説明

ピストンにコネクティングロッドを装着し回転可能に軸支する方法

本発明は、ピストン1にコネクティングロッド2を装着し回転可能に軸支する方法に関する。ピストン1は、同様のベアリング表面を備えるコネクティングロッド2の端部2aに回転可能に係合する湾曲したベアリング表面を有するベアリング部材3を備える。ベアリング部材3は、コネクティングロッド2の側に切欠き3aを備えるリング状の形状を有する。コネクティングロッドの端部2aは、ピストン1内へ切欠き3aを通して所定位置に配置され、所定位置では、コネクティングロッド2の端部2a及びベアリング部材3が、互いに略垂直にある。次いで、コネクティングロッド2の端部2aがベアリング部材3に接触するように、コネクティングロッド2若しくはピストン1が更に移動される。その後、相互のベアリング表面が合わされ、互いに略対応するようにするように、コネクティングロッド2及びピストン1の間の相対回転移動によってコネクティングロッド2の端部2a及びベアリング部材3が最終位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによるピストンにコネクティングロッドを装着し回転可能に軸支する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにおけるピストンとクランクシャフトの間の力の伝達路には、典型的には、コネクティングロッドが配置され、コネクティングロッドの一端は、エンジンのクランクシャフトに回転可能に取り付けられ、他端は、ピストンピンによりピストンに回転可能にそれぞれ取り付けられる。この構造は、ピストンピントピストンの間のベアリング表面と共に、コネクティングロッドの上端とピストンピンのベアリング表面を含む。ピストンピン上の曲げ荷重の大部分は、シリンダ内のガス力に由来し、クランク機構からのイナーシャや横力からは少ない。より高いシリンダ出力及びより高いシリンダ最大圧力により、燃焼からの増加した曲げガス力への増加したベアリング表面積に対する必要性がある。増加したシリンダ圧は、ベアリング表面上に上半分に最も影響する。しかし、下半分のベアリング上のベアリング荷重は、シリンダ圧と共に増加しないが、ピストン重力及びエンジン上のより高い速度と共に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ベアリング面積を増加する既知の解決策は、コネクティングロッドの上端で球形のベアリング表面を利用することである。これにより、コネクティングロッドの上端は、ピストン内部に配置されるベアリング表面に直接、回転可能に軸支され、別のピストンピンは不要となる。湾曲したベアリング表面の領域は、円筒形のものよりも幅が広く、増加したシリンダ圧の利用を可能とする。この種の従来の解決策の欠点は、コネクティングロッドの上端の増加した重量であり、これにより、コネクティングロッドは、補強されなければならず、エンジンの平衡度は、増加されなければならない。先行の解決策は、また、複雑であり、実装が面倒で時間がかかる。
【0004】
本発明の目的は、エンジン及びその実装において適用可能であり、ピストンにコネクティングロッドを回転可能に軸支するために湾曲したベアリング表面を利用する新規の解決策を提供し、先行の解決策の欠点を最小化することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、請求項1又は他の請求項に開示されるように実質的に満たすことができる。
【0006】
本発明の基本的な考えは、湾曲したベアリング表面を新しい態様で利用することであり、利用される設計及び寸法は、コネクティングロッドの端部及びピストン並びにその内部のベアリング部材と共に簡易で迅速な実装を可能とする。
【0007】
本発明によれば、ピストンは、同様のベアリング表面を備える前記コネクティングロッドの端部に回転可能に係合する湾曲したベアリング表面を有するベアリング部材を備える。ベアリング部材は、前記コネクティングロッドの側に切欠きを備えるリング状の形状を有する。コネクティングロッドの端部は、ピストン内へ切欠きを通して所定位置に配置され、所定位置では、コネクティングロッドの端部及びベアリング部材が、互いに略垂直にある。次いで、コネクティングロッドの端部がベアリング部材に接触するように、コネクティングロッド2若しくはピストン1が更に移動される。その後、相互のベアリング表面が合わされ、互いに略対応するようにするように、コネクティングロッド及びピストンの間の相対回転移動によってコネクティングロッドの端部及びベアリング部材が最終位置に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1a】本発明によるピストンに回転可能に軸支されるコネクティングロッドの装着の第1段階を示す図。
【図1b】図1aのA−A断面図。
【図2a】本発明によるピストンに回転可能に軸支されるコネクティングロッドの装着の第2段階を示す図。
【図2b】図2aのB−B断面図。
【図3a】図1a及び図1bによる実装の第1段階の原理を3次元バージョンとして示す図。
【図3b】図2a及び図2bによる実装の第2段階の原理を3次元バージョンとして示す図。
【図4】図2bのビューに対応し、実装の最終段階を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図では、参照符合1は、エンジンのピストンを指し、ピストンは、コネクティングロッド2の端部2aを回転可能に軸支するためにピストン1の内部に配置されたベアリング部材3を備える。ベアリング部材3は、リング状の部品であり、コネクティングロッド2の側に位置する切欠き3aを有する。図面を参照して、ピストン1に軸支されるコネクティングロッド2の実装は次の通り行われる。
【0010】
コネクティングロッド2の端部2a及びベアリング部材3を備えるピストン1の相互の回転位置は、端部2aがベアリング部材に対して凡そ直角なるように配置される(即ち、図1a,1b,3a)即ち、コネクティングロッド2の端部2aの回転軸5は、ベアリング部材3の曲率の軸6に関して直角である。本発明の観点から、原理上、コネクティングロッド2とピストン1のどちらの部品が回転されるかは重要でない。実際、コネクティングロッドが既にエンジンのクランクシャフト上に実装されている場合、ピストン1をコネクティングロッド2に対して回転する方が逆よりも容易である。この部品の相互位置では、コネクティングロッド2の端部2は、ベアリング部材3の切欠き3aを通って取り込まれる。同様に、実際には、ピストン1は、好ましくは、コネクティングロッド2の端部2aが、図1a及び3aに示すように、ベアリング部材3と接触するように、コネクティングロッド2に対して移動される。
【0011】
第2段階では、ベアリング部材3のベアリング表面及び端部2aは、図1a,2a、3bに示すように、ピストン1とコネクティングロッド2の間の相互の相対回転移動により、位置合わせ(アライン)される。実際、ピストン1は、ベアリング部材3と共に、好ましくは、図2a、2b、3b、4に示すような相互位置に到達するように、コネクティングロッド2に対して回転される。この位置では、軸5,6も一致する。次いで、実装を完了するために、ロック部材4は、図4に示すように、ピストン1内に挿入される。ロック部材4は、エンジンの動作中、コネクティングロッド2の対してその長手軸まわりのピストンの回転を防止する。
【0012】
図4は、また、別の部品及び要素の寸法を示す。従って、ベアリング部材3の幅は、その全体の外周が、実装後にコネクティングロッド2の端部2aの回転軸5の位置で、ピストン1の長手軸の断面内で多くて180度をカバーするように、寸法決定される。従って、コネクティングロッド2の端部2aは、その湾曲したベアリング表面の両側で平らな側面2bが存在するように(図参照)、形成される。これにより、湾曲した表面は、ピストンピンとの接続で利用される円筒形のものよりも非常に幅広くなることができる。しかし、ベアリング部材3は、球形のベアリング表面よりも製造が容易であり、ピストン1の下部で切欠き3aを通るコネクティングロッド2の端部2aの挿入を可能とする(図1a,3a参照)。この目的のため、切欠き3aは、当該挿入を可能とするように、同様に寸法決定されるべきである。実際、切欠き3aは、好ましくは、その回転軸5の方向でコネクティングロッド2の端部2aの幅に凡そ対応するように寸法決定されてもよい(図1a,3a参照)。この場合、切欠き3aに隣接する構造の下側部分の相互のベアリング表面は、エンジンの動作から生まれる慣性力及びクランク力を受けるのに依然として十分である。これらの力は、好ましくは、コネクティングロッド2の重量を減少するために、コネクティングロッドの端部に、いくらかの材料を機械加工で除去することにより、除去部2cを設けることによって、低減されることができる。
【0013】
図は、本発明の原理を示すだけである。従って、本発明は、示された実施例に限定されず、変更は、本発明の考え方の範囲内で実現可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンにコネクティングロッドを装着し回転可能に軸支する方法であって、
前記ピストンは、同様のベアリング表面を備える前記コネクティングロッドの端部に回転可能に係合する湾曲したベアリング表面を有するベアリング部材を備え、前記ベアリング部材は、前記コネクティングロッドの側に切欠きを備えるリング状の形状を有し、
当該方法は、
前記コネクティングロッドの端部を前記ピストン内へ前記切欠きを通して所定位置に配置する段階であって、前記所定位置では、前記コネクティングロッドの端部及び前記ベアリング部材が、互いに略垂直にある、段階と
前記コネクティングロッドの端部が前記ベアリング部材に接触するように、前記コネクティングロッド若しくは前記ピストンを更に移動する段階と、
相互のベアリング表面が合わされ、互いに略対応するようにするように、前記コネクティングロッド及び前記ピストンの間の相対回転移動によって前記コネクティングロッドの端部及び前記ベアリング部材を最終位置に配置する段階とを含む、方法。
【請求項2】
前記最終位置に配置する段階では、前記ピストンは、前記ベアリング部材と共に、前記コネクティングロッドの端部に関して軸まわりに約90度回転される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベアリング部材の幅は、その全体の外周が、実装後に前記コネクティングロッドの端部の回転軸の位置で、前記ピストンの長手軸の断面内で多くて180度をカバーするように、寸法決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記切欠きの幅は、回転軸方向で前記コネクティングロッドの端部の幅と略対応するように、寸法決定される、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コネクティングロッドの端部に対して前記ベアリング部材を適切に位置付けた後、ロック手段は、前記コネクティングロッドの端部と前記ピストンとの間の相互の回転運動を防止するために、前記コネクティングロッドの端部の側面に係合する前記ピストン内に挿入される、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コネクティングロッドの端部は、前記湾曲したベアリング表面の双方で装着後に前記ピストンの長手軸に平行に延在する平らな側面が存在するように、形成される、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
装着前に、材料が、前記コネクティングロッドの端部の一方側から機械加工で削られて、軽量化される、請求項6に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−531563(P2012−531563A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516808(P2012−516808)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050460
【国際公開番号】WO2011/001017
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(503129903)ワルトシラ フィンランド オサケユキチュア (73)
【Fターム(参考)】