説明

ピラー構造

【課題】ピラー内に補強部材を取り付ける際の精度保証を不要として、ピラー製造に要する工数を削減することを目的とする。
【解決手段】Bピラー12(ピラー)内に配設される補強部材14が、該Bピラー12に対して締結されると共に、上端部14Aがルーフサイドレール16内に車両下方側から差し込まれて該ルーフサイドレール16に対して締結されている。補強部材14の取付けに際し、溶接による接合を用いていないので、溶接箇所の精度保証のためのチューニング、例えばプレス型の調整が不要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体構造として、複数の部材の組合せにより閉断面が形成された第1の閉断面構造体と、この第1の閉断面構造体の内部に配設され第1の閉断面構造体の断面内部の形状に沿ってその断面が変化しかつ単一の部材により閉断面が形成された第2の閉断面構造体とを有するものが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−219150号公報
【特許文献2】特開2004−306896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の従来例では、補強部材(センターピラーリインフォースメント)の上部がルーフサイドレールに溶接される構成となっており、溶接箇所の精度を高める対策が必要となる。このような補強部材には、一般に高張力鋼や超高張力鋼が用いられるが、これらの材料はプレス成形時の加工性が低く、溶接箇所の精度保証のためのチューニング、例えばプレス型の調整が必要であった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、ピラー内に補強部材を取り付ける際の精度保証を不要として、ピラー製造に要する工数を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車体上部の車幅方向両側において車両前後方向に延びるルーフサイドレールに少なくとも結合され、車体側部において車両上下方向に延び、車幅方向内側のピラーインナパネル18と車幅方向外側のピラーアウタパネルとが接合されたピラーと、該ピラー内に配設され、該ピラーに対して締結されると共に、上端部が前記ルーフサイドレール内に車両下方側から差し込まれて該ルーフサイドレールに対して締結された補強部材と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載のピラー構造では、ピラー内に配設される補強部材が、該ピラーに対して締結されると共に、上端部がルーフサイドレール内に車両下方側から差し込まれて該ルーフサイドレールに対して締結されており、溶接による接合を用いていないので、従来のような溶接箇所の精度保証を不要とすることができる。このため、ピラー製造に要する工数を削減することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のピラー構造において、前記補強部材の上端部は、前記ルーフサイドレールの上部まで延び、該上部に設けられた孔部に挿入されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載のピラー構造では、補強部材の上端部が、ルーフサイドレールの上部まで延び、該上部に設けられた孔部に挿入されているので、車両の側面衝突によりピラーに対して側突荷重が入力され、ピラーやルーフサイドレールが変形した際に、補強部材の上端部がルーフサイドレールの孔部の周縁部に当接する。これにより、ピラーに入力された側突荷重を、補強部材及びルーフサイドレールを介して、車両のルーフ側へ効率的に伝達することができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のピラー構造において、前記補強部材は、前記ピラーを前記車体側部に結合した後に該ピラー内に締結されることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載のピラー構造では、ピラーを車体側部に結合した後に、補強部材が該ピラー内に締結されるので、補強部材を予めピラー内に強固に結合しておく場合と比較して、該ピラーを車体側部に結合した際における該ピラーの精度変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のピラー構造によれば、ピラー内に補強部材を取り付ける際の精度保証を不要として、ピラー製造に要する工数を削減することができる、という優れた効果が得られる。
【0012】
請求項2に記載のピラー構造によれば、ピラーに入力された側突荷重を、補強部材及びルーフサイドレールを介して、車両のルーフ側へ効率的に伝達することができる、という優れた効果が得られる。
【0013】
請求項3に記載のピラー構造によれば、ピラーを車体側部に結合した際における該ピラーの精度変化を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図2において、本実施の形態に係るピラー構造Sは、車体10(図1も参照)におけるピラーの一例たるBピラー12の構造に係り、該Bピラー12と、補強部材14とを有している。
【0015】
Bピラー12は、車体上部の車幅方向両側において車両前後方向に延びるルーフサイドレール16に少なくとも結合され、車体側部において車両上下方向に延びる骨格部材であり、車幅方向内側のピラーインナパネル18と車幅方向外側のピラーアウタパネル20とが接合されている。車体側部の下部には、ロッカ22が車両前後方向に延びており、Bピラー12の下端は該ロッカ22に結合されている。
【0016】
図3に示されるように、ピラーインナパネル18は、車幅方向内側に凸となる断面ハット形に形成されている。一方、ピラーアウタパネル20は、車幅方向外側に凸となる断面ハット形に形成されている。ピラーインナパネル18とピラーアウタパネル20とは、車両前後方向両側に夫々設けられたフランジ18F,20Fにおいて接合されており、これによってBピラー12が閉断面構造とされている。
【0017】
図3,図4において、ルーフサイドレール16は、インナパネル24とアウタパネル26とによる閉断面構造を有して構成された骨格部材であり、車両上部の車幅方向両側において車両前後方向に延びている。インナパネル24は車両内側に凸となる断面ハット形に形成され、またアウタパネル26は車両外側に凸となる断面ハット形に形成されている。インナパネル24及びアウタパネル26は、例えば車幅方向内側のフランジ28と、車幅方向外側のフランジ(図示せず)とにおいて接合されており、これによってルーフサイドレール16が閉断面構造に構成されている。車幅方向内側のフランジ28は、例えばルーフパネル32や図示しないルーフクロスメンバと接合されている。
【0018】
図4,図5に示されるように、ルーフサイドレール16におけるアウタパネル26の縦壁部26Aには、凹部26Bが形成されており、該凹部26Bには例えばボルト36が差し込まれ、例えば溶接により固定されている。これにより、ボルト36のねじ部がルーフサイドレール16内に突出した状態となっている。
【0019】
ルーフサイドレール16の上部の一例たるアウタパネル26の天井部26Cには、補強部材14の上端部14Aを挿入可能な孔部26Dが形成されている。またルーフサイドレール16のインナパネル24の縦壁部24Aにおいて、ボルト36の軸線方向に位置する部位には、該ボルト36に対してナット38を締結する際に用いる作業孔24Bが設けられている。
【0020】
なお、ピラーインナパネル18の上端18Aは、ルーフサイドレール16における例えばインナパネル24の縦壁部24Aに接合されている。またピラーアウタパネル20の上端20Aは、ルーフサイドレール16における例えばアウタパネル26の縦壁部26Aに接合されている。
【0021】
図2から図4に示されるように、Bピラー12及びルーフサイドレール16の車幅方向外側には、サイドメンバアウタパネル34が設けられている。図4に示されるように、このサイドメンバアウタパネル34の上部は、ルーフサイドレール16を覆っており、該上部の車幅方向内側の端部34Aは、ルーフサイドレール16の車幅方向内側のフランジ28において、ルーフパネル32と共に接合されている。また図3に示される断面位置では、サイドメンバアウタパネル34は、車幅方向外側に凸の断面ハット形に形成されており、車両前後方向両側に設けられたフランジ34Fにおいて、ピラーインナパネル18のフランジ18F及びピラーアウタパネル20のフランジ20Fと共に接合されている。
【0022】
補強部材14は、例えば高張力鋼板や超高張力鋼板のプレス成形品であり、Bピラー12内に配設され、該Bピラー12に対して締結されると共に、上端部14Aがルーフサイドレール16内に車両下方側から差し込まれて該ルーフサイドレール16に対して締結されている。図3に示されるように、この補強部材14は、例えば車幅方向外側に凸となる断面ハット形に形成されている。
【0023】
具体的には、図2,図6に示されるように、補強部材14の下端部14Bは、ピラーアウタパネル20の内面に、例えば上側のドアヒンジ40と共にボルト締結されている。下端部14Bの縦壁部14Cには、予めナット42が例えば溶接により固定されている。そしてサイドメンバアウタパネル34の車幅方向外側からボルト44を差し込んでナット42に締結することにより、ドアヒンジ40がBピラー12に締結固定され、同時に補強部材14の下端部14BがBピラー12に締結固定されるようになっている。なお、図2に示されるように、下側のドアヒンジ46は、Bピラー12におけるドアヒンジ40よりも低い高さ位置に締結固定されている。
【0024】
図4,図5に示されるように、補強部材14の上端部14A側は、ルーフサイドレール16内に、例えばアウタパネル26の下側に設けられた開口部26Eから差し込まれている。そして補強部材14の上端部14Aは、更にルーフサイドレール16の上部、即ちアウタパネル26の天井部26Cまで延び、該天井部26Cに設けられた孔部26Dに挿入されている。これにより、図5に示されるように、補強部材14の上端部14Aは、ルーフサイドレール16を車両下方側から車両上方側まで貫通した状態となっている。
【0025】
補強部材14の上端部14Aのうち、アウタパネル26の凹部26Bに対応する位置には、該アウタパネル26側に凹設された凹部14Dが形成されている。該凹部14Dの裏面と、凹部26Bの裏面とが当接した状態において、該凹部14Dにはアウタパネル26側に固定されているボルト36が挿入されるようになっており、インナパネル24の作業孔24Bを通じて該ボルト36にナット38を締結することにより、補強部材14の上端部14Aがルーフサイドレール16のアウタパネル26に締結固定されるようになっている。
【0026】
この補強部材14は、Bピラー12を車体側部に結合する前に予め該Bピラー12内に挿入され、上端部14Aをボルト36及びナット38により仮止めすると共に、下端部14Bをボルト44及びナット42により仮止めしておくようになっている。そしてBピラー12を車体側部に結合した後に、ボルト36及びナット38、並びにボルト44及びナット42を本締めして、補強部材14をBピラー12に締結するようになっている。
【0027】
なお、図4,図5に示されるように、補強部材14の上端部14Aとアウタパネル26の孔部26Dの周縁部との間には、通常走行時における異音の発生を防止する観点から、適度な隙間が設けられている。
【0028】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。ピラー構造Sでは、Bピラー12内に配設される補強部材14が、ボルト44及びナット42により、該Bピラー12に対して締結されると共に(図6)、上端部14Aがルーフサイドレール16内に車両下方側から差し込まれて、ボルト36及びナット38により、該ルーフサイドレール16に対して締結されており(図4)、溶接による接合を用いていないので、従来のような溶接箇所の精度保証を不要とすることができる。このため、Bピラー12製造に要する工数を削減することができる。
【0029】
特に、ピラー構造Sでは、Bピラー12を車体側部に結合した後に、補強部材14が該Bピラー12内に締結される、即ちボルト36及びナット38の本締め、並びにボルト44及びナット42の本締めがなされるので、補強部材14を予めBピラー12内に強固に結合しておく場合と比較して、該Bピラー12を車体側部に結合した際における該Bピラー12の精度変化を抑制することができる。
【0030】
更に、図4,図5に示されるように、Bピラー12構造では、補強部材14の上端部14Aが、ルーフサイドレール16の上部、即ちアウタパネル26の天井部26Cまで延び、該天井部26Cに設けられた孔部26Dに挿入されているので、図7に示されるように、車両の側面衝突によりBピラー12に対して側突荷重Fが入力され、Bピラー12やルーフサイドレール16が変形した際に、補強部材14の上端部14Aがルーフサイドレール16の孔部26Dの周縁部に当接する。これにより、Bピラー12に入力された側突荷重Fを、補強部材14及びルーフサイドレール16を介して、車両のルーフ側、例えばルーフパネル32やルーフクロスメンバ(図示せず)へ、矢印A方向に効率的に伝達することができる。またこれによって、Bピラー12の車幅方向内側への変形を抑制することができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、ピラーの一例としてBピラー12を挙げて説明したが、これに限られるものではなく、例えばピラーがAピラーからDピラーまで設けられている車両の場合には、Cピラーにも適用することが可能である。
【0032】
またルーフサイドレール16の上部として、該ルーフサイドレール16におけるアウタパネル26の天井部26Cに孔部26Dを形成することとしたが、ルーフサイドレール16の上部はこれに限られるものではない。
【0033】
更に、補強部材14をBピラー12やルーフサイドレール16に締結する手段として、ボルト締結を用いたが、締結手段はこれに限られるものではなく、例えばリベット締結を用いてもよい。
【0034】
また、図4に示されるように、本実施形態では、補強部材14の上端部14Aが、アウタパネル26における天井部26Cの孔部26Dに挿入され、かつ該天井部26Cより車両上方に突出した状態となっているが、上端部14Aと孔部26Dとの関係はこれに限られるものではなく、図7に示されるように、側突荷重Fの入力による車体変形時に、補強部材14の上端部14Aと孔部26Dの周縁部とが当接して荷重伝達が可能となる配置となっていればよい。従って、例えば補強部材14の上端が天井部26Cの上面と面一となっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ピラー構造を有する車両の斜視図である。
【図2】ピラー構造を示す、図1における2−2矢視拡大断面図である。
【図3】Bピラーの内部構造を示す、図2における3−3矢視拡大断面図である。
【図4】ピラー構造の上部を示す拡大断面図である。
【図5】ピラー構造の上部を示す拡大斜視図である。
【図6】ピラー構造の下部を示す拡大断面図である。
【図7】Bピラーに対して側突荷重が入力された際に、補強部材の上端部がルーフサイドレールの孔部の周縁部に当接して、側突荷重が車両のルーフ側に伝達される状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 車体
12 Bピラー(ピラー)
14 補強部材
14A 上端部
16 ルーフサイドレール
18 ピラーインナパネル
20 ピラーアウタパネル
26C 天井部(ルーフサイドレールの上部)
26D 孔部
S ピラー構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上部の車幅方向両側において車両前後方向に延びるルーフサイドレールに少なくとも結合され、車体側部において車両上下方向に延び、車幅方向内側のピラーインナパネル18と車幅方向外側のピラーアウタパネルとが接合されたピラーと、
該ピラー内に配設され、該ピラーに対して締結されると共に、上端部が前記ルーフサイドレール内に車両下方側から差し込まれて該ルーフサイドレールに対して締結された補強部材と、
を有することを特徴とするピラー構造。
【請求項2】
前記補強部材の上端部は、前記ルーフサイドレールの上部まで延び、該上部に設けられた孔部に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のピラー構造。
【請求項3】
前記補強部材は、前記ピラーを前記車体側部に結合した後に該ピラー内に締結されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−46070(P2009−46070A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215850(P2007−215850)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】