説明

ピロロキノリンキノンカリウム塩

【課題】廃液量の少なく再結晶可能な方法により、結晶性の高いピロロキノリンキノン(PQQ)カリウム塩の提供。
【解決手段】PQQジナトリウム塩5gをイオン交換水に加え、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.7にした溶液300ml用意した。ここに塩化カリウムを80g添加した。この時、赤色固体が析出した。室温下で16時間攪拌した。吸引ろ過で結晶を回収し、室温下で16時間の減圧乾燥を行った。その結果、PQQトリカリウム塩の結晶を収率95mol%で製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明で取り扱うピロロキノリンキノンは、一般式(1)で表される構造の物質である。
【化1】

【背景技術】
【0002】
ピロロキノリンキノン(以下、PQQと記す)は新しいビタミンの可能性があることが提案されて注目を集めている(例えば、非特許文献1参照)。PQQは細菌に限らず、真核生物のカビ、酵母に存在し、補酵素として重要な働きを行っている。また、PQQについて近年までに細胞の増殖促進作用、抗白内障作用、肝臓疾患予防治療作用、創傷治癒作用、抗アレルギー作用、逆転写酵素阻害作用およびグリオキサラーゼI阻害作用−制癌作用、神経線維再生作用など多くの生理活性が明らかにされている。
【0003】
本発明で取り扱うPQQは、有機化学的合成法(非特許文献2)および発酵法(特許文献1)などにより製造することが可能である。しかし、これらの方法で得られるPQQは水や不純物の含量が多く、安定で純度の高いPQQの結晶を得る技術が求められていた。PQQの塩では通常、ナトリウムが用いられる。特にPQQジナトリウム塩は溶解度が適度で固体として取り出しやすく、取り扱いも容易である。しかし、ナトリウムは高血圧や心臓病の危険因子と認識され、その代替品としてカリウムが注目されている。そのため、カリウム塩の効率的な製造法が求められている。
【0004】
これまでにPQQカリウム塩の製造は精製カラムからの溶出をリン酸カリウム、塩化カリウムから溶出させ、アルコール溶媒で再結晶させることで得ている(特許文献2に記載)。この方法は、すべてのPQQを溶解させるために全体の容量が大きくなり、装置もそれに伴い大きくなる。そのため費用がかかるうえに、運転後の廃液量も多くなる欠点がある。また、カラムを通過させるのは非効率である。また、一般的なイオン交換樹脂を使用する際にも同様の欠点がある。また、PQQトリカリウム塩については、PQQジカリウム塩と異なり、これまでに結晶に関する報告はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2751183号公報
【特許文献2】特公平7−113024号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】nature, vol422, 24 April, 3003, p832
【非特許文献2】JACS, 第103巻, 第5599〜5600頁(1981)
【非特許文献3】JACS, 第111巻, 第6822〜6828頁(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は廃液量の少なく、小さい容器で再結晶可能な製造法により、ピロロキノリンキノンカリウム塩を提供することである。更に、PQQの薬学的価値を考慮し、結晶性の高いピロロキノリンキノンカリウム塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、以下に示す項目によって解決できることを見いだした。
(1)粉末X線回折でCu Kα放射線を用いた2θのピークとして8.7°、11.8°、26.6°、30.1°(いずれも±0.2°)を示すピロロキノリンキノンのトリカリウム塩結晶。
(2)粉末X線回折でCu Kα放射線を用いた2θのピークとして10.1°、15.1°、20.3°、24.2°、31.3°(いずれも±0.2°)を示すピロロキノリンキノンのジカリウム塩結晶。
(3)(1)又は(2)記載のピロロキノリンキノンのカリウム塩結晶を含む機能性食品。
(4)(1)又は(2)記載のピロロキノリンキノンのカリウム塩結晶を含む医薬品。
(5)ピロロキノリンキノンのナトリウム塩又はカリウム塩の水溶液をpH6〜10の範囲に保持してカリウム塩による塩析を行う工程を含むピロロキノリンキノントリカリウム塩結晶の製造方法。
(6)水溶性有機溶媒を10〜90(v/v)%含むピロロキノリンキノントリカリウム塩の水溶液又は懸濁液をpH2〜5の範囲に調整する工程を含むピロロキノリンキノンジカリウム塩の製造方法。
(7)水溶性有機溶媒がエタノールであることを特徴とする(6)記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のピロロキノリンキノンカリウム結晶は、廃液量が少なく環境に優しい手法で得ることが出来、また高純度であり、医薬や機能性食品の有効成分として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で得られた結晶の粉末X線回折結果。
【図2】実施例3で得られた結晶の粉末X線回折結果。
【図3】比較例1で得られた結晶の粉末X線回折結果。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について述べる。本発明に係る第1の結晶は、粉末X線回折においてCu Kα放射線を用いた2θのピークとして、8.7°、11.8°、26.6°、30.1°(いずれも±0.2°)を示すPQQトリカリウム塩である。
【0012】
粉末X線回折による回折角2θの測定は、例えば、以下の測定条件で行うことができる。
装置:RIGAKU X−RAY DFFRACTOMETER RIM2000/PCX線:Cu/管電圧40kV/管電流100MA
スキャンスピード:4.000°/min
サンプリング幅:0.020°
なお、これらのピークは、その他、モノクロメータが装着された一般的な粉末X線回折装置で観測することもできる。なお、本発明で規定する結晶形は測定誤差も含まれることから、ピークの角度に関する合理的な同一性があればよい。
【0013】
第1の結晶を製造する方法としては、PQQナトリウム塩又はカリウム塩を水に1から30g/Lの濃度で溶解し、pH6〜10の範囲に保持し、塩析用のカリウム塩を加え溶解度を下げることにより析出させ、ろ過、洗浄、乾燥等の公知の方法により結晶を単離することができる。
【0014】
得られる物質にナトリウムが含まれる場合、操作を繰り返すことによってナトリウム含有量を減らすも可能である。一般的に、PQQナトリウム塩からPQQカリウム塩へのイオン交換はイオン交換樹脂を使用することが多いが、イオン交換樹脂では大きな装置が必要になる。本発明では、高価なイオン交換樹脂を必要とせず、簡単な操作でイオン交換できる。
【0015】
使用するPQQのナトリウム塩は、有機化学的合成法(例えば、非特許文献2)や発酵法(例えば、特開平1−218597号公報や特許第2692167号公報)等により製造することが可能である。原料に用いるPQQのナトリウム塩は結晶でもよいし、非晶質でもよい。また、不純物を含んでいてもよい。
【0016】
塩析用のカリウム塩の具体的な例は、塩化カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等である。添加量は温度、濃度によって変化するが2−40重量%になるように添加すればよい。補助的に溶解度を下げる効果として水溶性有機溶剤、特にエタノールを添加することにより、さらに析出し易くさせることは可能である。
【0017】
本願の発明に係る第2の結晶は、第1の結晶と同様の粉末X線回折でCu Kα放射線を用いた2θのピークとして、10.1°、15.1°、20.3°、24.2°、31.3°(いずれも±0.2°)を示すピロロキノリンキノンのジカリウム塩結晶である。
【0018】
第2の結晶を製造する方法としては、前述のPQQトリカリウム塩を水に溶解又は懸濁させ、該溶液又は懸濁液に水溶性有機溶媒を10〜90(v/v)%、好ましくは20〜80(v/v)%の濃度になるように加えた後、酸を添加してpHを2〜5の範囲に調整することにより析出させ、ろ過、洗浄、乾燥等の公知の方法により結晶を単離することができる。
または、水溶性有機溶媒にPQQトリカリウム塩を溶解又は懸濁させた後、水溶性有機溶媒濃度が10〜90(v/v)%、好ましくは20〜80(v/v)%の濃度になるように水を加えた後、pHを2〜5の範囲に調整して結晶化させてもよい。
或いは、水溶性有機溶媒を10〜90(v/v)%、好ましくは20〜80(v/v)%含む水性媒体にPQQのトリカリウム塩を溶解又は懸濁させた後、pHを2〜5の範囲に調整して結晶化させてもよい。
【0019】
水溶性有機溶媒は、貧溶媒としてPQQの溶解度を下げるために使用するが、その濃度は初期のPQQトリカリウム塩の量にあわせて上記範囲内で適宜設定すればよい。使用可能な水溶性有機溶媒の具体的な例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メトキシエタノール、ジエチレングリコール、メトキシジエチレングリコール、グリセリン、メトキシプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、乳酸エチル、ヒドロキシイソブチル酸メチル等である。このうちアルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。
【0020】
pH調整のために加える酸の種類は特に制限されないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、過塩素酸、硝酸、硫酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸などが挙げられ、塩酸がより好ましい。
【0021】
一般的な結晶の製造方法においては、固体を溶媒に溶解させた後、貧溶媒を加えて結晶を析出させる。しかし、本発明では固体が存在する懸濁状態でも結晶化を行うことが出来る。懸濁状態で操作を行うことができる為、使用する装置の容積の低減、更に排出する排水量の低減が可能となる。
【0022】
より具体的な操作方法としては、まず、原料のPQQトリカリウム塩を含む水溶液又は懸濁液を用意する。この時、水1L当たり0.5〜800gのPQQのトリカリウム塩を加えることが好ましい。
次に、当該水溶液又は懸濁液に水溶性有機溶媒を添加することでPQQのトリカリウム塩の溶解度を下げる。この時に固体が析出しても問題がない。そして、pHを計測しながら酸を添加し、pHを2〜5に調整すればよい。
又は、水溶性有機溶媒にPQQのトリカリウム塩を加えて溶解又は懸濁させた後、水を加え、その後pHを2〜5の範囲に調整して結晶化させてもよい。この際、加えた水溶性有機溶媒と水の合計量の1L当たり0.5〜800gのPQQのトリカリウム塩を加えることが好ましい。
或いは、水溶性有機溶媒を含む水性媒体にPQQのトリカリウム塩を加えて溶解又は懸濁させた後、pHを2〜5の範囲に調整して結晶化させてもよい。この際、水性媒体1L当たり0.5〜800gのPQQのトリカリウム塩を加えることが好ましい。
pHが安定し、pH2〜5の間の所定の値で一定になった状態で、濾過、または遠心分離等により析出した結晶を分離して得ることができる。
【0023】
PQQのトリカリウム塩を含む水溶液又は懸濁液に、水溶性有機溶媒を加える際の温度は、液が凍結しない限り特に制限はないが、高温にすればエネルギー効率が落ちることから、−30℃〜80℃が好ましい。
水溶性有機溶媒を添加した後、酸を添加してpHを2〜5にする際の溶液もしくは懸濁液の温度は、液が凍結しない限り特に制限はないが、高温にすればエネルギー効率が落ち、また低温にすれば結晶化の速度が落ちることから、5℃〜80℃が好ましい。必要に応じて攪拌し、その後静置するのが好ましい。
攪拌時間は、例えば、5分〜7日とすることができる。静置時間は、例えば、5分〜15日とすることができる。
得られた溶液では、PQQジカリウム塩の結晶が生成する。なお、結晶は含水物であっても良く、上記ピークを有する限り、特に制限されない。
【0024】
PQQは、細胞の増殖促進作用、抗白内障作用、肝臓疾患予防治療作用、創傷治癒作用、抗アレルギー作用、逆転写酵素阻害作用およびグリオキサラーゼI阻害作用−制癌作用、神経線維再生など多く薬理効果を有する。従って、本発明のPQQ第1の結晶及び第2結晶(以下、総称して「PQQカリウム塩結晶」と記す)は、医薬または機能性食品の有効成分とすることができる。即ち、皮膚外用剤、注射剤、経口剤、坐剤等の形態、あるいは、日常食する飲食物、栄養補強食、各種病院食等の形態で提供可能である。
【0025】
医薬や機能性食品等の調製の際に使用する添加剤の具体例は、液剤としては水、果糖、ブドウ糖等の糖類、落下生油、大豆油、オリーブ油等の油類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類等である。錠剤、カプセル剤、顆粒剤などの固形剤の賦型剤としては乳糖、ショ糖、マンニット等の糖類、滑沢剤としてはカオリン、タルク、ステアリン酸マグネシウム等、崩壊剤としてデンプン、アルギン酸カリウム、結合剤としてポリビニルアルコール、セルロース、ゼラチン等、界面活性剤としては脂肪酸エステル等、可塑剤としてグリセリン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。必要に応じて溶解促進剤、充填剤等を加えてもよい。
【0026】
PQQカリウム塩は、単独でも、他の素材と組み合わせても使用できる。組み合わせ可能な素材としては、ビタミンB 群、ビタミンC およびビタミンE 等のビタミン類、アミノ酸類、アスタキサンチン、α-カロテン、β-カロテン等のカロテノイド類、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等のω3脂肪酸類、アラキドン酸等のω6脂肪酸類などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
PQQカリウム塩の分析は、以下に示す条件で測定した。
(PQQ分析)
装置: 島津製作所製、高速液体クロマトグラフィー、LC−20A
カラム:YMC−Pack・ODS−TMS(5μm)、150x4.6mm I.D.
測定温度:40℃
検出:260nmにおける吸光度
溶離液:100mM CHCOOH/100mM CHCOONH(30/70, pH5.1)
溶出速度:1.5mL/min
(K、Na分析)
DIONEX製イオンクロマトグラフィーDX−120にCS12Aカラムをつけ、関東化学製ダイオネクス用陽イオン分析用溶離液CS12Aを使用した。
(粉末X線回折)
装置:RIGAKU X−RAY DFFRACTOMETER RIM2000/PC
X線:Cu/管電圧40kV/管電流100MA
スキャンスピード:4.000°/min
サンプリング幅:0.020°
上記の溶液中に含まれるPQQとカリウムの濃度から、PQQカリウム塩に含まれるPQQとカリウムの比を求めた。
【0029】
<参考例1>
原料のPQQジナトリウム塩は以下のようにして得た。特許第2692167号公報の実施例1に基づき、ハイホミクロビウム メチロボラム DSM1869を培養して得られた培養液を遠心分離して、菌体を除去し、PQQを含有する培養上澄液を得た。尚、この菌株はDSM(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)から入手できるものである。Sephadex G−10(ファルマシア製)カラムに、この培養上澄液を通過させてPQQを吸着させ、NaCl水溶液で溶出させて得られたpH7.5のPQQ水溶液をpHを3.5にしたのち、エタノールを加えて加えて冷却し、PQQジナトリウム塩を得た。高速液体クロマトグラフィーのUV吸収によるPQQ純度は99.0%であった。
【0030】
実施例1 PQQトリカリウム塩の結晶
参考例1で調製したPQQジナトリウム塩5gをイオン交換水に加え、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.7にした溶液300ml用意した。ここに塩化カリウムを80g添加した。この時、赤色固体が析出した。室温下で16時間攪拌した。吸引ろ過で結晶を回収し、室温下で16時間の減圧乾燥を行った。その結果、PQQトリカリウム塩の結晶を収率95mol%で得た。イオンクロマトグラフィーでの分析の結果、ナトリウムは含まれておらず、PQQイオン:カリウムイオン=1:3が検出され、ナトリウムを含まないトリカリウム塩であることが確認できた。この時の廃液量は原料PQQジナトリウム塩1g当たり約60mlであった。粉末X線回析の結果を図1に示す。8.7°、11.8°26.6°、30.1°にピークを有していた。
【0031】
実施例2 中性領域でのPQQ溶液からの塩化カリウムによる塩析
PQQジナトリウム塩を5g/Lになるように水に加え、NaOHでpH6から8になるように調整した。これに30重量%塩化カリウム水溶液を加え、遠心分離して上澄みを取り、pH7.4のリン酸バッファーで希釈し、UV(360nm)分析によりPQQ濃度を測定した。上記の2種類の液を等量加えて得られた沈殿から、実施例1と同様にして結晶を単離したところ実施例1と同様な回折ピークを有するPQQトリカリウム塩結晶が収率99.8モル%で得られた。廃液量はPQQジナトリウム塩1g当たり、約400ml程度であった。
【0032】
実施例3 PQQジカリウム塩の結晶
実施例1で調製したPQQトリカリウム塩の結晶3gをイオン交換水50mLとエタノール50mLの混合液に加えた。この時、固体は溶けきっていない。ここに室温下で塩酸を加え、pHを3.5にした。塩酸の添加は約2時間かけてゆっくり滴下して行った。pHが安定した後、50℃で2日間保存することで結晶化を進めた。濾過してPQQジカリウム塩結晶を収率99mol%で得た。また、イオンクロマトグラフィー、LC分析でPQQジカリウムであることを確認した。ここで得た結晶を減圧乾燥した後、粉末X線回折を実施例1と同様に行った結果を図2に示す。10.1°、15.1°、20.3°、24.2°、31.3°にピークを示す結晶であった。この結晶1gあたり、約34mlの廃液が出る。溶解度以上の領域で結晶化を行うので廃液量が少ない。
【0033】
比較例1 PQQジカリウム塩の結晶
実施例1で調製したPQQトリカリウム塩1gをイオン交換水200mlに溶解した。塩酸を加えてpHを3.2にした後、ここにエタノールを300mL添加した。冷蔵庫で2日間保存し、赤色固体を析出させた。室温下で5時間攪拌した後、5℃で24時間静置し、固体を析出させた。ろ過して固体を回収し、50℃で減圧乾燥を行った。0.82gの固体を得た。
得られた固体の粉末X線回折スペクトルを実施例1と同様の条件で測定した。結果を図3に示す。ブロードなピークで15.1°,20.7°,26.8°,28.6°に大きなピークを示した。多くのピークが重なり、混合物の可能性が高い。ピークの位置が本発明の実施例の結晶と異なっており、結晶形が異なっていることがわかった。また、1gの結晶当たり約600mlの廃液が出てくる。実施例3と比較して15倍以上も廃液量が多くなる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のPQQカリウム塩の結晶は医薬や機能性食品等の分野で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折でCu Kα放射線を用いた2θのピークとして8.7°、11.8°、26.6°、30.1°(いずれも±0.2°)を示すピロロキノリンキノンのトリカリウム塩結晶。
【請求項2】
粉末X線回折でCu Kα放射線を用いた2θのピークとして10.1°、15.1°、20.3°、24.2°、31.3°(いずれも±0.2°)を示すピロロキノリンキノンのジカリウム塩結晶。
【請求項3】
請求項1又は2記載のピロロキノリンキノンのカリウム塩結晶を含む機能性食品。
【請求項4】
請求項1又は2記載のピロロキノリンキノンのカリウム塩結晶を含む医薬品。
【請求項5】
ピロロキノリンキノンのナトリウム塩又はカリウム塩の水溶液をpH6〜10の範囲に保持してカリウム塩による塩析を行う工程を含むピロロキノリンキノントリカリウム塩結晶の製造方法。
【請求項6】
水溶性有機溶媒を10〜90(v/v)%含むピロロキノリンキノントリカリウム塩の水溶液又は懸濁液をpH2〜5の範囲に調整する工程を含むピロロキノリンキノンジカリウム塩の製造方法。
【請求項7】
水溶性有機溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項6記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136465(P2012−136465A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289588(P2010−289588)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】