説明

ビスナジイミドのジヒドロジエステル体

【課題】高耐熱性、高透明性の脂環族ポリアミドイミドの原料として有用な、新規なビスナジイミドの誘導体を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)で表されるビスナジイミドのジヒドロジエステル体。


(式中、R1は炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状アルカンジイル基、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱、高透明性脂環族ポリアミドイミド等の原料として有用な新規ビスナジイミドのジヒドロジエステル体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電子機器等に利用される光学部材用樹脂には、電子基板等への実装プロセスや高温動作下での耐熱性や機械特性、あるいはその汎用性などの面から、エポキシ樹脂が広く使用されてきた。しかし、近年、光電子機器分野でも高強度のレーザー光や青色光、近紫外光の利用が広がり、従来以上に透明性、耐熱性及び耐光性に優れた樹脂が求められている。
【0003】
一般にエポキシ樹脂は、可視光での透明性は高いが、紫外から近紫外領域では十分な透明性が得られないことが知られている。また、脂環族エポキシ樹脂と酸無水物からなる硬化物は、近紫外領域での透明性は比較的高いが、熱や光によって着色し易い等の問題があり、耐熱、耐紫外線着色性の向上が求められている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
一方、ポリアミド、ポリアミドイミドなどの耐熱性樹脂は、耐熱性、絶縁性、耐光性や機械的特性に優れており、また、種々の溶媒に可溶で作業性に優れることから、エレクトロニクス分野で半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜などとして幅広く使用されており、その中でも、脂環族構造を持つポリアミドが、紫外領域での透明性に優れるため、光電子機器、各種ディスプレイ等の材料として検討され始めているが、同じ脂環族構造を持つポリアミドイミドと比較すると、まだ耐熱性が十分ではない(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
他方、脂環族構造を有するナジック酸無水物(エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸)は、エポキシ樹脂用の酸無水系硬化剤として、古くから使用されている。近年、このナジック酸無水物から誘導されるアルケニル置換ナジイミド化合物、例えば下記一般式(4)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Aは2価の有機基を示す。)
で表されるビス(アリル置換ナジイミド)又はその誘導体は、様々な分野で用いられている。
具体的には、光配向材料の原料成分(例えば、特許文献6参照);電気・電子部品用接着シートの構成成分(例えば、特許文献7参照);耐熱性及び機械特性に優れる硬化物を与える耐熱性樹脂組成物の原料成分(例えば、特許文献8参照);高透明性及び優れた反射防止能を有する積層フィルム用原料(例えば、特許文献9参照);インクジェット用インク及びポリイミド膜用原料(例えば、特許文献10参照)などとして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−308683号公報
【特許文献2】特開2006−131867号公報
【特許文献3】特開2003−171439号公報
【特許文献4】特開2004−75894号公報
【特許文献5】特許第3091784号公報
【特許文献6】特開2002−265541号公報
【特許文献7】特開2003−13033号公報
【特許文献8】特開2005−82627号公報
【特許文献9】特開2006−281731号公報
【特許文献10】特開2010−106212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の特許文献6〜10において用いるビス(アリル置換ナジイミド)は、脂環族構造中に炭素=炭素二重結合を有しており、脂環族飽和構造ではなく、したがって、それから得られるポリアミドイミドなどのポリマーは、脂環族飽和構造のものに比べて、透明性や耐熱性に劣るものと考えられる。
本発明は、このような状況下になされたもので、高耐熱性、高透明性脂環族ポリアミドイミドの原料として有用な、新規なビスナジイミドの誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するビスナジイミド化合物を、ヒドロエステル化することにより、脂環族飽和構造を有する、ビスナジイミドのジヒドロジエステル体が得られ、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)下記一般式(1)で表されるビスナジイミドのジヒドロジエステル体、
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1は炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状アルカンジイル基、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
(2)一般式(1)におけるR2及びR3が、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基である、上記(1)に記載のビスナジイミドのジヒドロジエステル体、
(3)下記一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物をヒドロエステル化することを特徴とする、上記(1)に記載のビスナジイミドのジヒドロジエステル体の製造方法、
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R1は炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基を示す。)
(4)ヒドロエステル化を、下記一般式(3)
HCOOR ・・・(3)
(式中、Rは前記R2又はR3を示す。)
で表されるギ酸エステル化合物を用いて行う、上記(3)に記載の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高耐熱性、高透明性脂環族ポリアミドイミドの原料として有用な、新規なビスナジイミドのジヒドロジエステル体及びその製造方法を提供することができる。
本発明のビスナジイミドのジヒドロジエステル体を原料とした脂環族ポリアミドイミドは、耐熱性および透明性に優れるため、半導体・液晶に用いられる電子部品、光ファイバー、光学レンズ等に代表される光学材料、さらには、ディスプレイ関連材料、医療用材料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ビスナジイミド化合物(NDI−1)の1H−NMRスペクトル
【図2】ビスナジイミド化合物(NDI−1)のFT−IRスペクトル
【図3】ビスナジイミド化合物(NDI−2)の1H−NMRスペクトル
【図4】ビスナジイミド化合物(NDI−2)のFT−IRスペクトル
【図5】ビスナジイミド化合物(NDI−3)の1H−NMRスペクトル
【図6】ビスナジイミド化合物(NDI−3)のFT−IRスペクトル
【図7】ビスナジイミド化合物(NDI−4)の1H−NMRスペクトル
【図8】ビスナジイミド化合物(NDI−4)のFT−IRスペクトル
【図9】ビスナジイミド化合物(NDI−5)の1H−NMRスペクトル
【図10】ビスナジイミド化合物(NDI−5)のFT−IRスペクトル
【図11】ビスナジイミド化合物(NDI−6)の1H−NMRスペクトル
【図12】ビスナジイミド化合物(NDI−6)のFT−IRスペクトル
【図13】ビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−1)の1H−NMRスペクトル
【図14】ビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−2)の1H−NMRスペクトル
【図15】ビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−3)の1H−NMRスペクトル
【図16】ビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−4)の1H−NMRスペクトル
【図17】ビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−5)の1H−NMRスペクトル
【図18】ビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−6)の1H−NMRスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明のビスナジイミドのジヒドロジエステル体について説明する。
[ビスナジイミドのジヒドロジエステル体]
本発明のビスナジイミドのジヒドロジエステル体は、下記一般式(1)
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R1は炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状アルカンジイル基、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
で表される脂環族飽和構造を有することを特徴とする。
前記一般式(1)において、R1で示される炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状アルカンジイル基としては、例えばエタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基などの直鎖状アルカンジイル基、1−メチルエタン−1,2−ジイル基、1−メチルプロパン−1,3−ジイル基などの分岐状アルカンジイル基を挙げることができる。
【0021】
一方、R2及びR3のうちの炭素数1〜5のアルキル基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基を挙げることができる。
また、R2及びR3のうちの炭素数2〜5のアルケニル基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えばビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、各種ブテニル基、各種ペンテニル基を挙げることができ、R2及びR3のうちの炭素数7〜10のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などを挙げることができる。これらの中でも、反応性が高く及びコストが安価であるという観点から炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
一般式(1)における2つの置換基、すなわち−COOR2及び−COOR3の結合位置は特に限定されないが、イミド基がノルボルナン環の5位及び6位に結合していると見た場合、いずれも、2位あるいは3位に結合する。
【0022】
(製造方法)
上記一般式(1)で表される本発明のビスナジイミドのジヒドロジエステル体は、下記一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物をヒドロエステル化することにより、製造することができる。
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、R1は炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基を示す。)
一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物は、下記反応式(A)で示すように、式(5)で表されるナジック酸無水物(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)と、一般式(6)で表されるジアミンとを反応させて、一般式(7)で表されるビスナジアミド酸化合物とした後、脱水閉環することによって得ることができる。
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、R1は前記と同じ意味をもつ。)
前記一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物のヒドロエステル化は、特に制限はないが、下記一般式(3)
HCOOR ・・・(3)
(式中、RはR2又はR3を示し、R2及びR3は前記と同じ意味をもつ。)
で表されるギ酸エステル化合物(以下、ギ酸エステルと略記する。)を用いることによって、ヒドロエステル化反応が起こり、前記一般式(1)で表される、脂環族飽和構造を有するビスナジイミドのジヒドロジエステル体を得ることができる。
【0027】
ビスナジイミド化合物とギ酸エステルとの反応は、特に制限は無く、例えば、遷移金属錯体触媒等を用いてギ酸エステルと反応させるヒドロエステル化反応が挙げられ、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、ビスナジイミド化合物とギ酸エステル化反応させる方法が好ましい。
【0028】
ヒドロエステル化反応の原料としてのギ酸エステルは、目的とするビスナジイミドのジヒドロジエステル体の−C(O)ORに対応したギ酸エステル(HCOOR)が用いられ、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、ギ酸ビニル、ギ酸ベンジル等が挙げられる。これらのなかでも、コストおよび反応性の観点から、ギ酸メチルが好適である。
【0029】
ヒドロエステル化反応の触媒として使用可能なルテニウム化合物は、ルテニウムを含むものであればよく、特に制限はない。好適な化合物の具体例として、[Ru(CO)3Cl22,[RuCl2(CO)2n(nは不特定の自然数である),[Ru(CO)3Cl3-,[Ru3(CO)11Cl]-,[Ru4(CO)13Cl]-等の、分子内にカルボニル配位子とハロゲン配位子とを合わせ持つルテニウム化合物等が挙げられ、なかでも、反応率向上の観点から、[Ru(CO)3Cl22,[RuCl2(CO)2nがより好ましい。
【0030】
上記配位子を併せ持つルテニウム化合物は、RuCl3、Ru3(CO)12,RuCl2(C812)、Ru(CO)3(C88)、Ru(CO)3(C812)、およびRu(C810)(C812)等を前駆体化合物として使用し、ヒドロエステル化の反応前又は反応中に、上記ルテニウム化合物を調製して、反応系に導入してもよい。
【0031】
上記ルテニウム化合物は1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、その使用量は、原料であるビスナジイミド化合物に対して、好ましくは1/10000〜1当量、より好ましくは1/1000〜1/50当量である。製造コストを考えるとルテニウム化合物の使用量はより少ない方が好ましいが、1/10000当量未満の場合は、反応が極端に遅くなる傾向にある。また、1当量を超えても反応速度が速くなるわけではなく、製造コストのみが大きくなる傾向にある。
【0032】
ヒドロエステル化反応の触媒として使用可能なコバルト化合物は、コバルトを含むものであればよく、特に制限はない。好適な化合物の具体例として、Co2(CO)8、HCo(CO)4,Co4(CO)12などカルボニル配位子を持つコバルト化合物、酢酸コバルト、プロピオン酸コバルト、安息香酸コバルト、クエン酸コバルト等のカルボン酸化合物を配位子に持つコバルト化合物、リン酸コバルトなどが挙げられる。なかでも、反応率向上の観点から、Co2(CO)8、酢酸コバルト、クエン酸コバルトがより好ましい。
【0033】
上記コバルト化合物は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その使用量はルテニウム化合物1当量に対して、好ましくは1/100〜10当量、より好ましくは1/10〜5当量である。上記ルテニウム化合物に対する上記コバルト化合物の比率が1/100当量より低くても、また10当量より高くてもエステル化合物の生成量は著しく低下する傾向にある。
【0034】
ヒドロエステル化反応の触媒として使用可能なハロゲン化物塩は、塩化物イオン、臭化物イオンおよびヨウ化物イオン等のハロゲンイオンと、カチオンとから構成される化合物であればよく、特に限定されない。上記カチオンは、無機物イオンおよび有機物イオンのいずれであってもよい。また、上記ハロゲン化物塩は、分子内に1以上のハロゲンイオンを含んでもよい。
【0035】
ハロゲン化物塩を構成する無機物イオンは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される1種の金属イオンであってもよい。具体例として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウムが挙げられる。
【0036】
また、有機物イオンは、有機化合物から誘導される1価以上の有機基であってよい。一例として、アンモニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、ピリジウム、イミダゾリウム、およびイミニウムが挙げられ、これらイオンの水素原子はアルキルおよびアリール等の炭化水素基によって置換されていてもよい。特に限定するものではないが、好適な有機物イオンの具体例として、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、ブチルメチルピロリジニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムが挙げられる。なかでも、反応率向上の観点から、ブチルメチルピロリジニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムアイオダイト、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0037】
本発明で使用可能なハロゲン化物塩は、固体の塩である必要はなく、室温付近または100℃以下の温度領域で液体となる、ハロゲン化物イオンを含むイオン性液体を用いてもよい。このようなイオン性液体に用いられるカチオンの具体例として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ブチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ペンチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ヘキシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ヘプチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−オクチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機物イオンが挙げられる。本発明では、上述のハロゲン化物塩を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上述のハロゲン化物塩のうち、好適なハロゲン化物塩は、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩であり、カチオンが有機物イオンである。特に限定するものではないが、本発明において好適なハロゲン化物塩の具体例として、ブチルメチルピロリジニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムアイオダイト、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0039】
ハロゲン化物塩の添加量は、例えば、ルテニウム化合物1当量に対して、好ましくは1〜1000当量、より好ましくは2〜50当量である。1当量以上の添加量とすることによって、反応速度を効果的に高めることができる。一方、添加量が1000当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
【0040】
前記ビスナジイミド化合物とギ酸エステルとの反応によるヒドロエステル化では、ルテニウム化合物とコバルト化合物とハロゲン化物塩とを含む特定の触媒系に必要に応じて、塩基性化合物、フェノール化合物、または有機ハロゲン化合物を追加することによって、上記触媒系による反応促進の効果をより高めることが可能である。
【0041】
前記塩基性化合物は、無機化合物であっても、有機化合物であってもよい。塩基性の無機化合物の具体例として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物塩、アルコキシド等が挙げられる。塩基性の有機化合物の具体例として、一級アミン化合物、二級アミン化合物、三級アミン化合物、ピリジン化合物、イミダゾール化合物、キノリン化合物等が挙げられる。上述の塩基性化合物のなかでも、反応促進効果の観点から、三級アミン化合物が好適である。本発明に使用可能である好適な三級アミンの具体例として、トリアルキルアミン、N−アルキルピロリジン、キヌクリジン、およびトリエチレンジアミン等が挙げられる。
【0042】
上記塩基性化合物は1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、その添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、ルテニウム化合物1当量に対して、好ましくは1〜1000当量、より好ましくは、2〜200当量である。添加量を1当量以上とすることによって、反応促進効果の発現がより顕著になる傾向がある。また、添加量が1000当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
【0043】
前記フェノール化合物は、特に限定されない。使用可能なフェノール化合物の具体例として、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、メトキシフェノール、フェノキシフェノール、クロルフェノール、トリフルオロメチルフェノール、ヒドロキノンおよびカテコール等が挙げられる。
【0044】
上記フェノール化合物は1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、その添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、ルテニウム化合物1当量に対して、好ましくは1〜1000当量、より好ましくは、2〜200当量である。添加量を1当量以上とすることによって、反応促進効果の発現がより顕著になる傾向がある。また、添加量が1000当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
【0045】
前記有機ハロゲン化合物は、特に限定されるものではないが、使用可能な有機ハロゲン化合物の具体例として、モノハロゲン化メタン、ジハロゲン化メタン、ジハロゲン化エタン、トリハロゲン化メタン、テトラハロゲン化メタン、ハロゲン化ベンゼン等が挙げられる。
【0046】
上記有機ハロゲン化合物は1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、その添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、ルテニウム化合物1当量に対して、好ましくは1〜1000当量、より好ましくは、2〜200当量である。添加量を1当量以上とすることによって、反応促進効果の発現がより顕著になる傾向がある。また、添加量が1000当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
【0047】
前記ビスナジイミド化合物とギ酸エステルとの反応によるヒドロエステル化では、特に溶媒を用いることなく進行させることができる。しかし、必要に応じて、溶媒を使用してもよい。使用可能な溶媒は、原料として使用する化合物を溶解できればよく、特に限定されない。好適に使用できる溶媒の具体例として、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、クメン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
上記溶媒は1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0048】
前記のビスナジイミド化合物とギ酸エステルとの反応によるヒドロエステル化は、80℃〜200℃の温度範囲で実施することが好ましく、100℃〜160℃の温度範囲で実施することがより好ましい。80℃以上の温度で反応を実施することによって、反応速度が速まり、反応を効率よく進めやすくなる。その一方で、反応温度を200℃以下に制御することによって、原料として使用するギ酸エステルの分解を抑制することができる。ギ酸エステルが分解すると、ビスナジイミド化合物に対するエステル基の付加が達成されなくなるため、高すぎる反応温度は望ましくない。反応温度が、原料として使用するビスナジイミド化合物又はギ酸エステルのいずれかの沸点を超える場合には、耐圧容器内で反応を行う必要がある。反応の終結は、ガスクロマトグラフ、NMR等周知の分析技術を用いて確認することができる。また、反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
【0049】
<一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物の合成>
上記一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物は、下記に示す(a)の合成方法で得ることができる。
上記一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物を得るための(a)の合成方法は、下記(a−1)及び(a−2)の工程を含む。
・(a−1)工程
(a−1)工程において、下記式(5)で表されるナジック酸無水物(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)と、
【0050】
【化7】

【0051】
下記一般式(6)で表されるジアミン類とを反応させ、
2N−R1−NH2 ・・・(6)
下記一般式(7)で表されるビスナジアミド酸化合物を得る。
【0052】
【化8】

【0053】
(式(6)及び式(7)中のR1は、前記と同じ意味をもつ。)
【0054】
一般式(6)で表されるジアミン類は、特に制限が無く、R1がエチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基などの直鎖状アルカンジイル基;1−メチルエタン−1,2−ジイル基、1−メチルプロパン−1,3−ジイル基などの分岐状アルカンジイル基などの炭素数2〜12のアルカンジイル基であれば良い。例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,3−ブタンジアミン、1,2−ブタンジアミン、2,3−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、ネオペンチルジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどを使用することができる。
【0055】
(a−1)工程における式(5)で表されるナジック酸無水物と、一般式(6)で表されるジアミン類との反応は、式(5)で表されるナジック酸無水物の酸無水物基のモル数に対する、一般式(6)で表されるジアミン類のアミノ基のモル数の比率を0.7〜1.5とすることが好ましく、0.8〜1.3とすることがより好ましく、0.9〜1.2とすることがさらに好ましく、0.95〜1.05とすることが特に好ましい。0.7未満あるいは1.5を超えると、得られる一般式(7)で表されるビスナジアミド酸化合物中の不純物が多くなり、その後の反応の妨げになる可能性がある。
【0056】
反応温度は、0〜150℃とすることが好ましく、反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により、適宜選択できる。
このようにして、(a−1)工程で得られたビスナジアミド酸化合物は、減圧ろ過等で単離してもよいが、製造コスト等を考慮すると、反応溶液のまま次の工程(a−2)に使用した方が好ましい。
【0057】
・(a−2)工程
(a−2)工程においては、上記ビスナジアミド酸化合物を脱水閉環して、上記式(2)で表されるビスナジイミド化合物を得る。
上記一般式(7)で表されるビスナジアミド酸化合物を脱水閉環して、上記一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物とする反応には、特に制限は無く、例えば、無水酢酸又は五酸化リン等の脱水剤を用いる化学閉環法、溶媒存在下で加熱還流する熱閉環法等を用いることができるが、製造コストや得られるポリアミドイミド中の残存イオン性不純物濃度等を考慮すると、熱閉環法が好ましい。
上記熱閉環法は、50〜250℃で実施することが好ましく、脱水閉環し易くするために、減圧反応とすることもできる。
【0058】
上記一般式(7)で表されるビスナジアミド酸化合物を得る反応(a−1工程)と、ビスナジアミド酸化合物を脱水閉環して、一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物とする反応(a−2工程)は、段階的に行うことも連続的に行うこともできるが、コスト面を考慮すれば、連続で行うことが好ましい。
上記一般式(7)で表されるビスナジアミド酸化合物を得る反応(a−1工程)と、ビスナジアミド酸化合物を脱水閉環して、一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物とする反応(a−2工程)は、無溶媒でも実施可能だが、必要に応じて、溶媒を使用することもできる。
【0059】
使用できる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒;トルエン、キシレン、p−シメン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等の芳香族系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられ、これらは1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよいが、溶解性、沸点、コスト面を考慮すれば、その後のノルボルナン骨格を有するポリアミドイミド樹脂の製造で使用する極性溶媒を使用するのが好ましく、無溶媒で反応を行うのがさらに好ましい。
【0060】
溶媒の使用量は、上記一般式(7)で表されるビスナジアミド酸化合物100質量部に対して、50〜300質量部にすることが好ましく、70〜200質量部にすることがより好ましい。使用量が50質量部未満だと、原料が十分に溶解せず、反応速度が遅くなる傾向があり、300質量部を超えても、1バッチ当りのビスナジイミド化合物の収量が低下するだけで、特に利点は無い。
【実施例】
【0061】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
<一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物の合成>
(合成例1)〔ビスナジイミド化合物(NDI−1)の合成〕
ビスナジイミド化合物(NDI−1)合成の反応式(A−1)を下記に示す。
【0062】
【化9】

【0063】
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた1リットルフラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(5)246.00g及びトルエン 301.50gを仕込んだ後、フラスコ内の温度が30〜40℃の温度に保たれるように注意しながら、1,3−プロパンジアミン(6−1)55.50g(酸無水物/アミン(当量比)=1.00/1.00)を滴下する。滴下終了後、常温で1時間攪拌する。その後、トルエンの還流温度まで昇温して、2時間加熱還流し、ビスナジイミド化合物(NDI−1)(2−1)273gを得た。得られたビスナジイミド化合物(NDI−1)を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、純度は100%であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
また、NDI−1を1H−NMR及びFT−IRで分析した。図1に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
それぞれのプロトンが下記のように帰属された。
【0064】
【化10】

【0065】
プロトンa:3.3ppm付近のピーク
プロトンb:3.4ppm付近のピーク
プロトンc:3.4ppm付近のピーク
プロトンd:3.3ppm付近のピーク
プロトンe:6.1ppm付近のピーク
プロトンf:6.1ppm付近のピーク
プロトンg:1.6ppm付近のピーク
プロトンh:3.1ppm付近のピーク
プロトンi:1.4ppm付近のピーク
【0066】
また、それぞれのプロトンの積分強度比は、ad/bc/ef/g/h/i=4.08/4.07/4.00/4.07/4.06/2.06(理論値:4/4/4/4/4/2)であった。
また、FT−IR分析の結果(図2)、1540cm-1付近のアミド基特性吸収が消失し、1780cm-1付近にイミド基の特性吸収が確認された。
なお、反応式(A−1)において、(7−1)は、ビスナジアミド酸化合物である。
【0067】
(合成例2)〔ビスナジイミド化合物(NDI−2)の合成〕
ビスナジイミド化合物(NDI−2)合成の反応式(A−2)を下記に示す。
【0068】
【化11】

【0069】
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた1リットルフラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(5)246.00g及びトルエン 301.50gを仕込んだ後、フラスコ内の温度が30〜40℃の温度に保たれるように注意しながら、1,2−プロパンジアミン(6−2)55.50g(酸無水物/アミン(当量比)=1.00/1.00)を滴下する。滴下終了後、常温で1時間攪拌する。その後、トルエンの還流温度まで昇温して、2時間加熱還流し、ビスナジイミド化合物(NDI−2)(2−2)270gを得た。得られたビスナジイミド化合物(NDI−2)を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、純度は100%であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
また、NDI−2を1H−NMR及びFT−IRで分析した。図3に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
それぞれのプロトンが下記のように帰属された。
【0070】
【化12】

【0071】
プロトンa:3.3ppm付近のピーク
プロトンb:3.4ppm付近のピーク
プロトンc:3.4ppm付近のピーク
プロトンd:3.3ppm付近のピーク
プロトンe:5.9ppm付近のピーク
プロトンf:6.0ppm付近のピーク
プロトンg:1.6ppm付近のピーク
プロトンh:3.3ppm付近のピーク
プロトンi:1.5ppm付近のピーク
プロトンj:1.1ppm付近のピーク
【0072】
また、それぞれのプロトンの積分強度比は、ad/bc/e/f/g/h/i/j=4.25/4.38/1.81/2.00/4.08/1.86/0.90/2.86(理論値:4/4/2/2/4/2/1/3)であった。
また、FT−IR分析の結果(図4)、1540cm-1付近のアミド基特性吸収が消失し、1780cm-1付近にイミド基の特性吸収が確認された。
なお、反応式(A−2)において、(7−2)は、ビスナジアミド酸化合物である。
【0073】
(合成例3)〔ビスナジイミド化合物(NDI−3)の合成〕
ビスナジイミド化合物(NDI−3)合成の反応式(A−3)を下記に示す。
【0074】
【化13】

【0075】
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた1リットルフラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(5)229.60g及びトルエン 291.20gを仕込んだ後、フラスコ内の温度が30〜40℃の温度に保たれるように注意しながら、1,4−ブタンジアミン(6−3)61.60g(酸無水物/アミン(当量比)=1.00/1.00)を滴下する。滴下終了後、常温で1時間攪拌する。その後、トルエンの還流温度まで昇温して、2時間加熱還流し、ビスナジイミド化合物(NDI−3)(2−3)270gを得た。得られたビスナジイミド化合物(NDI−3)を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、純度は100%であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
また、NDI−3を1H−NMR及びFT−IRで分析した。図5に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
それぞれのプロトンが下記に示すように帰属された。
【0076】
【化14】

【0077】
プロトンa:3.1及び3.25ppm付近のピーク
プロトンb:2.7及び3.3ppm付近のピーク
プロトンc:2.7及び3.3ppm付近のピーク
プロトンd:3.1及び3.25ppm付近のピーク
プロトンe:6.0〜6.3ppm付近のピーク
プロトンf:6.0〜6.3ppm付近のピーク
プロトンg:1.1,1.4及び1.55ppm付近のピーク
プロトンh:3.2及び3.35ppm付近のピーク
プロトンi:1.2〜1.35ppm付近のピーク
また、それぞれのプロトンの積分強度比は、ad/bc/ef/g/h/i=4.11/4.03/3.86/4.00/4.09/3.86(理論値:4/4/4/4/4/4)であった。
また、FT−IR分析の結果(図6)、1540cm-1付近のアミド基特性吸収が消失し、1780cm-1付近にイミド基の特性吸収が確認された。
なお、反応式(A−3)において、(7−3)は、ビスナジアミド酸化合物である。
【0078】
(合成例4)〔ビスナジイミド化合物(NDI−4)の合成〕
ビスナジイミド化合物(NDI−4)合成の反応式(A−4)を下記に示す。
【0079】
【化15】

【0080】
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた1リットルフラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(5)223.04g及びヘキサメチレンジアミン(6−4)78.88g(酸無水物/アミン(当量比)=1.00/1.00)を仕込み、80℃まで昇温して30分間攪拌する。その後、160℃まで昇温し、減圧条件下(フラスコ内の圧力:約8.8×104Pa)2時間攪拌し、ビスナジイミド化合物(NDI−4)(2−4)276gを得た。得られたビスナジイミド化合物(NDI−4)を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、純度は100%であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
また、NDI−4を1H−NMR及びFT−IRで分析した。図7に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
それぞれのプロトンが下記に示すように帰属された。
【0081】
【化16】

【0082】
プロトンa:3.2ppm付近のピーク
プロトンb:3.3ppm付近のピーク
プロトンc:3.3ppm付近のピーク
プロトンd:3.2ppm付近のピーク
プロトンe:6.0ppm付近のピーク
プロトンf:6.0ppm付近のピーク
プロトンg:1.6ppm付近のピーク
プロトンh:3.1ppm付近のピーク
プロトンi:1.3ppm付近のピーク
プロトンj:1.1ppm付近のピーク
【0083】
また、それぞれのプロトンの積分強度比は、ad/bc/ef/g/h/i/j=4.09/4.00/4.00/4.04/4.04/4.13/4.22(理論値:4/4/4/4/4/4/4)であった。
また、FT−IR分析の結果(図8)、1540cm-1付近のアミド基特性吸収が消失し、1780cm-1付近にイミド基の特性吸収が確認された。
なお、反応式(A−4)において、(7−4)は、ビスナジアミド酸化合物である。
【0084】
(合成例5)〔ビスナジイミド化合物(NDI−5)の合成〕
ビスナジイミド化合物(NDI−5)合成の反応式(A−5)を下記に示す。
【0085】
【化17】

【0086】
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた1リットルフラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(5)196.80g及びトルエン 320.40gを仕込んだ後、フラスコ内の温度が30〜40℃の温度に保たれるように注意しながら、1,12−ドデカンジアミン(6−5)123.60g(酸無水物/アミン(当量比)=1.00/1.00)を滴下する。滴下終了後、常温で1時間攪拌する。その後、トルエンの還流温度まで昇温して、2時間加熱還流し、ビスナジイミド化合物(NDI−5)(2−5)290gを得た。得られたビスナジイミド化合物(NDI−5)を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、純度は100%であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
また、NDI−5を1H−NMR及びFT−IRで分析した。図9に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
それぞれのプロトンが下記に示すように帰属された。
【0087】
【化18】

【0088】
プロトンa:3.2ppm付近のピーク
プロトンb:3.3ppm付近のピーク
プロトンc:3.3ppm付近のピーク
プロトンd:3.2ppm付近のピーク
プロトンe:6.0ppm付近のピーク
プロトンf:6.0ppm付近のピーク
プロトンg:1.5ppm付近のピーク
プロトンh:3.1ppm付近のピーク
プロトンi:1.1〜1.3ppm付近のピーク
プロトンj:1.1〜1.3ppm付近のピーク
プロトンk:1.1〜1.3ppm付近のピーク
プロトンl:1.1〜1.3ppm付近のピーク
プロトンm:1.1〜1.3ppm付近のピーク
【0089】
また、それぞれのプロトンの積分強度比は、ad/bc/ef/g/h/ijklm=4.11/4.19/4.00/4.09/4.07/20.39(理論値:4/4/4/4/4/20)であった。
また、FT−IR分析の結果(図10)、1540cm-1付近のアミド基特性吸収が消失し、1780cm-1付近にイミド基の特性吸収が確認された。
【0090】
(合成例6)〔ビスナジイミド化合物(NDI−6)の合成〕
ビスナジイミド化合物(NDI−6)合成の反応式(A−6)を下記に示す。
【0091】
【化19】

【0092】
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた1リットルフラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(5)229.60g及びトルエン 313.60gを仕込んだ後、フラスコ内の温度が30〜40℃の温度に保たれるように注意しながら、エチレンジアミン(6−6)84.00g(酸無水物/アミン(当量比)=1.00/1.00)を滴下する。滴下終了後、常温で1時間攪拌する。その後、トルエンの還流温度まで昇温して、2時間加熱還流し、ビスナジイミド化合物(NDI−6)(2−6)285gを得た。得られたビスナジイミド化合物(NDI−6)を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、純度は100%であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
また、NDI−6を1H−NMR及びFT−IRで分析した。図11に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
それぞれのプロトンが下記に示すように帰属された。
【0093】
【化20】

【0094】
プロトンa:3.2ppm付近のピーク
プロトンb:3.27ppm付近のピーク
プロトンc:3.27ppm付近のピーク
プロトンd:3.3ppm付近のピーク
プロトンe:6.0ppm付近のピーク
プロトンf:6.0ppm付近のピーク
プロトンg:1.5ppm付近のピーク
プロトンh:3.3ppm付近のピーク
【0095】
また、それぞれのプロトンの積分強度比は、ad/bc/ef/g/h=4.08/4.04/4.00/4.09/4.073.96(理論値:4/4/4/4/4)であった。
また、FT−IR分析の結果(図12)、1540cm-1付近のアミド基特性吸収が消失し、1780cm-1付近にイミド基の特性吸収が確認された。
【0096】
<一般式(1)で表されるビスナジイミドのジヒドロジエステル体の合成>
(実施例1)[ビスナジイミド化合物(NDI−1)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−1)の合成]
ビスナジイミド化合物(NDI−1)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−1)合成の反応式(B−1)を下記に示す。
【0097】
【化21】

【0098】
室温下、内容積50mlのステンレス製加圧反応装置内で、ルテニウム化合物として[Ru(CO)3Cl22を0.025mmol、コバルト化合物としてCo2(CO)8を0.025mmol、ハロゲン化物塩としてトリオクチルメチルアンモニウムクロリドを0.5mmol、塩基性化合物としてトリプロピルアミンを0.5mmol及び、フェノール化合物としてp−クレゾールを0.5mmol加え、混合して触媒系を得た。この触媒系に、合成例1で得られたビスナジイミド化合物(NDI−1)を10.0mmol、ギ酸メチル(9−1)を5.0mL加え、次いで窒素ガス0.5MPaで反応容器をパージし、120℃で15時間保持した。その後、反応装置を室温まで冷却し、放圧し、残存有機相の一部を抜き取り、高速液体クロマトグラフィーを用いて反応混合物の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体は 8.00mmol(ビスナジイミド化合物基準で収率80.0%)であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
【0099】
生成物として得たビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−1)の1H−NMRスペクトルを図13に示す。図13に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
データ:ppm:メチルエステル部位のメチル基
【0100】
(実施例2)[ビスナジイミド化合物(NDI−2)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−2)の合成]
ビスナジイミド化合物(NDI−2)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−2)合成の反応式(B−2)を下記に示す。
【0101】
【化22】

【0102】
実施例1において、合成例1で得られたビスナジイミド化合物(NDI−1)を、合成例2で得られたビスナジイミド化合物(NDI−2)に変えた以外は、実施例と全く同様の操作を実施し、高速液体クロマトグラフィーを用いて反応混合物の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体は 7.88mmol(ビスナジイミド化合物基準で収率78.8%)であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
【0103】
生成物として得たビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−2)の1H−NMRスペクトルを図14に示す。図14に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
データ:ppm:メチルエステル部位のメチル基
【0104】
(実施例3)[ビスナジイミド化合物(NDI−3)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−3)の合成]
ビスナジイミド化合物(NDI−3)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−3)合成の反応式(B−3)を下記に示す。
【0105】
【化23】

【0106】
実施例1において、合成例1で得られたビスナジイミド化合物(NDI−1)を、合成例3で得られたビスナジイミド化合物(NDI−3)に変えた以外は、実施例1と全く同様の操作を実施し、高速液体クロマトグラフィーを用いて反応混合物の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体は 8.24mmol(ビスナジイミド化合物基準で収率82.4%)であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
【0107】
生成物として得たビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−3)の1H−NMRスペクトルを図15に示す。図15に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒DMSO−d6、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
データ:ppm:メチルエステル部位のメチル基
【0108】
(実施例4)[ビスナジイミド化合物(NDI−4)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−4)の合成]
ビスナジイミド化合物(NDI−4)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−4)合成の反応式(B−4)を下記に示す。
【0109】
【化24】

【0110】
実施例1において、合成例1で得られたビスナジイミド化合物(NDI−1)を、合成例4で得られたビスナジイミド化合物(NDI−4)に変えた以外は、実施例1と全く同様の操作を実施し、高速液体クロマトグラフィーを用いて反応混合物の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体は 9.10mmol(ビスナジイミド化合物基準で収率91.0%)であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
【0111】
生成物として得たビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−4)の1H−NMRスペクトルを図16に示す。図16に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒CDCl3、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
データ:3.6ppm付近:メチルエステル部位のメチル基
【0112】
(実施例5)[ビスナジイミド化合物(NDI−5)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−5)の合成]
ビスナジイミド化合物(NDI−5)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−5)合成の反応式(B−5)を下記に示す。
【0113】
【化25】

【0114】
実施例1において、合成例1で得られたビスナジイミド化合物(NDI−1)を、合成例5で得られたビスナジイミド化合物(NDI−5)に変えた以外は、実施例1と全く同様の操作を実施し、高速液体クロマトグラフィーを用いて反応混合物の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体は 8.88mmol(ビスナジイミド化合物基準で収率88.8%)であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
【0115】
生成物として得たビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−5)の1H−NMRスペクトルを図17に示す。図17に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒CDCl3、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
データ:3.6ppm付近:メチルエステル部位のメチル基
【0116】
(実施例6)[ビスナジイミド化合物(NDI−6)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−6)の合成]
ビスナジイミド化合物(NDI−6)のジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−6)合成の反応式(B−6)を下記に示す。
【0117】
【化26】

【0118】
実施例1において、合成例1で得られたビスナジイミド化合物(NDI−1)を、合成例6で得られたビスナジイミド化合物(NDI−6)に変えた以外は、実施例1と全く同様の操作を実施し、高速液体クロマトグラフィーを用いて反応混合物の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体は 9.48mmol(ビスナジイミド化合物基準で収率94.8%)であった。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下記の通りである。
カラム:ナカライ コスモシール5C18−AR−II 4.6mmφ×250mm
移動相:MeOH/H2O = 1/1
流量:1.0mL/min
検出器:RI
【0119】
生成物として得たビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−6)の1H−NMRスペクトルを図18に示す。図18に示した1H−NMRスペクトルの測定条件及び同定データは以下のとおりである。
条件:溶媒CDCl3、BRUKER社製の装置「AV400M」(プロトン基本周波数:400.13MHz)。
データ:3.6ppm付近:メチルエステル部位のメチル基
【0120】
(参考例1)〔ノルボルナン骨格を持つポリアミドイミドの合成〕
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた500mlフラスコに、実施例4で得られたビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体(NDIDAC−4) 216.48g(0.410モル)を仕込み、フラスコ内の温度を60℃に調整した後、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン 86.10g(0.410モル)(ビスナジイミドのジヒドロジカルボン酸ジメチル体/ジアミン(モル比)=1.00/1.00)を2時間かけて添加する。160℃まで昇温した後、3時間反応させて、さらに190℃で2時間反応させ、数平均分子量が70,000のノルボルナン骨格を有するポリアミドイミド(PAI−6)を得た。
【0121】
得られたノルボルナン骨格を持つポリアミドイミド(PAI−6)をテフロン(登録商標)基板上に塗布し、250℃で加熱して、有機溶媒を乾燥させて、膜厚30μmの塗膜を形成した。この塗膜のガラス転移温度(Tg)及び熱分解開始温度(5%質量減少温度、Td5)を下記条件で測定した。
結果を表1に示す。
(1)ガラス転移温度(Tg)
熱機械分析装置(セイコー電子(株)製 5200型 TMA)で測定した。
測定モード:エクステンション
測定スパン:10mm
荷 重:10g(98mN)
昇温速度 :5℃/min
雰 囲 気:空気
(2)熱分解開始温度(5%質量減少温度、Td5
示差熱天秤(セイコー電子(株)製 5200型 TG−DTA)で測定した。
昇温速度 :5℃/min
雰 囲 気:空気
【0122】
また、得られたノルボルナン骨格を持つポリアミドイミド(PAI−6)の各波長における光線透過率を、日本分光(株)製 V−570型UV/VISスペクトロフォトメーターで測定した。評価結果をまとめて表1に示す。
【0123】
(参考例2)〔芳香族ポリアミドイミドの合成〕
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた500mlフラスコに、トリメリット酸無水物 51.84g(0.270モル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 68.85g(0.275モル)(トリカルボン酸無水物/ジイソシアネート(モル比)=1.00/1.02)及びN−メチルピロリドン 181.04gを仕込み、120℃まで昇温した後、5時間反応させて、数平均分子量が110,000の芳香族ポリアミドイミドを得た。
【0124】
得られた芳香族ポリアミドイミドの特性を参考例1と同様に評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0125】
(参考例3)〔ポリアミドイミドの合成〕
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた500mlフラスコに、トリメリット酸無水物 49.92g(0.260モル)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート69.48g(0.265モル)(トリカルボン酸無水物/ジイソシアネート(モル比)=1.00/1.02)及びN−メチルピロリドン 179.10gを仕込み、120℃まで昇温した後、5時間反応させて、数平均分子量が76,000のポリアミドイミドを得た。
【0126】
得られたポリアミドイミドの特性を実施例1と同様に評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
表1から分かるように、参考例1で得られた本発明に係るノルボルナン骨格をもつポリアミドイミド(PAI−6)は、ガラス転移温度、熱分解開始温度、引張り強度及び破断伸びに関しては、参考例3で得られたシクロヘキシル環を有するポリアミドイミドとほぼ同等であるが、光線透過率に関しては、400nm、500nm、600nmの波長域において、いずれも100%であり、参考例3のものよりもはるかに良い。
一方、参考例2で得られた芳香族ポリアミドイミドは、光線透過率が、400nm、500nm、600nmの波長域のいずれにおいても0%である。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のビスナジイミドのジヒドロジエステル体は、高耐熱性、高透明性の脂環族ポリアミドイミドの原料などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるビスナジイミドのジヒドロジエステル体。
【化1】

(式中、R1は炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状アルカンジイル基、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
【請求項2】
一般式(1)におけるR2及びR3が、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基である、請求項1に記載のビスナジイミドのジヒドロジエステル体。
【請求項3】
下記一般式(2)で表されるビスナジイミド化合物をヒドロエステル化することを特徴とする、請求項1に記載のビスナジイミドのジヒドロジエステル体の製造方法。
【化2】

(式中、R1は炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基を示す。)
【請求項4】
ヒドロエステル化を、下記一般式(3)
HCOOR ・・・(3)
(式中、Rは前記R2又はR3を示す。)
で表されるギ酸エステル化合物を用いて行う、請求項3に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−240980(P2012−240980A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114159(P2011−114159)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】