説明

ヒンジ及び箱状体

【課題】回動及び固定を行うことのできるヒンジ、並びに、このヒンジを有し、組立及び展開の可能な箱状体の提供を目的とする。
【解決手段】ヒンジ1は、ピン21、係合用スペース22及び被当接面23を有する第一の部材2と、長孔31、当接面32、33及び六角穴付き止めねじ34を有し、第一の部材2と連結される第二の部材3とを備え、ピン21が長孔31内の回動位置にあるとき、第二の部材3が回動可能な状態となり、ピン21が長孔31内の固定位置にあるとき、当接面32又は当接面33が被当接面23と当接した状態で、第二の部材3が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ及び箱状体に関し、特に、回動及び固定を行うことのできるヒンジ、並びに、このヒンジを有し、組立及び展開の可能な箱状体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジは、扉などの部材を回動可能に取り付ける手段として、広く普及しており、様々な構造のヒンジが提案されている。
また、家具、システムキッチン及び机、並びに、それらの引出などの箱物は、設置場所にて組み立てられるようにすると、輸送積載量、輸送コスト、保管スペース、保管コスト、梱包材コストなどにおいて、大きなメリットを有している。このため、ヒンジを利用することにより、折りたたみを可能とした箱物(箱状体)なども提案されている。
【0003】
また、本発明に関連する様々な技術が提案されている。
たとえば、特許文献1には、長期間にわたってガタを生じないヒンジを提供することを目的として、
一方のヒンジ半体の筒部に、軸を固着し、他方のヒンジ半体の筒部に、軸を回動自在に保持するとともに該筒部の内周面から先端が突出して軸の側面を押圧する押圧部材を設けたことを特徴とするヒンジの技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、収納机の技術が開示されており、この技術には、反転軸が摺動条溝(長穴)を移動する蝶番(ヒンジ)が使用されている。
【0005】
また、特許文献3には、四角形底板と、この四角形底板に蝶番(ヒンジ)を介して取り付けられた対向する一対の囲壁と、該一対の囲壁と係合する一対の囲壁とを有する折りたたみ箱の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−57756号公報
【特許文献2】特開昭55−60413号公報
【特許文献3】特開平10−7138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1〜3の技術に用いられるヒンジは、一方の部材と他方の部材とを回動可能に連結することができるものの、所定の連結角度で固定することができない構造であった。すなわち、一方の部材と他方の部材とを回動可能に連結することができ、さらに、所定の連結角度で固定することもできるといった要望に応えることができないといった問題があった。
【0008】
また、特許文献3の折りたたみ箱の技術は、囲壁に凹凸を形成する必要があり、構造が複雑となるといった問題があった。
さらに、組立及び展開の可能な箱状体においては、機械的強度、作業性及び審美性などを向上させることも要望されていた。
【0009】
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、回動及び固定を行うことのできるヒンジ、並びに、このヒンジを有し、組立及び展開の可能な箱状体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のヒンジは、ピン、係合用スペース及び被当接面を有する第一の部材と、ピンが貫通する長孔、被当接面と当接する二つ以上の当接面、及び、長孔内においてピンを位置決めする位置決め手段を有し、第一の部材と連結される第二の部材とを備え、ピンが長孔内の回動位置にあるとき、第二の部材が第一の部材に対して回動可能な状態となり、ピンが長孔内の固定位置にあるとき、二つ以上の当接面の一つが被当接面と当接した状態で、第二の部材が第一の部材に固定される構成としてある。
【0011】
また、本発明の箱状体は、ヒンジ、底板及び側板を有し、組立及び展開の可能な箱状体において、ヒンジが、上記のヒンジであり、第一の部材に底板又は側板が取り付けられ、第二の部材に側板又は底板が取り付けられる構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒンジによれば、長孔内のピンの位置によって、第二の部材を第一の部材に対して回動させることができ、また、第二の部材を第一の部材に所定の連結角度(当接面に対応する角度)で固定することができる。さらに、当接面が被当接面に当接することによって、がたつかない状態で第二の部材を強固に固定することができる。したがって、ヒンジとしての付加価値を向上させることができる。
また、本発明の箱状体は、上記のヒンジを用いることにより、組立及び展開を容易に行うことができ、さらに、組立及び展開時における機械的強度などを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態にかかるヒンジを説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)はA−A断面図を示している。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態にかかるヒンジの第一の部材を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態にかかるヒンジの第二の部材を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示しており、(c)はB−B矢視図を示している。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態にかかるヒンジの動作を説明するための概略図を示している。
【図5】図5は、本発明の第一実施形態にかかる箱状体及びその動作を説明するための要部の概略図を示している。
【図6】図6は、本発明の第二実施形態にかかるヒンジを説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)はC−C拡大断面図を示している。
【図7】図7は、本発明の第二実施形態にかかるヒンジの第一の部材を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
【図8】図8は、本発明の第二実施形態にかかるヒンジの第二の部材を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示しており、(c)はD−D矢視図を示している。
【図9】図9は、本発明の第二実施形態にかかる箱状体及びその動作を説明するための要部の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ヒンジ及び箱状体の第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態にかかるヒンジを説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)はA−A断面図を示している。
図1において、本実施形態のヒンジ1は、第一の部材2及び第二の部材3を備えた構成としてある。このヒンジ1は、後述するように、箱状体4に用いられ、第一の部材2に第一取付部材41が取り付けられ、第二の部材3に第二取付部材42が取り付けられる。
なお、第一の部材2及び第二の部材3の材質は、通常、樹脂又は金属であり、本実施形態では、樹脂としてある。
【0015】
(第一の部材)
図2は、本発明の第一実施形態にかかるヒンジの第一の部材を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
図2において、第一の部材2は、ピン21、係合用スペース22及び被当接面23などを有している。また、第一の部材2は、図2(a)に示すように、ほぼ溝型状の平板状部材24を有しており、平板状部材24は樹脂製としてある。
【0016】
ピン21は、通常、鋼製の丸棒としてあり、係合用スペース22を挟むように対向する平板状部材24の一対の部分に取り付けられる。この一対の部分には、ピン21が嵌入されるピン用孔243が形成され、また、六角穴付き止めねじ244が締め込まれる雌ねじが切られている。また、ピン21は、第二の部材3が係合用スペース22に嵌入された状態で、ピン用孔243及び長孔31に貫入され、六角穴付き止めねじ244が締め込まれることにより、平板状部材24に固定される。
また、係合用スペース22は、第二の部材3が嵌入され、第二の部材3と係合するスペースである。
また、被当接面23は、係合用スペース22を形成する中央側の端面である。
【0017】
また、本実施形態の平板状部材24は、表面(上面245)が被当接面23と直交している。
また、好ましくは、平板状部材24は、第一の部材2に取り付けられる第一取付部材41と係合する第一の凹部241を有しているとよい。このようにすると、第一の凹部241が第一取付部材41と係合するので、容易にかつ位置精度に優れた状態で第一取付部材41を第一の部材2に取り付けることができる。また、第一の凹部241と対応する平板状部材24の部分には、第一取付部材41を螺着するためのねじ孔242が形成されている。
【0018】
(第二の部材)
図3は、本発明の第一実施形態にかかるヒンジの第二の部材を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示しており、(c)はB−B矢視図を示している。
図3において、第二の部材3は、長孔31、当接面32、当接面33、及び、尖り先の六角穴付き止めねじ34などを有しており、第一の部材2と連結される。また、第二の部材3は、図3(c)に示すように、ほぼT字状の平板状部材35を有しており、平板状部材35は樹脂製としてある。
また、平板状部材24及び平板状部材35を樹脂製とすることにより、量産性、経済性(製造原価のコストダウン)及びデザイン性などを向上させることができる。
【0019】
長孔31は、ピン21が貫通する孔としてあり、長孔31の長手方向は、当接面32に対してほぼ平行としてある。
ここで、好ましくは、長孔31の長手方向が、当接面32に対して所定の方向に傾斜しているとよい。なお、所定の方向とは、図3(b)に示すように、長孔31を時計回り方向に微小角度(たとえば、数度)だけ回転させた方向であり、すなわち、当接面32から長孔31内の固定位置(上方の位置)までの距離が、当接面32から長孔31内の回動位置(下方の位置)までの距離より長くなる方向をいう。
このようにすると、ピン21を長孔31内の回動位置(下方の位置)から固定位置(上方の位置)に移動させる際、第二の部材3は斜め下方に移動しつつ当接面32が被当接面23に押し当てられる(楔効果)ので、第二の部材3を強固に固定することができる。また、ピン21を長孔31内の固定位置(上方の位置)から回動位置(下方の位置)に移動させる際、当接面32が被当接面23から離れる方向に移動するので、作業性などを向上させることができる。
【0020】
当接面32及び当接面33は、被当接面23と当接する面であり、本実施形態では、二つの当接面(当接面32及び当接面33)を有している。一方の当接面(当接面32)は、平板状部材35の表面と平行であり、他方の当接面(当接面33)は、平板状部材35の表面と直交している。このようにすると、後述するように、平板状部材35が、平板状部材24に対して、直交又は平行となる状態で固定することができる。
なお、図示してないが、当接面の数は、二つに限定されるものではなく、三つ以上であってもよい。また、連結角度も直交(90°)や平行(180°)に限定されるものではない。
【0021】
尖り先の六角穴付き止めねじ34は、長孔31内においてピン21を位置決めする位置決め手段としてある。すなわち、平板状部材35に締め込まれた六角穴付き止めねじ34は、長孔31に進入し、先の尖った先端部がピン21と当接し、ピン21を長孔31内の固定位置(上方の位置)に移動させ、この状態を維持する。これにより、ヒンジ1は、ピン21が長孔31内の固定位置にあるとき、当接面32又は当接面33が被当接面23と当接した状態で、第二の部材3が第一の部材2に固定される。
また、ヒンジ1は、平板状部材35に締め込まれた六角穴付き止めねじ34が緩める方向に回され、先端部が長孔31から後退すると、ピン21が回動位置(下方の位置)に移動することができる。これにより、ヒンジ1は、ピン21が長孔31内の回動位置にあるとき、第二の部材3が第一の部材2に対して回動可能な状態となる。
【0022】
このように、ヒンジ1は、長孔31内のピン21の位置によって、第二の部材3を第一の部材2に対して回動させることができ、また、第二の部材3を第一の部材2に所定の連結角度(当接面に対応する角度)で固定することができる。さらに、当接面32、33が被当接面23に当接することによって、がたつかない状態(セルフロックされた状態)で第二の部材3を強固に固定することができる。したがって、ヒンジ1は、付加価値を向上させることができる。
【0023】
また、本実施形態では、位置決め手段を平板状部材35に締め込まれる六角穴付き止めねじ34としてあるので、構造を単純化することができ、製造原価のコストダウンを図ることができる。
なお、位置決め手段は、尖り先の六角穴付き止めねじ34に限定されるものではない。たとえば、図示してないが、先端にくさび状の斜面が形成されたくさび状ピンを用いてもよく、このくさび状ピンは、第二の部材3の孔に係入されると、斜面がピン21と当接し、ピン21を長孔31内の固定位置(上方の位置)に移動させ、この状態を維持する。また、先端に偏心した凸部が形成された偏心ピンや偏心ねじを用いてもよく、この偏心ピンや偏心ネジは、第二の部材3の孔に回動可能に装入され、凸部が上方に位置するように回動されると、凸部がピン21と当接し、ピン21を長孔31内の固定位置(上方の位置)に移動させ、この状態を維持する。
【0024】
また、本実施形態の平板状部材35は、長孔31の形成されている部分が、係合用スペース22に嵌入される。
また、好ましくは、平板状部材35は、第二の部材3に取り付けられる第二取付部材42と係合する第二の凹部351を有しているとよい。このようにすると、第二の凹部351が第二取付部材42と係合するので、容易にかつ位置精度に優れた状態で第二取付部材42を第二の部材3に取り付けることができる。また、第二の凹部351と対応する平板状部材35の部分には、第二取付部材42を螺着するための取付用孔352が形成されている。
【0025】
(第一取付部材及び第二取付部材)
第一取付部材41は、通常、平板であり、図2に示すように、第一取付部材41の上面が第一の部材2の平板状部材24の上面245と同一平面となるように取り付けられる。
また、第二取付部材42は、通常、平板であり、図3に示すように、第二取付部材42の端面が第二の部材3の第二の凹部351の側面353と同一平面となるように取り付けられる。
ここで、好ましくは、第二の部材3の平板状部材35が第一の部材2の平板状部材24に対して直交となる状態で固定されるとき、第一の部材2の平板状部材24の上面245と第二の部材3の第二の凹部351の側面353が同一平面となるとよい。
このようにすると、第二の部材3の平板状部材35が第一の部材2の平板状部材24に対して直交となる状態で固定されるとき、第一取付部材41と第二取付部材42との間に、隙間ができるといった不具合を防止することができる。さらに、同様に直交となる状態で固定されるとき、第一の部材2の平板状部材24の上面245、及び、第二の部材3の当接面32が露出しない状態となり、後述するように(図5(c)参照)、ヒンジ1が、箱状体4の内側に現れない状態とすることができ、通常の家具と同様の審美性を有することができる。
【0026】
また、第一取付部材41は、図2に示すように、第一取付部材41の下面が平板状部材24の下面と同一平面となり、かつ、第一取付部材41の端面が平板状部材24の端面と同一平面となるように取り付けられる。
また、第二取付部材42は、図3(b)に示すように、第二取付部材42の二つの表面が平板状部材35の二つの表面とそれぞれ同一平面となるように取り付けられる。
このようにすると、平板状部材35が平板状部材24に対して直交となる状態で固定されるとき、第一取付部材41の端面と第二取付部材42の外表面が同一平面となるので、審美性を向上させることができる。
【0027】
さらに、平板状部材35が平板状部材24に対して平行となる状態で固定されるとき、平板状部材24の上面245と平板状部材35の当接面32が同一平面となるとよい。
このようにすると、平板状部材35が平板状部材24に対して平行となる状態で固定されるとき、第一取付部材41と第二取付部材42との上面どうしの間に、段差ができるといった不具合を防止することができる。
【0028】
また、後述するように、第一取付部材41が箱状体4の底板43であり、第二取付部材42が箱状体4の側板44、45であるとよい。
このようにすると、組立及び展開を容易に行うことのできる箱状体4を提供することができる。また、組み立てた際、側板44、45と底板43との間に隙間ができるといった不具合を防止することができる。
なお、箱状体4として、引出や梱包箱などが挙げられる。また、引出としては、引出を有する各種の組込式家具用引出などが挙げられる。
【0029】
次に、上記構成のヒンジ1の動作などについて、図面を参照して説明する。
図4は、本発明の第一実施形態にかかるヒンジの動作を説明するための概略図を示している。
図4(a)において、ヒンジ1は、第一取付部材41と第二取付部材42が平行となるように固定してある。すなわち、ヒンジ1は、当接面33と被当接面23とが当接しており、また、尖り先の六角穴付き止めねじ34が締め込まれており、ピン21を長孔31内の固定位置(図4(b)においては、右側の位置)に移動させている。
次に、図4(b)に示すように、ヒンジ1は、六角穴付き止めねじ34が緩められ、ピン21の係止が解除される。
【0030】
次に、図4(c)に示すように、ヒンジ1は、第二の部材3及び第二取付部材42が右側に移動され、ピン21が長孔31内の回動位置(図4(c)においては、左側の位置)に移動する。これにより、ヒンジ1は、第二の部材3が第一の部材2に対して回動可能な状態となる。
続いて、図4(d)に示すように、ヒンジ1は、第二の部材3及び第二取付部材42が、外周方向に引っ張られた状態で、反時計回り方向に90°回動される。
【0031】
次に、図4(e)に示すように、ヒンジ1は、第二の部材3及び第二取付部材42が下方に移動され、ピン21が長孔31内の固定位置(図4(e)においては、上方の位置)に移動する。
続いて、図4(f)に示すように、ヒンジ1は、六角穴付き止めねじ34が締め込まれる。これにより、ヒンジ1は、第一取付部材41と第二取付部材42が直角となるように固定される。すなわち、ヒンジ1は、当接面32と被当接面23とが当接しており、また、六角穴付き止めねじ34が締め込まれており、ピン21を長孔31内の固定位置(図1(b)においては、上方の位置)に保持している。
【0032】
このように、ヒンジ1は、六角穴付き止めねじ34を緩め、第二取付部材42を移動及び回動させ、六角穴付き止めねじ34を締め込む動作(すなわち、簡単な動作)によって、第一取付部材41と第二取付部材42が平行となるように固定されている状態から、第一取付部材41と第二取付部材42が直交するように固定されている状態となる。
なお、上記の動作を戻ることにより、ヒンジ1は、第一取付部材41と第二取付部材42が平行となるように固定されることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のヒンジ1によれば、長孔31内のピン21の位置によって、第二の部材3を第一の部材2に対して回動させることができ、また、第二の部材3を第一の部材2に所定の連結角度(当接面32、33に対応する角度)で固定することができる。さらに、当接面32、33が被当接面23に当接することによって、がたつかない状態(セルフロックされた状態)で第二の部材3を強固に固定することができる。
これにより、第一当接部材41と第二当接部材42の接合面どうしも当接し、第一当接部材41と第二当接部材42も、がたつかない状態(セルフロックされた状態)で強固に固定される。
【0034】
次に、上記ヒンジ1を用いた箱状体の実施形態について、図面を参照して説明する。
(箱状体)
図5は、本発明の第一実施形態にかかる箱状体及びその動作を説明するための要部の概略図を示している。
図5(a)において、箱状体4は、展開された状態にあり、上記のヒンジ1、第一取付部材41としての底板43、及び、第二取付部材42としての側板44、45などを備えている。すなわち、箱状体4は、ヒンジ1を有することにより、組立及び展開が可能な構成としてある。また、本実施形態の箱状体4は、底板43及び側板44、45が、通常、木製であり、ヒンジ組込式家具用引出などとして使用される。この箱状体4は、組み立てられる際、上述したように、六角穴付き止めねじ34が緩められ、側板44、45が外方向に移動された後、垂直状態となるように回動される。
ここで、展開された箱状体4は、ほぼ一枚板の状態となるので、重ねた状態で輸送したり、保管することができる。
なお、箱状体4は、側板45と対向する位置に、側板45とほぼ同様に、取っ手付き正面板など(図示せず)を有している。
【0035】
次に、箱状体4は、図5(b)に示すように、回動された側板44、45が下方に移動される。
続いて、箱状体4は、図5(c)に示すように、六角穴付き止めねじ34が締め込まれ、側板44、45が立てられた状態で固定される。この際、側板44、45は、上述したように、底板43との間に、隙間ができないように組み立てられ、また、側板44、45の外側表面が、底板43の端面と同一平面となるので、たとえば、特許文献3の折りたたみ箱と比べると、箱状体4は、品質、機械的強度及び審美性などにおいて優れている。
また、ヒンジ1が箱状体4の内側に現れないので、体裁がよく、通常の箱と変わりない形状となる。さらに、箱状体4に収められた収納物が、ヒンジ1に引っかかるといった不具合を防止することができる。
【0036】
なお、上記の動作を戻ることにより、箱状体4は、展開された状態に戻すことができる。
また、箱状体4は、側板44と側板45とを連結する連結手段(たとえば、ねじなど)を有する構成としてもよく、このようにすると、さらに機械的強度を向上させることができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の箱状体4は、ヒンジ1を用いることにより、組立及び展開を容易に行うことができ、さらに、組立及び展開時における機械的強度などを向上させることができる。また、箱状体4は、設置場所にて容易に組み立てることができ、輸送積載量、輸送コスト、保管スペース、保管コスト、梱包材コストなどにおいて、大きなメリットを有している。
【0038】
[ヒンジ及び箱状体の第二実施形態]
図6は、本発明の第二実施形態にかかるヒンジを説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)はC−C拡大断面図を示している。
図6において、本実施形態のヒンジ1aは、上述した第一実施形態のヒンジ1と比べると、第一の部材2a及び第二の部材3aが金属製である点、及び、キッチン用のヒンジ組込式引出などの箱状体4aに用いられる点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、ヒンジ1とほぼ同様としてある。
したがって、図6〜8において、図1〜3と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0039】
(第一の部材)
図7は、本発明の第二実施形態にかかるヒンジの第一の部材を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
図7において、第一の部材2aは、ピン21、係合用スペース22及び被当接面23などを有している。また、第一の部材2aは、図7(a)に示すように、ほぼ溝型状の平板状部材24aを有しており、平板状部材24aは金属製としてある。また、ピン21を固定する六角穴付き止めねじ244は、ピン21の下方から締め込まれる。
また、好ましくは、平板状部材24aは、第一の部材2aに取り付けられる第一取付部材41aと係合する第一の凹部241を有しているとよい。このようにすると、第一の凹部241が第一取付部材41aと係合するので、容易にかつ位置精度に優れた状態で第一取付部材41aを第一の部材2aに取り付けることができる。
【0040】
(第二の部材)
図8は、本発明の第二実施形態にかかるヒンジの第二の部材を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示しており、(c)はD−D矢視図を示している。
図8において、第二の部材3aは、長孔31、当接面32、当接面33、及び、六角穴付き止めねじ34などを有しており、第一の部材2aと連結される。また、第二の部材3aは、図8(c)に示すように、ほぼ矩形状の平板状部材35aを有しており、平板状部材35aは金属製としてある。
【0041】
また、第二の部材3aの長孔31(本実施形態では、長孔31は、二箇所に設けられている。)、当接面32、当接面33、及び、六角穴付き止めねじ34は、第一実施形態とほぼ同様な構成としてある。
したがって、ヒンジ1aは、長孔31内のピン21の位置によって、第二の部材3aを第一の部材2aに対して回動させることができ、また、第二の部材3aを第一の部材2aに所定の連結角度(当接面に対応する角度)で固定することができる。さらに、当接面32、33が被当接面23に当接することによって、がたつかない状態(セルフロックされた状態)で第二の部材3aを強固に固定することができる。したがって、ヒンジ1aは、付加価値を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態の平板状部材35aは、長孔31の形成されている部分が、係合用スペース22に嵌入される。
また、好ましくは、平板状部材35aは、第二の部材3aに取り付けられる第二取付部材42aと係合する第二の凹部351aを有しているとよい。このようにすると、第二の凹部351aが第二取付部材42aと係合するので、容易にかつ位置精度に優れた状態で第二取付部材42aを第二の部材3aに取り付けることができる。
また、第二の凹部351aと対応する平板状部材35aの部分には、第二取付部材42aを固定するための取付用孔352aが形成されている。また、第二取付部材42aは、ねじ及びナットなどの固定手段(図示せず)などによって固定されるが、特に限定されるものではない。
【0043】
(第一取付部材及び第二取付部材)
第一取付部材41aは、通常、平板であり、図7に示すように、第一取付部材41aの上面が第一の部材2aの平板状部材24aの上面より高い位置となるように取り付けられる。また、第一取付部材41aの端面が第一の部材2aの第一の凹部241の側面246と同一平面となるように取り付けられる。
また、第二取付部材42aは、通常、平板であり、図8に示すように、第二取付部材42aの端面が第二の部材3aの第二の凹部351aの側面353aと同一平面となるように取り付けられる。また、本実施形態では、第二取付部材42aを薄い金属板としてあり、第二の凹部351aの深さを、金属板の厚さとほぼ同じにしてある。
【0044】
ここで、好ましくは、第二の部材3aの平板状部材35aが第一の部材2aの平板状部材24aに対して直交となる状態で固定されるとき、第一の部材2aの平板状部材24aの上面245と第二の部材3aの第二の凹部351aの側面353aが同一平面となるとよい。
このようにすると、第二の部材3aの平板状部材35aが第一の部材2aの平板状部材24aに対して直交となる状態で固定されるとき、第一取付部材41aの端面に第二取付部材42aの表面がほぼ当接するので、第一取付部材41aと第二取付部材42aとの間に、隙間ができるといった不具合を防止することができる。
【0045】
また、後述するように、第一取付部材41aが箱状体4aの底板43aであり、第二取付部材42aが箱状体4aの側板44aであるとよい。
このようにすると、組立及び展開を容易に行うことのできる箱状体4aを提供することができる。また、組み立てた際、側板44aと底板43aとの間に隙間ができるといった不具合を防止することができる。
なお、箱状体4aとして、引出や梱包箱などが挙げられる。また、引出としては、ヒンジ組込式キッチン用引出などが挙げられる。
また、上記構成のヒンジ1aは、図示してないが、第一実施形態のヒンジ1とほぼ同様に動作する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のヒンジ1aによれば、第一実施形態のヒンジ1とほぼ同様の効果を奏することができ、また、第二取付部材42aが薄い金属板である場合であっても、好適に適用することができる。
次に、上記ヒンジ1aを用いた箱状体の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0047】
(箱状体)
図9は、本発明の第二実施形態にかかる箱状体及びその動作を説明するための要部の概略図を示している。
図9(a)において、箱状体4aは、展開された状態にあり、上記のヒンジ1、1a、第一取付部材41aとしての底板43a、及び、第二取付部材42aとしての側板44a、45aなどを備えている。すなわち、箱状体4aは、ヒンジ1、1aを有することにより、組立及び展開が可能な構成としてある。また、本実施形態の箱状体4aは、底板43a及び側板45aが、通常、木製であり、側板44aが、通常、金属製であり、ヒンジ組込式キッチン用引出などとして使用される。
ここで、展開された箱状体4aは、六角穴付き止めねじ34が締め込まれており、ほぼ一枚板の状態となるので、重ねた状態で輸送したり、保管することができる。
なお、箱状体4aは、側板45aと対向する位置に、取っ手付き正面板など(図示せず)を有している。
また、ヒンジ1は、底板43aと側板45aの連結に用いられ、ヒンジ1aは、底板43aと側板44aの連結に用いられる。
【0048】
この箱状体4aは、組み立てられる際、上述したように、六角穴付き止めねじ34が緩められ、側板44a、45aが外方向に移動された後、図9(b)に示すように、垂直状態となるように回動される。
次に、箱状体4aは、図9(c)に示すように、回動された側板44a、45aが下方に移動される。
【0049】
続いて、箱状体4aは、六角穴付き止めねじ34が締め込まれ、側板44a、45aが立てられた状態で固定される。この際、側板44a、45aは、上述したように、底板43aとの間に、隙間ができないように組み立てられるので、箱状体4aは、品質及び機械的強度などにおいて優れている。
また、ヒンジ1、1aが箱状体4aの内側に現れないので、体裁がよく、さらに、箱状体4aに収められた収納物が、ヒンジ1、1aに引っかかるといった不具合を防止することができる。
【0050】
なお、上記の動作を戻ることにより、箱状体4aは、展開された状態に戻すことができる。
また、箱状体4aは、側板44aと側板45aとを連結する連結手段(たとえば、ねじなど)を有する構成としてもよく、このようにすると、さらに機械的強度を向上させることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の箱状体4aは、第一実施形態の箱状体4とほぼ同様の効果を奏することができ、また、側板44aが薄い金属板である場合であっても、好適に適用することができる。
【0052】
以上、本発明のヒンジ及び箱状体について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係るヒンジ及び箱状体は、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、ヒンジ1、1aは、当接面32及び当接面33有する構成としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、図示してないが、三つの当接面を有する構成としてもよく、このようにすると、第二の部材を三つの連結角度で固定することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、1a ヒンジ
2、2a 第一の部材
3、3a 第二の部材
4、4a 箱状体
21 ピン
22 係合用スペース
23 被当接面
24、24a 平板状部材
241 第一の凹部
242 ねじ孔
243 ピン用孔
244 六角穴付き止めねじ
245 上面
246 側面
31 長孔
32 当接面
33 当接面
34 六角穴付き止めねじ
35、35a 平板状部材
351、351a 第二の凹部
352、352a、取付用孔
352、353a、側面
41、41a 第一取付部材
42、42a 第二取付部材
43、43a 底板
44、44a 側板
45、45a 側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン、係合用スペース及び被当接面を有する第一の部材と、
前記ピンが貫通する長孔、前記被当接面と当接する二つ以上の当接面、及び、前記長孔内において前記ピンを位置決めする位置決め手段を有し、前記第一の部材と連結される第二の部材と
を備え、
前記ピンが前記長孔内の回動位置にあるとき、前記第二の部材が前記第一の部材に対して回動可能な状態となり、前記ピンが前記長孔内の固定位置にあるとき、前記二つ以上の当接面の一つが前記被当接面と当接した状態で、前記第二の部材が前記第一の部材に固定されることを特徴とするヒンジ。
【請求項2】
前記第一の部材及び第二の部材が、それぞれ平板状部材を有し、前記第一の部材の平板状部材の表面が前記被当接面と直交しており、前記第二の部材が二つの前記当接面を有し、該当接面の一方が前記第二の部材の平板状部材の表面と平行であり、他方が前記第二の部材の平板状部材の表面と直交していることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記長孔の長手方向が、前記一方の当接面に対して所定の方向に傾斜していることを特徴とする請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記第一の部材の平板状部材が、該第一の部材に取り付けられる第一取付部材と係合する第一の凹部を有し、前記第二の部材の平板状部材が、該第二の部材に取り付けられる第二取付部材と係合する第二の凹部を有し、
前記第一取付部材が平板であり、該第一取付部材の上面が前記第一の部材の平板状部材の上面と同一平面となり、前記第二取付部材が平板であり、該第二取付部材の端面が前記第二の部材の凹部の側面と同一平面となり、
前記第二の部材の平板状部材が前記第一の部材の平板状部材に対して直交となる状態で固定されるとき、前記第一の部材の平板状部材の上面と前記第二の部材の凹部の側面が同一平面となることを特徴とする請求項2又は3に記載のヒンジ。
【請求項5】
ヒンジ、底板及び側板を有し、組立及び展開の可能な箱状体において、
前記ヒンジが、上記請求項1〜4のいずれか一項に記載されたヒンジであり、前記第一の部材に前記底板又は側板が取り付けられ、前記第二の部材に前記側板又は底板が取り付けられることを特徴とする箱状体。
【請求項6】
前記箱状体が、家具用引出であることを特徴とする請求項5に記載の箱状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−40471(P2013−40471A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176918(P2011−176918)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(505323792)株式会社テクノエイト (3)
【Fターム(参考)】