説明

ヒータ

【課題】絶縁耐圧を高めることが可能なヒータを提供すること。
【解決手段】基板1と、基板1に形成されており、それぞれが方向xに延びた帯状であり、方向yにおいて離間配置された1対の帯状部分を有する抵抗体2と、抵抗体2に導通する配線部3と、抵抗体2および配線部3の少なくともいずれかの一部を覆う保護膜5と、を備えるヒータA1であって、配線部3は、保護膜5に覆われており、方向yに電流を流し、かつその輪郭31aが方向yに対して交差する連結部31を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばレーザプリンタにおいて記録紙に転写されたトナーを熱定着させるために記録紙を加熱する手段として用いられるヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
図8および図9は、従来のヒータの一例を示している。同図に示されたヒータXは、基板91上に、方向xに延びる1対の抵抗体92が平行に配置されている。基板91の両端寄り部分には、1対の電極94が形成されている。1対の電極94と1対の抵抗体92とは、1対の配線部93によってつながれている。配線部93は、方向yに延びる連結部93aを有している。連結部93aは、方向yに離間配置された1対の抵抗体92の双方に通電するためのものである。1対の抵抗体92と1対の配線部93の一部ずつとは、保護膜95によって覆われている。図8においては、理解の便宜上、保護膜95を想像線で示している。保護膜95は、たとえばガラス材料を方向xにスキージを移動させることによりスクリーン印刷した後に、これを焼成することによって形成される。
【0003】
しかしながら、連結部93aを上記スキージが乗り越えるときに、連結部93aの肩部においてガラス材料が途切れてしまうおそれがある。このようなガラス材料を焼成することによって形成された保護膜95には、図9に示すように亀裂95aが生じやすい。亀裂95aは、保護膜95の絶縁耐圧を低下させる原因となる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−121955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、絶縁耐圧を高めることが可能なヒータを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるヒータは、基板と、上記基板に形成されており、それぞれが第1方向に延びた帯状であり、上記第1方向に対して直角である第2方向において離間配置された1対の帯状部分を有する抵抗体と、上記抵抗体に導通する配線部と、上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかの一部を覆う保護膜と、を備えるヒータであって、上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかは、上記保護膜に覆われており、上記第2方向に電流を流し、かつその輪郭が上記第2方向に対して交差する部分を有することを特徴としている。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかは、上記保護膜に覆われており、上記第2方向に電流を流し、かつその輪郭が上記第2方向に対して一様に傾斜している部分を有する。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかは、上記保護膜に覆われており、上記第2方向に電流を流し、かつその輪郭が上記第2方向に延びる複数部分と上記第1方向に延びる複数部分とが交互に連結された形状とされた部分を有する。
【0009】
このような構成によれば、上記保護膜を形成するために、たとえばガラス材料をスキージよって上記第1方向に沿って塗布する場合に、ガラス材料が途切れることを抑制することが可能である。したがって、上記ヒータの絶縁耐圧を高めることができる。
【0010】
本発明の第2の側面によって提供されるヒータは、基板と、上記基板に形成されており、それぞれが第1方向に延びた帯状であり、上記第1方向に対して直角である第2方向において離間配置された1対の帯状部分を有する抵抗体と、上記抵抗体に導通する配線部と、上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかの一部を覆う保護膜と、を備えるヒータであって、上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかは、上記第2方向に電流を流し、かつ上記基板側に位置する第1層と、上記第1層上に形成されており、かつその輪郭が上記第1層の輪郭よりも上記第1方向において内側に位置する第2層とが積層された部分を有していることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、上記保護膜を形成するために、たとえばガラス材料をスキージによって上記第1方向に沿って塗布する場合に、上記スキージが一度に乗り越えるギャップの高さを縮小することができる。したがって、ガラス材料が途切れることを抑制することが可能であり、上記ヒータの絶縁耐圧を高めることができる。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
図1および図2は、本発明に係るヒータの第1実施形態を示している。本実施形態のヒータA1は、基板1、抵抗体2、配線部3、電極4、および保護膜5を備えている。ヒータA1は、たとえばレーザプリンタにおいて記録紙に転写されたトナーを熱定着させるために記録紙を加熱する手段として用いられる。なお、図1においては、理解の便宜上、保護膜5を想像線で示している。
【0015】
基板1は、長矩形状とされており、絶縁材料からなる。絶縁材料の例としては、たとえばAlN、Al23が挙げられる。
【0016】
抵抗体2は、基板1上に形成されており、本実施形態においては2つの帯状部からなる。これらの帯状部は、それぞれが方向xに延びており、方向yにおいて離間して平行配置されている。抵抗体2は、抵抗体材料として、たとえばAg−Pdを含んでいる。また、抵抗体2には、SiO2−B23−R系ガラス、またはSiO2−B23−Al23−R系ガラス(Rは、ZnO2、LiO2、TiO2のいずれか)などの結晶化ガラスを含ませてもよい。
【0017】
電極4は、ヒータA1を搭載するレーザプリンタの端子(図示略)に接続するためのものである。電極4は、たとえばAgが主成分とされている。
【0018】
配線部3は、抵抗体2と電極4とを接続するためのものであり、本実施形態においては、電極4とともに一体的に形成されている。配線部3は、連結部31を有している。連結部31は、抵抗体2の2つの上記帯状部を互いに導通させるためのものであり、方向yに電流を流すことを意図した形状および配置とされている。連結部31の輪郭31aは、方向yに対して一様に傾斜している。
【0019】
保護膜5は、抵抗体2を保護するためのものであり、ガラスによって形成されている。保護膜5は、抵抗体2と、配線部3の一部とを覆っている。保護膜5は、たとえば、SiO2−BaO−Al23−ZnO系ガラスなどの結晶化ガラスと、BaO−SiO2系ガラスなどの半結晶化ガラスまたは、SiO2−ZnO−MgO系ガラスなどの非晶質ガラス、などからなる。保護膜5の形成は、たとえばペースト状のガラス材料をマスクパターンが形成されたシルクスクリーンを通してスキージによって方向xに塗り広げた後に、塗布されたガラス材料を焼成することによって行われる。
【0020】
次に、ヒータA1の作用について説明する。
【0021】
発明者らの試験研究の結果、保護膜5の形成において上記スキージが、抵抗体2や配線部3のうち進行方向である方向xに直角である比較的長い輪郭を乗り越えるときに、上記ガラス材料が途切れるおそれが大きいという知見が得られた。本実施形態によれば、上記スキージが乗り越える抵抗体2および配線部3の輪郭は、いずれも方向xに直角とはなっていない。すなわち、輪郭31aを方向yに対して傾斜した形状とすることにより、上記スキージが方向yに長く延びるギャップを乗り越えることがない。したがって、ガラス材料が途切れることを抑制することが可能であり、ヒータA1の絶縁耐圧を高めることができる。
【0022】
図3〜図7は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。また、それぞれの実施形態を示す平面図においては、理解の便宜上、保護膜5を想像線で示している。
【0023】
図3は、本発明に係るヒータの第2実施形態を示している。本実施形態のヒータA2は、輪郭31aの形状が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、輪郭31aは複数の方向yに延びる部分と複数の方向xに延びる部分とが交互に連結された、階段状とされている。このような実施形態によれば、保護膜5の形成において、上記スキージは、輪郭31aの方向yに延びる比較的短い部分を順々に乗り越えていく。これらの方向yに延びる部分を乗り越える前後には、上記スキージは、方向xに延びる部分を乗り越える。上述したとおり、方向yに延びる部分においては、ガラス材料が比較的途切れやすい。しかしながら、その前後にある方向xに延びる部分に塗布されたガラス材料が、隣り合う方向yに延びる部分に回りこんでくる効果が期待できる。これにより、本実施形態によっても、ガラス材料が途切れてしまうことを抑制可能であり、ヒータA2の絶縁耐圧を高めることができる。
【0024】
図4は、本発明に係るヒータの第3実施形態を示している。本実施形態のヒータA3は、抵抗体2の形状が上述したいずれの実施形態とも異なっている。本実施形態においては、抵抗体2が、方向xに延びる2つの帯状部分と、これらの帯状部分をつなぐ連結部21とからなる、略コの字状とされている。連結部21は、2つの帯状部を導通させており、方向yに電流を流すことが意図されている。連結部21の輪郭21aは、方向yに対して一様に傾斜している。本実施形態によっても、保護膜5を形成するためのガラス材料が輪郭21aにおいて途切れてしまうことを抑制することができる。
【0025】
これらの実施形態から理解されるとおり、抵抗体2または配線部3のうち保護膜5によって覆われる部分の輪郭を、上記スキージの進行方向である方向xに対して傾斜させる、あるいは方向xに対して直角である部分の長さを縮小することにより、ガラス材料の途切れを抑制することができる。抵抗体2および配線部3の輪郭は、このような効果を奏する形状であればよく、たとえば方向yにおいて曲率が徐々に変わる形状などであってもよい。
【0026】
図5および図6は、本発明に係るヒータの第4実施形態を示している。本実施形態のヒータA4は、配線部3および電極4の構成が、上述したいずれの実施形態とも異なっている。本実施形態においては、配線部3および電極4は、いずれも2層構造とされている。これにより、連結部31は、第1層31Aおよび第2層31Bからなる。第2層31Bは、第1層31Aよりも方向xの幅が小とされており、輪郭31Baが輪郭31Aaよりも方向x内側に位置している。電極4は、第1層4Aおよび第2層4Bからなる。第1層31Aおよび第1層4Aは、一体的に形成されており、第2層31Bおよび第2層4Bも、一体的に形成されている。
【0027】
本実施形態によれば、図6に示すように連結部31の断面形状が高さ方向において階段状となる。これにより、保護膜5の形成において上記スキージが一度に乗り越えるギャップの高さを縮小することが可能である。したがって、このような実施形態によってもガラス材料が途切れることを抑制することができる。
【0028】
図7は、本発明に係るヒータの第5実施形態を示している。本実施形態においては、2層構造とされた連結部31の輪郭31Aa,31Baがいずれも方向xに対して一様に傾斜した形状とされている。このような実施形態によれば、上記スキージが乗り越える輪郭31Aa,31Baが方向xに対して直角ではないことと、上記スキージが一度に乗り越えるギャップの高さが縮小されていることとの相乗効果が期待される。したがって、ガラス材料の途切れを抑制し、ヒータA5の絶縁耐圧を高めるのに好適である。
【0029】
本発明に係るヒータは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るヒータの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るヒータの第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係るヒータの第2実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明に係るヒータの第3実施形態を示す平面図である。
【図5】本発明に係るヒータの第4実施形態を示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】本発明に係るヒータの第5実施形態を示す平面図である。
【図8】従来のヒータの一例を示す平面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0031】
A1,A2,A3,A4,A5 ヒータ
1 基板
2 抵抗体
3 配線部
31 連結部
31A 第1層
31B 第2層
31a,31Aa,31Ba 輪郭
4 電極
5 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板に形成されており、それぞれが第1方向に延びた帯状であり、上記第1方向に対して直角である第2方向において離間配置された1対の帯状部分を有する抵抗体と、
上記抵抗体に導通する配線部と、
上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかの一部を覆う保護膜と、
を備えるヒータであって、
上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかは、上記保護膜に覆われており、上記第2方向に電流を流し、かつその輪郭が上記第2方向に対して交差する部分を有することを特徴とする、ヒータ。
【請求項2】
上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかは、上記保護膜に覆われており、上記第2方向に電流を流し、かつその輪郭が上記第2方向に対して一様に傾斜している部分を有する、請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかは、上記保護膜に覆われており、上記第2方向に電流を流し、かつその輪郭が上記第2方向に延びる複数部分と上記第1方向に延びる複数部分とが交互に連結された形状とされた部分を有する、請求項1に記載のヒータ。
【請求項4】
基板と、
上記基板に形成されており、それぞれが第1方向に延びた帯状であり、上記第1方向に対して直角である第2方向において離間配置された1対の帯状部分を有する抵抗体と、
上記抵抗体に導通する配線部と、
上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかの一部を覆う保護膜と、
を備えるヒータであって、
上記抵抗体および上記配線部の少なくともいずれかは、上記第2方向に電流を流し、かつ上記基板側に位置する第1層と、上記第1層上に形成されており、かつその輪郭が上記第1層の輪郭よりも上記第1方向において内側に位置する第2層とが積層された部分を有していることを特徴とする、ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−64759(P2009−64759A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233999(P2007−233999)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】