説明

ヒドロキシ化合物及びそれを含む化粧料

【課題】適度な水酸基価を有し、かつ化粧料に配合すると優れた保湿性及びエモリエント性を付与し得るばかりではなく、とりわけ、その優れた光沢を保持し続ける性質を有する新規なヒドロキシ化合物、及び該ヒドロキシ化合物を含む化粧料を提供する。
【解決手段】2価以上のアルコールと1価のカルボン酸とを反応し、次いで、得られたエステル化合物とダイマー酸とを反応して得られるヒドロキシ化合物において、2価以上のアルコールがジグリセリンであり、1価のカルボン酸が炭素数5〜10個のカルボン酸であり、かつ該反応におけるジグリセリン、炭素数5〜10個のカルボン酸及びダイマー酸のモル等量比が1.0:1.5〜1.6:0.4〜0.6であることを特徴とするヒドロキシ化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2価以上のアルコール、1価のカルボン酸及びダイマー酸を反応して得られるヒドロキシ化合物、及び該ヒドロキシ化合物を含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料等に使用する油性基材として、2価以上のアルコール、1価のカルボン酸及びダイマー酸を反応して得られるヒドロキシ化合物が知られている。
【0003】
例えば、ダイマー酸と2価以上のアルコールとのオリゴマーエステルを、1価のアルコール又は/及び1価のカルボン酸でエステル化したエステル(a)、若しくは、ダイマージオールと2価以上のカルボン酸とのオリゴマーオステルを、1価のアルコール又は/及び1価のカルボン酸でエステル化したエステル(b)を含有する油性基剤が知られている(特許文献1)。ここで、エステル(a)の製造方法として、ダイマー酸と2価以上のアルコールとのオリゴマーエステルを得、このオリゴマーエステルのカルボキシル基又は/及び水酸基と、1価のアルコール又は/及び1価のカルボン酸でエステル化させる方法、並びにダイマー酸、2価以上のアルコール、及び1価のアルコール又は/及び1価のカルボン酸を一度にエステル化させる方法が開示されている。エステル(b)の製造方法として、ダイマージオールと2価以上のカルボン酸とのオリゴマーオステルを得、このオリゴマーエステルのカルボキシル基又は/及び水酸基と、1価のアルコール又は/及び1価のカルボン酸をエステル化させる方法、並びにダイマージオール、2価以上のカルボン酸、及び1価のアルコール又は/及び1価のカルボン酸を一度にエステル化させる方法が開示されている。
【0004】
ポリグリセリン、ダイマー酸、並びに飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸をエステル化反応して得た混合脂肪酸エステルを配合する化粧料が開示されている(特許文献2)。実施例においては、ジグリセリン、ダイマー酸並びにカルボン酸を同時に反応器に仕込んでエステル化している(実施例1及び2)。
【0005】
しかし、これらの特許文献1及び2により得られたエステル化合物は、水酸基価が著しく低く、かつ保湿性、エモリエント性及び光沢保持性に乏しいと言う欠点を有していた。
【0006】
該欠点を解決すべく、本出願人は、2価以上のアルコール、1価のカルボン酸及びダイマー酸を反応して得られるヒドロキシ化合物を含有する化粧料において、ヒドロキシ化合物が、ジグリセリンとイソステアリン酸とを反応し、次いで、得られたエステル化合物とダイマー酸とを反応して得られ、かつ該反応におけるジグリセリン、イソステアリン酸及びダイマー酸のモル等量比が1.0:1.4〜1.6:0.5〜0.8であることを特徴とする化粧料を発明した(特許文献3)。該発明により、特許文献1及び2により得られたエステル化合物が有する水酸基価が著しく低く、かつ保湿性、エモリエント性に乏しいと言う欠点を解決することはできた。しかし、化粧料として使用した際、化粧料本来の光沢が失われると言う点を解決するには至らなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−256515号公報
【特許文献2】特開2005−132729号公報
【特許文献3】国際公開第2006/095486号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、適度な水酸基価を有し、かつ化粧料に配合すると優れた保湿性及びエモリエント性を付与し得るばかりではなく、とりわけ、その優れた光沢を保持し続ける性質を有する新規なヒドロキシ化合物、及び該ヒドロキシ化合物を含む化粧料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記特許文献1〜3には、2価以上のアルコール、1価のカルボン酸及びダイマー酸を反応させて得られるヒドロキシ化合物が開示されている。これらの発明は、化粧料として使用した時に、安全性、安定性、光沢(つや)、感触(油性感等)、抱水性(エモリエント性、保湿性等)、匂い、顔料分散性、相溶性に優れたヒドロキシ化合物を得るものであり、これらの発明により、これら性質は少なからず改善されてきた。しかし、本発明者らは、これらのヒドロキシ化合物を化粧料として使用したとき、その光沢を持続できないと言う欠点があることに気が付いた。そして、そのような欠点が如何なる理由で生ずるのかを種々検討した結果、光沢の喪失は、空気中の湿気及び水分により、とりわけ、リップスティック及びリップグロスとして使用したとき、唾液によりその光沢が失われると言うことを見出した。そこで、本発明者らは、更に検討を重ねた結果、2価以上のアルコール、1価のカルボン酸及びダイマー酸を反応させる順序として、2価以上のアルコールと1価のカルボン酸とを反応し、次いで、得られたエステル化合物とダイマー酸とを反応させる順序を選び、かつ2価以上のアルコールとしてジグリセリンを選び、1価のカルボン酸として炭素数5〜10個のカルボン酸、好ましくはイソノナン酸を選び、加えて、ジグリセリン、炭素数5〜10個のカルボン酸及びダイマー酸を所定のモル等量比にして反応せしめれば、得られたヒドロキシ化合物が優れた光沢保持性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)2価以上のアルコールと1価のカルボン酸とを反応し、次いで、得られたエステル化合物とダイマー酸とを反応して得られるヒドロキシ化合物において、2価以上のアルコールがジグリセリンであり、1価のカルボン酸が炭素数5〜10個のカルボン酸であり、かつ該反応におけるジグリセリン、炭素数5〜10個のカルボン酸及びダイマー酸のモル等量比が1.0:1.5〜1.6:0.4〜0.6であることを特徴とするヒドロキシ化合物である。
【0011】
好ましい態様として、
(2)1価のカルボン酸が炭素数9〜10個のカルボン酸であるところの上記(1)記載のヒドロキシ化合物、
(3)1価のカルボン酸がイソノナン酸であるところの上記(1)記載のヒドロキシ化合物、
(4)ジグリセリン、炭素数5〜10個のカルボン酸及びダイマー酸のモル等量比が1.0:1.5〜1.6:0.5〜0.6であるところの上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物、
(5)水酸基価が、90〜160であるところの上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物、
(6)水酸基価が、100〜150であるところの上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物、
(7)粘度(60℃)が、900〜3,000Pa・sであるところの上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物、
(8)粘度(60℃)が、1,000〜2,600Pa・sであるところの上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物、
(9)数平均分子量が、700〜5,000であるところの上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物、
(10)数平均分子量が、720〜4,400であるところの上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物、
(11)抱水性が、30〜100%であるところの上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物、
(12)抱水性が、40〜90%であるところの上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物、
(13)上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物を含む化粧料、
(14)上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物を0.1〜80質量%含む化粧料、
(15)上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載のヒドロキシ化合物を0.5〜70質量%含む化粧料、
(16)ヘアトリートメント、ファンデーション、アイシャドウ、リップグロス又はリップスティック用の上記(13)〜(15)のいずれか一つに記載の化粧料
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒドロキシ化合物は、従来のヒドロキシ化合物では得られなかった化粧料としての光沢持続性、即ち、空気中の湿気及び水分に触れても、あるいは唾液に触れてもその優れた光沢を保持し続けると言う特異な効果を有する。加えて、従来のヒドロキシ化合物が有する適度な水酸基価及び抱水性を有し、かつ化粧料に配合すると、優れた油性感、保湿性及びエモリエント性を付与し得るばかりではなく、塗りやすさ、皮膚安全性及び保存安定性をも付与し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のヒドロキシ化合物の製造に使用する1価のカルボン酸は、炭素数5〜10個のカルボン酸であり、好ましくは炭素数9〜10個のカルボン酸である。これらのカルボン酸として、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、及びこれらの異性体が挙げられる。これらのうち、好ましくはネオペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸が使用され、更に好ましくはイソノナン酸、ネオデカン酸が使用され、最も好ましくはイソノナン酸が使用される。該炭素数が上記下限未満では、臭い及び皮膚安全性に劣ると共に、ヒドロキシ化合物の抱水性が著しく低下して、化粧料としての保湿性が悪くなる。上記上限を超えては、得られたヒドロキシ化合物の水と接触した時の光沢性が著しく低下して、化粧料としての光沢保持性も著しく悪くなる。
【0014】
ジグリセリン及びダイマー酸はいずれも公知の物質であり、市販品を使用することができる。ジグリセリンとして、例えば、阪本薬品工業株式会社製ジグリセリン801(商標)、SOLVAY社製DIGLYCEROL(商標)を使用することができる。ダイマー酸としては、例えば、上記の特許文献1〜3に記載されたものを使用することができる。市販品として、例えば、クローダ社製PRIPOL1009(商標)、コグニス社製Empol 1062、Empol 1008(いずれも商標)、アリゾナケミカル社製Unidyme 14、Unidyme 14R(いずれも商標)を挙げることができる。ここで、ダイマー酸とは、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸をDiels Alder反応で2分子重合した環状の2塩基酸である。上記市販のダイマー酸は、水添した後蒸留精製したもので、水添ダイマー酸とも呼ばれる。
【0015】
本発明において、ジグリセリンと炭素数5〜10個のカルボン酸とは、1.0:1.5〜1.6の比率(モル当量)で使用される。炭素数5〜10個のカルボン酸の比率が上記範囲外では、ヒドロキシ化合物の水と接触した時の光沢性が著しく悪くなる。また、ジグリセリンとダイマー酸とは、1.0:0.4〜0.6、好ましくは1.0:0.5〜0.6の比率(モル当量)で使用される。ダイマー酸の比率が上記下限未満では、ヒドロキシ化合物の重合度が上がらず粘性の低いオリゴマーとなり、上記上限を超えては、ヒドロキシ化合物の重合度の上昇が著しく、反応容器中でゲル化し、反応を完結できない。
【0016】
本発明のヒドロキシ化合物の製造は、特許文献3に記載された方法に準じて製造することができる。まず、ジグリセリンと炭素数5〜10個のカルボン酸とを反応させ(第1工程)、次いで、得られたエステル化合物とダイマー酸とを反応させる(第2工程)二段階法である。第1工程において、ジグリセリンのヒドロキシル基の反応性の相違により、ジグリセリンの1位(外側)のヒドロキシル基に優先的に炭素数5〜10個のカルボン酸が結合する。従って、得られたモノエステル及びジエステルは、ジグリセリンの1位のヒドロキシル基がエステル化された構造が多くなる。これをダイマー酸で更にエステル化すると残った2位(内側)のヒドロキシル基にダイマー酸が結合して、カップリングした構造のヒドロキシ化合物の割合が多くなる。これにより、ジグリセリン、炭素数5〜10個のカルボン酸及びダイマー酸を同時に反応させる一段階法に比べて、ヒドロキシ化合物の特性値、例えば、粘度、数平均分子量、水酸基価を的確に制御することができ、原料ロット間、反応器の種類、容積及び構造等で生ずる特性値のバラツキを解消することができる。
【0017】
二段階法の一例を挙げれば下記の通りである。第1工程において、ジグリセリン及び炭素数5〜10個のカルボン酸を反応器に充填し、次いで、徐々に昇温して生成水を留出させながら、好ましくは100〜250℃、より好ましくは180〜240℃に加熱する。該温度において、好ましくは生成水の留出がなくなるまで保持する。保持時間は、好ましくは2〜50時間、より好ましくは3〜40時間、更に好ましくは4〜30時間である。第2工程においては、第1工程において得られたエステル化合物及びダイマー酸を反応器に充填し、次いで、第1工程と同様の条件で反応する。第1工程においては、ジグリセリンと炭素数5〜10個のカルボン酸とのエステル化合物の水酸基価が好ましくは300〜500になるようにする。実際の操作においては、該エステル化合物の酸価を測定し、酸価が好ましくは10以下、より好ましくは5以下になるようにする。酸価は水酸基価より短時間で正確に測定し得る故、反応の制御がより容易となる。該酸価は化粧品原料規格に準拠して測定される。このようにして水酸基価(酸価)を制御することにより、第2工程において、第1工程において得られたエステル化合物と所定量のダイマー酸とを反応して、目的とするヒドロキシ化合物の粘度、水酸基価を容易に調整し得る。
【0018】
上記の反応は、好ましくは溶媒及び触媒を使用せずに実施される。これにより、再現性よく、均一な品質のヒドロキシ化合物を得ることができる。得られたヒドロキシ化合物中に溶媒及び触媒が残存することがないので、化粧料に含めた際の皮膚安全性にも優れる。一方、触媒及び溶媒を使用することもできる。これにより、反応時間の短縮を図ることができる。触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、三フッ化硼素、フッ化水素等が挙げられる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
【0019】
得られたヒドロキシ化合物の水酸基価の上限は、好ましくは160、より好ましくは155、更に好ましくは150であり、下限は、好ましくは90、より好ましくは95、更に好ましくは100である。上記上限を超えては、油性基剤との相溶性が悪くなり、上記下限未満では、保湿性又はエモリエント性が乏しくなる。
【0020】
ヒドロキシ化合物の粘度(60℃)の上限は、好ましくは3,000mPa・s、より好ましくは2,800mPa・s、更に好ましくは2,600mPa・sであり、下限は、好ましくは900mPa・s、より好ましくは950mPa・s、更に好ましくは1,000mPa・sである。上記上限を超えては、粘着性が強く、取り扱いが困難になり、上記下限未満では、粘性に乏しくなり、化粧料用として好ましくない。
【0021】
ヒドロキシ化合物の数平均分子量の上限は、好ましくは5,000、より好ましくは4,700、更に好ましくは4,400であり、下限は、好ましくは700、より好ましくは710、更に好ましくは720である。上記上限を超えては、取り扱いが困難になり、上記下限未満では、粘性に乏しくなり、化粧料用として好ましくない。
【0022】
ヒドロキシ化合物の抱水性の上限は、好ましくは100%、より好ましくは95%、更に好ましくは90%であり、下限は、好ましくは30%、より好ましくは35%、更に好ましくは40%である。上記上限を超えては、水と接触時に白濁し、光沢低下の要因となり、上記下限未満では、保湿性又はエモリエント性に乏しくなる。
【0023】
上記本発明のヒドロキシ化合物は、種々の化粧料、例えば、ヘアトリートメント、ファンデーション、アイシャドウ、リップスティック及びリップグロス等に含めて使用することができる。化粧料中の該ヒドロキシ化合物の含有量は、化粧料の種類に依存するが、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは0.5〜70質量%、更に好ましくは0.5〜60質量%で含まれる。
【0024】
以下の実施例において、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
合成実施例及び合成比較例
合成実施例及び合成比較例において使用した物質は特に記載のない限り下記の通りである。
ジグリセリン:阪本薬品工業株式会社製ジグリセリン801(商標)
イソノナン酸:協和発酵ケミカル株式会社製キョーワノイック−N(商標)
イソステアリン酸:高級アルコール工業株式会社製イソステリン酸EX(商標)
イソブタン酸(イソ酪酸):東洋合成工業株式会社製2−メチル酪酸(商標)
ネオペンサン酸:エクソンモービル社製ネオペンタン酸
2−エチルヘキサン酸:協和発酵ケミカル株式会社製オクチル酸
ネオデカン酸:エクソンモービル社製ネオデカン酸PG(商標)
ラウリン酸:サザンアシッド ケミカル社製Pofac 1299(商標)
ダイマー酸:クローダ社製PRIPOL1009(商標)
【0026】
合成実施例及び合成比較例において得られたヒドロキシ化合物の酸価、水酸基価、粘度、数平均分子量、抱水性及び光沢性は、以下のようにして測定した。
【0027】
<酸価>
化粧品原料基準18.酸価測定法に準拠して測定したものである。
【0028】
<水酸基価>
化粧品原料基準24.水酸基価測定法に準拠して測定したものである。
【0029】
<粘度>
ブルックフィールド粘度計 DV‐II+(スピンドルNo.3、12rpm、60℃)により測定したものである。
【0030】
<数平均分子量>
下記条件において、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によりポリスチレン換算の相対分子量分布を測定して得たものである。
測定機種 昭和電工株式会社製 GPC‐101
カラム Shodex GPC KF‐603(2本)
溶離液 THF
温度 カラム恒温槽 40℃
流速 0.5mL/min
注入量 100μL(約0.2重量%/体積%)
溶解性 完全溶解
検出器 示差屈折計(R1)
【0031】
<抱水性(保湿性又はエモリエント性)>
35℃に保温した容器にヒドロキシ化合物(35℃)を10g秤量し、35℃の精製水を滴下して練りこみ、水が均一に混合出来なくなった時点で終了した。25℃で24時間保存した後、該ヒドロキシ化合物から分離した水の量を測定した。抱水量(%)を、最終的にヒドロキシ化合物に含まれる精製水量と開始時のエステル化物重量(10g)との比率で示し、これを抱水性とした。
【0032】
<ヒドロキシ化合物のみの光沢性>
パラフィン紙上に、約1グラムのヒドロキシ化合物を、縦:約20mm、横:約40mm、厚さ:約200μmで塗布する。グロスチェッカーIG−330(商標、株式会社堀場製作所製)を使用して、入射角60度、反射角60度にて3回光沢を測定し、平均値を光沢性とした。
【0033】
<水と接触した時の光沢性>
ヒドロキシ化合物と唾液が接触すると白濁して、ヒドロキシ化合物の光沢性が低下して見た目のツヤに大きな影響を及ぼす。これを評価するために、ヒドロキシ化合物が水と接触した時のヒドロキシ化合物の透過率を光沢性の目安とした。石英板上に、約1グラムのヒドロキシ化合物を、縦:約10mm、横:約20mm、厚さ:約200μmで塗布した後、ヒドロキシ化合物上に精製水を0.1mL滴下する。指でヒドロキシ化合物と水を5往復軽く練る。次いで、ヘラを用いて塗布面を平滑にした後、紫外可視分光光度計[島津製作所製UV−160A(商標)]を使用して透過率(T%)を測定する。ヒドロキシ化合物単独の透過率を100%として水と接触時の透過率を求めた。光沢性はヒドロキシ化合物単独の透過率との差により評価した。
【0034】
[合成実施例1]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管、ディーンスターク水分計及びコンデンサーを取り付けた1,000mLの4つ口フラスコに、ジグリセリン166.2g(1.0mol)、イソノナン酸237.3g(1.5mol)、溶媒としてのトルエン150
mLを仕込んだ。次いで、窒素を20mL/min流しながら200℃に加熱した。該温度で、生成水を溶媒と共沸させながら留去しつつ反応させた。生成水の留出が少なくなったところで温度を220℃に上げて更に反応を続け、生成水の留出が無くなったところで反応を停止した。ここまで、反応開始から約6時間であった。ジグリセリンイソノナン酸エステル(淡黄色粘性油状物)411.5g(水酸基価:132、酸価:0.3)が得られた。
【0035】
上記の装置に、得られたジグリセリンイソノナン酸エステル370.4g(0.90mol)とダイマー酸252.6g(0.45mol)を仕込んだ。次いで、窒素を20mL/minで流しながら、上記と同じく220℃の温度で生成水を留去しつつ反応させ、生成水の留出が無くなったところで反応を停止した。ここまで、反応開始から約7時間であった。次いで、温度を180℃に下げた後に減圧(約20mmHg)とし、溶剤(トルエン)を完全に除き、ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)566.7gを得た。
【0036】
反応に使用したジグリセリン、イソノナン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.50であった。
【0037】
[合成実施例2]
第2工程におけるダイマー酸の仕込み量を202.1g(0.36mol)に変えた以外は合成実施例1と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)519.8gが得られた。
【0038】
反応に使用したジグリセリン、イソノナン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.40であった。
【0039】
[合成実施例3]
第2工程におけるダイマー酸の仕込み量を277.8g(0.495mol)に変えた以外は合成実施例1と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)589.8gが得られた。
【0040】
反応に使用したジグリセリン、イソノナン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.55であった。
【0041】
[合成実施例4]
第2工程におけるダイマー酸の仕込み量を303.2g(0.54mol)に変えた以外は合成実施例1と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)613.1gが得られた。
【0042】
反応に使用したジグリセリン、イソノナン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.60であった。
【0043】
[合成実施例5]
第1工程におけるイソノナン酸の仕込み量を253.1g(1.60mol)に変えた以外は合成実施例4と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)602.3gが得られた。
【0044】
反応に使用したジグリセリン、イソノナン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.60:0.55であった。
【0045】
[合成実施例6]
第1工程におけるイソノナン酸に代えて、ネオペンタン酸153.2g(1.50mol)を仕込んだ以外は合成実施例3と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)515.3gが得られた。
【0046】
反応に使用したジグリセリン、ネオペンタン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.55であった。
【0047】
[合成実施例7]
第1工程におけるイソノナン酸に代えて、2−エチルヘキサン酸216.3g(1.50mol)を仕込んだ以外は合成実施例3と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)569.3gが得られた。
【0048】
反応に使用したジグリセリン、2−エチルヘキサン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.55であった。
【0049】
[合成実施例8]
第1工程におけるイソノナン酸に代えて、ネオデカン酸258.4g(1.50mol)を仕込んだ以外は合成実施例3と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)608.6gが得られた。
【0050】
反応に使用したジグリセリン、ネオデカン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.55であった。
【0051】
[合成比較例1]
第1工程におけるイソノナン酸の仕込み量を221.5g(1.40mol)に変えた以外は合成実施例3と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)577.5gが得られた。
【0052】
反応に使用したジグリセリン、イソノナン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.40:0.55であった。
【0053】
[合成比較例2]
第1工程におけるイソノナン酸の仕込み量を268.9g(1.7mol)に変えた以外は合成実施例3と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)614.7gが得られた。
【0054】
反応に使用したジグリセリン、イソノナン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.70:0.55であった。
【0055】
[合成比較例3]
第2工程におけるダイマー酸の仕込み量を176.8g(0.315mol)に変えた以外は合成実施例3と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)496.7gが得られた。
【0056】
反応に使用したジグリセリン、イソノナン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.35であった。
【0057】
[合成比較例4]
第2工程におけるダイマー酸の仕込み量を328.4g(0.585mol)に変えた以外は合成実施例3と同一にして実施した。しかし、第2工程の反応の後半に反応物がゲル化し、ヒドロキシ化合物を得ることはできなかった。
【0058】
反応に使用したジグリセリン、イソノナン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.65であった。
【0059】
[合成比較例5]
イソノナン酸に代えて、イソステアリン酸426.8g(1.5mol)を使用した以外は、合成実施例1と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)734.6gが得られた。
【0060】
反応に使用したジグリセリン、イソステアリン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.50であった。
【0061】
[合成比較例6]
第2工程におけるダイマー酸の仕込み量を382.4g(0.585mol)に変えた以外は比較合成例5と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)804.4gが得られた。
【0062】
反応に使用したジグリセリン、イソステアリン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.65であった。
【0063】
[合成比較例7]
イソノナン酸に代えて、イソブタン酸(イソ酪酸)132.2g(1.5mol)を使用した以外は、合成実施例3と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)496.0gが得られた。
【0064】
反応に使用したジグリセリン、イソブタン酸(イソ酪酸)及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.55であった。
【0065】
[合成比較例8]
イソノナン酸に代えて、ラウリン酸300.5g(1.5mol)を使用した以外は、合成実施例3と同一にして実施した。ヒドロキシ化合物(淡黄色高粘性油状物)645.8gが得られた。
【0066】
反応に使用したジグリセリン、ラウリン酸及びダイマー酸のモル当量比は1.00:1.50:0.55であった。
【0067】
表1に合成実施例及び合成比較例により得られた各物質の性状を示す。
【0068】
【表1】

表中、*1、*2、*3、*4、*5及び*6は、イソノナン酸に代えて、夫々、ネオペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、イソステアリン酸、イソブタン酸(イソ酪酸)及びラウリン酸を使用したものである。*7は、反応中、反応物がゲル化しヒドロキシ化合物が得られなかったものである。
【0069】
合成実施例1〜4は、本発明の範囲内でダイマー酸のモル等量比を変化させたものである。得られたヒドロキシ化合物の光沢性は良好であり、加えて、水と接触した時の光沢性の低下は著しく低い。また、実施例5は、イソノナン酸のモル等量比を、合成実施例3に対して変化させたものである。上記と同様に良好な光沢性が得られた。従って、例えば、化粧料として使用した時、空気中の水分又は唾液等に接触して光沢性が低下することがない。合成実施例6は、イソノナン酸に代えて、炭素数5のネオペンタン酸を使用したものであり、合成実施例7は、イソノナン酸に代えて、炭素数8の2−エチルヘキサン酸を使用したものであり、合成実施例8は、イソノナン酸に代えて、炭素数10のネオデカン酸を使用したものである。いずれも光沢性は、イソノナン酸を使用したものに比べて多少低下するが、本発明の効果を十分に発揮するものであった。
【0070】
一方、比較合成例1及び2は、合成実施例3に対してイソノナン酸のモル等量比を本発明の範囲外にしたものである。いずれも水と接触した時の光沢性は著しく低下した。比較合成例3及び4は、合成実施例3に対してダイマー酸のモル等量比を本発明の範囲外にしたものである。比較合成例3は、上記と同様に水と接触した時の光沢性が著しく低下した。また、粘着性に欠けるものであった。比較合成例4においては、ダイマー酸との反応において反応物がゲル化し、ヒドロキシ化合物を得ることができなかった。合成比較例5〜8は、いずれも本発明の範囲外の炭素数を有する1価のカルボン酸を使用したものである。いずれも水と接触した時の光沢性は著しく低下した。また、比較合成例7で得られたヒドロキシ化合物は、臭い及び皮膚安全性に劣るものであった。
【0071】
実施例及び比較例
実施例及び比較例で使用した物質は、特に記載のない限り下記の通りである。
【0072】
成分(A):
ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル:高級アルコール工業株式会社製ハイルーセント 138DP(商標)
(イソステアリン酸ポリグリセリル−2/ダイマージリノール酸)コポリマー:高級アルコール工業株式会社製ハイルーセント ISDA(商標)
コハク酸ビスエトキシジグリコール:高級アルコール工業株式会社製ハイアクオスターDCS(商標)
ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール:高級アルコール工業株式会社製NPDIN
パルミチン酸イソプロピル:高級アルコール工業株式会社製IPP
ホホバ油:高級アルコール工業株式会社製エコオイル RS(商標)
マカデミアナッツ油:日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL マカデミアンナッツ油(商標)
ステアリルアルコール:高級アルコール工業株式会社製ステアリルアルコール NX(商標)
セトステアリルアルコール:高級アルコール工業株式会社製セタノール NX(商標)
ベヘニルアルコール:高級アルコール工業株式会社製ベヘニルアルコール 65(商標)
ジプロピレングリコール:株式会社クラレ製DPG−RF(商標)
ステアルトリモニウムクロリド:Clariant社製Genamin STAC(商標)
ジステアリルジモニウムクロリド:Clariant社製Genamin DSAC(商標)
ベヘントリモニウムクロリド:Clariant社製Genamin KDM−P(商標)
ジココジモニウムクロリド:竹本油脂株式会社製パイオニンB−2211(商標)
アモジメチコン:東レ・ダウコーニング株式会社製SF 8452 C(商標)
シクロメチコン:東レ・ダウコーニング株式会社製SH245 Fluid(商標)
ジメチコン:GE東芝シリコーン株式会社製TSF451−100A(商標)(実施例1〜3で使用)
ジメチコン:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製TSF451−10A(商標)(実施例4〜6において使用)
フェノキシエタノール:東邦化学工業株式会社製ハイソルブ EPH(商標)
イソステアリン酸ヘキシルデシル:高級アルコール工業株式会社製ICIS
ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール:高級アルコール工業株式会社製KAK NDO(商標)
スクワラン:高級アルコール工業株式会社製オリーブスクワラン
(ジグリセリン/ジリノール酸/ヒドロキシステアリン酸)コポリマー:高級アルコール工業株式会社製リソカスタ HSDA(商標)
モノイソステアリン酸ソルビタン:日本エマルジョン株式会社製エマレックス SPIS−100(商標)(実施例4〜6で使用)
モノイソステアリン酸ソルビタン:日本エマルジョン株式会社製EMALEX SPIS−150(商標)(実施例7〜8で使用)
ジメチコンコポリオール:Evonik Goldschmidt GmbH製ABIL EM90(商標)
ペンチレングリコール:高級アルコール工業株式会社製ジオール PD(商標)
セタノール:高級アルコール工業株式会社製セタノール NX(商標)
水添ナタネ油アルコール:高級アルコール工業株式会社製アルコールNo.20−B(商標)
パルミチン酸デキストリン:千葉製粉株式会社製レオパール TT2(商標)(実施例4〜6で使用)
パルミチン酸デキストリン:千葉製粉株式会社製レオパール KL2(商標)(実施例7〜8で使用)
マイクロクリスタリンワックス:日興リカ株式会社製精製マイクロクリスタリンワックス
疎水化処理酸化チタン:US Cosmetic Corporation製NHS−TRI−77891(商標)
疎水化処理黄酸化鉄:US Cosmetic Corporation製NHS−Y−77492(商標)
疎水化処理赤酸化鉄:US Cosmetic Corporation製NHS−R−77491(商標)
疎水化処理黒酸化鉄:US Cosmetic Corporation製NHS−B−77499(商標)
タルク:US Cosmetic Corporation製Soft Talc(商標)
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル:ISP 社製ESCALOL 557(商標)
ナイロン‐6:宇部興産株式会社製POMP605(商標)
架橋型シリコーン末:東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィル E506C(商標)
イソステアリン酸イソステアリル:高級アルコール工業株式会社製ISIS
トリエチルヘキサノイン:高級アルコール工業株式会社製TOG
ミネラルオイル:カネダ株式会社製ハイコール K230(商標)
リンゴ酸ジイソステアリル:高級アルコール工業株式会社製ハイマレート DIS(商標)
ステアリン酸グリセリル(SE):日本エマルジョン株式会社製EMALEX GMS−195(商標)
ステアリン酸ポリグリセリル‐10:日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL Decaglyn 1−SV(商標)
疎水化処理群青:Whittaker Clark & Daniels社製7104 Ultramarine Blue(商標)
雲母チタン:Merck 社製Timiron Star Luster MP−115(商標)
水添ポリイソブテン:日油株式会社製パールリーム18(商標)
ダイマージリノール酸水添ヒマシ油:高級アルコール工業株式会社製リソカスタ DA−H(商標)(実施例9〜14で使用)
ダイマージリノール酸水添ヒマシ油:高級アルコール工業株式会社製リソカスタ DA−L(商標)(実施例15〜18で使用)
ジイソステアリン酸ポリグリセリル‐2:高級アルコール工業株式会社製リソレックス PGIS22(商標)
トリイソステアリン酸ポリグリセリル‐2:高級アルコール工業株式会社製リソレックス PGIS23(商標)
テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル:高級アルコール工業株式会社製KAK PTI(商標)
ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル:高級アルコール工業株式会社製リソカスタ IOHS(商標)
ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル:高級アルコール工業株式会社製リソカスタ ODSHS(商標)
オクチルドデカノール:高級アルコール工業株式会社製リソノール 20SP(商標)
(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン:千葉製粉株式会社製レオパール TT2(商標)
ステアリン酸イヌリン:千葉製粉株式会社製レオパール ISL2(商標)
(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル:日清オイリオグループ株式会社製ノムコート HK−G(商標)
ダイマージリノール酸ジ(C20−40)アルキル:Koster Keunen社製Kester Wax K82−D(商標)
ジブチルラウロイルグルタミド:味の素株式会社製GP−1(商標)
ステアリルジメチコン:クラリアント社製Silcare Silicone 41M65(商標)
アミド末端ポリアミド樹脂:Arizona Chemical社製Sylvaclear 200V(商標)
エステル末端ポリアミド樹脂:Arizona Chemical社製Uniclear 100VG(商標)
赤色218号:癸巳化成株式会社製赤色218号
赤色226号:癸巳化成株式会社製赤色226号
赤色201号:癸巳化成株式会社製赤色201号
赤色202号:癸巳化成株式会社製赤色202号
カルミン:Merck 社製COLORONA CARMINE RED(商標)
酸化チタン:石原産業株式会社製タイペークCR−30(商標)
合成金雲母、酸化チタン、酸化鉄[ラメ剤]:トピー工業株式会社製プロミネンス RYH(商標)
ホウケイ酸(Ca/Al)、シリカ、酸化チタン、酸化スズ[ラメ剤]:Merck社製Ronastar Silver(商標)
(PET/ポリメタクリル酸メチル)ラミネート[ラメ剤]:株式会社ダイヤケムコ製イリデッセントグリッターIF8101(商標)
トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン:高級アルコール工業株式会社製KAK TTO(商標)
イソノナン酸イソトリデシル:高級アルコール工業株式会社製KAK 139(商標)
イソステアリン酸水添ヒマシ油:高級アルコール工業株式会社製リソカスタ MIS(商標)
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:高級アルコール工業株式会社製TCG−M(商標)
ネオペンタン酸イソステアリル:高級アルコール工業株式会社製ネオライト 180P(商標)
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール:高級アルコール工業株式会社製NPDC(商標)
キャンデリラワックス:STRAHL & PITSCH社製CANDELILLA WAX 75(商標)
ミツロウ:三木化学工業株式会社製精製ミツロウ
セレシン:STRAHL & PITSCH社製セレシン SP1020(商標)
ポリエチレン:Baker Petrolite社製ポリワックス 500(商標)
合成ワックス、(エチレン/プロピレン)コポリマー:日本ナチュラルプロダクツ社製LIP WAX PZ80−20(商標)
黄色4号アルミニウムレーキ:癸巳化成株式会社製黄色4号アルミニウムレーキ
ベンガラ:US Cosmetic Corporation社製NHS−R−77491(商標)
青色1号アルミニウムレーキ:癸巳化成株式会社製青色1号アルミニウムレーキ
【0073】
成分(B):
ヒドロキシエチルセルロース:住友精化株式会社製HEC(商標)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:信越化学工業株式会社製メトローズ 60SH−4000(商標)
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー:クラリアント社製Aristoflex AVC(商標)
ペンチレングリコール:高級アルコール工業株式会社製ジオール PD(商標)
ポリクオタニウム-7:ライオン株式会社製リポフローMN(商標)
加水分解シルク:株式会社成和化成製プロモイスシルク‐1000Q(商標)
グリセリン:高級アルコール工業株式会社製トリオール VE(商標)
カルボマー:日光ケミカルズ株式会社製カーボポールETD2050(商標)
1,3−ブチレングリコール:高級アルコール工業株式会社製ハイシュガーケイン BG(商標)
【0074】
成分(C):
高重合メチルポリシロキサン(1):東レ・ダウコーニング株式会社製BY 22−029(商標)
【0075】
実施例及び比較例において製造した各化粧料の保存安定性、塗りやすさ、油性感・保湿性、光沢性、光沢保持性及び皮膚安全性は、以下のようにして測定した。
【0076】
<保存安定性>
実施例及び比較例の各油中水型乳化化粧料(ヘアトリートメント、ファンデーション、アイシャドウ、リップグロス、リップスティック)を所定の方法により、夫々、3個ずつ調製した。次いで、25℃及び45℃の恒温槽内で、夫々、1個ずつ、いずれも1ヶ月間保存した。残りの1個を、夫々、恒温室内で−10℃、25℃、45℃の3つの温度で8時間ずつ保持して、1往復48時間かけて5往復させた。このようにして得たサンプルについて、外観の劣化(粒子の粗大化)の有無、着色着臭の有無、分離の有無について人間の五感により観察した結果、外観の劣化及び着色着臭についてはいずれのサンプルについても変化が認められなかった。従って、評価は分離の有無のみについて判断した。評価結果は、各サンプルを目視確認し、全てのサンプルで分離がない場合を「G」で示し、一つの温度条件のサンプルに僅かにでも分離がある場合を「M」で示し、二つ以上の温度条件のサンプルに僅かにでも分離がある場合を「B」で示した。
【0077】
<塗りやすさ>
実施例及び比較例の各化粧料(ヘアトリートメント、ファンデーション、アイシャドウ、リップグロス、リップスティック)の塗布時の「塗り易さ」について、パネラー20名で評価を行った。ヘアトリートメントに関しては、2.0グラムを毛髪に塗布した。ファンデーションに関しては、1.0グラムを顔面に塗布した。アイシャドウに関しては、0.1グラムを瞼に塗布した。リップグロス及びリップスティックに関しては、0.2グラムを唇に塗布した。評価結果は、20人中15人以上が「塗り易さ良好」と回答した場合を「G」で示し、20人中6〜9人が「塗り易さ良好」と回答した場合を「M」で示し、20人中5人以下が「塗り易さ良好」と回答した場合を「B」で示した。
【0078】
<油性感・保湿性(又はエモリエント性)>
実施例及び比較例の各化粧料(ヘアトリートメント、ファンデーション、アイシャドウ、リップグロス、リップスティック)の塗布後の「油性感・保湿性(又はエモリエント性)」については、上記の「塗り易さ」の評価方法と同一にして、パネラー20名を使用し、同一箇所に同一量を塗布することにより評価した。評価結果は、20人中15人以上が「適度な油性感・保湿性(又はエモリエント性)あり」と回答した場合を「G」で示し、20人中6〜9人が「適度な油性感・保湿性(又はエモリエント性)あり」と回答した場合を「M」で示し、20人中5人以下が「適度な油性感・保湿性(又はエモリエント性)あり」と回答した場合を「B」で示した。
【0079】
<光沢性>
実施例及び比較例の各化粧料(ヘアトリートメント、ファンデーション、アイシャドウ、リップグロス、リップスティック)の塗布後の「光沢性」については、上記の「塗り易さ」の評価方法と同一にして、パネラー20名を使用し、同一箇所に同一量を塗布することにより評価した。評価結果は、20人中15人以上が「光沢性が良好」と回答した場合を「G」で示し、20人中6〜9人が「光沢性が良好」と回答した場合を「M」で示し、20人中5人以下が「光沢性が良好」と回答した場合を「B」で示した。
【0080】
<光沢保持性>
実施例及び比較例の各化粧料(ヘアトリートメント、ファンデーション、アイシャドウ、リップグロス、リップスティック)の塗布後の「光沢保持性」については、上記の「塗り易さ」の評価方法と同一にして、パネラー20名を使用し、同一箇所に同一量を塗布することにより評価した。評価結果は、20人中15人以上が「光沢保持性に優れる」と回答した場合を「G」で示し、20人中6〜9人が「光沢保持性に優れる」と回答した場合を「M」で示し、20人中5人以下が「光沢保持性に優れる」と回答した場合を「B」で示した。
【0081】
<皮膚安全性>
被試験者は男子10名及び女子10名の合計20名である。前腕屈側部皮膚に、実施例及び比較例において得られた各化粧料の0.05gを、直径1.0cmのリント布の付いた円型パッチテスト用絆創膏を用いて24時間閉塞貼布する。絆創膏を除去した後の1時間及び24時間における被試験者20名の皮膚状態を、下記の評価基準に従い評価した。評価には、絆創膏除去後1時間後及び24時間後のうち、反応の強いほうを採用した。(−)が20名のときを「G」、(±)が1〜2名であり他の被験者が(−)のときを「M」、(±)が3名以上であり他の被験者が(−)のとき、又は(+)〜(+++)が1名以上のときを「B」で示した。評価に際し、ヘアトリートメントは0.5%の水溶液を使用した。
(評価基準)
(皮膚状態) (評価)
紅斑、浮腫、水疱
: (+++)
紅斑、浮腫
: (++)
紅斑
: (+)
軽微な紅斑 : (±)
無紅斑、無浮腫
: (−)
【0082】
[実施例1〜3]
ヘアトリートメント
表2に示した(A)及び(B)の各成分を、夫々別個に75〜80℃において均一に溶解した。次いで、組成物(B)を組成物(A)に攪拌しながら加え、ホモミキサーにより乳化した。次いで、攪拌しながら該乳化物に(C)成分を添加し、更に該混合物を攪拌しながら30℃まで冷却してヘアトリートメントを調製した。表2に評価結果を示した。表2及び以下の表3〜8に示した数値の単位は全て質量%である。
【0083】
【表2】

【0084】
[比較例1〜5]
ヘアトリートメント
合成実施例3のヒドロキシ化合物に代えて、夫々、合成比較例1、2、3、7及び8のヒドロキシ化合物を使用したこと以外は、実施例1と同一にして実施した。表3に評価結果を示した。
【0085】
【表3】

【0086】
実施例1〜3は、合成実施例3のヒドロキシ化合物を使用してヘアトリートメントを製造し、その配合量を変化させたものである。いずれも良好な性状を示した。一方、比較例1〜5は、実施例1に対して、合成実施例3のヒドロキシ化合物を、夫々、合成比較例1、2、3、7及び8のヒドロキシ化合物に変えたものである。いずれもその性状は悪いものであった。
【0087】
[実施例4〜6]
クリーム状ファンデーション
表4に示した(A)及び(B)の各成分を、夫々別個に75〜80℃において均一に溶解した。次いで、組成物(B)を組成物(A)に攪拌しながら加え、ホモミキサーにより乳化した。次いで、該混合物を攪拌しながら30℃まで冷却してクリーム状ファンデーションを調製した。表4に評価結果を示した。
【0088】
【表4】

【0089】
[実施例7〜8]
アイシャドウ
表5に示した(A)及び(B)の各成分を、夫々別個に75〜80℃において均一に溶解した。次いで、組成物(B)を組成物(A)に攪拌しながら加え、ホモミキサーにより乳化した。次いで、該混合物を攪拌しながら30℃まで冷却してアイシャドウを調製した。表5に評価結果を示した。
【0090】
【表5】

【0091】
[実施例9〜12]
リップグロス
表6に示した各成分を110℃において均一に溶解した後、脱泡した。次いで、該混合物を30℃まで冷却してリップグロスを調製した。表6に評価結果を示した。
【0092】
【表6】

【0093】
[比較例6〜12]
リップグロス
合成実施例3のヒドロキシ化合物に代えて、夫々、合成比較例1〜3及び5〜8のヒドロキシ化合物を使用したこと以外は、実施例9と同一にして実施した。表7に評価結果を示した。
【0094】
【表7】

【0095】
実施例9〜12は、合成実施例3のヒドロキシ化合物を使用してリップグロスを製造し、その配合量を変化させたものである。いずれも良好な性状を示した。一方、比較例6〜12は、実施例9に対して、合成実施例3のヒドロキシ化合物を、夫々、合成比較例1〜3及び5〜8のヒドロキシ化合物に変えたものである。いずれもその光沢保持性は悪いものであった。
【0096】
[実施例13〜14]
パレット型リップグロス
表8に示した各成分を110℃において均一に溶解した後、脱泡した。次いで、該混合物を適当な金型に流し込み、30℃まで冷却してリップグロスを調製した。表8に評価結果を示した。
【0097】
【表8】

【0098】
[実施例15〜18]
リップスティック
表9に示した各成分を110℃において均一に溶解した後、脱泡した。次いで、該混合物を適当な金型に流し込み、10℃で20分間冷却してリップスティックを調製した。表9に評価結果を示した。
【0099】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のヒドロキシ化合物は、従来のヒドロキシ化合物では得られなかった化粧料としての光沢持続性、即ち、空気中の湿気及び水分に触れても、あるいは唾液に触れてもその優れた光沢を保持し続けると言う特異な効果を有する。従って、ヘアトリートメント、ファンデーション、アイシャドウ等の化粧料として有用であり、とりわけ、唾液と接触して光沢を失い易いリップスティック及びリップグロスとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価以上のアルコールと1価のカルボン酸とを反応し、次いで、得られたエステル化合物とダイマー酸とを反応して得られるヒドロキシ化合物において、2価以上のアルコールがジグリセリンであり、1価のカルボン酸が炭素数5〜10個のカルボン酸であり、かつ該反応におけるジグリセリン、炭素数5〜10個のカルボン酸及びダイマー酸のモル等量比が1.0:1.5〜1.6:0.4〜0.6であることを特徴とするヒドロキシ化合物。
【請求項2】
1価のカルボン酸がイソノナン酸であるところの請求項1記載のヒドロキシ化合物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のヒドロキシ化合物を含む化粧料。

【公開番号】特開2010−143834(P2010−143834A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319716(P2008−319716)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(391066319)高級アルコール工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】