説明

ビレットのバリ、カエリ除去装置

【課題】切断後のビレットにバリ除去、カエリ除去をして、高品質の鍛造品を得ることが可能で、しかも大量生産ができるビレットのバリ、カエリ除去装置を提供する。
【解決手段】本発明のビレットのバリ、カエリ除去装置は、搬入コンベア4により切断されたビレット3を供給する。定位置に位置決めされたビレットを開閉自在な把持装置5,6により把持する。把持ローラー31により回転可能に把持されたビレットを上下移動装置17により上昇させ、一対のベルト研削装置11,12へ水平移動装置8により移動させる。移動過程でビレット両端部の縁部のバリ、カエリを同時に研削ベルト13で除去する。バリ、カエリの除去されたビレットを搬出コンベア9,10で搬出する。搬出されたビレットをビレット回収装置18で搬入コンベア4に戻す形で回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、せん断により切断されたビレットのバリ、カエリの除去を行う除去装置に関する。更に詳しくは、せん断により切断されたビレットの両端面縁部のバリ、カエリの除去をベルト研削により同時に行う除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品である鍛工品(鍛造品)を製造するには、先ずその素材である例えば棒鋼、丸棒とよばれる断面形状が円形の定尺金属材料(一般に長さ5.5メートル)から、その一部品単位の必要分量に相当する重量のもの、言い換えると、ビレットと称する必要長さのものを切断して取り出す工程、いわゆる素材取り工程が必要である。この工程の素材取り方法には種々の方法があるが、最も一般化しているのは、鋸刃切断又は通称シャーせん断と称されるプレス式切断である。
【0003】
取り出された円柱状短尺部材は、専門的にはビレットと称されている。ビレットは、その後の処理工程において、加熱炉で加熱されるか、あるいは熱を加えず常温のままでプレスの金型に投入されてほぼ目的形状に加圧成形される。このような鍛造工程を経た後、機械加工工程を経て製品に完成されるのが、一般的鍛工品の製造工程である。鍛工品は前述のとおり、多くの工程を経て完成される。
【0004】
従って、それぞれの工程において、製造者、製造依頼者の望む品質のものを順を追って完成させなければならない。最終的には欠陥を含まない製品にしなければならない。もし製造工程の途中で加工品に欠陥が生じ、この欠陥のある状態のまま次工程に進行させると、後工程の全てにおいて前の欠陥工程の影響を受け、最終的に、製品が欠陥品となってしまう。このようになってしまっては途中で正常な製品にすることはできない。
【0005】
特に、前述の一連の工程の前段階に当たる素材取り工程において得られるビレットの品質の良し悪しが製品の品質に影響を与える。もし品質の悪いビレットであると、そのまま品質の悪い製品に結びつく。このため、高い品質のものがはじめから求められているのである。悪い例の多くは、例えば素材取り工程において得られたビレットについて述べると、その素材取り方法の如何に関わらず、その切断面と素材外側面の交わる円周稜線部(以下「縁部」という)に加工残渣として、「バリ」、「カエリ」と称される異物が張り出し、その縁部に付着残留する。
【0006】
「バリ」は、切断時に切断工具との摩擦熱で素材の一部が溶融流動して凝固付着したものや、切断工具による切り残しや、切断工具により変形させられ流動したもの等である。又、「カエリ」は、突き当て部材に当接して変形したもの等である。即ち、元の素材形状域から離れ逸脱したものである。図13は、「バリ」の発生例を説明するための説明図で、図14は「カエリ」の発生例を説明するための説明図である。図15は、「バリ」、「カエリ」が発生したビレットの例を説明するための説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【0007】
バリ90、90aは、図13、14に示すように、切断工具の可動側切断刃91が固定側切断刃92との間で、相対的動作により切断されビレット93を製造したときに、その切断端面の縁部に張り出して形成される残渣である。カエリ94は、図14に示すように、切断されたビレット93がストッパー95等に突き当てられたときに、そのストッパーに突き当てられた端面の縁部に張り出して形成された残渣である。丸棒材の場合、バリ、カエリの形状はともに、切断方向に沿った端面の縁部に外方へ張り出し形成される残渣となるものである(図15参照)。なお、図15における94a、94aは、ビレット93に「ヒケ」が発生している部位を示している。
【0008】
切断されたビレット全てにこの現象が発生するものではないが、鋸切断においては、切断工具である鋸刃が許容使用限度(許容磨耗値)を超えて磨耗しているにも関わらず、この鋸刃をさらに使用した場合に発生する。又、シャー切断においては、その切断工具であるせん断刃のエッジが許容使用限度(許容磨耗値)を超えて磨耗しているにも関わらず、このせん断刃をさらに継続使用した場合に発生する。
【0009】
いずれもバリ、カエリが発生する。ビレットにバリやカエリが付着したものを、そのまま次工程の加熱炉に投入すると、加熱炉内で燃焼消滅する場合と、溶融することでさらに付着が強固になる場合とがある。後者の場合は次工程のプレス成形後の製品において、その製造工程の過程で鍛工品表層部に剥離現象や亀裂の誘因となるキズ等の不具合部分を内在させることになる。この不具合部分は、切断後ビレットを加熱せずに冷間鍛造プレスのプレス機に投入した場合でもそのまま残り同様の欠陥が生じる。
【0010】
このような不具合を生じさせないようにするためには、常に良好状態を保つように切断工具のメンテナンス管理を厳密に行わなければならない。そのためには、管理作業者が常に工具の磨耗状況の監視することを必要とする。また、工具においては、工具寿命の安全圏内で早めの交換を行うことを必要とする。これは、管理作業者が頻繁な数の監視を行うこと、工具の不経済と思われる見切り交換を行うこと等を必要とする。しかし、これらのことを実施したとしても、バリ、カエリなしのビレットを完全な形で得ることは困難である。
【0011】
このため、一部の使用者は切断されたビレットを選別することなく全品にわたり有人による目視検査を行って、バリ、カエリの発生しているビレットを摘出し、ハンドグラインダーでその都度修正除去を行っている。このような作業は過大な手作業の労力と時間を要し煩雑でコストアップになるので、使用者によっては切断後に、ビレット全品を一括して全自動ショットピーニング装置にかけその除去処理を行っているところもある。
【0012】
この全自動ショットピーニング装置は、本来鍛造工程を完了した鍛工品の酸化皮膜を除去し、又、表面を硬化させることを目的とするものである。その装置をバリ、カエリの除去に流用しても、自動とはいえ処理時間に長時間を要し、従って加工コストが上昇し、非常に不経済な処理工程となる。切断後に発生するバリ、カエリの除去を目的とする専用の工具や専用機も市場に多数存在する。
【0013】
しかし、その除去対象部材は、製鋼所等材料製造元で製造される5.5メートルの定尺丸棒材、角形棒鋼材、パイプ材、アングル材、H形鋼材、アルミサッシ材等のような比較的長い長尺製品の長尺押し出し材、又は圧延材を対象としている。それらの完成直前の品質保持のため、バリ、カエリ取りの手動工具やバリ取り専用機を利用している場合が殆どである。即ち、その処理は、それら長尺製品の最終工程である定尺切断工程後に、鍛工品端部に発生するバリやカエリを除去するものである。
【0014】
又、設備として丸棒材では自動バイト旋削機等で面取り加工まで行う専用機を設置している場合もあるが、現状において通常は手作業で対応している。一般に、バリ、カエリを取る工具としては、ワイヤーブラシ、砥石、紡錘ドリル、コップ形ドリル、バイト等のものがある。一方、本発明に関わる装置の対象部材は、例えば、前述の棒鋼、丸鋼の定尺材を、材料製造元(例えば、製鋼所)より供給を受けた各鍛造工場で、その直径の1〜3倍程度の長さに短く切断したビレットを対象にするものである。本発明の対象工具は、ベルトグラインダーである。このベルトグラインダーは、例えば、靴屋、木材加工等で使用されているベルトサンダーに類似したものである。
【0015】
鍛工品は、例えば自動車部品の大量生産品であり、プレス金型に多くの費用をかけて生産するため、通常一品目の生産量は数千個から数百万個という単位のものである。このため、バリ、カエリの除去や面取りを必要とするビレットの形状は、短円柱形状で扱いやすいとはいうものの、前述のように手作業や既存の専用機では能率が悪く非効率である。以上のように、従来から切断されたビレットの端面処理は行われているが、比較的長尺ものの適用例が多い。
【0016】
バリ、カエリの発生する切断に関して、本出願人は、せん断による切断技術を提案している(特許文献1参照)。このように切断された丸棒材等のバリ取り等は、面取りと称する加工例を含めその適用例は多く知られている。例えば、面取りとして、本出願人は、一定の長さに切断された金属製丸棒の両端面部の面取りを回転する切削刃により行う技術を提案している(特許文献2参照)。この技術は、丸棒の端面と刃物の回転部の端面を同軸上に位置させたまま、いずれか一方を他方の端面に当接させ面取りを行う構成のものである。しかし、刃物は研削ベルトを用いたものではない。
【0017】
又、面取りの例であるが、角形断面を有する平角材を対象として角部の面取りを行いパレットへ搬送する装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この装置は、平角材の両端部の面取りを、砥石を有する研削工具により移行過程で行っている。この面取りは、強制的にある程度の量を剥ぎ取る構成の加工形態のものである。同様に、丸棒端面の面取り装置として、面取り角を可変にし、位置センサを設けて位置を検出し砥石により面取りを行う装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0018】
この装置は、丸棒材の片側の端面のみの面取りを行うものである。又、研削ベルトを使用して、バリ取りを行う装置も公知である(例えば、特許文献5参照)。長尺ワークの片面であるが、複数のワークを強制的に回転させ、回転支持されながら一定方向に搬送する装置に対し、直角方向から回動する研削ベルトをワークに押し付け、ワークのバリ取りを行う装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平06−79519号公報
【特許文献2】特開平08−25123号公報
【特許文献3】特開平06−55425号公報
【特許文献4】特開平08−1492号公報
【特許文献5】特開平11−114796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このように、切断された丸棒鋼材等はビレットと称し、鍛工品の素材となるものである。このビレットには、通常その断面と素材外側面の交わる円周稜線部、別の表現でいうと、端面の縁部に切断残渣としてバリ、カエリが生じる。いずれも張り出し部を形成するが、前述したようにバリは主として切断直後に生じる切断残渣であり、カエリは主として切断後にビレットがストッパー等に当接し押圧されたときに生じる残渣である。
【0021】
前述の従来例において、本出願人もビレットの両端面の縁部の面取りを行う構成のものを提示しているが、切削刃による面取りであり、ビレットを移動中に連続して研削等によりバリ、カエリ等を除去する構成のものではなく、又大量生産向きの構成ではない。
【0022】
さらに、平角材の両面の角部の面取りを行う構成のものは、砥石により行う面取り構成であって、搬送形態はパレットに搬送するものである。大量生産に対応する形態としては、必ずしも効率的な構成とはいえないものである。このように従来のバリ取り、カエリ取り等の技術は、特にビレットの両面の縁部を短時間で大量に処理を行う点において、満足すべき技術とは言いがたいものであった。
【0023】
本発明は、前述した従来技術の現状に鑑み、主として鍛造用として供給されるビレットに発生するバリ、カエリの除去を行う目的で開発したものであり、高能率に確実に大量生産のできるビレットのバリ、カエリの除去を行うバリ、カエリ除去装置を提供することにある。本発明のさらなる効果として、研削ベルト加工にすることで、それらバリ、カエリの除去後に、本装置の処理時間を継続延長する研削で、通称ビレットエッジと呼ばれる円柱体の両端面の縁部に丸みを与える形状にできることがある。
【0024】
即ち、本発明の装置を利用してバリ、カエリ、即ち一般加工形態でいうと面取りを含む加工が全自動でしかも大量の処理が可能となるのである。本発明の装置により面取りを含む加工を施すことにより、前述のように以後の加工工程をスムースに歩留まりよく円滑に行えるようにできるのみならず、さらに高品質の鍛工品を得ることが可能となる。ただし、鍛工品の種類によっては、バリ、カエリの除去のみを必要とする場合もある。あまり多くの面取りを与えてしまうと、鍛工品に欠肉と呼ばれる製品欠陥を招くことがあるためであり、一般的な形状の面取りまでは不要とする場合も多い。
【0025】
以上、ビレットのバリ、カエリの除去に関わる課題について説明したが、本発明は、前述のような技術背景のもとになされて開発されたものであり、下記目的を達成する。
【0026】
本発明の目的は、後工程の加工をスムースに歩留まりよく円滑に行えるようにし、さらに剥離現象や割れ、欠けを惹起するキズ等を内在しない強靭な高品質の鍛工品を得ることを可能としたビレットからバリ、カエリの除去を行うビレットのバリ、カエリ除去装置を提供することにある。
【0027】
本発明の他の目的は、バリ、カエリが除去されたビレットを大量に高能率に生産できるようにしたビレットのバリ、カエリ除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明1のビレットのバリ、カエリ除去装置は、切断されたビレットを供給するための搬入装置と、供給された前記ビレットを回転自在に把持する把持装置と、回動自在の研削ベルトを有し、この研削ベルトの研削面が、前記ビレットのバリ、カエリの除去位置に、相互に、傾斜状態で対向するように設置されている一対のベルト研削装置と、前記把持装置を、前記ビレットを把持する位置から前記一対のベルト研削装置の間を通過させ、前記把持装置に把持された前記ビレットをバリ、カエリの前記除去位置に移動させる移動装置と、バリ、カエリの除去された前記ビレットを搬出するための搬出装置とからなり、前記研削ベルトの前記研削面で、前記ビレットのバリ、カエリの除去を行えるようにしたことを特徴とする。
【0029】
本発明2のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明1において、前記搬入装置は、複数の前記ビレットを軸線方向に連続して整列させ供給する搬入コンベアであることを特徴とする。
【0030】
本発明3のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明1又は2において、前記搬入装置は、供給される前記ビレットを把持位置に位置決めするストッパーを有していることを特徴とする。
【0031】
本発明4のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明1又は2において、前記搬出装置は、複数の前記ビレットを軸線方向に連続して整列させ搬出する搬出コンベアであることを特徴とする。
【0032】
本発明5のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明1又は2において、前記把持装置は、前記ビレットを回転自在に挟持して把持する一対の把持ローラーを有していることを特徴とする。
【0033】
本発明6のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明1又は2において、前記把持装置は、前記一対のベルト研削装置への移動方向に対し直角方向に移動し前記バリ、カエリ除去位置に位置決めする上下移動装置を有していることを特徴とする。
前記搬入装置を挟み前記搬出装置の対向する反対対称位置に、第2の一対のベルト研削装置及び第2の搬出装置を設けたことを特徴とする。
【0034】
本発明7のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明1又は2において、前記一対のベルト研削装置は、対向する前記研削ベルトの研削面の間の距離を調整可能にする研削位置調整装置を設けていることを特徴とする。
【0035】
本発明8のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明1又は2において、前記搬出装置は、前記搬入装置を挟み対向する対称位置に設けられた同一構造の第1搬出装置と第2搬出装置とで構成されていることを特徴とする。
【0036】
本発明9のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明8において、前記一対のベルト研削装置は、前記搬入装置を挟み対向する対称位置に設けられ、前記第1搬出装置に対応する一対の第1ベルト研削装置と、前記第2搬出装置に対応する一対の第2ベルト研削装置とで構成されていることを特徴とする。
【0037】
本発明10のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明9において、前記把持装置は、前記第1ベルト研削装置に対応する第1把持装置と、前記第2ベルト研削装置に対応する第2把持装置とで構成されていることを特徴とする。
【0038】
本発明11のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明10において、前記移動装置は、前記第1把持装置が前記一対の第1ベルト研削装置の研削ベルト面間を通過する移動と、前記第2把持装置が前記一対の第2ベルト研削装置の研削ベルト面間を通過する移動とを、交互に往復移動させる装置であることを特徴とする。
【0039】
本発明12のビレットのバリ、カエリ除去装置は、本発明1から11において、前記搬出装置の搬出端に、バリ、カエリ取りされた前記ビレットを前記搬入装置に戻し回収搬送させるためのビレット回収装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明のビレットのバリ、カエリ除去装置は、把持装置により回転自在に把持されたビレットをベルト研削装置へ移動させながら両端面の縁部を同時に研削加工するようにしたものである。この構成により、両端面の縁部のバリ、カエリ取りが同時に高速で能率よく行えるようになった。そのため大量生産に対応できる装置となり、その結果、生産されるビレットは、高品質で変形量が少なく高精度のものとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明のビレットのバリ、カエリ除去装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明のビレットのバリ、カエリ除去装置の全体構成を示す正面図である。
【図3】図3は、本発明のビレットのバリ、カエリ除去装置の全体構成を示す側面図である。
【図4】図4は、把持装置を示す断面図で、把持爪がビレットを把持した状態を示す図である。
【図5】図5は、図4の側面を示す部分図である。
【図6】図6は、把持装置の部分図であって、把持爪が開放された状態を示す図である。
【図7】図7は、図2の背面図であって、水平移動装置を示す図である。
【図8】図8は、図1のA−A断面図で一対のベルト研削装置の構成を示す図である。
【図9】図9は、図8のB矢視図で、ベルト調整装置を示す図である。
【図10】図10は、図8のC−C断面図である。
【図11】図11は、ビレット回収装置を示す平面図である。
【図12】図12は、図11のE−E断面図である。
【図13】図13は、ビレットのバリの発生例を説明するための説明図である。
【図14】図14は、ビレットのカエリの発生例を説明するための説明図である。
【図15】図15は、バリ、カエリが発生したビレットの例を説明するための説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[全体構成]
本発明は、前述したように複数のビレットのバリ、カエリをベルト研削装置との間を通過移動させる過程で除去する装置である。次に実施の形態を示す装置の全体構成を説明する。図1は、ビレットのバリ、カエリ除去装置1の全体構成を示す平面図であり、図2は正面図で、図3は側面図である。
【0043】
このバリ、カエリ除去装置1の枠体2は、アングル材等の形鋼によりフレーム形状に構成されていて、後述する各機能の装置がこの枠体2にそれぞれ搭載され、かつこの上で固定配置されている。このバリ、カエリ除去装置1には、中央部に素材である切断された複数のビレット3を直列に整列して、供給するための搬入コンベア4が設けられている。この搬入コンベア4には、複数のビレット3が軸線方向に沿って整列し連なって供給される。搬入コンベア4で供給されたビレット3は、交互に左右に振り分けられ、第1ベルト研削装置11、又は第2ベルト研削装置12で面取り加工された後、第1搬出コンベア9と第2搬出コンベア10にそれぞれ搬出される。以下、その機構について、詳細に説明する。
【0044】
搬入コンベア4のストッパー7の端部の上方に、ビレット3を把持する2つの把持装置、即ち第1把持装置5と第2把持装置6が、上下動移動可能に設けられている。第1把持装置5と第2把持装置6とは、水平方向位置が規制された構成である。供給されたビレット3は、搬入コンベア4で搬入され把持位置に達すると、第1把持装置5と第2把持装置6が、ビレット3を正確な位置で把持できるように、搬入コンベア4にストッパー7が設けられている。このストッパー7は、ビレット3を強制的に停止させられるストップ位置を調整して位置決めできるようになっていて、さらに上方へ退避できる構成になっている。又、この第1把持装置5及び第2把持装置6は、同体で同時に水平移動装置8により水平方向にも往復移動が可能である(図2参照)。
【0045】
この両把持装置5及び6の水平方向移動端側にあり、搬入コンベア4を挟んで両側の対称位置に対向する形態で、2つの同一構成の第1搬出コンベア9と第2搬出コンベア10が配置されている。これら第1搬出コンベア9と第2搬出コンベア10は、後述するベルト研削装置により、バリ取り、又はカエリ取りされたビレット3を回収搬出するためのものである。これら第1搬出コンベア9と第2搬出コンベア10の上方には、ビレット3の両端面の縁部のバリ、カエリ取りを行うためのベルト研削装置が設けられている。すなわち、第1搬出コンベア9に対応して一対の第1ベルト研削装置11が、又、第2搬出コンベア10に対応して一対の第2ベルト研削装置12が設けられている。なお、第1ベルト研削装置11及び第2ベルト研削装置12の一対が配置されているのは、ビレット切断機の切断速度と同期させるためであり、必要がなければ1台であっても良いし、3台以上配置したものでも良い。
【0046】
これら一対の第1ベルト研削装置11及び第2ベルト研削装置12には、各々に研削ベルト13が無端で設けられ、駆動モータ14により回動自在となっている。これら第1ベルト研削装置11及び第2ベルト研削装置12は、ともに勝手違いではあるが同一構造の装置である。又、前述したように第1把持装置5と第2把持装置6が並列して設けられ、ビレットを回転自在に把持しながら移動する。この把持装置5及び6が、水平移動装置8により水平方向に移動したとき、第1把持装置5は第1ベルト研削装置11に対応し、第2把持装置6は第2ベルト研削装置12に対応するようになっている。
【0047】
図2に示すように、ビレット3を加工すべき一対の研削ベルト13の研削面を含む面は、ビレット3の軸線に対し45度の角度位置に配置されていて、その一対の研削ベルト13面間の距離は、研削位置調整装置15により、これを駆動するハンドル16の操作でビレット3の長さ(ビレットの軸線方向寸法)に応じて、幅調整が可能になっている。ビレット3は、把持装置に把持されると上下移動装置17により所定位置まで上昇し、続いて水平移動装置8により水平方向に往復移動する。
【0048】
ビレット3は、研削中は両把持装置5及び6に回転自在に把持されているので、この水平移動中に研削ベルト13に接触し、ビレット3の端面の縁部が回転しながら研削され、ビレット3縁部周囲のバリ、カエリが除去される。第1把持装置5がビレット3を把持し、第2把持装置が空の状態で、2つの把持装置5、6は水平移動し、一対の第1ベルト研削装置11の研削ベルト13によりビレット3の縁部を研削させる。把持状態でバリ、カエリ等の除去されたビレット3は、第1把持装置5が第1搬出コンベア9上に達すると、2つの把持装置5、6は下降する。下降位置において、第1把持装置5は、把持状態を解除してビレット3を第1搬出コンベア9上に搬出する。このとき、第2把持装置6は、搬入コンベア4上に位置しているので、搬入コンベア4上にあるビレット3を把持する。2つの把持装置5、6が上昇する。
【0049】
このとき第1把持装置5は空の状態で上昇する。次いでこの2つの把持装置5、6は逆方向に水平移動し、前述と同様に、第2把持装置6がビレット3を把持した状態で、一対の第2ベルト研削装置12の研削ベルト13により縁部を研削させながら第2搬出コンベア10上に達する。続いて、2つの把持装置5、6は下降する。下降位置において、第2把持装置6は、把持を解除してビレット3を第2搬出コンベア10上に搬出する。このとき、第1把持装置5は搬入コンベア4上に位置している状態にあるので、搬入コンベア4のビレット3を把持することになる。
【0050】
このようにして2つの把持装置5及び6は、搬入コンベア4と搬出コンベア9間、及び、搬入コンベア4と搬出コンベア10間を、バリ、カエリの除去をしながら交互に往復移動する。すなわち、2つの把持装置5及び6は、搬入コンベア4から除去処理前のビレットを把持し、両端面縁部のバリ、カエリの除去処理の終わったビレット3を連続的に2つの搬出コンベア9、10に搬出していく。2つの搬出コンベア9、10に搬出されたビレット3は、第1搬出コンベア9及び第2搬出コンベア10端からビレット回収装置18により搬入コンベア4側に再び戻され、次工程へ搬送される。
【0051】
[搬入コンベア、搬出コンベアの構成]
搬出入装置は、前述のようにビレット3を供給するための搬入コンベア4と、この搬入コンベア4とコンベア方向が平行に並列して設置され、バリ取り、カエリ取りされたビレット3を搬出するための搬出コンベアとから構成されている。この搬出コンベアは、第1搬出コンベア9と第2搬出コンベア10の2つの搬出コンベアとから構成されている。従って本実施の形態の搬出入装置は、平行に配置された3つのコンベアから構成されている。
【0052】
搬入コンベア4はこの搬出入装置の中央部に設置され、2つの搬出コンベアである第1搬出コンベア9と第2搬出コンベア10は、搬入コンベア4を挟み対向した対称位置に設置されている。搬入コンベア4により供給されるビレット3は、前述した2つの把持装置5及び6により、第1搬出コンベア9側と第2搬出コンベア10側に交互に移送され、この移送過程において、後述する2つの一対のベルト研削装置11、12のいずれかを通過し、バリ、カエリの除去が施され、第1搬出コンベア9又は第2搬出コンベア10に各々搬出される。
【0053】
これら搬出入装置のコンベアは、いずれもチェーンコンベア構成になっていて、ビレット3は樋状の搬送路を外にはみ出ることなく案内され、このビレット3は軸線方向に沿って連続的に連なってチェーンにより搬送される。コンベア形式は、チェーンでなくローラー式等のものでもよく、その形式に限定されることはない。搬入コンベア4上のビレット3は、2つの把持装置5及び6の各々に対応する把持位置で位置決めされる。搬入コンベア4上には、ストッパー7が設けられ、ビレット3はこのストッパー7に当接することで位置決めされる。
【0054】
このストッパー7の突き当て面の位置は調整可能で、ビレット3の大きさにより位置変更ができるようになっている。又、このストッパー7は上方へ退避できる構成になっている。搬入コンベア4の最終端は、バリ取り、カエリ取りされたビレット3の回収端となっている。後述するビレット回収装置18により、バリ取り、カエリ取りされた第1搬出コンベア9及び第2コンベア10上のビレット3を、最終端で再びこの搬入コンベア4の端部に戻すようにしている。
【0055】
[把持装置5及び6の構成]
以下、本システムを構成する両把持装置5及び6の詳細な構造について説明する。図4は、把持装置の詳細図で、第1把持装置5、第2把持装置6とも同一構成をなしている。図5は一対の把持爪19を閉じた状態のとき、ビレット把持部分を示す側面図である。又、図6は、一対の把持爪19が開放された状態を示す部分図である。図において、両把持装置5及び6は、主としてビレット3を直接把持する一対の把持爪19と、この把持爪19を開閉駆動するための開閉駆動部であるサーボモータ20から構成されている。一対の把持爪19は、一対のリンク21に一対の揺動部材22を介して連結されており、揺動によりリンクモーションするように構成されている。
【0056】
又、この一対のリンク21は、揺動部材22と連結する支軸23を介して相対的に揺動する。さらにこの一対のリンク21はナット体24と連結される支持部材25の支軸26に揺動自在に支持されている。ナット体24には、回り止め部材24aが固定されている。回り止め部材24aは、基体28に形成された回り止め用規制溝28bに挿入され、ナット体24が回転しないように規制している。支軸29は、基体28に固定された把持爪支持部材28aに固定されている。揺動部材22は、支軸29を支点に揺動する。ナット体24は、サーボモータ20に連結されるスクリュー27にねじ込まれている。
【0057】
従って、スクリュー27がサーボモータ20の駆動により回転すると、ナット体24は回転することが回り止め用規制溝28b、回り止め部材24aによって規制されているため、把持装置の基体28と相対的に矢印V方向(図4における上下方向)に移動する。この移動動作により支持部材25が上下方向に移動し一対のリンク21はリンクモーションする。このリンクモーションにより揺動部材22が揺動し、この揺動部材と一体構成をなす把持爪19が開閉動作を行うのである。
【0058】
図6は支持部材25が基体28に対し相対的に上方に移動し、リンクモーションで把持爪19が開放された状態を示している。一対の把持爪19は揺動部材22に各々2つのボルト30で着脱可能な構成で固定されている。この把持爪19はビレット3のサイズが変わったときや把持爪19に損傷が生じたときに交換できるようになっている。
【0059】
一対の把持爪19は端部に、把持爪軸31a、把持爪軸31bを介して、各々一対の2つ構成の把持ローラー31を回転自在に保持している。ビレット3はこの把持ローラー31により挟まれた状態で回転自在に把持される。図5に示すように、把持爪軸31aに保持された2つの把持ローラー31の間隔より、把持爪軸31bに保持された2つの把持ローラー31の間隔を大きくしている。これは、ビレット3の下部を把持する部位を広くし、上部を把持する部位を狭くしてビレット3を安定した状態で把持できるようにしている(図5参照)。しかし、この把持ローラー31の構成はこの実施の形態に限定されることなく、上下とも同じ間隔の構成で設置されていてもよい。
【0060】
[水平移動装置8、上下移動装置17の構成]
第1把持装置5及び第2把持装置6は、前述のように構成され、基体28の一部は枠体2上に水平方向に案内される水平移動装置8に上下動自在に取り付けられている。図7は図2の背面図で、水平移動装置8を示す。枠体2には水平方向に案内部材32が設けられており、水平移動装置8の基体33は下部に固定されたガイド部材34を介して、この案内部材32上を水平方向に往復移動自在である。又、枠体2上には水平方向駆動用サーボモータ35が取り付けられている。水平移動装置8の基体33にはナット体36が固定され、水平方向駆動用サーボモータ35の出力軸に直結されているスクリュー37がねじ込まれている。
【0061】
従って、この水平移動装置8の基体33は2つの把持装置5、6を保持したままスクリュー37とナット体36からなるねじ機構を介して、水平方向駆動用サーボモータ35の駆動により水平方向(図2における矢印X方向)に移動可能である。この水平移動は、水平方向駆動用サーボモータ35の駆動制御で、水平方向に正確な位置決めが可能である。この水平移動装置8の基体33上には、2つの第1把持装置5及び第2把持装置6を上下方向に案内する案内部が設けられ(図示せず)、水平移動装置8の基体33に設けられた上下駆動用サーボモータ38により、2つの把持装置5、6を、同時に、上下方向(図2における矢印Yの方向)に移動させることが可能である。
【0062】
この上下方向駆動用サーボモータ38により駆動されるスクリュー39には、ナット体40がねじ込まれ、このナット体40は把持装置5、6の基体28の一部と一体化した支持体41に設けられている。従って、上下方向駆動用サーボモータ38の駆動により、この支持体41を介して2つの把持装置5、6は上下方向に移動する。又、この支持体41には、水平移動装置8の基体33に固定された重量バランス用のシリンダ42のロッド部43が連結している。この把持装置5、6が上下方向に移動する場合、このシリンダ42により重量バランスがとられているため、上下方向駆動用サーボモータ38の駆動が安定化し、しかも落下することなく安定的に支持されるようになっている。上下移動装置17は、上下駆動用サーボモータ38、スクリュー39、ナット体40、支持体41、シリンダ42等で構成される。
【0063】
[ベルト研削装置11の構成]
図8は、図1のA−A断面図で、一対の第1ベルト研削装置11を示す側面図である。又、図9は、図8のB矢視図で第1ベルト研削装置11のベルト調整装置44を示す。この第1ベルト研削装置11は、第1搬出コンベア9を跨いで配置され、研削ベルト13のベルト面を45度傾斜させて設置され、八字状に対向して配置されている。この実施の形態では、傾斜角を45度としたが角度に限定されることはない。この一対の第1ベルト研削装置11は、枠体2上に設けられた案内レール47に、一対の第1ベルト研削装置11の支持体48の下部に設けられたガイド体49により案内され相互に対向して水平方向に進退移動自在である。
【0064】
この第1ベルト研削装置11の研削ベルト13は、駆動プーリ45とアイドルプーリ46に跨って巻き掛けられていて無端で回動自在である。駆動プーリ45は、駆動モータ14により駆動され、研削ベルト13を回動させる。研削は、駆動プーリ45とアイドルプーリ46との間の研削ベルト13の平坦部で行われる。アイドルプーリ46は、基体48の張り出した方向の端部に回転自在に支持されている。このアイドルプーリ46は基体48に対し、基体48の張り出した方向に位置が相対的に可変となっている。
【0065】
即ち、研削ベルト13をたるみなく正常に研削できる状態で回動できるように、アイドルプーリ46は、駆動プーリ45に対し、ベルト調整装置44により矢印Q(図9参照)で示す張り出し方向に移動調整ができるようになっている。この張り出し方向への移動調整は、ねじ調整機構51により、アイドルプーリ支持体50を駆動プーリ45に対し駆動プーリの外側(アイドルプーリ側)の張り出し方向に調整するものである。移動調整が完了すると、このアイドルプーリ支持体50は、ボルト52により基体48に固定されるようになっている。このベルト調整装置44の構成は、第2ベルト研削装置12においても同様である。
【0066】
この研削ベルト13の平坦部巻き掛け方向は、把持装置5、6の水平移動方向に沿っている。バリ取り、カエリ取りのため、2つの把持装置、即ち第1把持装置5と第2把持装置6は、ビレット3を回転自在に把持しながら上下方向駆動用サーボモータ38の駆動により上下方向の位置を定める。また、第1把持装置5と第2把持装置6は、水平移動装置8により水平方向に移動すると、ビレット3は一対の第1ベルト研削装置11又は第2ベルト研削装置12の研削ベルト13間を通過し、研削ベルト13のベルト面に接触して研削される。ビレット3は、ベルト面との接触により回転するので、縁部全周が研削され結果的に全周に亘って両面の縁部のバリ、カエリが同時に除去されることになる。
【0067】
図10は、一対の対向する第1ベルト研削装置11の対向位置間を調整する研削位置調整装置15を示し、図8のC−C平面断面図である。枠体2には、一対の第1ベルト研削装置11の各々にスクリュー53が回転自在に配置されている。このスクリュー53には、第1ベルト研削装置11の基体48、48に一体的に設けられたナット体54、54がねじ込まれている。この各スクリュー53の端部には、ベベルギア機構55が取り付けられている。基体48、48は、枠体2上の案内レール47、47にガイド体49、49を介して水平方向(矢印W方向)に移動自在に設けられている。
【0068】
このベベルギア機構55はハンドル軸56に結合されていて、スプロケット/チェーン57を介してハンドル16を回すことによりこのベベルギア機構55を回転させ、一対のスクリュー53を回転させることができる。ベベルギア機構55を介して回転方向を変えて回転駆動させることは周知である。この一対のスクリュー53は相互に逆回転するので、各々のスクリュー53、53にねじ込まれているナット体54、54は相互に逆方向に進退移動する。すなわち、基体48、48は、案内レール47、47、ガイド体49、49に案内されて相互に逆方向に進退移動する。
【0069】
従って、ハンドル16を回すことにより、一対の第1ベルト研削装置11は、各々が相互に逆方向へ進退移動が可能となり、図8の二点鎖線に示す位置D、Dまで離間させることができ、対向している研削ベルト13の間隔を適正位置に調整することができる。ビレット3の長さ以上に離間すると、メンテナンスがし易くなる。又、これに伴い前述のように、一対の第1ベルト研削装置11の基体48、48は、枠体2上の案内レール47にガイド体49を介して水平方向(図1、10における矢印W方向)に移動自在である。
【0070】
従って、調整時には第1搬出コンベア11の搬出方向に沿って、一対の第1ベルト研削装置11を相互に進退移動させ水平方向に案内し位置決めすることができる。供給されるビレット3のサイズが変わったときには、このようにして一対の第1ベルト研削装置11の離間距離を調整し適正なバリ取り、カエリ取り位置を設定する。この調整は、第2ベルト研削装置12においても同様の構成で行われる。
【0071】
[ビレット回収装置18の構成]
2つの搬出コンベア9、10によって搬出されたビレット3は、各々、第1搬出コンベア9、及び第2搬出コンベア10の端部に達すると、一つの搬送経路に集合される形で搬入コンベア4の最終端に回収される。ビレット回収装置18はセットの形態で、第1ビレット回収装置58と第2ビレット回収装置59で構成されている。図11は、第1搬出コンベア9の端部に設けられた第1ビレット回収装置58、及び第2搬出コンベア10の端部に設けられた第2ビレット回収装置59の構成を示す平面図で、図12は、図11のE−E断面図である。この2つのビレット回収装置58、59は、向きは異なるが同一構成のものである。
【0072】
第1搬出コンベア9の終端部には、第2ビレット回収装置59と同一構成の第1ビレット回収装置58が設けられている。第2搬出コンベア10を支持している枠体2上には、第2ビレット回収装置59を支持するための第2支持台61が搬入コンベア4寄りに設けられている。又、第1搬出コンベア9を支持している枠体2上には、第1ビレット回収装置58をビレット支持するための第2支持台61と同一構成の第1支持台60が設けられている。その各々の支持台60、61には、シリンダ体62が設けられ、そのロッド部(図示せず)がシリンダ体62の動作でバーガイド63に案内されて進退移動し、その端部にビレット寄せ装置65が設けられている。このビレット寄せ装置65は、バーガイド63に案内されて進退移動する。ビレット寄せ装置65は、搬入コンベア4側に移動する場合ストッパー64で規制されるまで移動し、この位置に移動したとき、ビレット3が搬入コンベア4に回収される。
【0073】
この各々のビレット寄せ装置65は、搬入コンベア4と第2搬出コンベア10との間を往復するように、進退移動可能となっている。又、このビレット寄せ装置65は、第2搬出コンベア10上のビレット3を引っ掛け搬入コンベア4側に寄せることが可能になっている。ビレット寄せ装置65は、基体65bと、基体65bに設けられた支軸68と、支軸68を支点に矢印R方向(図12参照)に揺動可能な揺動部材67とから構成されている。揺動部材67は、常時、自重により、突き当て面67a側が下方に位置するように構成されている。また、この姿勢の状態のとき、揺動部材67は、基体65bのストッパ面65aに当接している。なお、揺動部材は、ばね等の付勢力で強制的にストッパ面に当接させているものであってもよい。
【0074】
搬入コンベア4と第2搬出コンベア10の基体には、ビレット3を転がしながら搬送させるためのビレット搬送台66が固定されている。このビレット搬送台66は、水平位置に対し、第2搬出コンベア10側が低く、搬入コンベア4側が高くなるように傾斜させた構成になっている。
【0075】
ビレット3を搬入コンベア4側に引き寄せるときは、ビレット寄せ装置65の揺動部材67を第2搬出コンベア10の外側に移動させ、第2搬出コンベア10上のビレット3を揺動部材67の突き当て面67aに突き当て、強制的に引っ掛けながら搬入コンベア4側に引き寄せる。この揺動部材67は、支軸68を支点に矢印R方向に揺動可能な構成になっているが、ストッパ面65aに上部側が当接することで、突き当て面67側が下を向いた姿勢を維持している。また、ビレット寄せ装置65が第2搬出コンベア10の外側へ退避する場合には、揺動部材67がビレット3に当接し、図12の二点鎖線で示したように、支軸68を支点として揺動してビレット3の上部を通過する。この揺動動作により、揺動部材67が、ビレット3を乗り越え第2搬出コンベア10の外側に移動することができる。そして、揺動部材67は、ビレット3との当接状態が解消されると、自重により揺動して図12の実線で示した姿勢の状態に戻り、ビレット寄せ装置65がビレット3を引っ掛け搬入コンベア4側に寄せることが可能な状態に戻る。
【0076】
このビレット寄せ装置65は、揺動部材67が搬入コンベア4側へ移動するときは、突き当て面67はビレット3に突き当たっても揺動せず、ビレット3を引っ掛けて移送する。このようにして、ビレット3をビレット搬送台66上を転がしながら移送させ、移送されたビレット3は、搬入コンベア4の端部に戻される。このビレット寄せ装置65の往復動作は、第2搬出コンベア10の端部に設けられたセンサにより(図示せず)ビレット3の有無を検知して動作するようになっている。このビレット寄せ装置65は、向きは異なるが、第1搬出コンベア9側にも、第2搬出コンベア10のものと同一構成のものが設けられている。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれら実施の形態に限定されないことはいうまでもない。実施の形態において、把持装置、搬出装置、一対のベルト研削装置、ビレット回収装置を2セットとして説明したが、1セットであってもよい。又、ビレットを丸棒材で説明したが回転させることが可能なものであればどのようなものであってもよい。例えばパイプ材であってもよく、またその材質は問わない。
【符号の説明】
【0078】
1…ビレットのバリ、カエリ除去装置
2…枠体
3…ビレット
4…搬入コンベア
5…第1把持装置
6…第2把持装置
7…ストッパー
8…水平移動装置
9…第1搬出コンベア
10…第2搬出コンベア
11…一対の第1ベルト研削装置
12…一対の第2ベルト研削装置
13…研削ベルト
15…研削位置調整装置
17…上下移動装置
18…ビレット回収装置
19…一対の把持爪
31…把持ローラー
58…第1ビレット回収装置
59…第2ビレット回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断されたビレットを供給するための搬入装置(4)と、
供給された前記ビレットを回転自在に把持する把持装置(5,6)と、
回動自在の研削ベルトを有し、この研削ベルトの研削面が、前記ビレットのバリ、カエリの除去位置に、相互に、傾斜状態で対向するように設置されている一対のベルト研削装置(11,12)と、
前記把持装置を、前記ビレットを把持する位置から前記一対のベルト研削装置の間を通過させ、前記把持装置に把持された前記ビレットをバリ、カエリの前記除去位置に移動させる移動装置(8)と、
バリ、カエリの除去された前記ビレットを搬出するための搬出装置(9,10)とからなり、
前記研削ベルトの前記研削面で、前記ビレットのバリ、カエリの除去を行えるようにした
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項2】
請求項1のビレットのバリ、カエリ除去装置において、
前記搬入装置は、複数の前記ビレットを軸線方向に連続して整列させ供給する搬入コンベアである
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2のビレットのバリ、カエリ除去装置において、
前記搬入装置は、供給される前記ビレットを把持位置に位置決めするストッパー(7)を有している
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項4】
請求項1又は2のビレットのバリ、カエリ除去装置において、
前記搬出装置は、複数の前記ビレットを軸線方向に連続して整列させ搬出する搬出コンベアである
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項5】
請求項1又は2のビレットのバリ、カエリ除去装置において、
前記把持装置は、前記ビレットを回転自在に挟持して把持する一対の把持ローラー(31)を有している
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項6】
請求項1又は2のビレットのバリ、カエリ除去装置において、
前記把持装置は、前記一対のベルト研削装置への移動方向に対し直角方向に移動し前記バリ、カエリ除去位置に位置決めする上下移動装置(17)を有している
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項7】
請求項1又は2のビレットのバリ、カエリ除去装置において、
前記一対のベルト研削装置は、対向する前記研削ベルトの研削面の間の距離を調整可能にする研削位置調整装置(15)を設けている
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項8】
請求項1又は2のビレットのバリ、カエリ除去装置において、
前記搬出装置は、前記搬入装置を挟み対向する対称位置に設けられた同一構造の第1搬出装置(9)と第2搬出装置(10)とで構成されている
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項9】
請求項8のビレットのバリ、カエリ除去装置において、
前記一対のベルト研削装置は、前記搬入装置を挟み対向する対称位置に設けられ、前記第1搬出装置に対応する一対の第1ベルト研削装置(11)と、前記第2搬出装置に対応する一対の第2ベルト研削装置(12)とで構成されている
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項10】
請求項9のビレットのバリ、カエリ除去装置において、
前記把持装置は、前記第1ベルト研削装置に対応する第1把持装置(5)と、前記第2ベルト研削装置に対応する第2把持装置(6)とで構成されている
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項11】
請求項10のビレットのバリ、カエリ除去装置において
前記移動装置は、前記第1把持装置(5)が前記一対の第1ベルト研削装置(11)の研削ベルト面間を通過する移動と、前記第2把持装置(6)が前記一対の第2ベルト研削装置(12)の研削ベルト面間を通過する移動とを、交互に往復移動させる装置である
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。
【請求項12】
請求項1から11に記載されたビレットのバリ、カエリ除去装置から選択される1項において、
前記搬出装置(9,10)の搬出端に、バリ、カエリ取りされた前記ビレットを前記搬入装置に戻し回収搬送させるためのビレット回収装置(18)を設けた
ことを特徴とするビレットのバリ、カエリ除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−172979(P2010−172979A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15642(P2009−15642)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(391039195)株式会社万陽 (4)
【Fターム(参考)】