説明

ピラゾロピリミジン誘導体

【課題】優れたCCR4あるいはTARC及び/又はMDCの機能調節作用を有し、種々の炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防及び/又は治療に用いることができる化合物の提供。
【解決手段】式(I)で示される、新規なピラゾロピリミジン誘導体又はその塩。
【化】


[式中の記号は、以下の意味を示す。-R1及び-R2:1つ以上のハロゲンで置換されていてもよいC1-C6アルキル、若しくは-H。-A-:単結合、若しくはメチレン。-R3:置換されていてもよいフェニル。-R4:置換されていてもよい環状アミノ。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なピラゾロピリミジン誘導体、及びそれを有効成分とする医薬、特に炎症性疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞遊走因子であるケモカインは構造的な特徴により大きくCXC/αケモカインと、CC/βケモカインの二種に分類される。また、これらケモカインの受容体は7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体ファミリーに属し、CXCケモカインレセプターとCCケモカインレセプターから構成されている(非特許文献1)。
CCケモカインレセプター4(CCR4)は、Tリンパ細胞及び胸腺からクローニングされ(非特許文献2、非特許文献3)、当初Th2タイプといわれるT細胞に主に発現していると報告されていた(非特許文献4)。しかし、その後の詳細な解析によりCCR4はTh1及びTh2のエフェクタ・メモリT細胞に広く存在することが示された(非特許文献5、非特許文献6)。さらに最近の研究では、CCR4はほとんどすべての皮膚指向性のT細胞(非特許文献7)及び単球・マクロファージ、樹状細胞、NK細胞に存在することも明らかにされている(非特許文献8)。
CCケモカインであるThymus and activation-regulated chemokine(TARC)とMacrophage-derived chemokine(MDC)はCCR4の特異的なリガンドである(非特許文献9、非特許文献10)。TARCはT細胞遊走因子として(非特許文献11)、またMDCは単球・マクロファージ、NK細胞の遊走因子として発見され(非特許文献12)、どちらのケモカインも炎症性ケモカインと恒常性ケモカインの特徴を併せ持つことが知られている(非特許文献13)。
【0003】
CCR4とそのリガンドであるTARC及びMDCは、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の様々な疾患に関与することが数多くの報告により示唆されている。例えば、喘息(非特許文献14)、アトピー性皮膚炎(非特許文献15)、乾癬(非特許文献16)、関節リウマチ(非特許文献17)、炎症性腸疾患(非特許文献18)等が挙げられる。従って、CCR4の機能調節剤は、これらの疾患等の予防又は治療剤として期待される。上記炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防又は治療剤としてはステロイド剤等、種々の薬剤が使用されているが、その治療効果と副作用の点から、新たな作用機序に基づく薬剤の開発が切望されている。
【0004】
例えば、下記式で示される化合物がTARC又はMDCの機能調節作用を有することが報告されている(特許文献1)。
【化2】

[式中の記号は当該公報を参照のこと。]
【0005】
また、例えば下記式で示される化合物が、CCR4の機能調節作用を有することが報告されている(特許文献2)。
【化3】

[式中の記号は当該公報を参照のこと。]
【0006】
また、IgE拮抗活性を有し、アレルギー性疾患や軟骨障害治療剤として有用な下記式で示されるキナゾリン誘導体が報告されている(特許文献3)。
【化4】

[式中の記号は当該公報を参照のこと。]
【0007】
しかし、本発明に係るピラゾロピリミジン誘導体についての開示や示唆は、上記のいずれの文献にもない。
【0008】
一方、本発明に係るピラゾロピリミジン誘導体と同じ骨格を有する化合物が報告されている(特許文献4、特許文献5、特許文献6)。
【化5】

[式中の記号は当該公報を参照のこと。]
しかし、当該文献には、これらの化合物がホスホジエステラーゼ5阻害剤であり、ホスホジエステラーゼ5関連疾患、特に高血圧の治療等に有用である旨が記載されているが、本発明に係るCCR4の機能調節作用、及びその作用に基づく疾患の治療可能性等については言及されていないし、示唆もない。
【0009】
【非特許文献1】Pharmacological Reviews, 52, 145, 2000
【非特許文献2】Biochemical and Biophysical Research Communications, 218, 337, 1996
【非特許文献3】European Journal of Immunology, 26, 3021, 1996
【非特許文献4】Journal of Experimental Medicine, 187, 875, 1998
【非特許文献5】Journal of Immunology, 166, 103, 2001
【非特許文献6】The Journal of Clinical Investigation, 108, 1331, 2001
【非特許文献7】Nature, 400, 776, 1999
【非特許文献8】Arthritis & Rheumatism, 44, 1022, 2001
【非特許文献9】Journal of Biological Chemistry, 272, 15036, 1997
【非特許文献10】Journal of Biological Chemistry, 273, 1764, 1998
【非特許文献11】Journal of Biological Chemistry, 271, 21514, 1996
【非特許文献12】Journal of Experimental Medicine, 185, 1595, 1997
【非特許文献13】Immunology Today, 20, 254, 1999
【非特許文献14】The Journal of Clinical Investigation, 107, 1357, 2001
【非特許文献15】Journal of Investigative Dermatology, 115, 640, 2000
【非特許文献16】Laboratory Investigation, 81, 335, 2001
【非特許文献17】Arthritis & Rheumatism, 44, 2750, 2001
【非特許文献18】Clinical & Experimental Immunology, 132, 332, 2003
【特許文献1】国際公開第WO 03/104230号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0048865号明細書
【特許文献3】特開2000-281660号公報
【特許文献4】国際公開第WO 2004/96810号パンフレット
【特許文献5】国際公開第WO 2005/49616号パンフレット
【特許文献6】国際公開第WO 2005/49617号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、CCR4の機能調節作用に基づく、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防及び/又は治療に有用な医薬組成物を提供すること、さらにはこれらを含有する医薬を提供することを目的として研究を行った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、CCR4の機能調節作用を有する化合物につき鋭意検討した結果、新規なピラゾロピリミジン誘導体がCCR4の機能調節剤として有用であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明によれば、下記式(I)で示される新規なピラゾロピリミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩が提供される。
【0012】
【化6】

[式中の記号は、以下の意味を示す。
-R1:当該ピラゾール環の窒素上の置換基であって、1つ以上のハロゲンで置換されていてもよいC1-C6アルキル、若しくは-H。
-R2:1つ以上のハロゲンで置換されていてもよいC1-C6アルキル、若しくは-H。
-A-:単結合、若しくはメチレン。
-R3:置換されていてもよいフェニル。
-R4:置換されていてもよい環状アミノ。]
【0013】
なお、式(I)における-R1又は-R2として好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、t-ブチル、及び2,2,2-トリフルオロエチルであり;より好ましくは、メチル、エチル、及びn-プロピルであり;特に好ましくは、メチル、及びエチルである。ここで、-R1は、当該ピラゾール環の1位の窒素に置換していることが好ましい。
また、式(I)における-R3として好ましくは、少なくとも1つのハロゲンで置換されたフェニルであり;より好ましくは、2つのハロゲンで置換されたフェニルであり;特に好ましくは、4-クロロ-2-フルオロフェニルである。
また、式(I)における-R4として好ましくは、置換されたピペリジン、及び置換されたピペラジンである。
【0014】
式(I)で示される本発明化合物は、ピラゾロピリミジン骨格を有し、当該ピラゾロピリミジン環の7位が置換されていてもよいアニリン、若しくは置換されていてもよいベンジルアミンで置換され、5位が環状アミノで置換されている点に化学構造上の特徴を有し、CCR4の機能調節作用を有する点に薬理学上の特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のピラゾロピリミジン誘導体は、CCR4あるいはTARC及び/又はMDCの機能調節作用を有することから、種々の炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防及び/又は治療薬として有用である。具体的な疾患としては、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、皮膚炎(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎)、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インスリン依存型糖尿病(1型糖尿病)、臓器移植時の拒絶反応、癌、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、間質性膀胱炎、敗血症、疼痛等を挙げることができる。特に、喘息、アトピー性皮膚炎、又は関節リウマチの予防及び/又は治療薬として期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「アルキル」とは、直鎖又は分枝状の炭素鎖の1価基を意味する。従って、「C1-C6アルキル」とは、具体的には例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル等が挙げられ、好ましくはC1-C3アルキルである、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルである。
「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ若しくはヨードであり、好ましくはフルオロ、クロロ若しくはブロモである。
「環状アミノ」とは、少なくとも1つの窒素原子を有し、さらに窒素、酸素及び酸化されていてもよい硫黄からなる群より選択される同一又は異なるヘテロ原子を1つ以上有していてもよい、環員数3乃至8の非芳香族環状アミンの1価基を意味する。なお、特に-R4においては、必ずしも当該環状アミンの窒素原子が、当該ピラゾロピリミジン環と結合するための結合手を有している必要はなく、当該環状アミンの炭素原子と当該ピラゾロピリミジン環が直接結合していてもよい。具体的には例えば、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、ピペラジン、ホモピペラジン、モルホリン、オキサゼパン、チオモルホリン、チアゼパン等の1価基を挙げることができる。なお、これらの環は、ジヒドロピロール、テトラヒドロピリジン、テトラヒドロアゼピン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、ジヒドロオキサジン、チアゾリジン、ジヒドロチアジン等のごとく、環の一部に不飽和結合を有していてもよい。
【0017】
本明細書において、「置換されていてもよい」、「置換された」の語の許容される置換基としては、それぞれの基の置換基として通常用いられる置換基であればいずれでもよい。また、これらの置換基は各々の基に2つ以上存在していてもよい。
【0018】
-R3の「置換されていてもよいフェニル」において許容される置換基としては、ハロゲン、-OH、-O-RZ、-OCO-RZ、-SH、-S-RZ、-SO-RZ、-SO2-RZ、-SO3H、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいスルファモイル、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいアミノ、-NHCO-RZ、-NHCO2-RZ、-NHSO2-RZ、ニトロ、-CHO、-CO-RZ、カルボキシル、-CO2-RZ、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいカルバモイル、シアノ、及びRZを挙げることができる。ここで、「RZ」とは、-OH、-O-(C1-C6アルキル)、-OCO-(C1-C6アルキル)、カルボキシル、-CO2-(C1-C6アルキル)、1つ又は2つのC1-C6アルキルで置換されていてもよいカルバモイル、シアノ、1つ又は2つのC1-C6アルキルで置換されていてもよいアミノ、及びハロゲンからなる群より選択される1つ以上の基で置換されていてもよいC1-C6アルキルを示す(以下同様)。
【0019】
-R4の「置換されていてもよい環状アミノ」において許容される置換基としては、ハロゲン、-OH、-O-RZ、-OCO-RZ、オキソ(=O)、-SH、-S-RZ、-SO-RZ、-SO2-RZ、-SO3H、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいスルファモイル、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいアミノ、-NHCO-RZ、-NHCO2-RZ、-NHSO2-RZ、ニトロ、-CHO、-CO-RZ、カルボキシル、-CO2-RZ、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいカルバモイル、シアノ、及びRZを挙げることができる。また、これらの他に、-R4の「置換されていてもよい環状アミノ」において許容される置換基として以下の式(II)で示される基を挙げることができる。
【化7】

[式中の記号は、以下の意味を示す。
-Y-:単結合、-CH2-、-CO-、-CO-(C1-C6アルキレン)、-NHCO-、-N(RZ)-CO-、-NH-、-N(RZ)-、-CH2NH-、若しくは-CH2N(RZ)-。
-R40:C3-C8シクロアルキル、若しくは非芳香族ヘテロ環。なお、これらの基はそれぞれ置換されていてもよい。]
【0020】
ここで、「アルキレン」とは、直鎖又は分枝状の炭素鎖の2価基を意味する。従って、「C1-C6アルキレン」とは、具体的には例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、メチルエチレン、ジメチルエチレン、エチルメチレン等が挙げられ、好ましくはメチレン、及びエチレンである。
また、「シクロアルキル」とは、炭素からなる非芳香環の1価基を意味し、これらは部分的に不飽和結合を有していてもよい。従って、「C3-C8シクロアルキル」とは、具体的には例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロブテニル、シクロヘキセニル、シクロオクタジエニル等を挙げることができる。
また、「非芳香族ヘテロ環」とは、窒素、酸素及び酸化されていてもよい硫黄からなる群より選択される同一又は異なる1つ以上のヘテロ原子を含む環員数4乃至7の非芳香環の1価基を意味し、これらは部分的に不飽和結合を有していてもよい。具体的には例えば、上記の環状アミノの他、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフラン、テトラヒドロチオピラン、ジオキソラン、ジオキサン等の1価基を挙げることができる。
【0021】
-R40における、置換されていてもよい「C3-C8シクロアルキル」、及び「非芳香族ヘテロ環」において許容される置換基としては、ハロゲン、-OH、-O-RZ、-OCO-RZ、オキソ(=O)、-SH、-S-RZ、-SO-RZ、-SO2-RZ、-SO3H、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいスルファモイル、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいアミノ、-NHCO-RZ、-NHCO2-RZ、-NHSO2-RZ、ニトロ、-CHO、-CO-RZ、カルボキシル、-CO2-RZ、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいカルバモイル、シアノ、及びRZを挙げることができる。
【0022】
本発明化合物(I)は、置換基の種類によっては幾何異性体や互変異性体が存在する場合がある。また、本発明化合物(I)は、不斉炭素原子を有する場合がある。本発明には、これら異性体の分離したもの、あるいは混合物が包含される。また、ラベル体、即ち、本発明化合物の1つ以上の原子を放射性同位元素若しくは非放射性同位元素で置換した化合物も本発明に包含される。
さらに、本発明には、本発明化合物(I)の薬理学的に許容されるいわゆるプロドラッグも包含される。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により、若しくは生理学的条件下で本発明のアミノ基、水酸基、カルボキシル基等に変換できる基を有する化合物であり、このようなプロドラッグを形成する基としては、Prog. Med.、第5巻、2157-2161ページ、1985年や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計 163-198ページに記載の基を挙げることができる。
【0023】
化合物(I)は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合がある。かかる塩は、製薬学的に許容される塩であればよく、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等を挙げることができる。
さらに、本発明は、本発明化合物(I)及びその塩の各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質をも包含する。
【0024】
(製造法)
本発明の有効成分である化合物(I)及びその製薬学的に許容される塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては、例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等があり、それらの保護基としては、例えばグリーン(T.W.Greene)及びウッツ(P.G.M.Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の保護基を挙げることができ、これらの反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法によれば、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、あるいは所望の基に転化することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、本発明化合物(I)のプロドラッグは、上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入あるいは得られた化合物(I)を用い反応を行うことで製造できる。反応は、通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。
【0025】
<中間体製法>
【化8】

(式中、-R1、-R2、-A-、及び-R3はそれぞれ前述の意味を示す。以下同様。)
本製法は、(1a)で示されるジクロロピリミジンに対し、(1b)で示されるアニリン若しくはベンジルアミン誘導体を作用させ、式(1c)で示されるクロロピリミジン誘導体を製造する方法である。
(1a)と(1b)との反応は、常圧又は加圧下に、溶媒の不存在下若しくは適当な溶媒中で行われる。
溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類;メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、2-プロパノール(iPrOH)等のアルコール類;アセトニトリル;ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;水;あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。本反応は塩基の存在下に行うのが好ましく、塩基の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルコキシド;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の3級アミン;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、ピリジン、ルチジン等の有機塩基等を挙げることができるが、(1b)の過剰量で兼ねることもできる。反応温度は、原料化合物の種類、反応条件等により異なるが、通常室温から溶媒の還流温度程度で行うことができる。
なお、製造原料である(1b)は、その塩として反応に供することもできる。また、製造原料である(1a)は、本明細書の参考例に記載の方法、又は例えば前述の特許文献4、5、若しくは6に記載の方法、あるいはそれらに準じた方法により、容易に製造することができる。
【0026】
<第1製法>
【化9】

(式中、-R4は前述の意味を示す。以下同様。)
本製法は、中間体製法で製造した(1c)に対し、(2a)で示される環状アミン誘導体を作用させ、式(I)で示される本発明化合物を製造する方法である。
反応は、中間体製法で示した方法に準じて行うことができる。また、本明細書の実施例に記載の方法、若しくはそれに準じた方法を採用することができる。
【0027】
<第2製法>
【化10】

(式中、-R41は、前述の式(II)等の、-R4の「置換されていてもよい環状アミノ」において許容される置換基を示す。)
本製法は、中間体製法で製造した(1c)に対し、(3a)で示されるピペラジン若しくはその保護体を作用させ、必要に応じた脱保護により得られるピペラジン誘導体(3b)に対して適切な官能基導入を行うことにより、式(I)で示される本発明化合物のうち、-R4が置換されていてもよい環状アミノのうちの置換されていてもよいピペラジンである場合の式(I’)で示される本発明化合物を製造する方法である。
step 3-1は、(1c)のクロロをピペラジンで置換する反応であり、(3a)として使用するピペラジンは、保護されていないピペラジンはもちろん、例えばt-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアミノ基の保護基で一方の窒素原子が保護されたピペラジンを用いることができる。また、これらのピペラジン誘導体は、塩を形成した状態で反応に供することもできる。
反応は、中間体製法で示した方法に準じて行うことができる。また、本明細書の参考例若しくは実施例に記載の方法、又はそれに準じた方法を採用することができる。また、(3a)として保護されたピペラジンを用いた場合には、その保護基を脱保護するに適した反応により脱保護することにより(3b)に導くことができる。これらの脱保護反応については、前述の「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の方法を参照することができる。
step 3-2は、(3b)のピペラジン上の窒素原子に官能基を導入する反応であり、代表的には、アシル化、アルキル化を挙げることができる。
例えば、アシル化は、当業者が通常用いるアシル化反応を採用することができるが、特に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)存在下、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)や、ジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボニルジイミダゾール、ジフェニルホスホリルアジド、ジエチルホスホリルシアニド等の縮合剤を作用させる方法が好適に用いられる。使用する縮合剤等の反応条件により異なるが、通常、エーテル類;芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル(EtOAc)等エステル類;アセトニトリル;非プロトン性極性溶媒等の反応に不活性な有機溶媒中、冷却下、冷却乃至室温下、若しくは室温乃至加熱下に行われる。
また、例えばアルキル化は、当業者が通常用いるアルキル化反応を採用することができ、エーテル類;芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;アセトニトリル;非プロトン性極性溶媒等の反応に不活性な有機溶媒中、冷却下、冷却乃至室温下、若しくは室温乃至加熱下に、炭酸アルカリ;炭酸水素アルカリ;アルコキシド;3級アミン;有機塩基等の塩基存在下に行うことができる。
【0028】
さらに、式(I)で示されるいくつかの化合物は、以上のように製造された本発明化合物から、公知のアルキル化、アシル化、置換反応、酸化、還元、加水分解、脱保護等、当業者が通常採用しうる工程を任意に組み合わせることにより製造することもできる。
【0029】
上記の各製法により得られた反応生成物は、遊離化合物、その塩あるいは水和物等の各種の溶媒和物として単離され精製される。塩は通常の造塩処理に付すことにより製造できる。
単離、精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、ろ過、再結晶、各種クロマトグラフィー等の、通常の化学操作を適用して行われる。
各種異性体は、異性体間の物理化学的な性質の差を利用して、常法により単離できる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法、例えば分別結晶化又はクロマトグラフィー等により分離できる。また、光学異性体は、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
【0030】
本発明化合物の薬理活性は以下の試験により確認した。
【0031】
1.CCR4を介した[35S]GTPγS結合試験に対する作用
(1)Human CCR4発現細胞株の取得
EF-1αプロモーター下流にヒトCCR4遺伝子を挿入したベクター(ネオマイシン耐性遺伝子含む)を作製し、マウスpre B細胞株B300-19細胞にエレクトロポレーション法によりトランスフェクションした。これらの細胞をG418添加培地で培養し、限界希釈法によりヒトCCR4を恒常的かつ安定に発現する単一の細胞株を取得した。
(2)Human CCR4発現細胞株膜画分の調整
ヒトCCR4発現細胞を回収しPBSで洗浄した後、Lysis Buffer(10 mM Hepes pH 7.5, 2 mM EDTA, protainase inhibitor)で懸濁した。懸濁液を氷上に15分間置いた後、ホモジェナイザーにより細胞を破砕し遠心した(20000 rpm, 10 min, 4℃)。さらに上清を超遠心(22K, 30 min, 4℃)した後、ペレットをPBSに懸濁したものを膜画分として以後の実験に用いた。
(3)GTPγS結合試験
試験化合物は、各濃度を20 mM Hepes pH 7.05、100 mM NaCl、5 mM MgCl2、GDP 2 μM、Human MDC、[35S]GTPγS 150 pM、Wheatgerm agglutinin SPA beads 1 mg及びHuman CCR4発現細胞株膜画分1 μgを含有する反応混合液中で1時間30分、室温で反応させ放射活性を測定した。
その結果、実施例10、実施例26、実施例33、実施例37、実施例53の化合物は、100 nM以下の阻害活性値(IC50)を示した。
【0032】
2.マウスオキサゾロン誘発接触性皮膚炎に対する作用
Balb/cマウス(6〜10週齢、雌性、日本チャールス・リバー社)の腹部に3%オキサゾロン/エタノール溶液150 μl(シグマアルドリッチジャパン)を塗布により感作した。感作後6日目に1%オキサゾロン/エタノール溶液10 μlを右耳の両面に塗布した。試験薬物投与はオキサゾロン溶液の塗布12時間後に実施し(試験薬物投与群)、コントロール群には試験薬物を溶解するのに用いた溶媒のみを投与した。右耳介の厚みは塗布前と20時間後にシックネスゲージ(ミツトヨ)を用いて測定し、腫れ(厚み増加分=20時間後測定値−塗布前測定値)を算出した。抑制率は感作せずにオキサゾロン溶液を塗布した群をノーマル群として下式により計算した。なお、上記試験は、一群5匹で実施した。
抑制率=(コントロール群の腫れ−試験薬物投与群の腫れ)×100/(コントロール群の腫れ−ノーマル群の腫れ)
その結果、実施例1の化合物は、30 mg/kg経口投与で、良好な抑制活性を示した。
【0033】
3.マウスコラーゲン誘発関節炎に対する作用
マウスコラーゲン誘発関節炎に対する作用はThe Japanese Journal of Pharmacology, 88, 332 (2002)に記載の方法を用いて評価することができる。
上記の各試験例以外にも、例えばImmunology, 98, 345 (1999)に記載のマウス喘息モデル、Journal of Investigative Dermatorogy, 111, 86 (1998)に記載のオキサゾロン誘発慢性接触性皮膚炎モデル(アトピー性皮膚炎モデル)等、抗炎症作用を評価するために一般的に用いられる各種評価モデルにより、本発明化合物の薬理作用を確認することができる。
以上の試験結果より、本発明化合物は、CCR4或いはTARC及び/又はMDCの機能調節作用を有することから、種々の炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防・治療薬として有用であることが確認された。
【0034】
化合物(I)又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、経口投与の場合、成人1日当たり0.001 mg/kg乃至100 mg/kg程度であり、これを1回で、あるいは2〜4回に分けて投与する。また、症状によって静脈投与される場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至10 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。また、吸入の場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至1 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、一つ又はそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
【0035】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体、半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば、ラクトースや澱粉のような賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
外用剤としては、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等を包含する。一般に用いられる軟膏基剤、ローション基剤、水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤等を含有する。例えば、軟膏又はローション基剤としては、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、白色ワセリン、サラシミツロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウロマクロゴール、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例に基づき本発明化合物(I)の製法を更に詳細に説明する。本発明は下記実施例に記載の化合物の発明に限定されるものではない。また原料化合物の製法を参考例に示す。なお、参考例、実施例及び後記の表中、以下の略号を用いる。
F:FAB-MS(M+H)+、FN:FAB-MS(M-H)-、ES:ESI-MS(M+H)+、ESN:ESI-MS(M-H)-、EI:EI-MS(M+)、AP:APCI-MS(M+H)+、APN:APCI-MS(M-H)-
【0037】
参考例1
4-アミノ-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミドを炭酸カリウム存在下、炭酸ジフェニルと反応させ、1,3-ジメチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5,7(4H,6H)-ジオンを得た。これをトリn-プロピルアミン存在下、オキシ塩化リンと反応させることにより、5,7-ジクロロ-1,3-ジメチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジンを得た。
ES:218.
【0038】
参考例2
4-アミノ-3-エチル-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミドをトリエチルアミン存在下、トリホスゲンと反応させ、3-エチル-1-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5,7(4H,6H)-ジオンを得た。これをトリn-プロピルアミン存在下、オキシ塩化リンと反応させることにより、5,7-ジクロロ-3-エチル-1-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジンを得た。
F:231.
【0039】
以下の表1に示す参考例3〜参考例10の化合物を、参考例1若しくは参考例2の方法と同様に、対応する原料を用いて製造した。
なお、表中の記号は以下の意味を示す。
Rf:参考例番号。
Data:物理学的データ。
R1、R2:一般式中の置換基(Me:メチル、Et:エチル、FEt:2,2,2-トリフルオロエチル、nPr:n-プロピル、tBu:tert-ブチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、Boc:tert-ブチルオキシカルボニル、TBS:tert-ブチルジメチルシリル、di:ジ、tri:トリ。置換基の前の数字は置換位置を示す。従って、例えば2,6-diF-4-Cl-Phは2,6-ジフルオロ-4-クロロフェニルを、2-F-4-Cl-Bnは2-フルオロ-4-クロロベンジルを意味する。以下同様。)。
Syn:製造方法(数字はその番号を参考例番号として有する参考例化合物と同様に、対応する原料を用いて合成したことを示す)。
【0040】
【表1】

【0041】
参考例11
参考例2の方法と同様に、5,7-ジクロロ-2-エチル-3-メチル-2H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジンを得た。
F:231.
【0042】
参考例11−a
参考例2の方法と同様に、5,7-ジクロロ-2,3-ジメチル-2H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジンを得た。
F:217.
【0043】
参考例11−b
参考例2の方法と同様に、5,7-ジクロロ-3-エチル-2-メチル-2H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジンを得た。
F:231.
【0044】
参考例12
5,7-ジクロロ-1,3-ジメチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジンにカリウムt-ブトキシド存在下、4-クロロ-2-フルオロアニリンを反応させ、5-クロロ-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミンを得た。
ES:327.
【0045】
参考例17
5,7-ジクロロ-1-メチル-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジンにジイソプロピルエチルアミン存在下、4-クロロ-2-フルオロベンジルアミン塩酸塩を反応させ、5-クロロ-N-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)メチル]-1-メチル-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミンを得た。
ES:369.
【0046】
以下の表2に示す参考例13〜参考例16、参考例18〜25の化合物を、参考例12若しくは参考例17の方法と同様に、対応する原料を用いて製造した。
【0047】
【表2】

【0048】
参考例26
参考例12の方法と同様に、5-クロロ-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-エチル-3-メチル-2H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミンを得た。
F:340.
【0049】
参考例26−a
参考例12の方法と同様に、5-クロロ-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2,3-ジメチル-2H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミンを得た。
F:326.
【0050】
参考例26−b
参考例12の方法と同様に、5-クロロ-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-3-エチル-2-メチル-2H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミンを得た。
F:340.
【0051】
参考例27
5-クロロ-N-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)メチル]-1-メチル-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミンとピペラジンを反応させることにより、N-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)メチル]-1-メチル-5-ピペラジン-1-イル-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミンを得た。
ES:418.
【0052】
以下の表3に示す参考例28〜参考例31の化合物を、参考例27の方法と同様に、対応する原料を用いて製造した。
【0053】
【表3】

【0054】
参考例32
tert-ブチル 4-オキソピペリジン-1-カルボキシラート、3-ピペリジンメタノール、10%パラジウム担持炭素及びMeOHの混合物を、水素雰囲気下攪拌して、tert-ブチル 3-(ヒドロキシメチル)-1,4’-ビピペリジン-1'-カルボキシラートを得た。ES:299.
【0055】
参考例33
tert-ブチル 4-オキソピペリジン-1-カルボキシラートと(3S)-ニペコチン酸エチルを用いて参考例34と同様にしてtert-ブチル (3S)-3-(エトキシカルボニル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボキシラート(ES: 341)を得た。このTHF溶液を水酸化ホウ素リチウムのTHF懸濁液に加え、加熱還流下攪拌することにより、tert-ブチル (3S)-3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボキシラートを得た。
ES:299.
【0056】
参考例35
tert-ブチル 3-(エトキシカルボニル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボキシラートを水酸化ナトリウム水溶液で加水分解し、1’-(tert-ブトキシカルボニル)-1,4’-ビピペリジン-3-カルボン酸とした後、これをEDCI、HOBT、炭酸アンモニウムと反応させることにより、目的化合物tert-ブチル 3-(アミノカルボニル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボキシラートを得た。
F:312.
【0057】
参考例37
2,4’-ビピペリジン2塩酸塩をトリエチルアミン存在下、ビス tert-ブチルジカルボナートと反応させtert-ブチル 2,4’-ビピペリジン-1’-カルボキシラートとした後、これに炭酸カリウム存在下、[(3-ブロモプロピル)オキシ] tert-ブチルジメチルシランを反応させることにより、目的化合物tert-ブチル 1(3-{[tert-ブチルジメチルシリル]オキシ}プロピル)-2,4’-ビピペリジン-1’-カルボキシラートを得た。
F:441.
【0058】
参考例39
tert-ブチル 4-オキソピペリジン-1-カルボキシラート、シクロブチルアミン、10%パラジウム炭素及びメタノール混合物を、水素雰囲気下攪拌して、tert-ブチル 4-(シクロブチルアミノ)ピペリジン-1-カルボキシラートを得た。
ES:255.
【0059】
以下の表4に示す参考例34、参考例36、参考例38、参考例38−a、参考例40の化合物を、参考例33、参考例35若しくは参考例37の方法と同様に、対応する原料を用いて製造した。
【0060】
【表4】

【0061】
参考例41
tert-ブチル 3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボキシラートをMeOH中、4M HCl-EtOAc溶液で処理して、1,4'-ビピペリジン-3-メタノール 二塩酸塩を得た。
ES:199.
【0062】
以下の表5に示す参考例42〜参考例49の化合物を、参考例41の方法と同様に、対応する原料を用いて製造した。但し、これらの化合物はすべて2塩酸塩として製造された。
【0063】
【表5】

【0064】
実施例1
5-クロロ-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-1-メチル-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミン(200 mg)、1,4’-ビピペリジン-3-イルメタノール2塩酸塩(151 mg)、DBU(258 mg)を1,2-ジエトキシエタン(40 mL)に加え、4日間加熱還流した。反応溶液を濃縮後、残渣にクロロホルムと水を加え、有機層を分液し、さらに水層をクロロホルムで抽出した。有機層を合わせ飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにて精製することにより(1’-{7-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-1-メチル-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル}-1,4’-ビピペリジン-3-イル)メタノール(89 mg)を得た。これをMeOH(60 mL)に溶かし、4M HCl-EtOAc溶液(0.13 mL)を加えた。溶媒を減圧留去した後、得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄することにより、 (1’-{7-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-1-メチル-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル}-1,4’-ビピペリジン-3-イル)メタノール 二塩酸塩(85 mg)を白色粉末として得た。
【0065】
以下の表6〜表12に示す実施例2〜実施例25、実施例35、実施例38〜実施例52の化合物を、実施例1の方法と同様に、対応する原料を用いて製造した。
【0066】
実施例26
DMF(10 mL)にN-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-メチル-5-ピペラジン-1-イル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミン(231 mg)、(2R)-1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-2-カルボン酸(140 mg)、HOBt(91 mg)、EDCI(128 mg)を順次加え、室温にて4日間攪拌した。反応溶液にクロロホルム、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分液した。次いで、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにて精製することによりtert-ブチル (2R)-2-{[4-(7-{[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)メチル]アミノ}-3-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)ピペラジン-1-イル]カルボニル}ピペリジン-1-カルボキシラート(181 mg)を得た。これをMeOH(5 mL)に溶かし、4M HCl-EtOAc溶液(0.79 mL)を加え、3日間室温にて攪拌した。溶媒を減圧留去した後、得られた残渣をジイソプロピルエーテルにて洗浄することにより、目的化合物N-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-メチル-5-{4-[(2R)-ピペリジン-2-イルカルボニル]ピペラジン-1-イル}-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミン 二塩酸塩(144 mg)を淡黄色固体として得た。
【0067】
以下の表6〜表12に示す実施例27〜実施例34、実施例36、実施例37の化合物を、実施例27の方法と同様に、対応する原料を用いて製造した。
なお、表中の記号は以下の意味を示す。
Ex:実施例番号。
Salt:塩(HCl:塩酸塩、2HCl:二塩酸塩、無記載:フリー体)。
R1/R2/A/R3/X、R4:一般式中の置換基(sb:単結合。従って、例えば「R1/R2/A/R3/X」の欄に「Me/nPr/sb/2-F-4-Cl-Ph/CH」と記載されている場合、その実施例番号の化合物の構造は、一般式におけるR1がメチル、R2がn-プロピル、Aが単結合、R3が2-フルオロ-4-クロロフェニル、XがCHであることを意味する。以下同様。)。
【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
【表8】

【0071】
【表9】

【0072】
【表10】

【0073】
【表11】

【0074】
【表12】

【0075】
実施例53
実施例1の方法と同様に、[(3S)-1’-{7-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-2-エチル-3-メチル-2H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル}-1,4’-ビピペリジン-3-イル]メタノール 二塩酸塩を得た。
F:502.
【0076】
実施例54
実施例1の方法と同様に、(1’-{7-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-2,3-ジメチル-2H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル}-1,4’-ビピペリジン-3-イル)メタノール 二塩酸塩を得た。
F:488.
【0077】
実施例55
実施例1の方法と同様に、[(3S)-1’-{7-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-3-エチル-2-メチル-2H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル}-1,4’-ビピペリジン-3-イル]メタノール 二塩酸塩を得た。
F:502.
【0078】
以下の表13に、いくつかの実施例化合物のNMRデータを示す。なお、これらのデータは各化合物の特徴的ピークのみを抜粋して記載している。また、表中の記号は以下の意味を示す。
NMR:NMRデータ(テトラメチルシランを内部標準とし、DMSO-d6を測定溶媒とした1H-NMRにおけるピークのδ(ppm)。)。
【0079】
【表13】

【0080】
実施例101
5-クロロ-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミン(0.5 g)、4-ピペリジノール(0.45 g)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(0.56 ml)、及びジオキサン(20 ml)の混合溶液を100 ℃で加熱攪拌することにより1-{7-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル}ピペリジン-4-オール(0.23 g)を得た。
上記の生成物(0.35 g)、トリエチルアミン(1.2 ml)、DMSO(1.2 ml)、ジクロロメタン(4 ml)の混合溶液を、別に調製したSO3・ピリジン(0.55 g)、DMSO(1.2 ml)、ジクロロメタン(4 ml)混合溶液に氷冷下攪拌しながら滴下、4 ℃にて2時間攪拌させた後SO3・ピリジン(0.29 g)加えて4 ℃にて1時間攪拌させ、水(4 ml)を加えてクロロホルム−iPrOHにて抽出、飽和食塩水にて洗浄し、粗精製の1-{7-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル}ピペリジン-4-オンを得た。
この粗精製物にジクロロメタン(27 ml)を加えて調製した溶液を試験管に分注(0.9 ml)し、更にシクロペンチルアミン(8.5 mg)、酢酸(0.1 ml)、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(21 mg)を加えて室温下10時間攪拌した。この反応液に1M水酸化ナトリウム水溶液(3 ml)を加え、クロロホルム(4 ml)にて抽出、有機層を洗浄、減圧下溶媒留去して得られた残渣を適当な溶媒(およそ0.5 ml)にて溶解させ、分取カラム(ウォーターズ社製 Symmetryカラム C 18 5 μm 19ψ×100 mm)により精製(0.1%蟻酸水溶液/MeOH 0分(9:1)−1分(9:1)−9分(5:95)−12分(5:95))し、N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-5-[4-(シクロペンチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミン(3.8mg)を得た。
【0081】
以下の表14に示す実施例102〜実施例114の化合物を、実施例101の方法と同様に、対応する原料を用いて製造した。
【0082】
実施例115
1-ベンジルピペリジン-4-オン(2 g)、40%メチルアミン水溶液(5.4 ml)、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(2.7 g)及びジクロロエタン(20 ml)、酢酸(2 ml)の混合物を、室温下攪拌して、1-ベンジル-N-メチルピペリジン-4-アミンの粗精製物(2.2 g)を得た。
この生成物のTHF(40 ml)溶液にトリエチルアミン(3 ml)、ジ-tert-ブチルジカーボナート(3 ml)を加え、tert-ブチル (1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチルカーバマート(2.2 g)を得た。
この生成物のEtOH溶液(10 ml)に10%パラジウム担持炭素(100 mg)を加え、水素雰囲気下室温にて攪拌し、tert-ブチル メチル(ピペリジン-4-イル)カーバマート(1.2 g)を得た。
この生成物(0.48 g)と5-クロロ-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミン(0.5 g)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(0.67 ml)、及びジオキサン(5 ml)の混合溶液を100 ℃下加熱攪拌することにより、(1-{7-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル}ピペリジン-4-イル)メチルカーバマート(0.2 g)を得た。
この生成物にトリフルオロ酢酸(5 ml)を加え、粗精製のN-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-1-エチル-3-メチル-5-[4-(メチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-アミン(0.17 g)を得た。
この生成物(0.17 g)にHOBt(55 mg)、DMF(15 ml)を加えて調整した混合溶液を試験管に分注(0.5 ml)し、更にN-メチル-L-プロリン(13 mg)、PS-カルボジイミド(アルゴノート社製、およそ0.1 g)を加えて室温下10時間攪拌した。レジンを適当なフィルターにて除き、有機溶媒を留去させて得られた残渣を適当な溶媒(およそ0.5 ml)にて溶解させ、分取カラム(ウォーターズ社製 Symmetryカラム C 18 5 μm 19ψ×100 mm)により精製(0.1%ギ酸水溶液/MeOH 0分(9:1)−1分(9:1)−9分(5:95)−12分(5:95))し、(S)-N-(1-{7-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル}ピペリジン-4-イル)-N,1-ジメチルピロリジン-2-カルボキサミド(3.9 mg)を得た。
【0083】
以下の表14〜表16に示す実施例116〜実施例154の化合物を、実施例115の方法と同様に、対応する原料を用いて製造した。なお、実施例115のN-メチル-L-プロリンに相当する原料において、2級アミンの構造を有する原料を用いる場合には、当該アミンをtert-ブチルオキシカルボニルで保護したカルボン酸誘導体を上記方法で縮合させた後、tert-ブチルオキシカルボニルを脱保護することにより、目的とする実施例化合物を得た。
また、表中の記号は以下の意味を示す。
Ex:実施例番号。
R:一般式中の置換基(cPen:シクロペンチル、cHex:シクロヘキシル、cHep:シクロヘプチル、THP:テトラヒドロピラニル、pipe:ピペリジニル、pyrr:ピロリジニル、mor:モルホニル。従って、例えばNH-(1-CO2Et-4-pipe)は1-エトキシカルボニルピペリジン-4-イルアミノを、NMeCO-(4,4-diF-2(S)-pipe)は(2S)-(4,4-ジフルオロピペリジン-2-イルカルボニル)(メチル)アミノを、NEtCO-CH2-3(RS)-pyrrは(3RS)-(ピロリジン-3-イルメチルカルボニル)(エチル)アミノを意味する。以下同様。)。
【0084】
【表14】

【0085】
【表15】

【0086】
【表16】

【0087】
以下の表17〜表22に本発明の別の化合物の構造を示す。これらは、上記の参考例や実施例に記載の方法、及び当業者にとって自明である方法、又はこれらの変法を用いることにより、容易に製造することができる。なお、表中の記号は以下の意味を示す。
No:化合物番号。
Str:化学構造。
【0088】
【表17】

【0089】
【表18】

【0090】
【表19】

【0091】
【表20】

【0092】
【表21】

【0093】
【表22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示されるピラゾロピリミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
【化1】

[式中の記号は、以下の意味を示す。
-R1:当該ピラゾール環の窒素上の置換基であって、1つ以上のハロゲンで置換されていてもよいC1-C6アルキル、若しくは-H。
-R2:1つ以上のハロゲンで置換されていてもよいC1-C6アルキル、若しくは-H。
-A-:単結合、若しくはメチレン。
-R3:置換されていてもよいフェニル。
-R4:置換されていてもよい環状アミノ。]

【公開番号】特開2007−55940(P2007−55940A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243425(P2005−243425)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】