説明

ヒドリド金属錯体および低原子価金属錯体、並びにそれらを用いて、水素分子から電子を取り出す方法、基質を水素化する方法、および重水素から水素を製造する方法

【課題】基質を水素化する触媒機能を有する新規なヒドリド金属錯体の提供。
【解決手段】下記構造式(4)又は(6)で表されるヒドリド金属錯体。該金属錯体は反応中、脱水素化した低原子価金属錯体へと可逆的に変化し、その際ベンズアルデヒド誘導体のような基質を水素化してベンジルアルコール誘導体とすることができる。更に、例えば(4)の金属錯体とプロトンから水素を発生させると共に、前記脱水素化された低原子価金属錯体に電子を保持させ水素分子から電子を取り出すができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なヒドリド金属錯体および低原子価金属錯体に関し、更に、それらを触媒として用い、温和な条件下でも水素分子から電子を取り出すことができる方法に関する。更に、上記触媒によって、基質を水素化する方法、重水素から水素あるいは水素から重水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本件発明者らは、ヒドリド金属錯体を用いて、水素発生を伴うことによって、「水素のヘテロリティックな活性化」、「水素からの電子の取り出し」および「還元反応」を行った例を報告している(JACS 2002, 124, 597, Ogo et al.)。それによると、下記構造式(8)で表されるアクア金属錯体を、水中・常温で常圧の水素と反応させると、錯体2分子に対して3分子の水素がヘテロリティックに活性化され、下記構造式(9)で表されるヒドリド金属錯体が生成する。ここで、水素分子(H)を、プロトン(H)とヒドリドイオン(H)へ変換することを、「水素分子のヘテロリティックな開裂」と言う。ヒドリドイオンとは、マイナスの電荷を持つ水素イオンのことである。このヒドリド錯体はpH−1の硝酸水溶液中で、2つのヒドリド配位子の還元的脱離によって硝酸イオンを二酸化窒素、および一酸化窒素へと還元する。しかし、このヒドリド錯体は非常に安定であり、この還元反応を触媒的に行うことはできない。
【0003】
【化10】

【0004】
また、本件発明者らは、温和な条件(常温、常圧、水中)で水素をヘテロリティックに活性化した例を報告している(Science 2007, 316, 585, Ogo et al.)。即ち、下記反応式に示されるように、水素分子をヘテロリティックに活性化(水素分子をプロトンとヒドリドイオンに開裂)し、ヒドリドイオン(H)をニッケル(Ni)とルテニウム(Ru)の間で捕らえた金属錯体の合成に成功した。しかし、「水素からの電子の取り出し」および「還元反応」の報告はされていない。
【0005】
【化11】

【非特許文献1】JACS 2002, 124, 597, Ogo et al.
【非特許文献2】Science 2007, 316, 585, Ogo et al.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
温和な条件(常温、常圧、水中)のもと、次期エネルギーである「水素」から電子を取り出す方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、新規な構造を有するヒドリド金属錯体および低原子価金属錯体の触媒作用によって、温和な条件の下でも、水素分子から電子を取り出すことができることを見出した。更に、上記触媒作用によって、基質を水素化する方法、および重水素から水素あるいは水素から重水素を製造する方法を見出した。
上記課題は、以下の手段によって達成することができる。
[1] 本発明の一実施形態は、下記構造式(4)または(6)で表されるヒドリド金属錯体である。
【0008】
【化12】

[2] 本発明の他の実施形態は、下記構造式(3)または(5)で表される低原子価金属錯体である。
【0009】
【化13】

【0010】
[3] 更に、本発明の別の実施形態は、水素分子(H2)に、下記構造式(1)で表されるアクア金属錯体(M)を作用させ、該水素分子をヘテロリティックに活性化し、下記反応式で表されるように、下記構造式(2)で表されるヒドリド金属錯体(MH)とプロトン(H)とを生成する工程A、
2H→2H+2[MH]
前記ヒドリド金属錯体の作用により、下記反応式で表されるように、前記プロトン(H)と該ヒドリド金属錯体とから水素を発生させるとともに、下記構造式(3)で表される低原子価金属錯体(M+2e)に電子を保持させる工程B、
2H+2[MH]→2H+[2M+2e]+H、および
下記反応式で表されるように、前記構造式(3)で表される低原子価金属錯体(M+2e)から電子を放出させる工程C、
2H+[2M+2e]+H→2H+2M+2e+H、を有する水素分子から電子を取り出す方法である。
【0011】
【化14】

【0012】
[4] 本発明の好ましい実施形態は、前記工程Bにおいて、前記構造式(2)で表されるヒドリド金属錯体を、pH6.5から10(より好ましくは、pH7〜10)の条件下で脱プロトン化させ、下記構造式(4)で表されるヒドリド金属錯体とし、このヒドリド金属錯体と前記プロトン(H)から水素を発生させるとともに、前記構造式(3)で表される低原子価金属錯体(M+2e)に電子を保持させる、上記[3]に記載の水素分子から電子を取り出す方法である。
【化15】

【0013】
[5] 本発明の別の好ましい実施形態は、前記工程Bにおいて、前記構造式(2)で表されるヒドリド金属錯体を、pH3から6.5(より好ましくは、pH3〜6)の条件下で重水素化反応させ、下記構造式(7)で表される金属錯体(Dは、重水素原子を表す。)とし、この金属錯体と前記プロトン(H)から水素を発生させるとともに、前記構造式(3)で表される低原子価金属錯体(M+2e)に電子を保持させる、上記[3]に記載の水素分子から電子を取り出す方法である。
【化16】

【0014】
[6] 本発明の別の好ましい実施形態は、温度が0〜100℃、水素の圧力が0.1〜1MPaの条件下に反応を行う、上記[3]から[5]のいずれかに記載の水素分子から電子を取り出す方法である。より好ましい温度範囲は、20〜60℃であり、より好ましい水素の圧力は0.1〜0.7MPaである。本発明は、温和な条件(常温、常圧、水中)においても水素分子から電子を取り出す反応を行うことができるという点で優れている。
[7] 本発明の別の実施形態は、pH6.5から10(より好ましくはpH7〜10)の条件下、上記[1]に記載の構造式(4)または(6)で表されるヒドリド金属錯体を用いて、基質(特に、カルボニル化合物)を水素化する方法である。
[8] 本発明の好ましい実施形態は、前記基質が、CH(=O)COOH(グリオキシル酸)および置換基を有していてもよいベンズアルデヒドからなる群より選択される、上記[7]に記載の基質を水素化する方法である。
[9] 本発明の別の好ましい実施形態は、温度が0〜100℃、水素の圧力が0.1〜1MPaの条件下に反応を行う、上記[7]または[8]に記載の基質を水素化する方法である。より好ましい温度範囲は、20〜60℃であり、より好ましい水素の圧力は0.1〜0.7MPaである。本発明は、温和な条件(常温、常圧、水中)においても基質を水素化できるという点で優れている。
[10] 更に、本発明の別の好ましい実施形態は、反応中、前記構造式(4)または(6)で表されるヒドリド金属錯体が、下記構造式(3)または(5)で表される低原子価金属錯体へと可逆的に変化する、上記[7]から[9]のいずれかに記載の基質を水素化する方法である。
【0015】
【化17】

【0016】
[11] 本発明の別の実施形態は、pH3から6.5(より好ましくはpH3〜6)の条件下、下記構造式(7)で表される金属錯体(Dは、重水素原子を表す。)を用いた同位体交換反応により、水素から重水素あるいは重水素から水素を製造する方法である。
【化18】

【0017】
[12] 本発明の好ましい実施形態は、温度が0〜100℃、水素の圧力が0.1〜1MPaの条件下に反応を行う、上記[11]に記載の水素から重水素あるいは重水素から水素を製造する方法である。より好ましい温度範囲は、20〜60℃であり、より好ましい水素の圧力は0.1〜0.2MPaである。本発明は、温和な条件(常温、常圧、水中)においても水素から重水素あるいは重水素から水素を製造することができるという点が優れている。
[13] 更に、本発明の好ましい実施形態は、反応中、前記構造式(7)で表される金属錯体が、下記構造式(3)で表される低原子価金属錯体へと可逆的に変化する、上記[11]または[12]に記載の水素から重水素あるいは重水素から水素を製造する方法である。
【化19】

【0018】
[14] 本発明の別の実施形態は、下記構造式(2)で表されるヒドリド金属錯体を、pH6.5から10(より好ましくはpH7〜10)の条件下で脱プロトン化させる工程を有する、下記構造式(4)で表されるヒドリド金属錯体の製造方法である。
【化20】

【発明の効果】
【0019】
次期エネルギーである「水素」を温和な条件(常温、常圧、水中)で活性化することは長い間の人類の夢であった。本発明によって、温和な条件下でも水素分子から電子を取り出すことができ、得られた電子は、例えば燃料電池などに利用が期待され、社会に与えるインパクトが大きい。本発明は温和な条件(常温、常圧、水中)で反応が行えるため「環境調和性」がよいという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、水中におけるpH依存性の水素同位体交換およびカルボニル化合物の水素化に関し、[NiFe]ヒドロゲナーゼの機能的モデルとして水溶性NiII(μ−S)RuII錯体を用いて研究を行ってきた。酸性媒体(pH3〜6)では、NiII(μ−S)(μ−H)RuII錯体のHリガンドがHの特性を有し、NiII(μ−S)(μ−H)RuII錯体が同位体交換を触媒することを見出した。また、低原子価Ni(μ−S)Ru錯体による同位体交換のメカニズムを提唱することもできる。対照的に、塩基性媒体(pH7〜10)では、NiII(μ−S)(μ−H)RuII錯体のHリガンドがHとして作用し、NiII(μ−S)(μ−H)RuII錯体がカルボニル化合物の水素化を触媒することを見出した。
【0021】
ヒドロゲナーゼ(Hase)は細菌酵素であり、周囲環境条件下で2個のプロトンおよび2個の電子へのHの可逆的活性化を触媒する(下記反応式[1])。活性化に関する理解のほとんどは、Haseによって触媒される気体中の同位体(H、HD、およびD)と媒体中の同位体(HおよびD)との間の水素同位体交換反応に関する研究から得られており(下記反応式[2])、当交換では単回交換生成物(HD)と二回交換生成物(DまたはH)が同時に認められる。同位体交換の研究から、酵素(E)に結合するHが分裂してHおよび水素化した酵素(EH)を生成することが示唆される(下記反応式[3])。
【0022】
【化21】

【0023】
aseは電子伝達体に対する特異性によっていくつかの種類に分類され、例えば水素デヒドロゲナーゼの電子伝達体はNADである(下記反応式[4])。
【化22】

【0024】
また、Haseは[NiFe]Haseおよび[FeFe]Haseというそれぞれの二核活性部位の含有金属に基づいた2つの主要な群に分類される。Haseの構造に関するX線分析、分光技術、および理論的方法によって、Haseの両タイプの活性部位が特有なM(μ−S)M(M=NiまたはFe)ユニットおよびXリガンドを有していることが示されている(下記構造式)。Xリガンドは静止状態におけるHO、OH、またはO2−などの酸素リガンドであると考えられており、活性状態ではヒドリド(H)リガンドの可能性がある。
【0025】
【化23】

[NiFe]Hase(a)および[FeFe]Hase(b)の静止型における活性部位構造(X=HO、OH、またはO2−
【0026】
M(μ−S)M(M=金属イオン)ユニットを有する多くのモデル錯体がHの活性化メカニズムを解明するために合成されており、水素同位体交換および不飽和化合物の水素化におけるその触媒能力が研究されている(水素同位体交換に関する過去の研究から、触媒および実験条件によってHDおよびD(またはH)が順次または同時に発生することが示されている。)。しかし、メカニズムおよび触媒能力の詳細は議論の対象となるには程遠い。M(μ−S)M錯体によって触媒される水素同位体交換および不飽和化合物の水素化について数例が有機溶媒中で進められているだけである(下記表1)。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明者らは最近、[NiFe]Haseの静止型(E)および活性型(EH)の機能的モデルとしてそれぞれ水溶性の[(NiIIL)RuIIO(η−CMe)](OTf){アクア金属錯体[1](OTf)、L=N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(2−メルカプトエチル)−1,3−プロパンジアミン、OTf=CFSO}および[(NiIIL)(OH)(μ−H)RuII(η−CMe)](NO){ヒドリド金属錯体[2](NO)}の合成および構造を報告した(下記構造式)。下記構造式(1)および(2)の構造はX線分析および中性子回折分析によって測定した。なお、本願明細書中、アクア金属錯体[1]とは、下記構造式(1)で表されるアクア金属錯体を指し、ヒドリド金属錯体[2]とは、下記構造式(2)で表されるヒドリド金属錯体を指し、低原子価金属錯体[3]とは、下記構造式(3)で表される低原子価金属錯体を指し、ヒドリド金属錯体[4]とは、下記構造式(4)で表されるヒドリド金属錯体を指す。
【0029】
【化24】

【0030】
まず、低原子価金属錯体である[(NiL)Ru(η−CMe)](低原子価金属錯体[3])を通して、ヒドリド金属錯体[2]によって触媒されるpH依存性の水素同位体交換(pH3〜6)、およびpKが6.5でありヒドリド金属錯体[2]の脱プロトン種である[(NiIIL)(OH)(μ−H)RuII(η−CMe)](ヒドリド金属錯体[4])によって触媒される基質(特に、カルボニル化合物)の水素化(pH7〜10)について以下に説明する(図1)。
【0031】
[(NiIIL)RuII(HO)(η−CMe)](NO{アクア金属錯体[1](NO、L=N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(2−メルカプトエチル)−1,3−プロパンジアミン}、[(NiIIL)(OH)(μ−H)RuII(η−CMe)](NO){ヒドリド金属錯体[2](NO)}、[Ru(η−CMe)(HO)](SO)、およびニッケル錯体[NiIIL]は文献(Ogo S, Kabe R, Uehara K, Kure B, Nishimura T, Menon SC, Harada R, Fukuzumi S, Higuchi Y, Ohhara T, Tamada T, Kuroki R (2007) Science 316:585-587;Rauchfuss TB (2007) Science 316:553-554;Jahncke, M, Meister G, Rheinwald G, Stoeckli-Evans H, Suss-Fink G (1997) Organometallics 16:1137)に記載されている方法に従って調製した。酸性媒体中の操作は(金属を含まない)プラスチック製またはガラス製の器具を用いて実施した。蒸留水、0.1MのNaOH/HO、および0.1MのHNO/HOはWako Pure Chemical Industries, Ltd.から、65%DNO/DO(99%D)はIsotec Inc.から、KDPO(99%D)はCDN Isotopesから、CHCOOD(99%D)はAldrich Co.から、DO(99.9%D)、40%NaOD/DO(99%D)、およびKDPO(98%D)はCambridge Isotope Laboratories, Inc.から購入しそのまま使用した。Hガス(99.9999%)はTaiyo Toyo Sanso Co., Ltd.から、Dガス(99.5%)はSumitomo Seika Chemicals Co., Ltd.から、HDガス(HD 97%、H 1.8%、D 1.2%)はIsotec Inc.から購入し、精製せずに使用した。
【0032】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析(MS)はPE Voyager DE−RPで記録し、ジトラノールをマトリックスとして使用した。ESI−MSデータは、イオンスプレーインターフェースを備えたAPI 365トリプル四重極質量分析計(PE−Sciex)を陽性検出モードで用いて得た。噴霧器は電位を+5.0kVで維持し、圧縮Nで液体噴霧を補助した。H NMRスペクトルは、23℃でJEOL JNM−AL300スペクトロメーターを用いて記録した。H、HD、およびDガスは熱伝導度検出器を備えたShimadzu GC−14B{Heキャリヤ、−196℃(液体N)で10%MnCl−アルミナ100/120カラム(4.0m×3.0mm i.d.)}およびShimadzu GC−8A{Heキャリヤ、活性チャコール60/80カラム(2.0m×3.0mm i.d.)、GL Sciences Inc.}を用いて測定した。IRスペクトルは周囲環境温度で標準分解能2cm−1を用いて350から4000cm−1スペクトルをThermo Nicolet NEXUS 8700 FT−IR装置によって記録した。X線光電子スペクトル(XPS)はMg−Kα照射を使用したVG Scientific ESCALAB MK II 電子スペクトロメーターで測定し、結合エネルギーは試料中リガンドの炭素原子のC 1s結合エネルギーを284.5eVとして補正した。Nissinマグネチックスターラー(型式SW−R700)を使用した。
【0033】
溶液のpHは、HNO/HOの0.1M溶液(pH1〜3)、CHCOOH/CHCOONaの25mM溶液(pH4〜6)、NaHPO/KHPOの25mM溶液(pH7〜8)、およびNaOH/HOの0.1M溶液(pH9〜10)を使用して調整した。pH1.0〜11.0の範囲では、溶液のpHはガラス電極(TOA;GS−5015C)を備えたpHメーター(TOA;HM−5A)によって測定した。pD値は測定した値に0.4を加えて補正した(pD=pHメーター読み値+0.4)。二相媒体では、水相のpH値を適用する。
【0034】
[(NiIIL)(OH)(μ−D)RuII(η−CMe)](NO) [D−標識2](NO
アクア金属錯体[1](NO(125mg、0.2mmol)をpD 5のDO(5mL)に溶解した25mMのKDPO/KDPO溶液に加えた。D(0.1MPa)を23℃で溶液に通してバブリングして[D−標識2](NO)の暗赤色結晶を徐々に析出させた。Dのバブリング3時間後、結晶をろ過して分離した{アクア金属錯体[1](NOを基準として30%の分離収率}。混合物を1mLに濃縮して得られる暗赤色固体をろ過して採取し、真空乾燥した{収率:アクア金属錯体[1](NOを基準として80%}。ろ液のESI−MS分析によってピークがm/z544.2{相対強度(I)=m/z100〜2000の範囲で100%}で認められた。IR(cm−1、KBrディスク換算)1248(νNi−D−Ru)。
【0035】
[(NiL)Ru(η−CMe)](低原子価金属錯体[3])
ヒドリド金属錯体[2](NO)をpH4でHOに溶解し、Hガスを23℃で溶液に通してバブリングした。1時間後、溶媒を蒸発させて低原子価金属錯体[3]の赤色粉末を得、MALDI−TOF/TOF−MSMSおよびXPSによって分析した。MALDI−TOF/TOF−MS:m/z542.1(低原子価金属錯体[3]・+;I=m/z20〜2480の範囲で89%)。FT−IR(KBrディスクcm−1):2957(脂肪族C−H)、2924(脂肪族C−H)、2854(脂肪族C−H)、1720、1576(芳香族C=C)、1457(芳香族C=C)、1384(芳香族C=C)、1263、1197、1178、1150、1111、1072、1017、969、872、862、833、776、749、XPS:852.5eV(Ni 2p3/2領域)、279.3eV(Ru 3d5/2領域)。
【0036】
[(NiIIL)(OH)(μ−H)RuII(η−CMe)](ヒドリド金属錯体[4])
[方法A] アクア金属錯体[1](NO(125mg、0.20mmol)をpH10でHO(5mL)に溶解したNaPO・12HO(95mg、0.25mmol)溶液に加えた。Hを25℃で溶液に通してバブリングし、ヒドリド金属錯体[4]の暗赤色固体を徐々に析出させた。3時間後、結晶をろ過して採取し、真空乾燥した。収率:アクア金属錯体[1](NOを基準として30%。
[方法B] ヒドリド金属錯体[2](NO)(10.0mg、16.0μmol)をHOに加え、得られる溶液を0.001MのNaOH/HOでpH8に調整した。溶媒を蒸発させてヒドリド金属錯体[4]の暗赤色粉末を析出させた。この粉末をろ過して採取し、真空乾燥した。収率:ヒドリド金属錯体[2](NO)を基準として72%。ESI−MS(CHCN中)m/z543.2([4−OH];I=m/z100〜2000の範囲で100%)。FT−IR{HO中(pH8)、cm−1}:1742(Ni−H−Ru)、1552(芳香族C=C)、1509(芳香族C=C)、1461(芳香族C=C)、1384(芳香族C=C)、1309、1288、1259、1208、1110、1091、1065、1041、1018、999、970、946、XPS:853.9eV(Ni 2p3/2領域)、280.5eV(Ru 3d5/2領域)。
【0037】
ヒドリド金属錯体[2](NO)によって触媒されるH/D同位体交換反応の典型的方法。
下で3mLバイアルにヒドリド金属錯体[2](NO)を1.0μmolおよびスターラーバーを入れてセプタムキャップをした。バイアルにArでバブリングしたDOを1mL注入してから直ちにHガスを1mL取り除いた。ついでバイアルを60℃で1時間激しく撹拌した(5000rpm、Nissinマグネチックスターラー型式SW−R700)。バイアル内のガスは気密性シリンジでサンプリングしてGCによってH、HD、およびDガスを分析した。同一試験で得られたそれぞれの同位体比を平均した。同位体交換反応はアクア金属錯体[1]、ヒドリド金属錯体[2]、または低原子価金属錯体[3]が存在しないと起こらないことが確証された(ブランク試験)。DおよびHOを用いて実験する場合、その結果は同位体効果で期待される結果と同様であり、H/HD比はH/DO交換のD/HD比に匹敵する。
ヒドリド金属錯体[4]によって触媒されるカルボニル化合物の水素化の典型的方法
ベンズアルデヒド(50μmol)およびヒドリド金属錯体[4](0.63mg、1.0μmol)をpH2〜10でHO(2mL)に溶解した。溶液を60℃で0.1〜0.7MPaの圧力下、H下で撹拌した。1時間後、0℃に冷却して得られる混合物をH NMRによって分析した。水素化はアクア金属錯体[1]またはヒドリド金属錯体[4]が存在しないと起こらないことが確証された(ブランク試験)。
【0038】
酸性媒体(pH3〜6)におけるNi(μ−H)Ru錯体の挙動
Ni(μ−H)Ru錯体(ヒドリド金属錯体[2])およびD−標識2(下記構造式)を暗赤色の結晶として得て本試験に使用した。意外にも、ヒドリド金属錯体[2]は酸性媒体(pH>3)中で安定である。pHが約3以下で、ヒドリド金属錯体[2]は[Ru(η−CMe)(HO)](NOおよび未特定物質に分解される。ヒドリド金属錯体[2]の構造が酸性媒体(pD3〜6)中で維持されることがESI−MSおよびIRによって確証された。ヒドリド金属錯体[2]のヒドリドリガンドはプロトン特性を示し、pDが約3〜6の範囲のDO中でH/DとDとの交換が行われる(下記反応式[5])。図2にESI−MSで測定した60℃における15分間のpDによるH/D交換速度の結果を示し、約pD4で最高となる。pDが4〜6の範囲では、溶液のpDが低いほどH/D交換速度が速くなり、H/D交換はD濃度に依存している。
【0039】
【化25】

【0040】
酸性媒体においてD−標識2によって触媒される同位体交換
錯体D−標識2はHとDO(またはDとHO)の間の同位体交換を触媒する。HDおよびD(またはH)の発生をGCによって測定した。図3に60℃における1時間の同位体交換反応のpD依存性を示し、これは図2のH/D交換反応におけるpD依存性と類似している。
D−標識2によって触媒されるHとDOとの間(またはDとHOの間)の水素同位体交換の時間的変化によって、HDとD(またはH)が図4のように同時に生成されることが示され、このことは様々な種類のHaseによる水素同位体交換における時間依存性のHDとD(またはH)の発生と一致している。H(またはD)の消費は、3〜5半減期にわたって一次速度式に従った。この反応では、速度論的同位体効果{KIE=1.6、kobs(H)=1.03×10−4−1、およびkobs(D)=6.36×10−5−1}が観測された(図3)。KIEの存在は、律速段階にH−H(またはD−D)結合開裂が含まれるメカニズムを示している。同様な傾向は[NiFe]ヒドロゲナーゼでも認められている。
D−標識2以外でも、ヒドリド金属錯体[2]およびアクア金属錯体[1]が、HとDO(またはDとHO)との間の同位体交換反応を触媒する。アクア金属錯体[1]およびヒドリド金属錯体[2]によって触媒される同位体交換反応のpH依存性および時間的変化の結果は、D−標識2によって触媒される結果と類似している。
【0041】
低原子価金属錯体Ni(μ−S)Ru
酸性媒体(pH4〜6)におけるヒドリド金属錯体[2]とHとの反応によって低原子価のNi(μ−S)Ru錯体(低原子価金属錯体[3])が得られた。ヒドリド金属錯体[2](NO)をpH4.4でHOに溶解し、Hガスによって23℃でバブリングした。1時間後に溶媒を完全に蒸発させて低原子価金属錯体[3]の赤色粉末を得た。低原子価金属錯体[3]のMALDI−TOF/TOF−MSの結果からm/z542.1{相対強度(I)=m/z200〜1000の範囲で90%}でのシグナルが示された(図5A)。m/z542.1での包絡線は[3]・+(低原子価金属錯体[3]から、レーザー照射による光電子移動によって生成したラジカルイオン種を表す。)で算出された同位体分布とよく一致したアイソトポマーの特徴的分布を有している(図5Bおよび5C)。低原子価金属錯体[3]が塩基性媒体(pH7〜10)で生成されなかったことは重要である。
XPSでも低原子価金属錯体[3]の存在が示される。低原子価金属錯体[3]のNi 2p3/2(852.1eV)およびRu 3d5/2(279.3eV)の結合エネルギーは、Ni(II)およびRu(II)種を含むアクア金属錯体[1](NO(Ni 2p3/2:853.9eV、Ru 3d5/2:280.3eV)よりも低い。この低い結合エネルギーによって低原子価金属錯体[3]のNiおよびRu原子の電荷がともに+1であることが示される(図6Aおよび6B)。
【0042】
同位体交換反応のメカニズム
本発明者らは、下記反応式に示す同位体交換反応メカニズムを提唱する。ヒドリド金属錯体[2]のヒドリドリガンドがpD3〜6の範囲においてDO中でH/DとDとの交換を行ってD−標識2を生じる(図3)。D−標識2とHの反応は下記反応式Bに示すようにD−標識ジヒドリド種であるQ(HDヒドリド)を生じる可能性がある。QのDOにおけるH/DとDとの交換が生じると、二重D−標識ジヒドリド種R(DDヒドリド)が得られ、二電子還元錯体(低原子価金属錯体[3])を生成するためにHDの分子内還元的脱離と競合する。RからDの分子内還元的脱離も生じて低原子価金属錯体[3]を生成する。触媒サイクルを完成するため、D−標識2は低原子価金属錯体[3]のプロトン化によって再生成された。このことは低原子価金属錯体[3]がHとDO(またはDとHO)との間の同位体交換反応を触媒したことによっても確証された。この結果は、HDが最初に生成され、ついでDが生成されてHDが減少するというHDとDが連続して生成されるというよく知られているH/D同位体交換反応と全く異なっている。
【0043】
【化26】

【0044】
中性−塩基性媒体(pH7〜10)におけるNi(μ−H)Ru錯体の挙動
ヒドリド金属錯体[2]はpHが約7〜10の塩基性媒体中で可逆的に脱プロトン化されて、ヒドリド金属錯体[2]の脱プロトン種であるヒドリド金属錯体[4]となる(下記反応式[6])。ヒドリド金属錯体[4]はpDが約7〜10の範囲でD中においてヒドリドリガンドのH/DとDとの交換を行わないということは注目に値する。UV滴定実験によってヒドリド金属錯体[2]のpK値が6.5であることが示された(図7)。アクア金属錯体は塩基性媒体中で脱プロトン化してヒドロキソ錯体を生成することができることが知られている。また、ヒドリド金属錯体[2]はHO(pH7〜10)中でアクア金属錯体[1]をHと反応させて調製し、暗赤色の固体として単離した。
【0045】
【化27】

【0046】
塩基性媒体中でヒドリド金属錯体[4]によって触媒された水素化
ヒドリド金属錯体[4]はpHが約7以上でベンズアルデヒドなどのカルボニル化合物に対する還元能力を有している(下記反応式[7])。Hが存在しない化学量論的条件下{ヒドリド金属錯体[4]/カルボニル化合物=1/1}では、ベンズアルデヒドはヒドリド金属錯体[4]によってpH8、60℃において1時間でベンジルアルコールに還元される(収率:6%)。
【化28】

一方、触媒条件下(H=0.5MPa)では、ベンズアルデヒド(50当量)はpHが約8.0のHO中で60℃において12時間でヒドリド金属錯体[4]によって触媒されてベンジルアルコールに還元される(収率:98%、下記反応式[8])。H NMR実験によって標識された水素原子(D)は、Dを水素化の水素供与体として使用する場合にカルボニル化合物に取り込まれることが示された。本発明者らの知る限り、これはM(μ−S)M(M=金属イオン)錯体によって触媒される水性媒体中における基質の水素化を示す最初の事例である。
【0047】
【化29】

アルデヒド水素化のTOF(「Turnover Frequency」の略語で、TON(= 生成物のモル数/触媒のモル数)の値を反応時間で割ったものであり、「一定時間内で、何回触媒サイクルが回ったか」を示す数値(h-1)を意味する)は溶液のpH、反応温度、およびHの圧力に依存している。図8にN下で60℃において15分間でヒドリド金属錯体[4]によってo−フルオロベンズアルデヒドと合成されるo−フルオロベンジルアルコールの収率におけるpH依存性の分析結果を示す。これによってN下におけるo−フルオロベンジルアルデヒドの還元におけるpH依存性は、H(0.5MPa)下におけるo−フルオロベンズアルデヒドの触媒による還元と類似していることが確証された。本発明において試験したアルデヒドの水素化速度は、pHが約7〜10の範囲で最大となることが示される。そのためヒドリド金属錯体[4]によるo−フルオロベンズアルデヒド水素化のTOFは、ヒドリド金属錯体[2]によるTOFよりも有意に高い。pHが約6よりも低いときの触媒反応における低下は、ヒドリド金属錯体[2]のヒドリドリガンドの低い還元能によるものである。
【0048】
図9にグリオキシル酸の水素化におけるTOFの温度依存性を示す。移動水素化のTOFは60℃以上で劇的に増加する。ヒドリド金属錯体[4]はAr下でも80℃以上ではゆっくりと分解するため、触媒反応は60℃で実施した。ヒドリド金属錯体[4]は還元可能なアルデヒドが存在しない場合、pHが約7〜10のAr下では70℃以下で極めて安定であることがESI−MSによって確証された。
さらに、図10に60℃におけるpH8での水素化に使用されたo−フルオロベンズアルデヒドの濃度に依存するTOFを示す。本発明において試験したアルデヒド水素化のTOFはヒドリド金属錯体[4]/アルデヒドの比が1/50で飽和する。
図11に示すように、o−フルオロベンズアルデヒド水素化のTOFは0.1から0.7MPaの範囲のH圧力に依存性があり、0.5MPaで飽和する。
図12に最適条件下(pH8、60℃、Hが0.5MPa、ヒドリド金属錯体[4]/アルデヒドの比が1/50)におけるo−フルオロベンズアルデヒド水素化のターンオーバー数(=TON、生成物のモル数/触媒のモル数)の時間的変化を示す。
さらに、ヒドリド金属錯体[4]は少なくとも3回再使用できることが確証された。すなわち、ヒドリド金属錯体[4]は徐々に不活性化されるが、反応後に基質を追加することによって触媒サイクルが再開される(図13)。
【0049】
表2に、ヒドリド金属錯体[4]によって最適条件下で触媒されるアルデヒド水素化をまとめて示す。水溶性アルデヒド(グリオキシル酸)は非水溶性アルデヒド(ベンズアルデヒドおよびo−フルオロベンズアルデヒド)よりも非常に効率的に相当するアルコールに転化される。電子求引性基を有するベンズアルデヒド(o−フルオロベンズアルデヒド)の60℃におけるpH8での水素化のTOFは、ベンズアルデヒドの水素化のTOFよりも高い(表2)。
【表2】

【0050】
カルボニル化合物の水素化メカニズム
ヒドリド金属錯体[4]によって触媒される水溶性および非水溶性のアルデヒドの水素化における触媒サイクルを下記に示す。ヒドリド金属錯体[4]はアルデヒドと反応して相当するアルコールおよびアクア金属錯体[1]を生じる。ヒドリド金属錯体[4]はpH8でアクア金属錯体[1]とHの反応によって再生成される。HOリガンドは極性溶媒中で不均一なH活性化を加速してHを放出することが知られている。
【0051】
【化30】

本発明者らは、ヒドリド金属錯体[2]によって触媒されるpH依存性の同位体交換反応(pH3〜6)およびヒドリド金属錯体[4]によって触媒される水素化(pH7〜10)に成功した。同位体交換反応におけるHDおよびD(またはH)の発生は、[NiFe]ヒドロゲナーゼと同様に同時でありpH依存性がある。低原子価Ni(μ−S)Ru錯体が初めて酸性媒体中でヒドリド金属錯体[2]とHとの反応によって分離された。
【0052】
また、本発明者らは、温和な条件(常温、常圧、水中)のもとでも、次期エネルギーである「水素」から電子を取り出す方法に成功した。得られた電子は、例えば燃料電池などに好適に利用することができる。
即ち、本発明の一実施形態は、水素分子(H2)に、アクア金属錯体[1](「M」として表す)を作用させ、該水素分子をヘテロリティックに活性化し、下記反応式で表されるように、ヒドリド金属錯体[2](「MH」として表す)とプロトン(H)とを生成する工程A、
2H→2H+2[MH]
前記ヒドリド金属錯体[2]の作用により、下記反応式で表されるように、前記プロトン(H)と該ヒドリド金属錯体[2]とから水素を発生させるとともに、低原子価金属錯体[3](「M+2e」として表す)に電子を保持させる工程B、
2H+2[MH]→2H+[2M+2e]+H、および
下記反応式で表されるように、低原子価金属錯体[3]から電子を放出させる工程C、
2H+[2M+2e]+H→2H+2M+2e+H、を有する水素分子から電子を取り出す方法である。
これらの反応工程をまとめると以下のようになる。
【0053】
【化31】

【0054】
なお、以上では、Ni−Ru金属錯体について説明してきたが、下記構造式(4)で表されるヒドリド金属錯体の代わりに、下記構造式(6)で表される新規なヒドリド金属錯体を用いることもできる。
【化32】

また、本発明では、下記構造式(3)で表される低原子価金属錯体の代わりに、下記構造式(5)で表される新規な低原子価金属錯体を用いることもできる。
【化33】

【0055】
水素分子から電子を抽出する反応のメカニズム
上記構造式(3)の低原子価金属錯体を経由し、水素発生を伴う水素分子の電子抽出反応のメカニズムは以下のように表される。
【化34】

【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
Science 2007, 316, 585, Ogo et al.記載の方法により合成した下記構造式(1)のアクア金属錯体を含むpH 10のリン酸三ナトリウム水溶液(25 mM)に、23℃で水素ガス(0.1 MPa)を3時間吸収させた。生成した暗赤色の結晶を濾別し、真空乾燥し、下記構造式(4)のヒドリド金属錯体を下記構造式(1)のアクア金属錯体に対する収率30%で得た。
ESI-MS (in CH3CN) m/z543.2 ([4 - OH]+; I = 100% in the range of m/z100-2000). FT-IR {in H2O (pH 8), cm−1}: 1742 (Ni-H-Ru), 1552 (aromatic C=C), 1509 (aromatic C=C), 1461 (aromatic C=C), 1384 (aromatic C=C), 1309, 1288, 1259, 1208, 1110, 1091, 1065, 1041, 1018, 999, 970, 946. XPS: 853.9 eV (Ni 2p3/2 region), 280.5 eV (Ru 3d5/2 region).
【化35】

【0058】
(実施例2)
Science 2007, 316, 585, Ogo et al.記載の方法により合成した下記構造式(2)のヒドリド金属錯体を含むpH 4の酢酸バッファー水溶液に、23℃で水素ガス(0.1 MPa)を1時間吸収させた後、ジクロロメタンで抽出し、溶媒を減圧留去した。生成した赤色の固体を真空乾燥し、下記構造式(3)の低原子価金属錯体を下記構造式(2)のヒドリド金属錯体に対する収率77%で得た。
MALDI-TOF/TOF-MS: m/z 542.1 ([3]・+; I = 89% in the range of m/z 20-2480). FT-IR (KBr disk, cm−1): 2957 (aliphatic C−H), 2924 (aliphatic C−H), 2854 (aliphatic C−H), 1720, 1576 (aromatic C=C), 1457 (aromatic C=C), 1384 (aromatic C=C), 1263, 1197, 1178, 1150, 1111, 1072, 1017, 969, 872, 862, 833, 776, 749. XPS: 852.6 eV (Ni 2p3/2 region), 279.5 eV (Ru 3d5/2 region).
【化36】

【0059】
(実施例3)
Science 2007, 316, 585, Ogo et al.記載の方法により合成した下記構造式(1)のアクア金属錯体を含むpD 5の25 mMリン酸バッファーのD2O溶液に、23℃でD2ガス(0.1 MPa)を3時間吸収させた。生成した暗赤色の結晶を濾別し、真空乾燥し、下記構造式(7)の金属錯体を下記構造式(1)のアクア金属錯体に対する収率30%で得た。
ESI-MS analysis of the filtrate has shown a prominent signal at m/z 544.2 {relative intensity (I) = 100% in the range of m/z100-2000}. IR (cm-1, as a KBr disk) 1248 (νNi−D−Ru).
【化37】

【0060】
(実施例4)
Organometallics 2001, 20, 4903-4910 記載の方法により合成したジアクア[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4-テトラメチル-5-[(2-ピリジニル-κN)メチル]-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]イリジウム(III) 硫酸塩 24.1 mg (45.0μmol) とヘキサフルオロりん酸アンモニウム 73.4 mg (450μmol) を溶かした水溶液 (3 mL) に、20℃、pH 2.8 で水素ガス (0.1 MPa) を1時間通じると、緑色の固体が徐々に生成した。得られた固体を濾別し、ジクロロメタンで再結晶すると、緑色結晶のμ-ヒドリド-μ-ヒドロキソ-ビス-[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4-テトラメチル-5-[(2-ピリジニル-κN)メチル]-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]イリジウム(III)ヘキサフルオロりん酸塩を、ジアクア[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4-テトラメチル-5-[(2-ピリジニル-κN)メチル]-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]イリジウム(III) 硫酸塩に対する収率 30% で得た。
1H NMR (acetone-d6, 内部標準 tetramethylsilane):δ-13.47 (s, μ-H, 1H), 0.69 {s, C5(CH3)4, 6H}, 1.91 {s, C5(CH3)4, 6H}, 1.99 {s, C5(CH3)4, 6H}, 2.17 {s, C5(CH3)4, 6H}, 4.25 (s, -CH2-, 4H), 7.71 (t, 3JH,H= 6.0 Hz, py, 2H), 7.96 (d, 3JH,H= 7.8 Hz, py, 2H), 8.17 (t, 3JH,H= 7.8 Hz, py, 2H), 9.18 (d, 3JH,H= 6.0 Hz, py, 2H).
ESI-MS (MeOH): m/z 825.2 {[M-H]+}.
元素分析 C30H38F12Ir2N2O1P2 計算値:C 32.26, H 3.43, N 2.51%
分析値:C 32.18, H 3.33, N 2.47%.
【0061】
(実施例5)
Organometallics 2001, 20, 4903-4910 記載の方法により合成したジアクア[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4-テトラメチル-5-[(2-ピリジニル-κN)メチル]-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]イリジウム(III) 硫酸塩 24.1 mg (45.0μmol) の水溶液 (3 mL) に、20℃、pH 2.8 で水素ガス (0.1 MPa) を1.5時間通じ、テトラフェニルホウ酸ナトリウム 30.8 mg (90.1μmol) を加えると、橙色固体が析出した。得られた橙色固体をジクロロメタン/テトラヒドロフラン/ヘキサンで再結晶すると、ビス-[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4-テトラメチル-5-[(2-ピリジニル-κN)メチル]-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]イリジウム(II)テトラフェニルホウ酸塩が、ジアクア[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4-テトラメチル-5-[(2-ピリジニル-κN)メチル]-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]イリジウム(III) 硫酸塩に対する収率 13% で得られた。
1H NMR (acetone-d6, 内部標準 tetramethylsilane): δ0.85 {s, C5(CH3)4, 6H}, 1.76 {s, C5(CH3)4, 6H}, 1.87 {s, C5(CH3)4, 6H}, 1.95 {s, C5(CH3)4, 6H}, 4.20 (d, 2JH,H= 16.5 Hz, -CH2-, 2H), 4.52 (d, 2JH,H= 16.5 Hz, -CH2-, 2H), 6.78-7.38 (m, phenyl group of BPh4, 40H), 7.58 (t, 3JH,H = 6.7 Hz, py, 2H), 7.83 (d, 3JH,H = 7.6 Hz, py, 2H), 8.08 (t, 3JH,H= 6.7 Hz, py, 2H), 8.95 (d, 3JH,H= 7.7 Hz, py, 2H).
MADLI-TOF-MS: m/z 808.2 {[M]・+}.
【0062】
(実施例6)
実施例3の方法により合成した下記構造式(7)の金属錯体1 μmolを含むpD 4のD2O水溶液に、23℃で84 μmolの水素ガス(0.1 MPa)を1時間反応させた。反応開始後1時間でHDガスが3 μmol、D2ガスが29 μmol得られた。
【化38】

【0063】
(実施例7)
実施例4で得られたμ-ヒドリド-μ-ヒドロキソ-ビス-[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4-テトラメチル-5-[(2-ピリジニル-κN)メチル]-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]イリジウム(III)ヘキサフルオロりん酸塩を D2O に溶かし、H2 を吹き込むと、HD 及び D2 が発生した。
【0064】
(実施例8)
反応基質としてグリオキシル酸50 μmolを含むpH 8の水溶液に、実施例1の方法により合成した下記構造式(4)のヒドリド金属錯体1 μmolを加え、反応温度60℃で水素ガス(0.5 MPa)を1時間反応させた。反応開始後1時間でグリコール酸が24μmol得られた。
【化39】

【0065】
(実施例9〜11)
実施例8において、反応基質および反応温度を表3に示す条件に変更した以外は実施例8と同様に実施した。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
以下の実施例12〜17では、抽出した電子により、銅(II)イオンは金属銅(Cu)に還元されることを確認した。
【0068】
(実施例12)
上記構造式(3)の低原子価金属錯体(10.8 mg, 20 μmol)のアセトニトリル溶液(2 mL)に、23℃でトリフルオロメタンスルホン酸銅(7.2 mg, 20 μmol)を加えると、上記構造式(1)のアクア金属錯体と金属銅(Cu)が生成した。トリフルオロメタンスルホン酸銅に対する低原子価金属錯体の各当量数(0、0.5、1.0、1.5)における各成分の量を下記表4に示し、更に、各当量数と各成分の収率との関係を図14に示す。ただし、図14における%(収率)=(生成した金属銅のモル数)/{構造式(3)の低原子価金属錯体のモル数}×100である。
【0069】
【表4】

【0070】
(実施例13)
上記構造式(1)のアクア金属錯体(3.4 mg, 5.0 μmol)を含むpD 4.0の25 mM酢酸バッファー(CH3COOD/CH3COONa)のD2O溶液(1 mmol)に、硫酸銅五水和物(1.25 mg, 5 μmol)を加え、23℃でH2ガス(47.5μmol)を1時間反応させた。反応が進行すると、金属銅(Cu)の生成、H2ガスの消費、D2ガスの発生が観測された。各経過時間(0分、20分、40分、60分)における各成分の量を下記表5および図15に示す。ただし、図15における|△μmol|=|{経過時間0分における金属銅(Cu)のモル数}-{ある経過時間における金属銅(Cu)のモル数}|、|△μmol|=|(経過時間0分におけるH2ガスのモル数)-(ある経過時間におけるH2ガスのモル数)|、|△μmol|=|(経過時間0分におけるD2ガスのモル数)-(ある経過時間におけるD2ガスのモル数)|である。
【0071】
【表5】

【0072】
(実施例14)
上記構造式(1)のアクア金属錯体(3.4 mg, 5.0 μmol)を含むpH 4.0の25 mM酢酸バッファー(CH3COOH/CH3COONa)のH2O溶液(1 mL)に、硫酸銅五水和物(250 mg, 1 mmol)を加え、50℃でH2ガス(0.8 MPa)を反応させた。反応が進行すると、金属銅(Cu)の生成が観測された。各経過時間(0分、30分、60分、90分、120分)における金属銅の量を下記表6に示し、更に、経過時間とTON(ターンオーバーナンバー)との関係を図16に示す。ただし、表6および図16におけるTON(ターンオーバーナンバー)=(生成した金属銅のモル数)/{構造式(1)のアクア金属錯体のモル数}である。
【0073】
【表6】

【0074】
(実施例15)
上記構造式(1)のアクア金属錯体(17 mg, 25 μmol)を含むpH 1-10.0のH2O溶液(5 mmol)に、硫酸銅五水和物(6.2 mg, 25 μmol)を加え、23℃でH2ガス(0.1 MPa)を1時間反応させた。反応が進行すると、金属銅(Cu)の生成が観測された。ただし、溶液のpHは、HNO3/H2Oの0.1M溶液(pH 1-3)、CH3COOH/CH3COONaの25 mM溶液(pH 4-6)、Na2HPO4/KH2PO4の25 mM溶液(pH 7-8)、およびNaOH/H2Oの0.1M溶液(pH 9-10)を使用して調整した。各pH(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10)における金属銅の量を下記表7に示し、更に、pHと収率との関係を図17に示す。ただし、表7および図17における%(収率)=(生成した金属銅のモル数)/{構造式(1)のアクア金属錯体のモル数}である。
【0075】
【表7】

【0076】
(実施例16)
上記構造式(1)のアクア金属錯体(3.4 mg, 5.0 μmol)を含むpH 4.0の25 mM酢酸バッファー(CH3COOH/CH3COONa)のH2O溶液(1 mL)に、硫酸銅五水和物(250 mg, 1 mmol)を加え、23-50℃でH2ガス(0.8 MPa)を1時間反応させた。反応が進行すると、金属銅(Cu0)の生成が観測された。各温度(23℃、30℃、40℃、50℃)における金属銅の量を下記表8に示し、更に、温度とTON(ターンオーバーナンバー)との関係を図18に示す。ただし、表8および図18におけるTON(ターンオーバーナンバー)=(生成した金属銅のモル数)/{構造式(1)のアクア金属錯体のモル数}である。
【0077】
【表8】

【0078】
(実施例17)
上記構造式(1)のアクア金属錯体(3.4 mg, 5.0 μmol)を含むpH 4.0の25 mM酢酸バッファー(CH3COOH/CH3COONa)のH2O溶液(1 mL)に、硫酸銅五水和物(250 mg, 1 mmol)を加え、50℃でH2ガス(0.1-0.8 MPa)を1時間反応させた。反応が進行すると、金属銅(Cu)の生成が観測された。各水素圧(0 MPa、0.1 MPa、0.4 MPa、0.6 MPa、0.8 MPa)における金属銅の量を下記表9に示し、更に、水素圧とTON(ターンオーバーナンバー)との関係を図19に示す。ただし、表9および図19において、TON(ターンオーバーナンバー)=(生成した金属銅のモル数)/{構造式(1)のアクア金属錯体のモル数}であり、図19におけるP(H2)は水素圧を示す。
【0079】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、Ni(μ−H)Ru錯体によって触媒されるpH依存反応を図示したものである。
【図2】図2は、60℃におけるDO(1mL、pD1〜10)中のヒドリド金属錯体[2](NO)のヒドリドリガンド(1.0μmol)のpD依存性のH/D交換を示すグラフである。
【図3】図3は、60℃におけるDO(1mL)中での1時間のヒドリド金属錯体[2](NO)(1.0μmol)とH(2.0cm、84μmol、0.1MPa)の反応におけるHDおよびDのpD依存性の発生を示すグラフである。
【図4】図4Aは、60℃におけるDO(1mL、pD4.0)中での[D−標識2](NO)(1.0μmol)とH(2.0cm、84μmol、0.1MPa)との反応におけるHDおよびD発生をGCで測定した時間的変化を示すグラフであり、図4Bは、H消費(黒丸)およびD消費(白丸)の一次速度式を示すグラフである。
【図5】図5Aは、低原子価金属錯体[3]のMALDI−TOF/TOFマススペクトルを示すグラフである(ジトラノールをマトリックスとして使用。m/z542.1でのシグナルは[3]・+に相当する。m/z579.1でのシグナル()は[(NiIIL)RuIICl(η−CMe)]に相当する)。図5Bは、m/z542.1でのシグナルを示す。図5Cは、[3]・+の算出による同位体分布を示す。
【図6】図6Aは、低原子価金属錯体[3]におけるNi 2p領域のXPSを示すグラフである(破線は、低原子価金属錯体[3]のスペクトルのガウス解析)。図6Bは、低原子価金属錯体[3]におけるRu 3d領域のXPSを示すグラフである(破線は、低原子価金属錯体[3]のスペクトルのガウス解析)。
【図7】図7は、pH5.5〜9.5の範囲におけるヒドリド金属錯体[2](4.7×10−5M)のpH依存性の紫外可視スペクトルを示すグラフである。差し込み図はpHに対する吸収(l=296nm)を示す。実験は23℃でヒドリド金属錯体[2]を0.1MのNaOH/HOで滴定して行った。
【図8】図8は、N下の60℃で15分間での水中(1mL)におけるo−フルオロベンズアルデヒド(160μmol)とヒドリド金属錯体[4](NO(1.6μmol)との反応によるo−フルオロベンジルアルコールのpH依存性の収率を示すグラフである。
【図9】図9は、o−フルオロベンズアルデヒドの水素化におけるTOFの温度依存性の変動を示すグラフである。
【図10】図10は、o−フルオロベンズアルデヒドの水素化のTOFの基質モル数依存性を示すグラフである。
【図11】図11は、o−フルオロベンズアルデヒドの水素化のTOFのH圧力依存性を示すグラフである。
【図12】図12は、o−フルオロベンズアルデヒドの水素化におけるTONの時間的変化を示すグラフである。
【図13】図13は、60℃での水中におけるヒドリド金属錯体[4]によるo−フルオロベンズアルデヒドの触媒水素化の再開を示すグラフである(初期条件:ヒドリド金属錯体[4](5μmol)、o−フルオロベンズアルデヒド(250μmol)、H(0.5MPa)、HO(2mL、pH8)、60℃)。
【図14】図14は、実施例12の実験結果を示すグラフであり、各当量数と各成分の収率との関係を示す。
【図15】図15は、実施例13の実験結果を示すグラフであり、経過時間と各成分の量との関係を示す。
【図16】図16は、実施例14の実験結果を示すグラフであり、経過時間とTON(ターンオーバーナンバー)との関係を示す。
【図17】図17は、実施例15の実験結果を示すグラフであり、pHと収率との関係を示す。
【図18】図18は、実施例16の実験結果を示すグラフであり、温度とTON(ターンオーバーナンバー)との関係を示す。
【図19】図19は、実施例17の実験結果を示すグラフであり、水素圧とTON(ターンオーバーナンバー)との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(4)または(6)で表されるヒドリド金属錯体。
【化1】

【請求項2】
下記構造式(3)または(5)で表される低原子価金属錯体。
【化2】

【請求項3】
水素分子(H2)に、下記構造式(1)で表されるアクア金属錯体(M)を作用させ、該水素分子をヘテロリティックに活性化し、下記反応式で表されるように、下記構造式(2)で表されるヒドリド金属錯体(MH)とプロトン(H)とを生成する工程A、
2H→2H+2[MH]
前記ヒドリド金属錯体の作用により、下記反応式で表されるように、前記プロトン(H)と該ヒドリド金属錯体とから水素を発生させるとともに、下記構造式(3)で表される低原子価金属錯体(M+2e)に電子を保持させる工程B、
2H+2[MH]→2H+[2M+2e]+H、および
下記反応式で表されるように、前記構造式(3)で表される低原子価金属錯体(M+2e)から電子を放出させる工程C、
2H+[2M+2e]+H→2H+2M+2e+H、を有する水素分子から電子を取り出す方法。
【化3】

【請求項4】
前記工程Bにおいて、前記構造式(2)で表されるヒドリド金属錯体を、pH6.5から10の条件下で脱プロトン化させ、下記構造式(4)で表されるヒドリド金属錯体とし、このヒドリド金属錯体と前記プロトン(H)から水素を発生させるとともに、前記構造式(3)で表される低原子価金属錯体(M+2e)に電子を保持させる、請求項3に記載の水素分子から電子を取り出す方法。
【化4】

【請求項5】
前記工程Bにおいて、前記構造式(2)で表されるヒドリド金属錯体を、pH3から6.5の条件下で重水素化反応させ、下記構造式(7)で表される金属錯体(Dは、重水素原子を表す。)とし、この金属錯体と前記プロトン(H)から水素を発生させるとともに、前記構造式(3)で表される低原子価金属錯体(M+2e)に電子を保持させる、請求項3に記載の水素分子から電子を取り出す方法。
【化5】

【請求項6】
温度が0〜100℃、水素の圧力が0.1〜1MPaの条件下に反応を行う、請求項3から5のいずれかに記載の水素分子から電子を取り出す方法。
【請求項7】
pH6.5から10の条件下、請求項1に記載の構造式(4)または(6)で表されるヒドリド金属錯体を用いて、基質を水素化する方法。
【請求項8】
前記基質が、グリオキシル酸および置換基を有していてもよいベンズアルデヒドからなる群より選択される、請求項7に記載の基質を水素化する方法。
【請求項9】
温度が0〜100℃、水素の圧力が0.1〜1MPaの条件下に反応を行う、請求項7または8に記載の基質を水素化する方法。
【請求項10】
反応中、前記構造式(4)または(6)で表されるヒドリド金属錯体が、下記構造式(3)または(5)で表される低原子価金属錯体へと可逆的に変化する、請求項7から9のいずれかに記載の基質を水素化する方法。
【化6】

【請求項11】
pH3から6.5の条件下、下記構造式(7)で表される金属錯体(Dは、重水素原子を表す。)を用いた同位体交換反応により、水素から重水素あるいは重水素から水素を製造する方法。
【化7】

【請求項12】
温度が0〜100℃、水素の圧力が0.1〜1MPaの条件下に反応を行う、請求項11に記載の水素から重水素あるいは重水素から水素を製造する方法。
【請求項13】
反応中、前記構造式(7)で表される金属錯体が、下記構造式(3)で表される低原子価金属錯体へと可逆的に変化する、請求項11または12に記載の水素から重水素あるいは重水素から水素を製造する方法。
【化8】

【請求項14】
下記構造式(2)で表されるヒドリド金属錯体を、pH6.5から10の条件下で脱プロトン化させる工程を有する、下記構造式(4)で表されるヒドリド金属錯体の製造方法。
【化9】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−235054(P2009−235054A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172414(P2008−172414)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】