ファーネスに使用される内表面を大きくしたチューブ、製造方法および使用
本発明は、ファーネスに使用されるチューブであって、チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に溶接により固定された少なくとも1つの放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)をもっている。本発明は、また、電子溶接またはレーザービーム溶接するステップを有して、チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)上に少なくとも1つの放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を接合するチューブの製造方法である。本発明のチューブは、リフォーミングまたはスチームクラッキング、または鉄鉱石の直接還元設備(DRI)ファーネスに使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてファーネスに使用される内表面を大きくしたチューブに関するものである。さらにこの発明は、そのチューブの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の使用分野でのファーネスは、石油化学ファーネスであり、また鉄の直接還元(DRI)装置の加熱ファーネスである。
【0003】
石油化学プラントで使用されるファーネスには2つのタイプがあり、エチレンを生産するスチームクラッキングファーネスと、水素と一酸化炭素を生産するスチームリフォーミングファーネスである。
【0004】
これらのファーネスには、被処理製品を予熱する対流部分と、リフォーミングまたはクラッキング反応が起こる輻射部分がある。ファーネスの輻射部分は、非常に長いチューブで構成され、その入口部分に、対流部分で予熱された被処理製品、すなわち、リフォーミングではメタンが、クラッキングではエタン、プロパン、ブタン、ナフサ、および重質炭化水素が注入される。
【0005】
これら2つのタイプのファーネスでは、スチームも注入される。これらのチューブは、強靭な材料で作られ、輻射で加熱される。チューブは、一般に垂直に並べられるが、特に古いファーネスでは水平に並べられているものがある。
【0006】
チューブ内を循環するガスとチューブ内の熱により、炭素鎖を開裂させる。そして、チューブ出口で、スチームクラッキングファーネスの場合にはエチレンとプロピレンが、リフォーミングファーネスでは水素と一酸化炭素が回収される。
【0007】
DRIファーネスでも、長いチューブが使用されている。これらのファーネスは、前述したリフォーミングやクラッキングファーネスと同様に使用される。より正確には、リフォーミングファーネスで生成した鉄鉱石還元ガスが、チューブ内を循環するように作られている。従ってチューブは、石油化学ファーネスのチューブと同様な応力を受けている。
【0008】
前述したチューブは、スチームレフォーミングファーネスの場合には1000℃近辺で、スチームクラッキングファーネスの場合には1100℃で、DRIファーネスでは1000℃と1100℃の間の温度で使用できる合金で製造されている。
【0009】
それ故に、チューブは、クリープ、すなわちリフォーミングファーネス内の圧力が30 barに達することがあることを考慮して、高温での機械的変形に耐え、しかも、ファーネス雰囲気での酸化にも耐えなければならない。さらに、スチームクラッキングファーネスでは、チューブ内表面にコークがデポジットすることによる浸炭化の進行が抑えられる材料を使用することが重要である。
【0010】
出願人は、長年にわたってこれらの規準を満たすオーステナイト構造合金を開発してきた。これらの合金は、鉄、ニッケルおよびクロムをベースにしたものである。ニッケルは、オーステナイト構造を安定化させることができる。ニッケルとクロムは、腐食(浸炭化、酸化…)を減少させることに関係する。これらの合金は、さらに炭素を含んでいる。炭素は、高温での金属変形を抑え、耐クリープ性を高めることができる。
【0011】
チューブの耐クリープ性を改善するために、ニオブ、チタン、タングステンおよびモリブデンなどの炭化物形成元素が加えられることがある。また、耐食性を高めるに有効なシリコンも使用される。
【0012】
これら成分の全てを特定割合で混合して、スチームクラッキング、スチームリフォーミングおよびDRIファーネスで使用可能な高品質チューブを得ることができる。
【0013】
例として、本発明の出願人は、長年に亘り、マノライトXM(MANAURITE XM、商品名)およびマノライトXTM(MANAURITE XTM、商品名)の商品名で,スチームクラッキング用チューブを販売してきた。それぞれの化学成分は,以下の通りである。
【0014】
【表1】
【0015】
ファーネスで使用されるチューブは、数メートル、一般に3〜6メートルの長さで、その内径が、35〜200ミリメートルである。これらのチューブは、一般に内側および外側切断面が環状で、厚さが5〜20ミリメートルである。
【0016】
石油化学ファーネスで使用されるチューブは、しばしば鍛造により製造される。しかしながら、マノライトXMやマノライトXTMのように炭素量が多い合金では、チューブを鍛造するのは不可能である。そこで、これらのチューブは、遠心鋳造によって製造される。
【0017】
スチームクラッキング、スチームリフォーミングおよびDRIのファーネスで使用されるチューブの効率を高めるために、チューブの内表面を大きくすることが知られている。確かに、加熱面積を増加させれば、チューブの外側と内側の間の熱移動が大きくなり、反応効率を高めることになる。
【0018】
この目的に対し、特許文献1には、内表面に電気化学的方法によって突起および穴を形成させたチューブを提案している。この方法は、チューブの内表面に作ろうとするのと同じ穴と突起を外表面に作った電極を使用している。電極とチューブ内表面の間に電解質液を循環させ、電極をチューブ内に押し込むと、電流によってチューブ内表面で材料が溶解し、電極の穴と突起に対応した穴と突起が形成される。
【0019】
また、特許文献2から、ブローチ加工による機械的方法で、石油化学ファーネスチューブの内表面に穴と突起が形成させることができることが知られている。この方法は、チューブ内に挿入されたブローチピンを使用して、チューブ内部の材料を削ることからなっている。このブローチピンは、チューブ内表面に作ろうとする穴と突起に相当した形をした切削具を有している。
この方法は、チューブ内にブローチ具を数回通すことが必要で、通す毎に切削具の取替えと、チューブ内にブローチ具を通して発生した削り屑を取り出すことが必要である。
【0020】
上記したこれら2つの方法は、石油化学ファーネスで使用されるチューブの内表面を大きくすることが可能であるが、作業が難しく、複雑で高価な装置が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許出願公開第980729号明細書
【特許文献2】世界知的所有権機関国際事務局 国際公開第03/011507号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
この状況にあって上記した欠点を解決すべく、本発明は、内表面を大きくしたチューブと、作業が簡単で、全てのタイプの金属チューブ、特に、非常に長く、径の小さいチューブにも適用できるチューブの製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的のために、本発明のチューブは、チューブ壁の内表面に少なくとも1つの放射状の棒を、溶接で固定していることに本質的な特徴がある。
【0024】
このチューブは、複数個ある放射状の棒が壁の内表面の円周に沿って規則的に分布しているのが好ましい。特に、それぞれの棒が、長方形で、断面が長方形であるようにする。
【0025】
有利な実施形態によると、本発明のチューブは、6つの放射状の棒がチューブ壁の内表面の円周に沿って規則的に分布し、内径が50〜60ミリメートルであるチューブの全長に亘って延びて接合され、それぞれの棒の横方向断面が高さ8〜15ミリメートル、幅3〜5ミリメートルである。
【0026】
それぞれの棒は、連続した溶接ラインによってチューブの壁の内表面に固定されるのが有利である。しかし、これとは別に、それぞれの棒が、不連続な溶接ラインによってチューブ壁の内表面に固定されていてもよい。
【0027】
本発明のチューブは、その外表面に、チューブの壁の内表面にチューブの外側から棒を溶接したことに起因する少なくとも1つの連続または不連続の隆起を有しているのが好ましい。
【0028】
本発明の有利な態様によれば、それぞれの棒は、次に示す組成の合金で製造される。
【0029】
【表2】
【0030】
本発明の別の有利な態様によれば、チューブは、遠心鋳造によって、耐クリープ性の合金から製造される。合金について、チューブは、次の2つの組成から選ばれた合金から製造されるのが好ましい。
【0031】
【表3】
【0032】
本発明は、また、上記しチューブの製造方法に関するものであり、この方法は、少なくとも1つの放射状の棒を、チューブの内壁に付けてチューブの外側から電子線溶接するステップを有している。
【0033】
36)この方法は、少なくとも次のステップを有しているのが好ましい。
− 溶接される棒が差し込まれるための少なくとも1つの受け溝がある棒ホルダーを、チューブの中に挿入する。
− 棒ホルダーをチューブに挿入する前あるいは後に、棒ホルダー上に棒を置く。
− 予め棒と一緒にした棒ホルダーを挿入する、あるいは予めチューブの中に挿入した棒ホルダーに棒を差し込むことにより、チューブ内のチューブの内壁表面近くに溶接される棒を置く。
− チューブの外側から、チューブの内壁表面に棒を電子線溶接する。
− 棒ホルダーを抜き取る。
【0034】
さらに、本発明は、上記したとは別のチューブ製造方法に関しており、この方法は、チューブの内壁表面に少なくとも1つの放射状の棒を、チューブ外側からレーザービーム溶接する少なくとも1つのステップを有している。
【発明の効果】
【0035】
このようにして、上記したチューブは、リフォーミングあるいはスチームクラッキングファーネスなどの石油化学ファーネス、あるいは鉄鉱石直接還元設備の加熱ファーネスに使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明は、実施例として挙げた添付図面説明を参照して、以下のいくつかの実施形態の説明を読めば、一層よく理解され、他の目的、特徴、詳細および利点がより明確になるであろう。
【0037】
【図1】第1の形態による本発明チューブの横方向断面の説明図である。
【図2】図1において円で囲んだ部分IIの拡大図である。
【0038】
図3、4、5、6および7は、本発明の第1実施形態を図式化して、本発明方法の段階を順番に説明している。
【図3】チューブ内部から見たチューブの横方向断面図で、棒ホルダーが挿入され、その周囲に、棒ホルダーに差込まれた棒を保持するためのリングが配置されている。
【図4】チューブ内部から見たチューブの縦方向断面図で、棒ホルダーは、図5の矢印で示したIV−IVに沿って挿入される。
【図5】チューブの横方向断面図で、棒ホルダーと棒を示している。
【図6】チューブの横方向断面図で、棒の電子線溶接のステップを説明している。
【図7】棒ホルダーを引抜いた後のチューブの横方向断面図である。
【図8】1つの棒だけを描いた本発明のチューブの側面図で、連続溶接ラインがチューブの全長に延びて棒を固定している。
【図9】図8のIX−IX線に沿っての断面図である。
【図10】1つの棒だけを描いた本発明のチューブの側面図で、不連続な溶接ラインがチューブの全長に延びて棒を固定している。
【図11】図10のXI−XI線に沿っての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1と図3を参照すると、チューブ1は、厚さが5〜20ミリメートルの円筒状壁2を有し、その内表面3に、円周に沿って6つの放射状の棒4a、4b、4c、4d、4e、4fが規則的に分布している。
チューブの長さは2.8メートルで、内径は54ミリメートルである。6つの棒4a、4b、4c、4d、4e、4fは、チューブ1の全長に亘って延びている。
【0040】
チューブは遠心鋳造され、次の2つの組成から選ばれる合金から製造される。
【0041】
【表4】
【0042】
棒を製造するシート金属の組成は、次の通りである。
【0043】
【表5】
【0044】
チューブおよび棒に使用される材料は共に、類似した熱物理的性質、特に膨張係数を持っている。これら2つの材料は、オーステナイト構造と高クロム含量により浸炭化に対して高い耐性を有している。
【0045】
図1および2に見られる第1の実施形態によれば、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fそれぞれは、長方形の断面をしている。より正確には、この実施形態では、棒の高さhが12ミリメートル、幅lが4ミリメートルである。
【0046】
図1および2に示すように、溶接継ぎ目6a、6b、6c、6d、6e、6fが、チューブ1の壁2の内表面3にそれぞれ対応する棒4a、4b、4c、4d、4e、4fを固定している。溶接継ぎ目6a、6b、6c、6d、6e、6fが在るのは、それぞれの棒4a、4b、4c、4d、4e、4fがチューブ1の壁2の内表面3に固定される方法に依るものである。
【0047】
この方法を、図3〜7を参照して記載する。棒ホルダー10は、チューブ1の壁2の内表面3の直径より小さな直径の完全チューブ形状である。
棒ホルダー10は、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fが差し込まれる6つの受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fを有している。これら受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fは、棒ホルダー10の外側端12上の円周に沿って規則的に分布している。受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fのそれぞれは、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fが差し込まれて接合される。
【0048】
図3に示す例で、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fは、長方形の断面をしている。受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fのそれぞれは、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fそれぞれを対応する受け溝に差し込まれて保持するようになっている。棒4a、4b、4c、4d、4e、4fのそれぞれは、棒ホルダー10上の受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fに差し込まれる。棒4a、4b、4c、4d、4e、4fは、棒ホルダーを囲む複数の輪状リング9a、9b、9cによって、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fが受け溝中に位置した状態で棒ホルダーに保持されている。
【0049】
次いで、棒ホルダー10と棒4a、4b、4c、4d、4e、4fを組合わせたものを、チューブ1に挿入する。棒ホルダー10をチューブ1中に滑り込ませたとき、図6に示すように、チューブ1の入口7に最も近いリング9aが、チューブ1の壁2の外側端8に当る。
【0050】
棒ホルダー10をチューブ1の中に入れていくと、第1リング9が壁2の外側端8に当る。次いで、棒ホルダー10をチューブ1中を移動し続けると、第2リング9bが第1リング9aに当る。この状態は図には示していない。次のリング9cについても同じである。
【0051】
棒ホルダー10が、完全にチューブ1中に納まったとき、リング9a、9b、9cを取り除く。このステップを図7に示しており、図5と比較してみるとリング9aがない。
【0052】
図5を参照すると、棒ホルダー10上の各受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fの深さは、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fそれぞれの付け根部13a、13b、13c、13d、13e、13fがチューブ1の壁2の内表面3と同じになるようにする。
【0053】
棒ホルダー10が、チューブ1内に納まってから、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fを固定するステップに入る。図6に示すように、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fのそれぞれは、チューブ1の外側から真空電子線溶接によってチューブ1の壁2に溶接される。
【0054】
電子線14は、チューブ1の壁2の厚みを貫通し、発熱して一方でその部位のチューブ1の壁2を溶融させ、他方でチューブの壁2の内表面3に近い棒4aの端部を溶解させ、これにより、棒4aがチューブ1の壁2に溶接されて、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fのそれぞれが、チューブ1の壁2の内表面3に固定される。
【0055】
棒4a、4b、4c、4d、4e、4fは、チューブ1の全長に亘って次々に溶接される。これを行うために、電子線14は、チューブ1上、チューブ1の入口8から棒4aの方向に照射される。この電子線14は、図には示していないがチューブ1の端までチューブ1の全長に亘って一直線に移動させる。
【0056】
また、別の形態で、電子線の下を、チューブ1を移動させることでもできる。
【0057】
棒4a、4b、4c、4d、4e、4fの位置は、チューブの入口に印を付けておく。
棒4a、4b、4c、4d、4e、4fのそれぞれが、チューブ1の全長で溶接されたら、棒ホルダー10をチューブ1から長さ方向に滑らせて抜き取る。
【0058】
このようにして、図9のような内表面が大きくなったチューブ1が得られ、スチームクラッキング、リフォーミング、あるいはDRIのファーネスに使用できる。
【0059】
上記した電子線溶接14ステップを行ってできた溶接継ぎ目6b、6c、6dは、分析によって検知することができる。
確かに、この継ぎ目は、チューブの壁と棒を溶融させて固化させた特別の構造をしている。顕微鏡観察により、棒をチューブ1の内表面3に固定できるようにした溶融ゾーンの存在が確認できる。
【0060】
さらに、電子線溶接は、各溶接ポイントで、チューブの外表面16に突起した隆起15aを生成させている。図10〜13を参照すると、チューブ1の内表面3上に棒4aを固定することで、チューブの全長に亘り連続した(図10および11)、あるいはチューブ1の長さ方向に不連続な(図12および13)溶接ライン15aができる。
【0061】
連続した溶接の場合、チューブ1の外表面16は、チューブ1に沿って延びる隆起15aとなり、この隆起15aの下にチューブ1の壁2の内表面3に固定された棒4aがあることを示すことになる。
【0062】
また、不連続な溶接の場合、チューブ1の外表面16は、不連続な隆起15aのラインをもち、このライン15aの下にチューブ1の壁2の内表面3に固定された棒4aが在ることを標識することになる。
【0063】
溶接継ぎ目のクリープテストを行った。これらのテストは、チューブの性状が変っていないことを示すものである。このテストは、1100℃の温度で、17Mpaの応力をかけての破断時間を時間(hours)で評価している。
【0064】
結果は、以下と通りである。
チューブ1の金属について、破断時間は100時間以上である。また、溶接継ぎ目で溶解された金属について、破断時間は114時間である。それ故、溶接継ぎ目は、石油化学ファーネスでかかる応力に耐える特性を持っている。
【0065】
下記の表は、従来技術の2本のチューブと本発明の2本のチューブについてシミュレーションで評価した熱ゲインおよび摩擦ロスを示している。
【0066】
【表6】
【0067】
従来のチューブ1は、断面が環状の内表面をもつチューブである。従来のチューブ2は、特許文献1および特許文献2に記載された方法で製造された、内部に穴および突起を持ったチューブである。
【0068】
本発明のチューブ1は、図1および2のものであり、本発明のチューブ2は、図3および4のものである。
dTは、考察したチューブの出口でのガス温度を、従来のチューブ1の出口でのガス温度と比較した差である。dPは、考察したチューブの入口と出口の間の摩擦ロスである。
【0069】
熱ゲインは、本発明のチューブが、内表面に穴と突起をもつチューブよりも大きいことがわかる。摩擦ロスに関して、本発明チューブ1の摩擦ロスは大きいが、許容できる範囲であり、本発明チューブ2の摩擦ロスは完全に満足できるものである。これらの結果は、本発明のチューブの熱交換および摩擦ロスにおける効果を示している。
【0070】
チューブの外側から溶接してチューブ内表面への棒の固定は、多くの利点を有している。
先ず、チューブ内部に棒を固定するための装置を挿入しないことで、チューブの製造をより単純にすることができる。さらに、棒とチューブの接合を確実にする溶接継ぎ目は、高温でのチューブの熱および機械的操作に耐えられるようにしている。
【0071】
さらに、チューブに及ぶ重量増加は、特許文献1および特許文献2に記載された突起および穴のあるチューブより、本発明のチューブでは約半分になるので、重量増加が少ない。これは、発明のチューブをファーネス中に吊して装備するのを容易にしている。
さらに、この継ぎ目は、チューブと棒の間の熱移動を確実にしている。さらに、この方法によって、その後のチューブ使用条件によって棒材料を選ぶことが可能になる。
【0072】
また、この方法は、鍛造、あるいは遠心鋳造される全てのタイプの金属チューブに適用可能である。電子線溶接の代わりに、レーザー溶接を使用することもできる。
異なる形体の棒も考えられる。また、チューブの長さ方向の1つ部分にのみ棒を存在させて、摩擦ロスを少なくすることも考えられる。この意味で、放射状棒を、チューブの長さ方向に規則的に分布したセグメントの形で存在させることも考えられる。
【0073】
製造するための溶接方法は、使用される材料、採用される棒の形状のいずれも選択幅が大きく、内表面を大きくした既存のチューブと少なくとも同じ効果を得ることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてファーネスに使用される内表面を大きくしたチューブに関するものである。さらにこの発明は、そのチューブの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の使用分野でのファーネスは、石油化学ファーネスであり、また鉄の直接還元(DRI)装置の加熱ファーネスである。
【0003】
石油化学プラントで使用されるファーネスには2つのタイプがあり、エチレンを生産するスチームクラッキングファーネスと、水素と一酸化炭素を生産するスチームリフォーミングファーネスである。
【0004】
これらのファーネスには、被処理製品を予熱する対流部分と、リフォーミングまたはクラッキング反応が起こる輻射部分がある。ファーネスの輻射部分は、非常に長いチューブで構成され、その入口部分に、対流部分で予熱された被処理製品、すなわち、リフォーミングではメタンが、クラッキングではエタン、プロパン、ブタン、ナフサ、および重質炭化水素が注入される。
【0005】
これら2つのタイプのファーネスでは、スチームも注入される。これらのチューブは、強靭な材料で作られ、輻射で加熱される。チューブは、一般に垂直に並べられるが、特に古いファーネスでは水平に並べられているものがある。
【0006】
チューブ内を循環するガスとチューブ内の熱により、炭素鎖を開裂させる。そして、チューブ出口で、スチームクラッキングファーネスの場合にはエチレンとプロピレンが、リフォーミングファーネスでは水素と一酸化炭素が回収される。
【0007】
DRIファーネスでも、長いチューブが使用されている。これらのファーネスは、前述したリフォーミングやクラッキングファーネスと同様に使用される。より正確には、リフォーミングファーネスで生成した鉄鉱石還元ガスが、チューブ内を循環するように作られている。従ってチューブは、石油化学ファーネスのチューブと同様な応力を受けている。
【0008】
前述したチューブは、スチームレフォーミングファーネスの場合には1000℃近辺で、スチームクラッキングファーネスの場合には1100℃で、DRIファーネスでは1000℃と1100℃の間の温度で使用できる合金で製造されている。
【0009】
それ故に、チューブは、クリープ、すなわちリフォーミングファーネス内の圧力が30 barに達することがあることを考慮して、高温での機械的変形に耐え、しかも、ファーネス雰囲気での酸化にも耐えなければならない。さらに、スチームクラッキングファーネスでは、チューブ内表面にコークがデポジットすることによる浸炭化の進行が抑えられる材料を使用することが重要である。
【0010】
出願人は、長年にわたってこれらの規準を満たすオーステナイト構造合金を開発してきた。これらの合金は、鉄、ニッケルおよびクロムをベースにしたものである。ニッケルは、オーステナイト構造を安定化させることができる。ニッケルとクロムは、腐食(浸炭化、酸化…)を減少させることに関係する。これらの合金は、さらに炭素を含んでいる。炭素は、高温での金属変形を抑え、耐クリープ性を高めることができる。
【0011】
チューブの耐クリープ性を改善するために、ニオブ、チタン、タングステンおよびモリブデンなどの炭化物形成元素が加えられることがある。また、耐食性を高めるに有効なシリコンも使用される。
【0012】
これら成分の全てを特定割合で混合して、スチームクラッキング、スチームリフォーミングおよびDRIファーネスで使用可能な高品質チューブを得ることができる。
【0013】
例として、本発明の出願人は、長年に亘り、マノライトXM(MANAURITE XM、商品名)およびマノライトXTM(MANAURITE XTM、商品名)の商品名で,スチームクラッキング用チューブを販売してきた。それぞれの化学成分は,以下の通りである。
【0014】
【表1】
【0015】
ファーネスで使用されるチューブは、数メートル、一般に3〜6メートルの長さで、その内径が、35〜200ミリメートルである。これらのチューブは、一般に内側および外側切断面が環状で、厚さが5〜20ミリメートルである。
【0016】
石油化学ファーネスで使用されるチューブは、しばしば鍛造により製造される。しかしながら、マノライトXMやマノライトXTMのように炭素量が多い合金では、チューブを鍛造するのは不可能である。そこで、これらのチューブは、遠心鋳造によって製造される。
【0017】
スチームクラッキング、スチームリフォーミングおよびDRIのファーネスで使用されるチューブの効率を高めるために、チューブの内表面を大きくすることが知られている。確かに、加熱面積を増加させれば、チューブの外側と内側の間の熱移動が大きくなり、反応効率を高めることになる。
【0018】
この目的に対し、特許文献1には、内表面に電気化学的方法によって突起および穴を形成させたチューブを提案している。この方法は、チューブの内表面に作ろうとするのと同じ穴と突起を外表面に作った電極を使用している。電極とチューブ内表面の間に電解質液を循環させ、電極をチューブ内に押し込むと、電流によってチューブ内表面で材料が溶解し、電極の穴と突起に対応した穴と突起が形成される。
【0019】
また、特許文献2から、ブローチ加工による機械的方法で、石油化学ファーネスチューブの内表面に穴と突起が形成させることができることが知られている。この方法は、チューブ内に挿入されたブローチピンを使用して、チューブ内部の材料を削ることからなっている。このブローチピンは、チューブ内表面に作ろうとする穴と突起に相当した形をした切削具を有している。
この方法は、チューブ内にブローチ具を数回通すことが必要で、通す毎に切削具の取替えと、チューブ内にブローチ具を通して発生した削り屑を取り出すことが必要である。
【0020】
上記したこれら2つの方法は、石油化学ファーネスで使用されるチューブの内表面を大きくすることが可能であるが、作業が難しく、複雑で高価な装置が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許出願公開第980729号明細書
【特許文献2】世界知的所有権機関国際事務局 国際公開第03/011507号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
この状況にあって上記した欠点を解決すべく、本発明は、内表面を大きくしたチューブと、作業が簡単で、全てのタイプの金属チューブ、特に、非常に長く、径の小さいチューブにも適用できるチューブの製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的のために、本発明のチューブは、チューブ壁の内表面に少なくとも1つの放射状の棒を、溶接で固定していることに本質的な特徴がある。
【0024】
このチューブは、複数個ある放射状の棒が壁の内表面の円周に沿って規則的に分布しているのが好ましい。特に、それぞれの棒が、長方形で、断面が長方形であるようにする。
【0025】
有利な実施形態によると、本発明のチューブは、6つの放射状の棒がチューブ壁の内表面の円周に沿って規則的に分布し、内径が50〜60ミリメートルであるチューブの全長に亘って延びて接合され、それぞれの棒の横方向断面が高さ8〜15ミリメートル、幅3〜5ミリメートルである。
【0026】
それぞれの棒は、連続した溶接ラインによってチューブの壁の内表面に固定されるのが有利である。しかし、これとは別に、それぞれの棒が、不連続な溶接ラインによってチューブ壁の内表面に固定されていてもよい。
【0027】
本発明のチューブは、その外表面に、チューブの壁の内表面にチューブの外側から棒を溶接したことに起因する少なくとも1つの連続または不連続の隆起を有しているのが好ましい。
【0028】
本発明の有利な態様によれば、それぞれの棒は、次に示す組成の合金で製造される。
【0029】
【表2】
【0030】
本発明の別の有利な態様によれば、チューブは、遠心鋳造によって、耐クリープ性の合金から製造される。合金について、チューブは、次の2つの組成から選ばれた合金から製造されるのが好ましい。
【0031】
【表3】
【0032】
本発明は、また、上記しチューブの製造方法に関するものであり、この方法は、少なくとも1つの放射状の棒を、チューブの内壁に付けてチューブの外側から電子線溶接するステップを有している。
【0033】
36)この方法は、少なくとも次のステップを有しているのが好ましい。
− 溶接される棒が差し込まれるための少なくとも1つの受け溝がある棒ホルダーを、チューブの中に挿入する。
− 棒ホルダーをチューブに挿入する前あるいは後に、棒ホルダー上に棒を置く。
− 予め棒と一緒にした棒ホルダーを挿入する、あるいは予めチューブの中に挿入した棒ホルダーに棒を差し込むことにより、チューブ内のチューブの内壁表面近くに溶接される棒を置く。
− チューブの外側から、チューブの内壁表面に棒を電子線溶接する。
− 棒ホルダーを抜き取る。
【0034】
さらに、本発明は、上記したとは別のチューブ製造方法に関しており、この方法は、チューブの内壁表面に少なくとも1つの放射状の棒を、チューブ外側からレーザービーム溶接する少なくとも1つのステップを有している。
【発明の効果】
【0035】
このようにして、上記したチューブは、リフォーミングあるいはスチームクラッキングファーネスなどの石油化学ファーネス、あるいは鉄鉱石直接還元設備の加熱ファーネスに使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明は、実施例として挙げた添付図面説明を参照して、以下のいくつかの実施形態の説明を読めば、一層よく理解され、他の目的、特徴、詳細および利点がより明確になるであろう。
【0037】
【図1】第1の形態による本発明チューブの横方向断面の説明図である。
【図2】図1において円で囲んだ部分IIの拡大図である。
【0038】
図3、4、5、6および7は、本発明の第1実施形態を図式化して、本発明方法の段階を順番に説明している。
【図3】チューブ内部から見たチューブの横方向断面図で、棒ホルダーが挿入され、その周囲に、棒ホルダーに差込まれた棒を保持するためのリングが配置されている。
【図4】チューブ内部から見たチューブの縦方向断面図で、棒ホルダーは、図5の矢印で示したIV−IVに沿って挿入される。
【図5】チューブの横方向断面図で、棒ホルダーと棒を示している。
【図6】チューブの横方向断面図で、棒の電子線溶接のステップを説明している。
【図7】棒ホルダーを引抜いた後のチューブの横方向断面図である。
【図8】1つの棒だけを描いた本発明のチューブの側面図で、連続溶接ラインがチューブの全長に延びて棒を固定している。
【図9】図8のIX−IX線に沿っての断面図である。
【図10】1つの棒だけを描いた本発明のチューブの側面図で、不連続な溶接ラインがチューブの全長に延びて棒を固定している。
【図11】図10のXI−XI線に沿っての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1と図3を参照すると、チューブ1は、厚さが5〜20ミリメートルの円筒状壁2を有し、その内表面3に、円周に沿って6つの放射状の棒4a、4b、4c、4d、4e、4fが規則的に分布している。
チューブの長さは2.8メートルで、内径は54ミリメートルである。6つの棒4a、4b、4c、4d、4e、4fは、チューブ1の全長に亘って延びている。
【0040】
チューブは遠心鋳造され、次の2つの組成から選ばれる合金から製造される。
【0041】
【表4】
【0042】
棒を製造するシート金属の組成は、次の通りである。
【0043】
【表5】
【0044】
チューブおよび棒に使用される材料は共に、類似した熱物理的性質、特に膨張係数を持っている。これら2つの材料は、オーステナイト構造と高クロム含量により浸炭化に対して高い耐性を有している。
【0045】
図1および2に見られる第1の実施形態によれば、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fそれぞれは、長方形の断面をしている。より正確には、この実施形態では、棒の高さhが12ミリメートル、幅lが4ミリメートルである。
【0046】
図1および2に示すように、溶接継ぎ目6a、6b、6c、6d、6e、6fが、チューブ1の壁2の内表面3にそれぞれ対応する棒4a、4b、4c、4d、4e、4fを固定している。溶接継ぎ目6a、6b、6c、6d、6e、6fが在るのは、それぞれの棒4a、4b、4c、4d、4e、4fがチューブ1の壁2の内表面3に固定される方法に依るものである。
【0047】
この方法を、図3〜7を参照して記載する。棒ホルダー10は、チューブ1の壁2の内表面3の直径より小さな直径の完全チューブ形状である。
棒ホルダー10は、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fが差し込まれる6つの受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fを有している。これら受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fは、棒ホルダー10の外側端12上の円周に沿って規則的に分布している。受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fのそれぞれは、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fが差し込まれて接合される。
【0048】
図3に示す例で、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fは、長方形の断面をしている。受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fのそれぞれは、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fそれぞれを対応する受け溝に差し込まれて保持するようになっている。棒4a、4b、4c、4d、4e、4fのそれぞれは、棒ホルダー10上の受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fに差し込まれる。棒4a、4b、4c、4d、4e、4fは、棒ホルダーを囲む複数の輪状リング9a、9b、9cによって、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fが受け溝中に位置した状態で棒ホルダーに保持されている。
【0049】
次いで、棒ホルダー10と棒4a、4b、4c、4d、4e、4fを組合わせたものを、チューブ1に挿入する。棒ホルダー10をチューブ1中に滑り込ませたとき、図6に示すように、チューブ1の入口7に最も近いリング9aが、チューブ1の壁2の外側端8に当る。
【0050】
棒ホルダー10をチューブ1の中に入れていくと、第1リング9が壁2の外側端8に当る。次いで、棒ホルダー10をチューブ1中を移動し続けると、第2リング9bが第1リング9aに当る。この状態は図には示していない。次のリング9cについても同じである。
【0051】
棒ホルダー10が、完全にチューブ1中に納まったとき、リング9a、9b、9cを取り除く。このステップを図7に示しており、図5と比較してみるとリング9aがない。
【0052】
図5を参照すると、棒ホルダー10上の各受け溝11a、11b、11c、11d、11e、11fの深さは、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fそれぞれの付け根部13a、13b、13c、13d、13e、13fがチューブ1の壁2の内表面3と同じになるようにする。
【0053】
棒ホルダー10が、チューブ1内に納まってから、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fを固定するステップに入る。図6に示すように、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fのそれぞれは、チューブ1の外側から真空電子線溶接によってチューブ1の壁2に溶接される。
【0054】
電子線14は、チューブ1の壁2の厚みを貫通し、発熱して一方でその部位のチューブ1の壁2を溶融させ、他方でチューブの壁2の内表面3に近い棒4aの端部を溶解させ、これにより、棒4aがチューブ1の壁2に溶接されて、棒4a、4b、4c、4d、4e、4fのそれぞれが、チューブ1の壁2の内表面3に固定される。
【0055】
棒4a、4b、4c、4d、4e、4fは、チューブ1の全長に亘って次々に溶接される。これを行うために、電子線14は、チューブ1上、チューブ1の入口8から棒4aの方向に照射される。この電子線14は、図には示していないがチューブ1の端までチューブ1の全長に亘って一直線に移動させる。
【0056】
また、別の形態で、電子線の下を、チューブ1を移動させることでもできる。
【0057】
棒4a、4b、4c、4d、4e、4fの位置は、チューブの入口に印を付けておく。
棒4a、4b、4c、4d、4e、4fのそれぞれが、チューブ1の全長で溶接されたら、棒ホルダー10をチューブ1から長さ方向に滑らせて抜き取る。
【0058】
このようにして、図9のような内表面が大きくなったチューブ1が得られ、スチームクラッキング、リフォーミング、あるいはDRIのファーネスに使用できる。
【0059】
上記した電子線溶接14ステップを行ってできた溶接継ぎ目6b、6c、6dは、分析によって検知することができる。
確かに、この継ぎ目は、チューブの壁と棒を溶融させて固化させた特別の構造をしている。顕微鏡観察により、棒をチューブ1の内表面3に固定できるようにした溶融ゾーンの存在が確認できる。
【0060】
さらに、電子線溶接は、各溶接ポイントで、チューブの外表面16に突起した隆起15aを生成させている。図10〜13を参照すると、チューブ1の内表面3上に棒4aを固定することで、チューブの全長に亘り連続した(図10および11)、あるいはチューブ1の長さ方向に不連続な(図12および13)溶接ライン15aができる。
【0061】
連続した溶接の場合、チューブ1の外表面16は、チューブ1に沿って延びる隆起15aとなり、この隆起15aの下にチューブ1の壁2の内表面3に固定された棒4aがあることを示すことになる。
【0062】
また、不連続な溶接の場合、チューブ1の外表面16は、不連続な隆起15aのラインをもち、このライン15aの下にチューブ1の壁2の内表面3に固定された棒4aが在ることを標識することになる。
【0063】
溶接継ぎ目のクリープテストを行った。これらのテストは、チューブの性状が変っていないことを示すものである。このテストは、1100℃の温度で、17Mpaの応力をかけての破断時間を時間(hours)で評価している。
【0064】
結果は、以下と通りである。
チューブ1の金属について、破断時間は100時間以上である。また、溶接継ぎ目で溶解された金属について、破断時間は114時間である。それ故、溶接継ぎ目は、石油化学ファーネスでかかる応力に耐える特性を持っている。
【0065】
下記の表は、従来技術の2本のチューブと本発明の2本のチューブについてシミュレーションで評価した熱ゲインおよび摩擦ロスを示している。
【0066】
【表6】
【0067】
従来のチューブ1は、断面が環状の内表面をもつチューブである。従来のチューブ2は、特許文献1および特許文献2に記載された方法で製造された、内部に穴および突起を持ったチューブである。
【0068】
本発明のチューブ1は、図1および2のものであり、本発明のチューブ2は、図3および4のものである。
dTは、考察したチューブの出口でのガス温度を、従来のチューブ1の出口でのガス温度と比較した差である。dPは、考察したチューブの入口と出口の間の摩擦ロスである。
【0069】
熱ゲインは、本発明のチューブが、内表面に穴と突起をもつチューブよりも大きいことがわかる。摩擦ロスに関して、本発明チューブ1の摩擦ロスは大きいが、許容できる範囲であり、本発明チューブ2の摩擦ロスは完全に満足できるものである。これらの結果は、本発明のチューブの熱交換および摩擦ロスにおける効果を示している。
【0070】
チューブの外側から溶接してチューブ内表面への棒の固定は、多くの利点を有している。
先ず、チューブ内部に棒を固定するための装置を挿入しないことで、チューブの製造をより単純にすることができる。さらに、棒とチューブの接合を確実にする溶接継ぎ目は、高温でのチューブの熱および機械的操作に耐えられるようにしている。
【0071】
さらに、チューブに及ぶ重量増加は、特許文献1および特許文献2に記載された突起および穴のあるチューブより、本発明のチューブでは約半分になるので、重量増加が少ない。これは、発明のチューブをファーネス中に吊して装備するのを容易にしている。
さらに、この継ぎ目は、チューブと棒の間の熱移動を確実にしている。さらに、この方法によって、その後のチューブ使用条件によって棒材料を選ぶことが可能になる。
【0072】
また、この方法は、鍛造、あるいは遠心鋳造される全てのタイプの金属チューブに適用可能である。電子線溶接の代わりに、レーザー溶接を使用することもできる。
異なる形体の棒も考えられる。また、チューブの長さ方向の1つ部分にのみ棒を存在させて、摩擦ロスを少なくすることも考えられる。この意味で、放射状棒を、チューブの長さ方向に規則的に分布したセグメントの形で存在させることも考えられる。
【0073】
製造するための溶接方法は、使用される材料、採用される棒の形状のいずれも選択幅が大きく、内表面を大きくした既存のチューブと少なくとも同じ効果を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファーネスに使用されるチューブであって、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に溶接により固定された少なくとも1つの放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を有することを特徴とするチューブ。
【請求項2】
複数個の前記放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)は、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)の円周に沿って規則的に分布されていることを特徴とする請求項1に記載のチューブ。
【請求項3】
前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれは、横方向断面が長方形であることを特徴とする請求項1または2に記載のチューブ。
【請求項4】
6つの前記放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)は、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)の円周に沿って規則的に分布し、前記チューブ(1)の全長に亘って延びて接合され、前記チューブ(1)の内径が50〜60ミリメートルであり、棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれの横方向断面が、高さ8〜15ミリメートル、幅3〜5ミリメートルであることを特徴とする請求項3に記載のチューブ。
【請求項5】
前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれは、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に連続した溶接ライン(15a)によって固定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項6】
前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれは、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に不連続な溶接ライン(15a’)によって固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項7】
前記チューブ(1)の外表面(16)には、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を溶接したことに起因する少なくとも1つの連続または不連続な隆起(15a、15a’)を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項8】
前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれは、Cが0〜0.25重量%、Mgが0〜2重量%、Pが0〜0.045重量%、Sが0〜0.03重量%、Siが0〜1.5重量%、Crが24〜26重量%、Niが19〜22重量%で、残部がFeでなる組成をもつ合金で製造されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項9】
前記チューブは、耐クリープ性合金から遠心鋳造で製造されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項10】
前記チューブは、Cが0.45〜0.50重量%、Mnが0〜1.5重量%、Siが1〜2重量%、Pが0〜0.03重量%、Sが0〜0.03重量%、Niが33〜36重量%、Crが24〜27重量%、Moが0〜0.5重量%、Nbが0.5〜1重量%、そしてTi、Zr、Wが加えられて残部がFeでなる組成の合金、あるいはCが0.40〜0.50重量%、Mnが0〜1.5重量%、Siが1〜2重量%、Pが0〜0.03重量%、Sが0〜0.03重量%、Niが43〜48重量%、Crが34〜37重量%、Nbが0.5〜1重量%、そしてTi、Zr、Wが加えられて、残部がFeでなる組成の合金で製造されることを特徴とする請求項9に記載のチューブ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチューブを製造する方法であって、前記チューブ(1)の外側から電子線溶接するステップを有して、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)上に少なくとも1つの放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を接合することを特徴とするチューブの製造方法。
【請求項12】
−溶接される前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)が差し込まれる少なくとも1つの受け溝(11a、11b、11c、11d、11e、11f)を有するに含む棒ホルダー(10)を、前記チューブ(1)中に挿入する、
−前記チューブ(1)中に前記棒ホルダー(10)を挿入する前あるいは後に、前記棒ホルダー(10)に溶接される前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を配置する、
−前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を予め前記棒ホルダー(10)に差し込む、あるいは予め前記チューブ(1)の中に挿入した前記棒ホルダー(10)に棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を差し込むことで、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に近い位置に、チューブ(1)中に溶接される前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を配置する、
−前記チューブ(1)の外側から、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)の前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を電子線溶接する、
−前記棒ホルダー(10)を引抜く、
のステップを少なくとも有することを特徴とする請求項11記載のチューブの製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチューブを製造する方法であって、前記チューブ(1)の外側からレーザービーム溶接するステップを有して、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)上に少なくとも1つの放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を接合することを特徴とするチューブの製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチューブを、リフォーミングまたはスチームクラッキングの石油化学ファーネス、または鉄鉱石の直接還元設備の加熱ファーネスに使用することを特徴とするチューブの使用。
【請求項1】
ファーネスに使用されるチューブであって、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に溶接により固定された少なくとも1つの放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を有することを特徴とするチューブ。
【請求項2】
複数個の前記放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)は、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)の円周に沿って規則的に分布されていることを特徴とする請求項1に記載のチューブ。
【請求項3】
前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれは、横方向断面が長方形であることを特徴とする請求項1または2に記載のチューブ。
【請求項4】
6つの前記放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)は、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)の円周に沿って規則的に分布し、前記チューブ(1)の全長に亘って延びて接合され、前記チューブ(1)の内径が50〜60ミリメートルであり、棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれの横方向断面が、高さ8〜15ミリメートル、幅3〜5ミリメートルであることを特徴とする請求項3に記載のチューブ。
【請求項5】
前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれは、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に連続した溶接ライン(15a)によって固定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項6】
前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれは、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に不連続な溶接ライン(15a’)によって固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項7】
前記チューブ(1)の外表面(16)には、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を溶接したことに起因する少なくとも1つの連続または不連続な隆起(15a、15a’)を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項8】
前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)それぞれは、Cが0〜0.25重量%、Mgが0〜2重量%、Pが0〜0.045重量%、Sが0〜0.03重量%、Siが0〜1.5重量%、Crが24〜26重量%、Niが19〜22重量%で、残部がFeでなる組成をもつ合金で製造されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項9】
前記チューブは、耐クリープ性合金から遠心鋳造で製造されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項10】
前記チューブは、Cが0.45〜0.50重量%、Mnが0〜1.5重量%、Siが1〜2重量%、Pが0〜0.03重量%、Sが0〜0.03重量%、Niが33〜36重量%、Crが24〜27重量%、Moが0〜0.5重量%、Nbが0.5〜1重量%、そしてTi、Zr、Wが加えられて残部がFeでなる組成の合金、あるいはCが0.40〜0.50重量%、Mnが0〜1.5重量%、Siが1〜2重量%、Pが0〜0.03重量%、Sが0〜0.03重量%、Niが43〜48重量%、Crが34〜37重量%、Nbが0.5〜1重量%、そしてTi、Zr、Wが加えられて、残部がFeでなる組成の合金で製造されることを特徴とする請求項9に記載のチューブ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチューブを製造する方法であって、前記チューブ(1)の外側から電子線溶接するステップを有して、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)上に少なくとも1つの放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を接合することを特徴とするチューブの製造方法。
【請求項12】
−溶接される前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)が差し込まれる少なくとも1つの受け溝(11a、11b、11c、11d、11e、11f)を有するに含む棒ホルダー(10)を、前記チューブ(1)中に挿入する、
−前記チューブ(1)中に前記棒ホルダー(10)を挿入する前あるいは後に、前記棒ホルダー(10)に溶接される前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を配置する、
−前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を予め前記棒ホルダー(10)に差し込む、あるいは予め前記チューブ(1)の中に挿入した前記棒ホルダー(10)に棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を差し込むことで、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)に近い位置に、チューブ(1)中に溶接される前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を配置する、
−前記チューブ(1)の外側から、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)の前記棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を電子線溶接する、
−前記棒ホルダー(10)を引抜く、
のステップを少なくとも有することを特徴とする請求項11記載のチューブの製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチューブを製造する方法であって、前記チューブ(1)の外側からレーザービーム溶接するステップを有して、前記チューブ(1)の壁(2)の内表面(3)上に少なくとも1つの放射状の棒(4a、4b、4c、4d、4e、4f)を接合することを特徴とするチューブの製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチューブを、リフォーミングまたはスチームクラッキングの石油化学ファーネス、または鉄鉱石の直接還元設備の加熱ファーネスに使用することを特徴とするチューブの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−500910(P2011−500910A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529430(P2010−529430)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050170
【国際公開番号】WO2009/050356
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510109615)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050170
【国際公開番号】WO2009/050356
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510109615)
【Fターム(参考)】
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