説明

ヒドロホルミル化方法のためのフルオロホスファイト含有触媒

一般式(I)(式中、Ar1及びAr2は炭素数4〜30のアリール基であり;R1〜R6はH又は炭素数1〜40のアルキル若しくはアリール炭化水素基であり;Xは連結基又は簡単な化学結合である)の構造を有する新規フルオロホスファイト化合物を開発し、それがエチレン性不飽和基材のヒドロホルミル化方法に非常に活性であることを見出した。これらの化合物とRh金属から調製された触媒溶液は、単純なアルケンに対して並外れた「配位子促進効果」を示し(即ち、配位子濃度の増加につれてヒドロホルミル化活性が増加する)、典型的なヒドロホルミル化条件下で直鎖又は分岐鎖アルデヒドを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、フルオロホスファイト化合物、前記フルオロホスファイト化合物を含む触媒溶液及び前記触媒溶液を用いるヒドロホルミル化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロホルミル化反応は、オキソ反応としても知られ、オレフィン1モルと水素及び一酸化炭素各1モルとの反応によるアルデヒドの商業的製造方法に広く用いられている。この反応の1つの用途は、プロピレンからのノルマル−及びイソ−ブチルアルデヒドの製造である。ノルマルアルデヒド生成物の量対イソアルデヒド生成物の量の比は、典型的には、ノルマル/イソ(N:I)比又はノルマル/分岐(N:B)比と称される。プロピレンの場合には、プロピレンから得られたノルマル−ブチルアルデヒドとイソ−ブチルアルデヒドは、次に、例えばn−ブタノール、2−エチル−ヘキサノール、n−酪酸、イソブタノール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール並びに2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールのモノイソ酪酸エステル及びジイソ酪酸エステルのような多くの商業的に有用な化学製品に転化される。
【0003】
ほとんどの場合、オキソ法(いわゆる「低圧ヒドロホルミル化プロセス」)には、リン配位子含有触媒が用いられる。リン配位子は、金属を安定化できるだけでなく、触媒の活性及び選択性を調節できる。オキソ触媒活性はリン配位子量の増加につれて低下することが多いが、触媒安定性は配位子量の増加につれて増加する。従って、安定性の増加と触媒活性の低下のトレードオフの結果として、オキソ反応器の操作に最適のリン配位子濃度が存在する。
【0004】
実際には、分解などの理由でリン配位子の漸減は避けられない。オーバーフロー式反応器(overflow reactor)のような一部の場合には、生成物からの触媒の分離に必要な高温のために、配位子の分解が悪化する可能性がある。実際問題として、配位子の損失を埋め合わせるために、新鮮なリン配位子を反応器に定期的に補充しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、より高い濃度で触媒を安定化させるだけでなく、そのような濃度で金属触媒活性を増加させることができる配位子に対するニーズが当業界にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
新規フルオロホスファイト配位子濃度を単に増加させることによってRh触媒活性を大幅に増大できる種類の配位子を発見した。一部の態様において、この配位子は、触媒安定性の向上、生産速度の増加及び配位子補充の必要がなくなったことによる1日当たりの運転コストの低下のような1つ又はそれ以上のメリットを提供する。
【0007】
一面において、本発明は、式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、炭素数4〜30のアリール基から選ばれ;
R1〜R6は、それぞれ独立に、H及び炭素数1〜40のヒドロカルビルから選ばれ;
Xは、(i)R1〜R4がそれぞれメチルである場合を除いて、各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、
(ii)O、Si及びNから選ばれたヘテロ原子又は
(iii)式:
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1〜10のアルキル又はアリール基から選ばれる)
を有する基である)
の構造を有するフルオロホスファイト化合物を提供する。
【0012】
第2の面において、本発明は、
(a)フルオロホスファイト化合物;
(b)第VIII族金属又はレニウム;及び
(c)ヒドロホルミル化溶媒
を含んでなり、前記フルオロホスファイト化合物が式(I):
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、炭素数4〜30のアリール基から選ばれ;
R1〜R6は、それぞれ独立に、H及び炭素数1〜40のヒドロカルビルから選ばれ;
Xは(i)各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、
(ii)ヘテロ原子又は
(iii)式:
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1〜10のアルキル又はアリールから選ばれる)
を有する基である)
の構造を有する触媒溶液を提供する。一部の態様において、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1又は2のアルキル基から選ばれる。一部の態様において、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素及びメチル基から選ばれる。
【0017】
第3の面において、本発明は、ヒドロホルミル化条件下で本明細書中に記載した触媒溶液の存在下において、オレフィンを水素及び一酸化炭素と接触させることを含んでなるアルデヒドの製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ヒドロホルミル化反応において配位子として有用な新規フルオロホスファイト化合物を発見した。従って、本発明は新規フルオロホスファイト化合物を提供する。本発明はヒドロホルミル化反応用の高活性触媒溶液を更に提供する。
【0019】
触媒溶液は、
(a)フルオロホスファイト化合物;
(b)第VIII族金属又はレニウム;及び
(c)ヒドロホルミル化溶媒
を含んでなる。
【0020】
本発明に係るフルオロホスファイト化合物は、式(I):
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、炭素数4〜30のアリール基から選ばれ;
R1〜R6は、それぞれ独立に、H及び炭素数1〜40のヒドロカルビルから選ばれ;
Xは(i)各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、
(ii)ヘテロ原子又は
(iii)式:
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1〜10のアルキル又はアリールから選ばれる)
を有する基である)
の構造を有する。
【0025】
一部の態様において、Xは、R1〜R4が全てメチルである場合には、化学結合ではない。
【0026】
前記ヘテロ原子は、配位子の効果を損なうことなく、式(I)に示される2つのアリール環との結合を形成できる、炭素以外の任意の原子であることができる。一部の態様において、ヘテロ原子は硫黄、酸素、窒素及び珪素から選ばれる(但し、原子結合能を完全なものにするために、珪素及び窒素には追加置換基が結合しているであろう)。許容され得る置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基及び炭素数6〜20の芳香族基が挙げられる。一部の態様において、ヘテロ原子は0、Si及びNから選ばれ、この場合も同様にSi又はNには追加原子が結合している。
【0027】
Ar1及びAr2が表すことができるアリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びそれらの置換誘導体のような炭素環式アリールが挙げられる。適当な置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲン、カルボン酸及びそれらの誘導体、例えばエステル、アミド又はカルボキシレート塩が挙げられる。更に適当な置換基としては、スルホン酸、スルホン酸の塩及びそれらの誘導体、例えばエステル及びアミドが挙げられる。具体的には、Ar1及びAr2は、それぞれ個別に、式(II)〜(IV):
【0028】
【化7】

【0029】
(式中、R7及びR8は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボキシレート塩、アルコキシ−カルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸、スルホネート塩などから独立して選ばれた1種又はそれ以上の置換基を表すことができる)
の任意の1つを有する基を表すことができる。一部の態様において、前記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル及びアルカノイルオキシ基のアルキル部分は8個以下の炭素原子を含む。mは0〜5を表し且つnは0〜7を表すことが可能であるが、一部の態様においては、m及びnの各値は2以下である。一部の態様において、R7及びR8は低級アルキル基、即ち炭素数10以下の直鎖及び分岐鎖アルキルを表し、m及びnはそれぞれ、0、1又は2を表す。一部の実施態様において、R7及びR8は低級アルキル基、即ち炭素数4以下の直鎖及び分岐鎖アルキルを表し、m及びnはそれぞれ、0、1又は2を表す。
【0030】
R1〜R4によって表されるヒドロカルビル基は、炭素数40以下の非置換及び置換アルキル、シクロアルキル及びアリール基から選ばれる。一部の態様において、R1〜R4の総炭素数は1〜15の範囲である。R1〜R4が表すことができるアルキル基の例としては、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル及びそれらの種々の異性体が挙げられる。アルキル基は、例えばアルコキシ、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボキシレート塩、アルコキシカルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸、スルホネート塩などのような2個以下の置換基で置換されることができる。シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルは、R1〜R4が表すことができるシクロアルキル基の例である。シクロアルキル基は、置換される可能性があるアルキル基に関して記載された置換基のいずれか又はアルキルで置換されることができる。一部の態様において、R1〜R4が表すことができるアルキル及びシクロアルキル基は炭素数8以下のアルキル、ベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。
【0031】
R1〜R4が表すことができるアリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びそれらの置換誘導体のような炭素環式アリールが挙げられる。R1〜R4が表すことができる炭素環式アリール基の例としては、式(V)〜(VII):
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、R9及びR10はアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボキシレート塩、アルコキシ−カルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸、スルホネート塩などから独立して選ばれた1種又はそれ以上の置換基を表すことができる)
を有する基が挙げられる。一部の態様において、前記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル及びアルカノイルオキシ基のアルキル部分は8個以下の炭素原子を含む。pは0〜5を表し且つqは0〜7を表すことが可能であるが、一部の態様においては、p及びqの各値は2以下である。一部の態様において、R9及びR10は低級アルキル基、即ち炭素数4以下の直鎖及び分岐鎖アルキルを表し、m及びnはそれぞれ、0、1又は2を表す。
【0034】
R5及びR6によって表されるヒドロカルビル基は、同一でも異なってもよく、分離していても結合されていてもよく、合計40個以下の炭素原子を含む非置換及び置換アルキル、シクロアルキル及びアリール基から選ばれる。一部の態様においてR5及びR6の置換基の総炭素数は1〜35の範囲である。R5及びR6が表すことができるアルキル基の例としては、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、1−アルキルベンジル及びそれらの種々の異性体が挙げられる。アルキル基は、例えばアルコキシ、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボキシレート塩、アルコキシカルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸、スルホネート塩などのような2個以下の置換基で置換されることができる。シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルは、R5及びR6が個別に表すことができるシクロアルキル基の例である。シクロアルキル基は、置換される可能性があるアルキル基に関して記載された置換基のいずれか又はアルキルで置換されることができる。一部の態様において、R5及びR6が表すアルキル及びシクロアルキル基は、炭素数10以下のアルキル、例えばベンジル、1−アルキルベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルなどである。
【0035】
R5及びR6が表すことができるアリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びそれらの置換誘導体のような炭素環式アリールが挙げられる。R5及びR6が表すことができる炭素環式アリール基の例としては、式(VIII)〜(X):
【0036】
【化9】

【0037】
(式中、R11及びR12はアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボキシレート塩、アルコキシ−カルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸、スルホネート塩などから独立して選ばれた1種又はそれ以上の置換基を表すことができる)
を有する基が挙げられる。一部の態様において、前記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル及びアルカノイルオキシ基のアルキル部分は8個以下の炭素原子を含む。rは0〜5を表し且つsは0〜7を表すことが可能であるが、一部の実施態様においては、r及びsの各値は2以下である。R11及びR12は低級アルキル基、即ち炭素数10以下の直鎖及び分岐鎖アルキルを表し、r及びsは、それぞれ、0、1又は2を表す。
【0038】
一部の態様において、R1〜R6は組合さって又は共同で炭素数40以下の二価ヒドロカルビル基を表すことができる。一部の態様において、二価ヒドロカルビル基は12〜36個の炭素原子を含む。このような二価基の例としては、炭素数2〜12のアルキル、シクロヘキシル及びアリールが挙げられる。前記アルキル及びシクロアルキル基の具体例としては、エチル、トリメチル、1,3−ブタンジイル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル、1,1,2−トリフェニルエタンジイル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジイル、1,2−シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0039】
一部の態様において、本発明に係るフルオロホスファイト化合物は式(XI):
【0040】
【化10】

【0041】
(式中、R15は水素及び炭素数1〜10のアルキル又はアリールから選ばれる)
の構造を有する。一部の態様において、フルオロホスファイト化合物は下記構造:
【0042】
【化11】

【0043】
を有する。一部の態様において、フルオロホスファイト化合物は下記構造:
【0044】
【化12】

【0045】
を有する。
【0046】
本発明のフルオロホスファイト化合物は任意の効果的な方法によって製造できる。フルオロホスフェートを製造するための種々の方法が文献に記載されている。例えばフルオロホスファイトは、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ(α,α−ジメチルベンジル)フェノール)のような(ベンジル)フェノール出発原料を用いて、米国特許第4,912,155号;Tullock et al.,J.Org.Chem.,25,2016(1960);White et al.,J.Am.Chem.Soc.,92,7125(1970);Meyer et al.,Z.Naturforsch,Bi.Chem.Sci.,48,659(1993);又はPuckette,”Catalysis of Organic Reactions”,S.R.Schmidt編,CRC Press(2006),pp.31-38に記載された方法に従って製造できることがわかっている。
【0047】
本発明によって提供される新規触媒系は、第VIII族金属及びレニウムから選ばれた1種又はそれ以上の遷移金属と先に詳述した1種又はそれ以上のフルオロホスファイト化合物との組合せを含む。遷移金属は、遷移金属のカルボキシレート塩のような種々の金属化合物の形態で提供できる。一部の態様において、金属はロジウムである。
【0048】
活性触媒のロジウム供給源として使用できるロジウム化合物は、カルボン酸のロジウム(II)又はロジウム(III)塩を含み、その例としては四酢酸二ロジウム二水和物、酢酸ロジウム(II)、イソ酪酸ロジウム(II)、2−エチルヘキサン酸ロジウム(II)、安息香酸ロジウム(II)及びオクタン酸ロジウム(II)が挙げられる。また、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16及びロジウム(I)アセチルアセトネートジカルボニルのようなロジウムカルボニル種も適当なロジウム供給材料であることができる。更に、供給される錯体のホスフィン部分が本発明のホスファイト配位子で容易に置換される場合には、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムカルボニルヒドリドのようなロジウム有機ホスフィン錯体を使用できる。他のロジウム供給源としては、塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩などのような強酸のロジウム塩が挙げられる。
【0049】
フルオロホスファイト配位子(グラムモル)対遷移金属(グラム原子)の比は広範囲にわたって変化することができ、例えばフルオロホスファイト(グラムモル):遷移金属(グラム原子)比は1:1〜400:1であることができる。ロジウム含有触媒系については、一部の実施態様ではフルオロホスファイト(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比は1:1〜200:1の範囲、又は1:1〜120:1の範囲である。反応混合物又は溶液中のロジウムの絶対濃度は1mg/リットル〜5000mg/リットル又はそれ以上であることができる。本発明の一部の態様において、反応溶液中のロジウムの標準的な濃度は20〜300mg/リットルの範囲である。ロジウム濃度がこの範囲を下回ると、一般にほとんどのオレフィン反応体に関して反応速度が遅くなり、しかも/又は触媒安定性を損なうほど高い反応器運転温度が必要となる。ロジウム濃度がこの範囲を上回ると、ロジウムコストが高くなる。
【0050】
本発明の触媒系及び溶液の調製には特殊な又は普通でない技術は必要ないが、一部の態様においては、ロジウム及びフルオロホスファイト配位子成分の全操作を不活性雰囲気下で、例えば窒素、アルゴンなどの雰囲気下で実施する場合に高活性の触媒が得られる。望ましい量の適当なロジウム化合物及び配位子を反応器中の適当な溶媒中に装入する。種々の触媒成分又は反応体の装入順は重要ではない。
【0051】
ヒドロホルミル化溶媒は、ヒドロホルミル化方法が実施されている圧力において液体である多種の化合物、化合物の混合物又は材料から選ばれることができる。このような化合物及び材料には、種々のアルカン、シクロアルカン、アルケン、シクロアルケン、炭素環式芳香族化合物、アルコール、エステル、ケトン、アセタール、エーテル及び水などがある。このような溶媒の具体例としては、ドデカン、デカリン、オクタン、イソオクタン混合物、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロドデカン、メチルシクロヘキサンのようなアルカン及びシクロアルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン異性体、テトラリン、クメン、アルキル置換芳香族化合物(例えばジイソプロピルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼンの異性体)のような芳香族炭化水素;1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエン、オクテン−1、オクテン−2、4−ビニルシクロヘキセン、シクロヘキセン、1,5,9−シクロドデカトリエン、1−ペンテンのようなアルケン及びシクロアルケン;ナフサ、鉱油、ケロシンのような粗製炭化水素混合物;並びに2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートのような高沸点エステルが挙げられる。ヒドロホルミル化方法のアルデヒド生成物も使用できる。
【0052】
一部の態様において、溶媒は、ヒドロホルミル化反応とアルデヒド生成物の単離に必要であり得るその後の工程(例えば蒸留)からなる方法の間に必然的に形成される比較的高沸点の副生成物である。この溶媒の主な基準は、溶媒が触媒及びオレフィン基材を溶解させるが触媒の作用を損なわないことである。揮発性アルデヒド、例えばブチルアルデヒドの製造のための溶媒のいくつかの例には、大部分がガススパージ反応器中に残る充分に高沸点の溶媒がある。それほど揮発性でないアルデヒド生成物及び不揮発性アルデヒド生成物の製造において有用な溶媒及び溶媒の組合せの例をいくつか挙げると、1−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ペルフルオロ化溶媒、例えばペルフルオロ−ケロシン、スルホラン、水及び高沸点炭化水素液体並びにこれらの溶媒の組合せなどである。ヒドロホルミル化溶媒として有利に使用できるのは一般に非ヒドロキシル化合物、特に炭化水素である。これは、それらを使用すると、フルオロホスファイト配位子の分解を最小限に抑えることができるためである。
【0053】
別の面において、本発明は、ヒドロホルミル化条件下で本明細書中に記載した触媒溶液の存在下で、オレフィンと水素及び一酸化炭素とを接触させることを含んでなるアルデヒドの製造方法を提供する。
【0054】
本発明の方法の反応条件は従来のヒドロホルミル化条件であることができる。この方法は、20〜200℃の範囲の温度で実施でき、一部の態様においてはヒドロホルミル化反応温度は50〜135℃である。一部の態様において、反応温度は75〜125℃の範囲である。反応器温度がこれより高いと、触媒の分解速度が増加する可能性があり、反応器温度がこれより低いと反応速度が比較的遅くなる可能性がある。全反応圧力は周囲圧力又は大気圧から70バール(絶対)(1000psig)までの範囲であることができる。一部の態様においては、圧力は8〜28バール(絶対)(100〜400psig)の範囲である。
【0055】
反応器中の水素:一酸化炭素のモル比は10:1〜1:10の範囲でかなり変化でき、水素と一酸化炭素の絶対分圧の和は0.3〜36バール(絶対)の範囲であることができる。供給材料中の前記水素/一酸化炭素比のそれぞれの分圧は、目的とする直鎖;分岐鎖異性体比に応じて選択できる。一般に、反応器中の水素及び一酸化炭素の分圧は、各ガスに関して1.4〜13.8バール(絶対)(20〜200psia)の範囲内に保持できる。反応器中の一酸化炭素の分圧は、1.4〜13.8バール(絶対)(20〜200psia)の範囲内に保持でき、水素分圧とは独立して変化させることができる。水素対一酸化炭素のモル比は、水素及び一酸化炭素のこれらの分圧範囲内で広範囲に変化させることができる。水素対一酸化炭素の比及び合成ガス(シンガス−一酸化炭素及び水素)中のそれぞれの分圧は、シンガス流に水素又は一酸化炭素を添加することによって容易に変化させることができる。本明細書中に記載したフルオロホスファイト配位子を用いれば、反応器中の一酸化炭素分圧を変化させることによって直鎖生成物対分岐鎖生成物の比を広範に変化させることができる。
【0056】
本発明によって提供される方法の実施には、公知のヒドロホルミル化反応器の設計及び形状のいずれか、例えばオーバーフロー式反応器及び蒸気抜き取り式反応器(vapor take-off reactor)を使用できる。従って、本明細書中に示した実施例中において開示したようなガススパージ蒸気抜き取り式反応器設計を使用できる。この操作様式においては、加圧下で高沸点有機溶媒中に溶解された触媒は反応ゾーンから出ていかず、アルデヒド生成物は未反応のガスによって頂部に搬送される。頂部ガスは次に、気液分離器中で冷却されてアルデヒド生成物が液化される。ガスは反応器に再循還させることができる。液体生成物は分離及び精製のために常法によって大気圧まで減圧させる。この方法は、また、回分式でオレフィン、水素及び一酸化炭素をオートクレーブ中で本発明の触媒と接触させることによって実施することもできる。
【0057】
触媒及び供給原料を反応器中にポンプ注入し且つ生成物アルデヒドと共にオーバーフローさせる反応器設計、即ち液体オーバーフロー式反応器設計も適当である。例えばノニルアルデヒドのような高沸点アルデヒド生成物は、液体として触媒と一緒に反応ゾーンから除去しながら、連続的に製造できる。アルデヒド生成物は、蒸留又は抽出のような常法によって触媒から分離でき、触媒は次に反応器に再循還させることができる。アリルアルコールのヒドロホルミル化によって得られるヒドロキシブチルアルデヒド生成物のような水溶性アルデヒド生成物は、抽出技術によって触媒から分離できる。トリクルベッド反応器設計も本方法に適する。当業者には、他の反応器形式を本発明に使用できることが明白であろう。
【0058】
本発明の出発原料として使用するオレフィンは特に限定はしない。具体的には、オレフィンはエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、スチレン、非共役ジエン、例えば1,5−ヘキサジエン及びこれらのオレフィンのブレンドであることができる。更に、オレフィンは、官能基がヒドロホルミ化反応を阻害しない限り、そのような官能基で置換されることができる。オレフィンの適当な置換基は、ヒドロホルミル化反応を阻害しない任意の官能基を含み、その例としては、カルボン酸及びそれらの誘導体(例えばエステル及びアミド)、アルコール、ニトリル並びにエーテルのような基が挙げられる。置換オレフィンの例としては、アクリル酸メチル又はオレイン酸メチルのようなエステル、アリルアルコール及び1−ヒドロキシ−2,7−オクタジエンのようなアルコール、並びにアクリロニトリルのようなニトリルが挙げられる。
【0059】
反応混合物中に存在するオレフィンの量も変化し得る。例えば1−オクテンのような比較的高沸点のオレフィンは、オレフィン反応体とプロセス溶媒の両方の役割を果たすことができる。プロピレンのような気体オレフィン供給原料のヒドロホルミル化においては、反応器の蒸気空間中の分圧は0.07〜35バール(絶対)の範囲である。反応速度には、反応器中のオレフィン濃度は高い方が有利であると考えられる。プロピレンのヒドロホルミル化において、一部の実施態様では、プロピレンの分圧は1.4バール(絶対)超、例えば1.4〜10バール(絶対)である。エチレンのヒドロホルミル化の場合には、一部の態様において、反応器中のエチレンの分圧は0.14バール(絶対)超である。
【実施例】
【0060】
本発明は更に、その態様についての以下の実施例によって説明することができるが、これらの実施例は単に説明のために記載するのであって、本発明の範囲を限定することを目的としないことがわかるであろう。特に断らない限り、全ての百分率は重量に基づく。本明細書全体を通して使用するように、「置換(された)」分子又は部分は、その分子又は部分が、水素原子があったであろうその分子又は部分上の位置に1つ又はそれ以上の置換基を含むことを意味する。従って、アルキル置換基を有する「置換(された)」アリール分子は、例えばトルエンのようなアルキルベンゼンを含むであろう。
【0061】
配位子Aの製造
配位子Aは、出発原料2,2’−メチレンビス(4,6−ジ(α,α−ジメチルベンジル)フェノール)から、米国特許第4,912,155号(その全内容を引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載された方法に従って合成した。配位子Aは、トルエン、アセトン、シクロヘキサン、酢酸エチルなどのような一般的な有機溶媒に非常に溶解し易い。
【0062】
配位子Aの分光分析データ:
【0063】
【化13】

【0064】
配位子Aは新規化合物であり、31P NMR(CDCl3中)において121.6ppmを中心とする二重線(JF-P=1320Hz)を示す。配位子Aの19F NMRの化学シフトは、−64.9ppmを中心とする二重線(JP-F=1301Hz)を示す。配位子Aの1H NMR(CDCl3中)の化学シフト(ppm)は以下の通りである:1.42(s,6H),1.58(s,6H),1.67(s,12H),3.28(d,1H),3.90(dd,1H),6.96〜7.31(m,24H)。
【0065】
配位子Bの製造
配位子Bは、出発原料2,4−ジ−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールから、米国特許第4,912,155号に記載された方法に従って合成した。配位子Bは、一般的な溶媒中には配位子Aよりわずかに溶解しにくい。
【0066】
配位子Bの分光分析データ:
【0067】
【化14】

【0068】
配位子Bは新規化合物であり、31P NMR(CDCl3中)において119.89ppmを中心とする二重線(JF-P=1265Hz)を示す。配位子Bの19F NMRの化学シフトは、−57.81ppmを中心とする二重線(JP-F=1255Hz)を示す。配位子Bの1H NMR(CDCl3中)の化学シフト(ppm)は以下の通りである:1.54(s,6H),1.57(s,6H),1.69(s,12H),6.47(d,2H),7.03(d,2H),7.13〜7.35(m,22H)。
【0069】
配位子C
配位子Cは、Puckette,”Catalysis of Organic Reactions”,S.R.Schmidt編,CRC Press(2006),pp.31から引用した化合物である。この文献に記載された配位子もまた、フルオロホスファイト(Ethanox 398(登録商標);2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスファイト)である。
【0070】
【化15】

【0071】
配位子D
配位子Dは、出発原料2,4−ジ−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールから、米国特許第4,912,155号に記載された方法に従って合成した。
【0072】
【化16】

【0073】
配位子Dは新規化合物であり、31P NMR(CDCl3中)において105.9ppmを中心とする二重線(JF-P=1286Hz)を示す。配位子Aの19F NMRの化学シフトは、−61.5ppmを中心とする二重線(JP-F=1297Hz)を示す。配位子Dの1H NMR(CDCl3中)の化学シフト(ppm)は以下の通りである:1.39(d,3H),1.50(s,6H),1.62(s,6H),1.70(s,12H),4.31(br s,1H),6.97(s,2H),7.11〜7.31(m,22H)。
【0074】
ヒドロホルミル化方法のセットアップ
プロピレンを水素及び一酸化炭素と反応させてブチルアルデヒドを生成するヒドロホルミル化方法を、内径2.5cm及び長さ1.2mの垂直に配置されたステンレス鋼パイプから成る蒸気抜き取り式反応器中で実施した。反応器は熱油装置に接続された外部ジャケットで覆った。反応器には、反応器の底部近くの側面下方に気体反応体入口用のフィルターエレメントが溶接されている。反応器は、ヒドロホルミル化反応混合物の温度を正確に測定するために、反応器の中心に反応器に対して軸方向に配置された熱電対を含んでいた。反応器の底部は十字継手に接続された高圧管接続部を有する。十字継手への接続部の1つは比較的高沸点のアルケン又は補給溶媒のような非気体反応体の添加を可能にし、別の1つは、反応器中の触媒レベルの測定に使用される差圧(D/P)セルの高圧接続部に通じており、底部接続部はランの最後に触媒溶液の排出のために使用された。
【0075】
蒸気抜き取り操作様式でのプロピレンのヒドロホルミル化においては、触媒を含むヒドロホルミル化反応混合物又は溶液は、入ってくるプロピレン、水素及び一酸化炭素の反応体並びに窒素のような任意の不活性供給材料によって加圧下でスパージされた。触媒溶液中でブチルアルデヒドが形成されるにつれて、ブチルアルデヒドと未反応の反応体ガスを反応器上部からサイドポートによって蒸気として除去した。除去された蒸気を高圧分離器中で冷却し、そこでブチルアルデヒド生成物を一部の未反応プロピレンと共に凝縮させた。凝縮されなかったガスは、圧力調整弁によって大気圧まで減圧させた。これらのガスは一連のドライアイストラップを通し、ドライアイストラップにおいて全ての他のアルデヒド生成物を収集した。高圧分離器からの生成物をドライアイストラップの生成物と合し、続いて秤量し、標準的な気相/液相クロマトグラフィー(GC/LC)技術によってブチルアルデヒド生成物の正味重量及びノルマル/イソ比について分析した。
【0076】
反応器への気体供給材料は2筒式マニホールド(twin cylinder manifold)及び高圧調整器によって反応器に供給した。水素をマスフローコントローラー、次いで市販のDeoxo(Englehard Inc.の登録商標)触媒床に通して、全ての酸素混入物を除去した。一酸化炭素は鉄カルボニル除去床(米国特許第4,608,239号に開示)、125℃に加熱された同様なDeoxo床、次いでマスフローコントローラーに通した。供給材料混合物には窒素を不活性ガスとして添加できる。窒素は、添加する場合には、水素Deoxo床の前で、水素供給材料中に計量供給し、水素供給材料と混合した。プロピレンは、水素で加圧された供給タンクから反応器に供給し、液体質量流量計を用いて制御した。全ての気体及びプロピレンは、液体プロピレンの完全な気化を確実にするために予熱装置に通してから、反応器に入れた。
【0077】
比較例1〜3(配位子C)
比較例1〜3は配位子対Rhのモル比の増加(配位子濃度の増加)につれてヒドロホルミル化活性が低下することを説明するために、Puckette,”Catalysis of Organic Reactions”,S.R.Schmidt編,CRC Press(2006),pp.31-38から直接引用した。この文献に記載された配位子はフルオロホスファイト(Ethanox 398(登録商標);2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスファイト)(配位子C)である。
【0078】
この文献に従って、260psig、115℃、H2/CO 1:1、C36 54psia及びビス−2−エチルヘキシルフタレート溶媒(DOP)190mLで、種々の量の配位子を用いて、反応を行った。データを以下の表Iに示す。触媒活性はブチルアルデヒド(kg)/Rh(g)/時で表す。
【0079】
比較例4(配位子B)
この例は、プロピレンのヒドロホルミル化のための、典型的なヒドロホルミル化ラン及び配位子Bの使用を説明する。
【0080】
触媒溶液の調製は、ロジウム7.5mg(0.075ミリモル,2−エチルへキサン酸ロジウムとして)、配位子B(O,O−ジ−2,4−α,α−ジメチルベンジルフェニル)フルオロホスファイト)0.80g(1.125ミリモル)、ノルマル−ブチルアルデヒド20ml及びビス−2−エチルヘキシルフタレート溶媒(DOP)190mlから成る装入材料を用いて、窒素下で行った。均一な溶液が得られるまで、混合物を窒素下で撹拌した(必要ならば加熱した)。混合物を、前記と同様にして反応器に装入し、反応器をシールした。反応器の圧力調整を17.9バール(260psig)に設定し、反応器表面の外部オイルジャケットを85℃に加熱した。水素、一酸化炭素、窒素及びプロピレンの蒸気を反応器底部のフリットを通して供給し、反応器の圧力を上昇させた。水素及び一酸化炭素(H2/CO比は1:1に設定した)は6.8リットル/分の速度で反応器に供給し、窒素供給は1.0リットル/分に設定した。プロピレンは液体として計量し、1.89リットル/分(212g/時)の速度で供給した。外部油温度を調節して、85℃の内部反応器温度を保持した。ユニットを5時間運転し、1時間毎にサンプルを採取した。1時間毎のサンプルを、標準的なGC法を用いて前述のようにして分析した。最後の3つのサンプルを用いて、N/I比及び触媒活性を測定した。最後の3時間の触媒活性は平均してブチルアルデヒド13.2kg/ロジウム(g)/時であった。生成物のN/I比は1.40であった。
【0081】
比較例5及び6(配位子B)
ヒドロホルミル化実験を、配位子Bを異なる量で用いる以外は比較例4と同様にして実施した。この研究の反応条件及び結果を表Iに示す。
【0082】
実施例7〜10(配位子A)
ヒドロホルミル化実験を、種々の量の配位子Aを用いる以外は比較例4と同様にして実施した。この研究の反応条件及び結果を表Iに示す。
【0083】
【表1】

【0084】
*活性は生成ブチルアルデヒド(kg)/ロジウム(g)/時として求めた。例は全て、0.075ミリモルのRhを用いて行った。
【0085】
比較例1〜3は同一の反応温度及び圧力下におけるヒドロホルミル化反応活性が15.7から3.3まで一貫して低下したことを示している。
【0086】
比較例4、5及び6もまたリン配位子の典型的な従来型の挙動を示している。同一反応温度及び圧力下では、ヒドロホルミル化活性は13.2から5.0まで一貫して低下した。
【0087】
実施例7〜10は配位子Aの望ましい性質を示している。配位子Aと配位子Bの差は、配位子Aがシクロ環(cyclic ring)構造を有する(メチレン基が2つの芳香環を連結する)ことである。実施例7は、配位子/Rh比が15:1の場合に3.0の活性を示した。配位子/Rh比が同一反応温度及び圧力下で90:1まで増加すると、活性は6.67まで増加した。実施例7〜10におけるヒドロホルミル化活性の変化の傾向は、比較例1〜3又は比較例4〜6において示された傾向とは全く反対である。実施例11〜13は、配位子Dの望ましい性質を示している。実施例11〜13からは、配位子/Rh比が15:1から30:1まで増加すると、触媒活性が3.72から15.46まで増加し、N/I比が1.41から2.72までの対応する増加を示すことがわかる。
【0088】
本発明を特にその好ましい態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内であれば、変形形態及び変更形態を行えることがわかるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、炭素数4〜30の、置換又は非置換のアリール基から選ばれ;
R1〜R6は、それぞれ独立に、H並びに炭素数1〜40の、置換又は非置換のアルキルシクロアルキル及びアリール基から選ばれ;
Xは、(i)R1〜R4がそれぞれメチルである場合を除いて、各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、
(ii)O、Si及びNから選ばれたヘテロ原子又は
(iii)式:
【化2】

(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1〜10のアルキル又はアリールから選ばれる)
を有する基である)
の構造を有するフルオロホスファイト化合物。
【請求項2】
Ar1及びAr2が、それぞれ独立に、式(II)〜(IV):
【化3】

(式中、R7及びR8はアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボキシレート塩、アルコキシ−カルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸及びスルホネート塩から独立に選ばれ;
mは0〜5の整数であり;
nは0〜7の整数である)
の構造を有するアリール基から選ばれる請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R7及びR8が炭素数1〜10のアルキルから独立に選ばれ且つm及びnが独立に0、1又は2である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(XI):
【化4】

(式中、R15は水素及び炭素数1〜10のアルキル又はアリールから選ばれる)
の構造を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
下記構造:
【化5】

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
下記構造:
【化6】

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
(a)フルオロホスファイト化合物;
(b)第VIII族金属又はレニウム;及び
(c)ヒドロホルミル化溶媒
を含んでなり、前記フルオロホスファイト化合物が式(I):
【化7】

(式中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、炭素数4〜30の、置換又は非置換のアリール基から選ばれ;
R1〜R6は、それぞれ独立に、H並びに炭素数1〜40の、置換又は非置換のアルキルシクロアルキル及びアリール基から選ばれ;
Xは、(i)各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、
(ii)ヘテロ原子又は
(iii)式:
【化8】

(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1〜10のアルキル又はアリールから選ばれる)
を有する基である)
の構造を有する触媒溶液。
【請求項8】
Ar1及びAr2が、それぞれ独立に、式(II)〜(IV):
【化9】

(式中、R7及びR8はアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボキシレート塩、アルコキシ−カルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸及びスルホネート塩から選ばれ;
mは0〜5の整数であり;
nは0〜7の整数である)
の構造を有するアリール基から選ばれ;
の構造を有するアリール基から独立に選ばれる請求項7に記載の触媒溶液。
【請求項9】
R7及びR8が炭素数1〜10を有するアルキルから独立に選ばれ且つm及びnが独立に0、1又は2である請求項8に記載の触媒溶液。
【請求項10】
前記フルオロホスファイト化合物が式(XI):
【化10】

(式中、R15は水素及び炭素数1〜10のアルキル又はアリールから選ばれる)
の構造を有する請求項7に記載の触媒溶液。
【請求項11】
前記フルオロホスファイト化合物が下記構造:
【化11】

を有する請求項7に記載の触媒溶液。
【請求項12】
前記フルオロホスファイト化合物が下記構造:
【化12】

を有する請求項7に記載の触媒溶液。
【請求項13】
前記第VIII族金属がロジウムである請求項7〜12のいずれかに記載の触媒溶液。
【請求項14】
20〜300mg/lのロジウム及び1:1〜200:1のフルオロホスファイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比を含む請求項7〜13のいずれかに記載の触媒溶液。
【請求項15】
前記ヒドロホルミル化溶媒がアルカン、シクロアルカン、アルケン、シクロアルケン、アルコール、エステル、ケトン、アセタール、エーテル、アルデヒド、水及びそれらの混合物から選ばれる請求項7〜14のいずれかに記載の触媒溶液。
【請求項16】
ヒドロホルミル化条件下で請求項7〜15のいずれかに記載の触媒溶液の存在下においてオレフィンを水素及び一酸化炭素と接触させることを含んでなるアルデヒドの製造方法。
【請求項17】
前記ヒドロホルミル化条件が75〜125℃の範囲の温度及び大気圧〜70バール(絶対)(15〜1,000psig)の圧力を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記オレフィンがプロピレンであり且つ前記アルデヒドがノルマル−及びイソ−ブチルアルデヒドを含む請求項16又は17に記載の方法。

【公表番号】特表2011−507954(P2011−507954A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540645(P2010−540645)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/013773
【国際公開番号】WO2009/085160
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】