説明

ビスフェノールA廃水流からフェノールを回収するためのプロセス

別個の熱源が使用されるように再沸騰/蒸留熱負荷および接触分解熱負荷を分離する方法で蒸留カラムおよび接触分解リアクタを再構成することによる、ビスフェノールA残留物流からフェノールを回収するための改良されたプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノールA廃水流からフェノールを回収するためのプロセスおよび特にプロセスの各ステップのデューティサイクルを満たす最小値の蒸気を使用することによって、フェノール回収の費用効率を向上させるプロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールA(4,4’−ジヒドロキシ−2,2−ジフェニルプロパン、すなわちBPA)は、酸性触媒またはカチオン交換樹脂の存在下でのアセトンと過剰なフェノールとの縮合によって産生される。粗生成物は、所望のビスフェノールAおよび未反応のフェノールに加えて、望ましくない副生成物、たとえばビスフェノールA異性体、トリスフェノールおよび他のより高分子量の物質を含有する。ビスフェノールAは通常、粗生成物から単一または一連の結晶化ステップによって分離され、望ましくない副生成物が豊富な母液流が残り、母液流の一部を取り出してプロセスから望ましくない副生成物を浄化する。代わりにビスフェノールAは、粗生成物から単一または一連の蒸留ステップによって分離され、蒸留ステップによっても望ましくない副生成物が豊富な流れを生成し、その一部が取り出される。取り出された流れは未反応フェノールおよびビスフェノールAならびに望ましくない副生成物を含有し得る。フェノールは通例、取り出された流れから蒸留、通常は真空蒸留によって回収される。
【0003】
BPAプロセスへのリサイクル用のフェノールの回収を増加させるために、望ましくない副生成物を触媒接触分解することが公知であり、副生成物の多くはその構造内にフェノール部分を含有する。通例、接触分解ステップの生成物は蒸留ステップへ再循環され、蒸留ステップでは接触分解ステップからの熱が蒸留ステップに必要な入熱を提供するのを助け、接触分解ステップで遊離されたフェノールが回収される。接触分解ステップの生成物は通例、フェノールまたはフェノールおよびイソプロペニルフェノール(IPP)の組合せである。このプロセスでは、システムは接触分解熱源を使用して、フェノールの回収に必要な接触分解熱交換量および蒸留カラムリボイラ交換量の両方を供給する。Ono et al.のU.S.Patent No.6,459,004は、このようなシステムを開示している(col.2,lines 31−36)。
【0004】
しかしながら、蒸留ステップは接触分解反応ほど高い温度を必要としないが、接触分解ステップの生成物を回収するのに必要な再沸騰熱交換量は接触分解に必要な熱交換量よりも実質的に高い。結果として、より高品質(より高温)で、したがってより高コストの熱源が使用されると、必要とされるよりもはるかに大きい熱交換量が供給されるために、経済的に効率的でない。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態において、本発明は、BPA廃水流からフェノールを回収するプロセスであって:
(a)フェノール部分(moiety)含有芳香族化合物を含むBPA廃水流を蒸留カラムに送り込むステップ;
(b)前記蒸留カラム内の前記廃水流を蒸留して、フェノール含有蒸留生成物流およびカラム底部流を形成するステップ;
(c)前記カラム底部流の大部分を低温ユーティリティに送り込み、前記大部分を第1の温度に加熱し、前記加熱した大部分を蒸留カラムに再循環させるステップ;
(d)前記カラム底部流の少量部分を高温ユーティティに送り込み、前記少量部分を前記第1の温度よりも高い接触分解温度に加熱するステップ;
(e)前記加熱した少量部分を触媒接触分解容器に送り込むステップ;ならびに
(f)前記少量部分を接触分解および急速蒸発させて、フェノールが豊富な流出物流およびフェノールが乏しい残留物流を形成するステップ、
を含むプロセスに関する。
【0006】
プロセスは、前記フェノールが乏しい残留物流の少なくとも一部を前記高温ユーティリティに再循環させることをさらに含むことができる。
【0007】
好都合には、第1の温度および加熱したカラム底部の前記大部分のフローが制御されて、蒸留カラムの熱交換量に必要な熱を提供する。
【0008】
便利には、フェノールが乏しい残留物流の一部が熱交換器に送り込まれ、熱交換器を使用して前記高温ユーティリティの上流で前記カラム底部の前記少量部分を予熱する。
【0009】
プロセスは、前記フェノールが豊富な流出物流を前記触媒接触分解容器に取付けられた精留ユニット内で還流させることをさらに含むことができ、前記フェノールが豊富な流出物流を前記蒸留カラムに再循環させることができる。
【0010】
本実施形態において、還流流は前記BPA廃水流から採取される、または前記フェノール流出物流から採取される、または前記蒸留カラムからの副流から採取される。
【0011】
いくつかの状況において、還流されたフェノールが豊富な流出物流が濃縮および回収されることが好都合である。
【0012】
便利には、触媒接触分解容器を前記蒸留カラムの下に、前記蒸留カラムと同じシェル内に取付けることができ、前記蒸留カラムおよび前記接触分解容器はトラップ・アウト・トレーによって隔離され、前記カラム底部の前記少量部分はステップ(d)の前に、トラップからあふれて前記接触分解容器中に降下する。
【0013】
一般的には、BPA廃水流はBPA異性体、未反応フェノール、トリスフェノール、ヒドロキシフェニルクロマン、イソプロペニルフェノールダイマー、およびインダンを含む。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、ビスフェノールA(BPA)を産生するプロセスであって:
(a)BPA異性体、未反応フェノール、トリスフェノール、ヒドロキシフェニルクロマン、イソプロペニルフェノールダイマー、およびインダンを含む流出物流を産生する条件下の触媒の存在下で、アセトンをモル過剰のフェノールと縮合するステップ;
(b)前記流出物流から、BPA異性体、未回収フェノール、トリスフェノール、ヒドロキシフェニルクロマン、イソプロペニルフェノールダイマー、インダンおよび他のより重い芳香族化合物を含むBPA廃水流を残してBPAおよび未反応フェノールを回収するステップ;
(c)前記BPA廃水流を蒸留カラムに送り込むステップと;
(d)前記蒸留カラム内の前記廃水流を蒸留して、フェノール含有蒸留流出物流およびより重いカラム底部流を形成するステップ;
(e)前記カラム底部流の大部分を低温ユーティリティに送り込み、前記大部分を第1の温度に加熱し、前記加熱した大部分を蒸留カラムに再循環させるステップ;
(f)前記カラム底部流の少量部分を高温ユーティティに送り込み、前記少量部分を前記第1の温度よりも高い接触分解温度に加熱するステップ;
(g)前記加熱した少量部分を触媒接触分解容器に送り込むステップ;ならびに
(h)前記少量部分を接触分解して、フェノールが豊富な流出物流およびフェノールが乏しい残留物流を形成するステップ、
を含むプロセスに関する。
【0015】
プロセスは、前記フェノールが乏しい残留物流の少なくとも一部を前記高温ユーティリティに再循環させることをさらに含むことができる。
【0016】
好都合には、プロセスの本実施形態において、第1の温度および加熱したカラム底部の前記大部分のフローが制御されて、蒸留カラム熱交換量に必要な熱を提供する。
【0017】
便利には、プロセスの本実施形態において、フェノールが乏しい残留物流の一部が熱交換器に送り込まれ、熱交換器を使用して前記高温ユーティリティの上流で前記カラム底部の前記少量部分を予熱する。
【0018】
プロセスは、フェノールが豊富な流出物流が前記蒸留カラムに再循環されるステップをさらに含むことができる。
【0019】
またはプロセスは、前記フェノールが豊富な流出物流を前記触媒接触分解容器に取付けられた精留ユニット内で還流させることをさらに含むことができ、還流流は前記BPA廃水流から、または前記フェノール流出物流から、または前記蒸留カラムからも採取される。
【0020】
一実施形態において、還流されたフェノールが豊富な流出物流は濃縮および回収される。
【0021】
便利には、触媒接触分解容器を前記蒸留カラムの下に、前記蒸留カラムと同じシェル内に取付けることができ、前記蒸留カラムおよび前記接触分解容器はトラップ・アウト・トレー(trap‐out tray)によって隔離され、前記カラム底部の前記少量部分はステップ(f)の前に、トラップからあふれて前記接触分解容器中に降下する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術の接触分解および蒸留プロセスを示す。
【図2】カラム蒸留および熱分解の熱交換量が分離されている、本発明の改良プロセスの第1の実施形態を示す。
【図3】図2のプロセスの修正である、本発明の改良プロセスの第2の実施形態を示す。
【図4】図3のプロセスの修正を示す。
【図5】蒸留カラムおよび接触分解リアクタが組合されて単一のシェルとなった、本発明のさらなる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ビスフェノールA(BPA)合成方法は最初に、酸性触媒下でアセトンを化学量論的過剰のフェノールと反応させることを含む。フェノール/アセトンのモル比は通常、3〜30の、通例は5〜20の範囲である。反応は、通常50℃〜100℃の温度にて、通常、大気圧から600kPaの圧力下で行われる。
【0024】
触媒として、通常、強鉱酸または硫黄含有アミン化合物によって部分中和されたものを含む、強酸性カチオン交換樹脂、たとえばスルホン酸型樹脂が使用される。硫黄含有アミン化合物として、ビスフェノールAの合成に使用される普通のプロモータ、たとえば2−(4−ピリジル)エタンチオール、2−メルカプトエチルアミン、3−メルカプトプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−メルカプトプロピルアミン、N,N−ジ−n−ブチル−4−メルカプトブチルアミン、および2,2−ジメチルチアゾリジンなどを使用することができる。このようなプロモータは、酸性イオン交換体中の酸基(スルホン基)に基づいて、通常2mol%〜30mol%、たとえば5mol%〜20mol%の量で使用される。
【0025】
フェノールおよびアセトンの縮合反応は通常、固定床連続フローシステムまたは懸濁床バッチシステムで行われる。固定床フローシステムの場合、リアクタに供給された原材料の混合物の液体空間速度は通常0.2時間−1〜50時間−1である。懸濁床バッチシステムの場合、使用される強酸イオン交換樹脂の量は、反応温度および圧力に応じて可変であるが、原材料の混合物に基づいて通常20重量%〜100重量%である。反応時間は通常0.5時間〜5時間である。
【0026】
所望のビスフェノールAに加えて、縮合反応からの流出物は、反応により発生した水、未反応アセトン、未反応フェノール、ならびにフェノール部分、たとえばビスフェノールA異性体(たとえば,2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、またはo,p−BPA)、トリスフェノール(下の式Iを参照)、イソプロペニルフェノール(IPP)ダイマー(下の式IIa、IIbおよびIIcを参照)およびヒドロキシフェニルクロマン(下のIIIaおよびIIIbを参照)、置換キサンテンおよび分子枠組み中に3個以上のフェニル環を有するさらに高度に縮合された化合物を含有する、多様な望ましくない副生成物を含む。集合的に、IPPダイマー、ヒドロキシルフェニルクロマン、インダン、キサンテンおよびさらに高度に縮合された化合物は「BPAヘビーズ」と呼ばれる。
【化1A】

【化1B】

【0027】
これらの副生成物は、水、フェノールおよびアセトンと同様に、ポリマー産生へのBPAの適合性を損ない、縮合流出物から分離しなければならない。特にポリカーボネートの産生では、原材料のBPAの純度に対して高度の要求がなされる。
【0028】
BPAの精製は、たとえば懸濁結晶化、溶融結晶化、蒸留および/または脱着などの、多段階の連続した好適な精製プロセスによって行われる。BPA生成物の分離後、これらのプロセスによって母液またはBPA廃水流が残り、廃水流はBPA、水、未反応フェノールおよびおそらく未反応アセトンを含有し、上述のフェノール部分含有芳香族副生成物が豊富である。通常、この母液流は縮合反応に再循環される。酸性イオン交換体の触媒活性を維持するために、形成された水の全部または一部を、なお存在するすべての未反応アセトンと共に蒸留によって事前に除去する。このように得た脱水母液に追加のフェノールおよびアセトンを添加して、縮合ユニットに逆に送り込む。
【0029】
このような再循環手順によって、BPA調製の副生成物が循環流中で濃縮するようになり、最終BPA生成物の純度に悪影響が及ぼされることがあり、触媒系の失活が引き起こされ得る。循環流中での副生成物の過剰な濃縮を避けるため、母液混合物の一部を系から放出しなければならない。放出は、たいてい反応の水、未反応アセトンおよび未反応フェノールの一部を除去する蒸留の後に、循環流から母液の一部を除去することによって通例行われる。この時点での母液の組成は、したがって放出物の組成も通例、60重量%〜90重量%のフェノール、6重量%〜18重量%のBPAおよび3重量%〜15重量%のBPA異性体ならびにより重い副生成物で構成される。この放出流は著しい量のフェノールおよび他の有用な生成物を含有するため、放出はさらなる処理を受ける貴重なプロセス流である。
【0030】
放出流のさらなる処理は、通常は真空蒸留によってフェノールを20重量%未満の、たとえば10重量%未満の、とりわけ5重量%未満の、なお1重量%未満の残留含有率まで蒸留除去することと、10重量%未満のフェノール、15重量%〜85重量%のBPAおよび15重量%〜85重量%の副生成物を含む重い残留物流を残すことを含むことができ、残留物流はプロセスから取り出されねばならない。
【0031】
好都合には、放出流のさらなる処理、たとえば放出流中のビスフェノールA異性体、トリスフェノールおよび他の高分子量構成要素に熱または触媒接触分解を受けさせることを行って、回収率を向上させるためにフェノールおよびイソプロペニルフェノール(IPP)を産生することができる。接触分解ステップは、蒸留によるフェノール回収に続き得るか、またはフェノール回収と同時であり得る。好適な接触分解プロセスは国際公開第2007/044139に記載され、その全体の内容は参照により本願明細書に組み入れられている。
【0032】
接触分解ステップの生成物をフェノール回収蒸留ステップに再循環させることができ、フェノール回収蒸留ステップでは接触分解ステップからの熱が蒸留ステップの必要とする入熱を提供するのに役立ち、接触分解ステップで遊離されたフェノールが回収される。通例、接触分解ヒータも、蒸留カラムが必要とする熱交換量を提供する役割を果たす。しかし蒸留ステップは接触分解反応ほど高い温度を必要としないが、接触分解ステップの生成物を回収するのに必要な熱交換量は接触分解に必要な熱交換量よりも実質的に高い。結果は、より高品質(より高温)で、したがってより高コストの熱源が使用されると、必要とされるよりもはるかに大きい熱交換量が供給され、このことは経済的に効率的でないということである。
【0033】
図1は従来技術の接触分解および蒸留プロセスを示し、ここでBPA廃水流200は、フェノール含有生成物流210を回収する役割を果たすフェノール回収蒸留カラム100に方向付けられ、フェノール含有生成物流210は次にBPA縮合リアクタ(図示せず)内に再循環する。蒸留カラム100からの底部流240はポンプPを通じて方向付けられ、ポンプPから底部流240はヒータ/リボイラ110に送られて、そこで高温ユーティリティによって、たとえば高温蒸気によって接触分解温度に加熱される。少量の底部流230が他の用途および/または廃棄のために現場外に送られる。加熱流240が接触分解リアクタ120中に送られ、接触分解リアクタにて接触分解されてフェノールを産生し、フェノールは次に蒸留カラム100中に逆送される。この従来プロセスでは、加熱流240のフローが制御されるので、ヒータ/リボイラ110の総入熱は、接触分解に必要な熱交換量を加えた蒸留カラム100に必要とされる熱交換量に等しい。
【0034】
本出願の改良プロセスにより、本発明者らは、2つの明瞭に異なる熱負荷;蒸留によりフェノールを回収するために必要な熱交換量、および接触分解反応を促進するために必要な熱交換量を認識している。2つの熱負荷のうち大きいほう、すなわちフェノールを回収するための熱負荷をより低い値の熱源によって満足させることができるのは、フェノールの蒸留および回収に必要な温度が底部流の接触分解に必要な温度よりも著しく低いためである。したがって、別個の熱源が使用されるように再沸騰/蒸留熱負荷および接触分解熱負荷を分離する方法で蒸留カラムおよび接触分解リアクタを再構成することによって、著しい費用節約が実現できる。
【0035】
図2〜図5は、フェノール回収熱交換量(再沸騰交換量)を接触分解熱交換量から分離する各種の方法を示すが、本発明を実施する唯一の方法として解釈されるべきではない。
【0036】
図2の実施形態において、カラム底部流220を蒸留カラム100からポンプPを通じて採取して、ポンプPでは流れの大部分300がリボイラ130を通じて方向付けられ、リボイラでは低温ユーティリティによって、蒸留カラムに必要な熱交換量を提供するのに十分な第1の温度に加熱される。流れのフロー300は、リボイラ130が必要なリボイラ交換量を提供するように調節される。カラム底部の少量部分流310は接触分解送り込み流出物ヒータ150を通じて方向付けられ、ヒータでは熱が最終接触分解生成物の画分流340の一部から回収される。流れ340は他の用途のためにまたは廃棄のために送り出され、回収不能の不純物をプロセスから除去する。流れ310は次に接触分解ヒータ140、触媒接触分解急速蒸発容器120および再循環ポンプPCを含む接触分解ループ中に送り込まれる。流れ310は、接触分解ヒータ140中に送り込まれ、ヒータでは高温ユーティリティ(すなわち高温流)によって前記第1の温度より高い接触分解温度まで上昇させられて、次に加熱流320は接触分解急速蒸発容器120に流入し、ここで接触分解されてフェノールが豊富な流れ350が生成され、蒸留カラム100に逆流入する。接触分解急速蒸発容器120の温度および圧力は、接触分解蒸気流350の非常に高いフェノール純度を維持するように調整される。フェノールが乏しい流れである、接触分解急速蒸発容器からの底部流330は、接触分解生成物再循環ポンプPCに進み、その後、少量の生成物流画分340がより大量の接触分解再循環流画分345から分割される。生成物流画分340はヒータ150に供給されて、カラム100底部部分310を加熱するのに対して、再循環流画分345は接触分解リボイラ140に戻される。
【0037】
図3は、小型精留ユニット125が接触分解急速蒸発容器120に追加された、図2のプロセスの変形である。精留ユニット125は、ありとあらゆるカラム送り込み流200から採取した流れ355、蒸留カラム100からのサイドドロー、またはフェノール再循環流210を還流させることができる。精留部の追加によって、蒸留カラム100に再循環されるフェノールが豊富な接触分解蒸気流350の高いフェノール純度を維持しながら、より厳しい条件での、たとえばより高温またはより低圧での接触分解急速蒸発容器の操作が可能となる。
【0038】
図4は、フェノールが豊富な接触分解蒸気流350がほぼ完全に濃縮され、その大部分が再循環フェノール生成物として採取され、同時に少量部分360が精留部125への還流に使用される、図3のプロセスのさらなる修正を図示する。この機構は、改良されたプロセスが既存の設備に追加され、既存のフェノール回収蒸留カラム100の容量が制限されている場合に有用である。
【0039】
図5では、フェノール回収蒸留カラム100’および接触分解リアクタ120’が組合されて1つのシェル105となり、トラップ・アウト・トレー115によって隔離されている。蒸留カラム100’の底部からの液体が収集され、大部分の流れ220’がポンプPによってリボイラ130に送られ、リボイラで低温ユーティリティによって加熱されて再沸騰交換量を提供する。蒸留カラム100’の底部からの液体の少量部分は、トラップからあふれて、接触分解容器120’中に降下して、接触分解再循環ポンプPCによって接触分解リボイラ140中に方向付けられて、高温ユーティリティによって接触分解温度で加熱される。次に加熱流320が接触分解される接触分解容器120’中に送られて、接触分解ステップから生じるフェノールが豊富な蒸気が蒸留カラム100’中に流れ上がる。先の実施形態に類似して、最終接触分解流出物の少量部分である流れ340は、他の用途のためにまたは廃棄のために送り出される。流れ340は、蒸留カラム100’への送り込み流200を加熱するために使用することもできる。
【0040】
本発明は特定の実施形態への参照により説明および例証されてきたが、当業者は本発明が必ずしも本明細書で例証されていない変形に適していることを認識する。そしてこの理由のために、本発明の真の範囲を決定する目的で添付請求項のみを参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BPA廃水流からフェノールを回収するプロセスであって:
(a)フェノール部分含有芳香族化合物を含むBPA廃水流を蒸留カラムに送り込むステップ;
(b)前記蒸留カラム内の前記廃水流を蒸留して、フェノール含有蒸留生成物流およびカラム底部流を形成するステップ;
(c)前記底部流の大部分を低温ユーティリティに送り込み、前記大部分を第1の温度に加熱し、前記加熱した大部分を蒸留カラムに再循環させるステップ;
(d)前記カラム底部流の少量部分を高温ユーティティに送り込み、前記少量部分を前記第1の温度よりも高い接触分解温度に加熱するステップ;
(e)前記加熱した少量部分を触媒接触分解容器に送り込むステップ;ならびに
(f)前記少量部分を接触分解および急速蒸発させて、フェノールが豊富な流出物流およびフェノールが乏しい残留物流を形成するステップ;
を含むプロセス。
【請求項2】
前記フェノールが乏しい残留物流の少なくとも一部を前記高温ユーティリティに再循環させることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
該第1の温度および加熱したカラム底部の前記大部分のフローが制御されて、該蒸留カラム熱交換量に必要な熱を提供する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
該フェノールが乏しい残留物流の一部が熱交換器に送り込まれ、熱交換器を使用して前記高温ユーティリティの上流で前記カラム底部の前記少量部分を予熱する、請求項1〜3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記フェノールが豊富な流出物流が前記蒸留カラムに再循環される、請求項1〜4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記フェノールが豊富な流出物流を前記触媒接触分解容器に取付けられた精留ユニット内で還流させることをさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
還流流が前記BPA廃水流から採取される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
還流流が前記フェノール流出物流から採取される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
還流流が前記蒸留カラムからの副流から採取される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記還流されたフェノールが豊富な流出物流が濃縮および回収される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項11】
前記触媒接触分解容器が前記蒸留カラムの下に、前記蒸留カラムと同じシェル内に取付けられ、前記蒸留カラムおよび前記接触分解容器はトラップ・アウト・トレーによって隔離され、前記カラム底部の前記少量部分はステップ(d)の前に、トラップからあふれて前記接触分解容器中に降下する、請求項1〜5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
前記BPA廃水流がBPA異性体、未反応フェノール、トリスフェノール、ヒドロキシフェニルクロマン、イソプロペニルフェノールダイマー、およびインダンを含む、請求項1〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
ビスフェノールA(BPA)を産生するプロセスであって:
(a)BPA異性体、未反応フェノール、トリスフェノール、ヒドロキシフェニルクロマン、イソプロペニルフェノールダイマー、およびインダンを含む流出物流を産生する条件下の触媒の存在下で、アセトンをモル過剰のフェノールと縮合するステップ;
(b)前記流出物流から、BPA異性体、未回収フェノール、トリスフェノール、ヒドロキシフェニルクロマン、イソプロペニルフェノールダイマー、インダンおよび他のより重い芳香族化合物を含むBPA廃水流を残してBPAおよび未反応フェノールを回収するステップ;
(c)前記BPA廃水流を蒸留カラムに送り込むステップ;
(d)前記蒸留カラム内の前記廃水流を蒸留して、フェノール含有流出物流およびより重いカラム底部流を形成するステップ;
(e)前記底部流の大部分を低温ユーティリティに送り込み、前記大部分を第1の温度に加熱し、前記加熱した大部分を蒸留カラムに再循環させるステップ;
(f)前記カラム底部流の少量部分を高温ユーティティに送り込み、前記少量部分を前記第1の温度よりも高い接触分解温度に加熱するステップ;
(g)前記加熱した少量部分を触媒接触分解容器に送り込むステップ;ならびに
(h)前記少量部分を接触分解して、フェノールが豊富な流出物流およびフェノールが乏しい残留物流を形成するステップ;
を含むプロセス。
【請求項14】
前記フェノールが乏しい残留物流の少なくとも一部を前記高温ユーティリティに再循環させることをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
該第1の温度および加熱したカラム底部の前記大部分のフローが制御されて、該蒸留カラム熱交換量に必要な熱を提供する、請求項13または14に記載のプロセス。
【請求項16】
該フェノールが乏しい残留物流の一部が熱交換器に送り込まれ、熱交換器を使用して前記高温ユーティリティの上流で前記カラム底部の前記少量部分を予熱する、請求項1〜15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
前記フェノールが豊富な流出物流が前記蒸留カラムに再循環される、請求項1〜16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
前記フェノールが豊富な流出物流を前記触媒接触分解容器に取付けられた精留ユニット内で還流させることをさらに含む、請求項1〜17のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
還流流が前記BPA廃水流から採取される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
還流流が前記フェノール流出物流から採取される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
還流流が前記蒸留カラムからの副流から採取される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項22】
還流されたフェノールが豊富な流出物流が濃縮および回収される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項23】
前記触媒接触分解容器が前記蒸留カラムの下に、前記蒸留カラムと同じシェル内に取付けられ、前記蒸留カラムおよび前記接触分解容器はトラップ・アウト・トレーによって隔離され、前記カラム底部の前記少量部分はステップ(f)の前に、トラップからあふれて前記接触分解容器中に降下する、請求項13〜17のいずれかに記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−506905(P2012−506905A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534592(P2011−534592)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/059973
【国際公開番号】WO2010/062482
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(508328604)バジャー・ライセンシング・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (4)
【Fターム(参考)】