説明

ピークホールド回路、それを備えるモータ駆動制御回路、及びそれを備えるモータ装置

【課題】 モータ駆動電流検出電圧の保持すべきピーク電圧が微小であっても安定して動作するピークホールド回路の提供。
【解決手段】 このピークホールド回路14は、モータ駆動電流検出電圧を一定電圧だけシフトするレベルシフト回路50と、レベルシフト回路50の出力電圧と出力端子OUTの電圧を入力し、それらの差を増幅して出力する差動増幅回路60と、ベースに差動増幅回路60の出力電圧を入力し、エミッタから充電電流を出力する出力トランジスタ81と、充電電流により充電され出力端子OUTの電圧を保持するコンデンサ82と、レベルシフト回路50の一定電圧と実質的に等しい電圧を生成するバイアス素子84と、バイアス素子84と出力端子OUTの間に設けられコンデンサ82の放電電流を制御する抵抗素子83と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転数制御のためにその駆動電流を示すモータ駆動電流検出電圧のピーク電圧を保持するピークホールド回路、そのピークホールド回路を備えるモータ駆動制御回路、及びそのモータ駆動制御回路を備えるモータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のモータ装置は、例えばスピンドルモータなどのモータを用いて光ディスク装置における光ディスクの回転に使用されるものであり、特願2004−19043や特許文献1に記載されたものなどが知られている。このような従来のモータ装置を図3に示す。このモータ装置101は、モータ102、モータドライバ107、駆動電流検出抵抗素子108、及びモータ駆動制御回路106を有して成る。モータドライバ107は、モータ102を駆動しかつ回転数を制御するべく、モータ102の電機子コイルL、L、Lに駆動電流を供給する。駆動電流検出抵抗素子108は、この駆動電流が流れることにより、駆動電流に比例したモータ駆動電流検出電圧を生成する。また、CPU等よりなるモータ制御指令部(図示せず)は、回転数カウンタ104からモータ102の回転数の情報が入力されるとともに、モータ102が所望の回転数になるよう指令電圧VCMをモータ駆動制御回路106に出力する。モータ駆動制御回路106は、後述するように、この指令電圧VCMと上記のモータ駆動電流検出電圧により、モータドライバ107を制御する。
【0003】
モータ駆動制御回路106を詳述すると、モータ制御指令部からの指令電圧VCMは制御端子CNTを介して制御電圧変換回路110に入力される。制御電圧変換回路110は、指令電圧VCMと所定の基準電圧VREFの差に比例した電圧(回転数制御電圧)VRCを接地電位を基準に生成する。一方、ピークホールド回路114は、駆動電流検出抵抗素子108からのモータ駆動電流検出電圧のピーク電圧(検出ピーク電圧)VDETPを保持する。回転数制御増幅器115は、回転数制御電圧VRCと検出ピーク電圧VDETPとを比較し、その差を増幅して出力する。そして、これらの後段の回路は、検出ピーク電圧VDETPが回転数制御電圧VRCに一致するよう追従してモータドライバ107を制御する。このピークホールド回路114は、例えば図4に示すように、差動増幅回路151と、NPN型のトランジスタ152と、コンデンサ153と、抵抗素子154と、からなり、入力端子INのモータ駆動電流検出電圧のピーク電圧を出力端子OUTに保持する。
【0004】
図5は、モータ制御指令部からの指令電圧VCMに対するモータ102の回転数の特性である。回転数T(例えば100rpm)と回転数T(例えば10000rpm)の間では、回転数は指令電圧VCMに対してほぼ線形な関係となる。従って、TとTが制御可能な最低及び最高の回転数であり、一般にTとTの間で回転数が制御される。ここで、Tは、ピークホールド回路114が安定して保持することができる最低の検出ピーク電圧VDETPとノイズに対する耐性などによって決まる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−218783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、今日、光ディスク装置の高性能化のために光ディスクの回転数の最大値を増加させることが行われているが、一方、多機能化のために回転数を通常よりも下げたところ、すなわち超低速回転(例えば50rpm)で光ディスク装置を使用することが考えられている。これに対し、前述したピークホールド回路にあっては、モータ駆動電流検出電圧が直接に差動増幅回路に入力される構成であるため、超低速回転、すなわち、保持すべきピーク電圧が微小である場合、安定した動作が困難となる。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的はモータ駆動電流検出電圧の保持すべきピーク電圧が微小であっても安定して動作するピークホールド回路を提供し、かつ、そのピークホールド回路を備えることによりモータの超低速回転を制御することができるモータ駆動制御回路、及びそれを備えたモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のピークホールド回路は、モータの駆動電流を示すモータ駆動電流検出電圧を入力端子に入力し、モータ駆動電流検出電圧を一定電圧だけシフトし、そのピーク電圧を保持して出力端子から出力するピークホールド回路であって、モータ駆動電流検出電圧を一定電圧だけシフトするレベルシフト回路と、レベルシフト回路の出力電圧と前記出力端子の電圧との差を増幅して出力する差動増幅回路と、ベースに入力される差動増幅回路の出力電圧に応じてエミッタから充電電流を出力する出力トランジスタと、充電電流により充電されて出力端子の電圧を保持するコンデンサと、レベルシフト回路のシフトした一定電圧と実質的に等しい電圧を生成するバイアス素子と、バイアス素子と出力端子の間に設けられコンデンサの放電電流を制御する抵抗素子と、を有してなり、レベルシフト回路の出力電圧のピーク電圧を保持するピークホールド制御回路と、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のピークホールド回路は、請求項1に記載のピークホールド回路において、モータ駆動電流検出電圧の高周波成分を除去する積分回路を更に備え、前記レベルシフト回路は積分回路が出力する電圧を一定電圧だけシフトすることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のピークホールド回路は、請求項1又は2に記載のピークホールド回路において、前記差動増幅回路は、一定の電流を流す定電流源トランジスタと、エミッタが定電流源トランジスタに共通に接続され、それぞれのベースにレベルシフト回路の出力電圧と前記出力端子の電圧が入力される第1及び第2の差動入力トランジスタと、を備え、第2の差動入力トランジスタのベースに接続され、前記定電流源トランジスタの半分の電流を流して第2の差動入力トランジスタのベース電流を補償するベース電流補償回路を更に備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のモータ駆動制御回路は、請求項1乃至3のいずれかに記載のピークホールド回路を備え、ピークホールド回路に保持されたピーク電圧が所定の電圧に一致するようモータを駆動するモータドライバを制御することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のモータ装置は、モータと、モータを駆動するモータドライバと、モータの駆動電流を流してモータ駆動電流検出電圧を生成する駆動電流検出抵抗素子と、請求項4に記載のモータ駆動制御回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るピークホールド回路は、レベルシフト回路及びバイアス素子を備えているので、モータ駆動電流検出電圧の保持すべきピーク電圧が微小であっても安定して動作することができる。また、本発明に係るモータ駆動制御回路及びそれを用いたモータ装置は、このピークホールド回路を備えているので、モータの超低速回転を制御することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本願発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係るモータ駆動制御回路及びそのモータ駆動制御回路を用いたモータ装置の回路図である。なお、本発明の実施形態に係るピークホールド回路は、図1に示すモータ駆動制御回路6に内蔵されるピークホールド回路14であり、図2に基づいて後に詳述する。
【0015】
このモータ装置1は、構成ブロックとして、モータ2、モータドライバ7、駆動電流検出抵抗素子8、及びモータ駆動制御回路6を有して成る。モータドライバ7は、モータ2を駆動しかつ回転数を制御するべく、モータ2の電機子コイルL、L、Lに駆動電流を供給する。駆動電流検出抵抗素子8は、この駆動電流が流れることにより、駆動電流に比例したモータ駆動電流検出電圧を生成する。また、CPU等よりなるモータ制御指令部(図示せず)は、後述の回転数カウンタ4からモータ2の回転数の情報が入力されるとともに、モータ2が所望の回転数になるよう指令電圧VCMをモータ駆動制御回路6に出力する。モータ駆動制御回路6は、後述するように、この指令電圧VCMと上記のモータ駆動電流検出電圧により、モータドライバ7を制御する。以下、各ブロックを詳細に説明する。
【0016】
モータ2は、永久磁石で構成された回転子5と、回転子5の回転を制御するY結線されたU相、V相、W相の電機子コイルL、L、Lと、回転子5の位置(位相)を検出して回転位置検出信号を出力するホール素子H、H、Hと、モータ2(回転子5)の回転数を検出する回転数カウンタ4と、を有して成る。ホール素子H、H、Hの回転位置検出信号は、それぞれU相、V相、W相における差動の正弦波であり、各相の間の位相差は120°である。
【0017】
モータドライバ7は、N型MOSトランジスタである3個の電源側出力トランジスタTUU、TVU、TWUと3個の接地側出力トランジスタTUL、TVL、TWLとを有して成る。電源側出力トランジスタTUUのソースと接地側出力トランジスタTULのドレインとがモータ2のU相のコイルLに、電源側トランジスタTVUのソースと接地側出力トランジスタTVLのドレインとがモータ2のV相のコイルLに、電源側トランジスタTWUのソースと接地側出力トランジスタTWLのドレインとがモータ2のW相のコイルLに、それぞれ接続されている。また、電源側出力トランジスタTUU、TVU、TWUのドレインはモータ駆動用電源Vに接続され、接地側トランジスタTUL、TVL、TWLのソースは、後述する駆動電流検出抵抗素子8を介して接地されている。そして、これらの出力トランジスタTUU、TVU、TWU、TUL、TVL、TWLのゲートには、後述するモータドライバ制御回路20からのPWM出力が入力されて制御される。例えば、モータ2のU相のコイルLからV相のコイルLに電流を流すときには、モータドライバ制御回路20からのPWM出力を受けて電源側出力トランジスタTUUと接地側出力トランジスタTVLとがオンになる。また、V相のコイルLからW相のコイルLに電流を流すときには、電源側出力トランジスタTVUと接地側出力トランジスタTWLとがオンになる。また、W相のコイルLからU相のコイルLに電流を流すときには、電源側出力トランジスタTWUと接地側出力トランジスタTULとがオンになる。このように、モータドライバ制御回路20のPWM出力を受けて電源側出力トランジスタと接地側出力トランジスタがスイッチングされ、PWM出力のデューティ比の変化により、モータ2を駆動する電流量を変化させてその回転数を制御する。
【0018】
駆動電流検出抵抗素子8は、モータドライバ7の電源側出力トランジスタと接地側出力トランジスタが共にオンする期間(PWM出力のオン期間)に駆動電流が流れ、電源側出力トランジスタと接地側出力トランジスタのどちらかがオフする期間(PWM出力のオフ期間)には駆動電流は流れない。また、駆動電流検出抵抗素子8には電機子コイルL、L、Lの駆動電流が全て流れ、駆動電流の値はU相、V相、W相のそれぞれの位相によって変動する。
【0019】
次に、モータ駆動制御回路6の構成を説明する。モータ駆動制御回路6は、制御端子CNTを有し、これにモータ制御指令部からの指令電圧VCMが入力される。制御端子CNTに接続される制御電圧変換回路10は、指令電圧VCMと所定の基準電圧VREFの差に比例した電圧(回転数制御電圧)VRCを順バイアス電圧(Vf)を基準に生成する。制御電圧変換回路10は、非反転入力端子に制御端子CNTの指令電圧が入力され、反転入力端子に所定の基準電圧VREFが入力され、それらの差に比例する電流を出力する電流増幅器11と、一端が電流増幅器11の出力に接続され、他端が接地され、電流を電圧に変換する抵抗12と、カソードが電流増幅器11の出力に接続され、アノードが制御電圧変換回路10の出力になるダイオード13と、を有して成る。このダイオード13により、回転数制御電圧VRCが順バイアス電圧(Vf)を基準に生成されるようになる。また、ダイオード13は具体的にはダイオード接続のトランジスタから構成される。
【0020】
また、駆動電流検出抵抗素子8にはピークホールド回路14が接続され、このピークホールド回路14はモータ駆動電流検出電圧を一定電圧だけシフトし、そのピーク電圧(検出ピーク電圧)VDETPを保持する。ピークホールド回路14と上記の制御電圧変換回路10には回転数制御増幅器15の反転入力端子と非反転入力端子が接続され、この回転数制御増幅器15は検出ピーク電圧VDETPと回転数制御電圧VRCとを比較し、その差を増幅して後述する位相シフト回路17に出力する。
【0021】
また、モータ2のホール素子H、H、Hにはホールアンプ16、16、16が接続され、これらのホールアンプ16、16、16はU相、V相、W相の回転位置検出信号の差動電圧を一定増幅率で増幅して出力する。ホールアンプ16、16、16及び上記の回転数制御増幅器15には位相シフト回路17が接続され、この位相シフト回路17は、ホールアンプ16、16、16が出力するU相、V相、W相の回転位置検出信号を一定位相シフトする(例えば30°進める)と共に、回転数制御増幅器15の出力電圧に応じた増幅率で増幅して出力する。なお、U相、V相、W相の回転位置検出信号を一定位相シフトするのは、モータ2の回転子5を最も効率的よく回転させるためのタイミングで磁場を加えるためである。
【0022】
位相シフト回路17のU相、V相、W相の出力にはそれぞれPWM出力比較器18、18、18の非反転入力端子が接続され、これらのPWM出力比較器18、18、18は、U相、V相、W相の回転位置検出信号と反転入力端子に入力される三角波発生器19からの三角波とを比較し、三角波よりも電圧が高い期間がハイレベルのオン期間となるPWM信号をそれぞれ出力する。PWM出力比較器18、18、18の出力にはモータドライバ制御回路20が接続され、このモータドライバ制御回路20は、入力するPWM信号からモータドライバ7の電源側出力トランジスタと接地側の出力トランジスタのスイッチングを制御する制御信号(PWM出力)を生成する。
【0023】
次に、モータ2の回転数を変化させる場合の動作を説明する。モータ2の回転数を高くする場合は、モータ制御指令部から制御端子CNTに入力される指令電圧VCMが高くなる。そうすると、回転数制御電圧VRCは検出ピーク電圧VDETPよりも高くなる。回転数制御増幅器15の出力電圧は上昇し、位相シフト回路17から出力される回転位置検出信号の振幅を大きくする。PWM出力比較器18、18、18ではオン期間が長いデューティ比のPWM信号が生成され、モータドライバ制御回路20を介してモータドライバ7に制御信号が出力される。その結果、モータドライバ7がモータ2のU相、V相、W相の電機子コイルL、L、Lに流す駆動電流が増加するので、モータ2の回転数は高くなる。そして、この駆動電流は駆動電流検出抵抗素子8で電圧に変換され、検出ピーク電圧VDETPが再度回転数制御電圧VRCと比較される。この動作のループを繰り返し、その結果、検出ピーク電圧VDETPが回転数制御電圧VRCと一致すると安定する。
【0024】
逆に、モータ2の回転数を低くする場合は、モータ制御指令部から制御端子CNTに入力される指令電圧VCMが低くなる。そうすると、モータ2の回転数を高くする場合とは逆に回転数制御増幅器15、位相シフト回路17、PWM出力比較器18、18、18が動作し、その結果、モータドライバ7がモータ2のU相、V相、W相の電機子コイルL、L、Lに流す駆動電流が減少するので、モータ2の回転数は低くなる。そして、上述と同様のループを繰り返し、その結果、検出ピーク電圧VDETPが回転数制御電圧VRCと一致すると安定する。
【0025】
次に、図2に基づいてピークホールド回路14を詳細に説明する。ピークホールド回路14は、駆動電流検出抵抗素子8からのモータ駆動電流検出電圧が入力される入力端子INと、回転数制御増幅器15の反転入力端子に接続される出力端子OUTを有し、両端子間に、積分回路40、レベルシフト回路50、差動増幅回路60、ピークホールド制御回路80、及びベース電流補償回路90を備える。以下、先ず、積分回路40、レベルシフト回路50、差動増幅回路60、及びピークホールド制御回路80を説明し、その後にベース電流補償回路90を説明する。
【0026】
入力端子INには積分回路40が接続され、この積分回路40はコンデンサ41で構成され、入力される電圧の高周波成分を除去する。積分回路40の後段にはレベルシフト回路50が接続され、レベルシフト回路50は積分回路40の出力電圧を一定電圧だけ上げてシフトさせる。レベルシフト回路50は、PNP型の定電流源トランジスタ51と、エミッタが定電流源51、ベースが積分回路40の出力に接続され、コレクタが接地されたPNP型のトランジスタ52と、を有して成る。トランジスタ52のエミッタがレベルシフト回路50の出力になる。
【0027】
レベルシフト回路50の後段には差動増幅回路60が接続され、この差動増幅回路60は、ベースがレベルシフト回路50の出力に接続される一方の差動入力トランジスタ61と、ベースが出力端子OUTに接続される他方の差動入力トランジスタ62と、ベースとコレクタが差動入力トランジスタ61のコレクタに接続され、エミッタが接地された負荷トランジスタ63と、ベースとコレクタが差動入力トランジスタ62のコレクタに接続され、エミッタが接地された負荷トランジスタ64と、差動入力トランジスタ61及び62のエミッタに共通に接続されたPNP型の定電流源トランジスタ65と、定電流源トランジスタ65の電流値の基準となる定電流源66と、定電流源66の電流を定電流源トランジスタ65の電流に変換するためのPNP型のトランジスタ67、68と、出力段の定電流源トランジスタ69と、ベースが負荷トランジスタ63のベースに接続され、エミッタが接地され、コレクタが定電流源トランジスタ69と接続されて差動増幅回路60の出力になる出力トランジスタ70と、を有して成る。この差動増幅回路60は、レベルシフト回路50の出力電圧と出力端子OUTの電圧との差を増幅してピークホールド制御回路80、詳しくはその出力トランジスタ81に出力する。
【0028】
差動増幅回路60の後段にはピークホールド制御回路80が接続され、このピークホールド制御回路80は、ベースが差動増幅回路60の出力、コレクタが電源電圧VCC、エミッタが出力端子OUTに接続されている出力トランジスタ81と、一端が出力端子OUTに接続され、他端が接地され、出力端子の電圧を保持するコンデンサ82と、ベースとコレクタが接地されたダイオード接続のPNP型のトランジスタ84と、出力端子OUTとトランジスタ84のエミッタとの間に設けられた抵抗素子83と、PNP型の定電流源トランジスタ85と、を有して成る。ダイオード接続のトランジスタ84はレベルシフト回路50のトランジスタ52のベース・エミッタ間の順バイアス電圧(Vf)と実質的に等しい電圧を生成するバイアス素子となっている。なお、定電流源トランジスタ85はレベルシフト回路50の定電流源トランジスタ51と等しい電流を流す。
【0029】
次に、ピークホールド回路14の動作を説明する。積分回路40は入力端子INに入力された電圧の高周波成分を除去してレベルシフト回路50に出力し、レベルシフト回路50は、その電圧をトランジスタ52のベース・エミッタ間の順バイアス電圧(Vf)分だけ上げて出力する。差動増幅回路60は、レベルシフト回路50の出力電圧と出力端子OUTの電圧を比較し、出力端子OUTの電圧をレベルシフト回路50の出力電圧に追従させるようにトランジスタ81を制御する。トランジスタ81は、レベルシフト回路50の出力電圧が出力端子OUTの電圧より高いときは、出力端子OUTに接続されたコンデンサ82を充電して出力端子OUTの電圧をレベルシフト回路50の出力電圧に追従させる。逆に、レベルシフト回路50の出力電圧が出力端子OUTの電圧より低いときは、オフする。こうして、レベルシフト回路50の出力電圧のピーク電圧が保持されるのである。
【0030】
ここで、レベルシフト回路50は、入力端子INに入力された電圧を順バイアス電圧(Vf)分だけ上げることにより、差動増幅回路60及びそれに接続されるピークホールド制御回路80を安定して動作させる。例えば、仮に入力端子INに入力された電圧が0Vだとすると、レベルシフト回路50の出力、すなわち差動入力トランジスタ61のベースの電圧は順バイアス電圧(Vf)となり、差動入力トランジスタ61のエミッタの電圧は2×Vfとなる。従って、差動入力トランジスタ61及び負荷トランジスタ63の動作に必要な電圧が確保できるのである。このように、仮に入力端子INに入力された電圧が0Vであっても、差動増幅回路60及びそれに接続されるピークホールド制御回路80を安定して動作させることができる。
【0031】
また、同様に、バイアス素子であるトランジスタ84は、差動入力トランジスタ62のベース、すなわち出力端子OUTのバイアス電圧として、レベルシフト回路50におけるトランジスタ52のベース・エミッタ間の順バイアス電圧(Vf)と同じ電圧を生成する。これは、差動入力トランジスタ61のベース及び差動入力トランジスタ62のベースのバイアス電圧を一致させることで、ピークホールド回路14を安定動作させるためである。なお、この出力端子OUTの電圧、すなわち回転数制御増幅器15の反転入力端子の電圧が順バイアス電圧(Vf)を基準に変化することに応じ、制御電圧変換回路10が生成する回転数制御電圧VRC、すなわち回転数制御増幅器15の非反転入力端子の電圧も上述のように順バイアス電圧(Vf)を基準として変化するようにしてある。
【0032】
また、積分回路40は、入力端子INに入力される電圧が極めて微小である(例えばピーク電圧が5mVの)超低速回転の場合に、ノイズの影響を軽減して制御可能な最低回転数を下げることができる。ただし、レベルシフト回路50などにより十分に制御可能な最低回転数を下げることができるならば、省略することも可能である。
【0033】
また、トランジスタ81がオフしたとき、コンデンサ82の電荷は抵抗素子83とダイオード接続のトランジスタ84を通って放電されるようになっている。これは、回転数に応じた周期でピーク電圧が入力されるので、その周期毎のピーク電圧を保持するためである。この放電の時定数は、コンデンサ82の容量値と抵抗素子83の抵抗値で決まる。ここで、注意すべきは、この時定数が短すぎるとピーク電圧を保持することにならないし、長すぎると実際のピーク電圧よりも高い電圧を出力したままとなる場合も生じることである。特に、入力端子INに入力される電圧が極めて微小であり、ピークとピークの間隔が長い超低速回転の場合に、時定数は高精度で調整されていなければならない。そのため、コンデンサ82の容量値又は抵抗素子83の抵抗値をトリミングで調整することが望ましい。
【0034】
次に、超低速回転の場合に更に制御可能な最低回転数を下げることができるベース電流補償回路90を説明する。ベース電流補償回路90は、PNP型の定電流源トランジスタ91と、エミッタが定電流源トランジスタ91に接続され、コレクタが接地されたPNP型のトランジスタ92と、ベースとコレクタがトランジスタ92のベースに接続され、エミッタが接地されたNPN型のトランジスタ93と、ベースがトランジスタ93のベース、コレクタが上記の差動入力トランジスタ62のベースに接続され、エミッタが接地されたNPN型のトランジスタ94と、を有して成る。定電流源トランジスタ91は定電流源トランジスタ65と等しい定電流を供給する。トランジスタ93及び94はカレントミラー回路を構成し、トランジスタ93のサイズはトランジスタ94の2倍となっている。従って、トランジスタ93には定電流源トランジスタ91のベース電流、すなわち定電流源トランジスタ65のベース電流に相当する電流が流れ、トランジスタ94にはその半分の電流が流れる。
【0035】
出力端子OUTの電圧がレベルシフト回路50の出力電圧に追従して安定したとき、差動入力トランジスタ61及び62のベース電圧は一致し、差動入力トランジスタ61及び62に流れる電流はそれぞれ定電流源トランジスタ65の半分になる。ベース電流補償回路90のトランジスタ94は、このときの差動入力トランジスタ62のベース電流を吸収(補償)する。こうして、差動入力トランジスタ62のベース電流がコンデンサ82や抵抗素子83に流れ込まないようにして出力端子OUTの電圧が変動するのを防止している。特に超低速回転の場合、出力端子OUTの電圧は極めて微小であるので、ベース電流補償回路90により制御可能な最低回転数を更に下げることが可能になる。
【0036】
このように、このピークホールド回路14は、入力端子INに入力されるモータ駆動電流検出電圧の保持すべきピーク電圧が微小であっても安定して動作することができる。また、ピークホールド回路14を備えたモータ駆動制御回路6及びそれを備えたモータ装置1は、モータ2の超低速回転を制御することが可能になる。
【0037】
以上、本発明の実施形態であるピークホールド回路、モータ駆動制御回路、及びモータ装置について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、ピークホールド回路14のレベルシフト回路50は順バイアス電圧(Vf)分だけ上げているが、更にトランジスタを追加することでシフト量を増加させることも可能である。また、駆動電流検出抵抗素子8をモータドライバ7の電源側出力トランジスタとモータ駆動用電源Vとの間に設けてモータ装置を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るモータ装置の回路図。
【図2】同上のピークホールド回路の回路図。
【図3】従来のモータ装置の回路図。
【図4】同上のピークホールド回路の回路図。
【図5】指令電圧VCMに対するモータの回転数の特性図。
【符号の説明】
【0039】
1 モータ装置
2 モータ
6 モータ駆動制御回路
7 モータドライバ
8 駆動電流検出抵抗素子
14 ピークホールド回路
40 積分回路
50 レベルシフト回路
60 差動増幅回路
80 ピークホールド制御回路
81 ピークホールド制御回路の出力トランジスタ
82 ピークホールド制御回路のコンデンサ
83 ピークホールド制御回路の抵抗素子
84 ピークホールド制御回路のバイアス素子
90 ベース電流補償回路
IN ピークホールド回路の入力端子
OUT ピークホールド回路の出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動電流を示すモータ駆動電流検出電圧を入力端子に入力し、モータ駆動電流検出電圧を一定電圧だけシフトし、そのピーク電圧を保持して出力端子から出力するピークホールド回路であって、
モータ駆動電流検出電圧を一定電圧だけシフトするレベルシフト回路と、
レベルシフト回路の出力電圧と前記出力端子の電圧との差を増幅して出力する差動増幅回路と、
ベースに入力される差動増幅回路の出力電圧に応じてエミッタから充電電流を出力する出力トランジスタと、充電電流により充電されて出力端子の電圧を保持するコンデンサと、レベルシフト回路のシフトした一定電圧と実質的に等しい電圧を生成するバイアス素子と、バイアス素子と出力端子の間に設けられコンデンサの放電電流を制御する抵抗素子と、を有してなり、レベルシフト回路の出力電圧のピーク電圧を保持するピークホールド制御回路と、
を備えてなることを特徴とするピークホールド回路。
【請求項2】
請求項1に記載のピークホールド回路において、
モータ駆動電流検出電圧の高周波成分を除去する積分回路を更に備え、
前記レベルシフト回路は積分回路が出力する電圧を一定電圧だけシフトすることを特徴とするピークホールド回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のピークホールド回路において、
前記差動増幅回路は、一定の電流を流す定電流源トランジスタと、エミッタが定電流源トランジスタに共通に接続され、それぞれのベースにレベルシフト回路の出力電圧と前記出力端子の電圧が入力される第1及び第2の差動入力トランジスタと、を備え、
第2の差動入力トランジスタのベースに接続され、前記定電流源トランジスタの半分の電流を流して第2の差動入力トランジスタのベース電流を補償するベース電流補償回路を更に備えることを特徴とするピークホールド回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のピークホールド回路を備え、
ピークホールド回路に保持されたピーク電圧が所定の電圧に一致するようモータを駆動するモータドライバを制御することを特徴とするモータ駆動制御回路。
【請求項5】
モータと、
モータを駆動するモータドライバと、
モータの駆動電流を流してモータ駆動電流検出電圧を生成する駆動電流検出抵抗素子と、
請求項4に記載のモータ駆動制御回路と、
を備えることを特徴とするモータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−42423(P2006−42423A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215039(P2004−215039)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】