接着分子(CAM)および接着単核細胞の共刺激因子は、真核免疫系細胞および抗癌転移の活性化に重要であることが知られている。この研究において、F3は、サイトカイン(GM−CSF(G)、IL−4(4))の存在にかかわらず、AIM−V(M−V)基本培養培地の下で、培養ディッシュ中のCB−MNC接着を著しく増大させ、細胞形態変化を誘導した(図1、2A〜2E)。
【0140】
F3は、未熟樹状細胞(Daces)形成およびB細胞生成を亢進する:
免疫応答を開始する単核細胞である樹状細胞、ならびにIL−4と一緒にした顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)は、MNCからDCへの分化転換を相互に制御することが知られている。CB−MNCからDCへの変換に対するF3の影響を調べる際に、本発明者らは、F3が、IスーパーファミリーCAM(N−CAMおよびV−CAM)発現(図3A)を特異的に亢進するが、I−CAMもPE−CAMも亢進しないことを見出した。F3により刺激された接着CB−MNCは、C. M. Chienら(参照により本明細書に明確に組み込まれる)により以前に記載されたように、RPMI基本培地中でより多くのCD83+成熟樹状細胞(DC)を作製する(図3D〜E)だけでなく、AIM−V培地培養条件下の細胞樹状突起の成長が亢進された、より活性な未熟接着DC(CD1a+、CD40+、CD80+およびCD86+)サブセットを生成し得る結果をもたらす(図3B〜3C)。CB−およびPB−MNCは、F3刺激に対して、成熟DC細胞への変換について異なる応答をする。
【0141】
F3は、単球を変換して、癌免疫療法のためのより未熟な活性DCを作製するための効果的なアジュバントとして役立ち得る。さらに、レイシF3での刺激の際に、本発明者らは、CD19+亜集団B細胞が、CB−MNCからDCへの培養において著しく増大したことも見出した(図3D)。
【0142】
未熟DC−OC分化転換は、関節リウマチの関節液により大きく亢進されることが示されており、IL−1またはTNF−aのような炎症誘発性サイトカイン、およびヒアルロン酸のようなECMの構成要素を伴う(Immature dendritic cell transdifferentiation into osteoclasts: a novel pathway sustained by the rheumatoid arthritis microenvironment Blood.2004年;104巻:4029〜4037頁、参照により明確に本明細書に組み込まれる)。F3は、樹状細胞培養中で、GM−CSFおよびIL−4の同時刺激の下に7日間で、成体血液の炎症誘発性サイトカインの上方制御、ならびにPARKおよびアンジオゲニン発現の下方制御に影響する。ヒトサイトカインアレイにより分析して、IL−1β、IL−6、MCP−1、RANTES、GRO、GRO−α、MIP−βは上方制御され、これとは対照的に、PARC、およびアンジオゲニンサイトカインは下方制御された(図3F〜3G)。
【0143】
F3は、CB−またはPB−MNCを接着未熟活性DCに変換するための効果的なアジュバントとして役立ち(図1)、細胞培養において、CD19+B細胞集団に影響し得る(図3D)。
【0144】
CB−HSCの原始的CD34+造血幹細胞集団in vitro増殖のF3維持:
Sovalat Hら、J. Hematother Stem Cell Res.12巻、473〜489頁(2003年)(参照により明確に本明細書に組み込まれる)は、可動性血液中でのHSCのBM間質細胞への接着の減少は、定常状態の血液、骨髄および臍帯血からのものと比較して、CD34+細胞およびCD34+CD38−プロテオームサブセットの接着分子の下方制御によることを示した。
【0145】
本研究において、CBからのCD34+ HSCを単離し、5種サイトカインカクテル液体培養および間質細胞ベースの同時培養系により、CD34+ HSC生存および増殖のF3の影響を調べるために供した。図4A〜4Cに示すように、レイシ抽出物および特にレイシ抽出物のF3画分は、液体およびフィーダー同時培養系においてともに、CD34+ HS/PCのCD38−およびCD133+原始HSC亜集団を維持し、このことは、F3が、ex−vivo増殖培養において、CD34+ HSCの原始CD38−およびCD133+亜集団が分化することを妨げるための可溶性基質として働き得ることを示す。
【0146】
F3加水分解成分を調べることにより、本発明者らは、CD38−およびCD133+原始集団(図4D〜4E)およびCXCR4+ HSC CD34+集団(図4F)を亢進するレイシ抽出物画分をさらに同定した。本発明者らのデータは、F3のような選択的天然グリコシドおよび/または糖タンパク質を、ex−vivo増殖培養について原始HSCを未分化の状態に維持するための可溶性足場として補充することにより、液体培養中のグリコシド部分の消滅が、妨げられ得ることを示した。よって、F3のような選択的グリコシドまたは糖タンパク質は、移植のよりよい成功のために、CB−HSCのex−vivo増殖同時培養物に補充して、白血球除去処理可動性PB−HSCを処理し得る。
【0147】
F3は、MSC軟骨新生分化可能性に影響する
N−CAMは、神経突起伸長、軸索誘導および遊走にかかわるCNS発達において重要であり、細胞内シグナルカスケードを誘導するシグナル受容体を活性化することが示されている。Fang, J. H. B. Int J. Dev. Bio.43巻:335〜342頁(1999年)(参照により明確に本明細書に組み込まれる)。N−CAM発現も、軟骨新生の初期に骨格濃縮に参加し、軟骨新生を開始する(前軟骨濃縮の形成を媒介する)ことも示されている(Widelitzら、J. Cell. Physiol.156巻:399〜411頁(1993年)(参照により明確に本明細書に組み込まれる)。
【0148】
軟骨球体誘導間葉系幹細胞分化培養でのF3の影響を調べる際に、F3が、BMP−2、IL−1およびアグリカン遺伝子発現の増加を伴って(図5A〜5C)、間葉系軟骨球体の形成を加速して亢進することが見出された。これらの結果に基づくと、F3は、骨格形成剤とともに処方することにより、骨格リモデリング薬物として有用であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞表面マーカーの単核細胞発現が少なくとも1%増加するために十分量の精製レイシ抽出物を対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞表面マーカーが、VCAMおよび/またはNCAMである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞表面マーカーが、未熟樹状細胞マーカーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記未熟樹状細胞マーカーが、CD1a、CD14、CD40、CD80およびCD86からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞表面マーカーが、成熟樹状細胞マーカーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記成熟樹状細胞マーカーが、CD83からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞表面マーカーが、造血細胞マーカーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記造血細胞マーカーが、CD34、CD38、CD133およびCXCR4からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞表面マーカーが、B細胞マーカーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記B細胞マーカーが、CD19からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記精製レイシが、IL−4およびGM−CSFからなる群より選択される少なくとも1つのサイトカインとともに、対象に同時投与される、請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
細胞表面マーカーのMSCおよび/またはPLAの発現が少なくとも1%増加するやめに十分量の精製レイシを対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項13】
前記細胞表面マーカーが、BMP−2、アグリカンおよびIL−1からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記精製レイシが、インスリン、TGF−B1および/またはアスコルベート−2−ホスフェートからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とともに、対象に同時投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
CD34+/CD38−細胞プロテオームの発現を失う、対象のMSCおよび/またはPSA細胞の割合が少なくとも1%減少するために十分量の精製レイシを対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項16】
ある量の骨格形成剤と、
ある量のレイシ抽出物と
を含み、移植することができるデバイス。
【請求項17】
ある量の単核細胞をさらに含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
ある量のMSCおよび/またはPLA細胞をさらに含む、請求項16に記載のデバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−504339(P2010−504339A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529269(P2009−529269)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/020628
【国際公開番号】WO2008/036421
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(596118493)アカデミア シニカ (33)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【Fターム(参考)】