説明

ピリミジン−2−イルアミノ誘導体および炎症を治療するためのその使用

式(I)[式中、XおよびXは、各々同時にNまたはCHであり;Xは、CH−RまたはN−SOR(式中、Rは低級アルキルである)であり;Rは、0〜3個の低級アルキル基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;Rは、式(II)(式中、Rは、H、低級アシル、またはアミノ酸である)である]で示される化合物、またはその薬学的に許容しうる塩は、JNKを調節する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、c−JunN末端キナーゼ(JNK)を調節するための方法、および複素環式化合物を用いてJNKを調節することによって軽減することができる疾患または症状に罹患している被験体を治療する方法に関する。本発明は、さらに、新規複素環式化合物および該化合物を含む薬学的組成物に関する。
【0002】
c−JunN末端キナーゼ(JNK)は、p38および細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)と共にマイトジェン活性化タンパク質キナーゼファミリーのメンバーである。10種のスプライス変異体をコードする3つの別個の遺伝子(jnk1、jnk2およびjnk3)が同定されている(Y.T. Ip and R.J. Davis, Curr. Opin. Cell Biol. (1998) 10:205-19)。JNK1およびJNK2は、様々な組織で発現するが、JNK3は、主にニューロンにおいて、そしてそれより少ない程度で心臓および精巣において発現する(D.D. Yang et al., Nature (1997) 389:865-70)。JNKファミリーのメンバーは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)およびインターロイキン1β(IL−1β)などの炎症性サイトカインに加えて、環境ストレスよっても活性化される。JNKの活性化は、Thr−183およびTyr−185の二重リン酸化を介して、JNKの上流のキナーゼであるMKK4およびMKK7によってメディエーションされる(B. Derijard et al., Cell (1994) 76:1025-37)。外部刺激および細胞の状況に依存して、MEKK1およびMEKK4を含む多様な上流のキナーゼによりMKK4およびMMK7を活性化できることが示されている(D. Boyle et al., Arthritis Rheum (2003) 48:2450-24)。JNKシグナル伝達の特異性は、JNK相互作用タンパク質と呼ばれるスカフォールドタンパク質を使用して、キナーゼカスケードの複数の成分を含有しているJNK特異的シグナル伝達複合体を形成することにより達成される(J. Yasuda et al., Mol. Cell. Biol. (1999) 19:7245-54)。JNKは、c−Jun、アクチベータータンパク質−1(AP1)ファミリーの成分およびATF2などの転写因子に加えて、IRS−1およびBcl−2などの非転写因子を含む特異的基質のリン酸化により炎症、T細胞機能、アポトーシスおよび細胞の生存において重要な役割を果たすことが示されている(A.M. Manning and R.J. Davis, Nat. Rev. Drug Discov. (2003) 2:554-65)。JNKの過剰活性化は、癌および疼痛に加えて、自己免疫、炎症性、代謝性、神経系疾患における重要な機序であると考えられる。
【0003】
関節リウマチ(RA)は、関節の慢性炎症を特徴とする全身性の自己免疫疾患である。炎症過程によって引き起こされる関節腫脹および関節痛に加えて、ほとんどのRA患者で、最終的には衰弱性関節損傷および変形が発生する。細胞および動物モデルにおける説得力のある薬学的および遺伝学的証拠のいくつかの系統は、RAの病因における活性化されたJNKの関連性および重要性を強く示唆している。まず、JNKの異常活性化は、RA患者由来のヒト関節炎関節(G. Schett et al., Arthritis Rheum (2000) 43:2501-12)および関節炎の動物モデル由来のげっ歯類関節炎関節(Z. Han et al., J. Clin. Invest. (2001) 108:73-81)の両方で検出された。さらに、選択的JNKインヒビターによるJNK活性化の阻害は、ヒト滑膜細胞、マクロファージおよびリンパ球における炎症性サイトカインおよびMMP産生をブロックした(前記、Z. Han et al., (2001))。重要なことに、アジュバント関節炎のラット(前記、Z. Han et al., (2001))、またはコラーゲン誘導性関節炎のマウス(P. Gaillard et al., J Med Chem. (2005) 14:4596-607)における選択的JNKインヒビターの投与は、サイトカインおよびコラゲナーゼ発現を阻害することにより、関節を破壊から有効に保護し、そして足腫脹を著しく低減した。更に、JNK2欠損マウスは、関節破壊から部分的に保護されたが、受動性コラーゲン誘導性関節炎モデルにおける足腫脹および炎症に対する効果はほとんど示さなかった。これらの研究は、JNK2が、マトリックス分解、炎症および足腫脹における役割に関してJNK1と機能的に重複していることを示す。したがって、RAの有効な治療には、JNK1およびJNK2活性の両方をまとめて阻害することが必要である(Z. Han et al., Arthritis Rheum. (2002) 46:818-23)。
【0004】
喘息は、細胞性炎症過程の存在、および気道の構造変化を伴う気管支過敏性を特徴とする気道の慢性炎症性疾患である(B. Bradley et al., J. Allergy Clin. Immunol. (1991) 88:661-74)。この障害は、Tリンパ球、好酸球、マスト細胞、好中球および上皮細胞を含む気道における多くの細胞型によって駆動されることが示されている(J. Bousquet et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. (2000) 161:1720-45)。選択的JNKインヒビターを使用して、喘息の細胞および動物モデルにおける最近の概念実証研究に基づいて、喘息の有望な治療ターゲットとしてJNKが浮上している(K. Blease et al., Expert Opin. Emerg. Drugs (2003) 8:71-81)。JNKインヒビターは、活性化されたヒトの気道平滑細胞におけるRANTES産生を有意にブロックすることが示された(K. Kujime et al., J. Immunol. (2000) 164:3222-28)。より重要なことに、JNKインヒビターは、細胞浸潤、炎症、過敏性、平滑筋増殖、およびIgE産生を低下させる能力について、慢性ラットおよびマウスモデルにおいて優れた有効性を示した(P. Nath et al., Eur. J. Pharmacol. (2005) 506:273-83; P. Eynott et al., Br. J. Pharmacol. (2003) 140:1373-80)。これらの所見は、アレルギー性炎症、過敏性に関連する気道のリモデリングプロセスにおけるJNKの重要な役割を示唆する。したがって、JNK活性のブロックが喘息の治療にとって有益であると予想される。
【0005】
2型糖尿病は、酸化ストレスに関連した慢性的な低レベルの炎症および脂質代謝異常の結果として、インシュリン抵抗性およびインシュリン分泌障害を特徴とする最も重篤で最も蔓延している代謝性疾患である。肥満および糖尿病条件下で、様々な糖尿病のターゲット組織においてJNK活性が異常に上昇することが報告されている(J. Hirosumi et al., Nature (2002) 420:333-36; H. Kaneto, Expert. Opin. Ther. Targets (2005) 9:581-92)。炎症性サイトカインおよび酸化ストレスによるJNK経路の活性化は、Ser307におけるインスリン受容体基質−1(IRS−1)のリン酸化を介してインシュリンシグナル伝達を負にレギュレーションするので、インシュリン抵抗性および耐糖能の一因となる(前記、J. Hirosumi et al., Nature (2002) ; Y. Lee et al., J. Biol. Chem. (2003) 278:2896-902; Y. Nakatani et al., J. Biol. Chem. (2004) 279:45803-09)。遺伝性(ob/ob)肥満マウスまたは食餌性肥満マウスのいずれかと交配したjnk−/−マウスを使用した見事な動物モデル研究から説得力のある遺伝学的証拠が得られた。JNK1は欠失している(JNK1−/−)が、JNK2の機能は欠失していない(jnk2−/−)肥満マウスは、体重増加、血糖の定常的な濃度上昇、血漿インスリン濃度の低下から保護された(前記、J. Hirosumi et al., Nature (2002))。更に、小分子JNKインヒビターであるCC105(B. Bennett et al., Curr. Opin. Pharmacol. (2003) 3:420-25)、またはJNK相互作用タンパク質−1(JIP−1)のJNK結合ドメインに由来するJNK阻害性ペプチドI(JIP)(H. Kaneto et al., Nat. Med. (2004) 10:1128-32)のいずれかを投与することにより、遺伝性糖尿病マウス(db/dbマウス)において、有意に低下した血糖値及びより高い血漿インスリン濃度を含む有益な効果が観察された。より興味深いことに、別の最近の報告(A. Jaeschke et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. (2005) 102:6931-35)により、インスリン生成β細胞の自己免疫の破壊によって引き起こされる1型糖尿病においてJNK2が重要な役割を果たしていることが明らかになった。JNK2発現が欠損している非肥満糖尿病のマウスは、恐らくTh2表現型に対する偏った極性に起因して、破壊的膵島炎の緩和および糖尿病への疾患進行の遅延を示した。まとめると、これらの研究は、肥満/2型糖尿病の治療におけるJNKインヒビターの有用性を実証した。
【0006】
アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)および卒中などの神経変性疾患は、シナプスの損失、ニューロンの萎縮および死を特徴とする。c−Junの活性化を導くJNK経路は、様々な刺激を誘導したとき、単離一次胚ニューロンおよび複数の神経細胞株のアポトーシスにおいて因果的役割を果たすことが示されている(D. Bozyczko-Coyne et al., Curr. Drug Targets CNS Neurol. Disord. (2002) 1:31-49)。JNKの過剰活性化は、AD患者に由来するヒト脳 (J. Pei et al., J. Alzheimers Dis. (2001) 3:41-48)、または神経変性疾患の動物モデルに由来するげっ歯類の脳切片(M. Saporito et al., J. Neurochem. (2000) 75:1200-08)で観察された。例えば、AD患者に由来する死後脳においてリン酸化JNKの増加が検出された。β−アミロイドペプチド投与によって誘導されたADのげっ歯類モデルにおけるJNK阻害性ペプチド(JIP−1ペプチド)の投与は、シナプス可塑性の障害を防いだ。PDの動物モデル(MPTPモデル)では、神経細胞死に付随して、リン酸化MKK4およびリン酸化JNKの増加が観察された。マウスの線条体にJNK阻害性ペプチド(JIP−1ペプチド)のアデノウイルス遺伝子導入すると、MPTP介在性JNK、c−Junおよびカスパーゼ活性化が阻害され、黒質における神経細胞死がブロックされることにより、行動障害が減弱した(X. Xia et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. (2001) 98:10433-38)。さらに、グルタミン酸興奮毒性によって誘導された虚血性卒中の動物モデルでは、JNK3は欠損しているが、JNK1またはJNK2は欠損していないマウスは、カイニン酸(グルタミン酸受容体アゴニスト)介在性発作または神経細胞死に対して耐性を有していた(D. D.Yang et al., Nature (1997) 389:865-70)。これらのデータは、JNK3が、虚血状態の重要な構成要素であるグルタミン酸興奮毒性の主な原因であることを示唆する。まとめると、前記データは、JNKが神経細胞死に関連する複数のCNS疾患の魅力的なターゲットであることを示唆する。
【0007】
コントロールされていない細胞成長、増殖および遊走は、無秩序な血管形成とともに、悪性腫瘍の形成を導く。JNKシグナル伝達経路は、もっぱらアポトーシスにおいて作用する訳ではなく、最近、AP1活性化を導く持続的なJNK活性化が、グリア細胞腫瘍およびBCL−ABL形質転換Bリンパ芽球などの特定の種類の癌の細胞生存の一因として関与しているとみなされている(M. Antonyak et al., Oncogene (2002) 21:5038-46; P. Hess et al., Nat. Genet. (2002) 32:201-05)。グリア細胞腫瘍の場合、ほとんどの原発性脳腫瘍サンプルでJNK/AP1活性の増強がみられた。形質転換Bリンパ芽球では、BCL−ABLが、JNK経路を活性化し、次いで抗アポトーシス性bcl−2遺伝子の発現をアップレギュレーションすることが示された。興味深いことに、治療抵抗性AML患者で見られる多剤耐性および過剰増殖は、これらのAMLサンプル中に存在する持続的JNK活性が原因として関連づけられている(L. Cripe et al., Leukemia (2002) 16:799-812)。白血病細胞におけるJNKの活性化は、多剤耐性に関与しているmdr1およびMRP1などの排出ポンプの発現を誘導した。また、グルタチオン−S−トランスフェラーゼπおよびγ−グルタミルシステインシンターゼを含む酸化ストレス応答性の延命効果を有する遺伝子も、活性化されたJNK経路によってアップレギュレーションされた。
【0008】
したがって、JNKモジュレーターは様々な疾患および/または症状を治療するのに有用である。
【0009】
本発明の1つの局面は、式I:
【0010】
【化1】


[式中
およびXは、各々同時にNまたはCHであり;
は、CH−RまたはN−SOR(式中、Rは低級アルキル基である)であり;
は、0〜3個の低級アルキル基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;
は、
【0011】
【化2】


(式中、Rは、H、低級アシル、またはアミノ酸である)である]
で示される化合物、またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0012】
本発明は、また、薬学的組成物、前述の化合物を使用する方法、および前述の化合物を調製する方法を提供する。
【0013】
本発明の化合物および組成物は、自己免疫障害、炎症性障害、代謝性障害、神経系疾患、疼痛および癌などのc−JunN末端キナーゼ介在性障害の治療および/または予防に有用である。いくつかの態様では、本発明の化合物および組成物は、関節リウマチ、喘息、II型糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病および/または卒中の治療および/または予防に有用である。
【0014】
定義
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲を含む本願で使用される以下の用語は、以下に示す定義を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に断りのない限り、複数の対象を含むことに留意しなければならない。
【0015】
「アルキル」は、1〜12個の炭素原子を有する、炭素原子および水素原子のみからなる、一価の直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基、すなわち、C−Cアルキルを指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシルなどを含むが、これらに限定されない。「分岐鎖アルキル」は、少なくとも1つの分岐を有するアルキル部分、例えばイソプロピル、イソブチル、tert-ブチルなどを指す。同様に、「低級アルコキシ」は、−ORの形態の部分を指し、「アシル」は、−C(O)R(式中、Rは低級アルキルである)の形態の部分を指す。
【0016】
「アルキレン」は、1〜6個の炭素原子の直鎖飽和二価炭化水素部分、または3〜6個の炭素原子の分岐鎖飽和二価炭化水素基、例えばメチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレンなどを意味する。
【0017】
「アルキレンジオキシ」は式−O−R−O−(式中、Rは本明細書において定義されるアルキレンである)の二価部分を意味する。
【0018】
「アリール」は、単環式、二環式、または三環式の芳香環からなる一価環式芳香族炭化水素部分を意味する。アリール基は、場合により、本明細書における定義の通り置換されてもよい。アリール部分の例は、場合により置換されているフェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンズオキサジニル、ベンズオキサジノニル、ベンゾピペラジニル(benzopiperadinyl)、ベンゾピペラジニル(benzopiperazinyl)、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニルなどを含むが、これらに限定されず、これらの部分水素化誘導体も含む。
【0019】
「ヘテロアリール」は、N、OまたはSから選択される1、2、または3個の環ヘテロ原子を有し、残りの環原子がCである、5〜7個の環原子の単環式部分を意味する。ヘテロアリール環は、場合により、本明細書における定義の通り置換されてもよい。ヘテロアリール部分の例は、場合により置換されているイミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、チエニル、チオフェニル、フラニル、ピラニル、ピリジニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジル、ピリダジニルなどを含むが、これらに限定されず、これらの部分水素化誘導体も含む。
【0020】
用語「ハロ」、「ハロゲン」および「ハロゲン化物」は、本明細書において互換的に使用され、置換基フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを指す。用語「オキソ」は二重結合酸素、すなわち=Oを指す。本明細書において使用するとき、用語「ケタール」は、2個のアルコキシ基が、同じ炭素原子に結合しているか、または式−O−(低級アルキル)−O−の基の両端が単一の炭素原子に結合しているケトン誘導体を指す。
【0021】
本明細書において使用するとき、用語「アミノ酸」は、アミン基およびカルボン酸基の両方を有する有機部分を指す。例示的なアミノ酸は、アラニン、β−アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、およびチロシンを含む。
【0022】
「場合により置換されている」は、参照される基が、独立して1つ以上の置換基、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個の記載されている置換基で置換されていてもよいことを意味する。例えば、「場合によりOHで置換されているシクロアルキル」は、非置換であるか、または1つ以上のヒドロキシ基で置換されている、本明細書の定義内のすべてのシクロアルキル基を含む。この記載に適う例示的な基は、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロプロピル、2−ヒドロキシシクロブチル、ヒドロキシシクロプロピル、3,4−ジヒドロキシシクロへキシル、3−ヒドロキシシクロペンチルなどを含むが、これらに限定されない。
【0023】
「脱離基」は、有機合成化学において慣習的にそれに関連する意味を有する基、すなわち置換反応条件下で置換可能な原子または基を意味する。脱離基の例は、ハロゲン、例えば、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、およびチエニルオキシなどのアルカン−またはアリーレンスルホニルオキシ、ジハロホスフィノイルオキシ、場合により置換されているベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、アシルオキシなどを含むが、これらに限定されない。
【0024】
「疾患」および「病状」は、任意の疾患、症状、病徴、障害または徴候を意味する。
【0025】
例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレンまたはジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、ジオキサン、ピリジンなどを含む「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」は、溶媒が、それと併せて記載される反応条件下で不活性であることを意味する。特に逆の指定のない限り、本発明の反応で使用される溶媒は不活性溶媒である。
【0026】
「薬学的に許容しうる」は、一般に安全で、無毒で、生物学的にも他の意味でも不所望ではなく、そして、獣医学的及びヒトの薬学的使用のために許容しうる薬学的組成物の調製において有用であることを意味する。
【0027】
化合物の「薬学的に許容しうる塩」は、本明細書において定義されるように、薬学的に許容することができ、そして親化合物の望ましい薬理学的活性を有する塩を意味する。このような塩は、以下を含む:
塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸とともに形成される酸付加塩;または、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸(hydroxynaphtoic acid)、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などの有機酸とともに形成される酸付加塩;
あるいは、親化合物の中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンにより置換されたときに形成される塩;あるいは有機または無機塩基が配位した塩。許容しうる有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどを含む。許容しうる無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどを含む。
【0028】
好ましい薬学的に許容しうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛およびマグネシウムから形成される塩である。
【0029】
「保護基(Protective group)」または「保護基(protecting group)」は、合成化学において慣習的にそれに関連する意味で、別の非保護反応部位において化学反応を選択的に実行することができるように、多官能化合物における1つの反応部位を選択的にブロックする化学基を示す。本発明の特定のプロセスは、保護基に依存して、反応物質中に存在する反応性窒素および/または酸素原子をブロックする。例えば、「アミノ保護基」および「窒素保護基」という用語は、本明細書において互換的に使用され、合成手順中に不所望の反応から窒素原子を保護することを意図する有機基を指す。例示的な窒素保護基は、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル(BOC)などを含むが、これらに限定されない。当業者は、除去の容易さ、および以下の反応に耐える能力について基を選択する方法を知るであろう。
【0030】
「被験体」は、哺乳類および非哺乳類を意味する。哺乳類は、ヒト;チンパンジーおよび他の類人猿などの非ヒト霊長類、ならびにサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギおよびブタなどの家畜;ウサギ、イヌおよびネコなどの家庭動物;ラット、マウスおよびモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物;などを含むが、これらに限定されない哺乳綱の任意のメンバーを意味する。非哺乳類の例は、鳥類などを含むが、これらに限定されない。用語「被験体」は、特定の年齢または性別を意味するものではない。
【0031】
「治療上有効量」は、ある病状を治療するために被験体に投与されたとき、前記病状を治療するのに十分な化合物の量を意味する。「治療上有効量」は、化合物、治療されている病状、重症度または治療される疾患、被験者の年齢および相対的な健康、投与の経路および形態、参加する医師又は獣医師の判断、ならびに他の要因に依存して変化する。
【0032】
用語「上に定義された」および「本明細書において定義される」は、変数に言及するとき、広い定義の変数に加えて、存在する場合、好ましい、より好ましい、および最も好ましい定義も参照することにより組み込む。
【0033】
病状を「治療すること」または「治療」は、以下を含む:
(i)病状の予防、すなわち、病状に曝されるか、または病状に罹患しやすい可能性があるが、未だ病状を経験していないか、または病状の病徴を示していない被験体において病状の臨床症状を発生させないこと、
(ii)病状の阻害、すなわち、病状またはその臨床症状の発生を妨げること、あるいは
(iii)病状の軽減、すなわち、病状またはその臨床症状を一時的または永続的に後退させること。
【0034】
用語「処理」、「接触」、および「反応」は、化学反応に言及するとき、指示されたおよび/または望ましい生成物を生成するのに適切な条件下で2つ以上の試薬を添加または混合することを意味する。指示されたおよび/または望ましい生成物を生成する反応は、必ずしも最初に添加された2つの試薬の組み合わせから直接得られる訳ではない、すなわち、混合物中で生成される1つ以上の中間体が存在し、それが最終的に指示されたおよび/または望ましい生成物の形成を導く場合もあることを理解すべきである。本明細書において使用するとき、用語「嫌気性雰囲気」は、一般的に酸素を除く大気を指す。嫌気性雰囲気下で行なわれる反応は、例えば反応混合物に窒素またはアルゴン(または別の不活性ガス)を通気し、好ましくは反応物の脱気も行うことによって実施することができる。用語「高pH」は、反応混合物が完全に水性であろうとなかろうと、例えば、NaCOなどの適度に強い塩基が存在する反応混合物を指す。本明細書において使用するとき、用語「高温」は、70℃を超える、典型的には105℃を超える反応温度を指す。
【0035】
式Iで示される化合物は、限定するものではないが、被験体の炎症および/または疼痛の治療に有用である。本発明の化合物を用いて、関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデスおよび若年性関節炎、変形性関節症、痛風性関節炎、および他の関節炎状態を含むが、これらに限定されない関節炎によって引き起こされる疼痛および炎症を治療することができる。このような化合物は、成人型呼吸窮迫症候群、肺サルコイドーシス、喘息、珪肺症、および慢性肺炎症性疾患を含む肺疾患または肺炎症の治療にも有用である。また、前記化合物は、敗血症、敗血症性ショック、グラム陰性菌敗血症、マラリア、脳膜炎、感染または悪性腫瘍に続発する悪液質、肺炎およびヘルペスウィルスを含む、ウイルスおよび細菌感染によって引き起こされる炎症の治療に有用である。
【0036】
「疼痛」は、多かれ少なかれ、特殊な神経終末の刺激に起因する不快感、窮迫またはアゴニーの限局性感覚を意味する。電撃痛、幻想痛、疼くような痛み、急性疼痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、複合性局所疼痛、神経痛、神経障害などを含むが、これらに限定されない多くの種類の疼痛が存在する(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, 28th Edition, W. B. Saunders Company, Philadelphia, PA)。疼痛の治療目的は、治療される被験体が知覚する疼痛の重症度を低下させることである。「神経因性疼痛」は、機能障害および/または病理変化に加えて、末梢神経系における非炎症性病変に起因する疼痛を意味する。神経因性疼痛の例は、熱または機械的痛覚過敏、熱または機械的異痛、糖尿病性疼痛、絞扼性疼痛などを含むが、これらに限定されない。
【0037】
命名法および構造
一般的に、本願の中で使用される命名法は、IUPACの体系的命名法を作成するためにBeilstein Instituteによりコンピュータ化されたシステムであるAUTONOM(商標)v.4.0に基づく。本明細書に示される化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を使用して作成した。本明細書における構造中の炭素、酸素または窒素原子に出現する任意の空の結合価(open valency)は、水素原子の存在を示す。
【0038】
不斉炭素が化学構造中に存在するときは常に、その不斉炭素に関連する立体異性体はすべて、前記構造によって包含されることを意図する。
【0039】
本明細書において特定される特許および刊行物はすべて、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
一般的な方法
本発明の1つの局面は、式I:
【0041】
【化3】


[式中
およびXは、各々同時にNまたはCHであり;
は、CH−RまたはN−SOR(式中、Rは低級アルキルである)であり;
は、0〜3個の低級アルキル基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;
は、
【0042】
【化4】


(式中、Rは、H、低級アシル、またはアミノ酸である)である]
で示される化合物、またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0043】
いくつかの態様では、XおよびXは各々Nである。いくつかの態様では、XはCH−Rであり、Rは、
【0044】
【化5】


であり、RはHである。さらなる態様では、Rは、0〜3個の低級アルキル基、例えばメチル基で置換されたフェニルである。他の態様では、Rは、0〜3個の低級アルキル基で置換されたヘテロアリールである。さらなる態様では、ヘテロアリール基は、チオフリル、ピリジル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、およびピラゾリルからなる群より選択される。さらなる態様では、ヘテロアリール基は、チオフリル、ピリジル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、およびピラゾリルからなる群より選択される。
【0045】
他の態様では、XはN−SORであり、Rはメチルである。さらなる態様では、Rは、0〜3個の低級アルキル基、例えばメチル基で置換されたフェニルである。他の態様では、Rは、0〜3個の低級アルキル基で置換されたヘテロアリールである。さらなる態様では、ヘテロアリール基は、チオフリル、ピリジル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、およびピラゾリルからなる群より選択される。
【0046】
他の態様では、XおよびXは各々CHである。いくつかの態様では、XはCH−Rであり、Rは、
【0047】
【化6】


であり、RはHである。さらなる態様では、Rは、0〜3個の低級アルキル基、例えばメチル基で置換されたフェニルである。他の態様では、Rは、0〜3個の低級アルキル基で置換されたヘテロアリールである。さらなる態様では、ヘテロアリール基は、チオフリル、ピリジル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、およびピラゾリルからなる群より選択される。
【0048】
他の態様では、XおよびXは各々CHであり、XはN−SORであり、Rはメチルである。さらなる態様では、Rは、0〜3個の低級アルキル基、例えばメチル基で置換されたフェニルである。他の態様では、Rは、0〜3個の低級アルキル基で置換されたヘテロアリールである。さらなる態様では、ヘテロアリール基は、チオフリル、ピリジル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、およびピラゾリルからなる群より選択される。
【0049】
本発明の別の局面は、炎症を治療するための方法であって、前記治療を必要としている被験体に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0050】
本発明の別の局面は、本発明の化合物および薬学的に許容しうる賦形剤を含む薬学的組成物である。
【0051】
本発明の別の局面は、嫌気性雰囲気、高pH、および高温下で、式Iで示される化合物を生成するのに十分な時間、式
【0052】
【化7】


で示される中間物を、R−B(OH)
【0053】
【化8】


などのRのボロン酸誘導体、ならびにこれらのエステルおよび塩から選択される第1の試薬と、式Pd[P(Cを有する第2の試薬とで処理することにより、本発明の化合物を調製するためのプロセスである。
【0054】
本明細書に記載される様々な基の組み合わせが他の態様を形成する可能性があることを認識すべきである。このように、様々な異なる化合物が本発明に包含される。
【0055】
本発明の例示的な化合物を以下の表1に示す。
【表1】









【0056】
合成
本発明の化合物は、以下の実施例の項に示す実例となる例において記載される様々な方法によって作製することができる。これらの化合物の調製に用いられる出発物質および試薬は、一般的に、Aldrich Chemical Co.などの商業的供給元から入手可能であるか、またはFieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-15; Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds, Elsevier Science Publishers, 1989, Volumes 1-5 and Supplements; and Organic Reactions, Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40などの参照文献に記載されている手順に従って当業者に公知の方法により調製される。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成することができるいくつかの方法の単なる例証であり、これらの合成反応スキームに対して様々な変更を行ってもよく、前記変更は、本明細書に含まれる開示を参照した当業者に示唆される。
【0057】
必要に応じて、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含むが、これらに限定されない従来の技術を使用して、合成反応スキームの出発物質および中間体を単離し、そして精製することができる。このような物質は、物理定数およびスペクトルのデータを含む、従来の手段を使用して特性評価することができる。
【0058】
特に逆の指定のない限り、本明細書に記載される反応は、好ましくは、不活性雰囲気下で、大気圧で、約−78℃〜約230℃の範囲、最も好ましくは、そして便利には室温(すなわち、周囲温度)、例えば約20℃の反応温度で実施される。
【0059】
以下のスキームでは、異なる指定のない限り、R、R、X、X、Xなどは、上に定義された通りであるが;Xは、Cl、BrまたはIである。
【0060】
【化9】



【0061】
工程(a):DMFなどの非プロトン性溶媒中でNaHなどの強塩基を使用して、置換インドールまたはトリアゾール(II)をハロピリミジン(I)とカップリングさせて、中間体(III)を形成する。
【0062】
工程(b):酸性水性溶媒中にてNaNO2で中間体を処理するなどの標準的な手段によって、中間体(III)をハロゲン化し、次いで、KIまたはKBrなどのハロゲン化物塩と反応させて、中間体(IV)を形成する。
【0063】
工程(c):例えば、DCM中のMCPBAを用いて、中間体(IV)のスルファニル部分をスルフィニルに酸化して、中間体(V)を提供する。
【0064】
工程(d、e):次いで、中間体(V)のメチルスルフィニル基を、1,4−ジオキサン中で加熱することにより、4−アミノ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(工程(d))または1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イルアミン(工程(e))で置換して、それぞれ中間体(VI)または(VII)を提供する。
【0065】
工程(f):中間体(VI)のエチルエステルを、THFの中のLiOHで処理するなどの標準的な手段によって鹸化し、次いで、4−ヒドロキシピペリジンでアミド化して、中間体(VIII)を提供する。
【0066】
工程(g):次いで、例えば、フェニル基またはヘテロアリール基の適切なボロン酸誘導体と混ぜ合わせ、そして、110℃で、トルエン、またはトルエンとEtOHとの混合物などの有機溶媒中にて、嫌気性条件下で、NaCOおよびPd(PPhで処理することなどにより、中間体(VII)または(VIII)のハロ基を、望ましいフェニル基またはヘテロアリール基で置換する。あるいは、フェニル基またはヘテロアリール基を、工程(d〜f)の前に中間体(V)にカップリングさせてもよい。
【0067】
有用である可能性のある他の合成法は、両方とも全体が参照により本明細書に組み込まれる、2007年9月7日出願の米国特許出願第11/899,758号、および2007年12月7日出願の米国特許出願第12/001,021号に記載されている。
【0068】
次いで、例えば、抽出、結晶化、分取HPLC、フラッシュクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーなどにより、生成物を精製してもよい。
【0069】
有用性
本発明の化合物は、JNK調節剤であり、したがって広範囲にわたるJNK介在性障害の治療に有効であると予想される。例示的なJNK介在性障害は、自己免疫障害、炎症性障害、代謝性障害、神経系疾患、および癌を含むが、これらに限定されない。したがって、本発明の化合物を用いて、このような障害のうち1つ以上を治療することができる。いくつかの態様では、本発明の化合物を用いて、関節リウマチ、喘息、II型糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病または卒中などのJNK介在性障害を治療することができる。
【0070】
投与および薬学的組成物
本発明は、本発明の少なくとも1つの化合物、あるいはその個々の異性体、異性体のラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物、または薬学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物とともに、薬学的に許容しうる担体、場合により他の治療成分および/または予防成分を含む薬学的組成物を含む。
【0071】
一般的に、本発明の化合物は、類似の有用性を有する剤について許容されている任意の投与方法により、治療上有効量投与される。適切な用量域は、治療される疾患の重症度、被験者の年齢および相対的健康、用いられる化合物の効力、投与の経路および形態、投与の対象となる徴候、ならびに関与する医師の嗜好および経験などの多くの要因に依存して、典型的には、毎日1〜500mg、好ましくは毎日1〜100mg、最も好ましくは毎日1〜30mgである。このような疾患を治療する当業者は、過度の実験をすることなく、そして自分自身の認識および本願の開示に依存して、所与の疾患に対する本発明の化合物の治療上有効量を突き止めることができる。
【0072】
本発明の化合物は、経口(頬側および舌下を含む)、直腸内、鼻腔内、局所、肺内、膣内、非経口(筋肉内、動脈内、鞘内、皮下、静脈内を含む)投与に適しているものを含む薬学的製剤として、または吸入もしくは吹送による投与に適している形態で投与してよい。好ましい投与方法は、一般的に、病気の程度によって調節することができる便利な一日量の投与計画を使用する経口である。
【0073】
本発明の化合物は、1つ以上の従来の佐剤、担体または希釈剤とともに、薬学的組成物および単位剤形の形態にしてもよい。薬学的組成物および単位剤形は、さらなる活性化合物または成分を含むまたは含まない、従来の比率の従来の成分で構成されてよく、単位剤形は、使用される対象の日用量域に相応する任意の適切な有効量の活性成分を含有してよい。薬学的組成物は、錠剤または充填カプセル剤などの固体、半固体、散剤、徐放性製剤、あるいは液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、または経口用途用の充填カプセル剤などの液体として;あるいは直腸または膣内投与用の坐剤の形態で;あるいは非経口用途用の無菌注射剤溶液の形態で使用してよい。したがって、錠剤1個当たり、約1mg、またはより広く約0.01〜約100mgの活性成分を含有する製剤が、適切な例示的単位剤形である。
【0074】
本発明の化合物は、広範囲にわたる経口投与剤形に製剤してよい。薬学的組成物および剤形は、活性成分として本発明の化合物、またはその薬学的に許容しうる塩を含んでよい。薬学的に許容しうる担体は、固体または液体のいずれであってもよい。固体形態の調製品は、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散性顆粒剤を含む。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤または封入材料としても作用しうる1つ以上の物質であってよい。散剤では、担体は、一般的に、微粉活性成分を含む混合物である、微粉固体である。錠剤では、活性成分は、一般的に、必要な結合能を有する担体と適切な比率で混合され、望ましい形態および大きさに圧縮される。散剤および錠剤は、好ましくは、約1〜約70パーセントの活性化合物を含有する。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ろう、カカオ脂などを含むが、これらに限定されない。用語「調製品」は、担体を含むかまたは含まない活性成分が、それに関連する担体により包まれたカプセル剤を提供する、担体として封入材料を含む活性化合物の製剤を含むことを意図する。同様に、カシェ剤およびロゼンジ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤およびロゼンジ剤は、経口投与に適している固体形態であり得る。
【0075】
経口投与に適している他の形態は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水溶液、水懸濁液を含む液体形態の調製品、または使用直前に液体形態の調製品に変換することを意図する固体形態の調製品を含む。乳剤は、溶液、例えばプロピレングリコール水溶液中で調製してもよく、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタンまたはアラビアゴムなどの乳化剤を含有してもよい。水溶液は、水に活性成分を溶解させ、そして適切な着色剤、香料、安定剤、および増粘剤を添加することにより調製できる。水懸濁液は、天然または合成のゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁化剤などの粘着性物質とともに、水中に微粉活性成分を分散させることにより調製できる。固体形態の調製品は、液剤、懸濁剤、および乳剤を含み、活性成分に加えて、着色剤、香料、安定剤、バッファ、人工および天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有してもよい。
【0076】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注入、例えば迅速投与または持続注入による)用に製剤することができ、そして、アンプル、プレフィルドシリンジ、少量注入の単位剤形で、または保存剤を添加した複数回用量容器で提示してもよい。組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルション、例えば、ポリエチレングリコール水溶液などの形態をとってよい。油性または非水性の担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油)および注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)を含み、そして保存剤、湿潤剤、乳化剤もしくは懸濁化剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含有してもよい。あるいは、活性成分は、無菌固体を無菌的に単離することによるか、または適切なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質不含水を用いて使用前に構成するために溶液を凍結乾燥することによって得られる粉末形態であってもよい。
【0077】
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤またはローション剤、あるいは経皮貼布として表皮に局所投与するために製剤してよい。軟膏剤およびクリーム剤は、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を添加した水性または油性の基剤を用いて調剤することができる。ローション剤は、水性または油性の基剤を用いて調剤することができ、そして、一般的に、1つ以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤または着色剤も含有する。口内の局所投与に適している製剤は、風味のある基剤、通常、スクロース、およびアラビアゴムまたはトラガント中に活性剤を含むロゼンジ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性基剤中に活性成分を含むパステル剤;および適切な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄液を含む。
【0078】
本発明の化合物は、坐剤として投与するために製剤してもよい。脂肪酸グリセリドの混合物またはカカオ脂などの低融点ろうを、まず融解させ、そして、例えば撹拌によって、活性成分を均質に分散させる。次に、融解した均質な混合物を便利な大きさの型に注ぎ、冷却し、そして固化させる。
【0079】
本発明の化合物は、膣内投与するために調剤してもよい。活性成分に加えてこのような担体も含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、発泡剤、または噴霧剤は、適切であることが当技術分野において公知である。
【0080】
対象化合物は、鼻腔内投与用に製剤してもよい。液剤または懸濁剤は、例えば、滴瓶、ピペットまたはスプレーを用いて、従来の手段によって鼻腔に直接適用される。製剤は、単回または複数回投与形態で提供してよい。滴瓶またはピペットの後者の場合、これは、患者が適切な所定の体積の液剤または懸濁剤を投与するよって達成され得る。スプレーの場合、これは、例えば、定量霧化噴霧ポンプによって達成され得る。
【0081】
本発明の化合物は、鼻腔内投与を含む、特に呼吸器官へのエアロゾル投与用に製剤することができる。化合物は、一般に、例えば約5ミクロン以下の小さな粒径を有する。このような粒径は、当技術分野において公知の手段、例えば微粒子化によって得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、またはジクロロテトラフルオロエタン、または二酸化炭素、または他の適切な気体などの適切な噴射剤を含む加圧パックで提供される。エアロゾルは、また、便利なようにレシチンなどの界面活性剤を含有してもよい。薬の用量は、定量バルブによってコントロールすることができる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末の形態、例えば、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの澱粉誘導体、およびポリビニルピロリジン(PVP)などの適切な粉末基剤中の化合物の混合粉体で提供されてもよい。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、例えばゼラチンのカプセルまたはカートリッジで単位剤形として、または吸入器を用いて粉末を投与することができるブリスターパックとして提示してもよい。
【0082】
望ましい場合、活性成分の持続または制御放出投与に適合した腸溶コーティングを施した製剤を調製してもよい。例えば、本発明の化合物は、経皮または皮下薬物送達デバイスに製剤することができる。化合物の持続放出が必要なとき、および患者が治療レジメンを遵守することが重要なとき、これらの送達システムは有利である。経皮送達システムにおいて化合物は、皮膚接着剤固体支持体に付着していることが多い。対象となる化合物は、経皮吸収促進剤、例えばAzone(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と混ぜ合わせてもよい。持続放出送達システムは、外科処置または注入によって皮下層に皮下挿入される。皮下インプラントは、脂質可溶性膜、例えばシリコーンゴム、または生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸中に化合物を封入する。
【0083】
薬学的調製品は、好ましくは単位剤形である。このような形態では、調製品は、適切な量の活性成分を含有している単位用量に細分される。単位剤形は、パッケージ化調製品であってもよく、前記パッケージは、パケット化(packeted)錠剤、カプセル剤およびバイアルまたはアンプル中の散剤などの離散量の調製品を含む。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ剤またはロゼンジ剤自体であってもよく、パッケージ化形態の適切な数の任意のこれら剤であってもよい。
【0084】
他の適切な薬学的担体およびそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvania.に記載されている。本発明の化合物を含有する例示的な薬学的製剤を以下に記載する。
【0085】
実施例
本発明のさらなる目的、利点および新規特徴は、これらに限定することを意図するものではないが、以下の本発明の実施例を検討することにより当業者に明らかになるであろう。
【0086】
略語のリスト
AcOH(酢酸);Bn(ベンジル);BOP(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート);(BOC)O(ジ−tert−ブチルジカーボネート;CSI(クロロスルホニルイソシアネート);DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデカ−7−エン;DCM(ジクロロメタン(塩化メチレン));DEA(ジエチルアミン);DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン);DMF(N,N−ジメチルホルムアミド);EDCI(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩;EtO(ジエチルエーテル);EtOH(エタノール);EtOAc(酢酸エチル);HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール);i−PrOH(イソプロパノール);LAH(水素化アルミニウムリチウム);m−CPBA(また、MCPBA)(3−クロロペルオキシ安息香酸);MeOH(メタノール);MW(マイクロ波);NCS(N−クロロスクシンイミド);NMP(1−メチル−2−ピロリジノン);p−TSA(p−トルエンスルホン酸);RT(室温);TEA(トリエチルアミン);THF(テトラヒドロフラン);TLC(薄層クロマトグラフィー)。
【0087】
実施例1: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチルチオフェン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物1)の合成
AcOH(100mL)中の3−ニトロベンゼン−1,2−ジアミン(15.0g)の混合物に、NaNO(7.0g)を添加した。RTで15分間反応混合物を撹拌し、次いで、約2時間60℃で加熱したところ、その間に反応混合物は赤色になった。混合物をRTに冷却し、氷水で希釈し、得られた沈殿物を濾過し、氷水で洗浄し、次いで真空下で乾燥させて、薄茶色の固体として4−ニトロ−1H−ベンゾトリアゾール(13.45g、収率83.6%)を得た。さらに精製することなく、生成物を使用した。
【0088】
(B) EtOH(40mL)中の4−ニトロ−1H−ベンゾトリアゾール(0.492g)と10%のPdC(0.10g)との混合物を、1時間Parr装置内で40psiにて水素化した。セライト(Celite)によって生成物を濾過し、EtOAcで数回洗浄し、合わせた濾液を減圧下で濃縮して、橙色の固体(0.405g)を得た。生成物を、短いSiOカラム(1:1 EtOAc−ヘキサン)で精製し、橙色の固体として4−アミノ−1H−ベンゾトリアゾール(0.322g、収率80%)を得た。
【0089】
(C) 氷浴中にて、N下で無水DMF(100mL)を冷却した。これに、4−アミノ−1H−ベンゾトリアゾール(9.0g)を添加し、混合物を10分間撹拌した。これに、NaH(60%、2.95g)を添加し、15分間氷浴上で混合物を撹拌した。最後に、4−クロロ−2−メチルスルファニル−ピリミジン(11.00g)を添加し、氷浴を除去し、混合物をRTに加温し、次いで、1時間85℃に加熱した。次に、反応混合物をRTに冷却し、氷水で希釈した。細かい黄色の沈殿物を濾過し、冷水で洗浄し、EtOAcとともに粉砕(titurate)して、1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール−4−イルアミン(13.43g、収率78%)を得た。
【0090】
(D) 1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール−4−イルアミン(12.0g)、氷(50g)、HO(25mL)およびHCl(濃、25mL)の混合物を5分間氷浴中で撹拌した。NaNO(3.38g)のHO(25mL)溶液をゆっくり反応混合物の表面下に添加し、30分間撹拌した。次いで、これにHO(25mL)中のKI(9.3g)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。次いで、10%のNaOH(水溶液)で混合物を塩基化し、CHClで抽出した。合わせた有機抽出物をHOおよびブラインで洗浄し、減圧下で溶媒を除去して、赤色残留物として4−ヨード−1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(11.15g、65%)を得た。
【0091】
(E) 4−ヨード−1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(3.62g)のDCM(125mL)溶液を氷浴で冷却し、添加漏斗を使用して、1時間にわたって、MCPBA(2.24g)のDCM(50mL)溶液を滴下することにより処理した。次いで、10%のNa溶液で反応混合物をクエンチし、DCMで希釈し、飽和NaHCO、HO、およびブラインで洗浄した。NaSOで有機層を乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。残留物をシリカを用いたクロマトグラフィー(3〜5%のMeOH−DCM)で分離して、薄橙色の固体として4−ヨード−1−(2−メチルスルフィニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(2.65g、69%)を得た。
【0092】
(F) 1,4−ジオキサン(25mL)中の4−ヨード−1−(2−メチルスルフィニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(2.0g)および4−アミノ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(1.8g)の混合物を、110℃で4時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去して油を得、これをEtOHに溶解させ(taken up in EtOH)、薄橙色の固体が形成されるまで水浴中で加熱した。固体を濾過し、EtOで洗浄し、乾燥させて、薄橙色の粉末として4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(3.56g、93%)を得た。
【0093】
(G) THF(20mL)、EtOH(20mL)およびHO(15mL)中の4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(2.56g)の混合物に、LiOH・HO(0.65g)を添加し、得られた混合物をRTで一晩撹拌した。次いで、HO(10mL)中のクエン酸(2.99g)で反応混合物を酸性化し、溶媒を減圧下で除去した。得られた薄橙色の固体をHO中で30分間撹拌し、濾過し、HOで洗浄し、乾燥させて、薄橙色の粉末として4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキサンカルボン酸(2.1g、87%)を得た。Mp=252〜254℃。
【0094】
(H) THF(60mL)中の4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキサンカルボン酸(2.1g)、(BOP(3.0g)、4−ヒドロキシピリジン(0.69g)、およびDIPEA(0.57mL)の混合物を、RTで一晩撹拌した。次いで、反応混合物を濾過し、薄橙の固体をEtOで洗浄し、乾燥させて、生成物を得た。母液を濃縮し、HOで希釈し、DCMで抽出し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させ、合計収量2.25gの(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノンを得た。Mp=265.6〜268.1℃。
【0095】
(I) (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル)}−メタノン(0.25g)、4−メチル−3−チオフェンボロン酸(0.068g)、およびNaCO(2M、0.7mL、脱気)の混合物を、15分間N下でRTにて撹拌した。これに、トルエン(8mL、脱気)およびEtOH(0.5mL)とともにPd(PPh(0.016g)を添加し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、固体を得た。固体を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:50)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、オフホワイトの固体として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチルチオフェン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物1、0.114g、40%)を得た。Mp=246〜247℃;M+H=518。
【0096】
実施例2: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−o−トリル−ベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(化合物2)の合成
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(0.4g)、o−トリルボロン酸(0.104g)およびNaCO(2M、1.1mL、脱気)の混合物をアルゴンで5分間脱気し、次いで、15分間N下でRTにて撹拌した。これに、トルエン(13mL、脱気)およびEtOH(1mL)とともにPd(PPh(0.025g)を添加し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、固体を得た。固体を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:50)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、オフホワイトの固体として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−o−トリル−ベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロへキシル}−メタノン(化合物2、0.272g、73%)を得た。Mp=224〜226℃;M+H=512。
【0097】
実施例3: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチルピリジン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物3)の合成
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(0.31g)、4−メチル−ピリジン−3−ボロン酸(0.086g)、およびNaCO(2M、0.86mL、脱気)の混合物をアルゴンで5分間脱気し、次いで、15分間N下でRTにて撹拌した。これに、トルエン(13mL、脱気)およびEtOH(1mL)とともにPd(PPh(0.025g)を添加し、混合物を110℃で一晩撹拌した。TLCが出発物質の存在を示したので、4−メチル−ピリジン−3−ボロン酸(0.086g)およびPd(PPh(20mg)のさらなるアリコートを添加し、混合物を110℃でさらに7時間撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、固体を得た。固体を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:50)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、オフホワイトの固体として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチルピリン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物3、0.108g、37%)を得た。Mp=194.3〜218.2℃;M+H=513。
【0098】
実施例4: (4−{4−[4−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(化合物4)の合成
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(0.31g)、(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)ボロン酸(0.088g)、およびNaCO(2M、0.86mL、脱気)の混合物を、15分間N下でRTにて撹拌した。これに、トルエン(10mL、脱気)およびEtOH(1mL)とともにPd(PPh(0.019g)を添加し、混合物を110℃で一晩撹拌した。TLCが出発物質の存在を示したので、(3,5−ジメチルイソオキサゾール4−イル)ボロン酸(0.088g)およびPd(PPh(20mg)のさらなる部分を添加し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、薄灰色の固体を得た。前記固体を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:50)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、白色の粉末(0.21g)を得た。EtO(25mL)に粉末を溶解させ、水浴中で加熱し、水浴から取り出し、消火し(extinguished)、白色粉末として(4−{4−[4−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(化合物4、0.129g、44%)を回収した。Mp=>300℃;M+H=517。
【0099】
実施例5: (1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−{4−[4−(4−メチル−チオフェン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イル}−アミン(化合物5)の合成
1,4−ジオキサン(20mL)中の4−ヨード−1−(2−メタンスルフィニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(700mg)および1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イルアミン(642mg)の混合物をアルゴン下で撹拌し、次いで、110℃で4.5時間加熱した。次いで、反応混合物を冷却し、減圧下で溶媒を除去して、固体を得た。0〜100%のEtOAc/ヘキサンを使用して、前記固体をシリカを用いたクロマトグラフィーで分離し、[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミン(731mg)を得た。
【0100】
(B) [4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミン(364mg)、(4−メチル−3−チオフェンボロン酸(109mg)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、1.1mL、脱気)、トルエン(13mL、脱気)およびEtOH(1mL)の混合物にアルゴンを通気し、ねじ蓋圧力フラスコ内で10分間RTで撹拌した。これに、Pd(PPh(25mg)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をRTに冷却し、水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、固体を得た。前記固体を、0〜30%のMagic Base/DCMで溶出して、シリカを用いたクロマトグラフィーで分離し、次いで、0〜100%のEtOAc/ヘキサンを使用して、再度シリカを用いたクロマトグラフィーで分離した。生成物をEtOとともに粉砕し、濾過し、減圧下で一晩蒸発させて、(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−{4−[4−(4−メチル−チオフェン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イル}−アミン(化合物5、219mg)を得た。Mp=244.0〜245.0℃;M+H=470。
【0101】
実施例6: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−チオフェン−3−イルベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(化合物6)の合成
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(274mg)および3−チオフェンボロン酸(67mg)の混合物をねじ蓋圧力フラスコに入れ、NaCO(2Mの水溶液、0.7mL、脱気)、トルエン(5mL、脱気)およびEtOH(5mL)を添加した。これに、Pd(PPh(20mg)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をRTに冷却し、水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、粗固体(0.25g)を得た。粗生成物を、0〜70%のMagic Base/DCMで溶出して、シリカを用いたクロマトグラフィーで分離し、EtO中で粉砕し、濾過し、蒸発させて、(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−チオフェン−3−イルベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(化合物6、201mg)を得た。mp=233〜234℃;M+H=504。
【0102】
実施例7: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチル−チオフェン−3−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物7)の合成
NaH(7.59g、60%)のDMF(200mL)懸濁液に、N下で4−ブロモインドールを少しずつ添加し、混合物を0℃で15分間撹拌した。これに、4−クロロ−2−メチルスルファニル−ピリミジン(15.45mL)を少しずつ添加し、0℃で30分間反応混合物を撹拌し、次いで、更に30分間撹拌しながらRTに加温した。次いで、反応混合物を0℃の冷水でクエンチし、得られた懸濁液を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、粗生成物(41.01g)を得た。前記粗生成物(21.90g)を、ヘキサン:EtOAc(900:100)で溶出して、シリカを用いたクロマトグラフィーで分離し、オフホワイトの固体(16.4g)を得た。蒸気浴上のEtOH中で固体を加熱し、結晶化させ、濾過し、乾燥させて、4−ブロモ−1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−インドールを得た。
【0103】
(B) 0℃で、4−ブロモ−1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−インドール(5.0g)のDCM(200mL)溶液に、MCPBA(4.01g)を少しずつ添加し、0℃で1時間混合物を撹拌した。反応混合物を10%のNaSO(水溶液)でクエンチし、DCMとNaHCO(水溶液)との間で分配し、有機層をNaHCO(水溶液)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。溶媒を揮散させて、薄黄色の固体を得、これを次に、熱EtOAc/ヘキサン(50:50)で処理し、濾過し、乾燥させて、オフホワイトの粉末として4−ブロモ−1−(2−メチルスルフィニル−ピリミジン−4−イル)−1H−インドール(4.98g)を得た。
【0104】
(C) 1,4−ジオキサン(100mL)中の4−ブロモ−1−(2−メチルスルフィニル−ピリミジン−4−イル)−1H−インドール(4.98g)および4−アミノ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(5.07g)の混合物を、5.5時間N下で110℃にて撹拌した。減圧下で溶媒を除去して油を得、これをRTで固化させた。生成物を、ヘキサン/EtOAc(7:3〜6:4)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、白色粉末として4−[4−(4−ブロモインドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(5.82g、89%)を得た。
【0105】
(D) THF(100mL)、EtOH(40mL)、およびHO(30mL)中の4−[4−(4−ブロモインドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(5.8g)およびLiOH・HO(1.65g)の混合物を一晩RTで撹拌した。次いで、クエン酸(20mLのHO中7.54g)で反応混合物を酸性化させ、1時間RTで撹拌した。沈殿物を濾過し、水、次いでEtOで洗浄し、乾燥させて、白色粉末として4−[4−(4−ブロモインドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキサンカルボン酸(5.27g、97%)を得た。
【0106】
(E) THF(200mL)中の4−[4−(4−ブロモインドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキサンカルボン酸(5.27g)、(BOP(8.42g)、4−ヒドロキシピペリジン(1.93g)、およびヒューニッヒ塩基(4.42mL)の混合物を、4.25時間RTで撹拌した。反応混合物を濾過して、白色粉体(3.01g)を得た。母液を濃縮し、HOで希釈し、DCMで抽出し、NaSOで乾燥させ、揮散させてオフホワイトの固体を得、これをEtOH中で加熱し、濾過し、乾燥させて、{4−[4−(4−ブロモ−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(合計6.09g、96%)を得た。
【0107】
(F) {4−[4−(4−ブロモ−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(0.30g)、4−メチル−3−チオフェンボロン酸(0.094g)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、0.9mL、脱気)、トルエン(10mL、脱気)およびEtOH(2mL)の混合物を、10分間RTで撹拌した。これに、Pd(PPh(0.02g)を添加し、N下で110℃にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物をRTに冷却し、水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて粉末を得た。固体を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:50)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィで分離し、オフホワイトの固体を得、これをEtOHから結晶化させて、(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチル−チオフェン−3−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物7、0.12g、39%)を得た。Mp=168〜188℃;M+H=516。
【0108】
実施例8: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ピリジン−4−イル−ベンジルトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(化合物8)の合成
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(274mg)および4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキキソボロラン−2−イル)−ピリジン(108mg)の混合物をねじ蓋圧力フラスコに入れ、NaCO(2Mの水溶液、0.7mL、脱気)、トルエン(5mL、脱気)およびEtOH(5mL)を添加した。これに、Pd(PPh(20mg)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をRTに冷却し、水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、粗固体(0.29g)を得た。粗生成物を、0〜70%のMagic Base/DCMで溶出して、シリカを用いたクロマトグラフィーで分離し、一晩EtO中で粉砕し、濾過し、蒸発させて、(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ピリジン−4−イル−ベンジルトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(化合物8、130mg)を得た。mp=266.0〜267.0℃;M+H=499。
【0109】
実施例9: {4−[4−(4−フラン−3−イル−ベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(化合物9)の合成
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(274mg)および3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキキソボロラン−2−イル)−フラン(102mg)の混合物をねじ蓋圧力フラスコに入れ、NaCO(2Mの水溶液、0.7mL、脱気)、トルエン(5mL、脱気)およびEtOH(5mL)を添加した。これに、Pd(PPh(20mg)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をRTに冷却し、水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、粗固体を得た。粗生成物を、0〜60%のMagic Base/DCMで溶出して、シリカを用いたクロマトグラフィーで分離し、一晩EtO中で粉砕し、濾過し、蒸発させて、{4−[4−(4−フラン−3−イル−ベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(化合物9、103mg)を得た。mp=243.0〜244.0℃;M+H=488。
【0110】
実施例10: (1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−{4−[4−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イル}−アミン(化合物10)の合成
[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミン(250mg)、3−メチル−ピラゾール−4−ボロン酸ピナコールエステル(109mg)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、0.7mL、脱気)、トルエン(9mL、脱気)およびEtOH(0.7mL)の混合物を、ねじ蓋圧力フラスコに添加した。これに、Pd(PPh(20mg)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をRTに冷却し、3−メチル−ピラゾール−4−ボロン酸ピナコールエステル(109mg)、Pd(PPh(20mg)およびEtOH(5mL)のさらなる部分を添加した。再度フラスコを密閉し、110℃で一晩加熱した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、固体(0.34g)を得た。固体を、0〜60%のMagic Base/DCMで溶出して、シリカを用いたクロマトグラフィーで分離し、次いで、0〜60%のMagic Base/DCMを使用して、再度シリカを用いたクロマトグラフィーで分離した。EtOとともに生成物を粉砕し、濾過し、減圧下で一晩乾燥させて、(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−{4−[4−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イル}−アミン(化合物10、39mg)を得た。Mp=231〜232℃;M+H=454。
【0111】
実施例11: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物11)の合成
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ヨードベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(274mg)および3−メチル−ピラゾール−4−ボロン酸ピナコールエステル(109mg)、NaCO(2Mの水溶液、0.7mL、脱気)、トルエン(9mL、脱気)およびEtOH(0.7mL)の混合物に、10分間ねじ蓋圧力フラスコ内にてアルゴンを通気した。これに、Pd(PPh(18mg)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。反応混合物をRTに冷却し、次いで、3−メチル−ピラゾール−4−ボロン酸ピナコールエステル(109mg)、Pd(PPh(20mg)およびEtOH(5mL)のさらなる部分を添加し、フラスコを密閉し、110℃で6時間再度加熱した。3−メチル−ピラゾール−4−ボロン酸ピナコールエステル(109mg)およびPd(PPh(20mg)のさらなる部分を添加し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をRTに冷却し、水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、粗固体(311mg)を得た。粗生成物(52mg)を、0〜60%のMagic Base/DCMで溶出して、シリカを用いたクロマトグラフィーで分離し、一晩EtO中で粉砕し、濾過し、乾燥させて、(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(3−メチル−1H−ピラゾール4−イル)−ベンジルトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物11、28mg)を得た。mp=190〜195℃;M+H=502。
【0112】
実施例12: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物12)の合成
{4−[4−(4−ブロモ−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(0.51g)、3−メチル−ピラゾール−4−ボロン酸ピナコールエステル(0.234g)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、1.53mL、脱気)、トルエン(18mL、脱気)およびEtOH(4mL)の混合物を、ねじ蓋圧力フラスコに添加した。これに、Pd(PPh(0.035g)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、薄黄色の固体(0.45g)を得た。前記固体を、0〜60%のMagic Base/DCMで溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、次いで、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:50)で溶出して、シリカを用いた再度クロマトグラフィーで分離し、オフホワイトの粉末として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物12、0.11g、22%)を得た。Mp=215〜220℃。
【0113】
実施例13: (4−{4−[4−(3,5−ジメチル−イソオキサゾール−4−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(化合物13)の合成
{4−[4−(4−ブロモ−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(0.51g)、3,5−ジメチル−イソオキサゾール−4−イル−ボロン酸(0.176g)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、1.53mL、脱気)、トルエン(18mL、脱気)およびEtOH(4mL)の混合物を、ねじ蓋圧力フラスコに添加した。これに、Pd(PPh(0.035g)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、薄黄色の固体(0.61g)を得た。前記固体を、DCM:1%のNHOH−MeOH(900:50)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、オフホワイトの粉末として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(3,5−ジメチル−イソオキサゾール−4−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物13、0.32g、62%)を得た。Mp=203〜204℃。
【0114】
実施例14: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチル−ピリジン−3−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物14)の合成
{4−[4−(4−ブロモ−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(0.3g)、4−メチルピリジン−3−ボロン酸(0.09g)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、0.9mL、脱気)、トルエン(10mL、脱気)およびEtOH(2mL)の混合物を、ねじ蓋圧力フラスコに添加した。これに、Pd(PPh(0.02g)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、暗褐色の油(0.38g)を得た。前記油を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:25〜1000:50)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、白色の粉末として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチル−ピリジン−3−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン(化合物14、0.15g、29%)を得た。Mp=176〜178℃。
【0115】
実施例15: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−o−トリル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(化合物15)の合成
{4−[4−(4−ブロモ−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(0.3g)、o−トリル−ボロン酸(0.089g)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、0.9mL、脱気)、トルエン(12mL、脱気)およびEtOH(3mL)の混合物を、ねじ蓋圧力フラスコに添加した。これに、Pd(PPh(0.02g)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、油(0.41g)を得た。前記油を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:25)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、白色の粉末として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−o−トリル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロへキシル}−メタノン(化合物15、0.23g、46%)を得た。Mp=158〜160℃。
【0116】
実施例16: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ピリジン−4−イル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(化合物16)の合成
{4−[4−(4−ブロモ−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(0.3g)、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサ−ボロラン−2−イル)−ピリジン(0.135g)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、0.9mL、脱気)、トルエン(12mL、脱気)およびEtOH(3mL)の混合物を、ねじ蓋圧力フラスコに添加した。これに、Pd(PPh(0.02g)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、油を得た。前記油を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:50)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、白色の粉末として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ピリジン−4−イル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロへキシル}−メタノン(化合物16、0.112g、30%)を得た。Mp=258〜259℃;M+H=497。
【0117】
実施例17: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−フェニル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(化合物17)の合成
{4−[4−(4−ブロモ−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(0.3g)、ベンゼン−ボロン酸(0.086g)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、0.9mL、脱気)、トルエン(12mL、脱気)およびEtOH(4mL)の混合物を、ねじ蓋圧力フラスコに添加した。これに、Pd(PPh(0.02g)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、10%のMeOH−DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、薄茶色の固体を得た。前記固体を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:25)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、白色の粉末として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−フェニル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロへキシル}−メタノン(化合物17、0.171g、58%)を得た。Mp=190〜191℃;M+H=496。
【0118】
実施例18: (4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−チオフェン−3−イル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン(化合物18)の合成
{4−[4−(4−ブロモ−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(0.51g)、3−チオフェン−ボロン酸(0.16g)、ならびにNaCO(2Mの水溶液、1.53mL、脱気)、トルエン(12mL、脱気)およびEtOH(12mL)の混合物を、ねじ蓋圧力フラスコに添加した。これに、Pd(PPh(0.035g)を添加し、フラスコを密閉し、混合物を110℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を揮散させて、黄色の固体を得た。前記固体を、DCM:1%のNHOH−MeOH(1000:50)で溶出して、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーで分離し、薄黄色の粉末として(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−チオフェン−3−イル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロへキシル}−メタノン(化合物18、0.32g、63%)を得た。Mp=171〜172℃;M+H=502。
【0119】
実施例19: 製剤
以下の表に示すように、様々な経路によって送達するための薬学的調製品を製剤する。以下の表で用いられるとき、「活性成分」または「活性化合物」は、式Iで示される化合物のうち1つ以上を意味する。
【0120】
【表2】

【0121】
成分を混合し、各々約100mgを含有するカプセルに分配する;1個のカプセルは、おおよそ合計日用量である。
【0122】
【表3】

【0123】
成分を混ぜ合せて、メタノールなどの溶媒を用いて顆粒化する。次いで、その製剤を乾燥させて、適切な打錠機で錠剤(約20mgの活性化合物を含有する)に成形する。
【0124】
【表4】

【0125】
成分を混合して、経口投与用の懸濁剤を形成する。
【0126】
【表5】

【0127】
活性成分を注射用水の一部に溶解させる。次いで、十分な量の塩化ナトリウムを撹拌しながら添加し、等張溶液を作製する。注射用水の残りを用いて溶液の重量を調整し、0.2ミクロンのメンブランフィルターを用いて濾過し、無菌条件下でパッケージ化する。
【0128】
【表6】

【0129】
成分を一緒に融解させ、蒸気浴上で混合し、全重量2.5gを収容する型に注ぐ。
【0130】
【表7】

【0131】
水以外の成分をすべて混ぜ合わせて、撹拌しながら約60℃に加熱する。次いで、約60℃の十分な量の水を激しく撹拌しながら添加して、成分を乳化し、次いで、適量である約100gの水を添加する。
【0132】
鼻内噴霧製剤
鼻内噴霧製剤として約0.025〜0.5パーセントの活性化合物を含有しているいくつかの水懸濁剤を調製する。前記製剤は、場合により、例えば、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロースなどの非活性成分を含有してもよい。塩酸を添加してpHを調節してもよい。鼻内噴霧製剤は、典型的には、1回の作動当たり約50〜100μLの製剤が鼻内噴霧定量ポンプを介して送達され得る。典型的な投与スケジュールは、4〜12時間毎に2〜4回噴霧である。
【0133】
実施例20: インビトロにおけるJNKアッセイ
[γ−33P]ATPを用いたGST−ATF2(19−96)のリン酸化によりJNK活性を測定した。Km濃度のATPと基質を用い、25mMのHEPES(pH7.5)、2mMのジチオスレイトール、150mMのNaCl、20mMのMgCl、0.001%のTween(登録商標)20、0.1%のBSAおよび10%のDMSOを含有するバッファ中の最終体積40μLで酵素反応を行った。ヒトJNK2α2アッセイは、1nMの酵素、1μMのATF2、1μCiの[γ−33P]ATPを含む8μMのATPを含有する。ヒトJNK1α1アッセイは、2nMのnM酵素、1μMのATF2、1μCiのCi[γ−33P]ATPを含む6μMのATPを含有する。ヒトJNK3(Upstate Biotech #14-501M)アッセイは、2nMの酵素、1μMのATF2、1μCiの[γ-33P]ATPを含む4μMのATPを含有する。いくつかの濃度の化合物の存在下または非存在下で酵素アッセイを実行した。JNKおよび化合物を10分間プレインキュベーションし、次いでATPおよび基質を添加することにより酵素反応を開始させた。30分間30℃で反応混合物をインキュベーションした。インキュベーションの終わりに、反応混合物25μLを、135mMのEDTAを含有している10%のグルタチオンSepharose(登録商標)スラリー(Amersham # 27-4574-01)スラリー150μLに移すことにより反応を終了させた。親和性樹脂に反応生成物を捕捉させ、濾過プレート(Millipore, MABVNOB50)上においてリン酸緩衝生理食塩水で6回洗浄して、遊離放射性ヌクレオチドを除去した。マイクロプレートシンチレーションカウンター(Packard Topcount)を用いて、33PのATF2への取込みを定量した。3パラメータモデルに適合させた10本の濃度阻害曲線から得られたIC50値により、JNKに対する化合物の阻害効力を測定した:阻害(%)=最大/(1+(IC50/[インヒビター])勾配)。パラメータ推定のためにMicrosoft Excelでデータを解析した。結果を以下の表2に示す:
【0134】
【表8】

【0135】
実施例21: リン酸化c−Jun移行アッセイ
炎症は、炎症経路の他の遺伝子に対するc−Junの作用によって部分的にレギュレーションされる。したがって、リン酸化c−Junの核への移行阻害は、化合物の抗炎症作用の指標を提供する。American Tissue Culture CollectionからSW1353細胞を購入し、培養条件(37℃、5%のCO)下で、10%のウシ胎児血清(Invitrogen)、アスコルビン酸(Sigma)およびペニシリン/ストレプトマイシン/グルタメート(Invitrogen)を含むDMEM培地(Invitrogen)を含有する成長培地中で維持した。化合物処理の24時間前に、100μLの成長培地中に8,000細胞/ウェルの密度で細胞をプレーティングした。化合物処理直前に、成長培地を90μLの新たな培地に交換した。まず、10mMの化合物原液を化合物ビヒクル(DMSO)で3mMに希釈し、次いで、無血清培地で希釈し、各ウェルに10×濃縮溶液として10μLの体積を添加し、混合し、5% CO中、37℃で30分間、細胞とともにプレインキュベーションした。すべてのサンプルについて、1%の終末濃度で化合物ビヒクル(DMSO)を維持した。30分間インキュベーションした後、20分間TNFα(1ng/mL、Roche Biochem)で細胞を活性化させた。次いで、細胞を固定し、透過性にし、製造業者の指示に従って、抗−リン酸化c−Jun抗体(Santa Cruz)、次いでAlexa Fluor 488で標識した二次抗体およびHoechet 33342色素(Invitrogen)で染色した。ArrayScan HCSシステム(Cellomic)により、1ウェル当り400個の細胞についてリン酸化c−Junのシグナルを測定した。ActivityBaseプログラム(IDBS)において4つのパラメータ適合関数を使用して、対照値の50%までリン酸化c−Jun活性が阻害される化合物の濃度としてIC50値を計算した。結果を以下の表3に示す:
【0136】
【表9】

【0137】
実施例22: ラットのインビボTNF誘導性IL−6産生アッセイ
Charles River Laboratoriesから入手したメスのWistar-Hanラットを、使用前に1週間順化させ、そして体重を95〜130gにする。ラットに、経口強制飼養を介して試験化合物を投与し、その30分後0.5μgの組み換えラットTNF−α(Biosource)を腹腔内投与する。TNF−α投与の90分後、心臓穿刺を介して血液を回収する。リチウムヘパリン分離管(BD microtainer)を使用して血漿を調製し、分析するまで−80℃で凍結させる。ラット特異的IL−6 ELISAキット(Biosource)を使用して、IL−6濃度を決定する。阻害率およびED50値(TNF−α産生が対照値の50%である化合物の投与量として計算)を決定する。結果は、本発明の化合物が、TNF−α誘導性IL−6産生を阻害することを実証する。
【0138】
実施例23: 齧歯類のコラーゲン誘導性関節炎
Harlan Laboratoriesから入手した7〜8週齢のメスのLewisラットを、使用前に1週間順化させ、そして体重を120〜140gにする。実験0日目に、不完全フロイントアジュバント(IFA;2〜3部位で合計0.1mL)中100μgのウシII型コラーゲン(Chondrex)のエマルションで、ラットの背中数部位に皮内(i.d.)感作させる。一般に、初回抗原刺激から12〜14日で関節炎誘導が観察されるが;尾の基部又は背中の別の部位に約7〜10日目に、100μgのコラーゲン/IFAを追加免疫注射(i.d.、合計0.1mL以内)して、疾患の誘導を同期させる。化合物投与は、予防的(追加免疫時又は1〜2日前に開始)であっても、治療的(追加免疫後、1〜2の初期疾患スコア(以下の臨床スコアを参照されたい)と同時に開始)であってもよい。次の21日間、疾患の発生および進行について動物を評価する。
【0139】
スコアリングシステム(下記)を使用したり、各足について足容積測定装置を用いて足容積を測定したり、キャリパを用いて足又は関節の厚さを測定したりしてラットを評価する。0日目にベースライン測定を行い、腫脹の最初の徴候が現れたときに測定を再開し、実験の終わりまで1週間当たり最高3回測定する。各足について以下のようにスコアリングを評価する:
1=足または1本の指における腫脹および/または発赤、
2=2つ以上の関節における腫脹、
3=2つを超える関節が関与している足全体の腫脹、
4=足および指全てにおける重篤な関節炎。
【0140】
個々の足についての4つのスコアを加えることにより、各ラットの関節炎スコアを評価し、最高スコアは16となる。連続的に疾患の発症および進行を測定するために、足容積測定装置を用いて後足の足容積も決定する。
【0141】
研究の終わりに、体重決定、組織学的、細胞および/または分子分析のために後足(および他の組織)を摘出する。さらに、心臓穿刺を介して血液を回収し、リチウムヘパリン分離管(BD microtainer)を使用して血漿を調製し、分析するまで−70℃で凍結させる。血漿、またはホモジネートされた関節組織の炎症性サイトカイン濃度(例えば、TNF−α、IL−1およびIL−6)を、ラット特異的ELISAキット(R&D)を使用して決定する。対照動物と比較した臨床スコア、足容積および組織病理の変化を総合して(as a composite of)、疾患保護または阻害のレベルを決定する。
【0142】
実施例24: TNF−α誘導性ヒト軟骨肉腫SW1353細胞におけるIL−8産生アッセイ
American Tissue Culture CollectionからSW1353細胞を購入し、37℃、5%のCOの培養条件下で、10%のウシ胎児血清(Invitrogen)、アスコルビン酸(Sigma)およびペニシリン(Invitrogen)を含むDMEM培地(Invitrogen)からなる成長培地中で維持する。化合物処理の48時間前に、100μLの培地に、1ウェル当り1×10細胞の密度で細胞をプレーティングする。化合物処理直前に、培地を160μLの新たな培地に交換する。化合物原液(10mM)を成長培地で希釈し、各ウェルに10×濃縮溶液として20μLの体積を添加し、混合し、30分間細胞とともにプレインキュベーションする。すべてのサンプル中1%の終末濃度で化合物ビヒクル(DMSO)を維持する。30分後、10ng/mLのTNF−α(Roche Biochem)で細胞を活性化させる。TNF−αを、成長培地で作成した10×濃縮溶液として添加し、1ウェル当り20μLの体積を添加する。細胞プレートを5時間培養する。細胞培地を回収し、−20℃で保存する。製造業者(BD Bioscience)の指示に従い、IL−8の存在についてサンドイッチELISAにより培地のアリコートを分析する。Microsoft ExcelプログラムのXlfit3を用いて、IL−8産生が対照値の50%に減少した化合物の濃度としてIC50値を計算する。特定の化合物は、このアッセイにおいて0.1〜20μMの範囲のIC50値を有する。
【0143】
実施例25: オボアルブミン感作喘息モデル
(A) オスのBrown-Norway ラットを、3週間にわたって週1回(0日目、7日目、および14日目)、0.2mLのミョウバン中100μgのOA(オボアルブミン)でi.p.感作する。最後の感作後の週、ラットを試験する準備が整う。抗原投与の1〜2日前、動物の体重を測る。21日目、OAのエアロゾル抗原投与(45分間、1%OA)の30分前に、ビヒクルまたは化合物製剤のいずれかをラットの皮下にq.d.投与し、抗原投与の4時間後または24時間後に屠殺する(terminated)。屠殺時に、ラットに麻酔をかける(ウレタン、およそ2g/kg、i.p.)。屠殺時にPKのためにラットから血漿を回収する。屠殺時に腹大動脈から血液を採取する。気管カニューレを挿入し、3×3mLのPBSで肺を洗浄する。総白血球数および白血球百分率についてBAL流体を分析する。Coulter計数機を使用して、細胞(20〜100μL)のアリコート中の総白血球数を決定する。白血球百分率については、50〜200μLのサンプルをCytospinで遠心分離し、スライドをDiff-Quikで染色する。標準的な形態学的基準を使用して光学顕微鏡下で単球、好酸球、好中球およびリンパ球の比率をカウントし、百分率として表す。残りのBAL流体を遠心分離して(1500rpm、10分間)、上清を−80℃で保存する。また、タンパク質および/またはRNA分析のために肺を摘出する。
【0144】
実施例26: CFA誘導性熱痛覚過敏アッセイ
Charles River LaboratoriesからオスのWistarラット(約200g)を購入する。実験前、自由に食物および水を与える。0日目、イソフルラン麻酔下で右後足の足底側に、50μL(1.0mg/mL)の100%完全フロイントアジュバント(CFA;Sigma Chemical Co, St. Louis, MO, USA)を注射する。麻酔からの回復した後、熱痛覚過敏試験を行う実験室にラットを移動させ、30分間透明な矩形プラスチック箱に入れる。馴化の後、通常のケースにラットを戻す。
【0145】
1日目、ラットを一晩絶食させ、2日目(CFA注射の48時間後)、ラットを実験室に戻し、少なくとも1時間その部屋に馴化させる。次いで、実験開始前に、透明なプラスチック床の上に置いた透明なプラスチック箱に、10分間ラットを個別に入れる。ハーグリーヴス試験を使用して、熱に対する足引込め閾値(thermal paw withdrawal threshold)を測定する。足底試験装置(Ugo Basile, Italy)を使用し、プラスチック床を通して各後足に光ファイバー放射熱(強度設定60)を印加する。ラットが熱源から足を離した時間を記録する。対側足のターゲット閾値は約10秒であった。各足を、少なくとも5分間隔で3回、同側および対側足を交互に試験する。ベースラインを決定した後、ラットにビヒクルまたは薬剤のいずれかを投与し、投与の30〜120分後に上記試験を繰り返した。試験者は、処理群について知らされない。研究の終わりにCO吸入によりラットを安楽死させ、5〜10分間観察して、確実に死に至らしめる。本発明の化合物は、このアッセイにおいて有効に疼痛を軽減する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化10】


[式中、
およびXは、各々同時にNまたはCHであり;
は、CH−RまたはN−SOR(式中、Rは低級アルキルである)であり;
は、0〜3個の低級アルキル基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;
は、
【化11】


(式中、Rは、H、低級アシル、またはアミノ酸である)である]
で示される化合物、またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
およびXが各々Nである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
およびXが各々CHである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
がCH−Rであり、R
【化12】


であり、RがHである、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
がN−SORであり、Rがメチルである、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
が、0〜3個のメチル基で置換されたフェニルである、請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
が、0〜3個の低級アルキル基で置換されたヘテロアリールである、請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
ヘテロアリールが、チオフリル、ピリジル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フリル、イミダゾリルおよびピラゾリルからなる群より選択される、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチル−チオフェン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン;
(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−o−トリル−ベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}メタノン;
(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチルピリジン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン;
(4−{4−[4−(3,5−ジメチル−イソオキサゾール−4−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン;
(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−{4−[4−(4−メチル−チオフェン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イル}−アミン;
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(チオフェン−3−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン;
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチルチオフェン−3−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン;
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ピリジン−4−イル−ベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン;
{4−[4−(4−フラン−3−イル−ベンゾトリアゾール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−メタノン;
(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−{4−[4−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イル}−アミン;
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾトリアゾール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン;
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン;
(4−{4−[4−(3,5−ジメチル−イソオキサゾール−4−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−メタノン;
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−(4−{4−[4−(4−メチル−ピリジン−3−イル)−インドール−1−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−シクロヘキシル)−メタノン;
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−o−トリル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン;
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−ピリジン−4−イルインドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン;
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−フェニル−インドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノン;及び
(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−{4−[4−(4−チオフェン−3−イルインドール−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノンからなる群より選択される化合物、またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項10】
有効量の式I:
【化13】


[式中、
およびXは、各々同時にNまたはCHであり;
は、CH−RまたはN−SOR(式中、Rは低級アルキルである)であり;
は、0〜3個の低級アルキル基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;
は、
【化14】


(式中、Rは、H、低級アシル、またはアミノ酸である)である]
で示される化合物、
および薬学的に許容しうる賦形剤、
またはその薬学的に許容しうる塩を含む薬学的製剤。
【請求項11】
有効量の式I:
【化15】


[式中、
およびXは、各々同時にNまたはCHであり;
は、CH−RまたはN−SOR(式中、Rは低級アルキルである)であり;
は、0〜3個の低級アルキル基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;
は、
【化16】


(式中、Rは、H、低級アシル、またはアミノ酸である)である]
で示される化合物、またはその薬学的に許容しうる塩を哺乳類に投与することを含む、哺乳類の炎症を治療する方法。
【請求項12】
炎症性障害を治療するための医薬の製造における請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項13】
炎症性障害の治療において使用するための請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
式I
【化17】


[式中、
およびXは、各々同時にNまたはCHであり;
は、CH−RまたはN−SOR(式中、Rは低級アルキルである)であり;
は、0〜3個の低級アルキル基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;
は、
【化18】


(式中、Rは、H、低級アシル、またはアミノ酸である)である]
で示される化合物、またはその薬学的に許容しうる塩を作製するための方法であって、

【化19】


(式中、Xはハロである)で示される第1の中間体を提供することと、
前記第1の中間体を、R−B(OH)
【化20】


およびこれらのエステルから選択される第1の試薬、ならびに式Pd[P(Cを有する第2の試薬と、嫌気性雰囲気、高pH、および高温条件下で、式Iで示される化合物を生成するのに十分な時間接触させることと、
を含む方法。
【請求項15】
上記のような本発明。

【公表番号】特表2012−512822(P2012−512822A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541332(P2011−541332)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066707
【国際公開番号】WO2010/069833
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】