説明

ヒータ

【課題】面状ヒータで発生した熱エネルギーを被加熱物に伝導する効率を従来よりも上げる。
【解決手段】ヒータ10は線状発熱体、第1絶縁体板21、第2絶縁体板22、第3絶縁体板23、断熱部材30、カバー33、第1端子および第2端子を備える。第1絶縁体板21に巻き付けられた線状発熱体を第2絶縁体板22と第3絶縁体板23により挟む。第3絶縁体板23の外側に断熱部材30が配設される。第2絶縁体板22および断熱部材30を被うように熱伝導性あるカバー33が配設され、第1端子が線状発熱体の第1の所定箇所に接続され、第2端子が線状発熱体の第2の所定箇所に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータに関するものであり、特に、ヒータに断熱部材を取り付ける技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から面状ヒータが使用されている。この面状ヒータは、例えば図8に示す曲面状ヒータ90である。このヒータ90は金属薄板93、マイカシート92a、発熱素子91、マイカシ−ト92b、断熱材94を順次積層して加熱し一体に形成したものである。そして、金属薄板93は曲面状のヒータ90の内面を形成し、断熱材94はヒータ90の外面を形成している。なお、断熱材94は可撓性を有するものであり、例えばマイカシート92bの外面にセラミック塗料を塗布し乾燥した後、マイカシート92bの硬化時に合わせて微粉末の状態で固化、あるいは焼成することにより形成したものである。なお、断熱材94の一部分を空隙部で置き換えてもよい(例えば特許文献1参照)。また、電源コード95が発熱素子91に接続されている。
【特許文献1】特開2008−293870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来例では、断熱材94は、マイカシート92bの外面にセラミック塗料を塗布し乾燥した後、マイカシート92bの硬化時に合わせて微粉末の状態で固化、あるいは焼成することにより形成したものであるので、断熱材94の厚さを大きくすることができないため、断熱効果を上げるには限界があった。ヒータ90の金属薄板93を被加熱物に当てて被加熱物を加熱するため、断熱材94の断熱効果が悪いと、ヒータ90で発生した熱エネルギーが被加熱物以外の空間に拡散してしまうため、ヒータ90で発生した熱エネルギーを被加熱物に伝導する効率すなわち被加熱物を加熱する効率が低下することになる。
そこで、本願発明の課題は、上述の問題点を解決し、ヒータで発生した熱エネルギーを被加熱物に伝導する効率を従来よりも上げることができるヒータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、第1絶縁体板、線状発熱体、第2絶縁体板、第3絶縁体板、断熱部材、熱伝導性あるカバー、第1端子および第2端子を備えたヒータであって、前記第1絶縁体板に前記線状発熱体が巻き付けられ、前記第1絶縁体板に巻き付けられた前記線状発熱体を前記第2絶縁体板と前記第3絶縁体板により挟むように前記第2絶縁体板と前記第3絶縁体板が配置され、前記第3絶縁体板の外側に前記断熱部材が配置され、前記第2絶縁体板および前記断熱部材を被うように前記カバーが配置され、前記第1端子が前記線状発熱体の第1の所定箇所に接続され、前記第2端子が前記線状発熱体の第2の所定箇所に接続されたことを特徴とするヒータである。
【0005】
請求項1記載の発明により、第1絶縁体板に巻かれた線状発熱体を挟んだ第2絶縁体板および第3絶縁体板を配置し、前記第3絶縁体板の外側に前記断熱部材が配置される。そして、前記第2絶縁体板および前記断熱部材を被うように熱伝導性あるカバーが配置される。さらに、前記第1端子が前記線状発熱体の第1の所定箇所に接続され、前記第2端子が前記線状発熱体の第2の所定箇所に接続される。このため、前記断熱部材が熱伝導性あるカバーの内部に配設される。そして、前記カバーのうち前記第2絶縁体板が配置されている側の外面を被加熱物に押し当てて、前記被加熱物を加熱すると、前記被加熱物が存在しない側の前記カバーの方向には前記断熱部材により前記線状発熱体の熱が伝わりにくいので、前記被加熱物の方に前記線状発熱体の熱が効率よく伝わる。
【0006】
請求項2記載の発明は、第1絶縁体板、線状発熱体、第2絶縁体板、第3絶縁体板、断熱部材、熱伝導性あるカバー、第1端子および第2端子を備えたヒータであって、前記断熱部材は電気絶縁性能を有し、前記第1絶縁体板に前記線状発熱体が巻き付けられ、前記第1絶縁体板に巻き付けられた前記線状発熱体を前記第2絶縁体板と前記断熱部材により挟むように前記第2絶縁体板と前記断熱部材が配置され、前記断熱部材の外側に前記第3絶縁体板が配置され、前記第2絶縁体板および前記第3絶縁体板を被うように前記カバーが配置され、前記第1端子が前記線状発熱体の第1の所定箇所に接続され、前記第2端子が前記線状発熱体の第2の所定箇所に接続されたことを特徴とするヒータである。
【0007】
請求項2記載の発明により、第1絶縁体板に巻かれた線状発熱体を挟んだ第2絶縁体板および電気絶縁性能を有する断熱部材が配置され、前記断熱部材の外側に前記第3絶縁体板が配置される。そして、前記第2絶縁体板および前記第3絶縁体板を被うように熱伝導性あるカバーが配置される。さらに、前記第1端子が前記線状発熱体の第1の所定箇所に接続され、前記第2端子が前記線状発熱体の第2の所定箇所に接続される。このため、前記断熱部材が前記カバーの内部に配設される。そして、前記カバーのうち前記第2絶縁体板が配置されている側の外面を被加熱物に押し当てて、前記被加熱物を加熱すると、前記被加熱物が存在しない側の前記カバーの方向には前記断熱部材により前記線状発熱体の熱が伝わりにくいので、前記被加熱物の方に前記線状発熱体の熱が効率よく伝わる。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載したヒータであって、前記第1絶縁体板、前記第2絶縁体板、前記第3絶縁体板、前記断熱部材および前記カバーの外形は平板状であることを特徴とするヒータである。
【0009】
請求項3記載の発明により、前記カバーの外形が平板状であるので、板状ヒータの板面を平面状に形成することができる。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1または2に記載したヒータであって、前記第1絶縁体板、前記第2絶縁体板、前記第3絶縁体板、前記断熱部材および前記カバーの外形はそれぞれ筒状体(例えば円筒状体)を前記筒状体の軸方向に切断してできた形状と等しい形状であることを特徴とするヒータである。なお、本明細書においては、筒状体はその径より軸方向の長さが短いものから長いものまで含む。
【0011】
請求項4記載の発明により、前記第1絶縁体板、前記第2絶縁体板、前記第3絶縁体板、前記断熱部材および前記カバーの外形はそれぞれ筒状体を前記筒状体の軸方向に切断し
てできた形状と等しい形状であるので、ヒータの形状は前記筒状体を前記筒状体の軸方向に切断してできた形状と等しい形状になる。このため、前記断熱部材が前記第2絶縁体板よりも前記筒状体の外面側にあるときは、ヒータを柱状(棒状を含む)の外形(例えば円柱または円筒の外形)の被加熱物に押し当てて被加熱物をヒータにより効率よく加熱することができる。また、前記断熱部材が前記第2絶縁体板よりも前記筒状体の内面側にあるときは、ヒータを筒状の外形の被加熱物の前記筒の内面に押し当てて被加熱物をヒータにより効率よく加熱することができる。また、ヒータが曲面状になるので、ヒータを被加熱物に装着するときにヒータを変形して装着しやすくなる。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1または2に記載したヒータであって、前記第1絶縁体板、前記第2絶縁体板、前記第3絶縁体板、前記断熱部材および前記カバーの外形は筒状体(例えば円筒状体)を前記筒状体の軸方向に切断して前記筒状体を複数に分割してできた形状と等しい形状であることを特徴とするヒータである。
【0013】
請求項5記載の発明により、前記第1絶縁体板、前記第2絶縁体板、前記第3絶縁体板、前記断熱部材および前記カバーの外形はそれぞれ筒状体を前記筒状体の軸方向に切断して前記筒状体を複数に分割してできた形状と等しい形状であるので、ヒータの形状は前記筒状体を前記筒状体の軸方向に切断して複数に分割してできた形状と等しい形状になる。このため、前記断熱部材が前記第2絶縁体板よりも前記筒状体の外面側にあるときは、ヒータを柱状(棒状を含む)の外形(例えば円柱または円筒の外形)の被加熱物に押し当てて被加熱物をヒータにより効率よく加熱することができる。また、前記断熱部材が前記第2絶縁体板よりも前記筒状体の内面側にあるときは、ヒータを筒状の外形の被加熱物の前記筒の内面に押し当てて被加熱物をヒータにより効率よく加熱することができる。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載したヒータであって、前記断熱部材はシート状であることを特徴とするヒータである。
【0015】
請求項6記載の発明により、前記断熱部材はシート状であるので、前記断熱部材をヒータに配置することが容易になる。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載したヒータであって、前記断熱部材は無機質繊維(例えばセラミックウール、ガラスウール)であることを特徴とするヒータである。
【0017】
請求項7記載の発明により、前記断熱部材は無機質繊維であるので、断熱部材は不燃性となるとともに、断熱効果が高くなる。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載したヒータであって、第1絶縁部材および第2絶縁部材を備え、前記カバーは金属(例えばアルミニューム、ステンレス鋼)製であり、前記第1端子は前記第1絶縁部材を介して前記カバーに固定され、前記第2端子は前記第2絶縁部材を介して前記カバーに固定されたことを特徴とするヒータである。
【0019】
請求項8記載の発明により、前記第1端子は前記第1絶縁部材を介して、前記第2端子は前記第2絶縁部材を介してそれぞれ前記カバーに固定することができる。
【0020】
請求項9記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載したヒータであって、前記第1端子の代わりに第1リード線が前記線状発熱体の第1の所定箇所に接続され、前記第2端子の代わりに第2リード線が前記線状発熱体の第2の所定箇所に接続されたことを特徴とするヒータである。
【0021】
請求項9記載の発明により、第1リード線と第2リード線を使用してヒータの線状発熱体に電力を供給することができる。
【0022】
請求項10記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載したヒータであって、前記第1絶縁体板および前記第1絶縁体板に巻き付けられた前記線状発熱体の代わりに面状発熱素子を使用したことを特徴とするヒータである。
【0023】
請求項10記載の発明により、面状発熱素子を使用して請求項1ないし10に記載したヒータと同様のヒータを構成することができる。
【0024】
請求項11記載の発明は、請求項10に記載したヒータであって、前記面状発熱素子は絶縁基板の板面に電気抵抗を設けたものであり、前記面状発熱素子の絶縁基板を前記第2絶縁体板または第3絶縁体板としたことを特徴とするヒータである。
【0025】
請求項11記載の発明により、前記面状発熱素子の絶縁基板を第2絶縁体板または第3絶縁体板とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明によれば、断熱部材が面状ヒータのカバーの内部に配設されるので、面状ヒータの断熱部材が配置されていない側から加熱物を加熱するので、ヒータで発生した熱エネルギーを被加熱物に伝導する効率すなわち加熱効率を上げることができる。
請求項2記載の発明によっても、断熱部材が面状ヒータのカバーの内部に配設されるので、面状ヒータの断熱部材が配置されていない側から加熱物を加熱するので、ヒータで発生した熱エネルギーを被加熱物に伝導する効率すなわち加熱効率を上げることができる。
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果とともに、平板状ヒータを構成することができる。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果とともに、曲面状ヒータを構成することができる。そして、柱状の外形(例えば円柱または円筒の外形)の被加熱物または筒状の外形の被加熱物の前記筒の内面をヒータにより効率よく加熱することができる。
請求項5記載の発明によっても、請求項1または2記載の発明の効果とともに、曲面状ヒータを構成することができる。そして、柱状の外形(例えば円柱または円筒の外形)の被加熱物または筒状の外形の被加熱物の前記筒の内面をヒータにより効率よく加熱することができる。
【0028】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかに記載した発明の効果とともに、ヒータを構成することが容易になる。
請求項7記載の発明によれば、請求項1ないし6のいずれかに記載した発明の効果とともに、従来よりも高い温度のヒータにより被加熱物を効率よく加熱することができる。
請求項8記載の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかに記載した発明の効果とともに、ヒータに通電することが容易になる。
【0029】
請求項9記載の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかに記載した発明の効果とともに、端子の代わりにリード線を使用してヒータに電力を供給することができる。
請求項10記載の発明によれば、面状発熱素子を用いて請求項1ないし9のいずれかに記載した発明の効果と同様の効果を得ることができる。
請求項11記載の発明によっても、請求項10記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態に係るヒータを示し、図2は図1のヒータをその長さ方向に垂直な面で切断した切断部端面を拡大して示し、図3は図1のヒータの第1絶縁体板に巻かれた線状発熱体を示し、図4は図1のヒータの使用例を示す。
【0031】
図1に示すヒータ10は、線状発熱体20(図3参照)、第1絶縁体板21(図2参照)、第2絶縁体板22(図2参照)、第3絶縁体板23(図2参照)、断熱部材30、第1端子31、第2端子32および熱伝導性あるカバー33を備えている。図1においてヒータ10の幅方向Wはヒータ10の長さ方向Lに直交する。
図3に示すように、第1絶縁体板21に線状発熱体20が巻き付けられる。図2に示すように第1絶縁体板21に巻き付けられた線状発熱体20(図3参照)を第2絶縁体板22と第3絶縁体板23により挟むように第2絶縁体板22と第3絶縁体板23が配置されている。また、第2絶縁体板22と第3絶縁体板23により挟まれた線状発熱体20が第2絶縁体板22と第3絶縁体板23の周縁部よりも内側にあるようにしている。このようにすると、線状発熱体20がカバー33に接触しないで、線状発熱体20とカバー33との間に隙間ができるので、線状発熱体20がカバー33から電気的に絶縁される。
【0032】
具体的には、図2に示すように第1絶縁体板21に巻き付けられた線状発熱体20(図3参照)の幅方向Wの両端部が第2絶縁体板22と第3絶縁体板23の幅方向Wの周縁部の内側にあるようにし、図3に示すように、第1絶縁体板21に巻き付けられた線状発熱体20の長さ方向Lの両端部が第2絶縁体板22と第3絶縁体板23の長さ方向L(図1、図2参照)の周縁部の内側にあるようにする。なお、図2に示すように線状発熱体20が巻き付けられた第1絶縁体板21、第2絶縁体板22および第3絶縁体板23は順次積層されて、図示しないピンを第1絶縁体板21、第2絶縁体板22および第3絶縁体板23に差し込むことにより第1絶縁体板21、第2絶縁体板22および第3絶縁体板23の相互間の位置が固定される。
なお、線状発熱体20(図3参照)、第1絶縁体板21、第2絶縁体板22および第3絶縁体板23は発熱部11を構成している。
【0033】
図2に示すように、第3絶縁体板23の外側に断熱部材30が配置されている。具体的には、断熱部材30は第3絶縁体板23の外側に積層されている。線状発熱体20(図3参照)、第1絶縁体板21、第2絶縁体板22、第3絶縁体板23および断熱部材30を被うようにカバー33が配置されている。
具体的には、図1に示すように、カバー33は第1板33aおよび第2板33bにより形成され、第1板33aは平板状であり、絶縁部材30の外側に配置されている。また、第2板33bは、発熱部11および断熱部材30を被うように折り曲げて形成され、第2板33bの周縁部は第1板33aの周縁部上に折り曲げられるように形成されている。カバー33によりヒータ10の機械的強度が向上する。
第1端子31が線状発熱体20の第1の所定箇所20a(例えば一端部)(図3参照)に接続され、第2端子32が線状発熱体20の第2の所定箇所20b(例えば他端部)(図3参照)に接続されている。
【0034】
図2に示すように、第1絶縁体板21、第2絶縁体板22、第3絶縁体板23、断熱部材30およびカバー33の外形(図1参照)は平板状である。
断熱部材30は例えばシート状(マット状を含む)である。例えば断熱部材30は可撓性あるシート状である。また、断熱部材30は例えば無機質繊維(例えばセラミックウールおよびガラスウール)である。
【0035】
図1に示すように、カバー33は例えば金属(例えばアルミニューム、ステンレス鋼)製である。第1端子31は第1絶縁部材31aを介してカバー33に固定され、第2端子32は第2絶縁部材32aを介してカバー33に固定されている。なお、第1端子31の先端に第1安全ガイシ31bが取り付けられ、第2端子32の先端に第2安全ガイシ32bが取り付けられている。例えば、各端子31、32に雄ネジを形成し、各安全ガイシ31b、32bの基部に雌ネジを形成し、この雌ネジを各端子31、32の雄ネジに螺合させている。
【0036】
以上の構成のヒータ10は以下の動作をする。
第1絶縁体板21に巻かれた線状発熱体20を挟んだ第2絶縁体板22および第3絶縁体板23のうち、第3絶縁体板23の外側に断熱部材30が配置される。そして、第2絶縁体板22および断熱部材30を被うようにカバー33が配置される。さらに、第1端子31が線状発熱体20の第1の所定箇所20aに接続され、第2端子32が線状発熱体20の第2の所定箇所20bに接続される。このため、断熱部材30がカバー33の内部に配設される。そして、カバー33のうち第2絶縁体板22が配置されている側の外面(第2板33bの外面)を被加熱物に押し当てて、前記被加熱物を加熱すると、前記被加熱物が存在しない側のカバー33の外面(第1板33aの外面)方向には断熱部材30により線状発熱体20の熱が伝わりにくいので、前記被加熱物の方に線状発熱体20の熱が効率よく伝わる。
【0037】
第1絶縁体板21、第2絶縁体板22、第3絶縁体板23、断熱部材30およびカバー33の外形が平板状であるときは、板状ヒータ10の板面を平面状に形成することができる。
【0038】
断熱部材30はシート状であるときは、断熱部材30をヒータ10に配置することが容易になる。
断熱部材30は無機質繊維(例えばガラスウール、セラミックウール)であるときは、断熱部材30は不燃性であり、断熱効果が高くなる。
【0039】
第1端子31は第1絶縁部材31aを介して、第2端子32は第2絶縁部材32aを介してそれぞれカバー33に固定することができる。
【0040】
ヒータ10は例えば図4に示すように使用される。図4において、下側ベース61の上側に下側熱板62が配置される。下側熱板62の上側に成形型63の下型63aが配置され、下型63aの上側に成形型63の上型63bが配置される。キャビティ63cが下型63aおよび上型63bの内部に形成されている。さらに、上型63bの上側に上側熱板64が配置され、上側熱板64の上側に上側ベース65が配置されている。
ここで、下側熱板62の下面に複数の(例えば4つの)凹部62aが形成され、この凹部62aにヒータ10が配置されている。その際、ヒータ10のカバー33の第2板33bが各凹部62a、64aの内部側に配置され、第2板33bから下側熱板62および上側熱板64にヒータ10の熱が伝導され、この伝導された熱により形成型63が加熱される。
【0041】
なお、上記実施の形態において、ヒータ10の外形は平板状であるが、これに限定されず、例えば図5のようにすることができる。図5は本発明の実施の形態の変形例に係るヒータを示し、図6は図5のヒータの一部分を破断して示し、図7は図5のヒータの使用例を示す。
図5は前記変形例に係る一対のヒータ40a、40bを示している。また、図6はヒータ40aの一部分を破断して示している。図5においてヒータ40a、40bは例えばヒータ10のL方向(図1参照)をローラで曲げて形成したもの(ヒータ10のW方向(図1参照)は曲げていない)であり、バンドヒータとも言われるものである。金属バンド50は一対のヒータ40a、40bの外面40ax、40bxを取り巻いて固定している。なお、ヒータ40a、40bの幅方向(図1のヒータ10の幅方向Wに相当する)は紙面に垂直な方向であり、特許請求の範囲に記載した「筒状体の軸方向」に相当する。
【0042】
具体的には、金属バンド50の一端部に第1金具51aが形成され、金属バンド50の他端部に第2金具51bが形成されている。第1金具51aと第2金具51bとはボルト52で締め付けられている。ここで、第1金具51aの孔をボルト52が挿通し、第2金具51bのネジ孔にボルト52のネジ部52aが螺合している。そして、ボルト52の頭部52bが第1金具51aの孔を挿通しないので、ボルト52のネジ部52aと頭部52bで金属バンド50の第1金具51aと第2金具51bを引っ張って金属バンド50でヒータ40a、40bの外面40ax、40bxを固定することができる。
【0043】
ヒータ40aの第1端子45、絶縁部材45aおよび安全ガイシ45bは、それぞれ第1端子31、第1絶縁部材31aおよび第1安全ガイシ31b(図1参照)に相当する。また、ヒータ40aの第2端子46、絶縁部材46aおよび安全ガイシ46bは、それぞれ第2端子32、第2絶縁部材32aおよび第2安全ガイシ32b(図1参照)に相当する。
また、ヒータ40bの第1端子47、絶縁部材47aおよび安全ガイシ47bは、それぞれ第1端子31、第1絶縁部材31aおよび第1安全ガイシ31b(図1参照)に相当する。また、ヒータ40bの第2端子48、絶縁部材48aおよび安全ガイシ48bは、それぞれ第2端子32、第2絶縁部材32aおよび第2安全ガイシ32b(図1参照)に相当する。
また、第2端子46と第1端子47はコード49で接続されている。すなわち、ヒータ40aとヒータ40bは直列に接続されている。
【0044】
図6に示すように、ヒータ40aの線状発熱体(図3の線状発熱体20と同様のもの)が巻かれた第1絶縁体板42x、第2絶縁体板42y、第3絶縁体板42z、断熱部材43および熱伝導性あるカバー44の外形はそれぞれ筒状体を前記筒状体(例えば円筒状体)の軸方向に切断して前記筒状体を複数(例えば2つ)に分割してできた形状と等しい形状である。なお、第1絶縁体板42x、第2絶縁体板42y、第3絶縁体板42z、断熱部材43および熱伝導性あるカバー44用の前記筒状体はそれぞれ曲率が異なるので別個のものである。また、線状発熱体が巻かれた第1絶縁体板42x、第2絶縁体板42yおよび第3絶縁体板42zは発熱部41を構成している。また、絶縁部材43は第3絶縁体板42zの外側に配置されている。なお、絶縁部材43はカバー44の外面40ax側部分に接し、第2絶縁体板42yはカバー44の内面40ay側部分に接している。
また、このとき、それぞれ筒状体を前記筒状体(例えば円筒状体)の軸方向に切断して
できた形状と等しい形状にしてもよい。このようにすると、前記筒状体の切断箇所は1箇所になる。また、ヒータが曲面状になるので、ヒータを被加熱物に装着するときにヒータを変形して装着しやすくなる。
【0045】
このようにすると、ヒータ40aの形状は前記筒状体の軸方向に前記筒状体を切断して複数に分割してできた形状と等しい形状になる。このため、ヒータ40aの内面40ay(カバー44の内面)を柱状(棒状を含む)の外形の被加熱物に押し当てて被加熱物をヒータ40aにより効率よく加熱することができる。ヒータ40bも同様にヒータ40bの内面40byを柱状の外形の被加熱物に押し当てて被加熱物をヒータ40bにより効率よく加熱することができる。
【0046】
ヒータ40a、40bは例えば図7に示すように使用される。図7においては、複数のヒータ40a、40bの内面40ay、40by(図5参照)がシリンダ71の外面を取り巻くように複数のヒータ40a、40bが配置されている。シリンダ71の内部にはスクリュ72が配置され、シリンダ71の先端のノズル73からシリンダ71内の溶融樹脂がスクリュ72に搬送されて押し出される。ノズル73に隣接して固定盤74が配置され、固定盤74に接して可動盤75が配置され、固定盤74と可動盤75の内部に成形型のキャビティ76が形成されている。ノズル73から押し出された溶融樹脂はキャビティ76に注入されて成形される。その際、複数のヒータ40a、40bはシリンダ71内の溶融樹脂を加熱してその温度が低下しないようにしている。
【0047】
また、線状発熱体20は例えばニクロム線であり、各絶縁体板21、22、23、42x、42y、42zは例えばマイカシートである。
【0048】
また、上記実施の形態において、第1絶縁体板21に巻かれた線状発熱体20が第2絶縁体板22の周縁部22aおよび第3絶縁体板23の周縁部23aの内部に位置しているが、これに限定されず、カバー33を形成するときに、カバー33で第2絶縁体板22の周縁部22aおよび第3絶縁体板23の周縁部23aを圧迫して第2絶縁体板22の周縁部22aと第3絶縁体板23の周縁部23aとが当接するようにして、第2絶縁体板22の周縁部22aと第3絶縁体板23の周縁部23aにより第1絶縁体板21に巻かれた線状発熱体20を被うようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施例において第3絶縁体板23と断熱部材30の位置を反対にして、線状発熱体20を巻いた第1絶縁体板21に接するように断熱部材30を配置してもよい。なお、断熱部材30として電気絶縁性能を有する断熱部材(例えばガラスウール、セラミックウール)を用いる。このとき、第2絶縁体板22と断熱部材30により挟まれた線状発熱体20が第2絶縁体板22の周縁部22aと断熱部材30の周縁部よりも内側にあるようにすると、断熱部材30の断熱効果が十分なものになるとともに、線状発熱体20がカバー33に接触しないで、線状発熱体20とカバー33との間に隙間ができるので、線状発熱体20がカバー33から電気的に絶縁される。
【0050】
第3絶縁体板23と断熱部材30の位置を反対にして、第2絶縁体板22と絶縁部材30とにより第1絶縁体板21に巻かれた線状発熱線20を挟む場合においても、カバー33を形成するときに、カバー33で第2絶縁体板22の周縁部22aおよび第3絶縁体板23の周縁部23aを圧迫して第2絶縁体板22の周縁部22aと第3絶縁体板23の周縁部23aとが当接するようにして、第2絶縁体板22の周縁部22aと第3絶縁体板23の周縁部23aにより第1絶縁体板21に巻かれた線状発熱体20を被うようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施例の各端子31、32、45、46、47、48の代わりにリード線を使用することもできる。
また、カバー33、44は金属製でなくてもよく、熱伝導性および機械的強度があればよい。
また、図1において、第1端子31はヒータ10の長さ方向Lの一方の端部に形成され、第2端子32はヒータ10の長さ方向Lの他方の端部に形成されているが、これに限定されず、第1端子31と第2端子32がヒータ10の長さ方向Lの一方の端部に形成されるようにしてもよい。
【0052】
また、第1絶縁体板21に巻かれた線状発熱体20の代わりに、面状発熱素子を用いることができる。面状発熱素子は、例えば絶縁基板の板面に形成した金属箔をエッチングして電気抵抗としたものや絶縁基板の板面に例えば溶射法、コーティング法、CVD法により電気抵抗を形成したものである。そして、第1端子(またはリード線)が前記面状発素子の電気抵抗の第1の所定箇所に接続され、第2端子(またはリード線)が前記面状発熱素子の電気抵抗の第2の所定箇所に接続される。
【0053】
また、第2絶縁体板、前記面状発熱素子、断熱部材の順に積層することができるが、その際に、前記面状発熱素子の絶縁基板を第2絶縁体板の代わりにして、第2絶縁体板を省いて、前記面状発熱素子の絶縁基板、前記面状発熱素子の電気抵抗、断熱部材の順に積層することもできる。
【0054】
また、図6においてヒータ40aの断熱部材43が第2絶縁体板42yよりも前記筒状体の外面側にある(断熱部材43がカバー44の外面40ax側部分に接している)が、これに限定されず、図6において断熱部材43が第2絶縁体板42yよりも前記筒状体の内面側にある(断熱部材43がカバー44の内面40bx側部分に接している)ようにすることができる。このようにしたものは、ヒータ40a、40bを筒状の外形の被加熱物の前記筒の内面に押し当てて被加熱物をヒータにより効率よく加熱することができる。具体的には、例えば図1のヒータ10のL方向を曲げるときに、図5、図6の場合と反対側に曲げて、断熱部材30が第2絶縁体板22(図2参照)よりも前記筒状体の内面側になるように曲げたものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態に係るヒータを示す斜視図である。
【図2】図1のヒータをその長さ方向に垂直な面で切断した切断部端面を拡大して示す切断部端面図である。
【図3】図1のヒータの第1絶縁体板に巻かれた線状発熱体を示す斜視図である。
【図4】図1のヒータの使用例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態の変形例に係るヒータを示す正面図である。
【図6】図5のヒータの一部分を破断して示す部分図である。
【図7】図5のヒータの使用例を示す説明図である。
【図8】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
10 ヒータ
20 線状発熱体
20a 第1の所定箇所
20b 第2の所定箇所
21 第1絶縁体板
22 第2絶縁体板
23 第3絶縁体板
30 断熱部材
31、32 端子
33 カバー
40a、40b ヒータ
42x 線状発熱体が巻かれた第1絶縁体板
42y 第2絶縁体板
42z 第3絶縁体板
43 絶縁部材
44 カバー
45、46、47、48 端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁体板、線状発熱体、第2絶縁体板、第3絶縁体板、断熱部材、熱伝導性あるカバー、第1端子および第2端子を備えたヒータであって、
前記第1絶縁体板に前記線状発熱体が巻き付けられ、
前記第1絶縁体板に巻き付けられた前記線状発熱体を前記第2絶縁体板と前記第3絶縁体板により挟むように前記第2絶縁体板と前記第3絶縁体板が配置され、
前記第3絶縁体板の外側に前記断熱部材が配置され、
前記第2絶縁体板および前記断熱部材を被うように前記カバーが配置され、
前記第1端子が前記線状発熱体の第1の所定箇所に接続され、前記第2端子が前記線状発熱体の第2の所定箇所に接続されたことを特徴とするヒータ。
【請求項2】
第1絶縁体板、線状発熱体、第2絶縁体板、第3絶縁体板、断熱部材、熱伝導性あるカバー、第1端子および第2端子を備えたヒータであって、前記断熱部材は電気絶縁性能を有し、
前記第1絶縁体板に前記線状発熱体が巻き付けられ、
前記第1絶縁体板に巻き付けられた前記線状発熱体を前記第2絶縁体板と前記断熱部材により挟むように前記第2絶縁体板と前記断熱部材が配置され、
前記断熱部材の外側に前記第3絶縁体板が配置され、
前記第2絶縁体板および前記第3絶縁体板を被うように前記カバーが配置され、
前記第1端子が前記線状発熱体の第1の所定箇所に接続され、前記第2端子が前記線状発熱体の第2の所定箇所に接続されたことを特徴とするヒータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載したヒータであって、前記第1絶縁体板、前記第2絶縁体板、前記第3絶縁体板、前記断熱部材および前記カバーの外形は平板状であることを特徴とするヒータ。
【請求項4】
請求項1または2に記載したヒータであって、前記第1絶縁体板、前記第2絶縁体板、前記第3絶縁体板、前記断熱部材および前記カバーの外形は筒状体を前記筒状体の軸方向に切断してできた形状と等しい形状であることを特徴とするヒータ。
【請求項5】
請求項1または2に記載したヒータであって、前記第1絶縁体板、前記第2絶縁体板、前記第3絶縁体板、前記断熱部材および前記カバーの外形はそれぞれ筒状体を前記筒状体の軸方向に切断して前記筒状体を複数に分割してできた形状と等しい形状であることを特徴とするヒータ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載したヒータであって、前記断熱部材はシート状であることを特徴とするヒータ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載したヒータであって、前記断熱部材は無機質繊維であることを特徴とするヒータ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載したヒータであって、第1絶縁部材および第2絶縁部材を備え、前記カバーは金属製であり、前記第1端子は前記第1絶縁部材を介して前記カバーに固定され、前記第2端子は前記第2絶縁部材を介して前記カバーに固定されたことを特徴とするヒータ。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載したヒータであって、前記第1端子の代わりに第1リード線が前記線状発熱体の第1の所定箇所に接続され、前記第2端子の代わりに第2リード線が前記線状発熱体の第2の所定箇所に接続されたことを特徴とするヒータ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載したヒータであって、前記第1絶縁体板および前記第1絶縁体板に巻き付けられた前記線状発熱体の代わりに面状発熱素子を使用したことを特徴とするヒータ。
【請求項11】
請求項10に記載したヒータであって、前記面状発熱素子は絶縁基板の板面に電気抵抗を設けたものであり、前記面状発熱素子の絶縁基板を前記第2絶縁体板または前記第3絶縁体板としたことを特徴とするヒータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−157371(P2010−157371A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333533(P2008−333533)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(500077672)三洋熱工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】