フィルタ、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置
【課題】アンバランス−バランス変換を行うフィルタをFBARで実現する。
【解決手段】主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、主トランスデューサと副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている。主トランスデューサ及び副トランスデューサと結合トランスデューサとの間には、音響カプラー膜11が備わる。
【解決手段】主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、主トランスデューサと副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている。主トランスデューサ及び副トランスデューサと結合トランスデューサとの間には、音響カプラー膜11が備わる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示は、フィルタ、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電材料を用いた弾性表面波(SAW)や圧電薄膜の厚み振動波を用いた共振器(FBAR)を複数組み合わせることにより、特定の周波数帯の電気信号のみを通過させる特徴を持った高周波通信用のフィルタ素子が開発されている。SAW共振器やFBARを利用したフィルタ部品は、他の誘電体フィルタやセラミックフィルタに比して外形サイズが小さく、かつ急峻なロールオフ特性を持つため、小型で、狭い比帯域幅が要求される携帯電話等の移動体通信部品に適している。SAW、FBARのラダー型フィルタを用いた応用部品として、デュープレクサがある。デュープレクサは、送受信機能を持ち送信と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。近年、特にデュープレクサでは送信フィルタはアンバランス型、受信フィルタはアンバランス入力、バランス出力で、その出力インピーダンスは100Ω等が要求されており、入力インピーダンスより高いインピーダンスとなる。
【0003】
特許文献1は、アンバランス−バランス変換及び入出力変換が可能な多重モード型SAWフィルタを開示している。特許文献2は、アンバランス−バランス変換が可能なMEMS共振器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−283425号公報
【特許文献2】特開2005−094568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1及び2には、アンバランス−バランス変換が可能なFBARは開示されていない。したがって、特許文献1及び2に開示されている構成では、高Qのフィルタを実現することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示するフィルタは、主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示によれば、アンバランス−バランス変換を行うフィルタをFBARで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】実施の形態にかかるバランスフィルタの平面図
【図1B】図1AにおけるA−A部の断面図
【図1C】図1Aに示すバランスフィルタの等価回路図
【図2A】実施例1にかかるバランスフィルタの平面図
【図2B】図2AにおけるX−X部の断面図
【図2C】図2AにおけるY−Y部の断面図
【図3】実施例2にかかるバランスフィルタの平面図
【図4A】実施例3にかかるバランスフィルタの平面図
【図4B】図4AにおけるX−X部の断面図
【図4C】図4AにおけるY−Y部の断面図
【図5A】実施例4にかかるバランスフィルタの平面図
【図5B】図5AにおけるX−X部の断面図
【図5C】図5AにおけるY−Y部の断面図
【図6】図6A〜図6Gは、キャビティ型FBARを備えたバランスフィルタの製造工程を示す断面図
【図7】図7A〜図7Fは、エアギャップ型FBARを備えたバランスフィルタの製造工程を示す断面図
【図8】デュープレクサのブロック図
【図9】通信モジュールのブロック図
【図10】通信装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
〔1.フィルタの構成〕
図1A〜図1Cは、インピーダンス変換型バランスフィルタ(以下、バランスフィルタと称する)の図であり、本実施の形態を説明するための図である。図1Aは、バランスフィルタの平面図である。図1Bは、図1AにおけるA−A部の断面図である。図1Cは、図1Aに示すバランスフィルタの等価回路である。図1A〜図1Cに示すバランスフィルタの基本構造は、FBARの構造を有するトランスデューサと音響カプラー膜とを厚み方向に堆積したCoupled Resonator Filter(CRF)構造である。
【0010】
図1A〜図1Cに示すバランスフィルタは、入力側の上部電極101a、101b、出力側の上部電極101c、101d、第1の圧電膜102a〜102d、下部電極103a〜103d、カップリング層104、上部電極105a、105b、第2の圧電膜106、下部電極107、基板109、入力端子110、第1の出力端子111a、第2の出力端子111bを備えている。第1の圧電膜102a〜102d及び第2の圧電膜106は、例えばAlNで形成することができる。上部電極101a〜101d、105a、105bおよび下部電極103a〜103d、107は、例えばルテニウム(Ru)、タングステン(W)などで形成することができる。カップリング層104は、入力トランスデューサ(後述)及び出力トランスデューサ(後述)と結合トランスデューサ(後述)とを機械的に結合する層であり、例えば酸化シリコン(SiO2)で形成することができる。上部電極101a,101b、第1の圧電膜102、および下部電極103は、入力トランスデューサ(主トランスデューサの一例)として機能する。上部電極101c,101d、第1の圧電膜102、および下部電極103は、出力トランスデューサ(副トランスデューサの一例)として機能する。第2の圧電膜106、上部電極105、および下部電極107は、結合トランスデューサとして機能する。
【0011】
図1A〜図1Cに示すバランスフィルタにおいて、入力トランスデューサ及び出力トランスデューサが結合トランスデューサを介して、カスケード接続されている。入力端子110には、2つの上部電極101a及び101bが並列接続されている。そのため、入力端子110のインピーダンス(Zin)は上部電極101a及び101bの個々のインピーダンス(Z1、Z2)に対して、
Zin=Z1・Z2/(Z1+Z2) ・・・(式1)
となる。一方、出力側は、上部電極101cに出力端子111aが接続され、上部電極101dに出力端子111bが接続されている。したがって、出力端子111a及び111bから見れば、そのインピーダンス(Zout)は、個々の出力端子111a及び111bのインピーダンス(Z3、Z4)に対して、
Zout=Z3+Z4 ・・・(式2)
となる。例えば、上部電極101a〜101dの個々のインピーダンスがそれぞれ100Ωであれば、入力インピーダンスは上記式1に基づき50Ωとなり、出力インピーダンスは上記式2に基づき200Ωとなる。
【0012】
以下、上記インピーダンス変換型バランスフィルタのさらに詳細な実施例について説明する。
【0013】
(実施例1)
図2Aは、実施例1にかかるインピーダンス変換型バランスフィルタの平面図である。図2Bは、図2AにおけるX−X部の断面図である、図2Cは、図2AにおけるY−Y部の断面図である。
【0014】
実施例1にかかるバランスフィルタは、上部電極1、4、5、6、7、下部電極2、3、8、基板9、音響カプラー膜11、第1の圧電膜12、第2の圧電膜13を備えている。基板9は、下部電極8に接している面に空隙10が形成されている。空隙10は、励振効率を上げるためのものである。下部電極8は、基板9における空隙10に重なる位置に形成されている。第2の圧電膜13は、下部電極8及び基板9の上に形成されている。上部電極6及び上部電極7は、第2の圧電膜13の上に形成されている。上部電極6及び上部電極7は、第2の圧電膜13の上面において面方向に並んで配されている。音響カプラー膜11は、上部電極6、上部電極7、および第2の圧電膜13の上に形成されている。下部電極2及び3は、音響カプラー膜11の上に形成されている。下部電極2及び3は、音響カプラー膜11の上面において面方向に並んで配されている。第1の圧電膜12は、下部電極2、3、および音響カプラー膜11の上に形成されている。上部電極1及び5は、第1の圧電膜12の上に形成されている。上部電極1及び5は、第1の圧電膜12の上面において面方向に並んで配されている。上部電極1と下部電極2は、第1の圧電膜12を挟んで対向している。
【0015】
上部電極5と下部電極3は、第1の圧電膜12を挟んで対向している。上部電極6と下部電極8は、第2の圧電膜13を挟んで対向している。上部電極7と下部電極8は、第2の圧電膜13を挟んで対向している。第1の圧電膜12、第2の圧電膜13は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)等で形成することが好ましい。上部電極1、4、5、下部電極2、3、上部電極6、上部電極7、下部電極8は、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の高音響インピーダンス材料で形成することが好ましい。
【0016】
音響カプラー膜11は、入力トランスデューサ及び出力トランスデューサと結合トランスデューサとの間で振動を伝搬可能なように両者を機械的に結合する膜である。音響カプラー膜11は、他の層を形成する膜の材料に比べて比較的密度及びヤング率が小さい(音響インピーダンスが小さい)材料でかつ絶縁性が優れた材料で形成することが好ましい。音響カプラー膜11は、例えば有機ポリマー材料やSiO2など半導体層間絶縁膜として採用される材料で形成することが好ましい。他の層は、第1の圧電膜12又は第2の圧電膜13である。
【0017】
第1の圧電膜12を挟んで上部電極1と下部電極2とが対向する領域E1は、FBARの入力側の励振部(アクティブエリア)である。第1の圧電膜12を挟んで上部電極4と下部電極3とが対向する領域E2は、FBARの出力側の励振部(アクティブエリア)である。第1の圧電膜12を挟んで上部電極5と下部電極3とが対向する領域E3は、FBARの出力側の励振部(アクティブエリア)である。励振部E1において励振された弾性波は、音響カプラー膜11を介して、上部電極6、第2の圧電膜13、下部電極8等を含むトランスデューサ部へ伝達される。下部電極8は、電気的に出力端直下まで接続されているため、再び音響カプラー膜11を介して出力側の励振部E2及びE3を励振させることができる。図2A及び図2Cに示すように、上部電極4と上部電極5とは分離されており、バランス出力が可能である。なお、励振部E1〜E3の面積を調整することにより、インピーダンスを調整することができる。例えば、図2Aに示すバランスフィルタでは、励振部E1の面積、励振部E2及びE3の面積を調整することにより、入出力のインピーダンスを調整することが可能である。
【0018】
なお、図2Bに示すように、上部電極6及び上部電極7とペアになる下部電極8は、本実施例では共通電極としているが、上部電極6側と上部電極7とで分離配置した電極に置換することができる。
【0019】
また、下部電極2及び3、上部電極6、上部電極7を接地することで、入出力間の浮遊容量の低減、アイソレーションの確保が容易となる。
【0020】
図2A〜図2Cに示すバランスフィルタは、上記式(1)及び(2)で表すインピーダンス変換が可能である。また、励振部の面積を調整することにより、入出力のインピーダンス比を変更することができる。
【0021】
なお、本実施例では、基板9に空隙10を有する例を挙げたが、空隙10に代えて基板9に音響ミラー構造を備えた構成としても良い。また、本実施例では、基板9に空隙10を形成するキャビティ型のフィルタ構造としたが、基板9と下部電極8との間に空隙を形成するエアギャップ型のフィルタ構造としてもよい。
【0022】
(実施例2)
図3は、実施例2にかかるバランスフィルタの平面図である。図3において、図2A〜図2Cに示すバランスフィルタの構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付与して詳細な説明は省略する。
【0023】
実施例2にかかるバランスフィルタと実施例1にかかるバランスフィルタとの違いは、入力側の励振部が2つの励振部E11及びE12に分割され、励振部E11及びE12が並列接続されている点である。バランスフィルタの動作及び断面構造は、実施例1にかかるバランスフィルタと同様である。
【0024】
実施例2にかかるバランスフィルタによれば、上記式(1)及び(2)で表すインピーダンス変換が可能である。すなわち、上部電極1における励振部E11を形成している領域のインピーダンスZ1と、上部電極1における励振部E12を形成している領域のインピーダンスZ2とを上記式1に代入することにより、入力インピーダンスZinを算出することができる。また、上部電極4におけるインピーダンスZ3と上部電極5におけるインピーダンスZ4を上記式2に代入することにより、出力インピーダンスZoutを算出することができる。なお、入出力のインピーダンス比は、基本的には励振部の面積で変更することができる。
【0025】
(実施例3)
図4Aは、実施例3にかかるバランスフィルタの平面図である。図4Bは、図4AにおけるX−X部の断面図である。図4Cは、図4AにおけるY−Y部の断面図である。図4A〜図4Cにおいて、図2A〜図2Cに示すバランスフィルタの構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付与して詳細な説明は省略する。
【0026】
実施例3にかかるバランスフィルタと実施例1にかかるバランスフィルタとの違いは、第1の圧電膜12上における上部電極4及び5の配置である。実施例1にかかるバランスフィルタは、図2Aに示すように上部電極1の延伸方向と上部電極4及び5の延伸方向とがほぼ同一方向となるように上部電極1、4、5が配されていたが、実施例3にかかるバランスフィルタは、図4Aに示すように上部電極1の延伸方向と上部電極4及び5の延伸方向とを略直交させている。なお、実施例3にかかるバランスフィルタの動作及び基本的な断面構造は、実施例1にかかるバランスフィルタと同様である。
【0027】
(実施例4)
図5Aは、実施例4にかかるバランスフィルタの平面図である。図5Bは、図5AにおけるX−X部の断面図である。図5Cは、図5AにおけるY−Y部の断面図である。
【0028】
実施例4にかかるバランスフィルタは、図5A〜図5Cに示すように、基板9の上に、基板9側から順に上部電極14及び15、第2の圧電膜13、上部電極6、音響カプラー膜11、下部電極2、第1の圧電膜12、上部電極1が積層されている。上部電極14及び15は、それぞれ実施例1等に示す上部電極4及び5に相当する。実施例4にかかるバランスフィルタは、電気信号を入力するための上部電極1と、電気信号を取り出すための上部電極14及び15とが、厚さ方向に積層されている構造である。
【0029】
入力側の励振部E1(上部電極1、第1の圧電膜12、下部電極2の対向領域)において励振された弾性波は、音響カプラー膜11を介して、上部電極6、第2の圧電膜13、および上部電極14及び15を含む出力トランスデューサへ伝達される。出力トランスデューサに伝達された弾性波は、再び電気信号に変換されて上部電極14及び15から出力される。
【0030】
実施例4にかかるバランスフィルタは、上部電極1と上部電極14及び15とを厚さ方向に積層したことにより、基板9上における占有面積を小さくすることができるので、フィルタ全体として小型化が可能である。
【0031】
また、実施例4にかかるバランスフィルタにおいて、下部電極2を接地することで、入出力間の浮遊容量が低減でき、アイソレーションの確保が容易となる。
【0032】
なお、実施例4では、基板9の上に、基板9側から順に出力トランスデューサ、音響カプラー膜11、入力トランスデューサが積層されている構成としたが、基板9側から順に入力トランスデューサ、音響カプラー膜11、出力トランスデューサが積層されている構成としてもよい。
【0033】
〔2.バランスフィルタの製造方法〕
図6A〜図6Gは、実施例1にかかるバランスフィルタの製造工程を示す断面図である。つまり、図6A〜図6Gは、キャビティ型FBARの構造を備えたバランスフィルタの製造工程を示す。
【0034】
まず、図6Aに示すように、シリコンからなる基板9を準備する。次に、図6Bに示すように、基板9の上面に空隙10を形成する。空隙10は、例えばドライエッチングにより形成することができる。次に、図6Cに示すように、空隙10に、犠牲層16を形成する。次に、図6Dに示すように、基板9及び犠牲層16の上部に、下部電極8、第2の圧電膜13、上部電極6及び7を順に形成する。上部電極6及び7、下部電極8は、例えばRuで形成することができる。第2の圧電膜13は、例えばAlNで形成することができる。次に、図6Eに示すように、上部電極6及び7、第2の圧電膜13の上部に、音響カプラー膜11を形成する。音響カプラー膜11は、例えば酸化シリコン(SiO2)で形成することができる。次に、図6Fに示すように、音響カプラー膜11の上部に、下部電極2及び3、第1の圧電膜12、上部電極1、4、5を形成する。上部電極1、4、5、下部電極2及び3は、例えばRuで形成することができる。第1の圧電膜12は、例えばAlNで形成することができる。次に、図6Gに示すように、犠牲層16をウェットエッチングなどで除去し、空隙10を形成する。以上により、実施例1にかかるバランスフィルタが完成する。
【0035】
図7A〜図7Fは、エアギャップ型FBARを備えたフィルタの製造工程を示す断面図である。なお、エアギャップ型FBARとは、キャビティ型のFBARのように基板に空隙(凹部)を形成せず、基板とその上部の電極との間に空隙が形成されているFBARのことである。
【0036】
まず、図7Aに示すように、シリコンからなる基板9を準備する。次に、図7Bに示すように、基板9の上面に犠牲層16を形成する。次に、図7Cに示すように、基板9及び犠牲層16の上部に、下部電極8、第2の圧電膜13、上部電極6及び7を順に形成する。上部電極6及び7、下部電極8は、例えばRuで形成することができる。第2の圧電膜13は、例えばAlNで形成することができる。次に、図7Dに示すように、上部電極6及び7、第2の圧電膜13の上部に、音響カプラー膜11を形成する。音響カプラー膜11は、例えば酸化シリコン(SiO2)で形成することができる。次に、図7Eに示すように、音響カプラー膜11の上部に、下部電極2及び3、第1の圧電膜12、上部電極1、4、5を形成する。上部電極1、4、5、下部電極2及び3は、例えばRuで形成することができる。第1の圧電膜12は、例えばAlNで形成することができる。次に、図7Fに示すように、犠牲層16をウェットエッチングなどで除去し、空隙10を形成する。以上により、エアギャップ型のFBARの構造を有するバランスフィルタが完成する。
【0037】
〔3.デュープレクサの構成〕
携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)端末、無線LANシステムなどの移動体通信(高周波無線通信)には、デュープレクサが搭載されている。デュープレクサは、通信電波などの送信機能及び受信機能を持ち、送信信号と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。
【0038】
図8は、本実施の形態のバランスフィルタを備えたデュープレクサの構成を示す。デュープレクサ52は、位相整合回路53、受信フィルタ54、および送信フィルタ55を備えている。位相整合回路53は、送信フィルタ55から出力される送信信号が受信フィルタ54側に流れ込むのを防ぐために、受信フィルタ54のインピーダンスの位相を調整するための素子である。また、位相整合回路53には、アンテナ51が接続されている。受信フィルタ54は、アンテナ51を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、受信フィルタ54には、出力端子56が接続されている。送信フィルタ55は、入力端子57を介して入力される送信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、送信フィルタ55には、入力端子57が接続されている。ここで、受信フィルタ54には、本実施の形態におけるバランスフィルタが含まれている。
【0039】
〔4.通信モジュールの構成〕
図9は、本実施の形態にかかるデュープレクサを備えた通信モジュールの一例を示す。図9に示すように、デュープレクサ52は、受信フィルタ54と送信フィルタ55とを備えている。また、受信フィルタ54には、例えばバランス出力に対応した受信端子56が接続されている。また、送信フィルタ55は、パワーアンプ74を介して送信端子57に接続している。ここで、受信フィルタ54は、本実施の形態にかかるバランスフィルタを備えている。
【0040】
受信動作を行う際、受信フィルタ54は、アンテナ端子61を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子56から外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ55は、送信端子57から入力されてパワーアンプ74で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子61から外部へ出力する。
【0041】
なお、図9に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本実施の形態にかかるデュープレクサを搭載しても、同様の効果が得られる。
【0042】
〔5.通信装置の構成〕
図10は、本実施の形態にかかるデュープレクサ、または前述の通信モジュールを備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、図10に示す通信装置は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末の構成を示す。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、図10に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、デュープレクサ52における受信フィルタ54は、本実施の形態にかかるバランスフィルタを備えている。
【0043】
まず、アンテナ71を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路72で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュープレクサ52に出力するように切り換える。デュープレクサ52に入力される受信信号は、受信フィルタ54で所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA73に出力される。LNA73は、入力される受信信号を増幅し、LSI75に出力する。LSI75では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。
【0044】
一方、信号を送信する場合は、LSI75は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ74で増幅されて送信フィルタ55に入力される。送信フィルタ55は、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ55から出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0045】
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路72は、周波数帯域に応じて受信フィルタ76〜79のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ76〜79のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI82に入力される。LSI82は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。一方、信号を送信する場合は、LSI82は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ80または81で増幅されて、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0046】
なお、図10に示す通信装置の構成は一例であり、他の形態の通信装置に本実施の形態にかかるデュープレクサを搭載しても、同様の効果が得られる。
【0047】
〔6.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、アンバランス−バランス変換を行うフィルタをFBARで実現することにより、高Qのフィルタを実現することができる。
【0048】
また、入力トランスデューサの励振部の面積と、出力トランスデューサの励振部の面積とを調整することにより、インピーダンスを調整することができる。
【0049】
なお、本実施の形態における上部電極1、下部電極2、および第1の圧電膜12で形成されるトランスデューサは、本発明の主トランスデューサの一例である。本実施の形態における上部電極4、5、下部電極3、および第1の圧電膜12で形成されるトランスデューサは、本発明の副トランスデューサの一例である。本実施の形態における上部電極6、上部電極7、および第2の圧電膜13で形成されるトランスデューサは、本発明の結合トランスデューサの一例である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願は、フィルタ、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1、4、5、6、7 上部電極
2、3、8 下部電極
9 基板
11 音響カプラー膜
12 第1の圧電膜
13 第2の圧電膜
【技術分野】
【0001】
本願の開示は、フィルタ、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電材料を用いた弾性表面波(SAW)や圧電薄膜の厚み振動波を用いた共振器(FBAR)を複数組み合わせることにより、特定の周波数帯の電気信号のみを通過させる特徴を持った高周波通信用のフィルタ素子が開発されている。SAW共振器やFBARを利用したフィルタ部品は、他の誘電体フィルタやセラミックフィルタに比して外形サイズが小さく、かつ急峻なロールオフ特性を持つため、小型で、狭い比帯域幅が要求される携帯電話等の移動体通信部品に適している。SAW、FBARのラダー型フィルタを用いた応用部品として、デュープレクサがある。デュープレクサは、送受信機能を持ち送信と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。近年、特にデュープレクサでは送信フィルタはアンバランス型、受信フィルタはアンバランス入力、バランス出力で、その出力インピーダンスは100Ω等が要求されており、入力インピーダンスより高いインピーダンスとなる。
【0003】
特許文献1は、アンバランス−バランス変換及び入出力変換が可能な多重モード型SAWフィルタを開示している。特許文献2は、アンバランス−バランス変換が可能なMEMS共振器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−283425号公報
【特許文献2】特開2005−094568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1及び2には、アンバランス−バランス変換が可能なFBARは開示されていない。したがって、特許文献1及び2に開示されている構成では、高Qのフィルタを実現することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示するフィルタは、主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示によれば、アンバランス−バランス変換を行うフィルタをFBARで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】実施の形態にかかるバランスフィルタの平面図
【図1B】図1AにおけるA−A部の断面図
【図1C】図1Aに示すバランスフィルタの等価回路図
【図2A】実施例1にかかるバランスフィルタの平面図
【図2B】図2AにおけるX−X部の断面図
【図2C】図2AにおけるY−Y部の断面図
【図3】実施例2にかかるバランスフィルタの平面図
【図4A】実施例3にかかるバランスフィルタの平面図
【図4B】図4AにおけるX−X部の断面図
【図4C】図4AにおけるY−Y部の断面図
【図5A】実施例4にかかるバランスフィルタの平面図
【図5B】図5AにおけるX−X部の断面図
【図5C】図5AにおけるY−Y部の断面図
【図6】図6A〜図6Gは、キャビティ型FBARを備えたバランスフィルタの製造工程を示す断面図
【図7】図7A〜図7Fは、エアギャップ型FBARを備えたバランスフィルタの製造工程を示す断面図
【図8】デュープレクサのブロック図
【図9】通信モジュールのブロック図
【図10】通信装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
〔1.フィルタの構成〕
図1A〜図1Cは、インピーダンス変換型バランスフィルタ(以下、バランスフィルタと称する)の図であり、本実施の形態を説明するための図である。図1Aは、バランスフィルタの平面図である。図1Bは、図1AにおけるA−A部の断面図である。図1Cは、図1Aに示すバランスフィルタの等価回路である。図1A〜図1Cに示すバランスフィルタの基本構造は、FBARの構造を有するトランスデューサと音響カプラー膜とを厚み方向に堆積したCoupled Resonator Filter(CRF)構造である。
【0010】
図1A〜図1Cに示すバランスフィルタは、入力側の上部電極101a、101b、出力側の上部電極101c、101d、第1の圧電膜102a〜102d、下部電極103a〜103d、カップリング層104、上部電極105a、105b、第2の圧電膜106、下部電極107、基板109、入力端子110、第1の出力端子111a、第2の出力端子111bを備えている。第1の圧電膜102a〜102d及び第2の圧電膜106は、例えばAlNで形成することができる。上部電極101a〜101d、105a、105bおよび下部電極103a〜103d、107は、例えばルテニウム(Ru)、タングステン(W)などで形成することができる。カップリング層104は、入力トランスデューサ(後述)及び出力トランスデューサ(後述)と結合トランスデューサ(後述)とを機械的に結合する層であり、例えば酸化シリコン(SiO2)で形成することができる。上部電極101a,101b、第1の圧電膜102、および下部電極103は、入力トランスデューサ(主トランスデューサの一例)として機能する。上部電極101c,101d、第1の圧電膜102、および下部電極103は、出力トランスデューサ(副トランスデューサの一例)として機能する。第2の圧電膜106、上部電極105、および下部電極107は、結合トランスデューサとして機能する。
【0011】
図1A〜図1Cに示すバランスフィルタにおいて、入力トランスデューサ及び出力トランスデューサが結合トランスデューサを介して、カスケード接続されている。入力端子110には、2つの上部電極101a及び101bが並列接続されている。そのため、入力端子110のインピーダンス(Zin)は上部電極101a及び101bの個々のインピーダンス(Z1、Z2)に対して、
Zin=Z1・Z2/(Z1+Z2) ・・・(式1)
となる。一方、出力側は、上部電極101cに出力端子111aが接続され、上部電極101dに出力端子111bが接続されている。したがって、出力端子111a及び111bから見れば、そのインピーダンス(Zout)は、個々の出力端子111a及び111bのインピーダンス(Z3、Z4)に対して、
Zout=Z3+Z4 ・・・(式2)
となる。例えば、上部電極101a〜101dの個々のインピーダンスがそれぞれ100Ωであれば、入力インピーダンスは上記式1に基づき50Ωとなり、出力インピーダンスは上記式2に基づき200Ωとなる。
【0012】
以下、上記インピーダンス変換型バランスフィルタのさらに詳細な実施例について説明する。
【0013】
(実施例1)
図2Aは、実施例1にかかるインピーダンス変換型バランスフィルタの平面図である。図2Bは、図2AにおけるX−X部の断面図である、図2Cは、図2AにおけるY−Y部の断面図である。
【0014】
実施例1にかかるバランスフィルタは、上部電極1、4、5、6、7、下部電極2、3、8、基板9、音響カプラー膜11、第1の圧電膜12、第2の圧電膜13を備えている。基板9は、下部電極8に接している面に空隙10が形成されている。空隙10は、励振効率を上げるためのものである。下部電極8は、基板9における空隙10に重なる位置に形成されている。第2の圧電膜13は、下部電極8及び基板9の上に形成されている。上部電極6及び上部電極7は、第2の圧電膜13の上に形成されている。上部電極6及び上部電極7は、第2の圧電膜13の上面において面方向に並んで配されている。音響カプラー膜11は、上部電極6、上部電極7、および第2の圧電膜13の上に形成されている。下部電極2及び3は、音響カプラー膜11の上に形成されている。下部電極2及び3は、音響カプラー膜11の上面において面方向に並んで配されている。第1の圧電膜12は、下部電極2、3、および音響カプラー膜11の上に形成されている。上部電極1及び5は、第1の圧電膜12の上に形成されている。上部電極1及び5は、第1の圧電膜12の上面において面方向に並んで配されている。上部電極1と下部電極2は、第1の圧電膜12を挟んで対向している。
【0015】
上部電極5と下部電極3は、第1の圧電膜12を挟んで対向している。上部電極6と下部電極8は、第2の圧電膜13を挟んで対向している。上部電極7と下部電極8は、第2の圧電膜13を挟んで対向している。第1の圧電膜12、第2の圧電膜13は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)等で形成することが好ましい。上部電極1、4、5、下部電極2、3、上部電極6、上部電極7、下部電極8は、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の高音響インピーダンス材料で形成することが好ましい。
【0016】
音響カプラー膜11は、入力トランスデューサ及び出力トランスデューサと結合トランスデューサとの間で振動を伝搬可能なように両者を機械的に結合する膜である。音響カプラー膜11は、他の層を形成する膜の材料に比べて比較的密度及びヤング率が小さい(音響インピーダンスが小さい)材料でかつ絶縁性が優れた材料で形成することが好ましい。音響カプラー膜11は、例えば有機ポリマー材料やSiO2など半導体層間絶縁膜として採用される材料で形成することが好ましい。他の層は、第1の圧電膜12又は第2の圧電膜13である。
【0017】
第1の圧電膜12を挟んで上部電極1と下部電極2とが対向する領域E1は、FBARの入力側の励振部(アクティブエリア)である。第1の圧電膜12を挟んで上部電極4と下部電極3とが対向する領域E2は、FBARの出力側の励振部(アクティブエリア)である。第1の圧電膜12を挟んで上部電極5と下部電極3とが対向する領域E3は、FBARの出力側の励振部(アクティブエリア)である。励振部E1において励振された弾性波は、音響カプラー膜11を介して、上部電極6、第2の圧電膜13、下部電極8等を含むトランスデューサ部へ伝達される。下部電極8は、電気的に出力端直下まで接続されているため、再び音響カプラー膜11を介して出力側の励振部E2及びE3を励振させることができる。図2A及び図2Cに示すように、上部電極4と上部電極5とは分離されており、バランス出力が可能である。なお、励振部E1〜E3の面積を調整することにより、インピーダンスを調整することができる。例えば、図2Aに示すバランスフィルタでは、励振部E1の面積、励振部E2及びE3の面積を調整することにより、入出力のインピーダンスを調整することが可能である。
【0018】
なお、図2Bに示すように、上部電極6及び上部電極7とペアになる下部電極8は、本実施例では共通電極としているが、上部電極6側と上部電極7とで分離配置した電極に置換することができる。
【0019】
また、下部電極2及び3、上部電極6、上部電極7を接地することで、入出力間の浮遊容量の低減、アイソレーションの確保が容易となる。
【0020】
図2A〜図2Cに示すバランスフィルタは、上記式(1)及び(2)で表すインピーダンス変換が可能である。また、励振部の面積を調整することにより、入出力のインピーダンス比を変更することができる。
【0021】
なお、本実施例では、基板9に空隙10を有する例を挙げたが、空隙10に代えて基板9に音響ミラー構造を備えた構成としても良い。また、本実施例では、基板9に空隙10を形成するキャビティ型のフィルタ構造としたが、基板9と下部電極8との間に空隙を形成するエアギャップ型のフィルタ構造としてもよい。
【0022】
(実施例2)
図3は、実施例2にかかるバランスフィルタの平面図である。図3において、図2A〜図2Cに示すバランスフィルタの構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付与して詳細な説明は省略する。
【0023】
実施例2にかかるバランスフィルタと実施例1にかかるバランスフィルタとの違いは、入力側の励振部が2つの励振部E11及びE12に分割され、励振部E11及びE12が並列接続されている点である。バランスフィルタの動作及び断面構造は、実施例1にかかるバランスフィルタと同様である。
【0024】
実施例2にかかるバランスフィルタによれば、上記式(1)及び(2)で表すインピーダンス変換が可能である。すなわち、上部電極1における励振部E11を形成している領域のインピーダンスZ1と、上部電極1における励振部E12を形成している領域のインピーダンスZ2とを上記式1に代入することにより、入力インピーダンスZinを算出することができる。また、上部電極4におけるインピーダンスZ3と上部電極5におけるインピーダンスZ4を上記式2に代入することにより、出力インピーダンスZoutを算出することができる。なお、入出力のインピーダンス比は、基本的には励振部の面積で変更することができる。
【0025】
(実施例3)
図4Aは、実施例3にかかるバランスフィルタの平面図である。図4Bは、図4AにおけるX−X部の断面図である。図4Cは、図4AにおけるY−Y部の断面図である。図4A〜図4Cにおいて、図2A〜図2Cに示すバランスフィルタの構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付与して詳細な説明は省略する。
【0026】
実施例3にかかるバランスフィルタと実施例1にかかるバランスフィルタとの違いは、第1の圧電膜12上における上部電極4及び5の配置である。実施例1にかかるバランスフィルタは、図2Aに示すように上部電極1の延伸方向と上部電極4及び5の延伸方向とがほぼ同一方向となるように上部電極1、4、5が配されていたが、実施例3にかかるバランスフィルタは、図4Aに示すように上部電極1の延伸方向と上部電極4及び5の延伸方向とを略直交させている。なお、実施例3にかかるバランスフィルタの動作及び基本的な断面構造は、実施例1にかかるバランスフィルタと同様である。
【0027】
(実施例4)
図5Aは、実施例4にかかるバランスフィルタの平面図である。図5Bは、図5AにおけるX−X部の断面図である。図5Cは、図5AにおけるY−Y部の断面図である。
【0028】
実施例4にかかるバランスフィルタは、図5A〜図5Cに示すように、基板9の上に、基板9側から順に上部電極14及び15、第2の圧電膜13、上部電極6、音響カプラー膜11、下部電極2、第1の圧電膜12、上部電極1が積層されている。上部電極14及び15は、それぞれ実施例1等に示す上部電極4及び5に相当する。実施例4にかかるバランスフィルタは、電気信号を入力するための上部電極1と、電気信号を取り出すための上部電極14及び15とが、厚さ方向に積層されている構造である。
【0029】
入力側の励振部E1(上部電極1、第1の圧電膜12、下部電極2の対向領域)において励振された弾性波は、音響カプラー膜11を介して、上部電極6、第2の圧電膜13、および上部電極14及び15を含む出力トランスデューサへ伝達される。出力トランスデューサに伝達された弾性波は、再び電気信号に変換されて上部電極14及び15から出力される。
【0030】
実施例4にかかるバランスフィルタは、上部電極1と上部電極14及び15とを厚さ方向に積層したことにより、基板9上における占有面積を小さくすることができるので、フィルタ全体として小型化が可能である。
【0031】
また、実施例4にかかるバランスフィルタにおいて、下部電極2を接地することで、入出力間の浮遊容量が低減でき、アイソレーションの確保が容易となる。
【0032】
なお、実施例4では、基板9の上に、基板9側から順に出力トランスデューサ、音響カプラー膜11、入力トランスデューサが積層されている構成としたが、基板9側から順に入力トランスデューサ、音響カプラー膜11、出力トランスデューサが積層されている構成としてもよい。
【0033】
〔2.バランスフィルタの製造方法〕
図6A〜図6Gは、実施例1にかかるバランスフィルタの製造工程を示す断面図である。つまり、図6A〜図6Gは、キャビティ型FBARの構造を備えたバランスフィルタの製造工程を示す。
【0034】
まず、図6Aに示すように、シリコンからなる基板9を準備する。次に、図6Bに示すように、基板9の上面に空隙10を形成する。空隙10は、例えばドライエッチングにより形成することができる。次に、図6Cに示すように、空隙10に、犠牲層16を形成する。次に、図6Dに示すように、基板9及び犠牲層16の上部に、下部電極8、第2の圧電膜13、上部電極6及び7を順に形成する。上部電極6及び7、下部電極8は、例えばRuで形成することができる。第2の圧電膜13は、例えばAlNで形成することができる。次に、図6Eに示すように、上部電極6及び7、第2の圧電膜13の上部に、音響カプラー膜11を形成する。音響カプラー膜11は、例えば酸化シリコン(SiO2)で形成することができる。次に、図6Fに示すように、音響カプラー膜11の上部に、下部電極2及び3、第1の圧電膜12、上部電極1、4、5を形成する。上部電極1、4、5、下部電極2及び3は、例えばRuで形成することができる。第1の圧電膜12は、例えばAlNで形成することができる。次に、図6Gに示すように、犠牲層16をウェットエッチングなどで除去し、空隙10を形成する。以上により、実施例1にかかるバランスフィルタが完成する。
【0035】
図7A〜図7Fは、エアギャップ型FBARを備えたフィルタの製造工程を示す断面図である。なお、エアギャップ型FBARとは、キャビティ型のFBARのように基板に空隙(凹部)を形成せず、基板とその上部の電極との間に空隙が形成されているFBARのことである。
【0036】
まず、図7Aに示すように、シリコンからなる基板9を準備する。次に、図7Bに示すように、基板9の上面に犠牲層16を形成する。次に、図7Cに示すように、基板9及び犠牲層16の上部に、下部電極8、第2の圧電膜13、上部電極6及び7を順に形成する。上部電極6及び7、下部電極8は、例えばRuで形成することができる。第2の圧電膜13は、例えばAlNで形成することができる。次に、図7Dに示すように、上部電極6及び7、第2の圧電膜13の上部に、音響カプラー膜11を形成する。音響カプラー膜11は、例えば酸化シリコン(SiO2)で形成することができる。次に、図7Eに示すように、音響カプラー膜11の上部に、下部電極2及び3、第1の圧電膜12、上部電極1、4、5を形成する。上部電極1、4、5、下部電極2及び3は、例えばRuで形成することができる。第1の圧電膜12は、例えばAlNで形成することができる。次に、図7Fに示すように、犠牲層16をウェットエッチングなどで除去し、空隙10を形成する。以上により、エアギャップ型のFBARの構造を有するバランスフィルタが完成する。
【0037】
〔3.デュープレクサの構成〕
携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)端末、無線LANシステムなどの移動体通信(高周波無線通信)には、デュープレクサが搭載されている。デュープレクサは、通信電波などの送信機能及び受信機能を持ち、送信信号と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。
【0038】
図8は、本実施の形態のバランスフィルタを備えたデュープレクサの構成を示す。デュープレクサ52は、位相整合回路53、受信フィルタ54、および送信フィルタ55を備えている。位相整合回路53は、送信フィルタ55から出力される送信信号が受信フィルタ54側に流れ込むのを防ぐために、受信フィルタ54のインピーダンスの位相を調整するための素子である。また、位相整合回路53には、アンテナ51が接続されている。受信フィルタ54は、アンテナ51を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、受信フィルタ54には、出力端子56が接続されている。送信フィルタ55は、入力端子57を介して入力される送信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、送信フィルタ55には、入力端子57が接続されている。ここで、受信フィルタ54には、本実施の形態におけるバランスフィルタが含まれている。
【0039】
〔4.通信モジュールの構成〕
図9は、本実施の形態にかかるデュープレクサを備えた通信モジュールの一例を示す。図9に示すように、デュープレクサ52は、受信フィルタ54と送信フィルタ55とを備えている。また、受信フィルタ54には、例えばバランス出力に対応した受信端子56が接続されている。また、送信フィルタ55は、パワーアンプ74を介して送信端子57に接続している。ここで、受信フィルタ54は、本実施の形態にかかるバランスフィルタを備えている。
【0040】
受信動作を行う際、受信フィルタ54は、アンテナ端子61を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子56から外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ55は、送信端子57から入力されてパワーアンプ74で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子61から外部へ出力する。
【0041】
なお、図9に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本実施の形態にかかるデュープレクサを搭載しても、同様の効果が得られる。
【0042】
〔5.通信装置の構成〕
図10は、本実施の形態にかかるデュープレクサ、または前述の通信モジュールを備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、図10に示す通信装置は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末の構成を示す。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、図10に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、デュープレクサ52における受信フィルタ54は、本実施の形態にかかるバランスフィルタを備えている。
【0043】
まず、アンテナ71を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路72で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュープレクサ52に出力するように切り換える。デュープレクサ52に入力される受信信号は、受信フィルタ54で所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA73に出力される。LNA73は、入力される受信信号を増幅し、LSI75に出力する。LSI75では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。
【0044】
一方、信号を送信する場合は、LSI75は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ74で増幅されて送信フィルタ55に入力される。送信フィルタ55は、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ55から出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0045】
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路72は、周波数帯域に応じて受信フィルタ76〜79のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ76〜79のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI82に入力される。LSI82は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。一方、信号を送信する場合は、LSI82は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ80または81で増幅されて、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0046】
なお、図10に示す通信装置の構成は一例であり、他の形態の通信装置に本実施の形態にかかるデュープレクサを搭載しても、同様の効果が得られる。
【0047】
〔6.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、アンバランス−バランス変換を行うフィルタをFBARで実現することにより、高Qのフィルタを実現することができる。
【0048】
また、入力トランスデューサの励振部の面積と、出力トランスデューサの励振部の面積とを調整することにより、インピーダンスを調整することができる。
【0049】
なお、本実施の形態における上部電極1、下部電極2、および第1の圧電膜12で形成されるトランスデューサは、本発明の主トランスデューサの一例である。本実施の形態における上部電極4、5、下部電極3、および第1の圧電膜12で形成されるトランスデューサは、本発明の副トランスデューサの一例である。本実施の形態における上部電極6、上部電極7、および第2の圧電膜13で形成されるトランスデューサは、本発明の結合トランスデューサの一例である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願は、フィルタ、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1、4、5、6、7 上部電極
2、3、8 下部電極
9 基板
11 音響カプラー膜
12 第1の圧電膜
13 第2の圧電膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主端子に接続されている主トランスデューサと、
複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、
前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている、フィルタ。
【請求項2】
前記主トランスデューサ及び前記副トランスデューサと前記結合トランスデューサとの間にカップリング層を有する、請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記結合トランスデューサは、上部電極と、前記上部電極の下方に配されている下部電極と、前記上部電極と前記下部電極とに挟まれている圧電膜とを備え、
前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとは、前記結合トランスデューサの前記上部電極上に配されている、請求項1記載のフィルタ。
【請求項4】
前記主トランスデューサの励振部の面積と前記副トランスデューサの励振部の面積とが異なる、請求項1記載のフィルタ。
【請求項5】
主端子に接続されている主トランスデューサと、
複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、
前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとの間に配されているカップリング層とを備え、
前記カップリング層は、一方の面に前記主トランスデューサが接合され、他方の面に前記副トランスデューサが接合されている、フィルタ。
【請求項6】
主端子に接続されている主トランスデューサと、
複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、
前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合するカップリング層とを備えている、フィルタ。
【請求項7】
主フィルタと副フィルタとを備えているデュープレクサであって、
前記主フィルタ及び前記副フィルタのうち少なくともいずれか一方のフィルタは、主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている、デュープレクサ。
【請求項8】
主フィルタと副フィルタとを備えている通信モジュールであって、
前記主フィルタ及び前記副フィルタのうち少なくともいずれか一方のフィルタは、主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている、通信モジュール。
【請求項9】
主フィルタと副フィルタとを備えている通信装置であって、
前記主フィルタ及び前記副フィルタのうち少なくともいずれか一方のフィルタは、主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている、通信装置。
【請求項1】
主端子に接続されている主トランスデューサと、
複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、
前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている、フィルタ。
【請求項2】
前記主トランスデューサ及び前記副トランスデューサと前記結合トランスデューサとの間にカップリング層を有する、請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記結合トランスデューサは、上部電極と、前記上部電極の下方に配されている下部電極と、前記上部電極と前記下部電極とに挟まれている圧電膜とを備え、
前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとは、前記結合トランスデューサの前記上部電極上に配されている、請求項1記載のフィルタ。
【請求項4】
前記主トランスデューサの励振部の面積と前記副トランスデューサの励振部の面積とが異なる、請求項1記載のフィルタ。
【請求項5】
主端子に接続されている主トランスデューサと、
複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、
前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとの間に配されているカップリング層とを備え、
前記カップリング層は、一方の面に前記主トランスデューサが接合され、他方の面に前記副トランスデューサが接合されている、フィルタ。
【請求項6】
主端子に接続されている主トランスデューサと、
複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、
前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合するカップリング層とを備えている、フィルタ。
【請求項7】
主フィルタと副フィルタとを備えているデュープレクサであって、
前記主フィルタ及び前記副フィルタのうち少なくともいずれか一方のフィルタは、主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている、デュープレクサ。
【請求項8】
主フィルタと副フィルタとを備えている通信モジュールであって、
前記主フィルタ及び前記副フィルタのうち少なくともいずれか一方のフィルタは、主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている、通信モジュール。
【請求項9】
主フィルタと副フィルタとを備えている通信装置であって、
前記主フィルタ及び前記副フィルタのうち少なくともいずれか一方のフィルタは、主端子に接続されている主トランスデューサと、複数の副端子に接続されている副トランスデューサと、前記主トランスデューサと前記副トランスデューサとを機械的に結合する結合トランスデューサとを備えている、通信装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−176744(P2011−176744A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40653(P2010−40653)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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