説明

フィルム切断装置

【課題】フィルムの素材や形態を選ばず、汎用性のある作業性の高いフィルム切断兼印字装置を提供すること。
【解決手段】 上下からフィルムFを挟み、回動によりフィルムFが引き出されると共に滑らずにフィルムFを挟持する第1のローラ対(第1上ローラ111、第1下ローラ121)と、その下流に配された同様の第2のローラ対(第2上ローラ112、第2下ローラ122)と、第1のローラ対と第2のローラ対との間に配され、上下移動によりフィルムを切断する切断刃124と、切断刃124の上下移動に機械的に連動して上下移動し、第1のローラ対の上流または第2のローラ対の下流に配された、フィルムFに印字をおこなうスタンプSを取り付けるスタンプホルダ125と、スタンプSの裏当てをかね、接着剤が触れないようにフィルムFの移動方向左右に溝130が設けられたフィルム移送面128と、を具備したことを特徴とするフィルム切断装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果物等の容器トレイの表面ラップ用フィルムを切り出すフィルム切断装置に関し、特に、生産者の名前等も同時に印字するフィルム切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果物などの不定形な青果は、所定量容器トレイに詰められ、その表面に柔軟なフィルムがラップされて流通する。このような表面ラップ用のフィルムを切断する装置として、たとえば、特許第3573952号公報(引用文献1)に開示される技術が知られている。この技術によれば、フィルムを美麗にかつ正確に適宜な長さで切断することが可能となる。
【0003】
引用文献1に開示される技術は、要するに、柔軟なフィルムが中空に浮いてうまく切断できないようなことが生じないようにするために、ローラの近傍まで摺動面(移送面)を設ける点に特徴がある。
【0004】
また、特開2008−133015号公報(引用文献2)に開示される技術は、スタンプをフィルムに印字する要素技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、イチゴのように容器トレイの上面を超えて詰められた状態でフィルムがけ(ラップ)される場合を例にとると、次のような問題点があった。
【0006】
まず、上面が不定形である上、フィルム左右に線上に塗布された接着剤部分をうまく容器トレイの側面上方につける必要があるので、自動化が難しく、生産者(農家)の手作業によりフィルムがけされるという実情がある。そして、近年の生産者氏名表示や出荷日表示が推奨される環境下では、フィルムにこの情報を表示させたいという要望がある。
【0007】
ここで、シールにより表示をおこなう場合、ラップ後に貼り付けるのは表面の凹凸がありうまく貼れず手間もかかるという問題点がある。換言すれば作業性に劣るという問題点がある。また、生産者名入りのシールを印刷するのは個々の生産者では出荷パッケージ数が多くないのでシール自体が特注品となりコスト高を招来するという問題点もある。換言すれば汎用性に欠けるという問題点がある。
【0008】
また、フィルム製造の段階で生産者名を印字する場合であっても、フィルムロールのロット数が多くないので同様にコスト高を招来するという問題点が残存する。また、フィルムは左右の端部付近に線引きされた接着剤がついたロール形状で納入されるので、予め出荷日などを印刷することも事実上不可能である。
【0009】
一方、フィルムが切り出された後ラップ前にスタンプを押して氏名等表示をすることも技術的には可能である。しかしながらフィルムが切り離されると、スタンプの上昇時にフィルムが浮きあがり、接着剤によりフィルム自身がくっつきあったり、装置についたりして、使い物にならないという問題点があった。また、切り出されてフィルムが静置される場所にスタンプ台などがあると邪魔になるという問題点もある。換言すれば作業性に劣るという問題点があった。
【0010】
また、接着剤がついたフィルムを切断する場合には、刃も含めて筐体に接着剤部分が極力触れないようにする特別の配慮が必要となる。ここで、特許文献1に開示される技術は予めミシン目が入っている特殊な形態のフィルムであり、ミシン目のないフィルムの場合には接着剤が刃について移送トラブルを生じる可能性がある。また、特許文献2に開示される技術は熱線カッターであるのでフィルム素材の選択肢が限定されるという問題点がある。換言すればフィルムの素材や形態に制限があるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3573952号公報
【特許文献2】特開2008−133015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
すなわち、解決しようとする問題点は、フィルムの素材や形態を選ばず、汎用性のある作業性の高いフィルム切断装置を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載のフィルム切断装置は、ロール状に収容された柔軟なフィルムを引き出し、所定位置ないし所定間隔で切断して果物等の容器トレイの表面ラップ用フィルムを切り出すフィルム切断装置であって、フィルムの左右端部近傍には接着剤が塗布されており、上下からフィルムを挟み、回動によりフィルムが引き出されると共に滑らずにフィルムを挟持する第1のローラ対と、上下からフィルムを挟み、回動によりフィルムが引き出されると共に滑らずにフィルムを挟持する、第1のローラ対の下流に配された第2ローラ対と、第1のローラ対と第2のローラ対との間に配され、上下移動によりフィルムを切断する切断刃と、切断刃の上下移動に機械的に連動して上下移動し、第1のローラ対の上流または第2のローラ対の下流に配された、フィルムに印字をおこなうスタンプを取り付けるスタンプ取付体と、スタンプの裏当てをかねると共にフィルムの移送面を形成し、接着剤が触れないようにフィルムの移動方向左右に溝が設けられた平板体と、を具備したことを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項1にかかる発明は、フィルムの接着剤が干渉しないようにフィルムを移送面に載置しつつずれが生じないように安定的に固定するので、切れ目の入っていない柔軟なフィルムであっても印字も切断もおこなうことができる。これにより、フィルムの素材や形態を選ばず、汎用性のある作業性の高いフィルム切断兼印字装置を提供可能となる。
【0015】
なお、左右とは、フィルムの引き出し方向の中心からみた端部位置を意味し、ロール状に収容されているときには円筒両側の円形の面の位置関係をいう。左右端部の近傍に接着剤が塗布されているとは左右端が含まれていても良いものとする。通常は接着剤がはみ出さないために、フィルム端部から数ミリ内側に線状に接着剤が塗布されている。なお、連続的な線状でなくても容器トレイに貼付できるのであれば点線状であってもドット状に塗布されていても良いことはいうまでもない。ローラ対は、必ずしも一本のローラが対峙した態様でなくても、軸を共通にして、3個×2(上下)=6個のローラであっても、左右2個×2(上下)=4個のローラであってもよい。
【0016】
スタンプ取付体は、市販のインキ浸透型のスタンプが取り付けることができれば特に限定されない。たとえば、枠体にスタンプ取手(持ち手)を挿入し2方向ないし4方向から位置決めすると共に固定するビス留めをする態様であっても良い。スタンプ取付体により、スタンプ交換が容易となり、日付スタンプにより出荷日等の印字も容易となる。また、インクの補充も容易となる。平板体はローラに干渉しないように必要箇所に孔が空いていても良い。また、一枚板で構成されている必要はなく、左右を欠いて接着剤部分が触れないようにしてあればよい。この意味において、底がある溝である必要はなく、底がない開放された構成であってもよいものとする。
【0017】
請求項2に記載のフィルム切断装置は、請求項1に記載のフィルム切断装置において、第1のローラ対の上下いずれかのローラおよび第2のローラ対の上下いずれかのローラには、左側および右側にそれぞれ二箇所所定間隔隔てて摩擦リングが嵌めてあり、切断刃は、当該摩擦リングで囲まれた位置からフィルムを開破する凹凸形状を有することを特徴とする。
【0018】
すなわち、請求項2にかかる発明は、左右両側でそれぞれ少なくとも四箇所でフィルムが固定されてこれに囲まれる所定位置からフィルム切断が始まるため、切断の確実性と安定性が高まる。また、フィルム端部が押し上げられて傾くようなことがなく接着剤が装置等に接触するのを防止して作業性が低下しない。
【0019】
なお、摩擦リングはたとえばゴムリングを挙げることができる。フィルムのずれが生じにくい摩擦係数の大きな素材でローラを取り巻くものであれば特に限定されない。また、上下いずれかのローラとは、少なくとも上下いずれかのローラという意義であり、二箇所とは少なくとも二箇所という意義を含むものとする。
【0020】
請求項3に記載のフィルム切断装置は、請求項1または2に記載のフィルム切断装置において、スタンプ取付体は第1のローラ対の上流に配されており、第1のローラ対および第2のローラ対のスタンプ印字面側のローラについては、印字面に当たる部分を凹ませた形状としたことを特徴とする。
【0021】
すなわち、請求項3にかかる発明は、ローラにインクが付着せず、順次移送されてくるフィルムが汚れてしまうような事象が発生しない。なお、凹ませた形状とは、たとえば、円筒ローラの中央部分を幅5cm深さ3mmで一様に削りだした多段円筒形状を挙げることができる。
【0022】
請求項4に記載のフィルム切断装置は、請求項1、2または3に記載のフィルム切断装置において、スタンプ取付体に対してローラ対とは反対側の移送面近傍のスタンプ取付体側に、フィルムの浮き上がりを規制する規制体を設けたことを特徴とする。
【0023】
すなわち、請求項4にかかる発明は、フィルムがスタンプ側に張り付いて浮き上がるのを防止し、切断トラブル、移送トラブルの発生を防止する。なお、スタンプ取付体に対してローラ対とは反対側、とは、規制体と(第1および第2の)ローラ対との間にスタンプ取付体が位置する位置関係をいう。規制体の態様は特に限定されないが、たとえば、ローラであってもよく、若干の張力を確保するため、移送面をこの部分だけ下げてローラを配する態様を挙げることができる。
【0024】
請求項5に記載のフィルム切断装置は、請求項1〜4のいずれか一つに記載のフィルム切断装置において、切断刃の形状を複数の頂を有する、山形、波形、または、櫛形としたことを特徴とする。
【0025】
すなわち、請求項5にかかる発明は、フィルムと切断刃が平行な場合には切断開始箇所が定まらず切断が始まると一気に破れてしまうような不安定な切断となりやすいところ、切断の安定性を高める。
【0026】
請求項6に記載の切断装置は、請求項1〜5のいずれか一つに記載のフィルム切断装置において、左右の接着剤が塗布されたフィルム部分と当接する切断刃部分は、表面を粗らしたことを特徴とする。
【0027】
すなわち、請求項6にかかる発明は、接着剤の切断刃への付着を防止する。
【0028】
請求項7に記載のフィルム切断装置は、請求項1〜6のいずれか一つに記載のフィルム切断装置において、スタンプ取付体または機械的な連動機構にバネを設け、切断刃がフィルムを切断する位置まで移動したときに、所定のスタンプ押圧が確保されるようにしたことを特徴とする。
【0029】
すなわち、請求項7にかかる発明は、スタンプの取付位置やスタンプ取手高さに依存せずスタンプ選択の自由度を高め、押しつけすぎずまた印字が薄くなりすぎず適度な捺印強さとすることができる。なお、スタンプが押し当たる移送面部分にはフィルムの移送に影響を与えないパッドが存在していても良いものとする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、フィルムの素材や形態を選ばず、汎用性のある作業性の高いフィルム切断兼印字装置を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のフィルム切断装置の側面透視図である。
【図2】本発明のフィルム切断装置の部分斜視図である。
【図3】本発明のフィルム切断装置の連動機構の概要図である。
【図4】フィルムの切断前後の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のフィルム切断装置の側面透視図である。図2は、本発明のフィルム切断装置の部分斜視図である。図3は、本発明のフィルム切断装置の連動機構の概要図である。図4は、フィルムの切断前後の様子を示した図である。なお、図2および図3は、説明の便宜上、各構成を離して描画したり、部分的に描画してある。
【0033】
フィルム切断装置100は、大きく分けて、上部筐体101と、下部筐体102と、フィルムロール載置台103と、切出フィルム載置台104と、から構成される。
【0034】
フィルムロールFRは、透明なポリエチレン製の薄いフィルムであって、予め商品名や農協名が連続的に印刷されていると共に、左右端近傍の裏面には線状に接着剤Bが塗布されて円筒状に巻かれた形態を有する。接着剤BはフィルムFの引き出し時には相手のフィルム表面に残存しないような材質のものが使用されている。また、所定の長さまたは位置でフィルムの引き出しが止まるように、検知用の印Mも所定間隔で印字されている(図4参照)。
【0035】
上部筐体101内には、第1上ローラ111と第2上ローラ112とバネ113と操作パネル114とを備える。なお、フィルムFとの間で適度な滑りを確保するためフィルムFに当接するローラは、本ローラを含めポリアセタール製(ポリプラスチック社の製品:ジュラコン)を用いるのが好適である。
【0036】
第1上ローラ111と第2上ローラ112とは共に中央が縮径した二段円筒形状であって、上部筐体101下面付近で若干の間隔を隔てて平行且つ水平に軸支され、バネ113により所定の圧力が下方向にかかるようにしている。なお、第1上ローラ111は上流すなわちフィルムロール載置台103側に、第2上ローラ112は第1上ローラ111の下流側、すなわち、切出フィルム載置台104側に配置されている。
【0037】
操作パネル114は、図示は省略するが、「運転ボタン」、「停止ボタン」、「リセットボタン」などが設けられ、適宜装置の駆動状態が確認できるようにLEDランプも備わっている。
【0038】
下部筐体102内には、第1下左ローラ121Lと第1下右ローラ121Rと、第2下左ローラ122Lと第2下右ローラ122Rと、ローラ駆動モータ123と、切断刃124と、スタンプホルダ125と、連動機構126と、切断刃駆動モータ127と、フィルム移送面128と、分離舌体129(図2(b)のみに表示)と、を備える。なお、以降では左右のローラを区別する必要がないときは、第1下左ローラ121Lと第1下右ローラ121Rを単に第1下ローラ121と、第2下左ローラ122Lと第2下右ローラ122Rを単に第2下ローラ122と表記することとする。
【0039】
第1下左ローラ121Lと第1下右ローラ121Rとは同形の円筒であって軸121Zに軸通されている。第2下左ローラ122Lと第2下右ローラ122Rも同形の円筒であって軸122Zに軸通されている。第1下ローラ121と第2下ローラ122とは、その上面がフィルム移送面128すれすれであって、若干の間隔を隔てて平行且つ水平に軸支されている。第1下ローラ121をそのまま下流に平行移動すると第2下ローラ122に重なる構成となっている。
【0040】
第1下左ローラ121L、第1下右ローラ121R、第2下左ローラ122L、第2下右ローラ122Rには、それぞれ左右にゴムリング121G、122Gが嵌められており、第1下左ローラ121Lと第1下右ローラ121Rは第1上ローラ111と当接しローラ対(第1ローラ対)を形成し、また、第2下左ローラ122Lと第2下右ローラ122Rは第2上ローラ112と当接しローラ対(第2ローラ対)を形成している。第1下ローラ121と第2下ローラ122が駆動ローラRを介してローラ駆動モータ123により回転すると、ゴムリング121G、122Gの摩擦力とバネ113による押圧によりフィルムFが挟持されつつ下流側へ引き出される。
【0041】
切断刃124は、左右対称に頂点を持つ逆W字形状の刃である。切断刃124の左側の頂点は、第1下左ローラ121Lの左右のゴムリング121G、第2下左ローラ122Lの左右のゴムリング122Gの丁度中央に位置し、切断刃124の右側の頂点は、第1下右ローラ121Rの左右のゴムリング121G、第2下右ローラ122Rの左右のゴムリング122Gの丁度中央に位置するようにしているので、フィルムFは摩擦力により固定され、ずれずに滑らかに開破され切断されることとなる。
【0042】
また、図示は省略するが切断刃124の左右端は刃を粗らしており、フィルムFの接着剤Bが切断刃124の表面につかないようにしている。
【0043】
この切断刃124は、切断刃駆動モータ127により上に上がりフィルムFを切断する。振幅は、最も下がったとき(待機位置)では切断刃124の頂部がフィルム移送面128より下(たとえば1cm下)に位置し、最も上がったときには切断刃124の谷部がフィルム移送面128より上(たとえば1cm上)に位置するように設計してある。
【0044】
切断刃124とスタンプホルダ125との間には機械的な連動機構126が設けられ、この例では切断刃124が上昇するとスタンプホルダ125が下降する構成となっている。具体的には連動アーム151が介在しておりこれが基軸152で軸支され、基軸152を基点として所定角度回動可能になっている。連動アーム151には窓151Cと窓151Sとがあけられており、切断刃124下部の係止棒153と、ホルダ支持柱154の外側に嵌められた昇降円筒155下部の係止凸156とが、それぞれ貫入している。
【0045】
これにより、切断刃124が上昇すると係止棒153が上昇し、これに伴う連動アーム151の回動により係止凸156が下降することになり、昇降円筒155上部に取り付けられたスタンプホルダ125が下降する。なお、ホルダ支持柱と昇降円筒155の間にはコイルバネ157が設けられており、昇降円筒155の下降に伴いスタンプSが所定の押圧となるように調整されている。
【0046】
スタンプホルダ125には、取付調整ネジ158が設けられ、スタンプホルダ125に挿入されたスタンプSの位置決めおよび固定がなされる。この取付調整ネジ158を設けることにより、スタンプホルダ125をある程度の大きさとすることができ、様々な形状のスタンプSの取付を可能としている。すなわち、フィルム切断装置100はスタンプSの選択肢を広げ、単に生産者名のみでなく、様々なスタンプを取り付けることが可能となる。
【0047】
なお、スタンプホルダ125や連動機構126は、下部筐体102から上へ延伸し、上部筐体101の中に位置する。
【0048】
フィルム移送面128は、図2に示したように、平板基調であるが、第1下ローラ121と第2下ローラ122と干渉しないようにローラ形状に沿って切り欠いてあり、また、第2下ローラ122の下流直近にはフィルム移送面128上に分離舌体129(図2(b))が設けてあり、フィルムFを浮かせるようにしている。また、第1下右ローラ121R(第2下右ローラ122R)の右側、第1下左ローラ121L(第2下左ローラ122L)の左側には、それぞれ溝130が設けられ、この溝130の上空をフィルムFの接着剤B部分が通過するようになっている。分離舌体129でフィルムFを持ち上げ、また、溝130とでフィルムFを浮かせるので、柔軟なフィルムFが曲がって接着剤B部分が装置に接触しても、搬送トラブルや切断トラブルが生じないようにしている。また、接着剤B部分が万一接触した場合であってもトラブルの発生確率を低減するために、溝130の底面および側面も表面を粗らしている。
【0049】
なお、上部筐体101は、図示しないヒンジにより下部筐体102に接続しており、中をあけて、フィルム移送面128ないし各ローラを点検できるようにしている。
【0050】
フィルムロール載置台103は、ロール受131と、テンションローラ132と、を有する。円筒形状のフィルムロールFRはロール受131に載置され、この位置で回転する。テンションローラ132は、フィルム移送面128より下に位置してフィルムFを上から押さえつけ、フィルムロールFRの慣性と相まってフィルムFに所定の張力がかかるようにしている。これにより、スタンプSの印字直後にインクによりフィルムFが浮き上がってしまうのを防止できる。
【0051】
切出フィルム載置台104は、切断されたフィルムFを載置する。図示したように、切出フィルム載置台104は傾斜しており、先端の返し141で位置決めされるので、作業者(生産者)がフィルムをとり容器トレイに接着する際の作業性が高まる。なお、フィルムFの接着剤部分は切出フィルム載置台104に当接しないように左右の長さは短くなっている。
【0052】
次にフィルム切断装置100の操作手順および動きを説明する。
まず、上部筐体101を開けて、フィルム移送面128を曝露した状態とする。次に、スタンプSをスタンプホルダ125に取り付ける。フィルムロールFRをフィルムロール載置台103に載置し、フィルムFの先端を引き出し、テンションローラ132間を通す。そのままフィルムFを切出フィルム載置台104のところまで、接着剤が筐体に触れないようにして引き出す。
【0053】
上部筐体101を下部筐体102に被せて閉じ、電源を入れる。操作パネル114の「リセットボタン」を押下する。フィルム切断装置100は、フィルムFの検知用の印Mを検知するまで第1下ローラ121と第2下ローラ122が駆動し、フィルムFの位置決めをおこなう。
【0054】
以上で初期動作が完了するので、操作パネル114の「運転ボタン」を押下する。切断刃124が上昇すると共にスタンプSが下降し、切断と印字を同時におこなう。なお、テンションローラ132を設けているため、スタンプSの上昇時にフィルムFが上方に持っていかれることなくスタンプSとフィルムFとの円滑な分離が実現される。
【0055】
切断刃124が下降したら、第1下ローラ121と第2下ローラ122が駆動し、切断されたフィルムFが切出フィルム載置台104に移送される。同時に次にフィルムFがフィルムロールFRから所定位置まで引き出され、以降、同様の作業が繰り返される。このとき、第1上ローラ111および第2上ローラ112は中央が切り欠いてあるのでインクが触れず移送され、フィルムFを汚さない。
【0056】
生産者は切出フィルム載置台104からフィルムを取り出し、容器トレイに貼る。なお、作業中断するときは、適宜「停止ボタン」を押下する。
【0057】
以上、本発明によれば、ミシン目が入れてあるような特殊形態のフィルムや熱線で切断するような特殊素材のフィルムでなくとも切断が可能であって、スタンプも自由に組み合わせたり交換したりできる小ロット対応が可能な汎用性のあるフィルム切断兼印字装置であって、フィルムの接着剤が切断トラブルや移送トラブルを招来しない作業性の高いフィルム切断兼印字装置を提供可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、ロールを替えるだけで、イチゴだけなく、いちじく、ピーマン、栗など、季節毎の野菜や果物等のフィルムを切断可能となり、投資コストの削減が可能となる。
【符号の説明】
【0059】
100 フィルム切断装置
101 上部筐体
102 下部筐体
103 フィルムロール載置台
104 切出フィルム載置台
111 第1上ローラ
112 第2上ローラ
113 バネ
114 操作パネル
121 第1下ローラ
121L 第1下左ローラ
121R 第1下右ローラ
121G ゴムリング(第1下ローラ用)
121Z 軸(第1下ローラ用)
122 第2下ローラ
122L 第2下左ローラ
122R 第2下右ローラ
122G ゴムリング(第2下ローラ用)
122Z 軸(第2下ローラ用)
123 ローラ駆動モータ
124 切断刃
125 スタンプホルダ
126 連動機構
127 切断刃駆動モータ
128 フィルム移送面
129 分離舌体
130 溝
131 ロール受
132 テンションローラ
151 連動アーム
151C 窓
151S 窓
152 基軸
153 係止棒
154 ホルダ支持柱
155 昇降円筒
156 係止凸
157 コイルバネ
158 取付調整ネジ
F フィルム
FR フィルムロール
M 印
R 駆動ローラ
S スタンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に収容された柔軟なフィルムを引き出し、所定位置ないし所定間隔で切断して果物等の容器トレイの表面ラップ用フィルムを切り出すフィルム切断装置であって、
フィルムの左右端部近傍には接着剤が塗布されており、
上下からフィルムを挟み、回動によりフィルムが引き出されると共に滑らずにフィルムを挟持する第1のローラ対と、
上下からフィルムを挟み、回動によりフィルムが引き出されると共に滑らずにフィルムを挟持する、第1のローラ対の下流に配された第2ローラ対と、
第1のローラ対と第2のローラ対との間に配され、上下移動によりフィルムを切断する切断刃と、
切断刃の上下移動に機械的に連動して上下移動し、第1のローラ対の上流または第2のローラ対の下流に配された、フィルムに印字をおこなうスタンプを取り付けるスタンプ取付体と、
スタンプの裏当てをかねると共にフィルムの移送面を形成し、接着剤が触れないようにフィルムの移動方向左右に溝が設けられた平板体と、
を具備したことを特徴とするフィルム切断装置。
【請求項2】
第1のローラ対の上下いずれかのローラおよび第2のローラ対の上下いずれかのローラには、左側および右側にそれぞれ二箇所所定間隔隔てて摩擦リングが嵌めてあり、
切断刃は、当該摩擦リングで囲まれた位置からフィルムを開破する凹凸形状を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルム切断装置。
【請求項3】
スタンプ取付体は第1のローラ対の上流に配されており、
第1のローラ対および第2のローラ対のスタンプ印字面側のローラについては、印字面に当たる部分を凹ませた形としたことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム切断装置。
【請求項4】
スタンプ取付体に対してローラ対とは反対側の移送面近傍のスタンプ取付体側に、フィルムの浮き上がりを規制する規制体を設けたことを特徴とする請求項1、2または3に記載のフィルム切断装置。
【請求項5】
切断刃の形状を複数の頂を有する、山形、波形、または、櫛形としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のフィルム切断装置。
【請求項6】
左右の接着剤が塗布されたフィルム部分と当接する切断刃部分は、表面を粗らしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のフィルム切断装置。
【請求項7】
スタンプ取付体または機械的な連動機構にバネを設け、切断刃がフィルムを切断する位置まで移動したときに、所定のスタンプ押圧が確保されるようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のフィルム切断装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−173182(P2011−173182A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37206(P2010−37206)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(510050454)有限会社エイブル精機 (1)
【Fターム(参考)】