説明

フィッシャー・トロプシュ合成油を含む植物油潤滑剤

本発明の潤滑剤は、1)天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油;2)0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量、約90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物、120に等しいかまたはそれを超える粘度指数を有する少なくとも1つのFTGTL合成基油;および3)少なくとも1つの酸化防止剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「全水素化処理された合成油を含む植物油潤滑剤(VEGETABLE OIL LUBRICANT COMPRISING ALL−HYDROPROCESSED SYNTHETIC OILS)」と題した2004年9月13日に出願された米国特許出願第10/939,765号の一部継続の出願であり、2003年9月12日に出願された米国特許仮出願第60/502,669号の優先権を主張する。本出願はまた、「フィッシャー・トロプシュ合成油を含む植物油潤滑剤(VEGETABLE OIL LUBRICANT COMPRISING FISCHER TROPSCH SYNTHETIC OILS)」と題した2005年4月28日に出願された米国特許出願第60/676,541号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、潤滑剤組成物に関する。具体的には、本発明は、フィッシャー・トロプシュの気体から液体(FTGTL:Fischer Tropsch Gas to Liquids)プロセスによって製造される合成油を含む植物油性潤滑剤に関する。より具体的には、本発明は、粘度指数、流動点、低温ポンプ圧送性、低揮発性、酸化安定性、電気絶縁値、様々な粘度を調合する能力および微生物による生分解性を含む機能強化された性質を提供する潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、植物油性潤滑剤は、天然真空ガス油原料の非潤滑油部分を含む添加剤を用いて形成可能であることは良く知られている。歴史的には、基油製造業者は、多くの場合、原油のガス油部分から望ましくない非潤滑油分子を除去するために、伝統的な化学溶剤精製プロセスを使用してきた。このような精製は、溶剤が所望の生産物の分子構造を変化させないという点で減法プロセスと考えられている。溶剤精製された基油の特性をさらに機能強化するために、分子を飽和させて、潤滑剤として用いた場合に酸化的分解に対して影響を小さくさせるように、水素化(即ち、水素化精製)を用いる場合がある。一般的に、溶剤プロセスを伴う水素化精製は有用ではあるが、概して非常に穏やかであり、完成品の一次、二次および三次構造の微小変化に終わることが認識されている。
【0004】
粘度指数(VI)は、温度が変化するときの粘度変化に対する油の抵抗性の尺度となる。VIが高くなると、粘度は幅広い温度範囲でより安定的になる。換言すれば、VIが高くなると、油は、冷めるにつれて増粘しなくなり、より高温で低粘性にならなくなり、両極端の温度で良好な潤滑剤としての性能を提供する。
【0005】
水素化分解および水素化異性化は、高圧で触媒および水素を用いて高品質潤滑剤基油を製造する精製プロセスである。水素化分解は、VIを改善し、不純物を除去するために使用され、水素化異性化は、ワックス分子を高品質潤滑剤成分に変換する。
【0006】
I類、II類およびIII類とは、エンジン油を認可するためのガイドラインを作成するために米国石油協会(American Petroleum Institute)によって作られた基油原料の大まかな分類である。典型的には、溶剤精製された基油はI類に分類され、水素化処理された基油原料はII類に分類される。非在来型基油(UCBO)または超高VI原料は、通常、III類に分類されている。
【0007】
II+類は、公式なAPIの表示ではないが、典型的なII類原料より高いVI(110〜119)であって、より低揮発性であるII類原料を表すために、次第に使用されるようになってきた用語である。
【0008】
I類油は、高レベルの硫黄および芳香族化合物を含み、それらは性能を低下させ得る化合物である。水素化処理されたII類油およびIII類油は、これらの不純物のレベルがより低くく、結果として完全に調合された潤滑剤の酸化性能が増加する。
【0009】
最近の精製プロセスによって、新種の合成油が生じてきた。例えば、1999年潤滑剤およびワックス会議(the 1999 Lubricants & Waxes Meeting)、11月11〜12日、テキサス州ヒューストン(米国石油化学および石油精製業者協会(National Petrochemical & Refiners Association))で提出された「III類基油の合成特性(The synthetic Nature Of Group III Base Oils)」と題したシェブロン・プロダクツ・カンパニー(Chevron Products Company)による技術論文では、分子の潤滑特性を改善するために、分子の大きさ、形状およびヘテロ原子含量を著しくかつ選択的に変化させるための3種の触媒プロセスを組み合わせる全水素化処理の製造経路が開示されている。優れた安定性を有する油を製造するために、3種の工程の全てにおいて高温および高圧で水素が添加される。硫黄および窒素などの不純物は、本質的には完全に除去される。III類の製造では、原料は、イソパラフィン類に富んだ飽和物に変換される。芳香族化合物、硫黄および窒素を含有する種などの反応種は、実質的になくなり、直鎖パラフィンなどの低温性能に関する問題を引き起こす化学種もまた排除される。最後に、この論文は、商業用のIII類製造からの原料および生産物の分析の結論を示し、そこには、大半の原料分子が、最新の全水素化処理されたIII類基油を製造するために使用される3種の触媒プロセスによって合成的に変えられることが示されている。これらの結果は、全水素化処理経路を利用して製造された最新のIII類基油が、本質的には、人工的または合成的であり、従来技術の水素化分解された基油と比較して有利であるという主張を支持する。さらに、それらの潤滑剤用途での高い性能によって、ポリアルファオレフィン(PAO)などの伝統的な合成物と、多くの場合に調合される高性能生産物に使用される。全水素化処理された合成物は、従来のIII類基油に分類されることが知られているが、合成プロセスのために、それらは分類IIIの範囲より優れるように改善され(化学的および物理的に)構築され得る。
【0010】
第8回燃料潤滑剤年次アジア会議および展示会(the 8th Annual Fuels & Lubes Asia Conference and Exhibition)、2002年1月29日〜2月1日、シャングリラホテル、シンガポールで提出された「基油供給/需要および品質問題(Base Oil Supply/Demand And Quality Issues)」と題したデーブ・クレーマー(Dave Kramer)、シェブロン・テキサコ・グローバル・ルーブリカンツ(Chevron Texaco Global Lubricants)の別の論文では、「2007年までに、フィッシャー・トロプシュ基油(FTBO)は基油品質において次の飛躍的進歩として登場すべきである。これらの油は、PAOよりも高いVIを有し、あらゆる点でPAOおよび既存のIII類より性能が優れていなくてはいけない。フィッシャー・トロプシュ・プロジェクトが、環境的および原油生産の誘因によって推進されるため、生産されるFTBOの出来高は、III類およびPAOに対する需要を大いに上回るかもしれない。クライン・アンド・カンパニー(Kline & Company)は、FTBO供給が、2015年までに10MM MT、即ち、全基油市場の約30%まで増大するであろうと推定している。」と述べ、別のプロセスを提起している。
【0011】
フィッシャー・トロプシュ・プロセスは、一酸化炭素および水素が種々の形態の液体炭化水素に変換される触媒化学反応である。使用される典型的な触媒は、鉄およびコバルトに基づいている。このプロセスの主目的は、合成潤滑油または合成燃料として使用するための合成石油代替物を生産することである。
【0012】
本来のフィッシャー・トロプシュ・プロセスは、下記の化学反応式によって説明される:
CH4+1/2O2→2H2+CO
(2n+1)H2+nCO→Cn2n+2+nH2
一酸化炭素および水素の混合物は、合成ガス(synthesis gasまたはsyngas)と呼ばれている。結果的に得られる炭化水素生産物が精製され、所望の合成燃料が生産される。二酸化炭素および一酸化炭素は、石炭燃料および木質燃料の部分酸化によって発生する。固形材料の非酸化的熱分解はフィッシャー・トロプシュ転換を行なうことなく、燃料として直接使用できる合成ガスを生産する。鉱油の様な燃料、潤滑剤またはワックスが必要とされるとき、フィッシャー・トロプシュ・プロセスを適用することができる。最後に、水素生産を最大限にする場合、水性ガスシフト反応を実行し得て、二酸化炭素および水素のみが生じ、生産ラインに炭化水素は残存しない。
【0013】
フィッシャー・トロプシュの気体から液体(FTGTL)は、天然ガスを合成油に変換するためのプロセスであり、次に、燃料および他の炭化水素系生産物にさらに処理することができる。簡潔に言うと、FTGTLプロセスは、天然ガス分子を分断し、あたかも原油を含むかのように、それらをより長い鎖状分子に再構築する。しかしながら、この特別な変換プロセスにより、結果物は、硫黄、芳香族化合物および金属などの汚染物が実質的に存在しない非常に純粋な合成原油となる。次に、この合成原油は、ディーゼル燃料、ナフサ、ワックスおよび他の液体石油などの生産物または特製品に精製することができる。
【0014】
気体から油への変換で作られる潤滑剤基油原料は、イソパラフィンと呼ばれる。イソパラフィンは、現在、APIのIII類およびIV類基油原料から混和される潤滑剤用に基油としての使用に実施可能な代替物となるようである。III類およびIV類基油原料に対する主な需要は、自動車製造業者からのものである。潤滑剤性能パラメータは、内燃機関設計者に課せられた排出削減およびエネルギー効率の増加に対する更なる要求によって重視されている。高品質基原料は、新しい要求を満足させる潤滑剤の調合に不可欠である。
【0015】
イソパラフィンは、良好な粘度特性(ビスコメトリクス(viscometrics))、酸化耐性および低温下でのコールドクランキング状態を含む内燃機関の操作条件に必要な性能タイプを提供するようである。これらの原料の有用な長期潤滑剤への開発は、原油由来の生産物に代わる物として採用することができる。
【0016】
産業用機械は、多くの場合、クランクケースエンジン油として同じ一般的な温度および油膜強度範囲において潤滑剤性能を必要とする。
【0017】
FTGTLプロセスは、2つの主要工程に基づいている:
1.天然ガスの合成ガスへの変換−第1工程では、天然ガスは、独自の触媒部分酸化を用いるプロセスで酸素と反応させて、主に一酸化炭素および水素からなる合成ガスが生産される。
2.合成ガスの合成原油への変換−フィッシャー・トロプシュ(F−T)化学に基づく反応では、合成ガスは、独自の触媒を含有するリアクターに流入され、それを粘性のある液体炭化水素に変換する。このプロセスはまた、石炭およびバイオマス等として他の原料から生産することができる。このプロセスに有用な触媒は、限定されないが、下記の文献に列挙されたものを含む。
【0018】
フィッシャー・トロプシュ基油を対象とした文献は以下の通りである:エクソンモービル・ルブリカンツ・アンド・ペトロレウム・スペシャルティーズ(ExxonMobil Lubricants & Petroleum Specialties)のエックス・ビー・コクス(X B Cox)およびアーブ・R.ビールバッハ(Erv R.Burbach)およびエクソンモービル・リサーチ・アンド・エンジニアリング(ExxonMobil Research and Engineering)のジェラード・C.ラーン(Gerard C.Lahn)による「GTLおよび他の高品質潤滑剤基油原料の見通し(The Outlook for GTL and other High Quality Lube Basestocks)」、独立潤滑剤製造業協会(Independent Lubricant Manufacturers Association)のカルラ・マンゴーン(Carla Mangone)による機械潤滑Machinery Lubrication)の「気体から液体へ−変換は非常に純粋な基油を生産する(Gas to Liquids−Conversions Produce Extremely Pure Base Oils)」、2005年4月6〜7日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれたスエズ東部の見通し−潤滑剤および基油会議(the Outlook for the East of Suez Lubricants and Baseoils Conference)で提出されたエックス・ビー・コクスおよびチャールズ・L.ベーカー(Charles L.Baker)による「GTLプロセス由来の次世代の基油(Next Generation of Base Oils From GTL Processes)」、2005年4月12日に開かれたEIA中期エネルギー見解およびモデリング会議(EIA Midterm Energy Outlook and Modeling Conference)で提出されたアンドリュー・スローター(Andrew Slaughter)による「非従来型油に高まる関心(A Growing Focus on Unconventional Oil)」、2002年1月29日〜2月1日にシンガポールで開かれた第8回燃料潤滑剤年次アジア会議および展示会で提出されたデーブ・クレーマーによる「基油供給/需要および品質問題」、および2003年6月にプラハで開かれた第26回IAEE国際年次大会で提出されたイラジェ・アイザック・ラーミン(Iraj Isaac Rahmin)博士による「気体から液体の技術:最近の進歩、経済学、展望(Gas−to−Liquid Technologies:Recent Advances,Economics,Prospects)」。これらの文献では、生分解性の植物油性潤滑剤の調製のための原料としてのフィッシャー・トロプシュ基油の使用について教示していない。特許文献には、米国特許第6,855,737号、米国特許第6,833,065号、米国特許第6,822,005号、米国特許第6,822,008号、米国特許第6,833,065号、米国特許第6,863,802号および米国特許第6,880,635号が挙げられる。
【0019】
【表1】

III類に代わる潤滑剤基油原料の望ましい特性
【0020】
植物油およびIII類油を用いて形成させることが可能な潤滑剤を全体として開示する特許には、米国特許第6,103,673号;米国特許第6,251,840号;米国特許第6,451,745号;および米国特許第6,528,458号が挙げられ、それら全ては、ルーブリゾール・コーポレーション(Lubrizol Corporation)(オハイオ州ウィクリフ(Wickliffe,OH))によるものである。追加の特許には、米国特許第6,303,547号および米国特許第6,444,622号が挙げられ、両者ともエチル・コーポレーション(Ethyl Corporation)(バージニア州リッチモンド(Richmond,VA))によるものである。
【0021】
米国特許第6,528,458号は、(a)潤滑粘度の油;(b)2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(DMTD)、DMTDの誘導体またはそれらの混合物;(c)摩擦調整剤;および(d)分散剤を含む組成物が、連動および非連動の部分的なトランスミッションシャフトの同期化および湿式クラッチの連動を含むプロセスによってギヤシフトが行われる複数個の湿式クラッチおよび複数個の部分的なパワートランスミッションシャフトを有するトランスミッションを潤滑させるために有用であることを開示している。
【0022】
米国特許第6,451,745号は、(a)潤滑粘度の油;(b)分散剤;および(c)合成洗剤の組成物を無段変速トランスミッションに供給することによって無段変速トランスミッションを潤滑させることができることを開示している。分散剤(b)および合成洗剤(c)の少なくとも1つは、ホウ酸処理された種であり、組成物中に存在するホウ素量は、前記トランスミッション中に使用されるときに改善された摩擦および固着防止特性をこの組成物に与えるのに十分である。
【0023】
米国特許第6,444,622号は、少なくとも1つのC5〜C60カルボン酸とグアニジン、アミノグアニジン、尿素、チオ尿素およびそれらの塩を含む群から選択される少なくとも1つのアミンとの反応生成物およびリン含有分散剤との混合物が、ギヤ油添加剤として有用であることを開示している。
【0024】
米国特許第6,303,547号は、少なくとも1つのC5〜C60カルボン酸とグアニジン、アミノグアニジン、尿素、チオ尿素およびそれらの塩を含む群から選択される少なくとも1つのアミンとの反応生成物が、ギヤ油添加剤として有用であることを開示している。
【0025】
米国特許第6,251,840号は、使用時に改善された耐摩耗および発泡防止特性を示す潤滑性/機能性流体組成物を開示している。この改善は、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールおよびそれらの誘導体とシリコーンおよび/またはフルオロシリコーン発泡防止剤との併用に起因する。
【0026】
米国特許第6,103,673号は、潤滑剤粘度の油;せん断安定な粘度調整剤;少なくとも0.1重量パーセントの過剰塩基の金属塩;少なくとも0.1重量パーセントの少なくとも1つのリン化合物;および0.1〜0.25重量パーセントの少なくとも2つの摩擦調整剤の組み合わせで構成される組成物は、無段変速トランスミッション用の改善された流体を提供することを開示している。少なくとも1つの摩擦調整剤は、少なくとも10個の炭素原子を有する脂肪酸の亜鉛塩、ヒドロカルビル基に少なくとも12個の炭素原子を含有するヒドロカルビルイミダゾリンおよびホウ酸処理されたエポキシドを含む群から選択される。摩擦調整剤の総量は、ASTM−G−77によって110℃で測定すると、少なくとも約0.120の金属対金属の摩擦係数を示す量に限定される。
【0027】
文献は、植物油およびFTGTL合成基油の組合せを含有する実用的な潤滑剤調合物を開示せず、したがって、このような調合物と関連する利点についての教示も示唆もしない。廃棄および/または使用済みの潤滑剤に関係する環境問題はまた取り組む必要がある事項である。例えば、生分解抵抗性潤滑剤は、環境中に不適切に廃棄されるかまたは偶発的に排出されると、生態系にストレスを与え得る。このような物質の侵襲性および持続性は、水生環境および埋め立て環境において健康上の問題であり続ける。これらの問題を克服するために、より高い度合の微生物による分解性を有する改善された潤滑剤を提供する新規な原料および/または新規な原料の組み合わせを探索する研究努力が続けられる。
【0028】
生分解性潤滑剤を教示する特許には、米国特許第5,736,493号;米国特許第6,383,992号;米国特許第5,863,872号;米国特許第5,990,055号;米国特許第6,624,124号;米国特許第6,620,772号;および米国特許第6,534,454号が含まれ、それら全てはリニューアブル・ルーブリカンツ社(Renewable Lubricants,Inc.)(オハイオ州ハートビル(Hartville,OH))によるものであり、これら特許の内容は、参照により本明細書中に援用される。これらの特許には、有効な潤滑剤組成物を提供するための天然油、合成油および酸化防止剤の組み合わせが説明されている。植物油性組成物の重要性およびそれらの生分解性を教示する他の関連特許には、日本三菱石油株式会社に付与された米国特許第6,300,292号が含まれる。上述された潤滑油は、効率的な潤滑性および生分解性を有するが、たゆまぬ向上の精神において、代替組成物およびそれによる改善が必要とされている。
【0029】
したがって、粘度指数、流動点、低温ポンプ圧送性、低揮発性、酸化安定性、電気絶縁値、種々な粘度を調合する能力および微生物による分解性を含む機能強化された特性を提供する、FTGTL合成経路によって製造される合成油を含む植物油性潤滑剤に対する必要性が残されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、FTGTL合成基油を用いる植物油性潤滑剤に関する。これらの潤滑剤は、粘度指数、流動点、低温ポンプ圧送性、低揮発性、酸化安定性、電気絶縁値および微生物による生分解性を含む機能強化された性質を提供することが示される。
【0031】
本発明の潤滑剤は:1)天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油:2)0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量、90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物、120に等しいかまたはそれを超える粘度指数を有する少なくとも1つのFTGTL合成基油:および3)少なくとも1つの酸化防止剤を含む。
【0032】
これらの潤滑剤は、機能強化された微生物による生分解性を有するものとして特徴付けられ、環境に優しい。いくつかの組成物は、約60%を超えるFTGTL合成基油含量を有し、最終の生分解性試験方法ASTM D−5864 Pw1に合格することができる。最終の生分解性Pw1は、ASTM D−5864によって規定される最も速く、最も完全な生分解性タイプである。さらに、本発明の組成物は、優れた流動特性および約120〜200という非常に高い粘度指数を有し、作動油、トランスミッション流体、エンジン油、ギヤ油、削岩機油、循環油、滴下油、スピンドル油、コンプレッサー油、グリース基油、腐食防止油、熱伝導油、ケーブル油、チェーン油、汎用油、金属工作油、食品用油、および電気絶縁油として特に有用である。
【0033】
別の側面では、本発明は、1)天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油を用意する工程;2)0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量、90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物、120に等しいかまたはそれを超える粘度指数を有する少なくとも1つのFTGTL合成基油を用意する工程;3)少なくとも1つの酸化防止剤を用意する工程;次に、1)、2)および3)を混和して植物油性潤滑剤を形成する工程を含む前記植物油性潤滑剤を調製する方法を開示する。
【0034】
本発明の別の側面は、a)1)天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油、2)0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量、90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物、120に等しいかまたはそれを超える粘度指数を有する少なくとも1つのFTGTL合成基油;3)少なくとも1つの酸化防止剤を含む少なくとも1つの潤滑剤を用意する工程;次に、b)有効量の前記潤滑剤を機械装置に添加する工程を含む前記機械装置の潤滑を向上させる方法に関する。
【0035】
本発明の1つの側面によれば、潤滑剤組成物には、天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油;約0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量および約90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物を有する少なくとも1つの合成基油であって、一酸化炭素および水素が液体炭化水素に変換される触媒化学反応によって作られる前記合成基油;および少なくとも1つの酸化防止剤が含まれる。
【0036】
本発明の別の側面によれば、植物油は、ヒマワリ油、カノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、パーム油、ココヤシ油、ヒマシ油、綿実油、レスケレラ油、クランベ油、ベニバナ油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸カノーラ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸トウモロコシ油、高オレイン酸落花生油、高オレイン酸綿実油、高オレイン酸ベニバナ油およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0037】
本発明の別の側面によれば、植物油は、全重量に対して約10%を超える量で存在する。
【0038】
本発明の別の側面によれば、植物油は、全重量に対して約90%未満の量で存在する。
【0039】
本発明の別の側面によれば、植物油は、全重量に対して約10%〜約90%の範囲で存在し、この基油は、FTGTLプロセスによって作られる。
【0040】
本発明の別の側面によれば、植物油は、全重量に対して約30%〜約70%の範囲で存在する。
【0041】
本発明の別の側面によれば、植物油は、全重量に対して約40%〜約60%の範囲で存在する。
【0042】
本発明の別の側面によれば、基油は、FTGTL合成基油である。
【0043】
本発明の別の側面によれば、基油は、全重量に対して約10%を超える量で存在する。
【0044】
本発明の別の側面によれば、基油は、全重量に対して約90%未満の量で存在する。
【0045】
本発明の別の側面によれば、基油は、全重量に対して約10%〜約90%の範囲で存在する。
【0046】
本発明の別の側面によれば、基油は、全重量に対して約30%〜約70%の範囲で存在する。
【0047】
本発明の別の側面によれば、基油は、全重量に対して約40%〜約60%の範囲で存在する。
【0048】
本発明の別の側面によれば、酸化防止剤は、アミン類、フェノール類およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0049】
本発明の別の側面によれば、酸化防止剤は、全重量に対して約0.01%〜約5.0%の範囲で存在する。
【0050】
本発明の別の側面によれば、酸化防止剤は、全重量に対して約0.25%〜約1.5%の範囲で存在する。
【0051】
本発明の別の側面によれば、酸化防止剤は、全重量に対して約0.5%〜約1.0%の範囲で存在する。
【0052】
本発明の別の側面によれば、組成物は、少なくとも1つの添加剤をさらに含み、この添加剤は、耐摩耗防止剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、防錆剤、腐食防止剤、流動点降下剤、粘着付与剤、粘度調整剤、金属不活性化剤、発泡防止剤、乳化剤および乳化破壊剤を含む群から選択される。
【0053】
本発明の別の側面によれば、少なくとも1つの添加剤は、式:
【化1】

(式中、R9およびR10は、独立して、約1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は、独立して、水素または約1〜約18個の脂肪族炭素原子を含有する脂肪族基であり、mとnとの和は3であり、Xは酸素または硫黄である)
で表されるリンアミン塩である。
【0054】
本発明の別の側面によれば、リンアミン塩は、R9は約8〜18個の炭素原子を含有し、R10は、式:
【化2】

(式中、R11は約6〜約12個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は水素であり、mは2であり、nは1であり、Xは酸素である)
であるものを含む。
【0055】
本発明の別の側面によれば、少なくとも1つの添加剤は、(下記のリストでは、異なった添加剤がセミコロンで分けられる)以下の式:
【化3】

(式中、R9およびR10は、独立して、約1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は、独立して、水素または約1〜約18個の脂肪族炭素原子を含有する脂肪族基であり、mとnとの和は3であり、Xは酸素または硫黄である)
を有するリンアミン塩;式:
【化4】

{式中、R9およびR10は、独立して、約1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は、独立して、水素または約1〜約18個の脂肪族炭素原子を含有する脂肪族基であり、mとnとの和は3であり、Xは酸素または硫黄であり、式中、R9は、約8〜18個の炭素原子を含有し、R10は、式:
【化5】

(式中、R11は約6〜約12個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は水素であり、mは2であり、nは1であり、Xは酸素である)
である}
有するリンアミン塩;式:
【化6】

(式中、R19、R20およびR21は、独立して、水素、1〜約12個の炭素原子を含有する脂肪族基もしくはアルコキシ基、またはアリールもしくはアリールオキシ基であり、アリール基はフェニルまたはナフチルであり、アリールオキシ基はフェノキシまたはナフトキシであり、Xは酸素または硫黄である)
を有するリン化合物;式:
【化7】

(式中、R8は、1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基である)
を有するサルコシンのN−アシル誘導体を含む群から選択される。一実施態様では、R8は、6〜24個の炭素原子を含有し、一実施態様では、12〜18個の炭素原子を含有する。サルコシンのN−アシル誘導体の添加剤の例は、N−メチル−N−(1−オキソ−9−オクタデセニル)グリシンであり、上記の式中、R8は、ヘプタデセニル基;イミダゾリン;トリアゾール;置換トリアゾール;トル−トリアゾール;アルキル化ポリスチレン;ポリメタクリル酸アルキル;エチレン酢酸ビニル;ポリイソブチレン;ポリメタクリレート;オレフィン共重合体;スチレン無水マレイン酸共重合体のエステル;水素化スチレン−ジエン共重合体;水素化ラジアルポリイソプレン;アルキル化ポリスチレン;ヒュームドシリカ;複合エステル;および食品用粘着付与剤である。
【0056】
本発明の別の側面によれば、耐摩耗防止剤は全重量の約0.1%〜約4%であり、腐食防止剤は全重量の約0.01%〜約4%であり、金属不活性化剤は全重量の約0.05%〜約0.3%であり、流動点降下剤は全重量の約0.2%〜約4%であり、粘度調整剤は全重量の約0.5%〜約30%である。
【0057】
本発明の別の側面によれば、腐食防止剤は全重量の約0.05%〜約2%であり、金属不活性化剤は全重量の約0.05%〜約0.2%であり、粘度調整剤は全重量の約1%〜約20%である。
【0058】
本発明の別の側面によれば、合成基油は、約120に等しいかまたはそれを超える粘度指数を有する。
【0059】
本発明の別の側面によれば、組成物は、約60〜約600分の範囲の酸化特性を有する。
【0060】
本発明の別の側面によれば、酸化特性は、約200〜約400分の範囲である。
【0061】
本発明の別の側面によれば、他の基油が使用されてもよく、基油は、合成エステル基油、ポリアルファオレフィン、全水素化処理された合成未精製油、精製油、再精製油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの油である。
【0062】
本発明の別の側面によれば、潤滑剤組成物を製造する方法では、天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油を用意する工程、約0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量および約90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物を有する少なくとも1つの合成基油であって、一酸化炭素および水素が液体炭化水素に変換される触媒化学反応によって作られる前記合成基油を用意する工程、少なくとも1つの酸化防止剤を用意する工程、植物油、基油および少なくとも1つの酸化防止剤を一緒に混和する工程が含まれる。
【0063】
本発明の別の側面によれば、潤滑剤組成物には、ヒマワリ油、カノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、パーム油、ココヤシ油、ヒマシ油、綿実油、レスケレラ油、クランベ油、ベニバナ油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸カノーラ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸トウモロコシ油、高オレイン酸落花生油、高オレイン酸綿実油、高オレイン酸ベニバナ油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油であって、約40%〜約60%の範囲で存在する前記植物油;約0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量、約90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物を有する少なくとも1つの合成基油であって、前記合成基油は、一酸化炭素および水素が液体炭化水素に変換される触媒化学反応によって作られ、約120に等しいかまたはそれを超える粘度指数を有し、約40%〜約60%の範囲で存在する前記合成基油;アミン類、フェノール類およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤であって、約0.5%〜約1.0%の範囲で存在する前記酸化防止剤;少なくとも1つの添加剤であって、耐磨耗防止剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、防錆剤、腐食防止剤、流動点降下剤、粘着付与剤、粘度調整剤、金属不活性化剤、発泡防止剤、乳化剤および乳化破壊剤を含む群から選択される前記添加剤であって、腐食防止剤が全重量の約0.05%〜約2%であり、金属不活性化剤が全重量の約0.05%〜約0.2%であり、流動点降下剤が全重量の約0.2%〜約4%であり、粘度調整剤が全重量の約1%〜約20%である前記添加剤が含まれる。
【0064】
本発明の別の側面によれば、機械装置は、少なくとも1つの潤滑剤を含有し、少なくとも1つの潤滑剤は、天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油;0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量、90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物、120に等しいかまたはそれを超える粘度指数を有する少なくとも1つの合成基油;少なくとも1つの酸化防止剤を含み、潤滑剤は、120を超える粘度指数を有し、生分解性試験方法ASTM D−5864(Pw1)に合格する。
【0065】
本発明の他の側面、目的、特徴および利点は、実施態様を説明する下記の詳細な説明から当業者には明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
本発明の組成物は、天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油を含む。本発明の一実施態様では、植物油は、ベニバナ、カノーラ、落花生、トウモロコシ、ナタネ、ヒマワリ、綿実、レスケレラ、パーム、ココヤシ、ヒマ、メドウフォームおよび大豆を含む。適した植物油は、米国特許第6,534,454B1号にさらに説明され、参照により本明細書中に援用される。本発明の別の実施態様では、入手可能であるという主な理由で、植物油は高オレイン酸ヒマワリおよび高オレイン酸カノーラである。本発明の一実施態様では、植物油は組成物中に約10パーセント〜約90パーセントの範囲で存在し、別の実施態様では、植物油は約30パーセント〜約70パーセントであり、別の実施態様では、植物油は約40パーセント〜約60パーセントである。90を超える植物含量は、なお本発明の範囲内にあることが意図されるが、酸化および低温安定性における低下の点であまり望ましくない。
【0067】
本発明の組成物は、少なくとも1つのFTGTL合成基油を含む。FTGTL合成基油は、この業界では、サソール(Sasol)、シェル(Shell)、モスガス(Mossgas)、BP、コノコフィリップス(ConocoPhillips)のような基油製造業者から入手でき、文献には多くの他の植物が列挙され、様々な粘度範囲で製造することができるが、通常、100℃で4〜5センチストークス(cSt)であり、エンジン油を調合するためのIII類基油に匹敵する。FTGTL基油は、組成物中に約10パーセント〜約90パーセント、一実施態様では約30パーセント〜約70パーセント、別の実施態様では約40パーセント〜約60パーセントの範囲で存在する。80パーセントを超えるFTGTL合成基油含量は、FTGTL基油原料がバイオマス材料から製造されない限り、生物系材料の低下の点であまり望ましくない。
【0068】
本発明の組成物は、少なくとも1つの酸化防止剤を含む。本発明の一実施態様では、酸化防止剤は、アミンおよび/またはフェノールを含むが、他の酸化防止剤を使用してもよい。酸化防止剤は、参照により本明細書中に援用される米国特許においてさらに詳細に説明されている。酸化防止剤は、組成物中に約.01パーセント〜約5.0パーセント、一実施態様では約0.25パーセント〜約1.5パーセント、別の実施態様では約0.5パーセント〜約1.0パーセントの範囲で存在する。潤滑剤は、約60〜約600分、一実施態様では約200分〜約400分の範囲のASTM D−2272を用いる酸化特性を有する。この試験方法では、同じ組成(基材原料および添加剤)を有する新しいタービン油および使用中のタービン油の酸化安定性を評価するために、水および銅触媒コイルの存在下150℃で、または選択された基準に従って、酸素加圧ボンベを使用する。
【0069】
他の基油
必要に応じて、本発明の潤滑剤は、(1)合成エステル基油、(2)ポリアルファオレフィン、(3)全水素化処理された合成物、または(4)未精製油、精製油もしくは再精製油、(1)、(2)、(3)および(4)の混合物を含む他の油を含有してもよい。これらの基油は、参照により本明細書中に援用される米国特許にさらに説明されている。これらの基油は、組成物中に約10パーセント〜約80パーセント、一実施態様では約30パーセント〜約70パーセント、別の実施態様では約40パーセント〜約60パーセントの範囲で存在することができる。
【0070】
必要に応じて、本発明の潤滑剤は、耐摩耗防止剤、錆/腐食防止剤、流動点降下剤、粘着付与剤、増粘剤、金属不活性化剤、極圧(EP)添加剤、摩擦調整剤、発泡防止剤、乳化剤または乳化破壊剤を含む他の成分/添加剤を含有してよい。これらの基油および他の基油、成分および添加剤は、参照により本明細書中に援用される米国特許第5,990,055号、米国特許第5,863,872号、米国特許第5,736,493号、米国特許第6,543,454B1号、米国特許第6,774,091号、米国特許出願第10/939,765号(米国特許仮出願60/502,669号)にさらに説明されている。
【0071】
本発明における添加剤は、下記を含む:
【0072】
耐摩耗防止剤、極圧添加剤および摩擦調整剤
金属表面上の摩耗を防止するために、本発明は、耐摩耗防止剤/EP添加剤および摩擦調整剤を利用する。耐摩耗防止剤、EP添加剤および摩擦調整剤は、種々の販売業者および製造業者から在庫に応じてすぐに入手できる。これらの添加剤のいくつかは、1より多くの課題を実行することができ、食品用であるいずれかのものを本発明において利用することができる。耐摩耗、EP、摩擦低下および腐食防止を提供することができる1つの食品用生産物は、式:
【化8】

(式中、R9およびR10は、独立して、約1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は、独立して、水素または約1〜約18個の脂肪族炭素原子を含有する脂肪族基であり、mとnとの和は3であり、Xは酸素または硫黄である)
で表わされるリンアミン塩である。一実施態様では、R9は、約8〜18個の炭素原子を含有し、R10は、式:
【化9】

(式中、R11は、約6〜約12個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は水素であり、mは2であり、nは1であり、Xは酸素である)
である。1つのこのようなリンアミン塩の例としては、チバガイギー(Ciba−Geigy)から市販されているイルガルーブ(Irgalube)(登録商標)349がある。
【0073】
別の食品用耐摩耗/EP防止剤/摩擦調整剤は、式:
【化10】

(式中、R19、R20およびR21は、独立して、水素、1〜約12個の炭素原子を含有する脂肪族もしくはアルコキシ基、またはアリールもしくはアリールオキシ基であり、アリール基は、フェニルまたはナフチルであり、アリールオキシ基はフェノキシまたはナフトキシであり、Xは酸素または硫黄である)
で表わされるリン化合物である。1つのこのようなリン化合物の例としては、商品名イルガルーブ(登録商標)TPPTでチバガイギーから市販されているトリフェニルホスホチオナート(TPPT)がある。
【0074】
耐摩耗防止剤、EPおよび摩擦調整剤は、通常、潤滑剤組成物の約0.1〜約4重量パーセントであり、別々にまたは組み合わせて使用してもよい。
【0075】
腐食防止剤
金属表面の腐食を防ぐために、本発明では腐食防止剤を利用する。腐食防止剤は、種々の販売業者および製造業者から在庫に応じてすぐに入手できる。食品用であるいずれかの腐食防止剤を本発明において利用することができる。
【0076】
[0076]腐食防止剤は、通常、潤滑剤組成物の約0.01〜約4重量パーセントである。
【0077】
一実施態様では、腐食防止剤は、腐食添加剤および金属不活性化剤で構成される。腐食防止剤および金属不活性化剤は、食品用であってもよく、FDA規制に適合するものであってもよい。1つの添加剤は、式:
【化11】

(式中、R8は1〜約24個までの炭素原子を含有する脂肪族基である)
を有するサルコシンのN−アシル誘導体である。一実施態様では、R8は、6から24個の炭素原子を含有し、別の実施態様では、12〜18個の炭素原子を含有する。サルコシンのN−アシル誘導体の添加剤の例は、R8がヘプタデセニル基であるN−メチル−N−(1−オキソ−9−オクタデセニル)グリシンである。この誘導体は、チバガイギーから商品名サルコシル(Sarkosyl)(登録商標)Oで入手できる。
【0078】
別の添加剤は、式:
【化12】

(式中、R17は1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R18は1〜約24個の炭素原子を含有するアルキレン基である)
で表わされるイミダゾリンである。一実施態様では、R17は12〜18個の炭素原子を含有するアルケニル基である。一実施態様では、R18は1〜4個の炭素原子を含有し、別の実施態様では、R18はエチレン基である。1つのこのようなイミダゾリンの例は、式:
【化13】

を有し、チバガイギーから商品名アミン(Amine)Oで入手できる。
【0079】
典型的には、腐食防止剤は、潤滑剤組成物の約0.01〜約4重量パーセントである。添加剤がサルコシンのN−アシル誘導体であれば、一実施態様では、それは潤滑剤組成物の約0.1〜約1重量パーセントである。添加剤がイミダゾリンであれば、一実施態様では、それは潤滑剤組成物の約0.05〜約2重量パーセントである。潤滑剤には、1より多くの腐食添加剤が含まれ得る。例えば、潤滑油は、サルコシンのN−アシル誘導体とイミダゾリンの両方を含むことができる。
【0080】
金属不活性化剤
1つの金属不活性化剤は、トリアゾールまたは置換トリアゾールである。例えば、トリ−トリアゾールまたはトル−トリアゾールは、本発明において利用することができる。しかしながら、一実施態様では、トリアゾールは、チバガイギーによって商品名イルガメット(Irgamet)(登録商標)39で市販されている食品用トリアゾールであるトル−トリアゾールである。
【0081】
典型的には、金属不活性化剤は、潤滑剤組成物の約0.05〜約0.3重量パーセントである。金属活性化剤がイルガメット39であれば、それは潤滑剤組成物の約0.05〜約0.2重量パーセントである。
【0082】
耐摩耗防止剤および腐食防止剤を個別に説明してきたが、それらは、単一の化学添加剤に含むことができる。例えば、耐摩耗防止剤と腐食防止剤の両方は、ルーブリゾールコーポレーションから入手できる非食品用添加剤ルーブリゾール(登録商標)5186Bに含まれる。一実施態様では、ルーブリゾール(登録商標)5186Bは、潤滑剤組成物の約0.5〜約2重量パーセントであり、別の実施態様では潤滑剤の約1.25重量パーセントである。耐摩耗防止剤と腐食防止剤の両方が非食品用添加剤に含まれている別の例は、チバガイギー3050Aである。一実施態様では、チバガイギー3050Aは、潤滑剤組成物の約0.4〜約1.75重量パーセントであり、別の実施態様では、潤滑剤の約0.95重量パーセントである。
【0083】
流動点降下剤
低温での植物油、特に、高い一価不飽和度含量を有する植物油の自然硬化がある。これは、ハチミツまたは糖蜜の低温での硬化に類似する。植物油の低温での「流動性」または「流下性」を維持するためには、流動点降下剤を加えることが必要になる。
【0084】
流動点降下剤は、種々の販売業者および製造業者から在庫に応じてすぐに入手できる。いずれかの流動点降下剤を本発明において利用することができる。しかしながら、一実施態様では、流動点降下剤は、アルキル化ポリスチレンまたはポリメタクリル酸アルキルである。
【0085】
アルキル化ポリスチレンの製造においては、2種の異なる反応経路が想定される。第1の経路には、塩化アルキルまたはアルケンのいずれかをスチレンと反応させて、アルキル化スチレンを形成させることが含まれる。次に、アルキル化スチレンを重合させて、アルキル化ポリスチレンを形成させる。第2の経路では、スチレンを重合させて、ポリスチレンを形成させ、プロピレンもしくはブチレンまたはそれらの混合物を重合させて、ポリプロピレン、ポリブチレンまたはポリアルキレンとしても知られるポリプロピレンとポリブチレンとの混合物を形成させる。次に、ポリアルキレンを用いてポリスチレンをアルキル化させて、アルキル化ポリスチレンを形成させる。
【0086】
アルキル化ポリスチレンに分類される1つの流動点降下剤は、インディアナ(Indiana)州46327、ハモンド(Hammond)、シェフィールドアベニュー(Sheffield Avenue)3000のフェロコーポレーション(Ferro Corporation)−石油添加剤部門(Petroleum Additives)から入手できるキール−フロー(Keil−Flo)(商標)150である。
【0087】
本発明での使用に適したポリメタクリル酸アルキルは、C〜C30のメタクリル酸エステルの重合によって製造される。これらのポリマーの製造には、ポリメタクリル酸アルキルに改善された分散性などの付加的な特性を提供する窒素含有官能基、ヒドロキシ基および/またはアルコキシ基を有するアクリル系モノマーの使用をさらに含んでもよい。一実施態様では、ポリメタクリル酸アルキルは約10,000〜約250,000の数平均分子量を有し、一実施態様では20,000〜200,000である。ポリメタクリル酸アルキルは、フリーラジカルまたはアニオン重合の従来法によって製造することができる。ポリメタクリル酸アルキルに分類される1つの流動点降下剤は、米国ニュージャージー州デルラン(Delran,NJ)08075のローマックス(RohMax)から入手できる10−310である。
【0088】
流動点降下剤は、通常、潤滑剤組成物の約0.2〜約4重量パーセントである。
【0089】
粘度調整剤、増粘剤および粘着付与剤
場合により、潤滑剤は、限定されないが、エチレン酢酸ビニル、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメタクリレート、オレフィン共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体のエステル、水素化スチレン−ジエン共重合体、水素化ラジアルポリイソプレン、アルキル化ポリスチレン、ヒュームドシリカ、複合エステルおよび食品用油に可溶化された天然ゴムのような食品用粘着付与剤を含む粘度調整剤を含む群からの添加剤をさらに含んでもよい。
【0090】
食品用粘度調整剤、増粘剤および/または粘着付与剤の添加によって、粘着性が提供され、潤滑剤の粘度および粘度指数が改善される。いくつかの用途および環境条件によっては、装置を腐食および摩耗から保護する追加の粘着性表面フィルムが必要になる場合がある。この実施態様では、粘度調整剤、増粘剤/粘着付与剤は、潤滑剤の約1〜約20重量パーセントである。しかしながら、粘度調整剤、増粘剤/粘着付与剤は、約0.5〜約30重量パーセントであり得る。本発明で使用することができる食品用材料の例としては、オハイオ州マセドニア(Macedonia,Ohio)のファンクショナルプロダクツ社(Functional Products,Inc.)から入手できる天然ゴム粘度調整剤/粘着付与剤のファンクショナル(Functional)V−584、イリノイ州ネイパービル(Naperville,Illinois)のビーピーノースアメリカン(BP North American)からのポリブテン粘度調整剤インドポール(Indopol)H−1500がある。別の例としては、ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia,PA)のイノレックスケミカル社(Inolex Chemical Co.)からの粘度調整剤、流動点降下剤および摩擦調整剤の多機能生産物でもある複合エステルCG5000がある。
【0091】
本発明で説明される潤滑剤は、作動油、トランスミッション流体、エンジン油、ギヤ油、削岩機油、循環油、滴下油、スピンドル油、コンプレッサー油、グリース基油、腐食防止油、熱伝導油、ケーブル油、チェーン油、汎用油、金属工作油、食品用油および電気絶縁油を含む用途に有用である。
【0092】
本発明で説明される潤滑剤は、その成分が機械的撹拌を用いて混合される単純な混和手順を用いて製造することができる。混和化プロセスの前に、混和化および/または混合プロセスを改善するために成分を加熱してもよい。
【0093】
試験方法
本発明の潤滑剤組成物を特徴付けるために、下記の試験方法が使用される:
【0094】
調合番号 1 ISO 32 作動流体
40℃での粘度 ASTM D−4453 31 cSt
100℃での粘度 ASTM D−4453 6.85 cSt
粘度指数 ASTM D−22707 190
4球摩耗 ASTM D−41729 0.40
錆 ASTM D−6654 合格
酸化 ASTM D−22728 290
低温ポンプ圧送性 ASTM D−468410 4000 cp
解乳化 ASTM D−14016 40/40/0
引火点 ASTM D−921 335℃
流動点 ASTM D−972 −39℃
電気絶縁値 ASTM D−8775 20KV
生分解性 ASTM D−586411 70%
【0095】
1.クリーブランドオープンカップ(Cleveland Open Cup)試験装置による引火点および発火点−この試験方法には、手動のクリーブランドオープンカップ装置または自動クリーブランドオープンカップ装置による石油生産物の引火点および発火点の測定が記載されている。この試験方法は、燃料油を除いて、79℃(175°F)を超えて400℃(華氏752°F)未満の引火点を有するすべての石油生産物に適用可能である。
【0096】
2.石油生産物の流動点−この試験方法では、いずれかの石油生産物に使用することが意図される。黒色試料、シリンダー原料および非分留燃料油に適した手順が中に記載されている。
【0097】
3.透明液体および不透明液体の動粘度(動粘度の計算)−この試験方法は、ある容積の液体が較正されたガラス毛管粘度計を通して重力下で流れる時間を測定することによって、透明と不透明液体の両方の石油生産物の動粘度νの測定の手順を特定する。動力学粘度ηは、動粘度νに液体の密度ρを乗ずることによって得ることができる。この試験方法から得られる結果は、試料の挙動に依存し、せん断応力とせん断速度が主として比例する(ニュートン流動作用)液体への適用が意図される。しかしながら、粘度がせん断速度によって有意に変化すれば、異なる結果が異なるキャピラリ径である粘度計から得られることがある。ある条件下では、非ニュートン作用を示す残留燃料油用の手順および精度値が含まれている。この試験方法によって対象とされる動粘度の範囲は、全ての温度で、0.2〜300000mm2/sである。
【0098】
4.水の存在下での防止された鉱油の防錆特性−この試験方法は、水が油に混入された場合、鉄部分の錆予防に役立つ防止された鉱油、特に蒸気タービン油の能力の評価を対象とする。この試験方法はまた、作動油および循環油などの他の油を試験するために使用される。水より重い流体を試験するための手順が提供される。リン酸エステル型などの合成流体の場合、プラスチックホルダーおよびビーカーカバーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの化学抵抗性材料で製造されるべきである。
【0099】
5.円板電極を用いる絶縁液体の絶縁破壊電圧の標準試験法−この試験方法は、絶縁液体試料の電気破壊電圧を測定するためのものである。破壊試験は、45〜65Hzの電力周波数範囲の交流(AC)電圧を用いる。この試験方法は、製造業者から供給されたとき、ろ過も乾燥もされていない絶縁液体が、円板電極破壊電圧要件を満たすか判断するために使用される。この手順は、必要な反復破壊試験の間隔に任意の不溶性分解生成物が容易に沈降する液体の破壊電圧を測定するために使用される。これらの液体は、変圧器、ケーブルおよび類似の装置で絶縁液体および冷却液体として使用される石油系油類、炭化水素およびアスカレル(PCB)を含む。この手順は、試料中への放電エネルギーが、5回連続の破壊で20mJ(ミリジュール)未満/破壊という条件で、試験方法D2225に特定されるシリコーン流体物の絶縁破壊を得るために使用されてもよい。
【0100】
6.石油系油類および合成流体の水分離性−この試験方法は、石油系油類または合成流体の水から分離する能力の測定を対象とする。この試験方法は、40℃で28.8〜90cSt(mm2/s)の粘度を有する蒸気タービン油のために特に開発されたものであるが、種々の粘度を有する他の型の油および合成流体を試験するために使用することができる。しかしながら、40℃で90cSt(mm2/s)より粘度が高い生産物を試験する場合には、試験温度を82±1℃に上げることが推奨される。油と水の混合が不十分になるより高い粘度の油に関しては、試験方法D2711が推奨される。25℃などの他の試験温度はまた使用されてもよい。相対密度が水のものより大きい合成流体を試験する場合には、手順は変らないが、水は、おそらくエマルジョンまたは液体の上に浮かぶことに注意すべきである。
【0101】
7.40℃および100℃の動粘度から粘度指数を計算するための標準的技法−この試験方法は、潤滑油などの石油生産物および関連材料の粘度指数を40℃および100℃での動粘度から計算するための手順を明記する。
【0102】
8.回転圧力容器による蒸気タービン油の酸化安定性−この試験方法は、酸素加圧容器を利用して、水および銅触媒コイルの存在下、150℃で同じ組成(基油原料および添加剤)を有する新しいタービン油および使用中のタービン油の酸化安定性を評価する。
【0103】
9.潤滑性流体の摩耗予防特性(4球法)−この試験方法は、4球摩耗試験機によって、すべり接触する流体潤滑剤の耐摩耗性の予備的評価を行うための手順を対象としている。
【0104】
10.低温でのエンジン油の降伏応力および見かけ粘度の測定−この試験方法は、制御された速度で45時間を超える時間にわたって、−10℃と−40℃との間の最終試験温度に冷却後、エンジン油の降伏応力および粘度の測定を対象とする。粘度測定は、525Paのせん断応力で0.4〜15s-1のせん断速度で行われる。この試験方法は、時として精製油と呼ばれる未使用の油に適用され、小型重量および大型重量エンジン用途のために設計されている。使用済みディーゼル油に適していることも示されている。この試験方法では、粘度の単位としてミリパスカル秒(mPa・s)を使用する。
【0105】
11.潤滑剤または潤滑剤成分の好気的水性生分解性を測定するための標準試験法−この試験法は、実験室条件下で接種原に暴露されたときの完全に調合された潤滑剤またはそれらの成分の好気的水性生分解の程度の測定を対象とする。この試験方法は、例えば、多くの潤滑剤で見られるような水不溶性材料および複合混合物を試験することに伴う困難に具体的に対処するよう意図される。この試験方法は、揮発性でなく、接種原中に存在する生物に対して試験濃度で抑制的でない全ての潤滑剤に適用できるように設計されている。生分解性評価のパーセントは、ASTM D−6046、表2の環境持続性分類−好気的淡水に説明される。持続性の表示は、Pw1(28日で%CO2≧60%である)、Pw2(84日で≧60%である)、Pw3(84日で≧40%である)およびPw4(84日で<40%である)となる。最終生分解性Pw1は、最良の評価である。
【実施例】
【0106】
調合実施例:
【0107】
1.調合 Pw1の生分解性評価を有するISO32作動流体
成分 %重量
トライサン(Trisun)90 HO 46.05
FTGTL 50.00
チバ3050A 0.95
RhMx 10−310 2.00
イルガメット39 0.10
RLI AO 0.90
40℃での粘度 29.65cSt
100℃での粘度 6.43cSt
粘度指数 178
【0108】
2.調合 最終生物分解性評価Pw1を有するISO68作動流体
成分 %重量
カノーラHO 53.85
FTGTL 30.00
CG5000 9.00
インドポールH−1500 3.00
LZ 5186B 1.25
RhMx 10−310 2.00
RLI AO 0.90
40℃での粘度 67.77cSt
100℃での粘度 12.71cSt
粘度指数 190
【0109】
上記調合物では、FTGTLは、サゾールまたはシェルから入手できるIII類油であり、CG5000は、イノレックスから入手できる合成エステルであり、LZ 5186Bは、ルーブリゾールコーポレーションから入手できる非食品用添加剤であり、RhMx 10−310は、ローマックスから入手できるポリメタクリル酸アルキルに分類される流動点降下剤であり、チバ3050Aは、チバガイギーから入手できる非食品用添加剤であり、イルガメット39は、チバガイギーから入手できる食品用トリアゾールであり、RLI AOは、リニューアブルルーブリカント社から入手できる酸化防止剤であり、トライサン90は、エーシーハムコ(AC Humko)から入手できる高オレイン酸ヒマワリ油であり、カノーラHOは、高オレイン酸カノーラ油であり、インドポールH1500は、BPノースアメリカンから入手できるポリブテン粘度調整剤である。
【0110】
上記実施例は、例証の目的のためだけに示されたものであり、本発明の範囲または実施態様を限定する意図ではない。本発明は、本明細書に添付の請求の範囲を参照することによってさらに説明される。
【0111】
上記の実施例以外で、または他に指示された場合、明細書および請求の範囲で用いられる成分量、反応条件等を表現する全ての数値は、全ての場合に、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、それとは反対に指示がない限り、本明細書および添付の請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の性質に依存して変化してもよい近似的なものである。少なくとも、請求の範囲に対する均等論の適用を限定する試みとしてではなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の桁を考慮して普通の丸め技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0112】
本発明の広範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施例中に記載される数値は、できるだけ正確に報告されている。しかしながら、いずれかの数値は、それぞれの試験測定に伴う標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を固有に含有している。
【0113】
本発明は、いくつかの実施態様を参照して説明されている。明らかに、本明細書を読み理解すれば、変更および変化に気づくであろう。全てのこのような変更および変化は、添付の請求の範囲またはそれらの均等物の範囲内にある限り含まれることが出願人に意図される。
【0114】
以上のように、本発明は記載されて、特許請求される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油;
b)約0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量および約90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物を有する少なくとも1つの合成基油であって、一酸化炭素および水素が液体炭化水素に変換される触媒化学反応によって作られる前記合成基油;および
c)少なくとも1つの酸化防止剤
によって特徴付けられる潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記植物油が、ヒマワリ油、カノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、パーム油、ココヤシ油、ヒマシ油、綿実油、レスケレラ油、クランベ油、ベニバナ油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸カノーラ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸トウモロコシ油、高オレイン酸落花生油、高オレイン酸綿実油、高オレイン酸ベニバナ油およびそれらの混合物を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記植物油が、全重量に対して約10%を超える量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記植物油が、全重量に対して約90%未満の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記植物油が、全重量に対して約10%〜約90%の範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記植物油が、全重量に対して約30%〜約70%の範囲で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記植物油が、全重量に対して約40%〜約60%の範囲で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記基油が、全重量に対して約10%を超える量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記基油が、全重量に対して約90%未満の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記基油が、全重量に対して約10%〜約90%の範囲で存在し、前記基油が、FTGTLプロセスによって作られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記基油が、全重量に対して約30%〜約70%の範囲で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記基油が、全重量に対して約40%〜約60%の範囲で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記酸化防止剤が、アミン類、フェノール類およびそれらの混合物を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記酸化防止剤が、全重量に対して約0.01%〜約5.0%の範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記酸化防止剤が、全重量に対して約0.25%〜約1.5%の範囲で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記酸化防止剤が、全重量に対して約0.5%〜約1.0%の範囲で存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、少なくとも1つの添加剤によってさらに特徴付けられ、前記添加剤は、耐磨耗防止剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、防錆剤、腐食防止剤、流動点降下剤、粘着付与剤、粘度調整剤、金属不活性化剤、発泡防止剤、乳化剤および乳化破壊剤を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの添加剤が、式:
【化1】

(式中、R9およびR10は、独立して、約1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は、独立して、水素または約1〜約18個の脂肪族炭素原子を含有する脂肪族基であり、mとnとの和は3であり、Xは酸素または硫黄である)
で表されるリンアミン塩である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記リンアミン塩が、さらに、
9が、約8〜18個の炭素原子を含有し、R10が、
【化2】

(式中、R11は、約6〜約12個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は水素であり、mは2であり、nは1であり、Xは酸素である)
であることによって特徴付けられる、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの添加剤が、式:
【化3】

(式中、R9およびR10は、独立して、約1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は、独立して、水素または約1〜約18個の脂肪族炭素原子を含有する脂肪族基であり、mとnとの和は3であり、Xは酸素または硫黄である)
を有するリンアミン塩;式:
【化4】

{式中、R9およびR10は、独立して、約1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は、独立して、水素または約1〜約18個の脂肪族炭素原子を含有する脂肪族基であり、mとnとの和は3であり、Xは酸素または硫黄であり、R9は、約8〜18個の炭素原子を含有し、R10は、
【化5】

(式中、R11は、約6〜約12個の炭素原子を含有する脂肪族基であり、R22およびR23は水素であり、mは2であり、nは1であり、Xは酸素である)
である}
を有するリンアミン塩;式:
【化6】

(式中、R19、R20およびR21は、独立して、水素、1〜約12個の炭素原子を含有する脂肪族もしくはアルコキシ基、またはアリールもしくはアリールオキシ基であり、前記アリール基は、フェニルまたはナフチルであり、前記アリールオキシ基は、フェノキシまたはナフトキシであり、Xは酸素または硫黄である)
を有するリン化合物;式:
【化7】

(式中、R8は、1〜約24個の炭素原子を含有する脂肪族基である)
を有するサルコシンのN−アシル誘導体;イミダゾリン;トリアゾール;置換トリアゾール;トル−トリアゾール;アルキル化ポリスチレン;ポリメタクリル酸アルキル;エチレン酢酸ビニル;ポリイソブチレン;ポリブテン;ポリメタクリレート;オレフィン共重合体;スチレン無水マレイン酸共重合体のエステル;水素化スチレン−ジエン共重合体;水素化ラジアルポリイソプレン;アルキル化ポリスチレン;ヒュームドシリカ;複合エステル;および食品用粘着付与剤を含む群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記耐摩耗防止剤が全重量の約0.1%〜約4%であり、前記腐食防止剤が全重量の約0.01%〜約4%であり、前記金属不活性化剤が全重量の約0.05%〜約0.3%であり、前記流動点降下剤が全重量の約0.2%〜約4%であり、前記粘度調整剤が全重量の約0.5%〜約30%である、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記腐食防止剤が全重量の約0.05%〜約2%であり、前記金属不活性化剤が全重量の約0.05%〜約0.2%であり、前記粘度調整剤が全重量の約1%〜約20%である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記合成基油が、約120に等しいかまたはそれを超える粘度指数を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、約60〜約600分の範囲の酸化特性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記酸化特性が、約200〜約400分の範囲にある、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記基油が、合成エステル基油、ポリアルファオレフィン、全水素化処理された、未精製油、精製油、再精製油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの油である、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
潤滑剤組成物を製造する方法であって、
天然植物油、合成植物油、遺伝子操作された植物油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油を用意する工程;
約0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量および約90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物を有する少なくとも1つの合成基油を用意する工程であって、前記合成基油が一酸化炭素および水素が液体炭化水素に変換される触媒化学反応によって作られる前記工程;
少なくとも1つの酸化防止剤を用意する工程;および
前記植物油、前記基油、および前記少なくとも1つの酸化防止剤を一緒に混和する工程
によって特徴付けられる前記方法。
【請求項28】
前記植物油が、ヒマワリ油、カノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、パーム油、ココヤシ油、ヒマシ油、綿実油、レスケレラ油、クランベ油、ベニバナ油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸カノーラ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸トウモロコシ油、高オレイン酸落花生油、高オレイン酸綿実油、高オレイン酸ベニバナ油およびそれらの混合物を含む群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記植物油が、全重量に対して約10%を超える量で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記植物油が、全重量に対して約90%未満の量で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
a)ヒマワリ油、カノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、パーム油、ココヤシ油、ヒマシ油、綿実油、レスケレラ油、クランベ油、ベニバナ油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸カノーラ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸トウモロコシ油、高オレイン酸落花生油、高オレイン酸綿実油、高オレイン酸ベニバナ油およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの植物油であって、約40%〜約60%の範囲で存在する前記少なくとも1つの植物油;
b)約0.03パーセントに等しいかまたはそれ未満の硫黄含量、約90パーセントに等しいかまたはそれを超える飽和物および約120に等しいかまたはそれを超える粘度指数を有する少なくとも1つの合成基油であって、前記基油が約40%〜約60%の範囲で存在し、一酸化炭素および水素が液体炭化水素に変換される触媒化学反応によって作られる前記合成基油;
c)アミン類、フェノール類およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤であって、約0.5%〜約1.0%の範囲で存在する前記酸化防止剤;および
d)少なくとも1つの添加剤であって、前記添加剤は、耐摩耗防止剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、防錆剤、腐食防止剤、流動点降下剤、粘着付与剤、粘度調整剤、金属不活性化剤、発泡防止剤、乳化剤および乳化破壊剤を含む群から選択され、前記腐食防止剤は全重量の約0.05%〜約2%であり、前記金属不活性化剤は全重量の約0.05%〜約0.2%であり、前記流動点降下剤は全重量の約0.2%〜約4%であり、前記粘度調整剤は全重量の約1%から約20%である前記添加剤
によって特徴付けられる潤滑剤組成物。

【公表番号】特表2008−540701(P2008−540701A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509249(P2008−509249)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016979
【国際公開番号】WO2006/116775
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507356257)リニューアブル リューブリカンツ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】