説明

フィルタ及びその製造方法

【課題】電気掃除機の遠心力集塵器用などとしてメッシュが枠体から外れにくい耐久性に優れたフィルタを提供する。
【解決手段】ABS樹脂製の枠体2と、枠体2のほぼ肉厚中心部で少なくとも周縁が保持されたPET樹脂製のシート状メッシュ3とを備えるフィルタ1において、前記枠体2が、前記メッシュ3に対して垂直方向に又は面方向内方に突き出たリブ5を要所に一体的に有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルタ及びその製造方法に関する。この発明のフィルタは、電気掃除機の遠心力集塵器における吸気経路に取り付けられて、ゴミをろ過するために好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
電動ファンによってゴミを吸引する電気掃除機には、紙パック方式とサイクロン方式とがある。紙パック方式は、掃除機本体の吸い込み口と電動ファンとの間に多孔質の紙からなる袋状のフィルタ(これを通常「紙パック」と称する。)を配置して集塵するもので、ゴミがフィルタごと捨てられる。従って、フィルタを洗浄する手間が省けるという長所と、ゴミが増すと吸引力が低下するという短所を有する。
【0003】
これに対して、サイクロン方式は、吸い込まれたゴミ及び空気を旋回させることにより、ゴミと空気を遠心力で分離させるもので、フィルタに付着するのは微小な埃だけであるから、時々洗浄することによりフィルタを継続して使用可能である。従って、ゴミが増しても吸引力が低下しにくく且つ経済的であるという長所と、フィルタを洗浄する手間がかかるという短所を有する。フィルタは、図3(a)に断面図で示すように柔軟なシート状のメッシュMと、メッシュMの形状を固定する樹脂製の枠体Fとからなる。そして、メッシュの周縁を包囲するキャビティが形成された型を準備し、型内にメッシュを配置した状態でキャビティに樹脂を射出することにより、枠体がメッシュと一体成形される。
【特許文献1】特開2007−82854
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、サイクロン方式で用いられるようなフィルタにおいては、枠体の成形時に射出された樹脂の圧力でメッシュが撓み、そのため図3(b)に想像線で示すように成形後にメッシュMの周縁の一部分が枠体Fの表面付近に浮くことがある。その結果、使用中の風圧や洗浄中の外圧などに押されてその部分が枠体から外れ、ろ過機能を果たさなくなってしまう。
それ故、この発明の課題は、メッシュが枠体から外れにくい耐久性に優れたフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その課題を解決するために、この発明のフィルタは、
樹脂製の枠体と、枠体のほぼ肉厚中心部で少なくとも周縁が保持されたメッシュとを備えるフィルタにおいて、
前記枠体が、前記メッシュに対して垂直方向に又は面方向内方に突き出たリブを要所に一体的に有することを特徴とする。
そして、このフィルタを製造する適切な方法は、
メッシュとメッシュの少なくとも周縁に沿うように形成された枠状のキャビティを有する型とを準備し、メッシュを型内に配置し、キャビティに樹脂を射出成形することにより、フィルタを製造する方法において、
前記型における前記キャビティの要所に、前記メッシュに対して垂直方向に又は面方向内方に窪んだ凹部が設けられていることを特徴とする。
【0006】
前記の通りメッシュは成形時に射出された樹脂の圧力で撓もうとするが、前記凹部はキャビティよりもはるかに平面積の小さい空間であるから、その中にメッシュが入り込むことはない。従って、凹部内には樹脂のみが充填され、成形後に枠体より突き出たリブとなる。その結果、メッシュの周縁が部分的に枠体の表面付近に浮いた状態で成形され、使用中の風圧や洗浄中の外圧などにメッシュが押されても、リブでメッシュを支持しているので、メッシュが枠体から外れにくい。
【0007】
この発明において、前記凹部が前記メッシュよりも吸気方向下流側となる面に形成されていると好ましい。これにより、前記リブが前記メッシュよりも吸気方向下流側の面に形成され、使用中の風圧に対してより確実にメッシュを支持するからである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、この発明のフィルタは、メッシュが枠体から外れにくいので、耐久性に優れる。また、洗浄しやすい。従って、長期間フィルタを使用することができ、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
−実施形態1−
この発明の実施形態を図面とともに説明する。図1(a)は第一の実施形態に係るフィルタを示す平面図、図1(b)は(a)のAA線断面図、図2はフィルタを製造する金型を示す断面図である。
【0010】
フィルタ1は、電気掃除機の遠心力集塵器における吸気経路に取り付けられて、ゴミをろ過するために用いられるもので、ABS樹脂製の100mm×150mm程度の長方形の枠体2と、PET樹脂製のシート状メッシュ3とを備える。枠体2の幅は4mm、肉厚は4mm程度である。メッシュ3は直径0.03mm程度の線材を縦横に編み込んで溶着したもので、その合計厚さは0.1mm程度、開口径は50μm程度である(但し、図示の便宜上、厚さ方向は誇張して描かれている。)。メッシュ3は、周縁が枠体2の肉厚中心部に埋め込まれて、その形状が保たれている。枠体2は、四辺の各中点位置に、内方に1.5mm程度突き出た幅1mm、高さ1mm程度のリブ5、5・・・5を一体的に有する。
【0011】
フィルタ1は、次のようにして製造される。先ず、メッシュ3とメッシュ3の周縁に沿うように形成された方形枠状のキャビティ4aを有する上下の金型4、4’とを準備する。キャビティ4aには四辺の各中点位置に、内方に窪んだ凹部4bが形成されている。そして、メッシュ3を型4、4’の間に配置し、注入口4cよりキャビティ4aに樹脂を射出することにより、メッシュ3の周縁を保持するようにキャビティ4aと相補する形状の枠体2が成形され、フィルタ1が完成する。
【0012】
フィルタ1は、前記吸気経路にリブ5が下流側を向くようにして取り付けられる。フィルタ1は、メッシュ3の周縁が射出時の樹脂の圧力によってキャビティ4a内で撓むことがあっても、凹部4b内に入り込むほど大きな曲率で撓むことはない。従って、凹部4b内には樹脂のみが入り込むこととなり、メッシュ3の周縁が枠体2の表面に浮き出ることがあっても、リブ5でしっかりと押さえられる。その結果、電気掃除機使用中の上流からの風圧やフィルタ1を洗浄する際の外圧にリブ5が抗してメッシュ3を支持し、メッシュ3が枠体2から外れるのを防止する。
【0013】
−実施形態2−
図4(a)は第二の実施形態にかかるフィルタを示す平面図、図4(b)は(a)のBB線断面図、図4(c)は(a)のCC線断面図である。
フィルタ11は、実施形態1と異なる電気掃除機の遠心力集塵器における吸気経路に取り付けられて、ゴミをろ過するために用いられるもので、直径150mm程度の円形の枠体12と、メッシュ13とを備える。枠体12の幅は8mm、肉厚は5mm程度である。枠体12及びメッシュ13の材質は、それぞれ実施形態1におけるものと同一である。メッシュ13は、周縁が枠体12の肉厚中心部に埋め込まれ、その形状が保たれている。枠体12は、平面視で45度位相が変わる毎に、その上面に1mm程度突き出て径方向に細長いリブ15、15・・15を一体的に有する。
【0014】
フィルタ11も、前記吸気経路にリブ15が下流側を向くようにして取り付けられる。そして、フィルタ11も、メッシュ13の周縁が射出時の樹脂の圧力によってキャビティ内で撓むことがあっても、リブ15に対応する凹部内に入り込むほど大きな曲率で撓むことはない。従って、メッシュ13の周縁が枠体12の表面に浮き出ることがあっても、リブ15でしっかりと押さえられる。その結果、電気掃除機使用中の上流からの風圧やフィルタ11を洗浄する際の外圧にリブ15が抗してメッシュ13を支持し、メッシュ13が枠体12から外れるのを防止する。
尚、リブ15は、周方向に細長い形状を有していても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は実施形態1のフィルタを示す平面図、(b)は(a)のAA線断面図である。
【図2】フィルタを製造する金型を示す断面図である。
【図3】(a)は従来のフィルタを示す断面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
【図4】(a)は実施形態2にかかるフィルタを示す平面図、(b)は(a)のBB線断面図、(c)は(a)のCC線断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1、11 フィルタ
2、12 枠体
3、13 メッシュ
4、4’ 金型
5、15 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の枠体と、枠体のほぼ肉厚中心部で少なくとも周縁が保持されたメッシュとを備えるフィルタにおいて、
前記枠体が、前記メッシュに対して垂直方向に又は面方向内方に突き出たリブを要所に一体的に有することを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
電気掃除機の遠心力集塵器用である請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記リブが、前記メッシュよりも吸気方向下流側の面に形成されている請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
メッシュとメッシュの少なくとも周縁に沿うように形成された枠状のキャビティを有する型とを準備し、メッシュを型内に配置し、キャビティに樹脂を射出成形することにより、フィルタを製造する方法において、
前記型における前記キャビティの要所に、前記メッシュに対して垂直方向に又は面方向内方に窪んだ凹部が設けられていることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記フィルタが電気掃除機の遠心力集塵器用である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記凹部が、前記メッシュよりも吸気方向下流側となる面に形成されている請求項5に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−34148(P2009−34148A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198615(P2007−198615)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(394001087)株式会社京都プラテック (4)
【Fターム(参考)】