説明

ファクシミリ装置

【課題】呼制御プロトコルを実装したファクシミリ装置において、宛先情報の入力間違いなどにより、ユーザの意図しない相手先へ原稿の画像データが誤送信されることを未然に防止するファクシミリ装置を提供すること。
【解決手段】画像データを送信すべき相手先の宛先情報を入力する入力手段と、画像データの送信に先立って、前記入力手段により入力された前記宛先情報の装置1Bに対して、装置1Bの識別情報Xを要求するテキストデータ形式のコマンドZをSIPメソッドにより送信するコマンド送信手段と、前記宛先情報の装置からテキストデータ形式の前記コマンドZに対する応答をSIPメソッドにより受信する応答受信手段と、受信した前記応答の内容を表示する表示手段と、を備えるファクシミリ装置1A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIP(Session Initiation Protocol)等の呼制御プロトコルを実装したファクシミリ装置に関し、特にIP電話番号等の宛先情報の入力間違いにより原稿が誤送信されることを未然に防止するファクシミリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IP網を通じて画像データの送信を行うファクシミリ装置が普及しつつある。例えば特許文献1に開示されているファクシミリ装置は、ITU−T勧告T.38に準拠したIPファクシミリ通信機能を備え、IP網を通じて、原稿の画像データを送受信することができる。
【0003】
IP網を通じて画像データの送信を行えば、電話回線を通じて画像データを送信するよりも格段に通信費を安く抑えることができることから、近年、企業等では通信コストの削減を目的としてIP網を通じて画像データを送信するファクシミリ装置を導入する傾向にある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−101256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電話回線を通じて画像データを送信するG3ファクシミリ装置などと同様に、IP網を通じて画像データを送信するファクシミリ装置もユーザは送信に際して、電話番号やメールアドレスなどの宛先情報を指定する必要があり、宛先情報の入力を間違えば、ユーザの意図しない相手へ大切な原稿の画像データが送信されるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、呼制御プロトコルのメソッドによりテキストデータを送受信する機能を備えたファクシミリ装置において、宛先情報の入力間違いなどにより、ユーザの意図しない相手先へ原稿の画像データが誤送信されることを未然に防止するファクシミリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載のファクシミリ装置は、画像データを送信すべき相手先の宛先情報を入力する入力手段と、画像データの送信に先立って、前記入力手段により入力された前記宛先情報の装置に対して、装置の識別情報を要求するテキストデータ形式のコマンドを呼制御プロトコルのメソッドにより送信するコマンド送信手段と、前記宛先情報の装置からテキストデータ形式の前記コマンドに対する応答を呼制御プロトコルのメソッドにより受信する応答受信手段と、受信した前記応答の内容を出力する出力手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載のファクシミリ装置は、装置の識別情報を要求するテキスト形式のコマンドを呼制御プロトコルのメソッドにより受信するコマンド受信手段と、該手段により前記コマンドを受信した場合に、自装置に登録されている自装置のテキストデータ形式の識別情報を読み出して、呼制御プロトコルのメソッドにより前記コマンドの送信元へ返信する返信手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載のファクシミリ装置は、請求項2記載のファクシミリ装置において、前記装置の識別情報には、当該装置のユーザ名称が含まれることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のファクシミリ装置を送信側、請求項2記載のファクシミリ装置を受信側とすれば、画像データの送信に先立って、ユーザに入力された宛先情報の装置の識別情報が出力されるので、ユーザは出力された識別情報を見て、入力した宛先情報が正しいか否かを確認することができる。これにより、大切な原稿が第三者に誤送信されることを未然に防止することができる。
【0011】
請求項1記載のファクシミリ装置を送信側、請求項3記載のファクシミリ装置を受信側とすれば、上記した利点が得られるほか、出力される相手装置の識別情報に当該装置のユーザ名称が含まれるので、入力した宛先情報が正しいか否かを更に簡単に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態に係る通信装置として、呼制御プロトコルを利用して原稿の画像データを送受信するIPファクシミリ通信機能、G3ファクシミリ通信機能、クライアント装置からの要求に応じて前記各種のファクシミリ通信を行うファクシミリサーバ機能等を備える複合機型のファクシミリ装置を例に挙げて説明する。
【0013】
図1にファクシミリ装置1の構成例を示す。すなわち、ファクシミリ装置1は、CPU(中央処理装置)2、ROM(リードオンリーメモリー)3、RAM(ランダムアクセスメモリー)4、画像メモリ5、モデム6、NCU7、コーデック8、読取部9、記録部10、表示部11、操作部12、LANインタフェース13を備え、各部2乃至13はバス14によって接続されている。
【0014】
CPU2は、ROM3に格納された制御プログラムに従って、このファクシミリ装置1を構成する各部を制御する制御手段として機能する。RAM4は、CPU2の主メモリ、ワークエリア等として機能する。また、RAM4には、ファクシミリ装置1自身の識別情報Xが登録されている。この識別情報としては、ファクシミリ装置1が設置されている住所、ファクシミリ装置1のユーザ名称(氏名、会社名称、部署名など)、ファクシミリ装置1に割り当てられているPSTN(公衆交換電話網)用電話番号やIP電話番号、メールアドレスなどが登録されている。また、ファクシミリ装置1のユーザ名称に併せて会社の部署名やファクシミリ装置1のユーザの電話番号の登録もできるようになっている。なお、前記識別情報は、ファクシミリ装置1のユーザを確認できる情報であればよく、上記したものに限定されない。
【0015】
画像メモリ5は、コーデック8によって圧縮符号化された画像データ等を記憶する。モデム6は、例えばITU−T(国際電気通信連合)の勧告V.34規格又はこれと同様のものに従った送受信データの変調及び復調を行う。NCU7は、PSTN(公衆交換電話網)15との回線の閉結及び開放の動作を行う回線網制御装置であり、G3ファクシミリ送受信時にモデム6をPSTN15と接続する。コーデック8は、ファクシミリ送信等に際して、画像データを、JPEG方式又はMH、MR、MMR方式等により圧縮符号化し、また、受信した画像データ等を復号する。
【0016】
読取部9は、原稿の画像データを読取るものであり、例えば、CCDカラーラインセンサ、A/Dコンバータ、画像処理回路等で構成される。記録部10は、受信画像データ、読取部9で読取った画像データ等を記録紙上に記録する。表示部11は、例えば操作部12に並設されたLCD(Liquid Crystal Display)からなり、各種の画面情報を表示する。操作部12は、テンキー、短縮キー、ワンタッチキー、スタートキー、文字入力キー、ファンクションキーなど各種の操作キーを具備する。ユーザによる各種の操作は、この操作部12において行われる。
【0017】
LANインタフェース13は、ファクシミリ装置1とLAN(ローカルエリアネットワーク)16とを接続するインターフェースであり、これを通じてファクシミリ装置1は、同じくLAN16に接続されたクライアントPC17、ルータ18等と通信を行う。更にはルータ18を通じてIP網19上にある、SIPを実装した他のファクシミリ装置1と原稿の画像データ等の送受信を行うことができる。
【0018】
上記構成を備えるファクシミリ装置1は、TCP/IP、SIP、RTP(Real-time Transport Protocol)、SDP(Session Description Protocol)、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)などを実装して、SIPによりメディアセッションを確立した上で、例えばRTPにより原稿の画像データを相手先と送受信したり、SIPメソッド「MESSAGE」などを利用して相手先とテキストデータの送受信を行う。また、SMTPにより原稿の画像データを電子メールにて送受信するインターネットファクシミリ機能をも備える。
【0019】
つぎに、上記構成及び機能を備えるファクシミリ装置1において、原稿の画像データを送信する際に実行される送信側のファクシミリ装置1の処理動作と、その原稿の画像データを受信する受信側のファクシミリ装置1の処理動作について図2乃至図5に示すフローチャート又はシーケンス図に基づいて説明する。なお、これらの図に基づいて説明するファクシミリ装置1の処理動作は、ROM3に格納された制御プログラムに基づいて制御手段であるCPU2が発行する命令に従って実行される。以下説明の便宜のため発呼側となる送信側のファクシミリ装置1を送信機1A、被呼側となる受信側のファクシミリ装置1を受信機1Bと称して説明する。また、以下の説明では、ファクシミリ装置1において各種操作や表示出力がなされるものとして説明するが、勿論、クライアントPC17においてファクシミリ装置1のファクシミリ送受信サービスを利用する場合は、クライアントPC17において各種操作や表示出力がなされる。
【0020】
まず、送信機1Aの操作部12において、原稿の画像データを送信するために、IP電話番号、メールアドレス等の宛先情報が入力指定され、あるいは、予め入力されて装置内部に登録されている短縮番号やワンタッチダイヤルが指定される(S1:YES)。すると、ファクシミリ装置1は、原稿の画像データを送信するに先立って、入力された宛先情報の確認処理を実行するか否かをユーザに問い合わせる情報を、例えば表示部11に表示することにより出力する(S2)。例えば、入力した宛先情報が正しいか否かの確認処理を実行しますか?はい、いいえを選択していください。」などのメッセージを表示部11に表示する。
【0021】
ユーザの操作により、宛先情報の確認処理を実行すべきことを指定する操作がなされ、ファクシミリ装置1がその指定を受付けると(S3:YES)、入力された宛先情報の装置に対してSIPメソッド「MESSAGE」により、装置の識別情報を要求するテキストデータ形式のコマンド、例えば図4に示すようなテキストデータ形式のコマンドZを送信する(S4)。なお、入力された宛先情報がメールアドレスである場合は、これをDNSサーバ(不図示)に提示して宛先IPアドレスを取得し、その宛先IPアドレス宛にSIP(呼制御プロトコル)のポート番号を指定して前記「MESSAGE」が送信される。テキストデータ形式のコマンドを送受信するためのSIPメソッドは、「MESSAGE」に限定されず、「INFO」、「SUBSCRIBE」、「NOTIFY」などテキストデータを送信することができるものであればよい。後述する「MESSAGE」の送受信も同様である。
【0022】
図4に示すように、送信機1AからSIPメソッド「MESSAGE」により送出されたテキスト形式のコマンドZは、SIPサーバ21を介して受信機1Bに受信される(T1)。受信機1Bは、SIPメソッド「MESSAGE」によりテキスト形式のコマンドZを受信すると(S51:YES)、受信機1Bに登録されている自装置1Bのテキストデータ形式の識別情報XをRAM4から読み出し(S52)、これをSIPメソッド「MESSAGE」により送信機1Aに返信する(S53、R1)。
【0023】
送信機1Aは、受信機1Bから前記S4で送信したコマンドに対するテキストデータ形式の応答をSIPメソッド「MESSAGE」により受信すると(S5:YES)、受信データの中から受信機1Bの識別情報Xを抽出してその内容を例えば表示部11に表示することにより出力する(S6)。例えば、図4に示すような識別情報Xを受信した場合は、相手装置の住所、ユーザ名称(会社名、部署名)、ファクシミリ番号、IP電話番号及びメールアドレスが出力され、併せて、相手装置のユーザのPSTN用電話番号も出力される。送信機1のユーザは、これら情報が原稿を送信しようとしている相手先装置の情報であるかを確認し、意図する相手先の情報と異なれば、入力した宛先情報や予め短縮番号等に登録した宛先情報が間違っていることに気付くことができる。
【0024】
一方、送信機1Aは、受信機1Bから前記S4で送出したコマンドに対する応答を一定時間内に受信しなかった場合は(S5:NO)、その旨の情報を、例えば表示部11に表示することにより出力する(S7)。S7の出力内容としては、例えば、「応答がありません。入力した宛先情報が間違っていないか確認して下さい。」などのメッセージが出力される。
【0025】
次いで、送信機1Aにおいて、前記S1において入力した宛先情報を編集する操作があると(S8:YES)、送信機1Aはこれを受付けて前記S1において入力された宛先情報を編集し(S10)、処理をS2に戻して編集後の宛先情報の確認処理を実行するか否かをユーザに問い合わせる情報を、例えば表示部11に表示することにより出力する(S2)。そして、宛先情報の確認処理を実行すべきことを指定する操作がなされ、ファクシミリ装置1がその指定を受付けると(S3:YES)、前記S4乃至S8の処理動作を再度実行する。
【0026】
前記S8において、前記S1において入力した宛先情報を編集する操作がされることなく(S8:NO)、送信を開始すべき操作、例えば操作部12のスタートキーの押下がなされた場合(S9:YES)、及び、前記S3において宛先情報の確認処理を実行しないことを指定する操作がなされ(S3:NO)、さらに送信を開始すべき操作がなされた場合は(S9:YES)、原稿の画像データの送信処理が開始される。一方、送信のキャンセル操作がなされたり、一定時間送信を開始すべき操作が成されなかった場合は、S1に処理が戻される。
【0027】
原稿の画像データの送信処理は、本実施の形態においては、前記S1で宛先情報としてメールアドレスが指定された場合に、SMTPが利用して行われ、宛先情報としてIP電話番号が入力指定された場合にはSIPが利用して行われるようになっているが、IP網を通じて相手先に送信するものであればこれらに限定されない。例えば、HTTP通信機能をファクシミリ装置1に実装し、宛先情報としてURIを入力してHTTPにより画像データを送信できるようにしてもよい。
【0028】
原稿の画像データをSIPを利用して送信する場合は、図5に示すようなセッションが、送信機1Aと受信機1Bの間で形成される。すなわち、セッション参加リクエストであるSIPメソッド「INVITE」の送受信(T3)、応答コードの送受信(R2)、「INVITE」に対する最終レスポンスを示すSIPメソッド「ACK」の送受信(T4)が送信機1Aと受信機1Bとの間で形成されメディアセッションが確立された上で、送信機1Aから受信機1Bへ原稿の画像データが送信される。原稿の画像データの送信完了後は、送信機1Aから受信機1Bに対してセッション終了を要求するSIPメソッド「BYE」が送信され(T5)、応答レスポンスが受信機1Bから送信機1Aに返信された後(R3)、セッションが切断される。
【0029】
以上説明した実施の形態においては、呼制御プロトコルの一例としてSIPを例に挙げて説明したが、原稿の画像データを送信するに先立ってテキストデータ形式のコマンドを相手先と送受信することができるものであれば、勿論、その他の呼制御プロトコルを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、例えば、SIPなどの呼制御プロトコルを利用して、テキストデータを送受信することができるファクシミリ装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るファクシミリ装置の構成例等を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るファクシミリ装置が、宛先情報の入力が行われた場合に実行する処理動作を示したフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係るファクシミリ装置が、装置の識別情報を要求するテキストデータ形式のコマンドを受信した場合に実行する処理動作を示したフローチャートである。
【図4】送信機において宛先情報の入力が行われた場合に、送信機と受信機の間で形成されるSIPによる通信手順を示したシーケンス図である。
【図5】送信機において宛先情報の入力が行われ、更に、送信処理が行われる場合に、送信機と受信機の間で形成されるSIPによる通信手順を示したシーケンス図である。
【符号の説明】
【0032】
X 装置の識別情報
Z 装置の識別情報を要求するテキストデータ形式のコマンド
1、1A、1B ファクシミリ装置
2 CPU
3 ROM
4 RAM
11 表示部
12 操作部
21 SIPサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを送信すべき相手先の宛先情報を入力する入力手段と、画像データの送信に先立って、前記入力手段により入力された前記宛先情報の装置に対して、装置の識別情報を要求するテキストデータ形式のコマンドを呼制御プロトコルのメソッドにより送信するコマンド送信手段と、前記宛先情報の装置からテキストデータ形式の前記コマンドに対する応答を呼制御プロトコルのメソッドにより受信する応答受信手段と、受信した前記応答の内容を出力する出力手段と、を備えることを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
装置の識別情報を要求するテキスト形式のコマンドを呼制御プロトコルのメソッドにより受信するコマンド受信手段と、該手段により前記コマンドを受信した場合に、自装置に登録されている自装置のテキストデータ形式の識別情報を読み出して、呼制御プロトコルのメソッドにより前記コマンドの送信元へ返信する返信手段と、を備えることを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項3】
前記装置の識別情報には、当該装置のユーザ名称が含まれることを特徴とする請求項2記載のファクシミリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−100966(P2006−100966A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281931(P2004−281931)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】