説明

ヒータチップ及び接合装置

【課題】 電子部品を熱によって損傷することなく、コテ部の長手方向で均一な接合品質を得るようにしたヒータチップおよび接合装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のヒータチップ10は、被接合物に加圧接触または近接させることによって前記被接合物を接合するヒータチップであって、通電により発熱する櫛歯状のコテ部10aと、前記コテ部10aと一体に形成され、前記櫛歯状のコテ部のコテ先部10eの反対側でフィン状に延びる放熱部12A〜12Eとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンダ付け、熱カシメ、熱圧着等の加熱接合に用いるヒータチップおよび接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図1に示すように、チップ本体の側方へ突出した複数のリード100aを有する表面実装型の半導体パッケージ100をプリント配線板102上にハンダ付けするために、長尺状のコテ部104aを有するヒータチップ104が用いられている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
このタイプのヒータチップ104は、高融点金属たとえばタングステンあるいはモリブデンからなる略コ字状の板体として形成され、凹形の向き(姿勢)で底辺の長尺状コテ部104aを水平にし、左右両側の接続端子部104b、104bをヒータヘッド106に取り付けている。図示のヒータヘッド106は、ヒータ電源(図示せず)の出力端子に通じる一対の給電用導体108、110の側面にボルト112、112でヒータチップ104の左右接続端子104b、104bを物理的かつ電気的にそれぞれ接続しており、給電用導体108、110を介してヒータチップ104を上下に移動させる昇降機構や被接合物に向けて押圧する加圧機構(図示せず)を有している。給電用導体108、110の間には両者を電気的に分離するための絶縁体114が挟まれている。
【0004】
図1において、プリント配線板102は、図示しないXYテーブルなどの作業台上に水平に載置されており、半導体パッケージ100は図示しないチップマウンタによりプリント配線板102上の所定位置に載置される。ハンダ付けのために、半導体パッケージ100の一辺(一列)分のリード100a、100a、・・がヒータチップ104の真下に位置決めされる。
【0005】
ヒータヘッド106がヒータチップ104を下ろすと、図2に示すように、ヒータチップ104の長尺状コテ部104の下面つまりコテ先面104cが被接合部つまり一列分のリード100a,100a,・・およびプリント配線板102のランド102a、102a、・・に適度な加圧力で接触する。各ランド102aの表面には図示しないクリームハンダが塗られている。このようにヒータチップ104のコテ部104aを被接合部100a、102aに押し当てた状態の下で、ヒータ電源がオンしてヒータチップ104に電流Iを供給すると、ヒータチップ104のコテ部104aが抵抗発熱し、被接合部100a、102a間のハンダを加熱して溶融させる。通電開始から一定時間経過後にヒータ電源が通電を止め、通電終了から一定時間経過後にヒータヘッド106がヒータチップ104を上昇させて被接合部100a、102aから離す。そうすると、ハンダが凝固して、被接合部100a、102aがリフローのハンダ付けによって結合する。
【0006】
上記従来のヒータチップ104では、図2に示したように、各ランド102a間に空間があるため、コテ先面104aがプリント配線基板102に当たって(又は近づいて)損傷を与えることはなかった。しかしながら、電子部品によっては隣接する接合部間に空間が無い場合がある。例えば、接合部が樹脂などによって区画されていたり、接合部間に突起部が形成されていることがある。このような構成の電子部品において隣接する接合部間を保護する技術として特許文献2〜特許文献4が提案されている。
【0007】
特許文献2のヒータチップでは、電子部品の端子と接触する部分に電気絶縁作用を有するダイヤモンド粉末をメッキ層に担持させて、このダイヤモンド粉末の一部をメッキ層から突出させて、ヒータチップから基板側への電流を阻止して電子部品を保護するようにしている。また、特許文献3のヒータチップでは、熱を加える部分にそれぞれヒータチップを設けて電子部品の必要な箇所だけに熱を加えるようにしている。さらに、特許文献3のヒータチップでは、抵抗発熱する箇所に複数の突起を設けて、同時に複数個所を熱かしめするようにして、必要な箇所だけに熱を加えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平3−14060号公報
【特許文献2】特開平02−165866号公報
【特許文献3】特開平10−291100号公報
【特許文献4】特開2007−253481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような従来の接合装置においては、ヒータチップのコテ部の温度が当該コテ部の中心部と端部とで均一でない場合がある。例えば、加熱後通電を終了した後において、コテ部の温度降下の速度が中心部と端部とで異なり、コテ部の温度が均一でなくなるときが生じる。そのため、ヒータチップ104より被接合物に加えられる熱量が長尺状コテ部104aの長手方向で均一にならず、コテ部104aの中心部の方が両端部よりも相対的に多く加熱してしまう。そのため、被接合部の中で中心部が必要以上に加熱されて損傷するおそれがあった。
【0010】
また、図1に示す従来のヒータチップ104の形状では、隣接する接合部間に空間がない電子部品の場合に、接合部分以外に熱の影響を与えてしまって電子部品が損傷してしまうおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであって、隣接する接合部間に空間が無い電子部品であっても、この電子部品を熱によって損傷することなく、かつコテ部の全長に亘って、通電中および通電終了後の温度特性を均一化して、コテ部の長手方向で均一な接合品質を得るようにしたヒータチップおよび接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のヒータチップは、被接合物に加圧接触または近接させることによって前記被接合物を接合するヒータチップであって、通電により発熱する櫛歯状のコテ部と、前記コテ部と一体に形成され、前記櫛歯状のコテ部のコテ先部の反対側でフィン状に延びる放熱部とを有する。
【0013】
本発明の接合装置は、本発明のヒータチップと、前記ヒータチップを支持し、被接合物を接合する際に前記コテ部のコテ先部を前記被接合物に加圧接触または近接させるヒータヘッドと、前記ヒータチップに抵抗発熱用の電流を供給するヒータ電源とを有する。
【0014】
本発明のヒータチップにおいて、コテ部を櫛歯状に形成することによって、隣接する接合部間に空間が無くても、接合部以外に熱の影響を与えることなく接合が可能である。また、櫛歯状のコテ部のコテ先部の反対側に設けたフィン状の放熱部によりコテ部で発生したジュール熱をコテ先部の反対側で吸収して大気へ放出する。これによりコテ部の全長に亘って通電中および通電終了後の温度特性を均一化することができ、コテ部の長手方向で均一な接合品質を得ることができる。
【0015】
本発明において、前記フィン状放熱部を前記櫛歯状のコテ部の長手方向に沿って複数設けるのが好ましい。この発明によれば、コテ部温度の均一化を高めることができる。
【0016】
本発明において、前記フィン状放熱部を前記櫛歯状のコテ部のコテ先部の反対側であって当該コテ先部に対応する位置にそれぞれ設ける。
【0017】
さらに、本発明のヒータチップは、前記コテ先部の少なくとも一つの反対側に設けられ熱電対を接続するための突部をさらに有し、前記フィン状放熱部を、前記突部を除いた前記コテ先部の反対側の対応する位置にそれぞれ設ける。本発明態様によれば、熱電対をヒータチップの所望の位置に配設することができ、ヒータチップを小さく形成することができる。
【0018】
また、本発明のヒータチップでは、突部において、コテ部の熱が熱伝導により突部に接続された熱電対に吸収される現象、すなわち、熱引きが生じる。この熱引きによってフィン状放熱部における放熱と同様の効果を奏することができる。なお、突部および当該突部に接続された熱電対では、フィン状放熱部と同様に熱を大気へ放出させることもできる。
【0019】
さらに、好適な一態様として、前記フィン状放熱部は、前記コテ部と面一で板状に形成され、前記コテ部および前記フィン状放熱部が同一材質で一体に形成される。また、前記フィン状放熱部を調整することによって前記コテ先部の熱量を制御する。前記櫛歯状のコテ部は、発熱時に熱量の異なる複数形状のコテ先部を有する。本発明によればコテ先部の形状の組み合わせによって熱量を制御できる。
【0020】
また、本発明のヒータチップは、ヒータ電源からの給電用導体との物理的かつ電気的な接続をとるために、前記櫛歯状のコテ部の両端部から前記フィン状放熱部の周囲に延びる一対の接続端子部を有する。この場合、好適な一態様として、前記コテ部、前記フィン状放熱部および前記接続端子部がタングステン板をワイヤ放電加工により刳り貫いて一体に形成してよい。
【0021】
本発明の接合装置は、通電発熱する櫛歯状のコテ部を用いて被接合部を加熱接合する任意のアプリケーションに適用可能であり、たとえばハンダ付け、異方性導電材料を介した接合、熱カシメ、熱圧着等に好適に適用可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、隣接する接合部間に空間がなくても、接合部以外に熱の影響を与えることなく接合が可能である。コテ部の全長に亘って、通電中および通電終了後の温度特性を均一化して、コテ部の長手方向で均一な接合品質を得るようにしたヒータチップおよび接合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のヒータチップとそれを用いるハンダ付けの例を示す斜視図である。
【図2】図1のヒータチップを通電させている状態を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるヒータチップの全体構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるヒータチップの斜視図である。
【図5】実施形態のヒータチップを通電させている状態を示す正面図である。
【図6】実施形態のヒータチップを通電発熱用の電流を供給するためのヒータ電源の一例を示す回路図である。
【図7】本発明の他の実施形態におけるヒータチップの全体構成を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態におけるヒータチップの斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態におけるヒータチップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態におけるヒータチップ10の構成を示す図である。図4は、本発明の一実施形態におけるヒータチップ10の斜視図である。このヒータチップ10は、たとえば1〜3mmの板厚に圧延されたタングステン板を用いて形成されている。この圧延されたタングステン板は、極めて薄い板を積層したような構造を有している(以下、単に積層構造ということがある)。このタングステン板をワイヤ放電加工により刳り貫いて一体加工することにより、本実施形態のヒータチップ10が形成される。また、ヒータチップ10には、櫛歯状のコテ部10aが形成されている。このコテ部10aは、長手方向に伸びる基部10fと基部10fから突起状に突出するコテ先部10e1〜10e7が一体的に形成されている。
【0026】
また、ヒータチップ10は、櫛歯状のコテ部10aのコテ先部10eの反対側でフィン状に延びる放熱部12A〜12Eをコテ部10aと一体に有する。より詳細には、櫛歯状コテ部10aの長手方向に沿って5つのフィン状放熱部12A〜12Eが設けられている。櫛歯状のコテ部10aのコテ先部10e1〜10e7のうち両端のコテ先部10e1、10e7を除いた反対側の位置に矩形状のフィン状放熱部12A〜12Eがそれぞれ設けられている。すなわち、櫛歯状のコテ部10aのコテ先部10e2に対応する位置にフィン状放熱部12Aが設けられ、コテ先部10e3に対応する位置にフィン状放熱部12Bが設けられ、コテ部10e4に対応する位置にフィン状放熱部12Cが設けられ、コテ部10e5に対応する位置にフィン状放熱部12Dが設けられ、コテ部10e6に対応する位置にフィン状放熱部12Eが設けられている。両側のフィン状放熱部12A、12Eから中心部のフィン状放熱部12Cに向かって順に大きな面積を有するのが好ましい。
【0027】
さらに、フィン状放熱部12A〜12Eにおいて、好ましくは、櫛歯状のコテ部10aに接続する基端部14A〜14Eがスリット状に切り欠かれ括れている。この括れた基端部14A〜14Eにより、後述するように、通電時にコテ部10aを流れる電流Iがフィン状放熱部12A〜12Eからの電気的な影響を受けずに、すなわち、フィン状放熱部12A〜12Eに流れることなく、コテ部の基部10fの部分をまっすぐに縦断できるようになっている。
【0028】
櫛歯状のコテ部10aの左右両端部には、一対の接続端子部10b、10bが接続されている。これらの接続端子部10b,10bは、フィン状放熱部12A〜12Eと適当な隙間を形成しながらその周囲に延びており、それぞれの上端部に複数のボルト通し穴16,16を設けている。なお、片側(図の左)の接続端子部10bの下端部内側には、後述する熱電対20(図5)を取り付けるための突部18が形成されている。
【0029】
このヒータチップ10は、従来のヒータチップ100と同様に、接合装置のヒータヘッド106(図5)に取り付けられ、常法にしたがって通電発熱動作を行ってよい。たとえば、リード配線120a,120a,・・をコネクタ130の一列の端子130a,130a,・・にハンダ付けする場合は、図5に示すように、ヒータヘッド106が櫛歯状コテ部10aのコテ先部10e1〜10e7をリード配線120a,120a,・・およびコネクタ130の端子130a,130a,・・に適度な加圧力で接触させた状態の下で、ヒータ電源(図示せず)がオンしてヒータチップ10に給電導体108,110を介して電流Iを供給する。そうすると、ヒータチップ10のコテ部10aが抵抗発熱し、被接合部(120a,130a)間のハンダを加熱して溶融させる。
【0030】
この際、フィン状放熱部12A〜12Eは、括れた基端部14A〜14Eが高抵抗の電流閉塞部となり、電流Iを引き込まないので、電気的にはコテ部10a基部10fの通電(電流密度)に何の影響を与えることなく、専らコテ部10aの基部10fの各部で発生したジュール熱をコテ先部10e1〜10e7の反対側で吸収して大気へ放出する放熱作用のみを奏する。ここで、フィン状放熱部12Aは主に基部部10fの左端部とコテ先部10e3に対応する部分との間の区間で発生したジュール熱を放熱し、フィン状放熱部12Bは主に基部10fのコテ先部10e2に対応する部分とコテ先部10e4に対応する部分との間の区間で発生したジュール熱を放熱し、フィン状放熱部12Cは主に基部10fの中心部分で発生したジュール熱を放熱し、フィン状放熱部12Dは主に基部10fのコテ先部10e4に対応する部分とコテ先部10e6に対応する部分との間の区間で発生したジュール熱を放熱し、フィン状放熱部12Eは主に基部10fのコテ先部10e5と右端部との間の区間で発生したジュール熱を放熱する。
【0031】
本実施形態では、コテ部10aの両端部から中心部に向かうほど放熱レートが高くなるように構成しているので、コテ部10aの全長に亘ってコテ先部10e1〜10e7の通電中および通電終了直後の温度特性を均一化することができる。
【0032】
そして、通電開始から一定時間経過後にヒータ電源が通電を止め、通電終了から一定時間経過後にヒータヘッド106がヒータチップ10を上昇させて被接合部(120a,130a)から離す。そうすると、ハンダが凝固して、被接合部(120a,130a)がハンダ付けによって結合する。この実施形態では、コテ部10aの全長に亘って基部10fの通電中および通電終了直後の温度特性が均一なので、一列のリード配線120a,120a,・・が各対応する端子130a,130a,・・に均一にハンダ付けされる。したがって、リード配線列の中心部分が必要以上に加熱されて損傷するようなことはない。また、図5に示したように、コテ部10aは、端子130a,130a,・・に合わせて櫛歯形状を有するため、隣接する端子130a,130a,・・間に空間がなくても、接合部以外に熱の影響を与えることなく接合が可能である。
【0033】
図6に、この実施形態のヒータチップ10に通電発熱用の電流を供給するためのヒータ電源28の一例を示す。このヒータ電源28は交流波形インバータ式の電源回路を用いている。
【0034】
この電源回路におけるインバータ30は、GTR(ジャイアント・トランジスタ)またはIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)等からなる4つのトランジスタ・スイッチング素子32,34,36,38を有している。
【0035】
これら4つのスイッチング素子32〜38のうち、第1組(正極側)のスイッチング素子32,36はドライブ回路40を介して制御部42からの同相の駆動パルスG1,G3により所定のインバータ周波数(たとえば4kHz)で同時にスイッチング(オン・オフ)制御され、第2組(負極側)のスイッチング素子34,38はドライブ回路40を介して制御部42からの同相の駆動パルスG2,G4により上記インバータ周波数で同時にスイッチング制御されるようになっている。
【0036】
インバータ30の入力端子[L0,L1]は三相整流回路44の出力端子に接続されている。三相整流回路44は、たとえば6個のダイオードを三相ブリッジ結線してなり、三相交流電源端子(R,S,T)より入力する商用周波数の三相交流電圧を全波整流して直流電圧に変換する。三相整流回路44より出力された直流電圧は、コンデンサ46で平滑されてからインバータ30の入力端子[L0,L1]に与えられる。
【0037】
インバータ30の出力端子[M0,M1]は、溶接トランス48の一次側コイルの両端にそれぞれ接続されている。溶接トランス48の二次側コイルの両端は、整流回路を介さずに二次側導体108,110を介してヒータチップ10の接続端子部10b,10bにそれぞれ接続されている。
【0038】
制御部42は、マイクロコンピュータを含んでおり、ヒータ電源28内の一切の制御たとえば通電制御(特にインバータ制御)や各種ヒート条件の設定ないし表示処理等を行うほか、ヒータヘッド106に対しても所要の制御を行う。
【0039】
このヒータ電源28では、チップ温度フィードバック制御を行うために、ヒータチップ10の突部18に取り付けられる熱電対20より出力されるコテ温度測定信号がケーブル22を介して制御部42に与えられる。また、電流フィードバック制御を行う場合は、一次側回路の導体にたとえばカレント・トランスからなる電流センサ50が取り付けられる。この電流センサ50の出力信号から電流測定回路52において一次電流または二次電流の測定値(たとえば実効値、平均値またはピーク値)が求められ、その電流測定信号が制御部42に与えられる。
【0040】
図6に示すような交流波形インバータ式の電源回路を用いるヒータ電源部28の構成は一例であり、本実施形態のヒータチップ10を接合用途で抵抗発熱させるために単相交流型その他の任意の型式のヒータ電源部を使用することができる。
【0041】
次に本発明の他の実施形態について説明する。図7は、本発明の他の実施形態におけるヒータチップ60の構成を示す図である。図8は、本発明の他の実施形態におけるヒータチップ60の斜視図である。図7および図8では、熱電対20を突起68に溶着した状態を示している。このヒータチップ60は、上述のヒータチップ10同様に、たとえば1〜3mmの板厚に圧延されたタングステン板を用いて形成されている。このタングステン板をワイヤ放電加工により刳り貫いて一体加工することにより、本実施形態のヒータチップ60が形成される。また、ヒータチップ60は、中央のコテ先部60e4の反対側に熱電対20を溶着するための突部68が形成され、両端のコテ先部60e1、60e7を除いた反対側の位置であって、突部68を除いたコテ先部60e2、60e3、60e4、60e6に対応する位置に、フィン状に延びる放熱部62A〜62Dがコテ部60aと一体に形成されている。
【0042】
より詳細には、櫛歯状のコテ部60aの長手方向に沿って4つのフィン状放熱部62A〜62Dと突部68が設けられている。すなわち、櫛歯状のコテ部60aのコテ先部60e2に対応する位置にフィン状放熱部62Aが設けられ、コテ先部60e3に対応する位置にフィン状放熱部62Bが設けられ、コテ部60e4に対応する位置に突部68が設けられ、コテ部60e5に対応する位置にフィン状放熱部62Cが設けられ、コテ部60e6に対応する位置にフィン状放熱部62Dが設けられている。
【0043】
突部68には、熱電対20が、例えばアーク溶接によって接続されている。この熱電対20は、コテ部60Aの温度を測定するためのものである。突部68の両側のフィン状放熱部62B、62Cは、熱電対20を取り付けた際の隙間を確保し、かつ、放熱部としての面積を確保するために、フィン状放熱部62A、62Dよりも、長手方向に細長く形成されている。
【0044】
さらに、フィン状放熱部62A〜62Dにおいて、好ましくは、櫛歯状のコテ部60aに接続する基端部64A〜64Dがスリット状に切り欠かれ括れている。この括れた基端部64A〜64Dにより、通電時にコテ部60aを流れる電流Iがフィン状放熱部62A〜62Dからの電気的な影響を受けずに、すなわち、フィン状放熱部62A〜62Dに流れることなく、コテ部の基部60fの部分をまっすぐに縦断できるようになっている。
【0045】
櫛歯状のコテ部60aの左右両端部には、一対の接続端子部60b、60bが接続されている。これらの接続端子部60b,60bは、フィン状放熱部62A〜62Dと適当な隙間を形成しながらその周囲に延びており、それぞれの上端部に複数のボルト通し穴66,66を設けている。
【0046】
このヒータチップ60は、ヒータチップ10と同様に、接合装置のヒータヘッド106(図5)に取り付けられ、常法にしたがって通電発熱動作を行ってよい。フィン状放熱部62A〜62Dは、基端部64A〜64Dと突部68が高抵抗の電流閉塞部となり、電流Iを引き込まないので、電気的にはコテ部60aの基部60fの通電に何の影響を与えることなく、専らコテ部60aの基部60fの各部で発生したジュール熱をコテ先部60e1〜60e7の反対側で吸収して大気へ放出する放熱作用のみを奏する。
【0047】
一方、突部68は、当該突部68に接続された熱電対20の熱引きによってフィン状放熱部62A〜62Dでの放熱効果と同様の効果を奏することができる。なお、突部および当該突部に接続された熱電対では、フィン状放熱部と同様に熱を大気へ放出させることもできる。
【0048】
ここで、フィン状放熱部62Aは主に基部部60fの左端部とコテ先部60e3に対応する部分との間の区間で発生したジュール熱を放熱し、フィン状放熱部62Bは主に基部60fのコテ先部60e2に対応する部分とコテ先部60e4に対応する部分との間の区間で発生したジュール熱を放熱し、熱電対20が溶着された突部68は主に基部60fの中心部分で発生したジュール熱を放熱し、フィン状放熱部62Cは主に基部60fのコテ先部60e4に対応する部分とコテ先部60e6に対応する部分との間の区間で発生したジュール熱を放熱し、フィン状放熱部62Dは主に基部60fのコテ先部60e5と右端部との間の区間で発生したジュール熱を放熱する。
【0049】
本実施形態では、コテ部60aの両端部から中心部に向かうほど放熱レートが高くなるように構成しているので、コテ部60aの全長に亘ってコテ先部60e1〜60e7の通電中および通電終了直後の温度特性を均一化することができる。又、熱電対20を溶着するための突部68にフィン状放熱部と同じ働きを持たせることができる。すなわち、突部68に接続された熱電対20の熱引きにより、突部68からもコテ部60aで発生したジュール熱を吸収することができる。また、本実施形態のヒータチップによれば、熱電対をヒータチップの所望の位置に配設することができ、これによってヒータチップを小さくすることができる。
【0050】
上記各実施形態では、コテ部の中心部に向かう程放熱レートを高くする場合、つまり、コテ部の中心部のフィン状放熱部を大きく形成する場合の例について説明した。このように構成することによって、発熱バランスを均一にしてコテ部の全域で同じ熱量とすることができる。また、同様に、被接合部の幅に合わせて個々のコテ先部の幅を異ならせるようにしてコテ部の全域で同じ熱量とすることも可能である。この場合には、コテ先部の放熱量を考慮してフィン状放熱部の形状を調節する。
【0051】
また、上述した各実施形態とは異なり、コテ先部によって熱量を変える事も可能である。コテ先部の形状や面積を調整することによってコテ先部の発熱を制御する場合の例を図9に示す。図9に示すように、ヒータチップ70には、櫛歯状のコテ部70aが形成されている。このコテ部70aは、長手方向に伸びる基部70fと基部70fから突起状に突出するコテ先部70e1〜70e7が一体的に形成されている。
【0052】
コテ先部70e1〜70e7は、発熱時の熱量が異なるよう複数の形状を持つように形成されている。より詳細には、コテ先部70e1,70e3,70e5,70e7は、発熱時に熱量が高くなるように中心部分が窪んだ形状を持つ。コテ先部70e2,70e4,70e6は、発熱時に熱量がコテ先部70e1,70e3,70e5,70e7よりも低くなるように中心部分が膨らんだ形状を持つ。このようにして、コテ先部70eの形状や面積を調整することによってコテ先部70eの発熱を制御することができる。
【0053】
また、ヒータチップ70は、櫛歯状のコテ部70aのコテ先部70eの反対側でフィン状に延びる放熱部72A〜72Eをコテ部70aと一体に有する。さらに、フィン状放熱部72A〜72Eにおいて、櫛歯状のコテ部70aに接続する基端部74A〜74Eがスリット状に切り欠かれ括れている。櫛歯状のコテ部70aの左右両端部には、一対の接続端子部70b、70bが接続されている。片側(図の左)の接続端子部70bの下端部内側には、熱電対20を取り付けるための突部78が形成されている。
【0054】
また、フィン状放熱部72A〜72Eの形状や面積を調整することで、コテ先部70eの熱量を制御することもできる。例えば、より発熱させたいコテ先部に対応するフィン状放熱部を小さくし、発熱を抑えたいコテ先部に対応するフィン状放熱部を大きくする。このようにしてコテ部の発熱バランスを調整することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明に係る実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。尚、上記ヒータチップ20,60,70では、各コテ先部間は、U字状やコ字状の形状をしていても良い。また、上記ヒータチップ60では熱電対20を溶着するための突部68を中央部に形成する場合の例について説明したが、この突部68は中央部以外のコテ先部60eの反対側の位置に設けるようにしてもよい。また、ヒータチップ60では、熱電対20を溶着するための突部68のみを一つだけ設ける場合の例について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、複数の突部を設けてそこに複数の熱電対を設けるようにしてもよい。さらに、本実施形態では、積層構造を有するタングステン板を用いた場合について説明したが、モリブデンやタングステンとモリブデンの合金を用いてもよい。
【0056】
また、上記の各実施形態では、本発明のヒータチップ20、60、70をハンダ付けに用いる場合を例示したが、これに代えて、異方性導電材料を用いた接合、熱カシメによる接合、熱圧着による接合等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
10,60,70 ヒータチップ
10a,60a,70a コテ部
10b,60b,70b 接続端子部
10e,60e,70e コテ先部
10f,60f,70f 基部
12A〜12E,62A〜62D,72A〜72E 放熱部
18,68,78 突部
20 熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物に加圧接触または近接させることによって前記被接合物を接合するヒータチップであって、
通電により発熱する櫛歯状のコテ部と、
前記コテ部と一体に形成され、前記櫛歯状のコテ部のコテ先部の反対側でフィン状に延びる放熱部とを有するヒータチップ。
【請求項2】
前記フィン状放熱部を前記櫛歯状のコテ部の長手方向に沿って複数設ける請求項1に記載のヒータチップ。
【請求項3】
前記フィン状放熱部を前記櫛歯状のコテ部のコテ先部の反対側であって当該コテ先部に対応する位置にそれぞれ設ける請求項2に記載のヒータチップ。
【請求項4】
前記コテ先部の少なくとも一つの反対側に設けられ熱電対を接続するための突部をさらに有し、
前記フィン状放熱部を、前記突部を除いた前記コテ先部の反対側の対応する位置にそれぞれ設ける請求項2に記載のヒータチップ。
【請求項5】
前記フィン状放熱部は、前記コテ部と面一で板状に形成される請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のヒータチップ。
【請求項6】
前記フィン状放熱部を調整することによって前記コテ先部の熱量を制御する請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のヒータチップ。
【請求項7】
前記櫛歯状のコテ部は、発熱時に熱量の異なる複数形状のコテ先部を有する請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のヒータチップ。
【請求項8】
前記コテ部および前記フィン状放熱部が同一材質で一体に形成される請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のヒータチップ。
【請求項9】
ヒータ電源からの給電用導体との物理的かつ電気的な接続をとるために、前記櫛歯状のコテ部の両端部から前記フィン状放熱部の周囲に延びる一対の接続端子部を有する請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のヒータチップ。
【請求項10】
前記コテ部、前記フィン状放熱部および前記接続端子部がタングステン板をワイヤ放電加工により刳り貫いて一体に形成される請求項9に記載のヒータチップ。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のヒータチップと、
前記ヒータチップを支持し、被接合物を接合する際に前記コテ部のコテ先部を前記被接合物に加圧接触または近接させるヒータヘッドと、
前記ヒータチップに抵抗発熱用の電流を供給するヒータ電源と、
を有する接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−253503(P2010−253503A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105652(P2009−105652)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000161367)ミヤチテクノス株式会社 (103)
【出願人】(503304441)株式会社 工房PDA (6)
【Fターム(参考)】