説明

ビフェニル及びテルフェニル化合物、該化合物を含有する重合性液晶組成物

【課題】 重合性液晶組成物を構成した場合他の液晶化合物と優れた溶解性を有し、更に、前記重合性液晶組成物を硬化させた場合の耐熱性に優れた重合性化合物を提供する。
【解決手段】 一般式(I)
【化1】


で表される重合性液晶化合物を提供する。本願発明の重合性液晶化合物は、他の液晶化合物との優れた溶解性を有することから重合性組成物の構成部材として有用である。又、本願発明の重合性化合物を含有する重合性成物は、液晶相温度範囲が広く当該重合性組成物を用いた光学異方体は、耐熱性が高く、偏向板、位相差板等の用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合性化合物、当該化合物を含有する重合性液晶組成物及び当該重合性組成物を用いた光学異方体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進展に伴い液晶ディスプレイに必須な偏向板、位相差板などに用いられる光学補償フイルムの重要性は益々高まっている。また、耐久性が高く、高機能化が求められる光学補償フイルムには重合性の液晶組成物を重合させる例が報告されている。光学補償フイルム等に用いる光学異方体は目的により異なるので目的にあった特性を有する化合物が必要である。また光学特性だけでなく化合物の重合速度、溶解性、融点、ガラス転移点、重合物の透明性、機械的強度、表面硬度及び耐熱性なども重要な因子となる。
【0003】
重合性液晶組成物を構成する化合物として従来は、1,4−フェニレン基をエステル結合によって連結した構造を有する化合物(特許文献1参照)や、フルオレン基を有する化合物(特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、当該引用文献記載の重合性化合物は溶解性が低い等の問題があった。一方、溶解性を向上させるために構造を非対称とした重合性化合物が開示されており(特許文献3参照)、従来の重合性化合物と比較して溶解性の点で改善がなされているものの十分でなく、また耐熱性や機械強度が低い等の問題があった。
【0004】
【特許文献1】特表平10−513457号公報
【特許文献2】特開2005−60373公報
【特許文献3】特表平2001−527570公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、重合性液晶組成物を構成した場合他の液晶化合物と優れた溶解性を有し、更に、前記重合性液晶組成物を硬化させた場合の耐熱性に優れた重合性化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは重合性化合物における種々の置換基の検討を行った結果、特定の構造を有する重合性化合物が前述の課題を解決できることを見出し本願発明を完成するに至った。
本願発明は、一般式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、RおよびRは下記の式(R-1)から式(R-15)で表される重合性基
【0009】
【化2】

【0010】
から選ばれる置換基を表し、SおよびSはお互い独立して、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子に置き換えられても良い炭素数2〜10のアルキレン基、又は単結合を表し、L、L、L、Lはお互い独立して、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−又は−C≡C−を表すが(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、L、およびLの少なくとも1つは―COOC−、―OCOC−、−COCO−又は−CCOO−を表し、MおよびMはお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、MおよびMはお互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、X〜Xは、水素原子又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基を表し、pは1又は2を表す。)表される重合性化合物及び当該化合物を用いた重合性液晶組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の重合性化合物は、他の液晶化合物との優れた溶解性を有することから重合性組成物の構成部材として有用である。又、本願発明の重合性化合物を含有する重合性成物は、液晶相温度範囲が広く当該重合性組成物を用いた光学異方体は、耐熱性が高く、偏向板、位相差板等の用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般式(1)において、RおよびRはお互い独立して式(R−1)から式(R−15)で表される重合性基を表すし、
これらの重合基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合、およびアニオン重合により硬化する。
【0013】
特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(R−1)、式(R−2)、式(R−4)、式(R−5)、式(R−7)、式(R−11)、式(R−13)又は式(R−15)が好ましく、式(R−1)、式(R−2)、式(R−7)、式(R−11)又は式(R−13)がより好ましく、式(R−1)又は式(R−2)が特に好ましい。
【0014】
およびSはお互い独立して酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子に置き換えられても良い炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、液晶性および他の液晶化合物との相溶性の観点から炭素数3〜8のアルキレン基がより好ましい。
【0015】
、L、LおよびLはお互い独立して、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−又は−C≡C−を表すが(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、−O−、―COO−、−OCO−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−又は―CHCOO−が好ましく、Lが−COCO−を表しLが―OCOC−を表す組み合わせが特に好ましい。
【0016】
およびMはお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、MおよびMはお互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良いが、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表すことが好ましく、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基を表すことが好ましく、1,4−フェニレン基を表すことが特に好ましい。
【0017】
、X、X、X、X、X、XおよびXは、水素又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基を表すが、X、X、X、X、X、X、XおよびXの少なくとも一つがメチル基、エチル基、フルオロ基、クロル基、メトキシ基又はシアノ基を表すことが好ましく、メチル基、フルオロ基、クロル基又はメトキシ基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが特に好ましい。
【0018】
pは1又は2を表すが、液晶性及び耐熱性の観点からpが2であることがより好ましい。
【0019】
一般式(I)で表される化合物は、より具体的には、下記の一般式(I−1)〜一般式(I−17)で表される。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
本発明の化合物は以下の合成方法で合成することができる。
(製法1) 一般式(I−7)で表される化合物の製造
trans−p−クマリン酸と6−クロロヘキサノールを水酸化ナトリウムなど適当な塩基の存在下でエーテル化させた後、酸触媒を用いた3−クロロプロピオン酸とのエステル化反応させてクマリン酸誘導体(S−3)を得る。更に、パラジウムカーボンを触媒とする水素添加反応により不飽和結合を水添し、過剰のトリエチルアミンにより脱塩化水素させてフェニルプロピオン酸誘導体(S−5)を得ることができる。
【0024】
【化6】

一方、(p−ヒドロキシフェニル)ボロン酸と4−ブロモ−2−フルオロフェノールの鈴木−宮浦カップリング反応によりビフェノール化合物(S−7)を得る。
【0025】
【化7】

【0026】
得られたフェニルプロピオン酸誘導体(S−5)およびビフェノール化合物(S−7)をジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いてエステル化反応させ目的の化合物(I−7)を得ることができる。
【0027】
【化8】

【0028】
(製法2) 一般式(I−11)で表される化合物の製造
trans−p−クマリン酸とジエチレングリコール モノクロロヒドリンを水酸化ナトリウムなど適当な塩基の存在下でエーテル化させた後、酸触媒を用いた3−クロロプロピオン酸とのエステル化反応させてクマリン酸誘導体(S−9)を得る。更に、パラジウムカーボンを触媒とする水素添加反応により不飽和結合を水添し、過剰のトリエチルアミンにより脱塩化水素させてフェニルプロピオン酸誘導体(S−11)を得ることができる。
【0029】
【化9】

一方、(p−ヒドロキシフェニル)ボロン酸と1,4−ジブロモ−2−フルオロベンゼンの鈴木−宮浦カップリング反応によりテルフェノール化合物(S−12)を得る。
【0030】
【化10】

【0031】
得られたフェニルプロピオン酸誘導体(S−11)とテルフェノール化合物(S−12)をジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いてエステル化反応させ目的の化合物(I−11)を得ることができる。
【0032】
【化11】

本願発明の化合物は、ネマチック液晶、スメクチック液晶、キラルネマチック、キラルスメクチック、およびコレステリック液晶組成物に使用できる。本願発明の化合物を用いる液晶組成物において、本発明以外の重合性化合物を添加しても構わない。
【0033】
本発明の重合性液晶組成物中に含まれる重合性液晶化合物としては、重合性官能基としてアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基を有するものが好ましい。重合性液晶化合物としては、重合性官能基を分子内に2つ以上持つものが好ましい。このような2官能以上の化合物としては、一般式(II)
【0034】
【化12】

【0035】
(式中、W1及びW2はそれぞれ独立的に単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、Y3及びY4はそれぞれ独立的に−COO−又は−OCO−を表し、r及びsはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表し、式中の1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される化合物が好ましい。一般式(II)で表される化合物の中でも、(II-1)〜(II-8)で表される化合物が特に好ましい。
【0036】
【化13】

【0037】
(式中、rおよびsは一般式(II)における意味と同じ意味を表す。)
一般式(II-1)〜(II-8)において、rおよびsはそれぞれ独立的に3〜6の整数が特に好ましい。
また、一般式(III)
【0038】
【化14】

【0039】
(式中、W、およびWはそれぞれ独立的に単結合、−O−、−COO−、又は−OCO−を表し、Y5、は−COO−、又は−OCO−を表し、p、およびqはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表し、式中に存在する3種の1,4−フェニレン基の水素原子はそれぞれ独立的に、炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される化合物も好ましい。一般式(III)で表される化合物の中でも、一般式(III-1)〜一般式(III-8)で表される化合物が特に好ましい。
【0040】
【化15】

【0041】
(式中、pおよびqは一般式(III)における意味と同じ意味を表す。)
このような化合物の中でも耐熱性や耐久性の点から、一般式(III-2)、(III-5)、(III-6)、(III-7)、(III-8)の化合物が好ましく、一般式 (III-2)の化合物が特に好ましい。
この他にも重合性官能基を分子内に2つ以上持つ重合性液晶化合物としては、一般式(a-1) 〜 一般式(a-9)のような化合物を含有させることができる。
【0042】
【化16】

【0043】
(式中、uおよびvはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す)
(式中、uおよびvはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す)
これらの中でも、一般式(a-2)、(a-3)の化合物の利用は好ましい。uおよびvはそれぞれ独立的に3〜18が好ましく、4〜16が好ましく、6〜12がさらに好ましい。
さらに、液晶温度範囲や複屈折率の調節、粘度低減を目的として一般式(IV)
【0044】
【化17】

【0045】
(式中、eは0〜18の整数を表し、eが0又は1のときfは0を表し、eが2〜18のとき、fは0又は1の整数を表し、iは0〜2の整数を表し、C、DおよびEはそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基又はフルオレン2,7-ジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基及びフルオレン2,7-ジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CF3、OCF3又はCH3を有することができ、Y6 及びY7はそれぞれ独立的に、単結合、-COO-、-OCO-、-CH=N-、-N=CH-、-C≡C-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-CH=CH-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH=CHCH2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH2CH2OCO-又は-COOCH2CH2-を表し、Y8は単結合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-CONH-、-NHCO-、-CH2COO-又は-CH2OCO-を表し、Zは炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、ハロゲン原子、CN又はNCSを表し、該アルキル基又はアルケニル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CN、CH3又はCF3を有することができ、該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、O、CO又はCOOで置換されていてもよい。)で表される単官能の重合性化合物を添加することもできる。その添加量は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。一般式(IV)で表される化合物の中でも、一般式(IV-1)〜(IV-11)で表される化合物が特に好ましい。
【0046】
【化18】

【0047】
(式中、eおよびfは一般式(IV)における意味と同じ、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数2〜12のアルケニル基を表す。)
更に、コレステリック液晶組成物等に用いる場合は、重合性キラル化合物の添加量は、0.1〜40質量%が好ましい。さらに本発明の重合性液晶組成物には、重合性官能基を有する化合物であって、液晶性を示さない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で高分子形成性モノマーあるいは高分子形成性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができるが、その添加量は組成物として液晶性を呈するように調整する必要がある。
【0048】
また、本発明の重合性液晶組成物中における光重合開始剤の濃度は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がさらに好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0049】
また、本発明の重合性液晶組成物には、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物に対して0.005〜1質量%の範囲が好ましく、0.02〜0.5質量%がさらに好ましい。
【0050】
また、本発明の重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて金属、金属錯体、染料、顔料、色素、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等を添加することもできる。
【0051】
次に本発明の光学異方体について説明する。本発明の重合性液晶組成物を重合させることによって製造される光学異方体は種々の用途に利用できる。例えば、本発明の重合性液晶組成物を、配向させない状態で重合させた場合、光散乱板、偏光解消板、モアレ縞防止板として利用可能である。また、本発明の重合性液晶組成物を配向させた状態において、重合させることにより製造された光学異方体は、物理的性質に光学異方性を有しており、有用である。このような光学異方体は、例えば、本発明の重合性液晶組成物表面を、布等でラビング処理した基板、もしくは有機薄膜を形成した基板表面を布等でラビング処理した基板、あるいはSiOを斜方蒸着した配向膜を有する基板上に担持させるか、基板間に挟持させた後、本発明の液晶を重合させることによって製造することができる。
【0052】
重合性液晶組成物を基板上に担持させる際の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、プリント法等を挙げることができる。またコーティングの際、重合性液晶組成物に有機溶媒を添加しても良い。有機溶媒としては、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、セロソルブ類を挙げることができる。これらは単独でも、組み合わせて用いても良く、その蒸気圧と重合性液晶組成物の溶解性を考慮し、適宜選択すれば良い。添加した有機溶媒を揮発させる方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。重合性液晶材料の塗布性をさらに向上させるためには、基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けることや、重合性液晶材料にレベリング剤を添加するのも有効である。基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けるのは、重合性液晶材料を重合させて得られる光学異方体と基板の密着性が良くない場合に、密着性を向上させる手段としても有効である。
【0053】
ラビング処理、あるいはSiOの斜方蒸着以外の配向処理としては、液晶材料の流動配向の利用や、電場又は磁場の利用を挙げることができる。これらの配向手段は単独で用いても、また組み合わせて用いても良い。さらに、ラビングに代わる配向処理方法として、光配向法を用いることもできる。基板の形状としては、平板の他に、曲面を構成部分として有していても良い。基板を構成する材料は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。基板の材料となる有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、トリアセチルセルロース、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、また、無機材料としては、例えば、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。
【0054】
これらの基板を布等でラビングすることによって適当な配向性を得られない場合、公知の方法に従ってポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビングしても良い。また、電場によって配向状態を制御する場合には、電極層を有する基板を使用する。この場合、電極上に前述のポリイミド薄膜等の有機薄膜を形成するのが好ましい。
【0055】
本発明の重合性液晶組成物を重合させる方法としては、迅速な重合の進行が望ましいので、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することによって重合させる方法が好ましい。紫外線を使用する場合、偏光光源を用いても良いし、非偏光光源を用いても良い。また、液晶組成物を2枚の基板間に挟持させて状態で重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は活性エネルギー線に対して適当な透明性が与えられていなければならない。また、光照射時にマスクを用いて特定の部分のみを重合させた後、電場や磁場又は温度等の条件を変化させることにより、未重合部分の配向状態を変化させて、さらに活性エネルギー線を照射して重合させるという手段を用いても良い。また、照射時の温度は、本発明の重合性液晶組成物の液晶状態が保持される温度範囲内であることが好ましい。特に、光重合によって光学異方体を製造しようとする場合には、意図しない熱重合の誘起を避ける意味からも可能な限り室温に近い温度、即ち、典型的には25℃での温度で重合させることが好ましい。活性エネルギー線の強度は、0.1mW/cm〜2W/cmが好ましい。強度が0.1mW/cm以下の場合、光重合を完了させるのに多大な時間が必要になり生産性が悪化してしまい、2W/cm以上の場合、重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物が劣化してしまう危険がある。
【0056】
重合によって得られた本発明の光学異方体は、初期の特性変化を軽減し、安定的な特性発現を図ることを目的として熱処理を施すこともできる。熱処理の温度は50〜250℃の範囲で、また熱処理時間は30秒〜12時間の範囲が好ましい。
【0057】
このような方法によって製造される本発明の光学異方体は、基板から剥離して単体で用いても、剥離せずに用いても良い。また、得られた光学異方体を積層しても、他の基板に貼り合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0059】
(実施例1)
撹拌装置、還流冷却管、及び温度計を備えた反応容器にtrans−p−クマリン酸 30g(183ミリモル)、ヨウ化カリウム 3g、エタノール 80mlを仕込み室温で撹拌した。水酸化ナトリウム 16gを溶解させた水溶液 80mlをゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を80℃に保ち、6−クロロヘキサノール 41.3g(274ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を更に80℃に保って更に15時間反応させた。反応終了後、10%塩酸で中和して酢酸エチルを80ml加えてから、氷冷下で3時間撹拌した。ろ過後、得られた結晶を水、エタノール、酢酸エチルで順次洗浄してから乾燥させて、式(1)に示す化合物(中間体1)を42g合成した。
【0060】
【化19】

【0061】
次いで、撹拌装置、還流冷却管及びディーンスターク水分離器を備えた反応容器に、上記で合成した(中間体1)を36.7g(139ミリモル)、3−クロロプロピオン酸 30.1g(277ミリモル)、p−トルエンスルホン酸 2.5g、トルエン 150ml、ヘキサン 150mlを仕込んだ。反応容器を加熱して還流させそのまま5時間反応させた。反応終了後、反応液を水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、エタノールで再結晶を行い、式(2)に示す化合物(中間体2)38gを得た。
【0062】
【化20】

【0063】
撹拌装置を備えたオートクレーブ容器に上記で合成した(中間体2)を38g(108ミリモル)、5%パラジウムカーボン 3.8g、酢酸エチル 200ml、エタノール 200mlを仕込み、0.5mPaの圧力下、室温で水素還元反応(4時間)を行った。反応液をろ過した後、反応溶媒を留去して式(3)に示す化合物(中間体3)37.4gを得た。
【0064】
【化21】

【0065】
撹拌装置、還流冷却管、及び温度計を備えた反応容器に上記で合成した(中間体3)を20g(56ミリモル)、トリエチルアミン 28.5g、テトラヒドロフラン 100mlを仕込み、窒素雰囲気下で15時間加熱還流した。反応終了後、10%塩酸で中和して、酢酸エチルで抽出を行い、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して、式(4)に示す化合物(中間体4)を18g合成した。
【0066】
【化22】

【0067】
撹拌装置、還流冷却管、及び温度計を備えた反応容器に、4−ブロモ−2−フルオロフェノール 15g(79ミリモル)、(p−ヒドロキシフェニル)ボロン酸 16g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体 1.8g、炭酸カリウム 14g、水 100ml、テトラヒドロフラン 160mlを仕込み、窒素雰囲気下で11時間加熱還流した。反応終了後、10%塩酸で中和して酢酸エチルで抽出した。飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶で精製し、式(5)に示す化合物(中間体5)を5g合成した。
【0068】
【化23】

【0069】
撹拌装置、還流冷却管、及び温度計を備えた反応容器に、上記で合成した中間体(4)7.8g(24ミリモル)、中間体(5)2.5g(12ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 360mg、塩化メチレン 50mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち、窒素雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 3.7g(29ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し一晩反応させた。反応液をろ過した後、ろ液を10%塩酸水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶で精製し、式(6)に示す目的の化合物 6.7gを得た。
【0070】
【化24】

【0071】
Cr 110 N 123 I
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:7.53(m,2H),7.30(m,2H),7.18(d,4H),7.09(m,3H),6.85(d,4H),6.40(dd,2H),6.13(dd,2H),5.81(dd,2H),4.17(t,4H),3.95(t,4H),3.03(m,4H),2.89(m,4H),1.80(m,4H),1.71(m,4H),1.48(m,8H).
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:171.2,170.3,166.1,157.5,150.3,136.9,131.8,130.4,129.2,128.5,128.0,123.8,122.8,121.9,121.7,115.3,115.1,114.5,67.8,64.5,36.4,35.9,30.2,30.1,29.3,28.6,25.8.
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1765,1652−1622,810
(融点)110℃
【0072】
(実施例2)
撹拌装置、還流冷却管、及び温度計を備えた反応容器に、1,4−ジブロモ−2−フルオロベンゼン 12g(48ミリモル)、(p−ヒドロキシフェニル)ボロン酸 20g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体 1.1g、炭酸カリウム 9g、水 70ml、テトラヒドロフラン 130mlを仕込み、窒素雰囲気下で14時間加熱還流した。反応終了後、10%塩酸で中和して酢酸エチルで抽出した。飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶で精製し、式(7)に示す化合物(中間体7)を6g合成した。
【0073】
【化25】

【0074】
撹拌装置、還流冷却管、及び温度計を備えた反応容器に、実施例1で合成した中間体(4)7.8g(24ミリモル)、上記で合成した中間体(7)3.4g(12ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 360mg、塩化メチレン 60mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち、窒素雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 3.7g(29ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し一晩反応させた。反応液をろ過した後、ろ液を10%塩酸水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶で精製し、式(6)に示す目的の化合物 7.5gを得た。
【0075】
【化26】

【0076】
Cr 155 N 205 I
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:7.59(m,4H),7.48(t,1H),7.37(m,2H),7.19(d,4H),7.09(d,4H),6.86(d,4H),6.40(dd,2H),6.12(dd,2H),5.81(dd,
2H),4.17(t,4H),3.95(t,4H),3.04(t,4H),2.88(t,4H),1.80(m,4H),1.71(m,4H),1.48(m,8H). 13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:171.3,157.6,131.9,130.8,130.4,129.9,129.8,129.2,128.5,127.9,122.8,122.0,121.5,114.5,114.4,67.8,64.5,36.4,30.2,29.3,28.7,25.9.
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1765,1652−1622,810.
(融点)155℃
【0077】
(実施例3)
撹拌装置、還流冷却管、及び温度計を備えた反応容器にtrans−p−クマリン酸 30g(183ミリモル)、ヨウ化カリウム 3g、エタノール 100mlを仕込み室温で撹拌した。水酸化ナトリウム 16gを溶解させた水溶液 100mlをゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を80℃に保ち、ジエチレングリコール モノクロロヒドリン 34g(274ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を更に80℃に保って更に19時間反応させた。反応終了後、10%塩酸で中和して酢酸エチルを50ml加えてから、氷冷下で3時間撹拌した。ろ過後、得られた結晶を水、エタノールで順次洗浄してから乾燥させて、式(8)に示す化合物(中間体8)を10g合成した。
【0078】
【化27】

【0079】
撹拌装置、還流冷却管及びディーンスターク水分離器を備えた反応容器に、上記で合成した(中間体8)を9.5g(38ミリモル)、3−クロロプロピオン酸 8.2g(76ミリモル)、p-トルエンスルホン酸 0.7g、トルエン 40ml、ヘキサン 40mlを仕込んだ。反応容器を加熱して還流させそのまま5時間反応させた。反応終了後、反応液を水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、式(9)に示す化合物(中間体9)12gを得た。
【0080】
【化28】

【0081】
撹拌装置を備えたオートクレーブ容器に上記で合成した(中間体9)を12g(34ミリモル)、5%パラジウムカーボン 1.2g、酢酸エチル 150ml、エタノール 100mlを仕込み、0.5mPaの圧力下、室温で水素還元反応(4時間)を行った。反応液をろ過した後、反応溶媒を留去して式(10)に示す化合物(中間体10)12gを得た。
【0082】
【化29】

【0083】
撹拌装置、還流冷却管、及び温度計を備えた反応容器に上記で合成した(中間体10)を12g(35ミリモル)、トリエチルアミン 18g、テトラヒドロフラン 90mlを仕込み、窒素雰囲気下で6.5時間加熱還流した。反応終了後、10%塩酸で中和して、酢酸エチルで抽出を行い、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。アセトン/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、式(11)に示す化合物(中間体11)を8.7g合成した。
【0084】
【化30】

【0085】
撹拌装置、還流冷却管、及び温度計を備えた反応容器に、上記で合成した中間体(11)4.7g(15ミリモル)、実施例1で合成した中間体(7)2.1g(7ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 200mg、塩化メチレン 40mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち、窒素雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 2.3g(18ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し一晩反応させた。反応液をろ過した後、ろ液を10%塩酸水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶で精製し、式(12)に示す目的の化合物 4.2gを得た。
【0086】
【化31】

Cr 133 N 190 I
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:7.59(m,4H),7.48(t,1H),7.37(m,2H),7.19(d,4H),7.11(d,4H),6.89(d,4H),6.43(dd,2H),6.15(dd,2H),5.83(d,2H),4.35(t,4H),4.13(t,4H),3.87(t,4H),3.82(t,4H),3.04(t,4H),2.88(t,4H).
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:171.4,166.1,157.4,150.5,150.2,132.4,131.0,130.9,130.0,129.4,128.2,128.0,122.9,122.0,121.6,114.8,114.5,69.7,69.3,67.5,63.6,36.3,30.1.
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1765,1652−1622,810.
(融点)133℃
(実施例4)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物1)を調製した。
【0087】
【化32】

【0088】
重合性液晶組成物は、良好な相溶安定性を有し、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を2%添加して重合性液晶組成物(組成物2)を調製した。この組成物2のシクロヘキサノン溶液を、ポリイミド付きガラスにスピンコートし、これに高圧水銀ランプを用いて4mW/cmの紫外線を120秒間照射したところ、組成物2が均一な配向状態を保ったまま重合し、光学異方体が得られた。この光学異方体の表面硬度(JIS−S−K−5400による)はHであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、240℃、1時間加熱後の位相差は81%であり、位相差減少率は19%だった。
(比較例1)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物3)を調製した。
【0089】
【化33】

【0090】
重合性液晶組成物は、ネマチック液晶相を示したが、溶解性が悪く室温1時間で結晶が析出した。
(比較例2)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物4)を調製した。
【0091】
【化34】

【0092】
重合性液晶組成物は、良好な相溶安定性を有し、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を2%添加して重合性液晶組成物(組成物5)を調製した。この組成物4のシクロヘキサノン溶液を、ポリイミド付きガラスにスピンコートし、これに高圧水銀ランプを用いて4mW/cmの紫外線を120秒間照射したところ、組成物4が均一な配向状態を保ったまま重合し、光学異方体が得られた。この光学異方体の表面硬度(JIS−S−K−5400による)は4Bであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、240℃、1時間加熱後の位相差は72%であり、位相差減少率は28%だった。
【0093】
このように、比較例2の組成物4は、本願発明の組成物1と比較して、作製できる光学異方体の位相差減少率が大きく、耐熱性に劣ることが明らかである。又、表面硬度も4Bと不十分なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、RおよびRはお互い独立して、下記の式(R-1)から式(R-15)で表される重合性基
【化2】

から選ばれる置換基を表し、SおよびSはお互い独立して、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子に置き換えられても良い炭素数2〜10のアルキレン基、又は単結合を表し、L、L、L、Lはお互い独立して、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−又は−C≡C−を表すが(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、L、およびLの少なくとも1つは―COOC−、―OCOC−、−COCO−又は−CCOO−を表し、MおよびMはお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、MおよびMはお互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、X〜Xは、水素原子又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基を表し、pは1又は2を表す。)表される重合性化合物。
【請求項2】
およびMはお互い独立して、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表し、X〜Xの何れか一つが、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン基を表す請求項1記載の重合性化合物。
【請求項3】
およびLがお互い独立して、―COOC−、―OCOC−、−COCO−又は−CCOO−を表し、L、およびLがお互い独立して、−O−、−S−、―COO−又は−OCO−を表す請求項1又は2記載の重合性液晶化合物。
【請求項4】
およびSが炭素数2〜10のアルキレン基を表す請求項1から3記載の重合性化合物。
【請求項5】
請求項1から4記載の重合性化合物を含有する重合性液晶組成物。
【請求項6】
請求5記載の重合性液晶組成物を用いた光学異方体。

【公開番号】特開2008−239873(P2008−239873A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84458(P2007−84458)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】