説明

フィルム接合体およびこのフィルム接合体を形成するためのスプライシングテープ、ならびにこのスプライシングテープによるフィルムの接合方法

【課題】フィルムの端部間に段差などが発生せず漏れ出てしまった接着剤などによる製品への付着が発生せず、突き合わせ部に適正なスプロケットホールを具備したフィルム接合体及びこのフィルム接合体を形成するためのスプライシングテープ、ならびにこのスプライシングテープによるフィルムの接合方法を提供する。
【解決手段】フィルムの端部同士を突き合わせて、端部間に跨がるように貼り合わされるスプライシングテープ20または24であって、片面に第1粘着層が6設けられたポリイミド製芯材シート4と、第1粘着層6を介して剥離可能に配置された保護テープ8とを備え、場合によっては反対側の面に補強用テープ22を配置し、ポリイミド製芯材シート4と第1粘着層6と保護テープ8には、スプロケットホールに対応する若干大きめの貫通孔122,144を形成しておき、このテープを用いてフィルム10,10の端部間を貼り合わせたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム接合体およびこのフィルム接合体を形成するためのスプライシングテープ、ならびにこのスプライシングテープによるフィルムの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルム、例えば、電子部品実装用フィルムキャリアテープ(TAB(Tape
Automated Bonding)テープ、COF(Chip ON Film)テープ、T-BGA(Tape Ball Grid Array)テープ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)テープなど)(以下、単に「フィルムキャリアテープ」と言う。)に対して、フィルムキャリアテープの接合すべき端部同士を、または、フィルムキャリアテープとリードテープの端部同士を、ハンドスプライサーあるいはオートスプライサーを用いて接着テープによって相互に接合することが行われている。
【0003】
例えば、一条のフィルムキャリアテープを接合する方法としては、特許文献1に開示されたハンドスプライサー方式の接合装置を用いる方法が知られている。
このスプライサー方式のフィルム接合装置200では、例えば、図7に示したように、2つのフィルムキャリアテープ204の接合すべき切断端部206同士を、一対のガイド部材212、214の上に配置するとともに、相互に突き合わされた2つのフィルム204,204の端部同士間に、スプライシングテープ216を配置し、上方からスプライスアーム222を圧下することにより、スプライシングテープ216をフィルムキャリアテープ204、204間の接合すべき突き合わせ部分に接着している。そして、この接合装置では、スプライシングテープ216の接着と同時に、パンチ穴226を介して、図示しない一対の穿孔用パンチ部材が、押さえプレート224から下方に突出して、スプロケットホールを塞ぐスプライシングテープ216にスプロケット232と略同サイズかあるいは若干小さいサイズの貫通孔を穿孔している。
【0004】
ところで、最近では、長尺の一本のテープの両端付近に配置された一対のスプロケットホール間に、1列あるいは多列に、複数のフィルムキャリアが形成された一条のフィルムキャリアテープ204に代えて、長尺の一本のテープに複数条のフィルムキャリアが形成された多条のフィルムキャリアテープが広く使用されている。なお、多条のフィルムキャリアテープには、その幅方向両端に搬送用のスプロケットホールがさらに追加して配置される場合がある。
【0005】
上記のように、スプライシングテープ216で2枚のフィルムキャリアテープ204,204の端部同士を突き合せて接合した場合、接合によりスプライシングテープ216で塞がれてしまったスプロケットホール232をパンチで穿設しようとすると、多条のフィルムキャリアテープの場合、スプロケットホールの孔数が一条の場合に比較して多いので、穿設時に微細なバリや切り屑がより多く発生し、フィルムキャリアの異物、コンタミの原因となっていた。
【0006】
加えて、パンチなどの打ち抜きにより、特にスプロケットホールのサイズよりやや小さいサイズの貫通孔を形成しようとした場合には、スプライシングテープを接合部の上下両面に貼り合わせた場合、上下の接着剤層の一部の接着剤がパンチの刃に付着して切れ味を悪くするという問題、また、スプロケットホールに付着し、さらにスプロケットホールに付着した接着剤が他のスプロケットホールに付着して搬送上のトラブル等を引き起こすという問題があった。
【0007】
多条のフィルムキャリアテープの端部間を接合する別の方法としては、例えば、特許文献2に開示された方法がある。
この特許文献2では、多条フィルムの接合すべき端部間に接着剤を介在させ、この接着剤層を挟むように両端部間を重ね合わせるとともに、その後、ブロックヒータなどの適宜な加熱加圧手段で、上記接着層を溶融、硬化させて多条フィルム間同士を接合している。
【0008】
ところが、この特許文献2の方法で2つのフィルム間を接合しようとすると、フィルム間の重ね合わせ部に段差が生じてしまい、結果として、その後の搬送や使用勝手に不都合が生じてしまう。
【特許文献1】特開2002−207286号公報
【特許文献2】特開2008−263183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、2つのフィルムの端部間を繋ぎ合わせて接続する場合に、フィルムの端部間に段差などが発生せず、また漏洩した接着剤による製品への付着が発生せず、さらには突合せ部であっても適正なスプロケットホールを具備させることができ、加えて幅が広くなる多条フィルムを接合する場合であっても、接着領域に皺などが発生せずに、容易かつ適正に表面を接合されたフィルム接合体およびこのフィルム接合体を形成するためのスプライシングテープ、ならびにこのスプライシングテープによるフィルムの接合方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るフィルム接合体は、
接合すべき2つのフィルムに形成されたスプロケットホールより大きな貫通孔を有し、樹脂製芯材シートとその片面に形成された第1粘着層が、前記スプロケットホールの開口を塞がないように前記2つのフィルムの片面あるいは両面に貼り付けられていることを特徴としている。
【0011】
ここで、本発明に係るフィルム接合体では、前記樹脂製芯材シートの長さが前記フィルムの幅より若干短いことが好ましい。
さらに、本発明に係るフィルム接合体では、前記樹脂製芯材シートがポリイミド製であることが好ましい。
【0012】
本発明に係るスプライシングテープは、
スプロケットホールが所定間隔置きに形成された2つのフィルムの端部同士を突き合わせて配置するとともに、これら突き合わされたフィルムの端部間に跨がるように貼り合わされるスプライシングテープであって、
片面に第1粘着層が設けられた樹脂製芯材シートと、
前記樹脂製芯材シートの前記第1粘着層が設けられた面に剥離可能に配置された保護テープと、を備え、
前記樹脂製芯材シートと前記第1粘着層には、予め、前記スプロケットホールに対応する貫通孔が形成されており、この貫通孔の径は、前記フィルムに形成されたスプロケットホールの径よりも大きく設定されていることを特徴としている。
【0013】
このようなフィルム接合体およびこのフィルム接後体を形成するためのスプライシングテープであれば、フィルム間を貼り合わせた後の工程で、スプロケットホールの塞がれた孔を開口する必要がないので、バリ、切り屑の発生がなく、はみ出した接着剤によるトラブルを少なくすることができるとともに、スプライシングテープには大径の貫通孔が予め
形成されているので、既に形成されている被接合部材のスプロケットホールを覆い隠してしまうことがない。
【0014】
したがって、突合せ接合端部に所定のスプロケットホールを具備させることができる。
ここで、本発明に係るスプライシングテープは、
前記樹脂製芯材シートの前記第1粘着層が設けられた面と反対側の面に、第2粘着層を介して補強用テープが貼着され、
前記樹脂製芯材シートと前記第2粘着層との間の粘着力は、前記保護テープと前記第1粘着層との間の粘着力よりも大きくされていることが好ましい。
【0015】
このような構成であれば、保護テープを引き剥がすときに、補強用テープが剥がれてしまうことはない。
ここで、前記樹脂製芯材シートが、ポリイミド製であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るフィルムの接合方法では、
スプロケットホールが所定間隔置きに形成された2つのフィルムを接合するに際し、
上記に記載のスプライシングテープを、前記フィルムの幅と同じか、または若干短く切断する切断工程と、
切断されたスプライシングテープから保護テープを剥離する剥離工程と、
前記剥離工程により露出した第1粘着層を、2つのフィルムの突き合わせ部間に跨って貼り付けるフィルム貼付工程と、を備え、
前記フィルム貼付工程では、被接合部材である2つのフィルムに予め形成されたスプロケットホールと、前記スプライシングテープに予め形成された貫通孔とを合致させて貼り付けることを特徴としている。
【0017】
このような方法で2つのフィルム間を接合する場合には、接合部に段差が生じることもなく、また後の工程で、塞がれた孔を開口する必要もないので、バリ、切り屑の発生が少なく、はみ出した接着剤によるトラブルを少なくすることができる。また、接着剤を介在させて加圧することもないので、粘着剤が漏れ出てしまうこともない。
【0018】
また、本発明に係る他のフィルムの接合方法は、
スプロケットホールが所定間隔置きに形成された2つのフィルムを接合するに際し、
上記に記載のスプライシングテープの少なくとも樹脂製芯材シートを、前記フィルムの幅と同じか、または若干短く切断する切断工程と、
切断されたスプライシングテープから保護テープを剥離する剥離工程と、
前記剥離工程により露出した第1粘着層を、2つのフィルムの突き合わせ部間に跨って貼り付けるフィルム貼付工程と、
前記樹脂製芯材シートから第2粘着層付き補強用テープを剥離する補強用テープ剥離工程と、を備え、
前記フィルム貼付工程では、被接合部材である2つのフィルムに予め形成されたスプロケットホールと、前記スプライシングテープに予め形成された貫通孔とを合致させて貼り付けることを特徴としている。
【0019】
このような方法で2つのフィルム間を接合する場合には、仮に長い接着領域をスプライシングテープで接合する場合であっても、補強用テープが具備されているために、この補強用テープにより樹脂製芯材シートの配置位置を直線的に案内することができ、その結果、樹脂製芯材シートが湾曲して接着領域に貼られてしまったりすることがない。また、接着領域に皺が入ってしまうこともない。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るフィルム接合体では、接合すべき2つのフィルムのスプロケットホールより大きな貫通孔を有するスプライシングテープで片面あるいは両面が接合されているので、貼り合せた後にスプライシングテープに貫通孔を形成する必要がない。したがって、高価なスプライス、パンチ一体型のスプライサー装置が不要となるのは勿論のこと、バリやはみ出しによる粘着剤の転移が発生して、製品価値が損なわれることがない。
【0021】
すなわち、本発明に係るスプライシングテープでは、2つのフィルムの端部間を接合するにあたり、予めスプロケットホールに対応する貫通孔が形成されているので、パンチで貫通孔を形成する場合に生じるバリや切り屑による異物発生がない。また、開口部には、はみ出した接着剤の転移などが発生することがない。しかもそのスプロケットホールに相当する貫通孔は、既存のスプロケットホールの径に比べて大径に形成されているので、既存のスプロケットホールを隠してしまうことがない。これにより、全体の開口部を確実に開口させることができる。
【0022】
さらに、スプライシングテープを貼り付けた後にパンチ力で孔を開ける作業が不要なので、接着剤の周囲への漏れが生じることがない。
また、樹脂製芯材シートの保護テープとは反対側の面に補強用テープを介在させたスプライシングテープの場合には、片側に樹脂製芯材シートより腰の強い補強用テープが介在されているため、これにより幅の長いフィルムキャリアテープ間を接合する場合であっても、皺などが発生せず確実にスプライシングテープを案内させてフィルムの突合せ端部同士を貼り合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るフィルム接合体およびこのフィルム接合体を形成するためのスプライシングテープ、ならびにこのスプライシングテープによるフィルムの接合方法について説明する。
【0024】
なお、本明細書において、スプライシングテープとは、2つのフィルムを接合するために使用されるテープであり、少なくとも、樹脂製芯材シートとその片面に粘着層(第1粘着層)を備えたものをいう。
【0025】
また、このようなスプライシングテープには、第1粘着層を介して樹脂製芯材シートと保護テープが貼着された全体が3層構造の保護テープ付きスプライシングテープと、第1粘着層を介して樹脂製芯材シートと保護テープが貼着され、さらに第2粘着層を介して樹脂製芯材シートと補強用テープが貼着された全体が5層構造の補強用テープ付きスプライシングテープの2通りがあるが、便宜上、両方とも単にスプライシングテープとして記載する。
【0026】
図1は本実施例の一実施例によるフィルム接合体を形成するためのスプライシングテープ2の長さ方向の断面図、図2はこのスプライシングテープ2を用いて2枚の電子部品実装用フィルムキャリアテープ(以下、フィルムという)10,10の端部同士が接合されたフィルム接合体20の平面図である。一方のフィルム10は、リードテープであっても良い。
【0027】
なお、図2には、各条に形成されたスプロケットホール14以外に、製造中に搬送用あるいは位置決め用などに使用されるスプロケットホール12がフィルムの幅方向両端部に形成されている。
【0028】
すなわち、図2では、右側に配した二条のフィルム10のスプロケットホール部のセンターで切断された左側端部10aと、左側に配した二条のフィルム10のスプロケットホ
ール部のセンターで切断された右側端部10bとが、図3に示したような治具を用いて、中央のラインL,Lで突き合わされ、スプライシングテープ2で接合されている。なお、二条のフィルム10の幅方向両端部に所定間隔置き、すなわち所定の等ピッチで形成されたスプロケットホール12と、これらスプロケットホール12の列の内側に条の数に応じて幅方向所定間隔置きに、長手方向等ピッチ間隔で形成された、例えば客先で実装時の搬送用等に使用されるスプロケットホール14とは孔サイズが異なっていても良い。
【0029】
また、フィルムの切断箇所はスプロケットホール部の中央ラインでなくても、スプロケットホール間の中央ラインでも良く、所定のルールを決めて切断すれば良い。
このスプライシングテープ2は、図1に示したように、樹脂製芯材シート4と該芯材シート4の片面に形成された第1粘着層6と第1粘着層6が設けられた面に剥離可能に配置された保護テープ8とから構成されている。芯材シート4の材質は特に限定されないが、フィルム10の絶縁層と同じ材質、例えば、ポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0030】
このようにすれば、製造中にフィルムが加熱処理されてもフィルムとスプライシングテープとの材質の違いによる線膨張係数の違いに起因した接合部の歪が発生しない。
第1粘着剤層6は、従来公知のどのような粘着剤を用いても良いが、ポリイミド製芯材シート4と第1粘着層6との間の粘着力は、保護テープ8との粘着力よりも大きいものが用いられている。
【0031】
したがって、図1に示したように、例えば、保護テープ8の長さ方向の一端8aを持ってポリイミド製芯材シート4から引き離すように引っ張れば、第1粘着層6をポリイミド製芯材シート4側に残存させた状態で保護テープ8のみを剥離することができる。
【0032】
このスプライシングテープ2の使用長さAは、図2に示したように、接合すべき接着領域Aの長さに合うように設定され、フィルム10の幅をTとした場合、Tより0〜2mm短く、好ましくは第1粘着層6の接着剤が使用長さAの領域より外方に飛び出していても、フィルム10の幅方向端部よりはみ出してハンドリング中に他の部材、設備に付着してトラブルを発生しないように、Tより0.5〜1mm短いのが良い。なお、Tは35〜350mm、好ましくは70〜200mmである。例えば、二条のフィルム10の幅Tが156mmである場合に、スプライシングテープ2の長さA(接着領域A)は155mmであり、この長さのスプライシングテープ2が多数形成されて使用される。
【0033】
一方、本実施例のスプライシングテープ2は、保護テープ8からポリイミド製芯材シート4との厚さ方向に、図4に拡大して示したように、所望とする大きさの貫通孔122,144が形成されている。この貫通孔(後にスプロケットホールとして使用される)122,144の形成位置、および大きさは、接合すべき下方のフィルム10に形成されたスプロケットホール12,14のピッチに対応しており、大きさは、これより若干大きな径で形成されていて、スプロケットホール12,14のサイズより200〜1000μm大きい。
【0034】
例えば、フィルム10に形成されたスプロケットホール12、14のサイズは1.42mm角や、1.981mm角であるが、対応する貫通孔144,122は、それよりも600μm程大きくなるように設定されている。これは、後述するように貼り合わせの時のズレに余裕を持たせることと、貫通孔122,144にできたバリや飛び出した粘着層がスプロケットホール12,14の開口部にかかり後工程でトラブルの原因とならないようにするためである。
【0035】
このように、本実施例のスプライシングテープ2では、予めスプロケットホール12,14に相当する位置に、貫通孔122,144が形成されている。そして、このスプライ
シングテープ2が、図2に示したように、二条フィルム10、10の両端部10a、10b間に跨るように外方から接着される。
【0036】
このとき、先ずスプライシングテープ2の下面に配置された保護テープ8が剥離され、その剥離された部分に露出した貫通孔122,144を、フィルム10,10のスプロケットホール12,14に合致させる。なお、搬送や位置決め等に使用されるのはスプロケットホール12,14であるので、スプロケットホール12,14の中心と貫通孔122,144の中心を厳密に一致させる必要はなく、貫通孔122,144にできたバリ60や飛び出した粘着層70などがスプロケットホール12,14の開口領域にはみ出していなければ、ずれていても問題はない(図5参照)。
【0037】
このように貼り合わせる上下面の貫通孔とスプロケットホール間を合致させてスプライシングテープ2をフィルム10,10間に貼着する。
なお、この作業は、例えば、図3のような固定台40にフィルム10,10の所定のスプロケットホールを位置決めピンに差し込んでセットして目視で行っても良いし(ハンドスプライスの場合)、CCDカメラなどを用いて画像処理により自動的に位置合わせして接合しても良い(オートスプライスの場合)。いずれにしても、スプライシングテープ2に、予め大きな貫通孔122,144がスプロケットホール用として形成されているので、位置合わせは容易に行なうことができる。
【0038】
このようにして、接合すべきフィルム10,10間の片面にスプライシングテープ2が接合されたフィルム接合体20が形成される。
ここで、接合部に引張り強度を持たせたい場合には、反対側の面にもスプライシングテープ2を接合することが好ましい。
【0039】
このように、スプライシングテープ2が片面のみの使用であるか、両面に使用されたものであるかは、フィルム接合体20の使用勝手により適宜決定すれば良い。
なお、スプライシングテープ2に形成される貫通孔122,144は、保護テープ8からポリイミド製芯材シート4間に渡って、例えばパンチングにより形成されているが、場合によっては、芯材シート4と第1粘着層6のみに形成しても良い。
【0040】
このような本実施例によれば、スプライシングテープ2の長さAを、二条フィルム10の幅Tより若干短く設定することにより、フィルム接合体20の両端部150、150から第1粘着層6がはみ出てしまうことはない。
【0041】
また、スプライシングテープ2を貼り付けた後に、後の作業としてスプロケットホールを穿設する必要がない。また、予め大きい径のスプロケットホール用の貫通孔122,144が形成されているので、既存のスプロケットホール12,14に厳密に合致させる必要はなく、貼り合わせ作業は容易である。
【0042】
さらに、後の工程でパンチなどによる穿設を必要としない本実施例では、穿設時に起きるスプライシングテープ2からの粘着剤の漏れが発生しない。したがって、粘着剤の製品への転写が生じることもない。
【0043】
なお、電子部品実装用フィルムキャリアテープの場合、スプロケットホールの穿設、フォトレジストの露光・現像、エッチング、メッキ、ソルダーレジスト層形成等の工程を経て製造され、また、電気検査、AOI(Automatic Optical Inspection)、外観検査等の検査を経て、最後に編集されて実装メーカーに出荷されるが、本発明はどの段階においても実施可能である。
【0044】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、ポリイミド製芯材シート4と保護テープ8とが第1粘着層6を介して積層された保護テープ付きスプライシングテープ2を説明したが、これに代え、図6に示したように、ポリイミド製芯材シート4の第1粘着層6が設けられた面と反対側の面に、さらに第2粘着層18を介して補強用テープ22を貼着した補強用テープ付きスプライシングテープ24を採用することもできる。
【0045】
その場合、補強用テープ22と第2粘着層18との間の粘着力は、図6に示したように、ポリイミド製芯材シート4と第2粘着層18との間の粘着力よりも大きくされていることが好ましい。第2粘着層18の粘着力がこのように設定されていれば、図6に示したように、補強用テープ22の一端部22aを持ってポリイミド製芯材シート4から引き離すように引っ張れば、第2粘着層18を補強用テープ22側に残存させた状態で補強用テープ22のみを剥離することができるので、長尺のフィルムをリールに巻回したときにフィルム同士が接着することがない。
【0046】
さらに、芯材シート4と第2粘着層18との間の粘着力は、保護テープ8と第1粘着層6との間の粘着力よりも大きくされているので、保護テープ8を剥がすときに補強用テープ22が剥がれてしまうことはない。
【0047】
このような補強用テープ付きスプライシングテープ24を用いる場合は、スプライシングテープ24が図2に示した接着領域Aの長さごとに接合用として使用されるため、補強用テープ付きスプライシングテープ24を長尺物のまま使用する場合にはテープ24から、切り離しが容易となるように、長さAごとに切り込みを入れておくことが好ましい。すなわち、例えば、保護テープ8側からカッターを入れ、そのカッターを第1粘着層6、ポリイミド製芯材シート4まで挿入して、切り込みを形成しておく。このようにして切り込みを形成すれば、長尺の補強用テープ22を剥がしていく段階で、長さAのスプライシングテープ(ポリイミド製芯材シート4と第1粘着層6)をフィルム10側に残すことができる。なお、ポリイミドは着色透明であるので、補強用テープ22に、無色透明の材質を使用すれば、貼り合わせの位置決めが容易となる。
【0048】
なお、貫通孔122,144は、保護テープ8から芯材シート4にかけて貫通して形成して、後から補強用テープ22を積層しても良いし、保護テープ8から補強用テープ22まで、例えばプレス機を用いて一気に貫通して形成しても良い。
【0049】
このようなスプライシングテープ24は、例えば3条のフィルムなど、幅Tが70mm以上の幅広の多条フィルムを突き合わせて接合する場合に、有効に用いることができる。
なお、図6に示したような補強用テープ付きのスプライシングテープ24の場合は、補強用テープ22は保護テープ8や芯材シート4よりも内厚とするのが良く、0.05〜0.2mm、好ましくは0.075〜0.15mmが良い。肉厚の補強用テープ22は、長い接着領域Aを貼り合わせていくときに、芯材シート4の案内部材として機能させることができる。そして、使用後には、芯材シート4から剥離すればよい。
【0050】
すなわち、このスプライシングテープ24を使用して2つのフィルム10,10の端部間同士を、あるいは1つのフィルムと1つのリードテープとの端部間同士を接着する場合は、先ず図1の場合と同様に下面の保護テープ8を剥離し、その状態で、上下の貫通孔122とスプロケットホール12および貫通孔144とスプロケットホール14間を合致させ、スプライシングテープ24を端部間に跨って接着する。このとき、ポリイミド製芯材シート4の上側には、補強用テープ22が介在されているので、長い領域Aを貼り付ける場合であっても、その補強用テープ22が案内部材として機能するので、被接着面に対し
ポリイミド製芯材シート4が湾曲してしまうことがない。また、皺がよってしまうこともない。
【0051】
しかる後、上側の補強用テープ22が剥離される。
これにより、第1粘着層6とポリイミド製芯材シート4とで接合された所定のフィルム接合体20を得ることができる。
【0052】
また、補強用テープ22を備えたスプライシングテープ24を用いる場合も、フィルム接合体の片面に貼着しても、あるいは両面に貼着しても良い。
以上説明したように、本発明によるフィルム接合体およびこのフィルム接合体を形成するためのスプライシングテープ、ならびにこのスプライシングテープによるフィルムの接合方法によれば、バリ60や飛び出した接着層70によるトラブルが発生せず、フィルム間を接合した後に、スプロケットホールなどの孔を穿設する必要がない。また、多条のフィルムの長い接着領域Aを接合する場合にも適用可能で、周囲に粘着剤が漏れ出てしまうことはない。したがって、今日使用されている多条フィルム同士の接合に有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係るフィルム接合体を形成するのに使用されたスプライシングテープの長さ方向の断面図である。
【図2】図2は、図1に示したスプライシングテープを用いて2つの2条フィルムの端部同士が接合されたフィルム接合体の平面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施に係るフィルム接合体を形成するときに用いられる治具の一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、図2に示したスプライシングテープの一部拡大図である。
【図5】図5は、スプライシングテープの中央ラインが下方のフィルムに対してずれてしまうととともに、粘着剤のはみ出しやバリが形成されてしまった場合の図4相当図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例により使用されるスプライシングテープの断面図である。
【図7】図7は、特開2002−207286号公報に開示されたフィルム接合装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
2 スプライシングテープ
4 ポリイミド製芯材シート
6 第1粘着層
8 保護テープ
10 2条フィルム(被接合部材)
12,14 スプロケットホール
18 第2粘着層
122,144 貫通孔
20 フィルム接合体
24 スプライシングテープ
60 バリ
70 飛び出した粘着層
A 接着領域
T 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合すべき2つのフィルムに形成されたスプロケットホールより大きな貫通孔を有し、樹脂製芯材シートとその片面に形成された第1粘着層が、前記スプロケットホールの開口を塞がないように前記2つのフィルムの片面あるいは両面に貼り付けられていることを特徴とするフィルム接合体。
【請求項2】
前記樹脂製芯材シートの長さが前記フィルムの幅より若干短いことを特徴とする請求項1に記載のフィルム接合体。
【請求項3】
前記樹脂製芯材シートがポリイミド製であることを特徴とする請求項2に記載のフィルム接合体。
【請求項4】
スプロケットホールが所定間隔置きに形成された2つのフィルムの端部同士を突き合わせて配置するとともに、これら突き合わされたフィルムの端部間に跨がるように貼り合わされるスプライシングテープであって、
片面に第1粘着層が設けられた樹脂製芯材シートと、
前記樹脂製芯材シートの前記第1粘着層が設けられた面に剥離可能に配置された保護テープと、を備え、
前記樹脂製芯材シートと前記第1粘着層には、予め、前記スプロケットホールに対応する貫通孔が形成されており、この貫通孔の径は、前記フィルムに形成されたスプロケットホールの径よりも大きく設定されていることを特徴とするスプライシングテープ。
【請求項5】
前記樹脂製芯材シートの前記第1粘着層が設けられた面と反対側の面に、第2粘着層を介して補強用テープが貼着され、
前記樹脂製芯材シートと前記第2粘着層との間の粘着力は、前記保護テープと前記第1粘着層との間の粘着力よりも大きくされていることを特徴とする請求項4に記載のスプライシングテープ。
【請求項6】
前記樹脂製芯材シートが、ポリイミド製であることを特徴とする請求項4または5に記載のスプライシングテープ。
【請求項7】
スプロケットホールが所定間隔置きに形成された2つのフィルムを接合するに際し、
請求項4に記載のスプライシングテープを、前記フィルムの幅と同じか、または若干短く切断する切断工程と、
切断されたスプライシングテープから保護テープを剥離する剥離工程と、
前記剥離工程により露出した第1粘着層を、2つのフィルムの突き合わせ部間に跨って貼り付けるフィルム貼付工程と、を備え、
前記フィルム貼付工程では、被接合部材である2つのフィルムに予め形成されたスプロケットホールと、前記スプライシングテープに予め形成された貫通孔とを合致させて貼り付けることを特徴とするフィルムの接合方法。
【請求項8】
スプロケットホールが所定間隔置きに形成された2つのフィルムを接合するに際し、
請求項5に記載のスプライシングテープの少なくとも樹脂製芯材シートを、前記フィルムの幅と同じか、または若干短く切断する切断工程と、
切断されたスプライシングテープから保護テープを剥離する剥離工程と、
前記剥離工程により露出した第1粘着層を、2つのフィルムの突き合わせ部間に跨って貼り付けるフィルム貼付工程と、
前記樹脂製芯材シートから第2粘着層付き補強用テープを剥離する補強用テープ剥離工程と、を備え、
前記フィルム貼付工程では、被接合部材である2つのフィルムに予め形成されたスプロケットホールと、前記スプライシングテープに予め形成された貫通孔とを合致させて貼り付けることを特徴とするフィルムの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−120344(P2010−120344A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298272(P2008−298272)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】