説明

ヒンジ装置及びそのヒンジ装置を用いた携帯電話機

【課題】ヒンジ装置を可及的に薄型化し、その薄型化によって不安定となりやすいスライドカムの動作を安定化させる。
【解決手段】蓋体部5を回転操作する際、蓋体部5側に固定された固定カムが蓋体部5と一体的に回転し、その固定カムと係合するホルダ内のスライドカムが上下にスライドする。スライドカムを付勢するコイルバネをスライドカム内に配置するとともに、固定カムにアウターカムと中間カムとインナーカムを同心円状に配置し、これら三重構造の各カムをスライドカムに形成する山型カムと係合させる。これにより、コイルバネの取付スペース分、薄型化できるとともに、固定カムとスライドカムとの接触面積を広げることでスライドカムの動作が安定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ装置を用いた携帯電話、特に蓋体部を水平方向に回動させて本体部に対して蓋体部を重ね合わせた閉位置と、蓋体部を所定角度開いた展開位置で位置決め保持することが可能なヒンジ装置及びそのヒンジ装置を用いた携帯電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば従来の折り畳み式の携帯電話は特許文献1などで示すように、数字キーやファンクションキーを配列した操作部を下側となる本体部の上面側に設け、この操作部のキー操作等により所定の表示がなされる液晶パネルなどのディスプレイ部を上側となる蓋体部の内面側に設け、この本体部と蓋体部とをヒンジ装置を介して連結している。そして、携帯電話の使用に際し、二つ折りに折り畳んだ状態からヒンジ装置により蓋体部を起伏回動して蓋体部を開くことによって操作部とディスプレイ部とを外面側に露出させるように構成したヒンジ装置や特許文献2で示すように、蓋体部を略水平方向に回動して開閉動作するように構成した携帯電話用ヒンジ装置が知られている。また、本願出人は、特許文献3に示すように、蓋体部を略水平方向に回動して開閉動作する携帯電話用ヒンジ装置において、片手でワンタッチで蓋体部を回転操作できるように、アウターカムとインナーカムと、これらのカムと係合する山型カムと、山型カムを付勢するコイルバネを備え、前記アウターカムとインナーカム及び山型カムの係合によって、蓋体部を閉位置から25°回転させるまでは蓋体部に反回転操作方向の回転トルクを与え、25°を超えてからは蓋体部に回転操作方向の回転トルクを与えて閉位置まで自動的に回転するように構成した携帯電話機用のヒンジ装置を提案している。
【0003】
【特許文献1】特開2004−11718号公報
【特許文献2】特開2003−336620号公報
【特許文献3】特開2004−335138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、携帯電話は、デザイン性や軽量化、携帯時の利便性などの観点から薄型化され、このような薄型化の要望に対して携帯電話用のヒンジ装置もより薄型化が望まれてきている。しかし、特許文献3に示すように、カムの係合によって携帯電話の蓋体部を保持する構造においては、ヒンジ装置を薄型化する場合、構図的な制約があった。すなわち、特許文献3に示すヒンジ装置は、固定側のカムと可動側のカムとが係合し、蓋体部の回転動作と連動して可動側のカムが固定側のカムに沿って上下方向にスライドし、その可動側のカムのスライド方向とヒンジ装置の高さ方向とが同じ方向である。したがって、ヒンジ装置を薄型化する場合、固定側カムをスライド案内する距離が短く、いかにカムを安定的にスライドさせるかがヒンジ装置の薄型化を図る上で重要な課題となる。さらに、固定側のカムに可動側のカムを常に押圧する必要があるため、特許文献3に示すヒンジ装置は、可動側のカムの下方にコイルバネを配置する構造であるため、コイルバネを配置するスペースによってヒンジ装置を薄型化することができない、という課題を有していた。
【0005】
そこで、本願発明は、前記課題を解決するためになされたもので、ヒンジ装置を可及的に薄型化できるとともに、固定側のカムに沿ってスライドするカムの動作を安定化させ、蓋体部をスムーズに回転操作することができるヒンジ装置及びそのヒンジ装置を用いた携帯電話機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載のヒンジ装置は、本体部と蓋体部とを回転自在に連結するヒンジ装置であって、前記本体部と蓋体部の何れか一方に前記ヒンジ装置のホルダを、他方に前記ヒンジ装置の取付ベースをそれぞれ固定し、前記取付ベースに設けた筒部に前記ホルダを回動自在に軸支することによって前記本体部に対して蓋体部が相対的に回動し得るように構成するとともに、前記取付ベースに多重の固定カムを前記筒部と同心円状に形成し、前記ホルダ内に上下動自在にスライドするスライドカムと、このスライドカムを前記固定カムに押圧するためにコイルバネとを配置し、前記スライドカムと前記固定カムとの係合によって前記蓋体部の閉位置及び展開位置で前記蓋体部を保持するヒンジ装置において、前記ヒンジ装置の全高を12mm以下としたことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2記載のヒンジ装置は、本体部と蓋体部とを回転自在に連結するヒンジ装置であって、前記本体部と蓋体部の何れか一方に前記ヒンジ装置のホルダを、他方に前記ヒンジ装置の取付ベースをそれぞれ固定し、前記取付ベースに設けた筒部に前記ホルダを回動自在に軸支することによって前記本体部に対して蓋体部が相対的に回動し得るように構成するとともに、前記取付ベースに多重の固定カムを前記筒部と同心円状に形成し、前記ホルダ内に上下動自在にスライドするスライドカムと、このスライドカムを前記固定カムに押圧するためにコイルバネとを配置し、前記スライドカムと前記固定カムとの係合によって前記蓋体部の閉位置及び展開位置で前記蓋体部を保持するヒンジ装置において、前記スライドカムの内側に前記コイルバネを配置したことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3記載のヒンジ装置は、前記固定カムがアウターカムと中間カムとインナーカムとを多重に配した3重構造とし、前記スライドカムには、前記固定カムの各カムと対応して第1、第2、第3の山型カムを120°の位相差を保って同心円状に形成するとともに、前記固定カムの各カムには前記閉位置と前記展開位置とで前記第1、第2、第3の山型カムと係合する複数の係合カムを120°の位相差を保って形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4記載のヒンジ装置は、携帯電話の本体部と蓋体部の連結部に前記ヒンジ装置を用いたことを特徴とするヒンジ装置を備えた携帯電話機。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓋体部を回転操作する際、固定カムとスライドカムとが係合し、スライドカムが上下にスライドして蓋体部の回転角度を制御する。この際、スライドカムはコイルバネによって付勢される。このコイルバネをスライドカムの内側に配置することによって、スライドカムの下方にコイルバネの配置スペースが不要となるかから、スライドカム、ひいては、ヒンジ装置の薄型化が可能となる。一方、スライドカムの内部にコイルバネを配置する場合、スライドカムを薄型化する程、スライドカムと、このスライドカムをスライド案内する筒部との接触面積が狭くなるため、スライドカムを安定的にスライド案内するが構造的に難しくなるが、スライドカムと係合する固定カムをアウターカムと中間カムとインナーカムの三重構造とし、スライドカムと固定カムとの係合時にスライドカムと固定カムとが3箇所に係合する構造とすることによって、スライドカムを薄型化してもスライドカムを安定的にスライドすることができる。これにより、ヒンジ装置の高さを12mm以下まで薄型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例を示す携帯電話機の斜視図である。
【図2】同上、固定カムの斜視図である。
【図3】同上、固定カムを示し、図3(a)は正面図、図3(b)は平面図である。
【図4】同上、スライドカムの斜視図である。
【図5】同上、スライドカムを示し、図4(a)は正面図、図4(b)は平面図である。
【図6】同上、ヒンジ装置の斜視図である。
【図7】同上、ヒンジ装置の断面図である。
【図8】同上、カムの展開図である。
【図9】同上、蓋体部の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。図1は、本発明を適用した携帯電話機の斜視図であり、同図で示すように、携帯電話機1は、複数の操作キー2を有する本体部3と、液晶パネルなどのディスプレイ4を備えた蓋体部5と、これら本体部3と蓋体部5を回動自在に連結するヒンジ装置6とで構成される。本体部3と蓋体部5には通話の際の送話部7と受話部8を備えており、蓋体部5はディスプレイ4と受話部8を外面側に向けた状態で本体部3に連結され、かつ、蓋体部5はヒンジ機構6によって本体部3によって略水平方向に回動自在に連結されている。なお、蓋体部5と重ね合わせる本体部3の取付面は傾斜しており、蓋体部5を略180°水平回動して本体部3と蓋体部5とを一直線状に連設させた状態で使用時の通話し易いように蓋体部5が本体部3に対して上向き傾斜となっている。
【0013】
次に本実施例のヒンジ装置6について主に図7の断面図などに基づいて説明する。ヒンジ装置6は、前記本体部3に固定されたホルダ10と、前記蓋体部5に固定される取付ベース20と、前記ホルダ10内に上下動自在に組み付けられたスライドカム30と、このスライドカム30を前記取付ベース20に形成する固定カム15に付勢する二重のコイルバネ40、41とを主要構成部品としている。
【0014】
前記ホルダ10は有底筒状の収容部8を有し、この収容部8の底部中央に前記取付ベース20を回転自在に支持する軸支孔9を形成するとともに、収容部8の外周に前記本体部3を固定するフランジ部11を形成している。このホルダ10に形成する前記軸支孔9には前記取付ベース20の中央部に突出した筒部21が回転自在に連結され、この筒部21を回動支軸として本体部3に対して蓋体部5を略水平回動自在に連結している。筒部21は中央に貫通孔22を有する中空状に形成され、その貫通孔22にケーブルなど配線部材23を通すことによって本体部3と蓋体部5との間に配線部材(図示せず)を引き回すように配線処理することが可能である。
【0015】
前記スライドカム30は、図4に示すように、天板部31と、この天板部31の周縁から一体的に形成する周壁部32とを有して全体としてキャップ状を成し、天板部31の中央に案内孔33が形成され、この案内孔33を前記ホルダ10に形成する筒部21に貫通すると共に、前記スライドカム30の外周部に突設した位置決めピン34を前記ホルダ10に形成する長孔35に摺動自在に挿入して前記スライドカム30をホルダ10内に上下動自在に保持し、かつ、前記長孔35と位置決めピン34との係合によってスライドカム30をホルダ10に対して径方向に位置決している。また、前記スライドカム30の周壁部32の内側には同心円状に配置したコイルバネ40,41が収容されており、このコイルバネ40,41によってスライドカム30を前記取付ベース20に形成される固定カム15に押圧している。また、スライドカム30の天板部31には前記ホルダ10に突出した筒部21を回動自在に軸支する軸受42が回動自在に軸支されている。また、軸受42は抜け止めリング42aによってホルダ10に対して抜け止め保持されている。
【0016】
次に、主に図3、図5における平面図及び図4の固定カムの展開図を参照してスライドカム30と固定カム15との関係について説明する。固定カム15は図3に示すように、取付ベース20にアウターカム50と中間カム51とインナーカム52が同心円状に形成され、これら各カム50,51,52は、左右対称を成す第1傾斜カム54a,54b,54cと第2傾斜カム55a,55b,55cとで構成されている。この第1傾斜カム54a,54b,54cと第2傾斜カム55a,55b,55cは前記コイルバネ40,41の付勢方向Fに対してV字状に連続し、その谷部を第1の係合カム部65a,65b,65cとし、かつ、山部に第3傾斜カム60a,60b,60cと第4傾斜カム61a,61b,61cを逆V字状に連続させた第2の係合カム66a,66b,66cを形成している。これらアウターカム50と中間カム51とインナーカム52に形成する第1の係合カム65a,65b,65cと第2の係合カム66a,66b,66cは相対的に180°の位相差を保って形成され、かつ、アウターカム50と中間カム51とインナーカム52に形成された第1の係合カム65a,65b,65cと第2の係合カム66a,66b,66cは、120°の位相差を保って形成されている。
【0017】
また、第2の係合カム66a〜66cを構成する第3傾斜カム60a〜60cと第4傾斜カム61a〜61cの中心から外端までの角度が径方向において概ね43.5°に設定されている。一方、スライドカム30は第1の係合カム65a,65b,65cと第2の係合カム66a,66b,66cと係合する山型カム70a,70b,70cが相対的に120°の位相差を保って形成されている。また、これら山型カム70a,70b,70cの頂点にはそれぞれ半円形状の係合突起71a,71b,71cが形成され、第1の係合カム65a,65b,65cと第2の係合カム66a,66b,66cの中心に位置して前記係合突起71a,71b,71cと嵌合する係合凹部72a,72b,72cがそれぞれ形成されている。なお、図6において符号81は前記ホルダ10と取付ベース20との間に介在するストッパープレート、80はストッパープレート81を抑えるために前記スライドカム30に一体形成するストッパ、図7において符号82は前記取付ベース20に形成する配線部材の案内溝部である。
【0018】
以上のように構成される携帯電話機1は、携帯電話機1を折り畳んだ状態において、アウターカム50と中間カム51とインナーカム52に形成する第2の係合カム66a,66b,66cがスライドカム30の山型カム70a,70b,70cに係合している。これら第2の係合カム66a,66b,66cと山型カム70a,70b,70cはそれぞれ120°の位相差を保って形成されている。具体例として図8のカムの展開図においては、アウターカム50の第2の係合カム66a,66b,66cにスライドカム30の山型カム70aが係合した状態を示しているが、中間カム51及びインナーカム52も同様の動作であるから、代表例としてアウターカム50とスライドカム30の山型カム70aとが係合した状態を示し、中間カム51及びインナーカム52とスライドカム30との係合状態を省略して以下、説明する。
【0019】
携帯電話機1を折り畳んだ閉位置でアウターカム50(中間カム51,インナーカム52)の第2の係合カム66a(66b,66c)がスライドカム30の山型カム70a(70b,70c)に係合した位置にあり、これを0°とする。また、第2の係合カム66a(66b,66c)と山型カム70a(70b,70c)との係合時には、山型カム70aの係合突起71a(71b,71c)と第2の係合カム66a(66b,66c)の係合凹部72a(72b,72c)とが嵌合している。そして、閉位置から蓋体部5を左回り又は右回りに回転操作させた際、蓋体部5に固定された取付ベース20が蓋体部5と一体的に回転する。これにより、取付ベース20に形成するアウターカム50(中間カム51,インナーカム52)が径方向に移動し、山型カム70aの係合突起71a(71b,71c)が第1の係合カム65a(65b,65c)の係合凹部72a(72b,72c)から抜け、スライドカム30の山型カム70a(70b,70c)が第3又は第4傾斜カム60a,61a(60b,60c又は61b,61c)の何れかに移動する。すなわち、図8において、蓋体部5を右回りに回転すれば山型カム70a(70b,70c)が第3傾斜カム60a(60b,60c)と係合し、左回りに回転すれば山型カム70a(70b,70c)は第4傾斜カム61a(61b,61c)と係合する。これら第3又は第4傾斜カム60a,61a(60b,60c又は61b,61c)はコイルバネ40,41の付勢力Fに対して逆方向となる逆V字状に形成されているから、山型カム70a(70b,70c)によってアウターカム50(中間カム51,インナーカム52)が押されることになる。これにより、第2の係合カム66a(66b,66c)から山型カム70a(70b,70c)が外れる0°から43.5°までの角度領域においては蓋体部5は回転操作力に抗して蓋体部5が戻る付勢力が作用する。
【0020】
そして、蓋体部5を43.5°以上回転操作すると、山型カム70a(70b,70c)が第3又は第4傾斜カム60a,61a(60b,60c又は61b,61c)から外れ、第1又は第2の傾斜カム54a,55a(54b,54c又は55b,55c)の何れかに切り換わる。すなわち、蓋体部5を右方向に回転すれば山型カム70a(70b,70c)は第2傾斜カム55a(55b,55c)と係合し、蓋体部5を左方向に回転すれば山型カム70a(70b,70c)は第1傾斜カム54a(54b,54c)と係合する。第1又は第2の傾斜カム54a,55a(54b,54c又は55b,55c)はコイルバネ40,41の付勢力Fに対して同方向となるV字状に傾斜しているから、山型カム70a(70b,70c)が第3又は第4傾斜カム60a,61a(60b,60c又は61b,61c)から外れた時点で山型カム70a(70b,70c)が第1又は第2の傾斜カム54a,55a(54b,54c又は55b,55c)を滑り降りようとする力が作用し、これに伴う回転トルクによって、蓋体部5は開く方向に付勢される。この付勢力によって蓋体部5は回転し、蓋体部5が180°回転すると、第2の係合カム66a(66b,66c)に対して180°の位相差を持って形成され第1の係合カム65a(65b,65c)が係合し、山型カム70a(70b,70c)の先端に形成する係合突起71a(71b,71c)が第1の係合カム65a(65b,65c)の係合凹部72a(72b,72c)と嵌合する。これにより、図9(b)で示すように、蓋体部5が180°回転した展開位置、すなわち、蓋体部5は本体部3と一直線上に並んだ状態で位置決め保持されることになる。なお、この時、前記ホルダ10と取付ベース20との間に介在するストッパープレート81によって蓋体部5が180°以上、回転しない。
【0021】
そして、蓋体部5を閉じるために、蓋体部5を180°回転させた展開位置から第1又は第2の傾斜カム54a,55a(54b,54c又は55b,55c)までの角度範囲内においては、前述した蓋体部5を閉位置から開く動作と同様、アウターカム50(中間カム51,インナーカム52)に形成する第1又は第2の傾斜カム54a,55a(54b,54c又は55b,55c)から山型カム70a(70b,70c)が外れるまではコイルバネ40,41によって山型カム70a(70b,70c)が押され、蓋体部5を閉じる回転操作力に抗して蓋体部5を開く方向の回転トルクが作用し、それ以上閉じると、蓋体部5はコイルバネ40,41によって180°回転し、再びアウターカム50(中間カム51,インナーカム52)の第2の係合カム66a(66b,66c)がスライドカム30の山型カム70a(70b,70c)が係合して山型カム70a(70b,70c)の先端に形成する係合突起71a(71b,71c)と第2の係合カム66a(66b,66c)に形成する係合凹部71a(71b,71c)とが嵌合する。これにより、蓋体部5は閉位置で位置決め保持される。
【0022】
以上のように、本発明では、本体部3に対して蓋体部5を水平方向に回動自在に連結でき、本体部3を操作しない時には本体部3上に蓋体部5を重ね合わせてコンパクト化することが可能となる。しかも、本体部3上に蓋体部5を重ね合わせた状態において、蓋体部5の表面側にディスプレイ4が露出していることから、ディスプレイ4を視認することができ、例えば、放送受信やインターネットの閲覧など様々な使用が可能となり、使用用途が広がり、機能性も向上する。
【0023】
また、本体部3を操作する際、本体部3を片手で持って親指などで蓋体部5を43.5°以上回転すればコイルバネ40,41によって蓋体部5を180°展開した位置までワンタッチで回転することができ、片手での操作が可能であるため、操作が極めて容易である。しかも、蓋体部5の閉位置において、43.5°までの角度領域では、蓋体部5は回転操作方向に対して逆方向の回転トルクが付与されることになるから、開くつもりが無い状態において例えば蓋体部5と他の部材とが干渉して蓋体部5に開く方向の力が作用したとしても、蓋体部5が不用意に開く虞れもない。
【0024】
さらに、本実施例においては、蓋体部5を回転操作する際、蓋体部5側に固定された固定カム15が蓋体部5と一体的に回転し、その固定カム15と係合するホルダ10内のスライドカム30が上下にスライドするが、ヒンジ装置6を可及的に薄型化する場合、ホルダ10内のスライドカム30も必然的に薄型化する必要がある。しかし、スライドカム30はコイルバネ40,41によって付勢されているから、コイルバネ40,41をスライドカム30の下方に配置した場合、コイルバネ40,41の配置スペース分、ヒンジ装置6の薄型化には不利となる。そこで本実施例においては、コイルバネ40,41をスライドカム30内に配置し、コイルバネ40,41の取付スペース分、ヒンジ装置6を薄型化している。一方、取付ベース20の筒部21に沿って上下動自在に案内されるスライドカム30の内部にコイルバネ40,41を配置する場合、スライドカム30の内周面と筒部21との接触面積が狭くなる。これにより、スライドカム30と固定カム15との係合時にスライドカム30を安定的にスライド案内することができず、スライドカム30が傾くなどしてスライドカム30と固定カム15との係合状態も不安定となる。そこで、固定カム15にアウターカム50と中間カム51とインナーカム52を同心円状に配置し、これら三重構造の各カム50,51,52をスライドカム30に形成する山型カム70a,70b,70cと係合させることによって、スライドカム30は120°の間隔毎に設けた3つの山型カム70a,70b,70cが固定カム51に係合することから、スライドカム30と固定カム15とが確実に係合することができるとともに、スライドカム30の薄型化により、筒部21との接触面積が狭くなったとしても、スライドカム30を安定的にスライドすることができる。これにより、本実施例においては、スライドカム30の高さhを4.7mm程度まで薄型化し、ヒンジ装置6の高さHを10.25mm程度まで薄型化することが可能となった。さらに、取付ベース20とホルダ10との間にスライドカム30と、これを付勢するコイルバネ40,41を組付けてヒンジ装置6をユニット化することができるから、ヒンジ装置6を小型化できるとともに組付け作業性にも優れる。さらに、蓋体部5の閉位置と、蓋体部5を180°を開いた展開位置において、山型カム70a,70b,70cの頂点に形成する半円形状の係合突起71a,71b,71cが第1の係合カム65a,65b,65cと第2の係合カム66a,66b,66cの中心に形成する係合凹部72a,72b,72cとがそれぞれ嵌合し、蓋体部5の閉位置及び展開位置において、山型カム70a,70b,70cとアウターカム50と中間カム51とインナーカム52とを確実に係合することができ、蓋体部5の閉位置及び展開位置が左右方向にガタツクことなく確実かつ安定的に位置決め保持することができる。
【0025】
また、本体部32と蓋体部5とに跨がるように接続する配線部材を中空状に形成した筒部21の貫通孔22を通して配することができるため、配線部材が邪魔にならずスッキリと配線処理することができるとともに、配線部材の噛み込みも防止でき、配線部材の断線などを防止することができる。さらに、取付ベース20に形成する案内溝部82に配線部材を通して引き回すことによって、さらに配線部材分、ヒンジ装置6を薄型化するこができる。
【0026】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、前記実施例では、蓋体部を180°回転させた位置で固定した例を示したが、カムの形状によって90°回転させた位置で固定してもよく、蓋体部の角度をどの位置で規制するは適宜選定すればよい。さらに、取付ベースに3重のカムを設けた例を示したが、それ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 携帯電話機
3 本体部
5 蓋体部
6 ヒンジ装置
7 受話部
8 送話部
10 ホルダ
20 取付ベース
21 筒部
30 カム部材
31 案内孔
40,41 コイルバネ
50 アウターカム
51 中間カム
52 インナーカム
54a,54b,54c 第1の傾斜カム
55a,55b,55c 第2の傾斜カム
60a,60b,60c 第3傾斜カム
61a,61b,61c 第4傾斜カム
65a,65b,65c 第1の係合カム
66a,66b,66c 第2の係合カム
70a,70b,70c 山型カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と蓋体部とを回転自在に連結するヒンジ装置であって、前記本体部と蓋体部の何れか一方に前記ヒンジ装置のホルダを、他方に前記ヒンジ装置の取付ベースをそれぞれ固定し、前記取付ベースに設けた筒部に前記ホルダを回動自在に軸支することによって前記本体部に対して蓋体部が相対的に回動し得るように構成するとともに、前記取付ベースに多重の固定カムを前記筒部と同心円状に形成し、前記ホルダ内に上下動自在にスライドするスライドカムと、このスライドカムを前記固定カムに押圧するためにコイルバネとを配置し、前記スライドカムと前記固定カムとの係合によって前記蓋体部の閉位置及び展開位置で前記蓋体部を保持するヒンジ装置において、前記ヒンジ装置の全高を12mm以下としたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
本体部と蓋体部とを回転自在に連結するヒンジ装置であって、前記本体部と蓋体部の何れか一方に前記ヒンジ装置のホルダを、他方に前記ヒンジ装置の取付ベースをそれぞれ固定し、前記取付ベースに設けた筒部に前記ホルダを回動自在に軸支することによって前記本体部に対して蓋体部が相対的に回動し得るように構成するとともに、前記取付ベースに多重の固定カムを前記筒部と同心円状に形成し、前記ホルダ内に上下動自在にスライドするスライドカムと、このスライドカムを前記固定カムに押圧するためにコイルバネとを配置し、前記スライドカムと前記固定カムとの係合によって前記蓋体部の閉位置及び展開位置で前記蓋体部を保持するヒンジ装置において、前記スライドカムの内側に前記コイルバネを配置したことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項3】
前記固定カムがアウターカムと中間カムとインナーカムとを多重に配した3重構造とし、前記スライドカムには、前記固定カムの各カムと対応して第1、第2、第3の山型カムを120°の位相差を保って同心円状に形成するとともに、前記固定カムの各カムには前記閉位置と前記展開位置とで前記第1、第2、第3の山型カムと係合する複数の係合カムを120°の位相差を保って形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のヒンジ装置。
【請求項4】
携帯電話の本体部と蓋体部の連結部に前記ヒンジ装置を用いたことを特徴とするヒンジ装置を備えた携帯電話機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−164076(P2010−164076A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4713(P2009−4713)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(592044732)株式会社オーハシテクニカ (32)
【Fターム(参考)】