説明

ビーム角度と、スキャンされるビームまたはリボンビームの平面に対して直交する発散の測定のための装置及び方法

本発明は、スキャンされるビームの平面に直交するイオンビームの入射角度値及び発散を得ることによって半導体素子の製造を容易にする。発散検出器は、マスク(310)とプロファイラー/センサ(314)を含み、入来イオンビーム(308)からビームレット(312)を得るために使用され、多数の垂直位置(316,318)でのビーム電流を測定する。これらのビーム電流測定値は、垂直入射角度値を与えるために使用され、かつイオンビームを特徴づけるために役立つ垂直方向の発散プロファイルを与える。これらの値は、イオンビーム発生機構によって使用され、これらの値が所望の値からすれている場合に、加工物の位置または発生したイオンビームに関する調整が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、イオン注入デバイス、特に、イオンビームの入射角度及び発散角度を測定することに関する。
【背景技術】
【0002】
物理的処理であるイオン注入は、半導体および/またはウエハ材料に選択的に不純物を注入して半導体素子を製造するのに用いられる。そのため、イオン注入の動作は、不純物と半導体材料との間の化学的相互作用に頼る必要がない。イオン注入では、不純物原子/分子は、イオン化され、加速されてイオンビームを形成し、質量分析され、そして、ウエハを横切って走査する。すなわち、ウエハはイオンビームにより走査される。ドーパントイオンは、物理的にウエハに衝突し、ウエハ表面に進入し、そのエネルギーに関係した深さでウエハ表面の下方に留まる。
【0003】
イオン注入システムは、複雑なサブシステムの集合であり、各サブシステムは、ドーパントイオンの特別な作用を実行する。ドーパント成分は、ガスまたは固体の状態で、さらに蒸気化されて、イオン室内に配置され、適当なイオン化処理によってイオン化される。1つの例示的な処理では、イオン室は、低圧力(真空)に維持される。イオン室内には、フィラメントが配置され、加熱されることにより、フィラメント源から電子が放出される。負に帯電した電子は、イオン室内で正に帯電したアノードに引き寄せられる。フィラメントからアノードへの移動中、電子は、ドーパント要素(例えば、分子または原子)と衝突し、分子内の成分から正電荷のイオン群が作り出される。
【0004】
一般的に、他の正イオンは、所望のドーパントイオンに加えて作り出される。所望のドーパントイオンは、分析、質量分析、選択、すなわちイオン分離と呼ばれる処理によって多数のイオンから選択される。この選択は、イオン室からのイオンが移動する磁界を作り出す質量分析器を用いることにより達成される。多数のイオンは、比較的高速度でイオン室を出て、磁界によってアーク形状に曲げられる。このアーク形状の曲率は、個々のイオンの質量、速度および磁界の強さによって決められる。分析器の出口は、1つのイオン種、所望のドーパントイオンのみが質量分析器から出ることを可能にする。
【0005】
続いて、所望のイオンは、イオン注入のために適合する角度を得るためにイオンを集束し、あるいは、イオンの軌道に影響を与え、または、イオンエネルギーを変更し、または、比較的大きな寸法の加工物をカバーするために、イオンを偏向し、又はこれらの作用を全て組み合せのために、イオン光学要素を介して輸送される。
【0006】
さらに、ドーパントイオンは、エンドステーションに位置する目標ウエハに向けられる。イオンビームとしてのドーパントイオンは、所定のビーム強度と放射率でウエハに衝突する。このビーム強度は、位置の関数として、単位時間当たりの粒子数の尺度であり、また、放射率は、位置の関数として、ビームの角度分布(入射角度)である。一般的に、ビーム強度と放射率は、ほぼ均一であり、予想されたあるいは所望の値であることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つまたは他の構成を基本的に理解するために、以下において、本発明を単純化して要約する。
この要約は、本発明の外延的範囲を示すものではなく、また本発明の要部すなわち主要な構成を識別することを意図するものでもないし、また本発明の範囲を正確に規定するものでもない。さらに、この要約の主たる目的は、後で、より詳細に説明する記述の序文となるように、単純化した形で本発明の概念を明らかにすることである。
【0008】
本発明は、スキャンビームの面に対して直交する入射角度値及びイオンビームの発散を得ることによって、半導体素子の製造を容易にすることを目的とする。また、垂直入射角度は、イオンビームを特徴づけるのに役立つ垂直方向の発散プロファイルを与える。これらの値は、イオンビーム発生機構によって使用され、発生したイオンビームの調整又はこれらの値が所望の値からずれている場合には、加工物の角度における調整を実行する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成によれば、発散検出器は、マスクと垂直移動プロファイラーを含む。マスクは、水平方向により長い矩形状の複数の開口からなる単一の列を有する。垂直移動プロファイラーは、マスクの下流で選択された距離に配置され、プロファイラーが移動するとき、得られたビームレットからのビーム電流を測定する。垂直位置情報は、ビーム電流から得られ、このビーム電流は、得られたビームレットの垂直入射角度値を導くために用いられる。この垂直入射角度値は、イオンビームに対する注入の傾斜角度を特徴づけるために役立つ。
【0010】
本発明の他の構成によれば、発散検出器は、マスクと多数のフィンガーを有するプロファイラーを含む。マスクは、入来するイオンビームからビームレットを得る複数の開口からなる配列を有する。マルチフィンガー式プロファイラーは、マスクの下流で選択された距離に配置され、垂直方向に沿う多数のフィンガーを有し、ビームレットからのビーム電流を同時に測定できる。この電流測定値は、垂直位置情報を得るために使用され、特に水平位置における垂直入射角度値を決定するのに使用される。マルチフィンガー式プロファイラーは、他の水平位置での垂直入射角度値を得るために水平方向に、連続してあるいは周期的に移動することができる。
【0011】
上述の及び関連した目的を達成するために、本発明は、以下に詳細に記載されかつ特許請求の範囲に特に開示された特徴を含んでいる。以下の記載及び添付の図面は、本発明の例示的な構成およびその実現化を説明する。しかし、これらの例示は、種々の方法のうちの僅かなものであるが、これらは、本発明の原理を用いるものである。本発明の他の構成、利点、及び新規な構成は、本発明の以下の詳細な説明から図面を参照することにより、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、図面を参照して記載され、全体を通して同一の参照番号は、同等の要素に対して用いられる。当業者には、図面および以下の記載された本発明は、例示的なものであって、これらに限定されるものではないことが明らかであろう。
【0013】
イオンビームプロファイル及び角度内容は、イオン注入処理の均一性を決定づけ、さらに、イオン注入処理中、均一性を高めるための調整を実行するのに重要なものである。均一性の1つの特性は、イオンビーム強度であり、このビーム強度は、イオンビームの断面の所定位置での単位時間当たりの粒子数の尺度である。均一性の他の特性は、イオンビームの発散であり、これは、ビーム内の位置によって決まるビームの角度分布である。垂直方向におけるイオンビームの発散は、注入の傾斜角度を特徴づけるのに使用され、この傾斜角度は、目標ウエハとスキャンされる又はリボンビームの平面に直交する角度として与えられる。発散は、対称の軸線に対するイオンビームのある部分の角度である。
【0014】
イオン注入機(シリアル型イオン注入機)の分類において、目標ウエハは、ある一面において静止しており、イオンビームは、ウエハ表面を横切ってスキャンされる。イオン注入機の他の分類では、バッチ型イオン注入機が考えられ、この注入機は、多数のウエハを固定した回転ディスクまたはプラテンを用い、ウエハに入射イオンビームが通過するようにウエハを回転させる。
【0015】
イオンビームプロファイル及び角度内容は、イオン注入、特にシリアル注入機の均一性の結果を決定するのに重要であり、目標ウエハの異なる部分に、ビームの異なる部分によって注入される。これは、目標ウエハを横切るほぼ均一な注入を達成するために、イオン注入前に角度内容およびプロファイルを操作する必要がある。
【0016】
本発明は、少なくとも垂直方向における入射角度値を測定することによって半導体素子の製造を容易にする。こうすることにより、イオンビームの発生および/または配給を行うための調整が可能になる。この調整は、傾斜角度をより適切な値に変えると共に、イオンビームの均一性を改善するのに用いることができる。
【0017】
図1A及び図1Bは、本発明の構成に従うウエハ用のシリアル型イオン注入システムを示す。このシステムは、垂直方向の入射角度値に対してイオンビームを特徴づけるように操作可能であり、そのための調整を実行する。図1Aを見ると、本発明の構成に従うシリアル型イオン注入システム100の側面図が示されている。このシステム100は、チャンバー102と、イオン源を含むイオンビーム発生機構104と、発散検出器106と、単一のウエハ108を保持するペデスタルまたはエンドステーションと呼ばれるモジュール110とを含んでいる。図1に図示されたシステム100は、例示的な意味で提供されており、イオン注入システムの全ての構成、コンポーネント、及び特徴を包含することを意図するものではない。代わりに、本システム100は、本発明の更なる理解を容易にするために図示されている。
【0018】
イオンビーム発生機構104は、イオンビーム112、一般的にリボンビームまたはスキャンされるペンシルビームを発生する。このイオンビームは、その形状、ドーパントの形式、ドーズ量、ビーム電流、ビーム強度、放射率、入射角度、エネルギー、及び同等物を含む多数の特性を有する。イオンビーム発生機構104は、イオン源/イオン室、所望のドーパントイオンを選択するための質量分析器、所望のドーパントイオンを所定の運動量に加速または減速するための加速システム、およびイオンビームの発散を制御および/または和らげるための集束レンズまたは機構等の一般的な構成要素を含む。イオンビーム112がペンシル型ビームである場合、このイオンビーム112は、図1Aに示すように、水平方向に移動/スキャンされる。イオンビーム112は、ウエハ108の表面に対してほぼ直交するように描かれているが、このイオンビーム112は、ウエハ108の表面に対する他の入射角度とすることもできる(例えば、θ>0、ここで、0は、表面に対して垂直なビームである)。
【0019】
上述したように、モジュール110は、例えば、機械的または電磁気的なクランプを介して、イオンビーム112の下流に配置されるウエハ108を保持する。さらに、モジュール110は、制御された速度で所望の注入結果を達成するように、イオンビーム112を介してウエハ(図示するように)を移動するように操作可能である。別の構成によれば、イオンビーム112は、単一の通路又は複数の通路内をウエハが横切って移動する。一般的に、所定のイオン注入は、ウエハ108の単一通路内でイオンビーム112を通過させて実行される。そうすることによって、ウエハ108を横切るほぼ均一なイオン注入を得ることができ、これは、ウエハ108の全ての部分または一部分が同一速度でイオンビーム112を通過するように移動する。対照的に、他のイオン注入システムは、本発明に包含される処理ディスクを使用する。
【0020】
本例における発散検出器106は、モジュール110の下側に配置され、イオンビーム112と同一ライン上にある。この検出器106は、静止位置に置かれている。本発明の別の構成では、適当な数の検出器を含んでおり、これらの検出器は、他の位置に配置され、また、移動可能である。例えば、検出器106は、モジュール又はペデスタル110と一体化されて、ウエハ108とほぼ同一平面上にある。
発散検出器106は、イオンビーム112の平面に直交する面において、イオンビームの入射角度及び発散を測定する。このイオンビーム(スキャンされる又はリボン型の)は、図1Aに示されるように垂直方向に向いている。
【0021】
発散検出器106は、複数のホールおよび/または開口を有するマスク(図1A、1B、1Cに図示されていない)と、センサとを含んでおり、このマスクは、種々の垂直位置にあるセンサによって測定されるイオンビームからのビームレットを引き出し又は通過させ、少なくとも垂直方向に対する入射角度及び発散を決定する。センサは、一般的に、種々の垂直位置でのビームレットに対するビーム電流を測定し、ビーム電流が測定される位置と、測定されるように予想されている位置とを比較して、所望の入射角度からのの入射角度のオフセット量又は変化を識別する。また、測定されたビーム電流は、検出器106によって用いられ、イオンビーム112をより完全に特徴づけるビーム強度及びビーム形状を導くことができる。
【0022】
発散検出器106によって得られた測定値は、イオンビーム発生機構104および/またはウエハ保持モジュール110によって用いられ、発生したイオンビーム112を修正し、また入射角度/発散の望まない偏差を改善する。
【0023】
図1Bは、本発明の構成に従って、ウエハのシリアル型イオン注入システム100のイオンビーム面を示す。この図は、水平および垂直方向のスキャンに対するイオンビームをさらに説明するのに役立つ。
【0024】
単一のウエハ108は、モジュール110(ペデスタルまたはエンドステーション)上に置かれている。モジュール110および単一のウエハ108は、図1Bに示すように垂直スキャン方向(y方向)に機械的に移動する。イオンビーム112は、ここでは、ペンシル型ビームとして描かれている。このイオンビーム112は、図示するように、水平方向/スキャン方向(x方向)において、単一ウエハ108を横切ってスキャンまたは移動される。発散検出器106は、複数の位置で少なくとも垂直方向に対する入射角度測定値を得る。これにより、少なくとも垂直スキャン方向に沿ってイオンビーム112の発散を決定する。
【0025】
図1Cは、本発明の構成に従うウエハのシリアル型イオン注入システム100のイオンビーム面を示す。この図は、イオンビーム112がリボンビームである場合に、水平及び垂直スキャン方向に関するイオンビームをさらに説明するのに役立つ。
【0026】
単一のウエハ108は、モジュール110(ペデスタルまたはエンドステーション)上に置かれている。モジュール110および単一のウエハ108は、図1Bに示すように、垂直スキャン方向(y方向)に機械的に移動する。イオンビーム112は、リボン型ビームとして描かれ、モジュール/ペデスタルが垂直方向においてリボンビームを取ってウエハ108を移動するとき、単一のウエハ108をカバーする。発散検出器106は、複数の位置で少なくとも垂直方向に対する入射角度測定値を得る。これにより、少なくとも垂直スキャン方向に沿ってイオンビーム112の発散を決定する。
【0027】
図2は、本発明の構成に従う発散監視システム200の側面図である。このシステム200は、少なくとも垂直方向(y方向)において、入来するイオンビーム208(z方向に移動する)の発散を監視する。この垂直方向は、イオンビーム208のスキャン方向に直交している。
【0028】
システム200は、マスク210とプロファイルセンサ214を含む。マスク210は、イオンビーム208からの多数のビームレット212を選択的に引出す多数の開口を有する。これらの開口は、一例では、矩形状の開口および/またはより小さい円形状の開口を有する。開口の形状及び大きさは、プロファイルセンサ214として使用されるセンサの形式に少なくとも部分的に関係する。さらに、以下に適切な形状及び大きさを含む開口の記載がある。
【0029】
プロファイルセンサ214は、複数の位置にあるビームレット212に対するビーム電流測定値を得る。これらのビーム電流測定値から、入射角度値/測定値は、垂直方向の多数の位置において決定される。一般的に、プロファイルセンサ214は、決定を実行するための回路、またはビーム電流を得て決定を実行するための分離した制御装置を含む。入射角度値は、垂直スキャン方向(y方向)において入来するイオンビーム208に対する発散のプロファイルを与える。
【0030】
例示的な目的のために、イオンビーム208は、マスク210及びセンサ214に対して直交するように描かれている。位置216,213は、入射角度値を示し、この入射角度値は、所望の値またはビームの対称軸からの角度によってオフセットされる。得られた発散プロファイルは、イオン212の分配のための有効なまたは平均角度を計算するために用いることができる。
【0031】
図3Aおよび図3Bは、本発明の構成に従う、より詳細な発散監視システム300を示している。このシステム300は、z方向に移動する入射イオンビーム308の垂直平面における入射角度を測定するために垂直に移動するプロファイラー/センサ314を使用する。また、システム300は、水平方向における入射角度を測定するために、付加的なプロファイラー(図示略)を含むことができる。
【0032】
システム300は、マスク310を含み、このマスクは、複数のビームレット312がマスク310を通過できるように多数の開口311を有する。プロファイラー314は、図3Aにおいて示すように垂直方向に移動し、プロファイラーが、センサ位置と呼べる位置に移動するとき、ビームレットに遭遇する。ここで、プロファイラーは、センサ位置でのビームレットのビーム電流を測定する。
【0033】
センサ314は、マスク310からz方向において選択された距離に配置される。その結果、ビームレット311は、選択された距離を移動し、センサ位置に到達する。この位置は、選択された距離および入射角度値に従う。一般的に、ビームレットは、予想されたセンサ位置に到達すべきであるが、所望の入射角度からの偏向、即ちオフセット量がセンサ位置に到達する関連したビームレットに生じる。このオフセット量及び選択された距離は、入射角度のオフセット値(例えば、洗濯された距離によって分割された位置の概略オフセット)を決定するのに用いられる。この入射角度オフセット値は、測定された入射角度値を決定するために、所望の入射角度に付加することができる。
【0034】
図3Aにおいて、例として、いくつかのビームレットが、予想される位置からy軸上に正の値だけオフセットされた位置316に到達する。その結果、関連するビームレットは、正の入射角度オフセット値を有する。他のビームレットは、予想される位置からy軸上に負の値だけオフセットされた位置318に到達する。その結果、位置318に到達するこれらのビームレットは、負の入射角度オフセット値を有する。
【0035】
図3Bは、本発明の構成に従う発散監視システム300のイオンビームの投影図を示す。この図は、さらに、マスク310と移動する垂直プロファイラー314を図示する。
【0036】
プロファイラー314は、y方向の幅322とx方向の長さ320を有する。長さ320は、一般的に、幅322よりも長い。フロファイラー314は、y軸、即ち垂直方向に移動し、一方、イオンビーム308は、x軸、即ち水平方向に移動/スキャンする。
【0037】
マスク310は、垂直方向よりも水平方向により長い矩形状の多数の開口311を有する。これらの開口は、y方向、即ち垂直方向の幅318とx方向、即ち水平方向の長さ316を有する。
【0038】
図4A及び図4Bは、本発明の構成に従う別の発散監視システムを示す投影図である。図4Aは、本発明の構成に従う発散監視システム400の側面図である。このシステム400は、多数の水平方向位置で垂直入射角度値を得る。
【0039】
システム400は、マスク410と、多数のフィンガーを有するプロファイラー/センサ414とを有し、マスク410は、マルチフィンガー式プロファイラー414の前側に選択した距離だけ離れている。このマスク410は、入来イオンビーム408からビームレット412を選択的に得る複数の開口411の列を含んでいる。マルチフィンガー式プロファイラー414は、水平方向に移動し、多数のフィンガーセンサ(例えば、64)を含み、このセンサは、ビーム電流を測定するように操作できる。マルチフィンガー式プロファイラー414は、フィンガーセンサが測定するビーム電流と、1つ以上の水平位置での垂直入射角度値とを分析する。垂直入射角度値は、フィンガーセンサが検出したビーム電流と、予想されるビーム電流との比較によって決定される。マルチプレクサ回路が、マルチフィンガー式プロファイラー内に設けられており、この回路は、シリアルおよび/またはパラレル型のデータストリームとしてフィンガーセンサからのビーム電流測定値を与えることができる。
【0040】
例として、図4Aは、領域416,418での間違った入射角度値を示す。領域416では、上方のフィンガーセンサにて、検出されなければならないビーム電流が検出される。領域418では、下方のフィンガーセンサにて、検出されなければならないビーム電流が検出される。
【0041】
次に、図4Bを参照すると、イオンビームが投影される、本発明の構成に従う監視システム400を示している。この図は、さらに、マスク410と、マルチフィンガー式プロファイラー414を図示する。マスクは、楕円形状の複数の開口の配列を示している。しかし、これらの開口411は、本発明に従って、円形状および/または矩形状、及び他の適当な寸法とすることができる。図4Bは、5列8行の開口の配列を示すが、本発明は、特定の数の列及び行に制限されるものではない。列間の間隔は、選択された水平距離420であり、行間の間隔は、選択された垂直距離422である。本発明は、種々の適当な配列及び寸法が考えられる。多数の開口411の配列における列は、x軸(水平方向)に沿う複数の位置での垂直入射角度の測定を可能にする。
【0042】
マルチフィンガー式プロファイラー414は、上述したように、多数のフィンガー416を有している。フィンガー416は、開口411を通過するビームレットのビーム電流を測定する多数の間隔を狭めて配置されたコレクターである。各ビームレットの形状及び位置を測定するための十分な解像度を与えるのに、僅かな数のフィンガー(例えば、5またはそれ以上)で十分である。マルチフィンガー式プロファイラー内の回路が、これらの数のフィンガーから得られる測定値を用いて、測定用フィンガーの関連するセットからセントロイドの各ビームレットを決定する。決定されたセントロイド(centroids)は、所望のまたは理想的なビーム軸に対して、オフセットされた位置情報及びオフセットされた垂直入射角度値を得るために、上記回路によって用いられる。複数の開口の配列の各列に対して、関連するオフセットされた入射角度値が、特定の水平位置でのイオンビーム408の垂直発散の尺度を与える。プロファイラーの回路は、意図した、所望の軸に対する垂直入射角度値の重み付けされたフラックスの平均値を決定するように動作可能であり、また、イオン注入システム内の他の構成要素によって垂直入射角度の重み付けされたフラックス平均値(例えば、ウエハを保持するペデスタルの機械的な傾斜角度を調整することによって)を改善するために使用することができる。重み付けされたフラックス平均値の決定は、本発明の他の構成(たとえば、図2及び図3)に含ませることができる。
【0043】
上述した構造的なかつ機能的な特徴によれば、本発明の種々の構成に従う方法は、上記特徴及び記載に関連してより良く理解できるであろう。さらに、説明の単純化の目的のために、図5および図6の方法は、連続して実行するように記載されており、本発明は、例示された順序によって制限されるものではなく、本発明に従ういくつかの構成において、異なる順序、および/またはここで図示されかつ記載された他の構成と平行して実行できることを理解してほしい。さらに、説明されていない全ての特徴も本発明の構成に従う方法を実行するために必要とすることができる。
【0044】
図5において、本発明の構成に従う垂直入射角度値を得るための方法500を説明する流れ図が表わされている。この方法500は、イオン注入システムの一部として、発散検出システムのために使用でき、また、スキャンされるイオンビーム又はリボンビームの平面に直交する垂直入射角度値を得るために使用することができる。
【0045】
この方法は、ブロック502から始まり、ここで、ビームレットのアレーが、マスクによって入来イオンビームから得られる。イオンビームは、マスクに向かう経路に沿って移動する。マスクは、ビームレットとして通過する入来イオンビームの一部を選択的に可能にする開口の配列を有する。この配列は、1つ以上の列と複数の行からなる。ビームレットの配列に対する垂直センサ位置は、ブロック504において、マスクの下流で選択された距離に識別される。垂直センサ位置は、ビームレットがマスクから選択された距離移動した後、このビームレットが通る位置にある。多数の機構が、垂直センサ位置を得るために使用することができる。
【0046】
1つの適切な機構が垂直方向に上がったり下がったりして移動する際に、連続してビーム電流を測定する垂直移動センサ/プロファイラーが用いられる。垂直移動のセンサは、予想されるセンサ位置でのスレッショルド値より上のビーム電流を測定する。このスレッショルド値は、理想のおよび/または所望のイオンビームの入射角度値に対応する。垂直移動センサが、異なるセンサ位置でスレッショルド値より上方のビーム電流を測定する場合、垂直オフセット位置が決定され、選択された距離とともに、入射角度のオフセット値を決定するのに使用することができる。
【0047】
別の適当な機構が、垂直方向に沿って多数のフィンガー位置での電流を同時に測定するマルチフィンガー式センサ/プロファイラーに用いることができる。マスクの開口は、僅かなフィンガー(コレクター)が各ビームレットに対する電流を測定できるように定められる。スレッショルド値より上のビーム電流を識別するフィンガーの位置を用いることにより、センサ位置が決定される。続いて、垂直入射角度は、センサ位置から決定することができる。さらに、マルチフィンガー式プロファイラーは、多数の水平位置での垂直センサ位置を得ることができるように、水平方向に移動可能である。
【0048】
図500に続いて、識別された垂直センサ位置は、ブロック506において、予想されるセンサ位置と比較され、垂直位置のオフセット値を決定する。次に、イオンビームの垂直入射角度は、ブロック508において、垂直位置オフセット値及び選択された距離に従って、イオンビームのための垂直入射角度が決定される。ブロック508で決定された垂直入射角度値は、各n番目のセンサ(Fluxn)で測定されたビーム電流量に比例して重み付けされ、ブロック510において、AngleAVE=SUM(Anglen*Fluxn)/SUM(Fluxn)と定められた、重み付けされたフラックス平均角度を計算する。そして、角度における最大の広がりとして、発散=Anglen(max)−Anglen(min)を計算する。
【0049】
垂直平均角度は、ビーム偏向を変えるため、および/または目標ウエハを保持するペデスタルまたはモジュールの傾斜角度を変えるために用いられて、ブロック512において、所望の衝撃角度に一致させる。発散は、注入記録に注目でき、いくつかの所望の限界を越える場合に注入を防止するのに用いることができる。後者の場合、イオンの集束の調整または開口の形成によって発散を減少させることができる。ブロック510で計算するように、この発散は、分析され、および/または受け入れ可能な発散値または限界値の範囲と比較され、発散が受け入れ可能な限界値を越えるかどうかを決定し、そして、ビームの輸送を調整する。その結果、ブロック514において、発散が受け入れ可能な限界値内に入ることになる。方法500の変形例は、本発明に従って可能であり、イオンビームを十分に特徴づけるために水平入射角度を得る。さらに、本発明は、得られたビーム電流値を用いて、ビーム強度及び形状を決定する。
【0050】
図6は、本発明の構成に従うマルチフィンガー式プロファイラーを用いて、入射イオンビームのための垂直入射角度を得る方法600を説明する流れ図である。この方法600は、イオン注入処理と共に使用して、イオン注入の均一性と正しい注入角度を容易にする。
【0051】
方法600は、ブロック602において開始され、ここで、イオンビームの下流に配置された複数の開口の配列を有するマスクと、このマスクから下流に選択された距離だけ離れたマルチフィンガー式プロファイラーとが設けられている。開口の配列は、水平方向/スキャン方向に並んだ開口の複数の行と、垂直方向に並んだ開口の複数の列を有している。マルチフィンガー式プロファイラーは、矩形状で、垂直方向に長くなっている。このマルチフィンガー式プロファイラーは、複数のフィンガー(例えば、コレクター)を有し、複数の垂直位置でビーム電流測定値を得ることができる。ビームレットのアレーは、ブロック604において、複数の開口の配列を有するマスクによって入来イオンビームから得られる。ビームレットのアレーは、開口の配列に対応している。
【0052】
マルチフィンガー式プロファイラーは、ブロック606において水平位置に移動し、ビームレットのアレーの列に対するビーム電流を測定する。続いて、ブロック608において、測定されたビーム電流の位置及び予想される位置に従って、垂直位置のオフセット値が決定される。この垂直位置のオフセット値は、所望の/理想の入射角度値とともに、ブロック610において使用され、ビームレットのアレーの列に対応する垂直入射角度値を決定する。
【0053】
ブロック612において、ビームレットのアーレの別の列が、測定されるように留まっている場合、マルチフィンガー式プロファイラーは、ブロック614において、次の水平位置に移動し、そして、方法600は、ブロック606において、垂直入射角度が残りのアレーの列に対応してえられる。そうでなければ、方法600は終了する。
【0054】
本発明は、1つ以上の実施例、同等の変形例、及び修正例について図示しかつ記載してきたが、本明細書及び添付の図面を読みかつ理解することによって、当業者に理解できるであろう。特に、上述した部品(組立体、素子、回路、システム等)に関して、本発明の例示的な実施形態として、ここで示された機能を実行する開示された構造体と等価でないとしても、このような部品を記載するのに用いられる用語(手段と呼ばれているものを含む)は、対応するものを意図しており、そうでなければ、記載した部品(例えば、機能的に等価なものである)の特定の機能を実行するいくつかの構成部品を示している。
【0055】
さらに、本発明の特定の特徴は、いくつかの実施の内のただ一つに対して開示されてきたものであるが、そのような特徴は、いずれかの或る又は特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における一つ以上の特徴と組み合わされ得るものである。更に、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」及びそれらの変形が詳細な説明か特許請求の範囲のいずれかで使用されている限り、これらの用語は、用語の『構成されている』と同様に包含されるものであると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】本発明の構成に従うシリアルウエハのイオン注入システムの側面図である。
【図1B】本発明の構成に従うシリアルウエハのイオン注入システムのイオンビームの投影面である。
【図1C】本発明の構成に従うシリアルウエハのイオン注入システムの他のイオンビームの投影面である。
【図2】本発明の構成に従う発散監視システムの側面図である。
【図3A】本発明の構成に従う発散監視システムの側面図である。
【図3B】本発明の構成に従う発散監視システムのイオンビームの投影面である。
【図4A】本発明の構成に従う発散監視システムの側面図である。
【図4B】本発明の構成に従う発散監視システムのさらなるイオンビームの投影面である。
【図5】本発明の構成に従う垂直入射角度値を得るための方法を示す流れ図である。
【図6】本発明の構成に従う垂直入射角度値を得るための方法を示す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを発生し、このイオンビームを目標ウエハに向けて指向させるイオンビーム発生機構と、
前記イオンビームの下流に配置され、前記目標ウエハを支持し、イオンビームが通過する前記目標ウエハを垂直方向に移動させるモジュールと、
前記イオンビームの下流に配置され、イオンビームの垂直入射角度値と、その垂直方向プロファイルとを得る発散検出器とを含み、
前記発散検出器は、イオンビームからビームレットを選択的に得るマスクと、前記垂直入射角度値を得るために複数の垂直位置でビーム電流を測定するセンサとを含んでいることを特徴とするイオン注入システム。
【請求項2】
前記イオンビームは、リボン型ビームであることを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記イオンビームは、ペンシル型ビームであることを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記マスクは、垂直方向より水平方向に広がった矩形状開口の単一列を有し、前記センサは、前記矩形状開口によって定められるビームレットに対するビーム電流を測定するために垂直方向に移動することを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記マスクは、複数の開口からなる配列を有し、前記センサは、複数の水平位置でのビーム電流を測定するために、水平方向に移動し、かつ複数の垂直位置でのビーム電流を同時に測定する多数のフィンガーを含んでいることを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項6】
前記発散検出器は、さらに水平入射角度値を得ることを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項7】
前記モジュールは、得られた垂直入射角度値に従って傾斜軸を調整することを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項8】
イオンビーム発生機構は、得られた垂直入射角度値に従ってイオンビームの発生を調整することを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項9】
入射イオンビームから矩形状のビームレットを得る矩形状開口の単一列を有するマスクと、
前記マスクから選択された距離だけ下流に配置され、種々の垂直位置でビーム電流を測定する垂直移動プロファイラーとを含み、
前記測定されたビーム電流値は、前記ビームレットの対するセンサ位置を示し、前記プロファイラーは、前記指示されたセンサ位置と予想されるセンサ位置とを比較し、前記入射イオンビームのビームレットに対する垂直入射角度値を得ることを特徴とする発散検出システム。
【請求項10】
前記マスクの開口は、水平方向の長さと、垂直方向の幅を有し、前記長さは前記幅よりも大きいことを特徴とする請求項9記載の発散検出システム。
【請求項11】
前記垂直移動プロファイラーは、水平方向の長さと、垂直方向の幅を有し、前記長さは前記幅よりも大きいことを特徴とする請求項9記載の発散検出システム。
【請求項12】
前記垂直移動プロファイラーは、前記指示されたセンサ位置および予想されるセンサ位置からのオフセット値を決定し、このオフセット値と選択された距離を用いて、垂直入射角度値を得ることを特徴とする請求項9記載の発散検出システム。
【請求項13】
入射イオンビームから複数のビームレットのアレーを得るための複数の開口からなる配列を含むマスクと、
前記マスクの下流で選択された距離に配置され、複数の垂直位置でビーム電流を測定し、かつ複数の水平位置で複数の測定値を得るための水平移動センサとを含み、
前記センサは、水平方向より垂直方向により長くなり、かつ複数の測定値を得るための複数のフィンガーを有して、前記複数の測定値から垂直入射角度値を得ることを特徴とする発散検出システム。
【請求項14】
前記開口の配列は、少なくとも5列かつ少なくとも10行からなることを特徴とする請求項13記載の発散検出システム。
【請求項15】
複数の測定値は、センサ位置を示し、前記センサは、位置のオフセット値を得るために、指示されたセンサ位置と予想されるセンサ位置とを比較し、前記垂直入射角度値は、前記位置のオフセット値と選択された距離の関数であることを特徴とする請求項13記載の発散検出システム。
【請求項16】
垂直入射角度値を得る方法であって、
マスクによって入射イオンビームから複数のビームレットのアレーを得る段階と、
前記マスクの下流で選択された距離にビームレットのアレーに対する垂直センサ位置を識別する段階と、
前記識別された垂直センサ位置と予想されるセンサ位置を比較して、垂直位置のオフセット値を決定する段階と、
前記垂直位置のオフセット値と選択された距離に従って、イオンビームに対する垂直入射角度値を決定する段階とを含んでいること特徴とする方法。
【請求項17】
さらに、垂直入射角度値から垂直プロファイルを編集する段階を含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
ビームレットのアレーは、矩形状ビームレットの単一列からなることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記ビームレットのアレーは、円形状のビームレットの複数列からなることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項20】
垂直センサ位置を識別する段階は、種々の垂直位置でビーム電流を測定するステップと、スレッショルド値を超えるビーム電流が測定される垂直センサ位置を識別するステップとを含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項21】
さらに、前記識別された垂直センサ位置に従って、フラックスの平均角度を決定する段階を含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記垂直角度入射角度に従って、垂直発散値を決定し、受け入れ可能な発散限界の範囲を越える前記垂直発散値でのビーム輸送および/または傾斜角度を調整するステップをさらに含むことを特徴とする請求項16記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−506239(P2008−506239A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520514(P2007−520514)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/024162
【国際公開番号】WO2006/014565
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(500266634)アクセリス テクノロジーズ インコーポレーテッド (101)
【Fターム(参考)】