説明

ピーク検出閾値の設定方法、物標情報生成装置、プログラム

【課題】 回り込みノイズの影響が考慮された精度の良い物標検出を可能とするピーク検出閾値の設定方法、物標情報生成装置、プログラムを提供する。
【解決手段】 ピーク検出閾値の上位領域は、ピーク周波数成分が発生しないCWノイズ分布の上位領域を用いて設定し、ピーク検出閾値の下位領域は、受信ノイズ分布の下位領域から推定して設定する。具体的には、上位領域では、回り込みノイズを含んだ受信ノイズの分布を示すCWノイズ分布の平均値に、ランダムノイズのバラツキ幅より大きな値に設定されたオフセット値を加えた第1分布を、下位領域では、受信ノイズ分布に1/fノイズ分布を加えることで回り込みノイズを含んだ受信ノイズ分布の波形を推定し、更に、境界周波数にて上位分布と連続するようにレベル調整をすることで、回り込みノイズとオフセット値の分を底上げした第2分布をピーク検出閾値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FMCWレーダにて生成されるビート信号を周波数解析した結果から、物標からの反射波に基づくピーク周波数成分を検出する際に用いるピーク検出閾値の設定方法、ピーク周波数成分を検出して物標情報を生成する物標情報生成装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FMCWレーダでは、ビート信号を周波数解析(FFT)した結果から、物標からの反射波に基づくピーク周波数成分を抽出する際に用いるピーク検出閾値として、過去のビート信号の周波数分析結果からターゲットに対応するピークを除いて得られる周波数スペクトルに基づいて閾値を設定する方法(例えば、特許文献1参照)や、注目する周波数成分(ビン)の前後複数の周波数成分の移動平均を算出することで閾値を設定する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
なお、これらの手法では、ピーク周波数成分の検出対象となる周波数解析結果に基づいてピーク検出閾値を設定しているため、周囲の状況に応じてピーク検出閾値が大きく変動してしまい、安定して精度のよい検出を行うことができないという問題があった。
【0004】
これに対して、受信機が発生させるノイズ(熱雑音)を推定し、その推定したノイズに基づいて閾値を設定する方法も知られている。この方法では、送信機を停止させ且つ受信機を動作させた状態で得られる受信レベルを雑音レベルとして、この雑音レベルに基づいて閾値を設定することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−271431号公報
【特許文献2】特開2001−91642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、レーダ装置の受信信号に含まれるノイズの一つとして、送受間のアイソレーションが不完全であることに基づく回り込みノイズが知られている。但し、回り込みノイズは、通常、受信機にて発生する受信ノイズに埋もれて無視できる程度に小さくなるように、送受間のアイソレーションを設計することで対処されていた。
【0007】
しかし、近年では、レーダ装置の低コスト化の一環として、アンテナ部分を小型化、低コスト化する試みの中で、送受間のアイソレーションの低いアンテナが用いられる場合があり、この場合、受信ノイズに対して無視できない大きさの回り込みノイズが発生する。また、性能向上のためにノイズの低い受信機を用いた場合も、受信ノイズが低下することで相対的に大きくなる回り込みノイズを、無視することができなくなる。
【0008】
ところが、送信機を停止させて測定した結果からノイズを推定する上述の方法では、その推定されたノイズに、回り込みノイズの影響を反映させることができないため、精度のよいピーク検出閾値を設定することができず、ひいては物標の検出精度を劣化させてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、回り込みノイズの影響が考慮された精度の良い物標検出を可能とするピーク検出閾値の設定方法、物標情報生成装置、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、FMCW波を送受信機にて送受信することで得られるビート信号を第1ビート信号として、該第1ビート信号を周波数解析した結果から、物標からの反射波に基づくピーク周波数成分を検出するために用いるピーク検出閾値の設定方法に関するものである。
【0011】
なお、ここでは、CW波を送受信機にて送受信することで得られるビート信号を第2ビート信号、該第2ビート信号を周波数解析した場合に、予め設定された上限相対速度を有する物標からの反射波に基づいて発生するピーク周波数成分をCW上限成分とする。
【0012】
そして、本発明では、CW上限成分の周波数より高く設定された境界周波数以上の周波数領域である上位領域では、第2ビート信号を周波数解析することで得られる信号成分の周波数分布であるCWノイズ分布に予め設定されたオフセット値を加えることで生成される第1分布を、ピーク検出閾値とする。
【0013】
つまり、CW波を送受信した場合、周波数解析した結果である信号成分の周波数分布(スペクトル)上には、CW波を反射した物標との距離とは関係なく、CW波を反射した物標との相対速度に基づくドップラ周波数のピークが現れる。そして、例えば、CW波の送信周波数を76.5GHz、上限相対速度を300km/hとした場合、CW上限成分の周波数は43kHzとなり、これより大きなピーク周波数成分が現れることがない。
【0014】
従って、CWノイズ分布は、ピーク周波数成分が発生しない上位領域については、回り込みノイズを含んだ受信ノイズの大きさ(ノイズフロア)を示すものとなるため、これに基づいて、ピーク検出閾値を精度よく設定することができる。
【0015】
なお、オフセット値は、ランダムノイズによるCWノイズのレベルのばらつきを考慮して、例えば、そのバラツキの最大値以上の大きさに設定することが望ましく、例えば、次のようにして求めたものを用いることが考えられる。
【0016】
即ち、送受信機が反射波を受信することがない環境で、送受信機に第1ビート信号および第2ビート信号を取得する動作を行わせることで得られるビート信号をそれぞれ周波数解析し、前者の解析結果であるFMCWノイズ分布のピークホールド値と、後者の解析結果であるCWノイズ分布の平均値との差分をオフセット値として用いる。但し、オフセット値は、周波数成分毎に求めてもよいし、周波数成分毎に求めたものの中で最大のものを、全周波数領域に適用してもよい。
【0017】
ところで、CWノイズ分布の下位領域には、上述したように、ピーク周波数成分が現れる可能性があるため、これをピーク検出閾値の設定に用いることができない。そこで、下位領域のピーク検出閾値は、1/fノイズを考慮した固定値に設定してもよいが、例えば、次のように設定してもよい。
【0018】
即ち、送受信機の送信機能(レーダ波の送信)を停止させ且つ受信機能を動作させた状態で得られるビート信号を第3ビート信号として、境界周波数より周波数が小さい周波数領域である下位領域では、第3ビート信号を周波数解析することで得られる信号成分の周波数分布である受信ノイズ分布に1/fノイズ分布を加え、更に、境界周波数にて第1分布と連続するようにレベル調整することで得られる第2分布を、ピーク検出閾値とする。
【0019】
このような方法で設定されたピーク検出閾値は、受信ノイズ分布と1/fノイズ分布とによって、下位領域の分布(第2分布)の形状を、実際のノイズ分布に近似させることができるだけでなく、第2分布のレベルを、境界周波数での第1分布のレベルに合わせることで、回り込みノイズを反映させたレベルとすることができる。
【0020】
次に、請求項4に記載の発明は、FMCW波を送受信機にて送受信することで得られるビート信号である第1ビート信号を取得して周波数解析する第1解析手段と、該第1解析手段での解析結果として得られる信号成分の周波数分布から、予め設定されたピーク検出閾値より大きいピーク周波数成分を検出するピーク検出手段とを備え、該ピーク検出手段にて検出されたピーク周波数成分に基づいて、FMCW波を反射した物標に関する情報を生成する物標情報生成装置に関するものである。
【0021】
そして、本発明の物標情報生成装置では、第2解析手段が、CW波を送受信機にて送受信することで得られるビート信号である第2ビート信号を取得して周波数解析し、閾値設定手段が、第2解析手段での解析結果として得られる信号成分の周波数分布であるCWノイズ分布に基づいて、ピーク検出閾値を設定する。
【0022】
具体的には、第2ビート信号を周波数解析した場合に予め設定された上限相対速度を有する物標からの反射波に基づいて発生するピーク周波数成分をCW上限成分、該CW上限成分の周波数より高く設定された境界周波数以上の周波数領域を上位領域、境界周波数より周波数が小さい周波数領域を下位領域として、上位領域では、予め設定されたオフセット値をCWノイズ分布に加えた第1分布を、ピーク検出閾値として設定する。
【0023】
つまり、本発明の物標情報生成装置では、請求項1に記載の方法によってピーク検出閾値を設定し、そのピーク検出閾値を用いてピーク周波数成分の検出を行っている。
従って、本発明の物標情報生成装置によれば、上位領域については、回り込みノイズを含んだ受信ノイズ(CWノイズ)の影響を反映した精度の良いピーク検出閾値を設定することができ、その結果、上位領域(中長距離)におけるピーク周波数成分の検出精度、ひいては物標に関する情報の検出精度を向上させることができる。
【0024】
また、本発明の物標情報生成装置は、送受信機の送信機能を停止させ且つ受信機能を動作させた状態で得られるビート信号である第3ビート信号を取得して周波数解析する第3解析手段を備えていてもよく、この場合、閾値設定手段は、下位領域では、第3解析手段での解析結果として得られる信号成分の周波数分布である受信ノイズ分布に1/fノイズ分布を加え、更に、境界周波数にて前記第1分布と連続するようにレベル調整することで得られる第2分布を、ピーク検出閾値として設定してもよい。
【0025】
このように構成された本発明の物標情報生成装置によれば、下位領域についても、精度の良いピーク検出閾値を設定することができ、その結果、下位領域(近距離)におけるピーク周波数成分の検出精度、ひいては物標に関する情報の検出精度をより向上させることができる。
【0026】
また、本発明の物標情報生成装置において、閾値設定手段は、第2解析手段での複数回分の解析結果を平均することでCWノイズ分布を求めると共に、第2解析手段での解析結果に、位相ノイズに基づく裾野が上位領域まで広がるピーク周波数成分が含まれている場合、該解析結果を除外して、CWノイズ分布を求めてもよい。
【0027】
なお、裾野が上位領域まで広がるピーク周波数成分であるか否かの判断は、例えば、位相ノイズに基づく裾野の広がりを示す理論値を利用して、上位領域に張り出した裾野が、予め設定されたノイズ許容値を超えることがない、ピーク周波数成分の最大信号レベルを、強反射閾値として、この強反射閾値を超えるピーク周波数成分が存在するか否かによって判断すればよい。
【0028】
つまり、実環境に大きな反射物が存在する場合、CWノイズ分布の下位領域に現れるピーク周波数成分の位相ノイズに基づく裾野が、上位領域まで広がって、第1分布すなわちピーク検出閾値のレベルを必要以上に上昇させてしまうことにより、境界検出性能を劣化させてしまう可能性があるが、本発明の物標情報生成装置によれば、このような事態を防止することができる。
【0029】
ところで、請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の物標情報生成装置を構成する各手段は、請求項7に記載のように、コンピュータをこれら各手段として機能させるためのプログラムによって実現されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】レーダ装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】信号処理部が実行する測定処理の内容を示すフローチャート。
【図3】測定処理を実行した場合のレーダ装置1の動作を示すタイミング図。
【図4】信号処理部が実行する閾値設定処理の内容を示すフローチャート。
【図5】閾値設定処理によって設定されるピーク検出閾値の概要を示す説明図。
【図6】ピーク検出閾値オフセット値や強反射閾値を設定するために実行する検査処理の内容を示すフローチャート。
【図7】オフセット値の概要を示す説明図。
【図8】強反射閾値とピーク周波数成分の近傍波形との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用されたレーダ装置1の全体構成を示すブロック図である。
なお、レーダ装置1は、FMCW方式のいわゆる「ミリ波レーダ」として構成されたものであり、車両に搭載され、周波数変調されたミリ波帯のレーダ波を送受信することにより、先行車両や路側物等の物標を認識し、これらの認識した物標に関する情報である物標情報を生成するものである。
【0032】
[構成]
図1に示すように、レーダ装置1は、ミリ波帯(本実施形態では76.5GHz帯)の高周波信号を生成し、変調信号Mの信号レベルに応じて発振周波数が変化する発振器10と、発振器10が生成する高周波信号を増幅する増幅器12と、増幅器12の出力を送信信号Ssとローカル信号Lとに電力分配する分配器14と、送信信号Ssを増幅する増幅器15と、増幅器15にて増幅された送信信号Ssに応じたレーダ波を放射する送信アンテナ16と、レーダ波を受信するn(nは2以上の整数)個の受信アンテナからなる受信アンテナ部20とを備えている。
【0033】
また、レーダ装置1は、受信アンテナ部20を構成するアンテナのいずれかを順次選択し、選択されたアンテナからの受信信号Srを後段に供給する受信スイッチ21と、受信スイッチ21から供給される受信信号Srを増幅する増幅器22と、増幅器22にて増幅された受信信号Srおよびローカル信号Lを混合してビート信号BTを生成するミキサ23と、ミキサ23が生成したビート信号BTから不要な信号成分を除去するフィルタ24と、フィルタ24の出力をサンプリングしデジタルデータに変換するA/D変換器25と、増幅器15の起動停止、変調信号Mの生成、受信スイッチ21の切換、A/D変換器25を介したビート信号BTのサンプリングを制御すると共に、そのサンプリングデータを用いた信号処理を行い、レーダ波を反射した物標に関する情報を生成する処理などを行う信号処理部26とを備えている。
【0034】
更に、レーダ装置1は、信号処理部26以外の部位が増幅器15,送信アンテナ16からなる部位Aとそれ以外の部位Bとに分けられており、信号処理部26からの指令によって、各部位A,Bへの電源供給を個別に制御できるように構成されている。
【0035】
[レーダ装置の動作]
このように構成された本実施形態のレーダ装置1では、発振器10は、変調信号Mによって指定された周波数で発振し、発振器10にて生成された高周波信号を増幅器12が増幅した後、分配器14が電力分配することにより、送信信号Ssおよびローカル信号Lを生成する。このうち送信信号Ssは、増幅器15にて増幅された後、送信アンテナ16を介してレーダ波として送出される。
【0036】
そして、送信アンテナ16から送出され物標に反射して戻ってきた反射波は、受信アンテナ部20を構成する全ての受信アンテナにて受信され、受信スイッチ21によって選択されている受信チャンネルCHi(i=1〜n)の受信信号Srのみが増幅器22で増幅されたあとミキサ23に供給される。すると、ミキサ23では、この受信信号Srに分配器14からのローカル信号Lを混合することによりビート信号BTを生成する。このビート信号BTは、フィルタ24にて不要な信号成分が除去された後、A/D変換器25にてサンプリングされ、信号処理部26に取り込まれる。
【0037】
なお、信号処理部26は、信号レベルが三角波状に変化する変調信号Mを出力することによって、時間に対して周波数が直線的に増加する上り区間、及び周波数が直線的に減少する下り区間を有したレーダ波(FMCW波)や、信号レベルが一定の変調信号Mを出力することによって、一定周波数のレーダ波(CW波)を送信するようにされている。
【0038】
また、信号処理部26は、部位Aに対する電源供給を停止することによって、レーダ装置1を、受信機能を維持したまま送信機能を停止した状態にすることができるようにされている。
【0039】
[信号処理部]
信号処理部26は、CPU,ROM,RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、A/D変換器25を介して取り込んだデータについて、高速フーリエ変換(FFT)処理などを実行するための演算処理装置(例えばDSP)も備えている。
【0040】
そして、ROMには、CPUが実行する処理のプログラムや、処理を実行する際に使用する各種パラメータが記憶されている。
なお、CPUが実行する処理には、物標検出のために必要なデータを収集する測定処理、レーダ波を反射した物標に関する情報を生成する情報生成処理、情報生成処理において物標からの反射波に基づく信号成分を抽出する際に用いるピーク検出閾値を設定する閾値設定処理が少なくとも含まれ、また、処理に必要なパラメータには、閾値設定処理で使用するピーク検出閾値のデフォルト値,オフセット値の他、強反射閾値(後述する)が少なくとも含まれている。
【0041】
<測定処理>
まず、測定処理の詳細を、図2に示すフローチャートに沿って説明する。なお、本処理は、信号処理部26に電源が投入され、初期化処理が実行された後、予め設定された測定周期(例えば100ms)毎に起動する。
【0042】
但し、初期化処理において、本処理で使用する切換フラグFおよびチャンネル指定パラメータiが初期化(F←0、i←1)されているものとする。
本処理が起動すると、まず、S110では、送信機能および受信機能がいずれも有効(ON)となるように、部位A,Bへの電源供給を開始し、続くS120にて、FMCW波を送受信することで得られるビート信号(第1ビート信号)のサンプリングを全チャンネルCH1〜CHnについて行う通常測定処理を実行する。
【0043】
この通常測定処理では、信号レベルが三角波状に変化するFMCW波用の変調信号Mを、レーダ波が最大検知距離を往復するのに必要な時間以上に設定された待機時間だけ間をおいてP(Pは2以上の整数)回繰り返して出力すると共に、一変調周期(上り区間および下り区間からなる)の間、受信チャンネルを順次切り替えて、A/D変換器25に所定回(例えば各区間/各チャンネル256回ずつ)のサンプリングを実行させる。
【0044】
続くS130では、切換フラグFが0に設定されているか否かを判断し、F=0である場合はS140に移行し、CW波を送受信することで得られるビート信号(第2ビート信号)のサンプリングを、チャンネル指定パラメータiで指定された一つのチャンネルCHiについて行うCWノイズ測定処理を実行する。
【0045】
このCWノイズ測定処理では、一定レベルを有するCW波用の変調信号Mを出力すると共に、FMCW波の一変調周期の半周期分(CW波の一周期分)の間、受信チャンネルをチャンネル指定パラメータiで指定されたチャンネルCHiに固定し、A/D変換器25に所定回(例えば256回)のサンプリングを実行させることで実現する。
【0046】
続くS150では、送信機能および受信機能がいずれも無効(OFF)となるように、部位A,Bへの電源供給を停止し、その後、S180にて切換フラグFを1に設定して、本処理を終了する。
【0047】
先のS130にて、切換フラグFが0に設定されていないと判断した場合は、S170に移行し、送信機能が無効となるように部位Aへの電源供給を停止し、続くS180では、レーダ波を送信することなく得られるビート信号(第3ビート信号)のサンプリングを、パラメータiで指定された一つのチャンネルCHiについて行う受信ノイズ測定処理を実行する。
【0048】
この受信ノイズ測定処理では、上述のCWノイズ測定処理と同様に、一定レベルを有するCW波用の変調信号Mを出力すると共に、CW波の一周期分の間、受信チャンネルをパラメータiで指定されたチャンネルCHiに固定し、A/D変換器25に所定回(例えば256回)のサンプリングを実行させることで実現する。
【0049】
続くS190では、受信機能が無効となるように、部位Bへの電源供給を停止し、その後、S200にて、チャンネル指定パラメータiを更新し、更に、S210にて、切換フラグFを0に設定して本処理を終了する。
【0050】
なお、S200におけるチャンネル指定パラメータiの更新とは、具体的には、i≠nであればパラメータiをインクリメント(i←i+1)し、i=nであればパラメータiを1に初期化(i←1)することを意味する。
【0051】
ここで、図3は、測定処理を実行した場合のレーダ装置1の動作を示すタイミング図である。
図3に示すように、F=0の時には、通常測定処理に続けてCWノイズ測定処理が実行され、F=1の時には、通常測定処理に続けて受信ノイズ測定処理が実行される。つまり、測定周期毎に、通常測定処理は毎回実行され、CWノイズ測定処理と受信ノイズ測定処理とはいずれか一方が交互に実行される。
【0052】
そして、通常測定処理では、P(図3ではP=3)周期分のFMCW波が送信され、全ての受信チャンネルCH1〜CHnについて、レーダ波の上り/下り各区間毎に所定個(256個)のサンプリングデータが、Pセットずつ蓄積される。一方、CW波ノイズ測定処理および受信ノイズ測定処理では、チャンネル指定パラメータiで指定された受信チャンネルCHi(i=1〜n)について、サンプリングデータが所定個(256個)蓄積される。但し、CWノイズ測定処理および受信ノイズ測定処理の処理対象となる受信チャンネルCHiは、両ノイズ測定処理が1回ずつ実行される毎に順次切り替わることになる。
【0053】
<情報生成処理>
次に、情報生成処理の概要について説明する。
情報生成処理では、通常測定処理で収集された第1ビート信号のサンプリングデータを、受信チャンネルCH1〜CHn毎かつ上り/下り各区間毎に周波数解析(FFT処理)し、受信チャンネルCH1〜CHn毎かつ上り/下り各区間毎に、P個ずつ算出される解析結果(周波数分布)を平均することで平均周波数分布を求め、この平均周波数分布から、後述するピーク検出閾値より大きいパワー値を有するピーク周波数成分を抽出する。そして、その抽出したピーク周波数成分に基づいて、そのピーク周波数成分を発生させた物標に関する各種情報(距離,相対速度,方位等)を算出する。
【0054】
なお、このような情報生成処理は、FMCWレーダにおいて周知の技術であるため、ここでは説明を省略する。
<閾値設定処理>
次に、閾値設定処理の詳細を、図4に示すフローチャートに沿って説明する。
【0055】
なお、本処理は、CWノイズ測定処理(S140)または受信ノイズ測定処理(S180)が終了する毎に起動する。
但し、本処理において設定するピーク検出閾値は、上述の初期化処理にて、予め用意されたデフォルト値に初期化されているものとする。
【0056】
本処理が起動すると、S310では、CWノイズ測定処理または受信ノイズ測定処理によって取得された第2ビート信号または第3ビート信号のサンプリングデータに基づいて周波数解析(FFT)処理を実行し、CWノイズ分布または受信ノイズ分布を生成して記憶する。
【0057】
続くS320では、S310で生成されたのがCWノイズ分布であるか否かを判断しる。
なお、CWノイズ分布であるか否かは、例えば、切換フラグFの状態から判断することができる。即ち、F=1であれば、その直前(切換フラグFが1に設定される前)に実行されたのは、CWノイズ測定処理であるとわかるため、S310にて今回求められたノイズ分布は、CWノイズ分布であると判断することができる。
【0058】
そして、生成されたのがCWノイズ分布であれば、S385に移行して、生成されたCWノイズ分布中に、パワー値が強反射閾値を超えるピーク周波数成分が存在するか否かを判断する。そのようなピーク周波数成分が存在しなければ、そのまま本処理を終了し、存在するのであれば、S390にて、切換フラグFを0に設定する共に、先のS310にて算出されたCWノイズ分布を破棄して、本処理を終了する。
【0059】
つまり、切換フラグFを0に設定することにより、次回の測定処理では、通常測定に続けてCWノイズ測定が実行され、その後、本処理が起動した時に、同じチャンネルのCWノイズ分布が、再度生成されるようにしている。
【0060】
先のS320にて、生成されたのがCWノイズ分布ではなく、受信ノイズ分布であると判断した場合、即ち、同一チャンネルについて測定されたCWノイズ分布と受信ノイズ分布とが揃ったのであれば、S330に移行する。
【0061】
S330では、先のS310にて算出された受信ノイズ分布から、境界周波数(本実施形態では75kHz)より周波数の小さい周波数領域(以下「下位領域」という)の分布と、先のS310にて前回の起動時に算出されたCWノイズ分布のうち、予め設定された境界周波数(本実施形態では75kHz)以上の周波数領域(以下「上位領域」という)の分布とを組み合わせたものを、対象チャンネルの実ノイズ形状データとして記憶する。なお、対象チャンネルとは、FFT処理の対象となったサンプリングデータを取得した受信チャンネルのことをいう。
【0062】
続くS340では、全受信チャンネルCH1〜CHnについて実ノイズ形状データを取得できたか否かを判断し、まだ、取得できていなければ、そのまま本処理を終了し、取得できていればS350に移行する。
【0063】
S350では、全受信チャンネルCH1〜CHnの実ノイズ形状データを、周波数成分(BIN)毎に平均値を算出することで、チャンネル平均ノイズ形状データを算出する。
続くS360では、S340にて算出されたチャンネル平均ノイズ形状データの数が、予め設定された規定個に達したか否かを判断し、達していなければ、そのまま本処理を終了し、達していればS370に移行する。
【0064】
S370では、これまでに算出されたチャンネル平均ノイズ形状データのうち、最新の規定個を対象として、その平均値(即ち、移動平均)を周波数成分(BIN)毎に算出することでノイズ基準値を算出する。
【0065】
続くS380では、上位領域のノイズ基準値には、予め用意されたピーク検出閾値用のオフセット値を加算して上位分布を生成し、下位領域のノイズ基準値には、1/fノイズ分布を加算し、更に、境界周波数にて上位分布と信号レベルが連続するよう、レベル調整することで下位分布を生成し、この上位分布と下位分布とを組み合わせたものを、新たなピーク検出閾値として設定して本処理を終了する。
【0066】
このような閾値設定処理が実行されることにより、ノイズ検出閾値は、本処理の起動後、S350にて算出されるチャンネル平均ノイズ形状データが規定個に達するまでの間はデフォルト値が用いられ、規定個に達すると、以後、ノイズの実測値に基づく算出値が用いられし、しかも、チャンネル平均ノイズ形状データが算出される毎(n回の測定周期毎)に更新されることになる。
【0067】
ここで、図5は、閾値設定処理によって設定されるピーク検出閾値の概要を示す説明図であり、(a)は、受信ノイズ測定処理により得られたサンプリングデータをFFT処理することで得られる受信ノイズ分布の一例、(b)は、CWノイズ測定処理により得られたサンプリングデータをFFT処理することで得られるCWノイズ分布の一例、(c)はピーク検出閾値の一例である。
【0068】
図5に示すように、ピーク検出閾値の上位領域は、ピーク周波数成分が発生しないCWノイズ分布の上位領域を用いて設定し、ピーク検出閾値の下位領域は、受信ノイズ分布の下位領域から推定して設定している。
【0069】
このような設定を行う理由は、CWノイズ分布は、受信ノイズだけでなく送信アンテナからの回り込みノイズが反映されたものとなるが、ピーク周波数が発生する下位領域は、ピーク検出閾値の設定に使用することができず、一方、受信ノイズ分布は、全周波数領域に渡ってピーク周波数成分が発生しないが、送信アンテナからの回り込みノイズが反映されないためである。
【0070】
そして、CWノイズ分布の上位領域の平均値、即ち、ノイズ基準値の上位領域は、回り込みノイズを含んだ受信ノイズの平均値を示すものであるため、上位領域では、ランダムノイズのバラツキ幅より大きな値に設定されたオフセット値をノイズ基準値に加えたもの(第1分布)をピーク検出閾値としている。
【0071】
また、受信ノイズ分布の下位領域の平均値、即ち、ノイズ基準値の下位領域は回り込みノイズを含まない受信ノイズの平均値を示すものであるため、これに1/fノイズ分布を加えることで回り込みノイズを含んだ受信ノイズ分布の波形を推定し、更に、境界周波数にて上位分布と連続するようにレベル調整をすることで、回り込みノイズとオフセット値の分を底上げしたもの(第2分布)をピーク検出閾値としている。
【0072】
なお、CWノイズ分布であっても、下位領域に発生するピーク周波数成分が非常に大きい場合には(図5(b)中の点線で示した分布を参照)、位相ノイズに基づく分布の広がり(「裾野」という)が、上位領域のノイズフロアを上昇させることになるため、上位領域に影響を及ぼすような大きなパワー値(強反射閾値より大きい)を有するピーク周波数成分が存在する場合には、そのCWノイズ分布をチャンネル平均ノイズ形状データ(ひいてはノイズ基準値)の算出対象から除外している。
【0073】
<ピーク検出閾値用オフセット値の設定方法>
次に、ピーク検出閾値用のオフセット値や強反射閾値を設定するために、レーダ装置1の出荷前などに実行する検査処理の内容を図6に示すフローチャートに沿って説明する。
【0074】
なお、検査処理は、レーダ装置1を、レーダ波を送信しても反射波が受信されない環境、例えば電波暗室内に設置した状態で、上述した通常測定処理(S120)およびCWノイズ測定処理(S140)を必要な回数だけ繰り返すことで取得した、サンプリングデータを用いる。
【0075】
また、検査処理は、レーダ装置1の信号処理部26に実行させてもよいが、上述のサンプリングデータを、外部の信号処理装置(コンピュータ等)に提供し、その外部の信号処理装置上で実行させてもよい。
【0076】
本処理では、まず、通常測定処理で取得したサンプリングデータに基づき、受信チャンネル毎、上り区間および下り区間の各区間毎にFFT処理を実行して、複数のFMCWノイズ分布を求める(S410)と共に、CWノイズ測定処理で取得したサンプリングデータに基づいて、受信チャンネル毎にFFT処理を実行して、複数のCWノイズ分布を求める(S420)。
【0077】
次に、S410にて算出された複数のFMCWノイズ分布に基づき、周波数成分(BIN)毎に最大値(ピークホールド値)を抽出して最大ノイズ分布を求める(S430)と共に、S420にて算出された複数のCWノイズ分布に基づき、周波数成分(BIN)毎に平均値を算出することで平均ノイズ分布を求める(S440)。
【0078】
そして、図7に示すように、S430にて求めたけ最大ノイズ分布と、S440にて求めた平均ノイズ分布との差分を、周波数成分(BIN)毎に求める(S450)。
この周波数成分毎に求めた差分値が、ピーク検出閾値用のオフセット値であり、信号処理部が実行する処理で使用できるように、信号処理部を構成するROM等に書き込まれる。
【0079】
なお、ここでは、オフセット値が周波数成分毎に用意されているが、その中の最大値を、全ての周波数成分で共通に用いる唯一のオフセット値とするようにしてもよい。
<強反射閾値および境界周波数の設定方法>
図8(a)は、強反射閾値と、ピーク周波数成分の近傍形状との関係を示す説明図である。
【0080】
周波数分布上において、ピーク周波数成分は、位相ノイズに基づく広がり(裾野)を有している。ここでは、予め設定されたノイズ許容値(図ではNdBm)での広がり幅(但し、周波数の上下方向に対象に広がるため、ここでは周波数が高い方に広がる幅)を裾野の大きさとする。
【0081】
そして、裾野の大きさが、予め設定された許容幅(本実施形態では25kHz)となるピーク周波数成分のピーク値を、周波数成分(BIN)毎に求めたものを強反射閾値として設定する。
【0082】
これと共に、ピーク値が強反射閾値以下のピーク周波数成分が、CWノイズ分布において、上位領域のレベル(ノイズフロア)に影響を与えてしまうことがないように、境界周波数を、上限相対速度から算出されるCW上限成分より、上記許容幅だけ大きい周波数に設定する。
【0083】
本実施形態では、上限相対速度を300km/hとした場合のCW上限成分の周波数が43kHz(余裕を見て50kHz)であるため、この周波数に、裾野の許容幅25kHzを加えた値75kHz(=50kHz+25kHz)を、境界周波数としている。
【0084】
なお、FMCW波による周波数分布上(図8(b)参照)に現れるピーク周波数成分(図8(b)参照)は、CW波による周波数分布上(図8(c)参照)では、同じピーク値を有したままCW上限成分の周波数以下に移動したものとなる。
【0085】
また、ピーク周波数成分の裾野の大きさは、位相ノイズキャンセル効果(dB)を表す式(例えば、論文:The Influence of Transmitter Phase Noise on FMCW Radar Performance、筆者:Patrick D L Beasley、発行元:Proceedings of the 3rd European Radar Conferenceを参照)を用いて、ある距離に位置する物標からの反射波によって発生するビート信号FFT波形(ピーク周波数成分の波形)を求めることによって理論的に推定する。
【0086】
[効果]
以上説明したように、レーダ装置1では、ピーク周波数成分の抽出に用いるピーク検出閾値を、境界周波数より大きい上位領域は、受信ノイズだけでなく回り込みノイズも反映されたCWノイズ分布の実測値の平均値に、ノイズのバラツキ幅を考慮したオフセット値を加えることで設定し、境界周波数より小さい下位領域では、受信ノイズ分布の実測値と1/fノイズ分布とから下位領域のノイズの分布形状を推定し、更に、上位分布と連続するようにレベル調整をすることで設定している。
【0087】
従って、レーダ装置1によれば、ピーク周波数成分の検出が必要な全周波数領域に渡って、回り込みノイズの影響を考慮したピーク検出閾値を設定することができ、その結果、ピーク周波数成分の検出精度、ひいてはレーダ波を反射した物標に関する情報の精度を向上させることができる。
【0088】
しかも、レーダ装置1では、CWノイズ分布中に強反射閾値より大きいパワー値を有したピーク周波数成分が存在する場合には、そのCWノイズ分布から得られる情報を除外して、ピーク検出閾値を算出するようにされている。
【0089】
従って、レーダ装置1によれば、CWノイズ分布の上位領域まで裾野が広がる大きなパワーを有したピーク周波数成分の影響によって、ピーク検出閾値が必要以上に大きな値に設定されてしまうことを防止することができる。
【0090】
[発明との対応]
上記実施形態において、情報生成処理にて行う周波数解析が第1解析手段、情報生成処理にて行うピーク周波数成分の抽出がピーク検出手段、CWノイズ測定によって得られたサンプリングデータに対して実行されるS310が第2解析手段、S330〜S380が閾値設定手段、受信ノイズ測定によって得られたサンプリングデータに対して実行されるS310が第3解析手段、信号処理部26が物標情報生成装置に相当する。
【0091】
[他の実施形態]
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施可能である。
【0092】
例えば、上記実施形態では、CWノイズ測定と受信ノイズ測定とは別の測定周期で行っているが、CWノイズ測定に引き続き、送信機能を停止させて受信ノイズ測定を行うように構成してもよい。
【0093】
上記実施形態では、CWノイズ測定および受信ノイズ測定を、測定周期毎に1チャンネル分のサンプリングしか実行していないが、測定周期毎に複数チャンネル分のサンプリングを実行するように構成してもよい。
【0094】
上記実施形態では、受信ノイズ分布を測定によって求めているが、受信ノイズのばらつきが小さい場合や、温度による傾向ばらつきが小さい場合は、予め設定された単一の受信ノイズ分布、又は、温度毎に予め設定された複数の受信ノイズ分布を用いることにより、受信ノイズ測定処理を省略してもよい。
【0095】
更に、受信ノイズ分布が、温度に対して略一定に変化する場合には、複数の受信ノイズ分布を用意する代わりに、温度勾配と周囲温度とを用いて受信ノイズ分布を補正するようにしてもよい。
【0096】
上記実施形態では、ノイズ基準値にオフセット値を加算しているが、受信ノイズ形状データや、チャンネル平均ノイズ形状データにオフセット値を加算するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…レーダ装置 10…発振器 12,15,22…増幅器 14…分配器 16…送信アンテナ 20…受信アンテナ部 21…受信スイッチ 23…ミキサ 24…フィルタ 25…A/D変換器 26…信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FMCW波を送受信機にて送受信することで得られるビート信号を第1ビート信号として、該第1ビート信号を周波数解析した結果から、物標からの反射波に基づくピーク周波数成分を検出するために用いるピーク検出閾値の設定方法であって、
CW波を前記送受信機にて送受信することで得られるビート信号を第2ビート信号、該第2ビート信号を周波数解析した場合に、予め設定された上限相対速度を有する物標からの反射波に基づいて発生するピーク周波数成分をCW上限成分として、
該CW上限成分の周波数より高く設定された境界周波数以上の周波数領域である上位領域では、前記第2ビート信号を周波数解析することで得られる信号成分の周波数分布であるCWノイズ分布に予め設定されたオフセット値を加えることで生成される第1分布を、前記ピーク検出閾値とすることを特徴とするピーク検出閾値の設定方法。
【請求項2】
前記送受信機が反射波を受信することがない環境で、前記送受信機に前記第1ビート信号および前記第2ビート信号を取得する動作を行わせることで得られるビート信号をそれぞれ周波数解析し、前者の解析結果であるFMCWノイズ分布のピークホールド値と、後者の解析結果であるCWノイズ分布の平均値との差分を前記オフセット値として用いることを特徴とする請求項1に記載のピーク検出閾値の設定方法。
【請求項3】
前記送受信機の送信機能を停止させ且つ受信機能を動作させた状態で得られるビート信号を第3ビート信号として、前記境界周波数より周波数が小さい周波数領域である下位領域では、前記第3ビート信号を周波数解析することで得られる信号成分の周波数分布である受信ノイズ分布に1/fノイズ分布を加え、更に、前記境界周波数にて前記第1分布と連続するようにレベル調整することで得られる第2分布を、前記ピーク検出閾値とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のピーク検出閾値の設定方法。
【請求項4】
FMCW波を送受信機にて送受信することで得られるビート信号である第1ビート信号を取得して周波数解析する第1解析手段と、
該第1解析手段での解析結果として得られる信号成分の周波数分布から、予め設定されたピーク検出閾値より大きいピーク周波数成分を検出するピーク検出手段と、
を備え、該ピーク検出手段にて検出されたピーク周波数成分に基づいて、前記FMCW波を反射した物標に関する情報を生成する物標情報生成装置であって、
CW波を前記送受信機にて送受信することで得られるビート信号である第2ビート信号を取得して周波数解析する第2解析手段と、
該第2解析手段での解析結果として得られる信号成分の周波数分布であるCWノイズ分布に基づいて、前記ピーク検出閾値を設定する閾値設定手段と、
を備え、
前記閾値設定手段は、
前記第2ビート信号を周波数解析した場合に予め設定された上限相対速度を有する物標からの反射波に基づいて発生するピーク周波数成分をCW上限成分、該CW上限成分の周波数より高く設定された境界周波数以上の周波数領域を上位領域、前記境界周波数より周波数が小さい周波数領域を下位領域として、前記上位領域では、予め設定されたオフセット値を前記CWノイズ分布に加えた第1分布を、前記ピーク検出閾値として設定することを特徴とする物標情報生成装置。
【請求項5】
前記送受信機の送信機能を停止させ且つ受信機能を動作させた状態で得られるビート信号である第3ビート信号を取得して周波数解析する第3解析手段を備え、
前記閾値設定手段は、
前記下位領域では、前記第3解析手段での解析結果として得られる信号成分の周波数分布である受信ノイズ分布に1/fノイズ分布を加え、更に、前記境界周波数にて前記第1分布と連続するようにレベル調整することで得られる第2分布を、前記ピーク検出閾値として設定することを特徴とする請求項4に記載の物標情報生成装置。
【請求項6】
前記閾値設定手段は、
前記第2解析手段での複数回分の解析結果を平均することで前記CWノイズ分布を求めると共に、前記第2解析手段での解析結果に、位相ノイズに基づく裾野が前記上位領域まで広がるピーク周波数成分が含まれている場合、該解析結果を除外して、前記CWノイズ分布を求めることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の物標情報生成装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の物標情報生成装置を構成する各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−103007(P2012−103007A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248903(P2010−248903)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】