説明

ヒータ

【課題】吸湿および絶縁耐圧の低下を防止することが可能なヒータを提供すること。
【解決手段】基板1と、基板1に形成された発熱抵抗体2と、発熱抵抗体2を覆う結晶化ガラス層31、およびこの結晶化ガラス層31を覆う非晶質ガラス層33を有する保護膜3と、を備えるヒータA1であって、保護膜3は、結晶化ガラス層31の縁31aを囲い、かつ非晶質ガラス層33のうち結晶化ガラス層31からはみ出る部分と基板1との間に介在する半結晶化ガラス層32をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばレーザプリンタにおいて記録紙に転写されたトナーを熱定着させるために記録紙を加熱する手段として用いられるヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のヒータの一例を示している(たとえば、特許文献1参照)。同図に示されたヒータXは、基板91、発熱抵抗体92、および保護膜93を備えている。基板91は、長矩形状であり、絶縁材料によって形成されている。発熱抵抗体92は、たとえばAg−Pdからなり、基板91の長手方向に沿って互いに平行に延びる2つの部分を有する帯状とされている。保護膜93は、発熱抵抗体92を保護するためのものであり、結晶化ガラス層93aと非晶質ガラス層93bとからなる。結晶化ガラス層93aは、SiO2−BaO−Al23−ZnO系ガラスなどの結晶化ガラスからなり、発熱抵抗体92に対して接している。非晶質ガラス層93bは、たとえばSiO2−ZnO−MgO系ガラスなどの非晶質ガラスからなり、結晶化ガラス層93aを覆っている。結晶化ガラス層93aは、発熱抵抗体92とヒータX外の導電体部品などとが不当に導通するに至る電圧である絶縁耐圧を高くするのに適している。非晶質ガラス層93bは、保護膜93の表面を滑らかなものとするのに有利である。
【0003】
しかしながら、非晶質ガラス層93bの端部は、基板91と接している。非晶質ガラス層93bの材質である非晶質ガラスには、基板91の材質であるたとえばAlNと接すると、気泡を発生しやすいという性質がある。このため、保護膜93の絶縁耐圧が顕著に低下するという問題があった。また、発泡した非晶質ガラス層93bを透して、空気中の水分が結晶化ガラス層93aに吸収されやすくなる。このような結晶化ガラス層93aは、たとえば局所的に膨張するなどの不具合を生じる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−289328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、吸湿および絶縁耐圧の低下を防止することが可能なヒータを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるヒータは、基板と、上記基板に形成された発熱抵抗体と、上記発熱抵抗体を覆う結晶化ガラス層、およびこの結晶化ガラス層を覆う非晶質ガラス層を有する保護膜と、を備えるヒータであって、上記保護膜は、上記結晶化ガラス層の縁を囲い、かつ上記非晶質ガラス層のうち上記結晶化ガラス層からはみ出る部分と上記基板との間に介在する半結晶化ガラス層をさらに有することを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、上記非晶質ガラス層は、上記基板と接する部分を有しない。一方、上記半結晶化ガラス層を形成する半結晶化ガラスは、上記基板を形成するたとえばAlNと接しても発泡しにくい。これにより、上記保護膜が発泡することを回避することが可能である。したがって、上記保護膜全体としての絶縁耐圧が低下することを防止することができる。また、上記結晶化ガラス層と空気とを遮断することが可能である。これにより、上記結晶化ガラス層が空気中の水分を吸収することを回避し、上記結晶化ガラス層が局所的に膨張することを防止することができる。
【0008】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0010】
図1および図2は、本発明に係るヒータの第1実施形態を示している。本実施形態のヒータA1は、基板1、発熱抵抗体2、および保護膜3を備えている。ヒータA1は、たとえば、レーザプリンタにおいて記録紙に転写されたトナーを熱定着させるために用いられる。なお、図1においては、理解の便宜上、保護膜3を省略している。
【0011】
基板1は、長矩形状とされており、絶縁材料からなる。絶縁材料の例としては、たとえばAlN、Al23が挙げられる。
【0012】
発熱抵抗体2は、基板1上に形成されており、コの字の帯状である。発熱抵抗体2は、抵抗体材料としてたとえばAg−Pdを含んでいる。本実施形態においては、Pdの重量比率が50〜60%であるAg−Pdが用いられている。
【0013】
保護膜3は、発熱抵抗体2を保護するためのものであり、結晶化ガラス層31、半結晶化ガラス層32、および非晶質ガラス層33からなる。
【0014】
結晶化ガラス層31は、たとえばSiO2−BaO−Al23−ZnO系ガラスなどの結晶化ガラスからなり、発熱抵抗体2に対して接している。本実施形態においては、結晶化ガラス層31の厚さは、60μm程度とされている。
【0015】
半結晶化ガラス層32は、たとえばBaO−SiO2系ガラスなどの半結晶化ガラスからなり、結晶化ガラス層31の全体を覆っている。これにより、結晶化ガラス層31の縁31aは、半結晶化ガラス層32によって囲われている。本実施形態においては、半結晶化ガラス層32の厚さは、20μm程度とされている。
【0016】
非晶質ガラス層33は、たとえばSiO2−ZnO−MgO系ガラスなどの非晶質ガラスからなり、半結晶化ガラス層32上に形成されている。非晶質ガラス層33のうち結晶化ガラス層31からはみ出した部分と基板1との間には、半結晶化ガラス層32の端部が介在する格好となっている。本実施形態においては、非晶質ガラス層33の厚さは、20μm程度とされている。
【0017】
次に、ヒータA1の作用について説明する。
【0018】
本実施形態によれば、非晶質ガラス層33は、基板1と接する部分を有しない。一方、半結晶化ガラス層32を形成する半結晶化ガラスは、基板1を形成するAlNと接しても発泡しにくい。これにより、保護膜3が発泡することを回避することが可能である。したがって、保護膜93全体としての絶縁耐圧が低下することを防止することができる。
【0019】
また、保護膜3の発泡を回避することにより、結晶化ガラス層31と空気とを遮断することが可能である。これにより、結晶化ガラス層31が空気中の水分を吸収することを回避し、結晶化ガラス層31が局所的に膨張することを防止することができる。
【0020】
図3および図4は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0021】
図3は、本発明に係るヒータの第2実施形態を示している。本実施形態のヒータA2は、半結晶化ガラス層32の形状が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、半結晶化ガラス層32は、結晶化ガラス層31を囲う枠状とされている。すなわち、非晶質ガラス層33のうち結晶化ガラス層31からはみ出した部分と基板1との間に、半結晶化ガラス層32が介在する構造とされている。結晶化ガラス層31と非晶質ガラス層33とが重なり合う部分どうしは、互いに接している。このような構成によっても、保護膜3が発泡することを回避可能である。
【0022】
図4は、本発明に係るヒータの第3実施形態を示している。本実施形態のヒータA3は、保護膜3の構成が上述した実施形態と異なっている。保護膜3は、結晶化ガラス層31A,31B、半結晶化ガラス層32、非晶質ガラス層33、および半結晶化ガラス層34からなる。発熱抵抗体2は、結晶化ガラス層31Aによって直接覆われている。結晶化ガラス層31A、31Bは、ともに結晶化ガラスからなり、互いに積層されている。半結晶化ガラス層34は、結晶化ガラス層31A,31Bの間に設けられており、発熱抵抗体2のうち互いに平行に延びる部分の間に位置している。半結晶化ガラス層34は、半結晶化ガラス層32を形成する半結晶化ガラスと同じ半結晶化ガラスによって形成されている。
【0023】
このような構成によっても、保護膜3が発泡することを回避可能である。また、半結晶化ガラス層34を設けることにより、発熱抵抗体2のうち互いに平行に延びる部分どうしの間の絶縁耐圧を高めるという効果を奏する。
【0024】
本発明に係るヒータは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るヒータの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るヒータの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係るヒータの第2実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係るヒータの第3実施形態を示す断面図である。
【図5】従来のヒータの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
A1,A2,A3 ヒータ
1 基板
2 発熱抵抗体
3 保護膜
31 結晶化ガラス層
31a 縁
32 半結晶化ガラス層
33 非晶質ガラス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板に形成された発熱抵抗体と、
上記発熱抵抗体を覆う結晶化ガラス層、およびこの結晶化ガラス層を覆う非晶質ガラス層を有する保護膜と、
を備えるヒータであって、
上記保護膜は、上記結晶化ガラス層の縁を囲い、かつ上記非晶質ガラス層のうち上記結晶化ガラス層からはみ出る部分と上記基板との間に介在する半結晶化ガラス層をさらに有することを特徴とする、ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−204713(P2008−204713A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38083(P2007−38083)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】