説明

ビタミンB12類含有組成物

【課題】ビタミンB12類を安定化させた錠剤を製造する。
【解決手段】本発明の錠剤は、ビタミンB12類以外のビタミン、例えばビタミンB1類、B2類、B6類等のビタミンを含有した錠剤であっても、ビタミンB12類および中性の賦形剤、好ましくは中性の軽質無水ケイ酸を併用、特に好ましくはビタミンB6類を含まない錠剤の被覆層中にビタミンB12類および中性の軽質無水ケイ酸を含有すれば、ビタミンB12類を安定化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB12類および中性の賦形剤を含む被覆層を有することを特徴とする錠剤、詳しくはビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含む被覆層を有することを特徴とする錠剤である。
【背景技術】
【0002】
ビタミンとは、体外から摂取する食品の成分のうち、主栄養素であるタンパク質、脂肪、炭水化物、無機塩類および水以外に、動物の正常な発育と栄養を保つ上に微量でよいが欠くことのできない特殊な有機物質を総称する。例えば、神経・筋肉の円滑な働きに必要なビタミンB2、B6類、末消の血行を高めるビタミンE類、脂肪・糖質の代謝に関与して妊婦などの栄養補給に必要なパントテン酸カルシウム等がある。
このうち、ビタミンB12類は、神経・筋肉の円滑な働きに必要であり、ビタミンB1主薬製剤、ビタミンB6主薬製剤またはビタミンB1・B6主薬製剤等に配合される重要なビタミンである。しかしながら、ビタミンB12類は、安定性が悪く、安定性を向上させるための様々な検討が行われている。例えば、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体 1に対し、重量比で0.0001〜0.3のビタミンB12類を含み、ビタミンB12類 1に対し、重量比で0.5〜10000の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合することを特徴とする医薬組成物において、ビタミンB12類が安定化されていることが記載されている(特許文献1)。また、素錠剤重量の5〜60%の、糖質、賦形剤および結合剤を含む糖衣層を有する薄層糖衣錠でビタミンB12類が安定化されている(特許文献2)。さらに、α化デンプン類とビタミンB12類をセルロース系高分子化合物又はアクリル系高分子化合物でコーティングすれば、ビタミンB12類が安定化されることが記載されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平9−52832号公報
【特許文献2】特開2002−179559号公報
【特許文献3】特開2000−16940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1〜3では、ビタミンB12類以外のビタミン、特に無機酸付加塩であるビタミンB1類および/またはビタミンB6類を含有した錠剤中にビタミンB12類を含有しており、この場合でもビタミンB12類を安定化することは、困難であった。また、製造法も煩雑であり、実用的な製剤処方とは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らが鋭意検討した結果、今回は意外にも、軽質無水ケイ酸がビタミンB12類を安定化できることを見出した。その知見により、ビタミンB12類および中性の賦形剤を含む被覆層を有することを特徴とする錠剤、詳しくはビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含む被覆層を有することを特徴とする錠剤であれば、ビタミンB12類を安定化できることを見出した。また、錠剤中にα化デンプン類および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをいずれも含まず、かつビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含む錠剤を見出し、以下の発明を完成した。
(1)ビタミンB12類および中性の賦形剤を含む被覆層を有することを特徴とする、素錠の表面に被覆層を形成した錠剤。
(2)ビタミンB12類がシアノコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミンおよびメコバラミンからなる群から選択される1または2以上である上記(1)記載の錠剤。
(3)ビタミンB12類がシアノコバラミンである上記(2)記載の錠剤。
(4)中性の賦形剤が軽質無水ケイ酸である上記(1)から(3)のいずれかに記載の錠剤。
(5)軽質無水ケイ酸のpHが5〜8である上記(4)記載の錠剤。
(6)軽質無水ケイ酸のpHが7〜8である上記(5)記載の錠剤。
(7)軽質無水ケイ酸の比表面積が100m2/g以上である上記(4)から(6)のいずれかに記載の錠剤。
(8)軽質無水ケイ酸の比表面積が300m2/g以上である上記(7)記載の錠剤。
(9)軽質無水ケイ酸の添加量が、ビタミンB12類に対し、重量比で30倍〜100倍である上記(4)から(8)のいずれかに記載の錠剤。
(10)被覆層中に水溶性セルロース誘導体を含む上記(1)から(9)のいずれかに記載の錠剤。
(11)水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選択される1または2以上である上記(10)記載の錠剤。
(12)水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである上記(11)記載の錠剤。
(13)水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルセルロースである上記(11)記載の錠剤。
(14)素錠にビタミンB6類を含み、かつ被覆層中にビタミンB6類を含まない上記(1)から(13)のいずれかに記載の錠剤。
(15)素錠にビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類およびビタミンE類の1または2以上を含み、かつ被覆層中にビタミンB12類、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースを含む上記(1)から(13)のいずれかに記載の錠剤。
(16)錠剤中にα化デンプン類および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをいずれも含まず、かつビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含む錠剤。
(17)ビタミンB12類および中性の賦形剤を含む被覆層形成用組成物。
(18)ビタミンB12類、中性の賦形剤および水溶性セルロース誘導体を含む上記(17)記載の被覆層形成用組成物。
(19)中性の賦形剤が軽質無水ケイ酸である上記(17)または(18)記載の被覆層形成用組成物。
(20)ビタミンB12類を安定化させるための軽質無水ケイ酸の使用。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、ビタミンB12類の安定化された錠剤を製造することができる。ビタミンB12類以外のビタミン、例えばビタミンB1類、B2類、B6類、C類、E類等のビタミンを含有した錠剤であっても、ビタミンB12類を中性の賦形剤(好ましくは中性の軽質無水ケイ酸)と共に被覆層とすることで、ビタミンB12類を安定にすることができる。特に好ましくは、ビタミンB12類および中性の軽質無水ケイ酸を含有し、無機酸付加塩であるビタミンB1類および/またはビタミンB6類を含まない被覆層を用いることにより、ビタミンB12類を安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明における錠剤には、有効成分として、少なくともビタミンB12類を含有する。ビタミンB12類として、第14改正日本薬局方収載のビタミンB12類であればよいが、具体的にはシアノコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、およびメコバラミン等が挙げられる。好ましくは、シアノコバラミンである。他のビタミン類としては、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類、ビタミンC類およびビタミンE類を含有してもよく、これらのビタミンも第14改正日本薬局方収載のビタミンであればよい。ビタミンB1類として、無機酸付加塩のビタミンB1類でもよく、具体的には塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジセチル硫酸エステル塩等である。また、ビタミンB1類誘導体して、具体的には塩酸フルスルチアミン、塩酸ジセチアミン等が挙げられる。また、ビタミンB2類として、具体的にはリボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン等が挙げられる。ビタミンB6類として、具体的には塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール等が挙げられる。ビタミンC類として、具体的にはアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム等が挙げられる。ビタミンE類として、具体的にはコハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム等が挙げられる。
【0007】
上述した他のビタミン類を錠剤中に含んでいてもよい。具体的には、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム(例、パントテン酸カルシウムタイプS(商品名、乳酸カルシウム配合))、ビオチン、γ−オリザノール、オロチン酸、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミド、ヨクイニン等のビタミン類が挙げられる。
【0008】
本発明における錠剤1錠あたりのビタミンB12類の含有量は、0.001〜0.1重量%、好ましくは0.0025〜0.075重量%、特に好ましくは0.005〜0.05重量%である。これより少なければ、十分な薬効をしめすことができない。
【0009】
本発明の錠剤においては、中性の賦形剤を含有する必要がある。中性の賦形剤を錠剤中に含有しない場合、ビタミンB12類が分解する恐れがある。中性の賦形剤としては、医薬品分野で用いられるものであればよいが、具体的には、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられ、好ましくは、軽質無水ケイ酸である。
【0010】
軽質無水ケイ酸とは、二酸化ケイ素の一種で単粒子が20〜30μm程度の球形微粒子であり、これが二次、三次凝集して1つの粒子を形成している。したがって、比表面積や吸油能が一般的な粉末と比べ大きい。
【0011】
軽質無水ケイ酸としては、湿式法や乾式法で製造したものがあるが、本発明の場合、湿式法で製造した軽質無水ケイ酸であればよい。
【0012】
本発明に用いられる軽質無水ケイ酸としては、医薬分野で用いられるものであればよい。例えば、アエロジル(日本アエロジル株式会社)、アリソリダ−101(フロイント産業)、カープレックス#80(デグサ社製)、カープレックス#67(デグサ社製)、カープレックス#1120(デグサ社製)、カープレックス#100(デグサ社製)、カープレックスXR(デグサ社製)、カープレックス22S(デグサ社製)がある。好ましくは、軽質無水ケイ酸のpHが5〜8の軽質無水ケイ酸、より好ましくはpHが7〜8の軽質無水ケイ酸である。ビタミンB12類は、中性域では安定であるが、酸性域、アルカリ性域では不安定であるので、上記pH域から大きくはずれた軽質無水ケイ酸の場合、ビタミンB12類は分解する恐れがある。したがって、軽質無水ケイ酸は、ビタミンB12類を安定化するために、使用することができる。また、比表面積が大きい軽質無水ケイ酸であれば、なお好ましい。比表面積としては、100m2/g以上、好ましくは200m2/g以上、より好ましくは300m2/g以上である。具体的には、pHが7〜8であり、比表面積が300m2/g以上であるカープレックス#67(デグサ社製)がある。第14改正日本薬局方収載の軽質無水ケイ酸であればさらによい。
【0013】
本発明の軽質無水ケイ酸の添加量としては、ビタミンB12類を安定化できる添加量であればよいが、錠剤1錠あたり、軽質無水ケイ酸の添加量が、ビタミンB12類に対し、重量比で30倍〜100倍、好ましくは35〜80倍、より好ましくは40〜78倍である。この添加量よりも多ければ、相対的にビタミンB12の配合量が低下する可能性があり、少なければ、ビタミンB12類を安定化できない恐れがある。
【0014】
本発明の錠剤において、ビタミンB12類および軽質無水ケイ酸をともに錠剤中に含有していればよいが、好ましくは素錠表面に被覆層を形成し、その被覆層中にビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含有する、より好ましくは素錠表面に被覆層を形成し、その被覆層中にビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含有し、かつ無機酸付加塩であるビタミン類、特に無機酸付加塩であるビタミンB1類および/またはビタミンB6類を含有しないことが望ましい。本明細書において、素錠とは、被覆層形成前の錠剤であり、被覆層とは、素錠の表面に形成された高分子層、糖衣層等である。
【0015】
ビタミンB12類と軽質無水ケイ酸の組み合わせとして、具体的にはシアノコバラミンとカープレックス#67、塩酸ヒドロキソコバラミンとカープレックス#67、酢酸ヒドロキソコバラミンとカープレックス#67、およびメコバラミンとカープレックス#67等であり、好ましくはシアノコバラミンとカープレックス#67の組み合わせである。
【0016】
本発明におけるビタミンB12類と軽質無水ケイ酸の組み合わせた場合、その錠剤1錠あたりの配合量として、具体的にはシアノコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミンおよびメコバラミン等のビタミンB12類が0.001〜0.1重量%、カープレックス#67等の軽質無水ケイ酸が0.1〜5重量%、好ましくはビタミンB12類が0.0025〜0.075重量%、軽質無水ケイ酸が0.25〜3.75重量%、より好ましくはビタミンB12類が0.005〜0.05重量%、軽質無水ケイ酸が0.3〜3.5重量%である。軽質無水ケイ酸がこの量よりも少なければ、ビタミンB12類が安定化できない恐れがある。
【0017】
本発明の錠剤中には、必要に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を添加することができる。本発明の錠剤で使用することができる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等としては、医薬分野で許容できるものであればよい。
【0018】
本発明の錠剤で使用することができる賦形剤、結合剤としては、具体的には、セルロースとその誘導体、デンプンとその誘導体、合成高分子化合物、糖質等が挙げられる。本発明で使用することができるセルロースとその誘導体としては、結晶セルロース、粉末セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。本発明で使用することができるデンプンとその誘導体としては、トウモロコシデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、シクロデキストリン等が挙げられる。本発明で使用することができる合成高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーE、メタアクリル酸コポリマーL、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーRS、メタアクリル酸コポリマーS、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミンアセテート等が挙げられる。本発明で使用することができる糖質としては、ショ糖、トレハロース、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、粉末還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
【0019】
本発明における錠剤1錠あたりの賦形剤の含有量は、0〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。本発明における錠剤1錠あたりの結合剤の含有量は、0.1〜7重量%、好ましくは0.5〜6重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0020】
本発明の錠剤で使用することができる崩壊剤としては、医薬分野で許容できるものであればよい。具体的には、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン等が挙げられる。
【0021】
本発明における錠剤1錠あたりの崩壊剤の含有量は、0.1〜50重量%、好ましくは1〜35重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。
【0022】
当該錠剤で使用することができる滑沢剤としては、医薬分野で許容できるものであればよい。具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0023】
本発明における錠剤1錠あたりの滑沢剤の含有量は、錠剤の製造方法によっても異なるが、後述する内部滑沢打錠法であれば、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、特に好ましくは1〜7重量%、外部滑沢打錠法であれば、0.001〜3重量%、好ましくは0.025〜2重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%である。
【0024】
本発明における錠剤の製造は、上記所望により加えられる有効成分、賦形剤、崩壊剤および結合剤を混合し、造粒後、整粒した造粒物とし、当該造粒物、その他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤を混合し、製錠することにより錠剤(ここでは素錠)を得ることができる。顆粒剤の造粒法としては、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授 橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)のような刊行物に記載されている顆粒の一般的な方法で製造すればよい。例えば、押し出し造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、転動流動層造粒法、攪拌造粒法、圧縮造粒法等があるが、好ましくは流動層造粒法である。
【0025】
また、錠剤の製造法としては造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授 橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)のような刊行物に記載されている錠剤の一般的な方法で製造すればよい。例えば、錠剤内部に滑沢剤を配合する内部滑沢打錠法であれば、直接打錠法、乾式顆粒打錠法、湿式顆粒打錠法等があるが、好ましくは湿式顆粒打錠法である。さらに、特開2005−247693に記載されている少量の滑沢剤で錠剤の形成が可能な外部打錠法等がある。
【0026】
本発明において、ビタミンB12類を含まない素錠を成形し、その表面にビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含む被覆層を形成し、錠剤を製造することができる。ビタミンB12類以外の医薬分野において許容し得る有効成分を素錠中に含有してもよい。例えば、上述したようなビタミンB12類の分解防止のため、ビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含む錠剤の被覆層に含有しないことが好ましい無機酸付加塩(塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩)、ビタミンの場合は、無機酸付加塩であるビタミン類、特に無機酸付加塩であるビタミンB1類および/またはビタミンB6類を素錠中に含有してもよい。さらに、ビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含む錠剤の被覆層にビタミンB6を含まず、素錠中にビタミンB6を含めば、ビタミンB12類をさらに安定化することができる。また、ビタミンC(アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム等)、ビタミンE類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム(例、パントテン酸カルシウムタイプS(商品名、乳酸カルシウム配合品))、ビオチン、γ−オリザノール、オロチン酸、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミド、ヨクイニン等のビタミン類を被覆層とは別の素錠中に含有することもできる。なお、パントテン酸カルシウム含有組成物は、製剤において乾式で配合することが好ましい。また、ニコチン酸アミドは、特にビタミンB12類の分解を促進するので、ビタミンB12類を被覆層へ配合した場合、素錠中に配合することが好ましい。
【0027】
素錠を成形後、その素錠の表面への被覆層として、ビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含む高分子層(以下、「フィルムコーティング層」という場合もある。)や糖衣層を設けることが必要である。被覆層の目的としては、(1)ビタミンB12類の分解を防止するために、素錠中に含有する無機酸付加塩であるビタミン類、特に無機酸付加塩であるビタミンB1類および/またはビタミンB6類とビタミンB12類を分離するため、(2)素錠の上に直接糖衣層を施す場合、糖衣工程自体かなり湿度の高い状態(水分過多)で作業するために素錠内に水分が移行しやすくなり、この素錠への水分の移行を防止するため、(3)塩酸フルスルチアミンおよびコンドロイチン硫酸ナトリウムが有する不快な臭いおよび味を効果的に低減できることであるが、本発明においては(1)で効果が著しい。
【0028】
本発明におけるフィルムコーティング層の基剤としては、医薬品分野で使用できるものであればよい。具体的には、水溶性セルロース誘導体であるヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、アクリル誘導体であるアミノアルキルメタアクリレート コポリマーE、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーL、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーS、その他、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミンアセテート等が挙げられ、好ましくは、水溶性セルロース誘導体、より好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、さらに好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、特に好ましくはヒドロキシプロピルセルロースである。
【0029】
上述したヒドロキシプロピルセルロースとしては、医薬品分野で使用できるものであればよいが、2%水溶液の粘度(20℃、B型粘度計)が2.0〜2.9cps(HPCSSL)、3.0〜5.9cps(HPCSL)、6.0〜10.0cps(HPCL)ものが適当であり、好ましくは3.0〜5.9cps(HPCSL)のヒドロキシプロピルセルロースである。
【0030】
ビタミンB12類の分解を抑制するために、被覆層として好ましくはビタミンB12類、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆層、ビタミンB12類、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む被覆層、より好ましくはビタミンB12類、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆層である。具体的には、シアノコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆層、シアノコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む被覆層、塩酸ヒドロキソコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆層、塩酸ヒドロキソコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む被覆層、酢酸ヒドロキソコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆層、酢酸ヒドロキソコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む被覆層、メコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆層、メコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む被覆層であり、好ましくはシアノコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆層である。上記被覆層を形成する場合、上記成分を含む組成物を錠剤に被覆すればよい。当該錠剤は、素錠でもよいし、素錠にサブコーティングした錠剤に上記組成物を被覆してもよい。
【0031】
本発明におけるビタミンB12類、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む被覆層において、その錠剤1錠あたりの配合量として具体的にはシアノコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミンおよびメコバラミン等のビタミンB12類が0.001〜0.1重量%、カープレックス#67等の軽質無水ケイ酸が0.1〜5.0重量%、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.1〜10重量%、好ましくはビタミンB12類が0.0025〜0.075重量%、軽質無水ケイ酸が0.25〜3.75重量%、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.5〜7.5重量%、より好ましくはビタミンB12類が0.005〜0.05重量%、軽質無水ケイ酸が0.3〜3.5重量%、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.75〜5.0重量%である。軽質無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースがこの量よりも少なければ、ビタミンB12類が安定化できない恐れがある。なお、この配合量は、サブコーティングしたヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを除いた配合量である。
【0032】
該フィルムコーティング液として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび所望により配合される上記の添加剤を上記の割合で水中に懸濁・溶解して得られる。
【0033】
また、素錠の表面に所望によりサブコーティング層(隔離層)を形成した後、その上部にビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含有したフィルムコーティング層をさらに形成すれば、素錠中に含有する無機酸付加塩であるビタミン類、特に無機酸付加塩であるビタミンB1類および/またはビタミンB6類を含有しても、ビタミンB12類の分解をさらに抑制できる。サブコーティング層としては、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが適当である。
【0034】
本発明における錠剤1錠あたりのフィルムコーティング層の基剤の含有量は、素錠重量に対してフィルムコーティング層が3〜20重量%、好ましくは6〜18重量%、さらに好ましくは8〜15重量%となるようにおこなう。この含有量よりも少なければ、フィルムコーティング層中に含有したビタミンB12類が分解する恐れがある。
【0035】
本発明におけるフィルムコーティング層を形成した錠剤の製造方法としては、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いればよく、特別な制限はない。フィルムコーティングを施す場合は、コーティング機として、通気式のコーティング機、例えばドリアコーター(パウレック)、アクアコーター(フロイント産業)、ハイコーター(フロイント産業)等の機器を用い、コーティング液を1000μm以下のミストとして噴霧し、給気温度、給気風量、注液速度等のコーティング条件を調整することによって達成される。
【0036】
素錠に被覆層として、ビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含有するフィルムコーティング基剤のみで被覆してもよいし、さらに必要に応じ糖衣基剤で被覆してもよい。また、素錠をフィルムコーティング基剤で被覆後、ビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含有する糖衣基剤で被覆してもよい。糖衣基剤を施すのは、防湿・防気性の効果を得るためである。本発明における糖衣基剤としては、白糖、ショ糖、トレハロース、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、粉末還元麦芽糖水飴等が挙げられ、好ましくは、白糖、トレハロース、乳糖、特に好ましくは白糖である。
【0037】
錠剤への糖衣基剤の被覆は、糖衣基剤の溶液を錠剤に噴霧することによりおこなうことができる。該錠剤は所望によりサブコーティングされていてもよい。糖衣基剤は、好ましくは素錠に対して、重量比で0.06〜1.5倍、さらに好ましくは0.15〜1倍、特に好ましくは0.35〜0.7倍量の割合で被覆を行うことができる。この含有量よりも少なければ、十分に不快な臭いを抑制することができない可能性があり、多ければ錠剤が大きくなり、服用性も悪くなる恐れがある。
【0038】
本発明における糖衣基剤を被覆した錠剤の製造方法としては、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いればよく、特別な制限はない。糖衣基剤を施す場合は、コーティング機として、通気式のコーティング機、例えばドリアコーター(パウレック)、アクアコーター(フロイント産業)、ハイコーター(フロイント産業)等の機器を用い、コーティング液を1000μm以下のミストとして噴霧し、給気温度、給気風量、注液速度等のコーティング条件を調整することによって達成される。
【0039】
本発明において、フィルムコーティング、糖衣基剤を被覆する場合、必要であれば、通常用いられる量の充填剤、滑沢剤、隠蔽剤、可塑剤、着色剤等の添加剤を配合することができる。本発明に使用できる添加剤としては、タルク、沈降炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、酸化チタン、マクロゴール6000、コポリビドン、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン、プロピレングリコール、プルラン、アラビアゴム、リボフラビン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄色5号アルミニウムレーキ、ポリシングワックス等が挙げられる。
【0040】
糖衣基剤を被覆する前に、錠剤の形状を整えるためにあるいは糖衣基剤の被覆量を低減させるために、下掛け層を施すことができる。なお、下掛け層としては、白糖が好ましい。
【0041】
本発明における固形製剤に、服用性向上のために、必要とあれば、香りおよび味を付与することもできる。例えば、着香剤または香料、矯味剤を配合することにより、香りおよび味を付与することができる。本発明で使用することができる着香剤または香料としては、例えば、ハッカ油、ユーカリ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、チョウジ油、オレンジ油、レモン油、ローズ油、フルーツフレーバー、バナナフレーバー、ストロベリーフレバー、ミントフレバー、ペパーミントフレバー、dl−メントール、l−メントール等が挙げられる。矯味剤としては、糖、糖アルコール、高甘味度甘味剤、酸味剤を配合することができる。矯味剤として本発明に用いられる糖、糖アルコールは、ショ糖、トレハロース、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、粉末還元麦芽糖水飴等が挙げられる。矯味剤として本発明に用いられる高甘味度甘味剤は、人工的に合成された甘味剤のうち、その甘味度が砂糖の数倍以上のもの、好ましくは約100倍以上のものをいい、具体的には、例えば、アスパルテーム、ステビア、サッカリン、グリチルリチン二カリウム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファームK等が挙げられる。矯味剤として本発明で用いられる酸味剤は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0042】
本発明における錠剤は、日本薬局方第14改正に記載の錠剤の規定に準ずるものである。特に、錠剤、フィルムコーティング錠、糖衣錠は、経口投与可能な錠剤であればよく、具体的には、直径5〜15mm、高さ2〜8mmのものであればよい。
【0043】
なお、上述したようにビタミンB12類は、神経・筋肉の円滑な働きに必要であるが、さらにその作用を高めるために、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類を併用することも要する。また、末消の血行を高めるビタミンE類の併用を要する場合もある。従って、素錠にビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類およびビタミンE類の1または2以上を含み、かつ被覆層中にビタミンB12類、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースを含めば、錠剤中にビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類およびビタミンE類を含んでも、ビタミンB12類を安定化することができる。この場合、素錠にサブコーティングを施した錠剤にビタミンB12類、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆層を錠剤に被覆してもよい。これによって、さらにビタミンB12類を安定化することができる。サブコーティングとしては、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースである。
【0044】
上述した素錠中のビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類、ビタミンE類および被覆層中のビタミンB12類、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースとして、それぞれの錠剤1錠あたりの配合量は、以下の配合量が適当である。すなわち、ビタミンB1類が5〜40重量%、ビタミンB2類が0.1〜5重量%、ビタミンB6類が1〜20重量%、ビタミンE類が5〜30重量%、被覆層中においてビタミンB12類が0.001〜0.1重量%、軽質無水ケイ酸が0.1〜5.0重量%およびヒドロキシプロピルセルロースが0.1〜10重量%、サブコーティング層のヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.1〜8重量%である。好ましくは、ビタミンB1類が7.5〜35重量%、ビタミンB2類が0.25〜3.75重量%、ビタミンB6類が2.5〜15重量%、ビタミンE類が7.5〜27.5重量%、被覆層中においてビタミンB12類が0.0025〜0.075重量%、軽質無水ケイ酸が0.25〜3.75重量%およびヒドロキシプロピルセルロースが0.5〜7.5重量%、サブコーティング層のヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.5〜6重量%である。より好ましくは、ビタミンB1類が10〜30重量%、ビタミンB2類が0.5〜3.5重量%、ビタミンB6類が5〜12.5重量%、ビタミンE類が10〜25重量%、被覆層中においてビタミンB12類が0.005〜0.05重量%、軽質無水ケイ酸が0.3〜3.5重量%およびヒドロキシプロピルセルロースが0.75〜5重量%、サブコーティング層のヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが1〜5重量%である。なお、この配合量は、サブコーティングしたヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを除いた配合量である。また、被覆層中のヒドロキシプロピルセルロースの配合量は、サブコーティングしたヒドロキシプロピルセルロースを除いた配合量である。
【0045】
具体的な錠剤成分の配合量として、塩酸ジセチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、コハク酸d−α−トコフェロールおよび被覆層中のシアノコバラミン、カープレックス#67およびヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL)として、それぞれの錠剤1錠あたりの配合量は、以下の配合量が適当である。すなわち、塩酸ジセチアミンが5〜40重量%、リボフラビンが0.1〜5重量%、塩酸ピリドキシンが1〜20重量%、コハク酸d−α−トコフェロールが5〜30重量%、被覆層中においてシアノコバラミンが0.001〜0.1重量%、カープレックス#67が0.1〜5.0重量%およびHPCSLが0.1〜10重量%、サブコーティング層のヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL)またはヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.1〜8重量%である。好ましくは、塩酸ジセチアミンが7.5〜35重量%、リボフラビンが0.25〜3.75重量%、塩酸ピリドキシンが2.5〜15重量%、コハク酸d−α−トコフェロールが7.5〜27.5重量%、被覆層中においてシアノコバラミンが0.0025〜0.075重量%、カープレックス#67が0.25〜3.75重量%およびヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL)が0.5〜7.5重量%、サブコーティング層のヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL)またはヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.5〜6重量%である。より好ましくは、塩酸ジセチアミンが10〜30重量%、リボフラビンが0.5〜3.5重量%、塩酸ピリドキシンが5〜12.5重量%、コハク酸d−α−トコフェロールが10〜25重量%、被覆層中においてシアノコバラミンが0.005〜0.05重量%、カープレックス#67が0.3〜3.5重量%およびヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL)が0.75〜5重量%、サブコーティング層のヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが1〜5重量%である。なお、この配合量は、サブコーティングしたヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL)またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを除いた配合量である。また、被覆層中のヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL)の配合量は、サブコーティングしたヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL)を除いた配合量である。
【0046】
さらに、錠剤中に上述した特許文献1〜3で記載されているようなα化デンプン類および/または低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含まなくても、軽質無水ケイ酸を含む錠剤であれば、ビタミンB12類を安定化することができる。
【実施例1】
【0047】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
(素錠の製造法)
表1には、錠剤中の有効成分、隔離層であるヒドロキシプロピルセルロ−ス、ビタミンB12類であるシアノコバラミンを被覆している軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロ−スの配合量を示している。
有効成分として、塩酸ジセチアミン(ビタミンB1、辻本化学工業製)、リボフラビン(ビタミンB2、武田薬品工業製)、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6、アルプス薬品工業製)、コハク酸d−α−トコフェロール(ビタミンE、エーザイ株式会社製)、賦形剤として、乳糖DMV350(DMV社製)、結晶セルロースPH101(旭化成ケミカル社製)および崩壊剤として、カルボキシメチルセルロースカルシウム(ニチリン化学工業製)を所定量V型混合機(8LV型混合機、塩野義製薬株式会社製)にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機(WSG5型、大河原製作所製)中で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達株式会社)、4.0w/v%)を溶解した水溶液を所定量噴霧し、顆粒剤を製造した。この顆粒剤、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムおよびステアリン酸マグネシウム(植物製、太平化学産業製)を所定量V型混合機(8LV型混合機、塩野義製薬製)にいれ、混合した。その後、上記混合物を下記条件によって、単発式錠剤機(ロータリー型S30K−T30、菊水製作所製)によって打錠し、錠剤(素錠)を得た。
【0048】
(フィルムコーティング基剤で被覆した錠剤の製造)
上記製造した素錠に、所定量のヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達株式会社製、8.0w/v%)を溶解した水溶液を通気式コーティング装置(HCT−48型ハイコーター、フロイント産業製)内で下記条件によって、上記錠剤に噴霧した。
さらに、所定量のヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達株式会社製、8.0w/v%)を溶解した水溶液中に、シアノコバラミン(ビタミンB12類、アベンティスファーマ社製)を溶解し、カープレックス#67(デグサ社製、軽質無水ケイ酸)を均一に懸濁させる。この溶液を、上記ヒドロキシプロピルセルロースを被覆した錠剤に通気式コーティング装置(HCT−48型ハイコーター、フロイント産業製)内で下記条件によって、上記錠剤に噴霧し、フィルムコーティング基剤で被覆した錠剤を得た。なお、カープレックス#67のpHは、7.0〜8.0であり、比表面積は約380m2/gである。
【0049】
(糖衣基剤で被覆した錠剤の製造)
上記、フィルムコーティング基剤で被覆した錠剤に、所定量のヒドロキシプロピルメチルセルロース2910R(信越化学株式会社)、白糖3G(三井製糖製)を溶解し、その溶液に三二酸化鉄(癸巳化成製)、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製)および酸化チタン(フロイント産業製)を所定量懸濁した液を調製し、その液を通気式コーティング装置(HCT−48型ハイコーター、フロイント産業製)内で下記条件によって噴霧した。
さらに、所定量のタルク(富士化学製)およびポリッシングワックス103(フロイント産業製)を上記錠剤に混合し、糖衣基剤で被覆した錠剤を得た。
(比較例1)
【0050】
(錠剤の製造方法)
実施例1のフィルムコーティング基剤で被覆した錠剤の製造において、カープレックス#67を添加しないこと以外は、実施例1と錠剤の製造方法は同一である。
【0051】
【表1】

【0052】
(流動層造粒機における造粒条件)
送風温度 60℃
送風量 2m3/分
スプレー液速 50g/分
スプレー圧 0.15Mpa
ノズル径 φ1.8mm
【0053】
(製錠機における打錠条件)
回転数 33rpm
杵 φ9.0mm
打錠圧 5kN
【0054】
(錠剤のフィルムコーティングにおける被覆条件)
給気速度 1.5m3/分
給気温度 55℃
パン回転数 25rpm
スプレー液速 7〜8g/分
スプレー圧 0.2MPa
ノズル径 φ0.8mm
【0055】
(錠剤の糖衣被覆における被覆条件)
給気風量 1.5m3/分
給気温度 55℃
パン回転数 25rpm
スプレー液速 7〜8g/分
スプレー圧 0.2MPa
ノズル径 φ0.8mm
【0056】
(錠剤の経時安定性試験法)
実施例1および比較例1の錠剤を50℃±2℃、相対湿度75%±5%RHでガラス瓶密栓で保存し、保存1および2週後の錠剤中のシアノコバラミン含量を測定し、残存率を算出した。
【0057】
(シアノコバラミン[ビタミンB12類]の残存率測定法)
ビタミンB12類の残存率測定の操作は、直射日光を避け、遮光した容器を用いて行う。また、以下の方法で複数回試験した結果の平均値を定量値とする。本品2個に、水50mLを正確に加えた後、20分間超音波照射し、さらに30分間激しく振り混ぜる。この液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、初めのろ液3mLを除き、次のろ液を試料溶液とする。別に定量用シアノコバラミン約24mgを精密に量り、水に溶かし、正確に200mLとする。この液5mLを正確に量り、水を加えて正確に100mLとする。この液5mLを正確に量り、水を加えて正確に50mLとし、標準溶液とする。試料溶液及び標準溶液100μLずつを正確にとり、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、シアノコバラミンのピーク面積AT,ASを測定する。
【0058】
【数1】

試験条件
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:365nm)
・カラム:内径4.6mm,長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする(L−カラム ODS)。
・カラム温度:25℃付近の一定温度
・移動相A:リン酸二水素アンモニウム5.8gを水に溶かし、1000mLとする。この液にアンモニア試液を加えてpH7.0に調整し、pH7.0の0.05mol/Lリン酸二水素アンモニウム緩衝液とする。この液4容量に液体クロマトグラフ用メタノールを1容量加える。
・移動相B:リン酸二水素アンモニウム5.8gを水に溶かし、1000mLとする。この液にアンモニア試液を加えてpH7.0に調整し、pH7.0の0.05mol/Lリン酸二水素アンモニウム緩衝液とする。この液3容量に液体クロマトグラフ用メタノールを2容量加える。

移動相の送液:移動相A及びBの混合比を次のように変えて濃度勾配制御する。
【0059】
【表2】

流量:毎分1.0mL(シアノコバラミンの保持時間が約14分)
定量用シアノコバラミンは、日局「シアノコバラミン」に適合したものを使用した。ただし、定量時において、換算した乾燥物に対し、シアノコバラミン99.0%以上を含む。減圧・0.67kPa以下、酸化リン(V)、100℃、4時間乾燥したものをデシケーター(シリカゲル)で保存する。
【0060】
(シアノコバラミン[ビタミンB12類]の残存率測定結果)
シアノコバラミン[ビタミンB12類]を配合した上記錠剤を経時試験し、シアノコバラミンの残存率を測定した。表3に実施例1および比較例1の残存率を示す。
【0061】
【表3】

上記の結果、保存1および2週間後において、比較例1のビタミンB12類の残存率は約94%程度まで低下したが、実施例1のビタミンB12類の残存率は、試験開始2週間後であっても、ほぼ100%であった。実施例1および比較例1の差は、フィルムコーティング層中に軽質無水ケイ酸であるカープレックス#67を含んでいるか、いないかの差であり、フィルムコーティング層中に軽質無水ケイ酸を含むことによって、ビタミンB12類を安定化できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
ビタミンB12類を安定化させた本発明の錠剤は、医薬品のみならず、健康食品等にも使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB12類および中性の賦形剤を含む被覆層を有することを特徴とする、素錠の表面に被覆層を形成した錠剤。
【請求項2】
ビタミンB12類がシアノコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミンおよびメコバラミンからなる群から選択される1または2以上である請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
ビタミンB12類がシアノコバラミンである請求項2記載の錠剤。
【請求項4】
中性の賦形剤が軽質無水ケイ酸である請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項5】
軽質無水ケイ酸のpHが5〜8である請求項4記載の錠剤。
【請求項6】
軽質無水ケイ酸のpHが7〜8である請求項5記載の錠剤。
【請求項7】
軽質無水ケイ酸の比表面積が100m2/g以上である請求項4〜6のいずれかに記載の錠剤。
【請求項8】
軽質無水ケイ酸の比表面積が300m2/g以上である請求項7記載の錠剤。
【請求項9】
軽質無水ケイ酸の添加量が、ビタミンB12類に対し、重量比で30倍〜100倍である請求項4〜8のいずれかに記載の錠剤。
【請求項10】
被覆層中に水溶性セルロース誘導体を含む請求項1〜9のいずれかに記載の錠剤。
【請求項11】
水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選択される1または2以上である請求項10記載の錠剤。
【請求項12】
水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項11記載の錠剤。
【請求項13】
水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルセルロースである請求項11記載の錠剤。
【請求項14】
素錠にビタミンB6類を含み、かつ被覆層中にビタミンB6類を含まない請求項1〜13のいずれかに記載の錠剤。
【請求項15】
素錠にビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類およびビタミンE類の1または2以上を含み、かつ被覆層中にビタミンB12類、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項1〜13のいずれかに記載の錠剤。
【請求項16】
錠剤中にα化デンプン類および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをいずれも含まず、かつビタミンB12類および軽質無水ケイ酸を含む錠剤。
【請求項17】
ビタミンB12類および中性の賦形剤を含む被覆層形成用組成物。
【請求項18】
ビタミンB12類、中性の賦形剤および水溶性セルロース誘導体を含む請求項17記載の被覆層形成用組成物。
【請求項19】
中性の賦形剤が軽質無水ケイ酸である請求項17または18記載の被覆層形成用組成物。
【請求項20】
ビタミンB12類を安定化させるための軽質無水ケイ酸の使用。

【公開番号】特開2007−223972(P2007−223972A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48816(P2006−48816)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】